説明

電子カメラ

【課題】 撮像ユニットに対するゴミ問題に対し、撮像ユニットなどを破損に至らしめるおそれがなく、また強力に付着するゴミに対しても対処可能な電子カメラを提供する。
【解決手段】 被写体光束を受光して光電変換する撮像素子を含み、カメラ本体内部に設置される撮像ユニットと、撮像ユニットの光入射面の直前に挿入可能な光透過性の防塵部材20とを有する。防塵部材20は、カメラ本体1の外面に設けられた挿抜口1bから上記光入射面の直前の空間に挿抜され、挿入時には撮像ユニットへのゴミの付着を阻止する。挿抜口1bは、蓋1Bによって開閉される。防塵部材20にゴミが付着したら、取り出して清掃した後、再度挿入するか、あるいは新品のものと交換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子カメラに関し、撮像ユニットに対するゴミ対策を講じたものである。
【背景技術】
【0002】
電子カメラの抱える問題の1つとして、撮像ユニットへのゴミの付着がある。ここでいう撮像ユニットとは、撮像素子、およびその前面に配置される光学フィルタ(例えば、光学ローパスフィルタ)等を含むユニットを指し、多くは光学フィルタにゴミが付着することで、画像を劣化させる。例えば一眼レフタイプの電子カメラの場合は、レンズ交換時にマウント開口からゴミが侵入し、これが光学フィルタに付着したり、フォーカルプレーンシャッタやミラー等の駆動部から出たゴミが同様に光学フィルタに付着することがある。レンズ交換不能なレンズシャッタ式の電子カメラでは、外部からゴミが侵入するおそれは少ないが、カメラ内で発生したゴミが振動等で光学フィルタに移動することはあり得る。
【0003】
従来、一眼レフタイプの電子カメラにおけるゴミ対策としては、ミラーをアップ状態に、かつシャッタを開状態に保持し、レンズマウントの開口からブロア等でフィルタに付着したゴミを吹き飛ばしたり、アルコール等を用いて拭い去ることが行われている。また特許文献1,2には、フィルタに圧縮エアを吹き付けてゴミを除去する構造が、特許文献3には、カメラに振動を加えてゴミを振り落とす構造がそれぞれ開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−319218号公報
【特許文献2】特開2003−319219号公報
【特許文献3】特開2003−319222号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ゴミを吹き飛ばしたり、振動で振り落としたり、清掃部材で拭い去る方法は、撮像ユニットやカメラ内の他の構成部品を破損に至らしめるおそれがあり、また強力に付着したゴミ(例えば、粘着力のあるゴミ)は、振動やエアでは容易に除去できず、カメラをサービスセンタに持ち込む必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明に係る電子カメラは、被写体光束を受光して光電変換する撮像素子を含み、カメラ本体内部に設置される撮像ユニットと、撮像ユニットへのゴミの付着を阻止するために、撮像ユニットの光入射面の直前に挿入可能な光透過性の防塵部材とを有し、防塵部材を上記光入射面の直前の配置空間に挿抜するための挿抜口をカメラ本体の外面に設けて成る。
特に請求項2の発明は、挿抜口を露出/隠蔽する開閉蓋を設けたものである。
請求項3の発明に係る電子カメラは、被写体光束を受光して光電変換する撮像素子を含み、カメラ本体内部に設置される撮像ユニットと、撮像ユニットへのゴミの付着を阻止するための透明の防塵フィルムとを備え、防塵フィルムは、両端側が2つの軸にそれぞれ巻回され、その軸間部分が撮像ユニットの光入射面の直前に位置するよう配置されるとともに、一方の軸を回転することで、防塵フィルムを撮像ユニットに対して給送可能とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明では、光透過性の防塵部材を撮像ユニットの光入射面の直前に挿脱可能としたので、撮像ユニットへのゴミの付着を防止でき、しかもゴミが付着した防塵部材の交換や清掃後の再挿入が容易に行えるため、強力な付着力を持ったゴミでも何ら問題なく、さらに撮像ユニットや他のカメラ構成部品の破損のおそれも全くない。
請求項3の発明によれば、巻き取りによる給送が可能な防塵フィルムにて撮像ユニットへのゴミの付着を阻止するようにしたので、上述と同様の効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1〜図4により本発明の一実施形態を説明する。
図1は本実施形態における一眼レフタイプのデジタルスチルカメラを側方から見た概略図であり、1はカメラ本体を、2は撮影レンズ(交換レンズ)を示している。撮影レンズ2を透過した被写体光束は、メインミラー3で上方に反射され、フォーカシングスクリーン4,ペンタプリズム5を介して接眼レンズ6にて観察される。撮影が指示されると、メインミラー3が跳ね上げられるとともに、フォーカルプレーンシャッタ7が開閉され、被写体光束はシャッタ開口を通って撮像ユニット10に導かれる。
【0009】
撮像ユニット10は、撮像素子11や、その前面に配置される光学フィルタ12、撮像基板(不図示)などが一体化されて成り、カメラ本体1内の所定位置に位置決め配置される。光学フィルタ12は、光学ローパスフィルタや赤外カットフィルタなどから成る。撮像ユニット10に導かれた光束は、光学フィルタ12を透過して撮像素子11の受光面に結像し、撮像素子11はその受光光量に応じた電気信号(画像信号)を出力する。この画像信号に種々の処理が施されることで画像データが生成され、その画像データがメモリカード等の記録媒体(不図示)に記録される。
【0010】
本実施形態では、シャッタ7と撮像ユニット10の間に防塵フィルタ20が着脱可能とされる。図2,図3に示すように、防塵フィルタ20は、樹脂あるいは金属製の枠21にガラス等の透明板22を嵌め込んで成る。透明板22の嵌め込み位置は枠21の一端寄りであり、以下、その嵌め込み側の端部を先端、逆側を後端と呼ぶ。
【0011】
一方、カメラ本体1の外面には、その一側面に凹部1aが形成され、凹部1aの底面にスリット状のフィルタ挿抜口1bが形成されている。そして、この挿抜口1bから撮像ユニット10の前面にかけてフィルタガイドレール31(図4)が延設され、このガイドレール31により防塵フィルタ20の挿抜通路Pが形成される。凹部1aは、回動式の蓋1Bによって開閉可能とされ、蓋1Bを閉じた状態では挿抜口1bが隠蔽される。蓋1Bは、不図示のロック機構により閉状態でロックされるようになっている。
【0012】
防塵フィルタ20を装着する際は、ロックを解除して蓋1Bを開き、図2に示すように防塵フィルタ20を先端から挿抜口1bに挿入する。通路Pを通してフィルタ20を図3に示す装着位置まで押し込むと、防塵フィルタ20の先端面が例えばガイドレール31に形成されたストッパに当たり、それ以上の押し込みが阻止される。このとき、防塵フィルタ20の後端部が挿抜口1bから若干突出した状態となり、この状態で蓋1Bを閉じれば装着作業は完了となる。
なお、防塵フィルタ20の枠21や挿抜口1bの形状を工夫するなどして、フィルタの逆向きの挿入、つまり後端部からの挿入が阻止されるようにすることが望ましい。
【0013】
防塵フィルタ20が装着位置にあるときには、透明板22が光学フィルタ12の光入射面の直前に位置し、光入射面全体を覆う。したがって、レンズ交換時にマウント開口から侵入したゴミや、シャッタ7の摺動部なから発生するゴミは、防塵フィルタ20でブロックされ、光学フィルタ12の光入射面に付着することはない。
【0014】
ここで、防塵フィルタ装着時には、シャッタ開口を透過した光束が透明板22を透過して撮像ユニット10に入射することになるが、透明板22は入射光のほぼ全てを透過するため、光学性能に影響を与えることはない。また、透明板22は光学フィルタ12の光入射面全体を覆うだけの面積を持っており、有効光束が枠21によってケラれる心配はない。さらに、装着位置にある防塵フィルタ20は、その先端が上記ストッパに、後端が蓋1Bに、上下端がガイドレール31にそれぞれ拘束されるので、カメラに加わる振動やカメラの傾きなどによって防塵フィルタ20の位置ずれが発生することはない。
【0015】
防塵フィルタ20の入射面に付着したゴミは、フィルタ20をカメラから取り外して清掃することによって除去できる。取り外しの際には、蓋1Bを開け、挿抜口1bから露出した防塵フィルタ20の後端部を持ち、そのまま引っ張り出せばよい。清掃は、透明板22を中心にエアーの吹き付け、あるいは無水エタノールでの拭きなどで行えばよい。いずれにせよフィルタ単体での清掃なので、マウント開口を介しての光学フィルタの清掃と比べて念入りに行うことができ、粘着力でこびりついたゴミも残らず除去することができる。また、撮像ユニットの破損に気を配る必要も一切ない。
【0016】
清掃後、上述した要領で防塵フィルタ20を再びカメラに装着する。このように1枚の防塵フィルタ20を何度でも使用することができるが、万一透明板22に傷付きや破損が生じたら、新品と交換すればよい。防塵フィルタ20は構成が簡単なのでさほどコストはかからない。
【0017】
ここで、上記挿抜口1bから通路Pにゴミが侵入すると、そのゴミが光学フィルタ12に付着するおそれがあるため、挿抜口1bにゴミ侵入防止措置を施すことが望ましい。例えば、フェルト、植毛あるいはゴムなどの可撓性の侵入防止部材を挿抜口に配し、防塵フィルタ非装着時には挿抜口1bが侵入防止部材で閉塞され、防塵フィルタを挿入しようとすると、侵入防止部材が変形して挿入が許容され、装填時には、防塵フィルタと挿抜口との隙間が侵入防止部材で閉塞されるようにすればよい。
【0018】
なお、防塵フィルタの透明板はガラス板に限定されず、例えば透明フィルムであってもよい。あるいは、防塵フィルタとして上記光学フィルタ12の特性をもつ部材を用いれば、撮像ユニットの構成を簡素化できる。例えば、光学フィルタとしてローパスフィルタと赤外カットフィルタの双方が必要な場合、防塵フィルタ20の透明板を光学ローパスフィルタとすれば、撮像ユニットに設けるフィルタは赤外カットフィルタのみで済む。この場合は、防塵フィルタとしても機能する光学ローパスフィルタが赤外カットフィルタへのゴミの付着を防止することになる。また必要な光学フィルタが1種類のみであれば、その光学フィルタを防塵フィルタとして用いることで、撮像ユニットには光学フィルタが不要となる。この場合は、防塵フィルタとしての光学フィルタが撮像素子へのゴミの付着を防止することになる。
【0019】
さらに、レンズの先端に装着可能な種々の光学フィルタ(例えば、紫外線カットフィルタ)があるが、それらの特性を持つフィルタを上記防塵フィルタとして用いれば、レンズにフィルタを装着する必要がなくなる。
【0020】
防塵フィルタやその挿抜機構の構造は上記のものに限定されない。例えば防塵フィルタの先端を挿抜口に挿通すると、自動的にフィルタが正規の装着位置まで搬送されるよう構成してもよい。またイジェクト機構を設け、イジェクトボタンを操作することで防塵フィルタを取り出すようにしてもよい。あるいは、何らかの工具を用いて防塵フィルタを挿抜する構成でもよい。フィルタ挿抜口の位置もカメラ側面に限定されず、例えば底面であってもよい。
【0021】
図5は本発明の他の実施形態を示している。なお、先の実施形態と同様の構成要素には、同一の符号を用いて説明する。
本実施形態では、板状の防塵フィルタに変えて、ロール状の防塵フィルムを用いる。防塵フィルム50は透明フィルムから成り、フィルムカメラに用いられる35mmフィルムやAPSフィルムのように軸61に巻回された状態でカメラ本体の一端側に設置される。軸61から引き出されたフィルム50は、撮像ユニット10の前面を通り、カメラ本体1の他端側に設けられた軸62に巻き付けられる。軸61,62は、それぞれ巻き取りダイアル63,64の操作により回転可能とされ、軸62の回転により防塵フィルム50は軸62に巻き取られ、その軸間部分はA方向に給送される。また軸61の回転により防塵フィルム50は軸61に巻き取られ、軸間部分はA方向と逆方向に給送される
【0022】
防塵フィルム50の軸間部分の一部は、平面状態で撮像ユニット10の光学フィルタ12の前面を覆い、上述と同様に光学フィルタ12へのゴミの付着を防止する。撮影を繰り返すうちに防塵フィルム50にゴミが付着したら、巻き取りダイアル64の操作により防塵フィルム50を所定量給送し、ゴミのついていない新しい面を光学フィルタ12の前面に位置させる。これによりゴミの影響を防止できる。防塵フィルム50が終端まで巻き取られたら、巻き取りダイアル63の操作により軸61に巻戻し、新品のフィルム50と交換する。
なお、防塵フィルム50がカメラの光学性能に何ら悪影響を与えないことは先の実施形態と同様である。
【0023】
ここで、35mmフィルムやAPSフィルムと同様に、防塵フィルム50を予めカートリッジに格納した状態で用意しておき、かつカメラにそのカートリッジの挿脱機構を設ければ、ユーザが必要に応じて防塵フィルム50を交換でき、便利である。一方、ユーザによる防塵フィルム50の交換は認めず、サービスセンタでカメラを分解して交換するようにしてもよい。この場合は、サービスセンタにカメラを持ち込む不便さがあるものの、カメラにフィルム挿脱機構を設けずに済むため、コストダウンが図れる。サービスセンタへの持ち込みにしても、1本の防塵フィルムを最後まで使い切るまでに長期間の撮影が可能であるため、持ち込む回数はごく少なくて済む。
【0024】
なお、上記2つの実施形態の構造は、いずれも非一眼レフタイプの電子カメラ(例えば、レンズシャッタカメラ)にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態における電子カメラの構造を示す概略図。
【図2】電子カメラにおける防塵フィルタの挿脱構造を示す斜視図で、フィルタ挿入途中の状態を示す。
【図3】図2と同様の図で、フィルタ装着状態を示す。
【図4】電子カメラのフィルタ挿抜口付近を示す図。
【図5】ロール状の防塵フィルムを用いた他の実施形態における電子カメラを示す斜視図。
【符号の説明】
【0026】
1 カメラ本体
1a 凹部
1B 蓋
1b 防塵フィルタの挿抜口
2 撮影レンズ
3 メインミラー
4 フォーカシングスクリーン
5 ペンタプリズム
6 接眼レンズ
7 フォーカルプレーンシャッタ
10 撮像ユニット
11 撮像素子
12 光学フィルタ
20 防塵フィルタ
21 枠
22 透明板
31 ガイドレール
50 防塵フィルム
61,62 軸
63,64 巻き取りダイアル
P 挿抜通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体光束を受光して光電変換する撮像素子を含み、カメラ本体内部に設置される撮像ユニットと、
該撮像ユニットへのゴミの付着を阻止するために、該撮像ユニットの光入射面の直前に挿入可能な光透過性の防塵部材とを有し、
該防塵部材を前記光入射面の直前の空間に挿抜するための挿抜口をカメラ本体の外面に設けて成ることを特徴とする電子カメラ。
【請求項2】
前記挿抜口を露出/隠蔽する開閉蓋を設けたことを特徴とする請求項1に記載の電子カメラ。
【請求項3】
被写体光束を受光して光電変換する撮像素子を含み、カメラ本体内部に設置される撮像ユニットと、
該撮像ユニットへのゴミの付着を阻止するための透明の防塵フィルムとを備え、
前記防塵フィルムは、両端側が2つの軸にそれぞれ巻回され、その軸間部分が前記撮像ユニットの光入射面の直前に位置するよう配置されるとともに、前記一方の軸を回転することで、前記防塵フィルムを前記撮像ユニットに対して給送可能としたことを特徴とする電子カメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−80979(P2006−80979A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−263918(P2004−263918)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】