説明

電子カメラ

【課題】設計の自由度を確保しつつ、容易に製造できかつコストの上昇を抑えることができる電子カメラを提供すること。
【解決手段】電子カメラ1のカメラボディ2は、光軸Axに沿って順に配置されたマウント部3と、ミラーボックス4と、シャッターユニット5と、CCDパッケージ6とを備え、さらに、撮影レンズ7とメインミラー9との間の空間に配置された複屈折板16と、メインミラー9とシャッターユニット5との間の空間に配置された位相板17と、シャッターユニット5とCCDパッケージ6との間の空間に配置された複屈折板18および赤外カットフィルタ19とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子カメラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、CCD等によって被写体の画像データを取得する電子カメラでは、被写体の画像データに偽色(モアレ)が生じるのを防止するため、図5に示すように、撮像ユニット50の前面に、CCDカバーガラス51を介して光学ローパスフィルタ52が配置される。この光学ローパスフィルタ52は、CCD結像面53におけるCCDの画素間隔で決まる標本化空間周波数に近い空間周波数成分を低減させるため、撮像ユニット50側から順に配設された赤外線吸収ガラス、複屈折板、位相板および複屈折板、すなわち4層の積層体で構成されている。
【0003】
撮影レンズと撮像ユニット50との間に回動可能なメインミラーを有する一眼レフタイプの電子カメラでは、シャッターユニットをメインミラーと撮像ユニット50との間に配置する必要があり、これにより、光学ローパスフィルタ52はシャッターユニットと撮像ユニット50との間に配置される。
【0004】
ところが、シャッターユニットと撮像ユニット50との間の空間の大きさは限られているため、例えば、積層厚さが3.1〜3.3mm程度に達するような正方分離型の光学ローパスフィルタ52を当該空間に配置することは容易でなく、設計の自由度が低いという問題があった。そこで、近年、CCDカバーガラス51を廃止して撮像ユニット50の前面に複屈折板を直接貼り付けることにより、ローパスフィルタの積層数を減じてその厚さを小さくすることが行われていたり(例えば、特許文献1参照)、または、複屈折板の材料として水晶の代わりにニオブ酸リチウムを用いることによって複屈折板の厚さを小さくしたりすることが行われている。
【0005】
しかしながら、撮像ユニット50の前面に複屈折板を直接貼り付ける場合では、複屈折板が撮像ユニット50と一体化して取り扱われるため、電子カメラの生産工程において当該複屈折板に傷などが付きやすく、製造が困難であるという問題がある。
【0006】
また、光学ローパスフィルタ52は、貼り付けや、コートの関係で、単純な一枚ガラスより表面欠陥レベルが低い。
【0007】
また、複屈折板の材料として水晶の代わりにニオブ酸リチウムを用いる場合では、ニオブ酸リチウムが非常に高価であるため、製造コストが上昇するという問題がある。
【0008】
【特許文献1】特開2000−114502号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、設計の自由度を確保しつつ、容易に製造できかつコストの上昇を抑えることができる電子カメラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的は、下記(1)〜(12)の本発明により達成される。
(1) 光軸に沿って順に配置された撮影レンズ、回動可能に設置されたミラー、シャッターユニットおよび電子画像を撮像する撮像ユニットを備えるとともに、光学特性が異なる少なくとも2つの層により構成される光学フィルタを備える電子カメラであって、
前記各層は、前記撮影レンズと前記ミラーとの間の空間、前記ミラーと前記シャッターユニットとの間の空間、前記シャッターユニットと前記撮像ユニットとの間の空間のうち少なくとも2つの空間に分離して配置されることを特徴とする電子カメラ。
【0011】
これにより、シャッターユニットと撮像ユニットとの間の空間の大きさが限られていても、積層厚さが大きい光学フィルタを電子カメラ内に収容することができ、電子カメラの設計の自由度を確保しつつ、電子カメラを容易に製造でき、電子カメラのコストの上昇を抑えることができる。
【0012】
(2) 前記各層のうちの少なくとも1つの層は、前記シャッターユニットと前記撮像ユニットとの間の空間に配置される上記(1)に記載の電子カメラ。
【0013】
(3) 前記各層は、それぞれ、当該電子カメラに対して着脱可能である上記(1)または(2)に記載の電子カメラ。
これにより、電子カメラの清掃作業(メンテナンス)を容易に行うことができる。
【0014】
(4) 前記光学フィルタは、光学ローパスフィルタである上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の電子カメラ。
これにより、画像を劣化させる高周波成分を確実に光学的に抑制することができる。
【0015】
(5) 前記光学フィルタは、複屈折層、位相層および赤外カットフィルタのうちの少なくとも1つを含むものである上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の電子カメラ。
これにより、ローパスフィルタ特性を確実に得ることができる。
【0016】
(6) 前記位相層は、前記ミラーと前記シャッターユニットとの間の空間または前記シャッターユニットと前記撮像ユニットとの間の空間に配置される上記(5)に記載の電子カメラ。
これにより、電子カメラの設計の自由度をより容易に向上させることができる。
【0017】
(7) 前記複屈折層および位相層は、それぞれ、水晶で構成されている上記(5)または(6)に記載の電子カメラ。
これにより、電子カメラのコストの上昇をより確実に抑えることができる。
【0018】
(8) 前記光学フィルタは、正方分離型のフィルタである上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の電子カメラ。
これにより、モアレを生じさせることなく高画質の画像を撮影することができる。
【0019】
(9) 前記ミラーを収容する鏡箱をさらに備え、
前記撮影レンズと前記ミラーとの間の空間と、前記ミラーと前記シャッターユニットとの間の空間とは、前記鏡箱内に設けられる上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の電子カメラ。
【0020】
これにより、積層厚さが大きい光学フィルタをより確実に電子カメラ内に収容することができる。
【0021】
(10) 前記撮影レンズと前記ミラーとの間の空間に配置される層と、前記ミラーと前記シャッターユニットとの間の空間に配置される層とは、それぞれ、枠体を介して前記鏡箱に固定される上記(9)に記載の電子カメラ。
これにより、電子カメラの清掃作業(メンテナンス)を容易に行うことができる。
【0022】
(11) 前記枠体と前記鏡箱との間に防塵部材が設けられる上記(10)に記載の電子カメラ。
【0023】
これにより、シャッターユニットおよび撮像ユニットにゴミが侵入するのを防止することができる。
【0024】
(12) 前記各層は、それぞれ、1つの光学特性を発揮する光学特性板で構成されている上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の電子カメラ。
これにより、各層の取り扱いをより容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、光学フィルタの複数の層(光学特性板)を、撮影レンズとミラーとの間の空間、ミラーとシャッターユニットとの間の空間、シャッターユニットと撮像ユニットとの間の空間のうち少なくとも2つの空間に分離して配置することにより、シャッターユニットと撮像ユニットとの間の空間にのみ光学フィルタを配置する場合と比較して、シャッターユニットと撮像ユニットとの間の空間に余裕をもたせることができるため、例えば、CCDカバーガラスなどを省略することなく、積層厚さが大きい光学フィルタを電子カメラ内に収容することができる。このようなことから、電子カメラの設計の自由度を確保しつつ、電子カメラを容易に製造でき、かつ電子カメラのコストの上昇を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の電子カメラを添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の電子カメラの第1実施形態を示す正面図、図2は、図1に示す電子カメラの内部構造を示す横断面図、図3は、光学ローパスフィルタの光学特性板およびその光学特性板が固定されるフレームを示す分解斜視図である。
【0027】
これらの図に示す電子カメラ1は、カメラボディ2と、このカメラボディ2に対し着脱自在な撮影レンズ7とで構成されるレンズ交換式一眼レフ電子カメラである。カメラボディ2の正面には、撮影レンズ7を着脱自在に取り付けるためのマウント部3が設けられている。
【0028】
カメラボディ2は、光軸Axに沿って正面側(図2中左側)より順に配置されたマウント部3と、筐体状のミラーボックス(鏡箱)4と、シャッターユニット5と、CCDパッケージ(撮像ユニット)6とを備える。また、マウント部3には撮影レンズ7が取り付けられるため、撮影レンズ7も、ミラーボックス4ないしCCDパッケージ6と同様に光軸Axに沿って配置される。
【0029】
ここで、マウント部3の撮影レンズ7取り付け面からCCDパッケージ6におけるCCD結像面8までの距離(フランジバック)Lは、銀塩カメラにおける撮影レンズマウント面から撮影フィルム面までの距離と略同じである。また、シャッターユニット5およびCCDパッケージ6は所定のクリアランスを保って配置される。
【0030】
ミラーボックス4内部には、メインミラー(ミラー)9が設けられている。メインミラー9は、その上端部付近に設けられた回転軸10を中心として回動可能に設置されており、図2に示す第1の位置と、ミラーボックス4の内壁上面11に沿って光軸Axに対して略平行となる第2の位置(図示せず)との間で回動する。メインミラー9は、モータドライバ(図示せず)を介して駆動されるミラーモータ(図示せず)の駆動力により動作する。
【0031】
メインミラー9が第1の位置に配置されている場合、撮影レンズ7を透過してカメラボディ2内に入射した光束(被写体光)は、その大部分がメインミラー9において反射し、ミラーボックス4の内壁上面11に配置された焦点板(図示せず)、さらにはペンタプリズム(図示せず)に入射する。そして、ペンタプリズムで反射された光束は、アイピースレンズ(図示せず)を通って射出する。これにより、使用者は、アイピースを介して撮影レンズ7による焦点板上の結像状態を観察することができる。
【0032】
また、メインミラー9の一部は、ハーフミラーとなっており、撮影レンズ7からの光束の一部は、メインミラー9を透過し、メインミラー9の背面側に設けられたサブミラー12により下方に反射されてAFセンサ(図示せず)に入射する。
【0033】
ここで、メインミラー9において反射し、ミラーボックス4の内壁上面11に配置された焦点板、さらにはペンタプリズムに入射する光束は、後述する第1の間隙空間に配置された光学特性板のみを通過した光束である。
【0034】
メインミラー9が第2の位置に配置されている場合、メインミラー9は、撮影レンズ7からの光束の光路から退避した状態になっており、撮影レンズ7からの光束は、メインミラー9にて反射されることなくシャッターユニット5およびCCDパッケージ6に入射し得る。すなわち、撮影レンズ7からの光束は、後述する複屈折板16、位相板17、複屈折板18、赤外カットフィルタ19を介してCCDパッケージ6に入射し得る。
【0035】
シャッターユニット5は、いわゆるフォーカルプレーンシャッタであり、CCDパッケージ6のCCD結像面8に対面するように設置されている。シャッターユニット5は、先幕および後幕を有し、露出時には、先幕と後幕との間に形成される任意の間隔を持つスリットを所定の速度でCCD結像面8の前を横切るように移動させることにより、撮影レンズ7からの光束をCCD結像面8に到達させる。このシャッターユニット5は、シャッタ駆動回路(図示せず)により駆動される。
【0036】
CCDパッケージ6は、長方形の浅い凹部を有するケーシング13と、ケーシング13の凹部内に設置された平板状のCCD14と、ケーシング13の凹部の開口を覆うように設置されたCCDカバーガラス15とを有し、CCD14の図2中の左側面がCCD結像面8となっている。このCCDパッケージ6は、そのCCD結像面8がマウント部3に装着された撮影レンズ7の光軸Axに対し垂直になるように設置されている。そして、光軸Axは、CCDパッケージ6の撮像領域(CCD結像面8)の中心に合致する。
【0037】
また、カメラボディ2は、光学特性が異なる少なくとも2つの(本実施形態では4つの)層で構成される光学ローパスフィルタを内部に備える。光学ローパスフィルタの各層は、それぞれ、1つの光学特性を発揮する光学特性板である複屈折板(複屈折層)16、位相板(位相層)17、複屈折板(複屈折層)18および赤外カットフィルタ(赤外カット層)19で構成されている。本実施形態では、光軸Axに沿って正面側(図2中左側)から複屈折板16、位相板17、複屈折板18、赤外カットフィルタ19の順番で設置されている。
【0038】
また、複屈折板16は、撮影レンズ7とメインミラー9との間の空間(以下「第1の間隙空間」という)に配置され、位相板17は、メインミラー9とシャッターユニット5との間の空間(以下「第2の間隙空間」という)に配置され、複屈折板18と赤外カットフィルタ19とは、シャッターユニット5とCCDパッケージ6との間の空間(以下「第3の間隙空間」という)に配置される。すなわち、本実施形態では、第1の間隙空間〜第3の間隙空間にそれぞれ、光学特性板が配置される。
【0039】
また、複屈折板16、位相板17、複屈折板18の構成材料は、特に限定されないが、例えば、水晶等が挙げられる。
【0040】
また、赤外カットフィルタ19の構成材料は、特に限定されないが、例えば、赤外線を吸収するガラス(赤外吸収ガラス)等が挙げられる。
【0041】
ところで、本実施形態では第1の間隙空間または第2の間隙空間に配置される光学特性板を後述のフレーム(枠体)を介してミラーボックス4に固定する。
【0042】
具体的には、図3に示すように、例えば、金属製の平板をプレス成型によって額縁状に打ち抜いたフレーム20であって、内周部の少なくとも一辺において一段奥まって配置される光学特性板支持部21を有するフレーム20に、光学ローパスフィルタの任意の光学特性板を光学特性板支持部21に当接させて接着することにより、光学特性板をフレーム20に固定する。さらに、第1の間隙空間に配置される光学特性板が固定されたフレーム20をビス21、21によってミラーボックス4のフレーム座面22a、22aに固定する(図2参照)。第2の間隙空間に配置される光学特性板が固定されたフレーム20も同様に、ビス21、21によってミラーボックス4のフレーム座面22b、22bに固定する。
【0043】
ここで、各フレーム20と各フレーム座面22a、22bとの間には、それぞれ、略四角形状の枠状の防塵シール部材(防塵部材)23が配置される。該防塵シール部材23はフレーム20の開口部を囲むように配置されるため、シャッターユニット5およびCCDパッケージ6へ向けてゴミが侵入するのを防止することができる。なお、防塵シール部材23の構成材料は、特に限定されないが、例えば、ゴム系のパッキンやゴミを捕集するスポンジ材等が挙げられる。
【0044】
光学ローパスフィルタの任意の光学特性板を、フレーム20を介してビス21によってミラーボックス4に固定することにより、当該光学特性板をミラーボックス4に対して脱着自在にすることができ、電子カメラ1のメンテナンス時において当該光学特性板を脱離させることによって、例えば、各光学特性板の表面やCCD結像面8に付着したゴミの除去などを容易に行うことができ、電子カメラ1のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0045】
ところで、通常、光学ローパスフィルタは複屈折板と位相板とが互いに接触(接合)されているが、複屈折板と位相板との接触によって新たな光学的機能を発揮することはなく、かつ光学的機能が減じることがないため、複屈折板と位相板を互いに接着しない場合であっても、複屈折板と位相板を互いに接着する場合と同様の機能を発揮する。したがって、複屈折板16、位相板17および複屈折板18は、互いに協働して(一体的に)正方分離型の光学ローパスフィルタとして機能し、被写体光の空間周波数の中からCCD14の画素間隔で決まる標本化空間周波数に近い空間周波数成分を低減させることにより、被写体の画像データに偽色(モアレ)が生じるのを防止する。また、赤外カットフィルタ19は、撮影レンズ7からの被写体光の中から赤外波長成分を除去し、CCDパッケージ6が人間の目に見えない赤外光を受光してしまうのを防止する。
【0046】
第1の間隙空間の光軸Axに沿った方向の距離および第2の間隙空間の光軸Axに沿った方向の距離は、一般的に第3の間隙空間の光軸Axに沿った方向の距離より小さいが、一例として、分離幅が6μm〜8μm程度(例えば、7μm程度)の正方分離型の光学ローパスフィルタでは、水晶で構成される複屈折板の厚さは、1mm〜1.4mm程度(例えば、1.2mm程度)であり、同じく水晶で構成される位相板の厚さは0.3mm〜1.2mm程度(例えば、0.4mm程度)であり、赤外カットフィルタの厚さは0.3mm〜0.5mm程度である。したがって、複屈折板、位相板又は赤外カットフィルタは1枚または2枚であれば、第1の間隙空間や第2の間隙空間に配置可能であり、本実施形態では、上述したように、複屈折板16が第1の間隙空間に配置され、位相板17が第2の間隙空間に配置されるため、第3の間隙空間には複屈折板18および赤外カットフィルタ19を配置すればよく、これにより、第3の間隙空間を拡張することなく、カメラボディ2が、正方分離型の光学ローパスフィルタを収容することができる。
【0047】
カメラボディ2において、光学ローパスフィルタの各光学特性板は、複屈折板16、位相板17、複屈折板18および赤外カットフィルタ19の順で配置されるが、各光学特性板の配置順はこれに限られず、位相板が2枚の複屈折板の間に挟まれていれば、どのような配置順であってもよく、例えば、赤外カットフィルタが最も正面側に配置されてもよいし、赤外カットフィルタが2枚の複屈折板の間に配置されてもよい。
【0048】
以上説明したように、この電子カメラ1によれば、複屈折板16が第1の間隙空間に配置され、位相板17が第2の間隙空間に配置されるため、第3の間隙空間には複屈折板18および赤外カットフィルタ19のみが配置される。これにより、第3の間隙空間の大きさが限られていても、例えば、CCDカバーガラス15などを省略することなく正方分離型の光学ローパスフィルタを電子カメラ1内に収容することができ、電子カメラ1の設計の自由度を確保しつつ、電子カメラ1を容易に製造でき、かつ電子カメラ1のコストの上昇を抑えることができる。
【0049】
次に、本発明の電子カメラの第2実施形態について説明する。
図4は、第2実施形態の電子カメラの内部構造を示す横断面図である。
【0050】
以下、第2実施形態の電子カメラ1について、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0051】
第2実施形態の電子カメラ1は、光学ローパスフィルタの各光学特性板の配置個所が異なっていること以外は、前述した第1実施形態と同様である。すなわち、本実施形態では、第3の間隙空間と、第1、第2の間隙空間のうちのいずれか一方の間隙空間とに、それぞれ、光学特性板が配置される。
【0052】
図4に示すように、第2実施形態の電子カメラ1では、複屈折板16が第2の間隙空間に配置され、位相板17、複屈折板18および赤外カットフィルタ19が第3の間隙空間に配置される。また、複屈折板16は第1の間隙空間に配置されてもよい。
【0053】
第2実施形態の電子カメラ1によれば、前述した第1実施形態の電子カメラ1と同様の効果が得られる。そして、この電子カメラ1では、メンテナンスをさらに容易に行うことができる。
【0054】
以上、本発明の電子カメラを、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【0055】
また、上述した第1実施形態では、複屈折板16、位相板17及び複屈折板18がそれぞれ第1の間隙空間、第2の間隙空間及び第3の間隙空間に配置され、第2実施形態では、複屈折板16が第1または第2の間隙空間に配置され、位相板17および複屈折板18が第3の間隙空間に配置されたが、本発明における複屈折板16、位相板17及び複屈折板18の配置個所の組合せはこれに限られず、例えば、配置個所の組合せが複屈折板16/位相板17/複屈折板18=第1の間隙空間/第1の間隙空間/第2の間隙空間、複屈折板16/位相板17/複屈折板18=第1の間隙空間/第1の間隙空間/第3の間隙空間、複屈折板16/位相板17/複屈折板18=第2の間隙空間/第2の間隙空間/第3の間隙空間、および複屈折板16/位相板17/複屈折板18=第1の間隙空間/第2の間隙空間/第2の間隙空間のいずれかであってもよい。すなわち、各光学特性板(各層)が、第1の間隙空間〜第3の間隙空間のうちの少なくとも2つの空間に分離して配置されていればよい。
【0056】
各光学特性板が、第1の間隙空間および第2の間隙空間のいずれかに配置される場合では、光学ローパスフィルタを第3の間隙空間に配置する必要を無くすことができ、電子カメラ1の設計の自由度を確実に確保することができる。
【0057】
また、上述した実施形態では、電子カメラ1に収容される光学ローパスフィルタは、正方分離型の光学ローパスフィルタであったが、電子カメラ1に収容される光学ローパスフィルタはこれに限られず、例えば、2枚の複屈折板および赤外カットフィルタで構成される平行四辺形型の光学ローパスフィルタや、1枚の複屈折板および赤外カットフィルタで構成される2点分離型の光学ローパスフィルタであってもよい。
【0058】
ここで、光学ローパスフィルタの型(正方分離型、平行四辺形型、2点分離型)に限られず、赤外吸収ガラス以外を第1の間隙空間に配置するのが好ましい。
【0059】
一例として、前記各実施形態の(正方分離型の)電子カメラ1の光学ローパスフィルタを構成する複屈折板16、位相板17および赤外カットフィルタ19のうち、複屈折板16および位相板17を第1の間隙空間に配置するのが好ましい。第1の間隙空間に配置される光学特性板は、メインミラー9の前段(図2中左側)に位置している。そのため、第1の間隙空間には、使用者が撮影レンズ7による焦点板上の結像状態を観察するときに必要な、または使用者が撮影レンズ7による焦点板上の結像状態を観察するときに支障のない光学特性板を配置するのが好ましい。すなわち、第2の間隙空間および第3の間隙空間に配置される各光学特性板は、メインミラー9の後段(図2中右側)に位置している。そのため、第2の間隙空間および第3の間隙空間には、使用者が撮影レンズ7による焦点板上の結像状態を観察するときに、必要でない光学特性板を配置するのが好ましい。
【0060】
また、前記各実施形態では、赤外線吸収部材として赤外カットフィルタを用いたが、これに限られず、例えば、赤外線吸収コート材等を用いてもよい。この場合、赤外線吸収コート材は、他の各光学特性板の表面または裏面のいずれかに設けられる。
【0061】
また、前記各実施形態では、複屈折板16、18および位相板17は、水晶で構成されているが、これに限られず、例えば、薄膜等で構成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の電子カメラの第1実施形態を示す正面図である。
【図2】図1に示す電子カメラの内部構造を示す横断面図である。
【図3】光学ローパスフィルタの光学特性板およびその光学特性板が固定されるフレームを示す分解斜視図である。
【図4】第2実施形態の電子カメラの内部構造を示す横断面図である。
【図5】従来の電子カメラにおける光学ローパスフィルタおよび撮像ユニットの位置関係を示す断面図である。
【符号の説明】
【0063】
Ax 光軸
1 電子カメラ
2 カメラボディ
3 マウント部
4 ミラーボックス
5 シャッターユニット
6 CCDパッケージ
7 撮影レンズ
8、53 CCD結像面
9 メインミラー
10 回転軸
11 内壁上面
12 サブミラー
13 ケーシング
14 CCD
15、51 CCDカバーガラス
16、18 複屈折板
17 位相板
19 赤外カットフィルタ
20 フレーム
21 ビス
22a、22b フレーム座面
23 防塵シール部材
50 撮像ユニット
52 光学ローパスフィルタ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸に沿って順に配置された撮影レンズ、回動可能に設置されたミラー、シャッターユニットおよび電子画像を撮像する撮像ユニットを備えるとともに、光学特性が異なる少なくとも2つの層により構成される光学フィルタを備える電子カメラであって、
前記各層は、前記撮影レンズと前記ミラーとの間の空間、前記ミラーと前記シャッターユニットとの間の空間、前記シャッターユニットと前記撮像ユニットとの間の空間のうち少なくとも2つの空間に分離して配置されることを特徴とする電子カメラ。
【請求項2】
前記各層のうちの少なくとも1つの層は、前記シャッターユニットと前記撮像ユニットとの間の空間に配置される請求項1に記載の電子カメラ。
【請求項3】
前記各層は、それぞれ、当該電子カメラに対して着脱可能である請求項1または2に記載の電子カメラ。
【請求項4】
前記光学フィルタは、光学ローパスフィルタである請求項1ないし3のいずれかに記載の電子カメラ。
【請求項5】
前記光学フィルタは、複屈折層、位相層および赤外カットフィルタのうちの少なくとも1つを含むものである請求項1ないし4のいずれかに記載の電子カメラ。
【請求項6】
前記位相層は、前記ミラーと前記シャッターユニットとの間の空間または前記シャッターユニットと前記撮像ユニットとの間の空間に配置される請求項5に記載の電子カメラ。
【請求項7】
前記複屈折層および位相層は、それぞれ、水晶で構成されている請求項5または6に記載の電子カメラ。
【請求項8】
前記光学フィルタは、正方分離型のフィルタである請求項1ないし7のいずれかに記載の電子カメラ。
【請求項9】
前記ミラーを収容する鏡箱をさらに備え、
前記撮影レンズと前記ミラーとの間の空間と、前記ミラーと前記シャッターユニットとの間の空間とは、前記鏡箱内に設けられる請求項1ないし8のいずれかに記載の電子カメラ。
【請求項10】
前記撮影レンズと前記ミラーとの間の空間に配置される層と、前記ミラーと前記シャッターユニットとの間の空間に配置される層とは、それぞれ、枠体を介して前記鏡箱に固定される請求項9に記載の電子カメラ。
【請求項11】
前記枠体と前記鏡箱との間に防塵部材が設けられる請求項10に記載の電子カメラ。
【請求項12】
前記各層は、それぞれ、1つの光学特性を発揮する光学特性板で構成されている請求項1ないし11のいずれかに記載の電子カメラ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−140706(P2006−140706A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−327738(P2004−327738)
【出願日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】