電子スイッチを使用した定在波線形加速器のインターリーブするマルチエネルギーX線のエネルギー操作
本開示は、電子スイッチの発熱が好都合に低い、少なくとも2つの異なるエネルギー領域のX線の生成に使用するための定在波線形加速器(LINAC)の高速切り替え操作のためのシステムおよび方法に関する。ある実施形態では、LINACの高速切り替え操作中、電子スイッチの発熱は、定在波LINACのそれぞれの側面空洞内に配置されている複数の電子スイッチの制御され、タイミング調整された起動により、または電子スイッチを含む変更された側面空洞の使用により、好都合に低く維持することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本出願は、2009年7月8日に出願された、「Interleaving Multi−Energy X−Ray Energy Operation of a Standing Wave Linear Accelerator Using Electronic Switches」という名称の米国特許出願第12/499,644号の利益を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、少なくとも2つの異なるエネルギー領域におけるX線生成に使用するための定在波線形加速器の高速切り替え操作のためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
線形加速器(LINAC)は、放射線療法および撮像などの医学的用途、ならびにX線写真術、貨物検査および食品滅菌などの工業的用途のための有益な手段である。これらの用途のいくつかでは、LINACで加速された電子ビームは、手順の実施または分析のために、対象のサンプルまたは目標に向けられる。しかし、これらの用途の多くでは、手順の実施または分析のために、X線を使用することが好ましい。これらのX線は、電子ビームをLINACからX線放出目標に向けることによって生成される。
【0004】
スペースの可用性のために、ほとんどの医療機器は、定在波LINACが進行波LINACよりも小型化が可能であるため、電子を加速するために定在波LINACを使用する。いくつかの医学的用途では、分析または手順の実施のために、2つ以上のエネルギー帯のX線が望ましいことがある。従って、異なる平均エネルギーを有する電子の交流出力を生成するために操作可能なLINACが望ましい。理論上は、異なるエネルギー帯のX線は、異なるピークエネルギーを有する電子を用いて生成されてもよい。しかし、定在波LINACの加速構造は、通常、加速器が効率的に動作している場合に限られた数の許容モードのみをサポートするように構成され、そのうちの1つだけがビームを効率的に加速することができる。所望の用途のために、十分に高い電子線量率で、異なるエネルギーで電子を出力するように安定して操作することができる機器を開発することは困難であった。
【0005】
マルチX線のエネルギー操作のため、医療LINACでは一般にエネルギースイッチが使用される。直線運動アクチュエータで作動される金属製プランジャーを備える機械式のエネルギースイッチが、多くの内科的治療機器で使用される。8時間の典型的な操作では、2つのエネルギーがインターリーブされる場合、スイッチを約1000万回起動する必要がある場合があり、これは、機械スイッチの寿命を制限する可能性がある。電子スイッチは、機械スイッチより速い切り替え時間とより長い耐用年数を有することができる。しかし、電子スイッチは、LINACの高速切り替え操作中に、過熱する傾向がある可能性がある。
【0006】
本明細書では、好都合に低発熱の電子スイッチを備えたLINACのマルチX線エネルギー操作のためのシステムおよび方法が開示される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示の通り、加速器の側面空洞に配置された電子スイッチでの発熱が好都合に低く維持されるように、定在波線形加速器の高速切り替え操作で使用されるシステムおよび方法が提供される。そのシステムおよび方法は、第1組の電子を加速器の縦導管(longitudinal passageway)に注入することであって、その加速器が複数の主空洞および複数の側面空洞を備え、各側面空洞が、複数の主空洞の2つの隣接する主空洞と連通し、その縦導管がその複数の主空洞と連通し、その複数の側面空洞の少なくとも2つの側面空洞の各々が電子スイッチを備え、それによって、少なくとも2つの離調可能な側面空洞を提供し、第1組の電子が、その加速器内に結合される電磁波によって縦導管内で加速され、その離調可能な側面空洞の電子スイッチが第1の起動状態に起動される時に、その第1組の電子が加速器から第1エネルギーで放出される、第1組の電子が縦導管に注入されることと、少なくとも2つの離調可能な側面空洞の電子スイッチが、実質的に同時に第2起動状態に起動されることと、第2組の電子が、第1エネルギーとは異なる第2エネルギーで加速器から放出される、第2組の電子を縦導管内に注入することとを含む。そのシステムおよび方法は、第1組の電子を縦導管に注入する前に、離調可能な側面空洞の電子スイッチを、実質的に同時に、第1起動状態に起動することをさらに含むことができる。電子スイッチは、第1組の電子を注入する前に、少なくとも1切り替え時間の時間間隔で、第1の起動状態に起動することができる。加速器は、3つ以上の離調可能な側面空洞を含むことができる。
【0008】
前述のシステムおよび方法では、電子スイッチが第1起動状態に起動される場合、離調可能な側面空洞は、離調することができるか、または動作周波数に同調することができる。電子スイッチは、第2の組の電子を注入する前に、少なくとも1切り替え時間の間隔で、第2起動状態に起動することができる。少なくとも2つの離調可能な側面空洞は、電子スイッチが第2起動状態に起動される場合、離調することができるか、または動作周波数に同調することができる。離調可能な側面空洞は、加速器の側面に相互に隣接して配置することができる。離調可能な側面空洞は、加速器の両側に対角線状に相互向かい合うように配置することができる。ある実施形態では、電子スイッチは、第1電流を電子スイッチに印加することにより、第1起動状態に起動することができる。前述の実施形態では、電子スイッチを第2の起動状態に起動するステップは、第2電流を電子スイッチに印加することを含むことができ、第1電流は第2電流とは異なる。ある実施形態では、電子スイッチは、導電性部材を含むことができ、その導電性部材は、離調可能な側面空洞の内部に配置される。前述の実施形態では、離調可能な側面空洞の外部に延出する電子スイッチの端部は、少なくとも1つの同軸伝送線路に接続することができる。電子スイッチは、第1同軸伝送線路を各電子スイッチに接続することにより、第1の起動状態に起動することができる。電子スイッチを第2の起動状態の電子スイッチに起動するステップは、第2同軸伝送線路の各電子スイッチへの接続を含み、第1同軸伝送線路は第2同軸伝送線路と異なる。
【0009】
定在波線形加速器も開示され、それは、複数の主空洞および複数の側面空洞を含み、その側面空洞の各々が複数の主空洞の2つの隣接する主空洞に連結し、その複数の側面空洞の少なくとも1つの側面空洞が電子スイッチを備え、それによって、少なくとも1つの離調可能な側面空洞を提供し、少なくとも1つの離調可能な側面空洞のリアクタンスが、加速器に結合された電磁波の存在下で、電子スイッチが起動されていない場合に、電子スイッチを備えていない側面空洞のリアクタンスと実質的に同様になるように、少なくとも1つの離調可能な側面空洞が構成される。少なくとも1つの離調可能な側面空洞が1つ以上のポストをさらに備え、その少なくとも1つの離調可能な側面空洞のリアクタンスが、加速器に結合された電磁波の存在下で、電子スイッチが起動されていない場合に、電子スイッチを備えていない側面空洞のリアクタンスに実質的に似ているように、そのポストが構成される。少なくとも1つの離調可能な側面空洞が、1つ以上のポストをさらに備え、その離調可能な側面空洞は銅を含み、1つ以上のポストの材料は銅合金、真鍮、セラミック、またはそれらの組み合わせである。
【0010】
本明細書で開示の通り、電磁波をその加速器に結合することであって、その加速器が複数の主空洞および複数の側面空洞を備え、その側面空洞の各々が複数の主空洞の2つの隣接する主空洞に連結し、複数の側面空洞の少なくとも1つの側面空洞が電子スイッチを備え、それにより、少なくとも1つの離調可能な側面空洞を提供し、その少なくとも1つの離調可能な側面空洞のリアクタンスが、加速器に結合された電磁波の存在下で、電子スイッチが起動されていない場合に、電子スイッチを備えていない側面空洞のリアクタンスと実質的に同様になるように、少なくとも1つの離調可能な側面空洞が構成される、電磁波をその加速器に結合することと、電子の組が加速器からあるエネルギーで放出される、電子の組を加速器へ注入することとを含む、定在波線形加速器を操作するためのシステムおよび方法も提供される。電子スイッチは、電磁波を加速器に結合する前に、起動することができる。電子スイッチは、電流を電子スイッチに印加することにより起動することができる。ある実施形態では、電子スイッチは導電性部材を含むことができ、その導電性部材は、離調可能な側面空洞の内部に配置される。前述の実施形態では、電子スイッチの端部は、離調可能な側面空洞の外部に延出することができ、その電子スイッチの端部は、少なくとも1つの同軸伝送線路に連結することができる。電子スイッチは、同軸伝送線路を電子スイッチの端部に結合することにより起動される。
【0011】
本明細書で開示の通り、加速器の側面空洞に配置されている電子スイッチでの発熱が好都合に低くなるように、定在波線形加速器の高速切り替え操作で使用するためのシステムおよび方法もまたが提供される。その方法は、第1組の電子を加速器の縦導管に注入することであって、その加速器が複数の主空洞および複数の側面空洞を備え、その側面空洞の各々がその複数の主空洞の2つの隣接する主空洞と通信し、その縦導管が複数の主空洞と連通し、その複数の側面空洞の少なくとも1つの側面空洞の各々が電子スイッチを備え、それによって少なくとも1つの離調可能な側面空洞を提供し、その少なくとも1つの離調可能な側面空洞のリアクタンスが、その加速器に結合された電磁波の存在下で、その電子スイッチが起動されていない場合に、電子スイッチを備えていない側面空洞のリアクタンスと実質的に同様になるように、その少なくとも1つの離調可能な側面空洞が構成され、その第1組の電子が、その加速器に結合されている電磁波によって縦導管内で加速され、その第1組の電子が、電子スイッチが起動されていない間に、加速器から第1エネルギーで放出される、第1組の電子を加速器の縦導管に注入することと、その少なくとも1つの離調可能な側面空洞の電子スイッチを起動することと、第2組の電子が、第1エネルギーと異なる第2エネルギーで、加速器から放出される、第2組の電子を縦導管に注入することとを含む。電子スイッチは、第2組の電子の注入前に、起動することができる。電子スイッチは、電流をその電子スイッチに印加することによって起動することができる。ある実施形態では、電子スイッチは、導電性部材を含むことができ、その導電性部材は、離調可能な側面空洞の内部に配置される。前述の実施形態では、電子スイッチの端部は、離調可能な側面空洞の外部に延出し、その電子スイッチの端部は、少なくとも1つの同軸伝送線路に接続することができる。その電子スイッチは、同軸伝送線路を電子スイッチの端部に結合することにより起動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】定在波LINAC構造の加速構造の断面図である。
【図2A】定在波LINACの加速主空洞における電場振幅の変動のプロットである。
【図2B】電子スイッチが起動されている定在波LINACの加速主空洞における電場振幅の変動のプロットである。
【図3】第1態様に従ったLINACの操作の流れ図である。
【図4】2つの離調可能な側面空洞が、LINACの側面に相互に隣接して配置されている定在波LINACを示す図である。
【図5】3つの離調可能な側面空洞を備える定在波LINACを示す図である。
【図6】4つの離調可能な側面空洞を備える定在波LINACを示す図である。
【図7A−7B】離調可能な側面空洞の断面図である。
【図8】第2態様に従ったLINACの操作の流れ図である。
【図9】方法の実装で使用するためのコンピュータシステム例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
加速器の側面空洞内に配置されている電子スイッチの発熱が好都合に低くなるように、定在波LINACの高速切り替え操作のためのシステムおよび方法が提供される。
【0014】
定在波LINACは、特定の平均エネルギーを有する電子を生成することによって作動する。作動中、電子銃(4.1節で説明)によって定在波LINACに注入される電子は、加速構造(以下の1節で説明)に注入される電磁波の電場を用いて、定在波LINACの加速構造の縦軸に沿って加速される。電磁波は、クライストロンまたはマグネトロンなどのマイクロ波の外部源から加速構造に結合される(4.3節で説明)。加速構造は、電磁波の定在波モードをサポートするように構成される。電子は、加速構造を横切るときに、高エネルギー電子ビームを生成するための電磁波の電場および磁場成分により電子に与えられた力によって、LINACの加速構造の一連の主空洞内で合焦されて加速される。1.1節で説明する通り、定在波LINACからの電子ビーム出力のエネルギーは、加速構造の側面空洞内に配置されているスイッチを用いて制御することができる。
【0015】
2つ以上の異なるエネルギーで電子ビームを生成するために定在波LINACの高速切り替え操作を伴う、インターリーブ操作中に、電子スイッチが過熱する可能性がある。電子スイッチは、電子スイッチが起動される時、電子スイッチの最適作動温度よりもずっと高温まで、またはさらに高温まで、加熱される可能性がある(1.1節で説明)。本明細書で開示のシステムおよび方法は、電子スイッチの制御され、タイミング調整された起動を通して、LINACの高速切り替え操作中に、複数の電子スイッチでの発熱の低減を提供する(2.1節でさらに詳細に説明)。2.1節で説明の通り、複数の電子スイッチを、実質的に均等に、マイクロ波パワー損失を共有することができる。また、本明細書では、側面空洞の変更を通じて、LINACの高速切り替え操作中に、側面空洞内に配置されている電子スイッチの発熱を低減するための方法(2.2節を参照)も開示される。
【0016】
〔1.定在波線形加速〕
本明細書で説明されるのは、電子スイッチを備える定在波LINACである。例示的な側面結合型(side−coupled)定在波LINAC構造の断面図を図1に示す。側面結合型定在波LINACは、縦導管10および加速構造の中心ボア(central bore)に沿って配置された複数の電磁結合した共振主空洞12、14、16、18を有する加速構造1を備える。縦導管10は、加速構造の中心を伸びている。当業者は、本明細書の定在波LINACは、図1に示すよりも多いかまたは少ない主空洞を有することができることを理解するであろう。例えば、定在波LINACは、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、またはそれ以上の主空洞を持つことができる。主空洞12、14、16、18は、縦導管10を中心とするトロイド(toroid)のような形状をしている。主空洞の隣接する対は、開口部を介して側面空洞により電磁結合している。側面空洞には2種類ある。側面空洞32(図1に示す)などの電子スイッチを備える第1タイプの側面空洞は、開口部13aおよび13bを介して隣接する主空洞12および14を連結する。側面空洞36(図1に示す)などの電子スイッチを備えていない第2タイプの側面空洞は、開口部17aおよび17bを介して隣接する主空洞16および18を連結する。側面空洞は、例えば、ほぼ立方体、ほぼ円筒、ほぼ長方形、または当業者が適切と考える任意の他の形状とすることができる。以下の1.1節で説明する通り、側面空洞32は、定在波LINACから放出される電子のエネルギーを同調するために使用される電子スイッチを備えている。定在波LINAC構造は、入口空洞(entrance cavity)50および出口空洞52も備えることができる。入口空洞50および出口空洞52は各々、基本的に、主空洞の半分の形状を取ることができる。ある実施形態では、入口空洞50および出口空洞52は、それぞれが異なる周波数に同調された、完全な空洞とすることができる。入口空洞50および出口空洞52の各々は、縦導管と同様なサイズのビーム孔を持つ、有限厚の端壁を持つことができる。
【0017】
作動中、電磁波は、加速構造1の約π/2モードの共振周波数で、定在波LINACに結合される。一般に、加速構造は、通常0.3GHzと300GHzとの間のマイクロ波周波数で共振する。通常、マイクロ波は、マイクロ波源から絞り(iris)またはテーパー結合(図示せず)を介して縦導管に沿って通じている点で、主空洞の1つに結合されている。マグネトロンまたはクライストロンなど、マイクロ波周波数での電磁波源について、4.3節で説明する。ある実施形態では、電磁波は、加速構造の上部または下部の開口部を通って主空洞の1つ、または側面空洞の1つを置き換えるテーパーまたは結合を通って2つの主空洞に結合することができる。後者の場合、隣接する主空洞は、π位相がずれて、その隣接する主空洞への結合が、磁場が反対方向である方形導波管の広い壁の反対側にある2つの開口部で行うことができる。
【0018】
マイクロ波の周波数は、入力電磁波の定在波が、加速構造1において加速構造の許容モードで励起されるほどである。加速構造は、その加速構造の許容モードが、各側面空洞とその隣接する下流側の主空洞との間で、または主空洞と下流側の側面空洞との間で、π/2ラジアン位相がずれた定在波共振になるように、構成することができる。従って、ある実施形態では、隣接する主空洞12、14、16、18の間にπラジアンのずれがある。この定在波モードは、共振周波数を、偶然に励起される場合がある隣接モードから最大の分離を提供することができる。すなわち、π/2モードは、光速の約半分と光速との間の位相速度のための、望ましい並列インピーダンス、広いモード分離、およびゆるい公差を提供することができ、それらは小型LINACのために有用である可能性がある。しかし、当業者は、本明細書で開示されたシステムおよび方法に従って他の位相シフトが使用することができることを理解することができる。例えば、本明細書で開示されるシステムおよび方法は、三重周期(triperiodic)LINAC構造にも適応でき、それは、周期毎に3つの空洞、空洞毎に2π/3位相進み、および軸外に配置されているか、または軸上に配置されている場合には長さが大幅に縮んでいる2空洞おきにノードを備える。この例では、ノードを有する3番目の空洞は、1節および2節で説明する通り、加速構造の下流側の部分を分離するために、同調され得る。別の例では、本明細書で開示されるシステムおよび方法は、本明細書で説明する離調可能な側面空洞と同様の機能を実行する軸上の結合空洞を備えるπ/2モードで、二重周期型(biperiodic)定在波構造にも適用することができる。この例では、軸上の結合空洞は、例えば、それらのサイズを変更することにより、1節および2節で説明する通り、加速構造の下流側の部分を分離するために、同調することができる。
【0019】
電子ビーム2が、電子銃源(図示せず)により、入口空洞50近くで縦導管10に注入される。電子銃については、以下の4.1節で説明する。電子ビーム2は、連続的またはパルス状のいずれでもよい。特定の実施形態では、電子ビームはパルス状である。加速構造1は、入口空洞50と主空洞12、14、16、18との間に配置されるバンチング空洞も備えてもよい。バンチング空洞は、そのバンチング空洞内の電磁波の電場が電子ビームをまとめてバンチを形成し、電子を合焦させて加速させるように、構成することができる。最初の連続ビームからの電子バンチの形成は、電子がバンチング空洞を横切るときに起こり、そのバンチングが、加速主空洞内の加速電場によって著しく低下されないように、システムを構成することができる。主空洞12、14、16、18の間の間隔が、マイクロ波の自由空間波長の約半分になるように、加速構造1が構成されて、マイクロ波の周波数が選択される。注入された電子ビーム2(電子バンチを含む)が、各主空洞内で出口空洞52に向かって加速されて、空洞内のマイクロ波の電場が、追加の前方向加速度を電子ビーム2にかける位相にある時に、1つの主空洞12内で加速された電子が、次の主空洞14に達する。電子ビーム2(電子バンチを含む)は、通常、最初の数個の主空洞内で、ほぼ光速まで加速される。残りの主空洞内で定在波の電場成分によって加えられる加速度は、電子エネルギーをさらに増大させる(すなわち、それらの相対論的質量を増加させる)。
【0020】
加速された後、電子ビーム2は、出口空洞52から定在波LINAC構造から放出される。X線放射を使用する用途では、放出される電子ビーム2は、X線ターゲット(図示せず)に向けられる可能性がある。X線の生成およびターゲット例については、以下の3節で説明する。もう1つの方法として、金属薄膜を備える真空窓を、目標の粒子照射のために電子ビーム2を伝送するため、出口空洞52に設置してもよい。
【0021】
〔1.1 側面空洞内のスイッチを用いた電子出力エネルギーの制御〕
主空洞12、14、16、18の全てが同様で、縦導管10に関してほぼ軸方向に対称であって、側面空洞の全てが側面空洞30または側面空洞36と同様な場合、各主空洞内の電場は、他の主空洞内の場と実質的に同じであろう。結果として、電子ビーム2は、全ての主空洞内で最大の電場振幅(および、従って最大の前方向加速度)を経験するであろう。図2Aは、電子があらゆる主空洞内で加速される操作中に、定在波LINACの加速構造の縦導管に沿った軸位置の関数として、各主空洞内で電子ビームに作用する電場振幅の変動を示す。LINACの出口空洞から放出される電子ビームは、定在波LINACシステムの最大到達可能な最終出力エネルギー近くまで加速される。
【0022】
異なるエネルギーでの出力電子ビームが望ましい場合は、定在波LINACの下流部分の定在波を、より小さい加速度が電子ビームに作用するように、分離することができる。これを達成するには、2つの隣接する主空洞間の共振結合を、制御可能な程度分離するために、側面空洞の1つを、その2つの隣接する主空洞に関して非対称にすることができる。側面空洞内に配置されたスイッチは、その共振結合を分離するために使用することができる。例えば、隣接する主空洞間の共振結合を分離するために、機械スイッチが使用でき、機械スイッチのプランジャーの機械的調整が側面空洞に挿入される(例えば、米国特許第4,629,938号を参照)。幾何学的非対称は、磁場成分が、下流側の主空洞に通じる開口部より上流側の主空洞に通じる開口部で大きくなるように、機械スイッチを備える側面空洞内に電磁場分布の非対称を生じさせる。機械スイッチを備える側面空洞に隣接する2つの主空洞内の加速電場成分の比率は、主空洞と側面空洞との間の各開口部の磁場の比率に関連する。例えば、機械式プランジャーを側面空洞に挿入する度合いを変化させるなど、磁場の対称性の乱れの度合いを変化させることにより、上流側の主空洞内の加速電場は本質的に変えずに、その側面空洞の下流側の主空洞内の加速電場の大きさを変えることができる。ある実施形態では、LINACに供給される電磁波のパワーも、スイッチを起動した後にまだ定在波をサポートする加速空洞の数に対して適切なレベルにまで、および、バンチャー空洞内の電磁場を好ましいレベルに維持するために、減らすことができる。バンチャー空洞は、かなり限定された範囲の電磁場に好ましく機能し、また、バンチャー空洞は、電磁場のパワーが変更されない場合、電子バンチ(電子の組)が、LINACの加速主空洞内で電磁波の頂部(crest)またはその近くにかかるように、電子バンチを適切に加速するように機能しない場合がある。そのバンチが電磁波の頂部またはその近くにかからない場合、出力電子のエネルギースペクトルは、幅が広がって、エネルギー安定性が悪化する可能性がある。
【0023】
図2Bは、側面空洞内のスイッチが起動されている操作中に、定在波LINACの加速構造の縦導管に沿った軸位置の関数として、各主空洞内で電子ビーム2に作用する電場振幅の変動を示す。起動されたスイッチの下流側に配置されている主空洞内の電磁波の電場成分の大きさが、大幅に低下している。結果として、電子ビームは、これら下流側の主空洞内でかなり小さい加速度を受け、より低い最終エネルギーを受けることになるであろう。LINACの出口空洞から放出される出力電子ビームのエネルギーは、定在波LINACシステムの最大到達可能エネルギーより低い。機械スイッチを使用する欠点は、機械スイッチの切り替え時間が遅くなりる可能性があることである。定在波LINACのインターリーブ操作では、少なくとも2つの異なる、好ましくは安定したエネルギーの電子ビームがLINACから連続して放出されるように、LINACを素早く、繰り返し切り替えることが望まれる。いくつかの用途では、切り替え時間は、ミリ秒の程度であってもよい。機械スイッチのプランジャーの操作にアクチュエータを使用することができるが、機械スイッチの比較的遅い切替時間が、LINACの切り替え速度を制限する要因となる。さらに、機械スイッチの寿命は限られている。機械スイッチの寿命を百万サイクルと仮定した場合、それをインターリーブ操作に使用しようとすると、約1時間の操作で使いきってしまう。
【0024】
電子制御を用いる電子スイッチは、ミリ秒程度で切り替えることができ、機械スイッチよりもはるかに高速である。しかし、電子スイッチによって中断されたマイクロ波パワーの流れのために、不都合な発熱が側面空洞内で生じる可能性がある。特に、電子スイッチの可変リアクタンスで消散されるマイクロ波パワーが電子スイッチの過熱を引き起こす可能性があり、それが装置を破壊する可能性がある。リアクタンスは、電子スイッチの容量性素子(容量性リアクタンス)および/または誘導成分(誘導性リアクタンス)の電磁波への抵抗からもたらされる可能性がある。リアクタンスは、電磁波の周波数によって変化することができる。パワー損失は、電子スイッチの温度を、スイッチが起動される時に最適な作動温度よりずっと高温まで上昇させる可能性があり、それが激しい加熱を引き起こす可能性がある。
【0025】
〔2.高速切り替え操作中の発熱を低減するためのシステムおよび方法〕
ある実施形態では、本明細書で説明されるのは、LINACの高速切り替え操作中に、(i)定在波LINACの各側面空洞にそれぞれ配置されている複数の電子スイッチの、制御されたタイミング調整された起動(2.1節で説明)、または(ii)電子スイッチを含むように側面空洞の変更(2.2節で説明)によって、複数の電子スイッチの発熱を好都合に低く保つために使用することができる方法およびシステムである。方法(i)または方法(ii)のいずれか、もしくは方法(i)と方法(ii)の両方の何らかの組み合わせを用いて操作されるシステムも、本開示の範囲内である。
【0026】
〔2.1 多数の離調可能な側面空洞〕
一態様では、本明細書では、好都合に低発熱の側面空洞の電子スイッチを備えた、定在波LINACの高速切り替えインターリーブ操作のための方法が提供され、そこで、LINACは、第1出力エネルギーと第2出力エネルギーとが交互になる電子ビームを放出するように操作される。その方法は、第1組の電子をLINACの縦導管内に注入して、その第1組の電子を電磁定在波を用いて第1出力エネルギーまで加速することと、2つ以上の離調可能な側面空洞の電子スイッチを実質的に同時に起動することと、第2組の電子を縦導管に注入して、その第2組の電子を第2出力エネルギーまで加速することとを含む。第1組の電子は、離調する側面空洞の電子スイッチが第1起動状態に起動される時に、LINACから第1エネルギーで放出される。第1起動状態では、電子スイッチは非アクティブであってもよく、または、本質的に電子スイッチを備えていない側面空洞のように、LINACに関連して作動する状態まで起動されてもよい。第2エネルギーが第1エネルギーと異なるように、電子スイッチの第2起動状態は、第1起動状態とは異なる。
【0027】
図1は、本態様に従って操作することができる離調可能な側面空洞を備える定在波LINACの加速構造を示す。LINACは、複数の主空洞および複数の側面空洞を備える。2つの側面空洞、側面空洞32および34は、本明細書では離調可能な側面空洞と呼ばれているが、各々が電子スイッチ40、42を備える。電子スイッチ40、42は、実質的に同時に、それぞれの離調可能な側面空洞32、34を離調するために、起動でき、それは、それぞれ離調可能な側面空洞32、34の下流側の電磁波の定在波伝搬を分離する。結果として、図2Bに示すプロットと同様の加速構造の縦軸に沿った分布を持つ電場が電子に作用して、定在波LINACから低エネルギーでの電子の出力をもたらす。
【0028】
図1に示されている電子スイッチ40、42はそれぞれ、導電性部材41などの、離調可能な側面空洞32、34内にそれぞれ延出する導電性部材に接続される。導電性部材は、導電性プロング(prong)または導電性ループであってもよい。導電性部材は、任意の電気伝導体を含んでもよい。導電性部材の一端は、離調可能な側面空洞の外部に延出でき、スイッチを用いて、その導電性部材の電気特性を変更することができる任意の種類の要素に接続されてもよい。例えば、導電性部材は、電子スイッチにより、1つ以上の同軸伝送ケーブルもしくは他の何らかの導体に接続されてもよい。電子スイッチが起動されると、取り付けられた要素(すなわち、同軸伝送ケーブルまたは他の導体)が離調可能な側面空洞のリアクタンスを変更する。変更されたリアクタンスは、離調可能な側面空洞のインピーダンス、従って、その共振周波数を変更する。もう1つの方法として、電子スイッチは、導電性部材への電流または電圧の印加により起動することができ、それも、離調可能な側面空洞のリアクタンスを変更することができる。電子スイッチの例としては、マイクロ波スイッチおよびPINダイオードスイッチが挙げられるが、それらに限定されない。
【0029】
電子スイッチがない場合は、2つの隣接する主空洞が、ほぼ均等で、相互にπラジアン位相がずれている場を持つため、側面空洞はほぼゼロの電場を持つ。側面空洞の各側面にある電場は反対の符号を持つため、側面空洞内の場は、隣接する主空洞の平衡を保つことができる。すなわち、側面空洞内の場は、2つの隣接する主空洞内の場の代数和に比例する。しかし、図1の離調可能な側面空洞32の開口部13aおよび13bなどの、離調された側面空洞の2つの開口部を結合する相互作用は、マイクロ波パワーが離調された側面空洞から漏れるようにすることができる。この漏れたマイクロ波パワーは、離調された側面空洞の下流側のLINACの部分全体で弱場を生成する。隣接する下流側の第2側面空洞を離調することにより、第1側面空洞を通して漏れるパワーは、これら2つの側面空洞間の主空洞内に集中されて、正しい位相で第1の離調された空洞の少し下流の主空洞内の場が増加し、第1の離調された空洞内の場が削減される。例えば、図1を参照すると、第1の離調可能な側面空洞32が離調されると(電子スイッチ40の起動により)、開口部13aおよび13bの相互作用により、離調可能な側面空洞32からパワーが漏れる。下流側の離調可能な側面空洞34を離調する(電子スイッチ42の起動により)ことにより、離調可能な側面空洞32を通って漏れるパワーが、主空洞14内に合焦されて、主空洞14内の場が正しい位相で増加し、離調可能な側面空洞32内の場が減少される。離調可能な側面空洞32内で削減されたこの場は、離調可能な側面空洞32の電子スイッチの発熱を好都合に低くさせる結果になる。2つの離調された側面空洞の適切な離調で、2つの離調された側面空洞内でマイクロ波パワーの消散を均一にすることが可能である。すなわち、2つの離調された側面空洞の適切な離調によって、複数の電子スイッチが、マイクロ波パワーの損失を、実質的に均等に共有することができる。第2の離調された側面空洞は、第1の離調された側面空洞の電子スイッチにおけるマイクロ波パワーの損失を減少させることができる。
【0030】
2つの離調可能な側面空洞32、34の電子スイッチ40および42を実質的に同時に起動することにより、これら2つの空洞での発熱を好都合に低く保つことができる。2つの離調された側面空洞を使用すると、離調された側面空洞の下流側のLINAC部分の分離を改善でき、それにより、分離された領域での加速電場の振幅を実質的に減少させて、電子の出力エネルギーの制御を提供する。2つの離調可能の側面空洞の使用は、上流側の離調可能な側面空洞での発熱を低減するのに役立つ。電子スイッチの切り替え時間は、マイクロ秒程度とすることができる。
【0031】
2つ以上の電子スイッチが、例えば、数マイクロ秒、数10マイクロ秒または数100マイクロ秒など、相互にマイクロ秒程度の時間間隔の範囲内で全てが起動される場合、それらは実質的に同時に起動することができる。例えば、2つ以上の電子スイッチは、相互に約10マイクロ秒またはそれ以内で起動することができる。ある実施形態では、2つ以上の電子スイッチを、相互に約1マイクロ秒またはそれ以下の時間間隔内ですべて起動することができる。電子スイッチからの基本的に瞬間的なパワー漏れにより、一度第1の離調可能な側面空洞が離調されると、第1電子スイッチの起動と第2電子スイッチの起動との間のより長時間の遅延によって、2つの側面空洞の離調からの何らか恩恵の有効性が減少する可能性がある。すなわち、より長時間の遅延の間に、第1の離調された側面空洞を通したパワー漏れが、その側面空洞の電子スイッチを損傷するほど深刻になる可能性がある。2つの電子スイッチを実質的に同時に起動すると、最初に離調された離調可能な側面空洞の電子スイッチにおける過熱の可能性が減少される。その結果、電子スイッチを実質的に同時に起動すると、電子スイッチの発熱を好都合に低くすることができる。
【0032】
2つの離調可能な側面空洞を実質的に同時に起動することのもう1つの可能性がある利点は、自動周波数制御装置(AFC)の応答である。AFCは、電磁波の同調を自動的に所望の周波数に維持することができる。側面空洞の頻繁な離調により、モード間の分離が失われる可能性があり、AFCは誤ったモード(離調された側面空洞のモードなど)に固定される可能性がある。2つの側面空洞を同時に起動すると、AFCが誤ったモードに固定されるリスクを低減する。
【0033】
電子スイッチの起動は、1つ以上の制御装置で制御されてもよい。電子スイッチのための制御装置は、それらのコマンドを、コンピュータシステム(コンピュータメモリに格納されているコマンドなど)から、コンピュータ可読媒体から、またはユーザー入力装置を通してユーザーから受信してもよい。制御装置は、電子スイッチ40、42に結合することができ、離調可能な側面空洞32、34の共振周波数を制御するように作動可能である。電子スイッチのための制御装置は、スイッチを所望の起動状態に起動するために、電子スイッチへの電流または電圧を変更するための電気回路を含む構成要素に接続することができる。電子スイッチ40、42を実質的に同時に起動させるために、制御装置は、各電子スイッチが、離調された側面空洞のLINACの下流側の部分を分離するそれぞれの起動状態に起動されるように、コマンドを発行し、それにより、分離した領域の加速電場を実質的に減少させて、電子の出力エネルギーに対する制御を提供する。電子スイッチを制御するためのコマンドを発行するその同じ制御装置は、定在波LINACの他の要素を操作するためのコマンドも発行してもよく、それは、電子銃からの電子の注入のタイミングおよびパルス長、銃の電流の振幅、タイミング、LINACに結合された電磁波のパルス長および振幅、ならびにAFCへの命令を含むがそれらに限定されない。別の例では、電子スイッチ制御コマンドを発行する制御装置は、LINAC操作コマンドを発行する制御装置から分離されていてもよい。2つ以上の制御装置は、方法のステップを実行するために好都合に通信し、同期されるであろう。
【0034】
1つ以上の制御装置は、定在波LINACおよび電子スイッチに対するコマンドを発行するようにプログラムされてもよく、そこで、前記加速器の側面空洞内に配置されている電子スイッチでの発熱が好都合に低くなるように、コマンドのステップの実行によってLINACの高速切り替え操作が行われる。図3は、電子スイッチおよびLINACのための1つ以上の制御装置によって発行されてもよいコマンドの流れ図を示す。図3のステップ100では、電子スイッチ40、42を実質的に同時に第1起動状態に起動するために、コマンドが電子スイッチ40、42に対して発行される。ステップ102では、第1組の電子をLINACの縦導管10に注入するため、コマンドが電子銃に対して発行される。ステップ104では、第1組の電子がLINACから第1エネルギーで放出されるようにLINACを操作するためにコマンドが発行される。ステップ104は、電磁波をLINACに結合するためのコマンドおよび/またはAFCを始動するためのコマンドを含むことができる。ステップ100、102、および104の間の時間間隔ならびに各ステップの順序は、結果として第1組の電子が所望の線量率および第1エネルギーで放出されるように選択することができる。長さが1m未満のLINACでは、第1組の電子がLINACのその長さを進むのに数ナノ秒(例えば、約3ns)かかる可能性があり、電磁波のLINAC内への充填時間は、およそ数百ナノ秒またはマイクロ秒程度(例えば、xバンドに対して約200ns、およびsバンドに対して約1μs)である可能性があり、電子スイッチの切り替え時間は、およそ数マイクロ秒〜数10マイクロ秒程度である可能性がある。従って、ある実施形態では、ステップ104(例えば、電磁波のLINACへの結合)は、ステップ100およびステップ102の前に実行することができる。ステップ106では、電子スイッチ40、42を第2起動状態に実質的に同時に起動するために、コマンドが発行される。ステップ108では、第2組の電子を縦導管10に注入するため、電子銃に対してコマンドが発行される。ステップ110では、第2組の電子がLINACから、第1エネルギーと異なる第2エネルギーで放出されるように、LINACを操作するためにコマンドが発行される。
【0035】
一実施形態では、電子スイッチ40、42は、離調された側面空洞の下流側のLINACの部分を分離する第1起動状態に起動することができ、その分離した領域での加速電場を実質的に減少させる。第1組の電子は、離調された側面空洞の上流側の主空洞内では、電磁波の電場の実質的に最大到達可能な振幅によって加速されることになり、離調された側面空洞の下流側の分離された領域では、削減された加速電場によって加速されることになる。この実施形態では、電子スイッチ40、42の第2起動状態は、第2組の電子が実質的に全ての主空洞内で、電磁波の電場の実質的に最大到達可能な振幅によって加速されるように、離調可能な側面空洞32、34の共振周波数を変更することができる。すなわち、電子スイッチ40、42は、それらが、電子スイッチを備えていない側面空洞(図1の側面空洞30、36などのように)として本質的に機能するように、共振状態に起動される。この実施形態では、第1エネルギーは第2エネルギーより低い可能性がある。
【0036】
第2エネルギーより大きな第1エネルギーを取得するための操作では、第2起動状態は、離調された側面空洞の下流側のLINACの部分を分離することができ、他方、第1起動状態は、第1組の電子が実質的に全ての主空洞内で、電磁波の電場の実質的に最大到達可能な振幅によって加速されるように、離調可能な側面空洞32、34の共振周波数を変更することができる。
【0037】
一例では、ステップ100〜110の全てを、電磁波の単一パルスの持続時間に実行することができる。例えば、電磁波のLINACへの充填時間中に、定常状態に注入されたビームをほとんど直ちに獲得するため、第1組の電子をLINACに注入する(ステップ102)ためのコマンドを発行することができる。電子スイッチは、その後、実質的に同時に、第2起動(ステップ106)に起動することができ、それは、離調可能な側面空洞の下流の主空洞内に電磁場を生じることができる。LINACの下流領域にある電磁場がまだ生じている間に、第2組の電子をLINACに注入するためのコマンドを発行することができ(ステップ108)、これによってビームエネルギーがほぼ直ちに、定常状態に注入されたビームを得ることができる。この例では、電磁波は、ステップ100の後であるがステップ102の前に、LINACに結合することができる。
【0038】
別の例では、ステップ100〜104は、電磁波の第1パルスの間に実行することができ、そして、ステップ106〜110は、電磁波の第2パルスの間に実行することができる。
【0039】
電子スイッチ40および42が同一のタイプであれば、それらは、各起動状態に対して、同様に起動することができる。すなわち、第1起動状態に達するために、電子スイッチ40および42は、同程度まで起動することができる。例えば、同一レベルの電流または電圧を各々に印加することができるか、または同一タイプの伝送線路(同軸ケーブル)が各々に取り付けられる。第2起動状態に達するために、電子スイッチ40および42は、第1起動状態とは異なる起動状態に、実質的に同時に起動することができる。例えば、同一レベルの電流または電圧が印加されるか、または伝送線路のタイプ(同軸ケーブル)が各々に取り付けられているが、それらは、第1起動状態に対して適用されものとは異なる。電子スイッチ40および42が異なるタイプの電子スイッチで、例えば、一方がマイクロ波スイッチで他方が電気機械スイッチの場合、その2つは異なる程度に起動することができるが、最終結果は、それら各々は、それぞれの離調可能な側面空洞のインピーダンスを本質的に同程度まで変更し、それぞれの離調可能な側面空洞の共振周波数に同様の影響を与える。
【0040】
図1の図では、定在波LINACは、対角線上に配置された2つの離調可能な側面空洞を含むが、当業者によって適切と考えられる任意の構成を使用することができる。例えば、方法は、図4に示す定在波LINACを用いても実行可能であり、そこでは、LINACの側面に相互に隣接して配置された、2つの離調可能な側面空洞の電子スイッチが実質的に同時に起動される。この配列では、離調可能な側面空洞は、約2πラジアンによって分離される。この配列は、結合したLINAC−離調可能な側面空洞がこの構成ではより狭いため、サイズまたはスペースの制約がある場合には、好ましい場合がある。
【0041】
さらに、本明細書で開示の方法に従い、3つ以上の離調された側面空洞が使用することができる。本明細書で説明した定在波LINACなどのπ/2二重周期型構造では、図1に示すような2つの隣接する側面空洞は、ほぼ半波長(πラジアン)離れている。図4に示すような離調された側面空洞は、1波長(2πラジアン)離れている。ある実施形態では、本明細書で開示のシステムおよび方法は、半波長の整数倍の離間した離調された側面空洞に適用することができる。特定の実施形態では、離調された側面空洞は、最大で約3/2波長(3πラジアン)まで離間し、または最大約2波長(4πラジアン)まで離間することができる。マイクロ波伝送線路では、半波長の約整数倍離れた2つのインピーダンスを、相互に並列して効果的に考慮することができる。それ故、適切な調整により、パワーの反射に伴う消散を2つ以上の離調可能な側面空洞間で分割することができるように、2つ以上の離調可能な側面空洞が、ほぼ均等な量のパワーを消散するようになすことができる。すなわち、電子的に離調する2つの隣接した離調可能な側面空洞がまだ、望ましくないか、または許容できない電子スイッチの発熱という結果をもたらしている場合には、第3の隣接する離調可能な側面空洞を離調することで、発熱の可能性をさらに削減するのに貢献することができる。従って、本明細書で開示の方法は、3つの離調可能な側面空洞を備えたLINACに適用可能である。図4は、対角線状に相互に向かい合うように配置された3つの離調可能な側面空洞を備えたLINACを示しているが、3つの他の配置が使用されてもよい。3つの離調可能な側面空洞は、2つの離調可能な側面空洞を備えたLINACについて前述したように、実質的に同時に起動することができる。さらに、本方法は、LINACの本体に対して任意の順列で配置された、4つ(図5に示す例など)以上の離調可能な側面空洞を備えたLINACに適用することができる。
【0042】
〔2.2 変更された離調可能な側面空洞〕
別の態様では、LINACが、実質的に全ての主空洞で、電磁波の電場の実質的に最大到達可能な振幅によって電子ビームが加速されるモードで操作される時に、離調可能な側面空洞の共振周波数を同調するために電子スイッチを起動する必要がないように、離調可能な側面空洞が変更されてもよい。1つ以上の変更された離調可能な側面空洞を備えたシステムは、LINACの高速切り替え操作中に電子スイッチでの好都合に低い発熱で操作されてもよい。特に、高エネルギー操作に関して起こる可能性がある過熱を回避するため、電子スイッチは、非離調(un−detuned)構造のような側面室と統合される。
【0043】
電子スイッチを備える側面空洞は、機械スイッチが高エネルギー操作で使用される場合、引き出されているマイクロ波パワーのために、機械スイッチが多量の発熱を経験しない場合があるという点において、機械スイッチを備えた側面空洞と異なる。上述の通り、過熱は、電子スイッチにとって問題となる可能性がある。電子スイッチが側面空洞の正確な同調のために使用される場合、電子スイッチは、加速器がその高エネルギーモードで操作されている時、側面空洞内の実行パワー(conducting power)である。すなわち、側面空洞内の電子スイッチは、たとえその側面空洞を離調するように起動されていなくても、若干の発熱を経験する場合がある。変更されていない側面空洞では、電子スイッチは、例えば、2つの異なるタイプの伝送線路間(その一方は側面空洞をLINACの共振周波数にするように同調され、他方は側面空洞を離調するように同調されている)で切り替えることにより、ある起動状態(最大到達可能なエネルギーの電子出力のため)と別の起動状態(より低エネルギーの電子出力のため)との間で切り替えられてもよい。このアプローチで、電子スイッチは、LINACの操作中に若干の発熱を経験する。
【0044】
この態様では、離調可能な側面空洞は、導電性部材が適切な位置にあるが、電子スイッチが起動されていない間に、その離調可能な側面空洞が、定在波LINACの共振周波数を持つように同調されるように、変更される。定在波線形加速器は、少なくとも1つの変更された離調可能な側面空洞(すなわち、電子スイッチを備える側面空洞)を備える。変更された離調可能な側面空洞は、変更された離調可能な側面空洞のリアクタンスが、LINACに結合された電磁波の存在下で、電子スイッチが起動されていない時に、電子スイッチを備えていない側面空洞のリアクタンスと実質的に同様になるように、構成される。すなわち、離調可能な側面空洞の容量性リアクタンスおよび/または誘導性リアクタンスを変更することができる。変更された離調可能な側面空洞は、電子スイッチのいずれも起動していなければ、本質的に定在波LINACのノードとして機能し、結果として、変更された離調可能な側面空洞におけるパワー損失が最小になるか、または全くなくなる。
【0045】
変更された離調可能な側面の電子スイッチが起動されている場合、その側面空洞は離調されて、その変更された離調可能な側面空洞の下流側の定在電磁波を分離する。結果として、2.1節で説明したとおり、LINACの縦導管に注入された電子の組は、下流側の主空洞内で著しく小さい加速度を受けて、より低いエネルギーで放出される。変更された離調可能な側面空洞の電子スイッチは、2.1節で上述したような、当技術分野で周知の任意の手段によって起動することができる。非限定的な例として、電子スイッチは、その電子スイッチへの電流の印加、その電子スイッチへの電圧の印加、または1つ以上の同軸伝送線路の接続により起動することができる。
【0046】
図7Aは、変更されていない離調可能な側面空洞70の一例を示し、それは、LINACの操作中に過熱する傾向があり得る。変更されていない離調可能な側面空洞は、電子スイッチ72、導電性部材74、およびポスト76を含む。導電性部材74は、導電性ループまたは導電性プロングとすることができる。ポスト76の表面は、相互に平行して並んでいる。図7Bは、導電性プロング84が適切な位置にあるが、電子スイッチ82が起動されていない間に、離調可能な側面空洞が、定在波LINACの共振周波数を持つように同調されるように変更されている、離調可能な側面空洞80の一例を示す。図7Bでは、ポスト86の表面が、変更された離調可能な側面空洞のリアクタンスを変更するために変更されて、変更された離調可能な側面空洞は、電子スイッチに対するパワー損失なしで、LINACの共振周波数で作動する。図7Bの例では、ポストの表面の形状が丸みを帯びた形状にされており、それは、その2つのポスト間のキャパシタンスを変更し、ひいては側面空洞のリアクタンスを変更し、この変更された離調可能な側面空洞は、電子スイッチが起動されていなければ、LINACの「ノード」のように動作する。丸みを帯びた形状が図7Bに描かれているが、結果的に、電子スイッチが起動されていない場合にLINACの「ノード」のように動作する、変更された離調可能な側面空洞をもたらす、任意の他の形態が、この態様に適用可能である。別の例では、キャパシタンス、およびひいてはリアクタンスを変更するために、変更された離調可能な側面空洞のポストの面が、互いにより近づけられるか、またはさらに離される。さらに別の例では、側面空洞のサイズ(および、それ故、量)を、その側面空洞のインダクタンス(および、ひいてはリアクタンス)を変更するために、変更することができる。さらに別の例では、導電性部材が適切な位置にあるが、電子スイッチが開回路(open circuited)である間に、離調可能な側面空洞が、LINACの共振周波数を持つように同調されるように、離調可能な側面空洞が変更される。例えば、異なる同軸ケーブルの接続によって離調されている離調可能な側面空洞に対して、同軸ケーブル内のXバンドでの波長が約1インチ(同軸コネクタから電子スイッチまでの距離)で、共振する場合があるため、それ故、加速器の動作周波数で非共振であるように同調される短い遅延線が付加されてもよい。さらに別の例では、ポストは、リアクタンスを変更するために、離調可能な側面空洞の残りの材料とは異なる材料(例えば、異なる金属もしくは合金、または、セラミック、またはそれらの混合物を含むがそれに限定されない誘電体などの、しかしそれに制限されない)で作られている。例えば、側面空洞の本体は銅で作ることができ、ポストは、銅合金、真鍮、セラミック、または他の適切な材料で作ることができる。
【0047】
図8は、変更された離調可能な側面空洞を備えたLINACの操作の流れ図を示す。図8のステップ200では、第1組の電子をLINACの縦導管10に注入するため、電子銃に対してコマンドを発行する。ステップ202では、第1組の電子がLINACから第1エネルギーで放出されるように、LINACを操作するためのコマンドが発行される。ステップ200と202の間の時間間隔および各ステップの順序は選択可能であり、その結果、第1組の電子が所望の線量率および第1エネルギーで放出される。ステップ204では、変更された離調可能な側面空洞の電子スイッチを起動するためにコマンドが発行され、それは、離調された側面空洞の下流側のLINACの部分を分離して、その分離した領域の加速電場を実質的に減少させる。ステップ206では、第2組の電子を縦導管10に注入するため、電子銃に対してコマンドが発行される。第2組の電子は、離調された側面空洞の上流側の主空洞では、電磁波の電場の実質的に最大到達可能な振幅によって加速され、そして、離調された側面空洞の下流側の分離された領域では、削減された加速電場によって加速されることになる。ステップ208では、第2組の電子がLINACから、第1エネルギーとは異なる第2エネルギーで放出されるように、LINACを操作するためのコマンドが発行される。
【0048】
この態様によるシステムは、2つ以上の変更された離調可能な側面空洞も備えてもよい。このLINACの操作では、第2組の電子を第2エネルギーで放出するために、2つ以上の変更された離調可能な側面空洞の電子スイッチを、前述のとおり実質的に同時に起動することができ、電子スイッチの好都合に低い発熱を達成する。
【0049】
〔3.X線〕
X線は、LINACからの加速された電子ビームまたは電子バンチによる標的材料の照射から生成される。X線は、2つの異なるメカニズムにより標的から生成することができる。第1メカニズムでは、原子の低エネルギーレベル(内殻)からの電子が原子を離れるように、LINACからの電子の標的原子への衝突が十分なエネルギーを分け与えて、低エネルギーレベルの空孔を作る。原子の高エネルギーレベルの電子は、低エネルギーレベルに降下してその空孔を埋め、その余分なエネルギーをX線光子として放出する。高エネルギーレベルと低エネルギーレベルとの間のエネルギー差は離散値であるため、これらのX線光子は、X線スペクトル内にくっきりとした線(特徴線と呼ばれる)で現れる。第2メカニズムでは、LINACからの電子ビームまたはバンチは、標的原子近くの強電場によって散乱されて、制動放射線を放出する。制動放射線は、連続スペクトルでX線光子を生成し、X線の強度は、入射電子のエネルギーでゼロから増大する。すなわち、LINACからの電子によって生成することができる最高エネルギーのX線は、それらがLINACから放出された時の電子の最高エネルギーである。制動放射線は、多く用途にとって、特徴線よりも興味深い可能性がある。
【0050】
X線生成の標的として有用な材料としては、タングステン、特定のタングステン合金(タングステンカーバイド、またはタングステン(95%)‐レニウム(5%)などがあるが、これらに限定されない)、モリブデン、銅、白金およびコバルトが上げられる。
【0051】
〔4.器具類〕
定在波LINACの操作で使用される場合がある特定の器具としては、電子銃、変調器、および電磁波源が挙げられる。
【0052】
〔4.1 電子銃〕
電子銃は、特定の運動エネルギーを有する1組の電子(または電子ビーム)を放出するために、電子放出器として使用される。電子銃は、当業者によって適切と考えられる任意の電子銃とすることができる。例えば、L3電子銃組立品、モデル番号M592(米国カリフォルニア州サンカルロス所在のL3 Communications Corporation)を使用することができる。電子銃は、電子ストリームを放出するための熱電子陰極を含むことができる。電子銃は、電子ストリームの焦点を合わせるための焦点調節部品も含んでもよい。例えば、電子ビームの焦点を合わせて、陽極(anode)の向こう側に現れる最小直径を持つ収束ビームを作り出すよう、電場を形成するために焦点電極が使用することができる。いくつかの電子銃では、焦点調整部品は、陽極と熱電子陰極との間に配置されているグリッドであり、それは、電子ストリームの直径を制御するための場を印加する。かかるグリッドは、陽極および陰極に共通の縦軸に対して同心に配置された開口部を持つことができる。いくつかの電子銃では、グリッドは、グリッドに印加される電圧に応じて、ビームの入り切りおよびビーム電流の制御が可能なインターセプト画面(intercepting screen)を含むことができる。陽極は、縦軸に同心の開口部も持つことができる。陽極の開口部の直径は、陰極の直径よりも小さい可能性がある。グリッドと陽極との間に収束軸電場を生成するために、陰極に関連してグリッドおよび陽極に電圧を印加でき、これにより、陰極から陽極に向かって増大する電流密度を有する電子の準層流(quasi−laminar)引き起こすことができる。電子銃に印加する電圧を下げると、電子銃から放出される電子の運動エネルギーを減少させることができる。
【0053】
〔4.2 変調器〕
変調器は、数マイクロ秒持続する高電圧パルスを生成する。これらの高電圧パルスは、電磁波源(以下の4.3節で説明)、電子銃(4.1節を参照)、または両方に同時に印加することができる。電源装置はDC電圧を変調器に提供し、変調器はこれを高電圧パルスに変換する。例えば、マグネトロンに関連して、Solid State Magnetron Modulator−M1または−M2(スウェーデン国ウプサラ所在のScandiNova Systems AB)を使用することができる。別の例では、クライストロンに関連して、Solid State Klystron Modulator−K1または−K2(スウェーデン国ウプサラ所在のScandiNova Systems AB)を使用することができる。
【0054】
〔4.3 マイクロ波発振器〕
電磁波源は、当業者によって適切と考えられる任意の電磁波源でよい。LINAC用の電磁波源(無線周波数(RF)帯域のマイクロ波内)は一般的に、マグネトロン発振器またはクライストロン増幅器のいずれかである。両方のタイプの器具において、RF源のサイズおよび出力能力は、おおよそ電磁波の波長に比例する。電磁波は、その振幅、周波数、または位相を変更することにより変更することができる。
【0055】
〔4.3.1 マグネトロン〕
マグネトロンは、数マイクロ秒間持続し、かつ毎秒数百パルスの繰り返し率でマイクロ波パルスを生成するように、高出力発振器として機能する。各パルス内のマイクロ波の周波数は、通常、約3,000MHz(Sバンド)または9,000MHz(Xバンド)である。超高ピークビーム電流または高平均電流に対しては、800〜1500MHz(Lバンド)のパルスを使用することができる。マグネトロンは、当業者によって適切と考えられる任意のマグネトロンとすることができる。例えば、CTL Xバンドパルスマグネトロン、モデル番号PM−1100X(米国カリフォルニア州ワトソンビル所在のL3 Communications、Applied Technologies)を使用することができる。通常、マグネトロンは、銅の固体片から機械加工された共振空洞を備え、中央に配置された陰極と外側の陽極を持つ円筒構造を有する。陰極と陽極との間の空間は真空にされている。陰極は、内部フィラメントによって加熱され、電子は熱電子放出によって生成される。静磁場が空洞の断面に対して垂直に印加され、パルスDC電場が陰極と陽極との間に印加される。陰極から放出された電子は、パルスDC電場の作用により、かつ、磁場の影響下で、陽極に向かって加速される。従って、電子は、複雑な螺旋を描くような動きで、共振空洞に向かって移動し、それらにマイクロ波の周波数で電磁波放射線を放射させる。生成されたマイクロ波パルスは、移動導波管(transfer waveguide)を経て、加速器構造に供給される。マグネトロンは、通常、低エネルギーLINAC(6MVまたはそれ以下)に動力を供給するため、1または2MVの最大出力で作動する。マグネトロンは、比較的安価とすることができ、小型化することができるため、多くの用途で有利であるが、出力と寿命が限られ、電磁波の周波数と位相に対して提供することができる制御が比較的制限されている。連続波マグネトロン装置は、約75〜85%の効率で、1GHzで約100kWの出力を有することができるが、パルス装置は約60〜77%の効率で作動することができる。マグネトロンは、位相に敏感でない場合がある単一セクションの低エネルギー線形加速器で使用することができる。マグネトロンは、通常、マイクロ波出力を安定化させるために、フィードバックシステムと共に使用される。
【0056】
〔4.3.2 クライストロン〕
クライストロンは、当業者によって適切と考えられる任意のクライストロンとすることができる。例えば、CPI Sバンドパルスクライストロン、モデル番号VKS−8262G(米国カリフォルニア州パロアルト所在のCommunications and Power Industries(CPI))を使用することができる。クライストロンは、DC電子ビームの運動エネルギーをマイクロ波パワーに変換することにより増幅器として機能する。熱電子陰極によって生成される電子ビーム(低仕事関数(low work function)材料の加熱ペレット)は、高圧電極(通常、数10〜数100キロボルト)によって加速される。この電子ビームは、その後、入力空洞を通過する。マイクロ波は、クライストロン空洞の自然共振周波数で、またはその付近で、クライストロンの入力空洞に注入される。マイクロ波の電場は、以前の連続電子ビームに入力周波数でバンチを形成させる。バンチングを強化するため、クライストロンは、追加のバンチャー空洞を含むことができる。電子ビームによって搬送されるマイクロ波周波数電流は、マイクロ波周波数磁場を生成し、それは、順に、それに続く共振空洞のギャップを越えて、電圧を励起する。出力空洞では、発生したマイクロ波パワーがクライストロンから出て、結合される。エネルギーが減少している、使用済みの電子ビームは、収集器で捕捉される。クライストロンからのマイクロ波出力はマイクロ波入力よりもずっと大きい(通常、50〜60db)可能性があるため、クライストロンは増幅器として機能し、結果的に、マイクロ波入力に関して位相が安定し得る増幅したマイクロ波パワーが得られる。クライストロンは増幅器であるため、出力マイクロ波の周波数および振幅の変更を素早く行うことができる。
【0057】
〔5.例示的な器具およびコンピュータプログラムの実装〕
本明細書で開示される方法の態様は、次のプログラムおよび方法に従って、本節で説明するコンピュータシステムなどのコンピュータシステムを用いて実行することができる。例えば、かかるコンピュータシステムは、本明細書で開示の方法に従って、電子スイッチを異なる起動状態に起動するために、制御装置に対するコマンド、またはLINACの様々な他の構成要素を操作するためのコマンドを格納および発行することができる。そのシステムおよび方法は、例えば、単一の汎用コンピュータ、または並列処理コンピュータシステム、またはワークステーション、またはネットワークシステム(例えば、図9に示すようなクライアント−サーバー構成)など、様々な種類のコンピュータアーキテクチャで実装されてもよい。
【0058】
本明細書で開示の方法を実装するために適切なコンピュータシステム例を図9に示す。図9に示すとおり、本明細書で開示された1つ以上の方法およびシステムを実装するためのコンピュータシステムは、例えば、他のローカルコンピュータシステムへのローカルエリアネットワーク(LAN)の部分、および/または他のリモートコンピュータシステムに接続されている、インターネットなどのワイドエリアネットワーク(WAN)の部分とすることができる、ネットワークリンクに接続することができる。ソフトウェア構成要素は、1つ以上のプロセッサに1つ以上の制御装置に対するコマンドを発行させるプログラムを含むことができ、それにより、その1つ以上の制御装置が、電子銃に第1組の電子をLINACの縦導管に注入させ、電子スイッチを起動状態に起動させ、そして、LINACを操作する(電磁波のLINACへの結合、およびAFCの始動のためのコマンドを含む)コマンドを発行する。例えば、システムは、1つ以上の制御装置に、2つ以上の電子スイッチを実質的に同時に、離調された側面空洞の下流側のLINAC部分を分離する(前述のとおり)起動状態に起動させるコマンドを受け取ることができる。プログラムは、システムに、方法のステップを指定の順序で、ステップ間を指定の時間間隔で実行するためのコマンドをデータ記憶(例えば、データベース)から取得させることができる。かかるデータ記憶は、大容量記憶(例えば、ハードドライブ)もしくは他のコンピュータ可読媒体に格納して、コンピュータにロードすることができ、また、データ記憶は、ネットワークを用いてコンピュータシステムによりアクセスすることができる。
【0059】
本明細書で説明した例示的なプログラム構造およびコンピュータシステムに加え、他の代替的なプログラム構造およびコンピュータシステムが当業者には容易に明らかであろう。かかる代替システムは、前述したコンピュータシステムおよびプログラム構造から精神および範囲のいずれにおいて逸脱することなく、それ故、添付の特許請求の範囲内に含まれることを意図するものである。
【0060】
〔引用文献〕
本明細書で引用した全ての参考文献は、各個々の公開または特許または特許出願が、具体的かつ個別にその内容全体が全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれることが示されているかのように、その内容全体が全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。本明細書における参考文献の考察または引用は、かかる参照が本発明の先行技術であることの承認として解釈されるものではない。
【0061】
〔変更〕
本発明の多くの変更および変形を、当業者には明らかであろうように、その精神および範囲から逸脱することなく実施することができる。本明細書で説明した特定の実施形態は、ほんの一例としてのみ提供されており、本発明は、添付の特許請求の範囲の条項、およびかかる特許請求の範囲が権利を与えられている均等物の完全な範囲によってのみ限定されるものとする。
【技術分野】
【0001】
〔関連出願の相互参照〕
本出願は、2009年7月8日に出願された、「Interleaving Multi−Energy X−Ray Energy Operation of a Standing Wave Linear Accelerator Using Electronic Switches」という名称の米国特許出願第12/499,644号の利益を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、少なくとも2つの異なるエネルギー領域におけるX線生成に使用するための定在波線形加速器の高速切り替え操作のためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
線形加速器(LINAC)は、放射線療法および撮像などの医学的用途、ならびにX線写真術、貨物検査および食品滅菌などの工業的用途のための有益な手段である。これらの用途のいくつかでは、LINACで加速された電子ビームは、手順の実施または分析のために、対象のサンプルまたは目標に向けられる。しかし、これらの用途の多くでは、手順の実施または分析のために、X線を使用することが好ましい。これらのX線は、電子ビームをLINACからX線放出目標に向けることによって生成される。
【0004】
スペースの可用性のために、ほとんどの医療機器は、定在波LINACが進行波LINACよりも小型化が可能であるため、電子を加速するために定在波LINACを使用する。いくつかの医学的用途では、分析または手順の実施のために、2つ以上のエネルギー帯のX線が望ましいことがある。従って、異なる平均エネルギーを有する電子の交流出力を生成するために操作可能なLINACが望ましい。理論上は、異なるエネルギー帯のX線は、異なるピークエネルギーを有する電子を用いて生成されてもよい。しかし、定在波LINACの加速構造は、通常、加速器が効率的に動作している場合に限られた数の許容モードのみをサポートするように構成され、そのうちの1つだけがビームを効率的に加速することができる。所望の用途のために、十分に高い電子線量率で、異なるエネルギーで電子を出力するように安定して操作することができる機器を開発することは困難であった。
【0005】
マルチX線のエネルギー操作のため、医療LINACでは一般にエネルギースイッチが使用される。直線運動アクチュエータで作動される金属製プランジャーを備える機械式のエネルギースイッチが、多くの内科的治療機器で使用される。8時間の典型的な操作では、2つのエネルギーがインターリーブされる場合、スイッチを約1000万回起動する必要がある場合があり、これは、機械スイッチの寿命を制限する可能性がある。電子スイッチは、機械スイッチより速い切り替え時間とより長い耐用年数を有することができる。しかし、電子スイッチは、LINACの高速切り替え操作中に、過熱する傾向がある可能性がある。
【0006】
本明細書では、好都合に低発熱の電子スイッチを備えたLINACのマルチX線エネルギー操作のためのシステムおよび方法が開示される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示の通り、加速器の側面空洞に配置された電子スイッチでの発熱が好都合に低く維持されるように、定在波線形加速器の高速切り替え操作で使用されるシステムおよび方法が提供される。そのシステムおよび方法は、第1組の電子を加速器の縦導管(longitudinal passageway)に注入することであって、その加速器が複数の主空洞および複数の側面空洞を備え、各側面空洞が、複数の主空洞の2つの隣接する主空洞と連通し、その縦導管がその複数の主空洞と連通し、その複数の側面空洞の少なくとも2つの側面空洞の各々が電子スイッチを備え、それによって、少なくとも2つの離調可能な側面空洞を提供し、第1組の電子が、その加速器内に結合される電磁波によって縦導管内で加速され、その離調可能な側面空洞の電子スイッチが第1の起動状態に起動される時に、その第1組の電子が加速器から第1エネルギーで放出される、第1組の電子が縦導管に注入されることと、少なくとも2つの離調可能な側面空洞の電子スイッチが、実質的に同時に第2起動状態に起動されることと、第2組の電子が、第1エネルギーとは異なる第2エネルギーで加速器から放出される、第2組の電子を縦導管内に注入することとを含む。そのシステムおよび方法は、第1組の電子を縦導管に注入する前に、離調可能な側面空洞の電子スイッチを、実質的に同時に、第1起動状態に起動することをさらに含むことができる。電子スイッチは、第1組の電子を注入する前に、少なくとも1切り替え時間の時間間隔で、第1の起動状態に起動することができる。加速器は、3つ以上の離調可能な側面空洞を含むことができる。
【0008】
前述のシステムおよび方法では、電子スイッチが第1起動状態に起動される場合、離調可能な側面空洞は、離調することができるか、または動作周波数に同調することができる。電子スイッチは、第2の組の電子を注入する前に、少なくとも1切り替え時間の間隔で、第2起動状態に起動することができる。少なくとも2つの離調可能な側面空洞は、電子スイッチが第2起動状態に起動される場合、離調することができるか、または動作周波数に同調することができる。離調可能な側面空洞は、加速器の側面に相互に隣接して配置することができる。離調可能な側面空洞は、加速器の両側に対角線状に相互向かい合うように配置することができる。ある実施形態では、電子スイッチは、第1電流を電子スイッチに印加することにより、第1起動状態に起動することができる。前述の実施形態では、電子スイッチを第2の起動状態に起動するステップは、第2電流を電子スイッチに印加することを含むことができ、第1電流は第2電流とは異なる。ある実施形態では、電子スイッチは、導電性部材を含むことができ、その導電性部材は、離調可能な側面空洞の内部に配置される。前述の実施形態では、離調可能な側面空洞の外部に延出する電子スイッチの端部は、少なくとも1つの同軸伝送線路に接続することができる。電子スイッチは、第1同軸伝送線路を各電子スイッチに接続することにより、第1の起動状態に起動することができる。電子スイッチを第2の起動状態の電子スイッチに起動するステップは、第2同軸伝送線路の各電子スイッチへの接続を含み、第1同軸伝送線路は第2同軸伝送線路と異なる。
【0009】
定在波線形加速器も開示され、それは、複数の主空洞および複数の側面空洞を含み、その側面空洞の各々が複数の主空洞の2つの隣接する主空洞に連結し、その複数の側面空洞の少なくとも1つの側面空洞が電子スイッチを備え、それによって、少なくとも1つの離調可能な側面空洞を提供し、少なくとも1つの離調可能な側面空洞のリアクタンスが、加速器に結合された電磁波の存在下で、電子スイッチが起動されていない場合に、電子スイッチを備えていない側面空洞のリアクタンスと実質的に同様になるように、少なくとも1つの離調可能な側面空洞が構成される。少なくとも1つの離調可能な側面空洞が1つ以上のポストをさらに備え、その少なくとも1つの離調可能な側面空洞のリアクタンスが、加速器に結合された電磁波の存在下で、電子スイッチが起動されていない場合に、電子スイッチを備えていない側面空洞のリアクタンスに実質的に似ているように、そのポストが構成される。少なくとも1つの離調可能な側面空洞が、1つ以上のポストをさらに備え、その離調可能な側面空洞は銅を含み、1つ以上のポストの材料は銅合金、真鍮、セラミック、またはそれらの組み合わせである。
【0010】
本明細書で開示の通り、電磁波をその加速器に結合することであって、その加速器が複数の主空洞および複数の側面空洞を備え、その側面空洞の各々が複数の主空洞の2つの隣接する主空洞に連結し、複数の側面空洞の少なくとも1つの側面空洞が電子スイッチを備え、それにより、少なくとも1つの離調可能な側面空洞を提供し、その少なくとも1つの離調可能な側面空洞のリアクタンスが、加速器に結合された電磁波の存在下で、電子スイッチが起動されていない場合に、電子スイッチを備えていない側面空洞のリアクタンスと実質的に同様になるように、少なくとも1つの離調可能な側面空洞が構成される、電磁波をその加速器に結合することと、電子の組が加速器からあるエネルギーで放出される、電子の組を加速器へ注入することとを含む、定在波線形加速器を操作するためのシステムおよび方法も提供される。電子スイッチは、電磁波を加速器に結合する前に、起動することができる。電子スイッチは、電流を電子スイッチに印加することにより起動することができる。ある実施形態では、電子スイッチは導電性部材を含むことができ、その導電性部材は、離調可能な側面空洞の内部に配置される。前述の実施形態では、電子スイッチの端部は、離調可能な側面空洞の外部に延出することができ、その電子スイッチの端部は、少なくとも1つの同軸伝送線路に連結することができる。電子スイッチは、同軸伝送線路を電子スイッチの端部に結合することにより起動される。
【0011】
本明細書で開示の通り、加速器の側面空洞に配置されている電子スイッチでの発熱が好都合に低くなるように、定在波線形加速器の高速切り替え操作で使用するためのシステムおよび方法もまたが提供される。その方法は、第1組の電子を加速器の縦導管に注入することであって、その加速器が複数の主空洞および複数の側面空洞を備え、その側面空洞の各々がその複数の主空洞の2つの隣接する主空洞と通信し、その縦導管が複数の主空洞と連通し、その複数の側面空洞の少なくとも1つの側面空洞の各々が電子スイッチを備え、それによって少なくとも1つの離調可能な側面空洞を提供し、その少なくとも1つの離調可能な側面空洞のリアクタンスが、その加速器に結合された電磁波の存在下で、その電子スイッチが起動されていない場合に、電子スイッチを備えていない側面空洞のリアクタンスと実質的に同様になるように、その少なくとも1つの離調可能な側面空洞が構成され、その第1組の電子が、その加速器に結合されている電磁波によって縦導管内で加速され、その第1組の電子が、電子スイッチが起動されていない間に、加速器から第1エネルギーで放出される、第1組の電子を加速器の縦導管に注入することと、その少なくとも1つの離調可能な側面空洞の電子スイッチを起動することと、第2組の電子が、第1エネルギーと異なる第2エネルギーで、加速器から放出される、第2組の電子を縦導管に注入することとを含む。電子スイッチは、第2組の電子の注入前に、起動することができる。電子スイッチは、電流をその電子スイッチに印加することによって起動することができる。ある実施形態では、電子スイッチは、導電性部材を含むことができ、その導電性部材は、離調可能な側面空洞の内部に配置される。前述の実施形態では、電子スイッチの端部は、離調可能な側面空洞の外部に延出し、その電子スイッチの端部は、少なくとも1つの同軸伝送線路に接続することができる。その電子スイッチは、同軸伝送線路を電子スイッチの端部に結合することにより起動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】定在波LINAC構造の加速構造の断面図である。
【図2A】定在波LINACの加速主空洞における電場振幅の変動のプロットである。
【図2B】電子スイッチが起動されている定在波LINACの加速主空洞における電場振幅の変動のプロットである。
【図3】第1態様に従ったLINACの操作の流れ図である。
【図4】2つの離調可能な側面空洞が、LINACの側面に相互に隣接して配置されている定在波LINACを示す図である。
【図5】3つの離調可能な側面空洞を備える定在波LINACを示す図である。
【図6】4つの離調可能な側面空洞を備える定在波LINACを示す図である。
【図7A−7B】離調可能な側面空洞の断面図である。
【図8】第2態様に従ったLINACの操作の流れ図である。
【図9】方法の実装で使用するためのコンピュータシステム例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
加速器の側面空洞内に配置されている電子スイッチの発熱が好都合に低くなるように、定在波LINACの高速切り替え操作のためのシステムおよび方法が提供される。
【0014】
定在波LINACは、特定の平均エネルギーを有する電子を生成することによって作動する。作動中、電子銃(4.1節で説明)によって定在波LINACに注入される電子は、加速構造(以下の1節で説明)に注入される電磁波の電場を用いて、定在波LINACの加速構造の縦軸に沿って加速される。電磁波は、クライストロンまたはマグネトロンなどのマイクロ波の外部源から加速構造に結合される(4.3節で説明)。加速構造は、電磁波の定在波モードをサポートするように構成される。電子は、加速構造を横切るときに、高エネルギー電子ビームを生成するための電磁波の電場および磁場成分により電子に与えられた力によって、LINACの加速構造の一連の主空洞内で合焦されて加速される。1.1節で説明する通り、定在波LINACからの電子ビーム出力のエネルギーは、加速構造の側面空洞内に配置されているスイッチを用いて制御することができる。
【0015】
2つ以上の異なるエネルギーで電子ビームを生成するために定在波LINACの高速切り替え操作を伴う、インターリーブ操作中に、電子スイッチが過熱する可能性がある。電子スイッチは、電子スイッチが起動される時、電子スイッチの最適作動温度よりもずっと高温まで、またはさらに高温まで、加熱される可能性がある(1.1節で説明)。本明細書で開示のシステムおよび方法は、電子スイッチの制御され、タイミング調整された起動を通して、LINACの高速切り替え操作中に、複数の電子スイッチでの発熱の低減を提供する(2.1節でさらに詳細に説明)。2.1節で説明の通り、複数の電子スイッチを、実質的に均等に、マイクロ波パワー損失を共有することができる。また、本明細書では、側面空洞の変更を通じて、LINACの高速切り替え操作中に、側面空洞内に配置されている電子スイッチの発熱を低減するための方法(2.2節を参照)も開示される。
【0016】
〔1.定在波線形加速〕
本明細書で説明されるのは、電子スイッチを備える定在波LINACである。例示的な側面結合型(side−coupled)定在波LINAC構造の断面図を図1に示す。側面結合型定在波LINACは、縦導管10および加速構造の中心ボア(central bore)に沿って配置された複数の電磁結合した共振主空洞12、14、16、18を有する加速構造1を備える。縦導管10は、加速構造の中心を伸びている。当業者は、本明細書の定在波LINACは、図1に示すよりも多いかまたは少ない主空洞を有することができることを理解するであろう。例えば、定在波LINACは、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、またはそれ以上の主空洞を持つことができる。主空洞12、14、16、18は、縦導管10を中心とするトロイド(toroid)のような形状をしている。主空洞の隣接する対は、開口部を介して側面空洞により電磁結合している。側面空洞には2種類ある。側面空洞32(図1に示す)などの電子スイッチを備える第1タイプの側面空洞は、開口部13aおよび13bを介して隣接する主空洞12および14を連結する。側面空洞36(図1に示す)などの電子スイッチを備えていない第2タイプの側面空洞は、開口部17aおよび17bを介して隣接する主空洞16および18を連結する。側面空洞は、例えば、ほぼ立方体、ほぼ円筒、ほぼ長方形、または当業者が適切と考える任意の他の形状とすることができる。以下の1.1節で説明する通り、側面空洞32は、定在波LINACから放出される電子のエネルギーを同調するために使用される電子スイッチを備えている。定在波LINAC構造は、入口空洞(entrance cavity)50および出口空洞52も備えることができる。入口空洞50および出口空洞52は各々、基本的に、主空洞の半分の形状を取ることができる。ある実施形態では、入口空洞50および出口空洞52は、それぞれが異なる周波数に同調された、完全な空洞とすることができる。入口空洞50および出口空洞52の各々は、縦導管と同様なサイズのビーム孔を持つ、有限厚の端壁を持つことができる。
【0017】
作動中、電磁波は、加速構造1の約π/2モードの共振周波数で、定在波LINACに結合される。一般に、加速構造は、通常0.3GHzと300GHzとの間のマイクロ波周波数で共振する。通常、マイクロ波は、マイクロ波源から絞り(iris)またはテーパー結合(図示せず)を介して縦導管に沿って通じている点で、主空洞の1つに結合されている。マグネトロンまたはクライストロンなど、マイクロ波周波数での電磁波源について、4.3節で説明する。ある実施形態では、電磁波は、加速構造の上部または下部の開口部を通って主空洞の1つ、または側面空洞の1つを置き換えるテーパーまたは結合を通って2つの主空洞に結合することができる。後者の場合、隣接する主空洞は、π位相がずれて、その隣接する主空洞への結合が、磁場が反対方向である方形導波管の広い壁の反対側にある2つの開口部で行うことができる。
【0018】
マイクロ波の周波数は、入力電磁波の定在波が、加速構造1において加速構造の許容モードで励起されるほどである。加速構造は、その加速構造の許容モードが、各側面空洞とその隣接する下流側の主空洞との間で、または主空洞と下流側の側面空洞との間で、π/2ラジアン位相がずれた定在波共振になるように、構成することができる。従って、ある実施形態では、隣接する主空洞12、14、16、18の間にπラジアンのずれがある。この定在波モードは、共振周波数を、偶然に励起される場合がある隣接モードから最大の分離を提供することができる。すなわち、π/2モードは、光速の約半分と光速との間の位相速度のための、望ましい並列インピーダンス、広いモード分離、およびゆるい公差を提供することができ、それらは小型LINACのために有用である可能性がある。しかし、当業者は、本明細書で開示されたシステムおよび方法に従って他の位相シフトが使用することができることを理解することができる。例えば、本明細書で開示されるシステムおよび方法は、三重周期(triperiodic)LINAC構造にも適応でき、それは、周期毎に3つの空洞、空洞毎に2π/3位相進み、および軸外に配置されているか、または軸上に配置されている場合には長さが大幅に縮んでいる2空洞おきにノードを備える。この例では、ノードを有する3番目の空洞は、1節および2節で説明する通り、加速構造の下流側の部分を分離するために、同調され得る。別の例では、本明細書で開示されるシステムおよび方法は、本明細書で説明する離調可能な側面空洞と同様の機能を実行する軸上の結合空洞を備えるπ/2モードで、二重周期型(biperiodic)定在波構造にも適用することができる。この例では、軸上の結合空洞は、例えば、それらのサイズを変更することにより、1節および2節で説明する通り、加速構造の下流側の部分を分離するために、同調することができる。
【0019】
電子ビーム2が、電子銃源(図示せず)により、入口空洞50近くで縦導管10に注入される。電子銃については、以下の4.1節で説明する。電子ビーム2は、連続的またはパルス状のいずれでもよい。特定の実施形態では、電子ビームはパルス状である。加速構造1は、入口空洞50と主空洞12、14、16、18との間に配置されるバンチング空洞も備えてもよい。バンチング空洞は、そのバンチング空洞内の電磁波の電場が電子ビームをまとめてバンチを形成し、電子を合焦させて加速させるように、構成することができる。最初の連続ビームからの電子バンチの形成は、電子がバンチング空洞を横切るときに起こり、そのバンチングが、加速主空洞内の加速電場によって著しく低下されないように、システムを構成することができる。主空洞12、14、16、18の間の間隔が、マイクロ波の自由空間波長の約半分になるように、加速構造1が構成されて、マイクロ波の周波数が選択される。注入された電子ビーム2(電子バンチを含む)が、各主空洞内で出口空洞52に向かって加速されて、空洞内のマイクロ波の電場が、追加の前方向加速度を電子ビーム2にかける位相にある時に、1つの主空洞12内で加速された電子が、次の主空洞14に達する。電子ビーム2(電子バンチを含む)は、通常、最初の数個の主空洞内で、ほぼ光速まで加速される。残りの主空洞内で定在波の電場成分によって加えられる加速度は、電子エネルギーをさらに増大させる(すなわち、それらの相対論的質量を増加させる)。
【0020】
加速された後、電子ビーム2は、出口空洞52から定在波LINAC構造から放出される。X線放射を使用する用途では、放出される電子ビーム2は、X線ターゲット(図示せず)に向けられる可能性がある。X線の生成およびターゲット例については、以下の3節で説明する。もう1つの方法として、金属薄膜を備える真空窓を、目標の粒子照射のために電子ビーム2を伝送するため、出口空洞52に設置してもよい。
【0021】
〔1.1 側面空洞内のスイッチを用いた電子出力エネルギーの制御〕
主空洞12、14、16、18の全てが同様で、縦導管10に関してほぼ軸方向に対称であって、側面空洞の全てが側面空洞30または側面空洞36と同様な場合、各主空洞内の電場は、他の主空洞内の場と実質的に同じであろう。結果として、電子ビーム2は、全ての主空洞内で最大の電場振幅(および、従って最大の前方向加速度)を経験するであろう。図2Aは、電子があらゆる主空洞内で加速される操作中に、定在波LINACの加速構造の縦導管に沿った軸位置の関数として、各主空洞内で電子ビームに作用する電場振幅の変動を示す。LINACの出口空洞から放出される電子ビームは、定在波LINACシステムの最大到達可能な最終出力エネルギー近くまで加速される。
【0022】
異なるエネルギーでの出力電子ビームが望ましい場合は、定在波LINACの下流部分の定在波を、より小さい加速度が電子ビームに作用するように、分離することができる。これを達成するには、2つの隣接する主空洞間の共振結合を、制御可能な程度分離するために、側面空洞の1つを、その2つの隣接する主空洞に関して非対称にすることができる。側面空洞内に配置されたスイッチは、その共振結合を分離するために使用することができる。例えば、隣接する主空洞間の共振結合を分離するために、機械スイッチが使用でき、機械スイッチのプランジャーの機械的調整が側面空洞に挿入される(例えば、米国特許第4,629,938号を参照)。幾何学的非対称は、磁場成分が、下流側の主空洞に通じる開口部より上流側の主空洞に通じる開口部で大きくなるように、機械スイッチを備える側面空洞内に電磁場分布の非対称を生じさせる。機械スイッチを備える側面空洞に隣接する2つの主空洞内の加速電場成分の比率は、主空洞と側面空洞との間の各開口部の磁場の比率に関連する。例えば、機械式プランジャーを側面空洞に挿入する度合いを変化させるなど、磁場の対称性の乱れの度合いを変化させることにより、上流側の主空洞内の加速電場は本質的に変えずに、その側面空洞の下流側の主空洞内の加速電場の大きさを変えることができる。ある実施形態では、LINACに供給される電磁波のパワーも、スイッチを起動した後にまだ定在波をサポートする加速空洞の数に対して適切なレベルにまで、および、バンチャー空洞内の電磁場を好ましいレベルに維持するために、減らすことができる。バンチャー空洞は、かなり限定された範囲の電磁場に好ましく機能し、また、バンチャー空洞は、電磁場のパワーが変更されない場合、電子バンチ(電子の組)が、LINACの加速主空洞内で電磁波の頂部(crest)またはその近くにかかるように、電子バンチを適切に加速するように機能しない場合がある。そのバンチが電磁波の頂部またはその近くにかからない場合、出力電子のエネルギースペクトルは、幅が広がって、エネルギー安定性が悪化する可能性がある。
【0023】
図2Bは、側面空洞内のスイッチが起動されている操作中に、定在波LINACの加速構造の縦導管に沿った軸位置の関数として、各主空洞内で電子ビーム2に作用する電場振幅の変動を示す。起動されたスイッチの下流側に配置されている主空洞内の電磁波の電場成分の大きさが、大幅に低下している。結果として、電子ビームは、これら下流側の主空洞内でかなり小さい加速度を受け、より低い最終エネルギーを受けることになるであろう。LINACの出口空洞から放出される出力電子ビームのエネルギーは、定在波LINACシステムの最大到達可能エネルギーより低い。機械スイッチを使用する欠点は、機械スイッチの切り替え時間が遅くなりる可能性があることである。定在波LINACのインターリーブ操作では、少なくとも2つの異なる、好ましくは安定したエネルギーの電子ビームがLINACから連続して放出されるように、LINACを素早く、繰り返し切り替えることが望まれる。いくつかの用途では、切り替え時間は、ミリ秒の程度であってもよい。機械スイッチのプランジャーの操作にアクチュエータを使用することができるが、機械スイッチの比較的遅い切替時間が、LINACの切り替え速度を制限する要因となる。さらに、機械スイッチの寿命は限られている。機械スイッチの寿命を百万サイクルと仮定した場合、それをインターリーブ操作に使用しようとすると、約1時間の操作で使いきってしまう。
【0024】
電子制御を用いる電子スイッチは、ミリ秒程度で切り替えることができ、機械スイッチよりもはるかに高速である。しかし、電子スイッチによって中断されたマイクロ波パワーの流れのために、不都合な発熱が側面空洞内で生じる可能性がある。特に、電子スイッチの可変リアクタンスで消散されるマイクロ波パワーが電子スイッチの過熱を引き起こす可能性があり、それが装置を破壊する可能性がある。リアクタンスは、電子スイッチの容量性素子(容量性リアクタンス)および/または誘導成分(誘導性リアクタンス)の電磁波への抵抗からもたらされる可能性がある。リアクタンスは、電磁波の周波数によって変化することができる。パワー損失は、電子スイッチの温度を、スイッチが起動される時に最適な作動温度よりずっと高温まで上昇させる可能性があり、それが激しい加熱を引き起こす可能性がある。
【0025】
〔2.高速切り替え操作中の発熱を低減するためのシステムおよび方法〕
ある実施形態では、本明細書で説明されるのは、LINACの高速切り替え操作中に、(i)定在波LINACの各側面空洞にそれぞれ配置されている複数の電子スイッチの、制御されたタイミング調整された起動(2.1節で説明)、または(ii)電子スイッチを含むように側面空洞の変更(2.2節で説明)によって、複数の電子スイッチの発熱を好都合に低く保つために使用することができる方法およびシステムである。方法(i)または方法(ii)のいずれか、もしくは方法(i)と方法(ii)の両方の何らかの組み合わせを用いて操作されるシステムも、本開示の範囲内である。
【0026】
〔2.1 多数の離調可能な側面空洞〕
一態様では、本明細書では、好都合に低発熱の側面空洞の電子スイッチを備えた、定在波LINACの高速切り替えインターリーブ操作のための方法が提供され、そこで、LINACは、第1出力エネルギーと第2出力エネルギーとが交互になる電子ビームを放出するように操作される。その方法は、第1組の電子をLINACの縦導管内に注入して、その第1組の電子を電磁定在波を用いて第1出力エネルギーまで加速することと、2つ以上の離調可能な側面空洞の電子スイッチを実質的に同時に起動することと、第2組の電子を縦導管に注入して、その第2組の電子を第2出力エネルギーまで加速することとを含む。第1組の電子は、離調する側面空洞の電子スイッチが第1起動状態に起動される時に、LINACから第1エネルギーで放出される。第1起動状態では、電子スイッチは非アクティブであってもよく、または、本質的に電子スイッチを備えていない側面空洞のように、LINACに関連して作動する状態まで起動されてもよい。第2エネルギーが第1エネルギーと異なるように、電子スイッチの第2起動状態は、第1起動状態とは異なる。
【0027】
図1は、本態様に従って操作することができる離調可能な側面空洞を備える定在波LINACの加速構造を示す。LINACは、複数の主空洞および複数の側面空洞を備える。2つの側面空洞、側面空洞32および34は、本明細書では離調可能な側面空洞と呼ばれているが、各々が電子スイッチ40、42を備える。電子スイッチ40、42は、実質的に同時に、それぞれの離調可能な側面空洞32、34を離調するために、起動でき、それは、それぞれ離調可能な側面空洞32、34の下流側の電磁波の定在波伝搬を分離する。結果として、図2Bに示すプロットと同様の加速構造の縦軸に沿った分布を持つ電場が電子に作用して、定在波LINACから低エネルギーでの電子の出力をもたらす。
【0028】
図1に示されている電子スイッチ40、42はそれぞれ、導電性部材41などの、離調可能な側面空洞32、34内にそれぞれ延出する導電性部材に接続される。導電性部材は、導電性プロング(prong)または導電性ループであってもよい。導電性部材は、任意の電気伝導体を含んでもよい。導電性部材の一端は、離調可能な側面空洞の外部に延出でき、スイッチを用いて、その導電性部材の電気特性を変更することができる任意の種類の要素に接続されてもよい。例えば、導電性部材は、電子スイッチにより、1つ以上の同軸伝送ケーブルもしくは他の何らかの導体に接続されてもよい。電子スイッチが起動されると、取り付けられた要素(すなわち、同軸伝送ケーブルまたは他の導体)が離調可能な側面空洞のリアクタンスを変更する。変更されたリアクタンスは、離調可能な側面空洞のインピーダンス、従って、その共振周波数を変更する。もう1つの方法として、電子スイッチは、導電性部材への電流または電圧の印加により起動することができ、それも、離調可能な側面空洞のリアクタンスを変更することができる。電子スイッチの例としては、マイクロ波スイッチおよびPINダイオードスイッチが挙げられるが、それらに限定されない。
【0029】
電子スイッチがない場合は、2つの隣接する主空洞が、ほぼ均等で、相互にπラジアン位相がずれている場を持つため、側面空洞はほぼゼロの電場を持つ。側面空洞の各側面にある電場は反対の符号を持つため、側面空洞内の場は、隣接する主空洞の平衡を保つことができる。すなわち、側面空洞内の場は、2つの隣接する主空洞内の場の代数和に比例する。しかし、図1の離調可能な側面空洞32の開口部13aおよび13bなどの、離調された側面空洞の2つの開口部を結合する相互作用は、マイクロ波パワーが離調された側面空洞から漏れるようにすることができる。この漏れたマイクロ波パワーは、離調された側面空洞の下流側のLINACの部分全体で弱場を生成する。隣接する下流側の第2側面空洞を離調することにより、第1側面空洞を通して漏れるパワーは、これら2つの側面空洞間の主空洞内に集中されて、正しい位相で第1の離調された空洞の少し下流の主空洞内の場が増加し、第1の離調された空洞内の場が削減される。例えば、図1を参照すると、第1の離調可能な側面空洞32が離調されると(電子スイッチ40の起動により)、開口部13aおよび13bの相互作用により、離調可能な側面空洞32からパワーが漏れる。下流側の離調可能な側面空洞34を離調する(電子スイッチ42の起動により)ことにより、離調可能な側面空洞32を通って漏れるパワーが、主空洞14内に合焦されて、主空洞14内の場が正しい位相で増加し、離調可能な側面空洞32内の場が減少される。離調可能な側面空洞32内で削減されたこの場は、離調可能な側面空洞32の電子スイッチの発熱を好都合に低くさせる結果になる。2つの離調された側面空洞の適切な離調で、2つの離調された側面空洞内でマイクロ波パワーの消散を均一にすることが可能である。すなわち、2つの離調された側面空洞の適切な離調によって、複数の電子スイッチが、マイクロ波パワーの損失を、実質的に均等に共有することができる。第2の離調された側面空洞は、第1の離調された側面空洞の電子スイッチにおけるマイクロ波パワーの損失を減少させることができる。
【0030】
2つの離調可能な側面空洞32、34の電子スイッチ40および42を実質的に同時に起動することにより、これら2つの空洞での発熱を好都合に低く保つことができる。2つの離調された側面空洞を使用すると、離調された側面空洞の下流側のLINAC部分の分離を改善でき、それにより、分離された領域での加速電場の振幅を実質的に減少させて、電子の出力エネルギーの制御を提供する。2つの離調可能の側面空洞の使用は、上流側の離調可能な側面空洞での発熱を低減するのに役立つ。電子スイッチの切り替え時間は、マイクロ秒程度とすることができる。
【0031】
2つ以上の電子スイッチが、例えば、数マイクロ秒、数10マイクロ秒または数100マイクロ秒など、相互にマイクロ秒程度の時間間隔の範囲内で全てが起動される場合、それらは実質的に同時に起動することができる。例えば、2つ以上の電子スイッチは、相互に約10マイクロ秒またはそれ以内で起動することができる。ある実施形態では、2つ以上の電子スイッチを、相互に約1マイクロ秒またはそれ以下の時間間隔内ですべて起動することができる。電子スイッチからの基本的に瞬間的なパワー漏れにより、一度第1の離調可能な側面空洞が離調されると、第1電子スイッチの起動と第2電子スイッチの起動との間のより長時間の遅延によって、2つの側面空洞の離調からの何らか恩恵の有効性が減少する可能性がある。すなわち、より長時間の遅延の間に、第1の離調された側面空洞を通したパワー漏れが、その側面空洞の電子スイッチを損傷するほど深刻になる可能性がある。2つの電子スイッチを実質的に同時に起動すると、最初に離調された離調可能な側面空洞の電子スイッチにおける過熱の可能性が減少される。その結果、電子スイッチを実質的に同時に起動すると、電子スイッチの発熱を好都合に低くすることができる。
【0032】
2つの離調可能な側面空洞を実質的に同時に起動することのもう1つの可能性がある利点は、自動周波数制御装置(AFC)の応答である。AFCは、電磁波の同調を自動的に所望の周波数に維持することができる。側面空洞の頻繁な離調により、モード間の分離が失われる可能性があり、AFCは誤ったモード(離調された側面空洞のモードなど)に固定される可能性がある。2つの側面空洞を同時に起動すると、AFCが誤ったモードに固定されるリスクを低減する。
【0033】
電子スイッチの起動は、1つ以上の制御装置で制御されてもよい。電子スイッチのための制御装置は、それらのコマンドを、コンピュータシステム(コンピュータメモリに格納されているコマンドなど)から、コンピュータ可読媒体から、またはユーザー入力装置を通してユーザーから受信してもよい。制御装置は、電子スイッチ40、42に結合することができ、離調可能な側面空洞32、34の共振周波数を制御するように作動可能である。電子スイッチのための制御装置は、スイッチを所望の起動状態に起動するために、電子スイッチへの電流または電圧を変更するための電気回路を含む構成要素に接続することができる。電子スイッチ40、42を実質的に同時に起動させるために、制御装置は、各電子スイッチが、離調された側面空洞のLINACの下流側の部分を分離するそれぞれの起動状態に起動されるように、コマンドを発行し、それにより、分離した領域の加速電場を実質的に減少させて、電子の出力エネルギーに対する制御を提供する。電子スイッチを制御するためのコマンドを発行するその同じ制御装置は、定在波LINACの他の要素を操作するためのコマンドも発行してもよく、それは、電子銃からの電子の注入のタイミングおよびパルス長、銃の電流の振幅、タイミング、LINACに結合された電磁波のパルス長および振幅、ならびにAFCへの命令を含むがそれらに限定されない。別の例では、電子スイッチ制御コマンドを発行する制御装置は、LINAC操作コマンドを発行する制御装置から分離されていてもよい。2つ以上の制御装置は、方法のステップを実行するために好都合に通信し、同期されるであろう。
【0034】
1つ以上の制御装置は、定在波LINACおよび電子スイッチに対するコマンドを発行するようにプログラムされてもよく、そこで、前記加速器の側面空洞内に配置されている電子スイッチでの発熱が好都合に低くなるように、コマンドのステップの実行によってLINACの高速切り替え操作が行われる。図3は、電子スイッチおよびLINACのための1つ以上の制御装置によって発行されてもよいコマンドの流れ図を示す。図3のステップ100では、電子スイッチ40、42を実質的に同時に第1起動状態に起動するために、コマンドが電子スイッチ40、42に対して発行される。ステップ102では、第1組の電子をLINACの縦導管10に注入するため、コマンドが電子銃に対して発行される。ステップ104では、第1組の電子がLINACから第1エネルギーで放出されるようにLINACを操作するためにコマンドが発行される。ステップ104は、電磁波をLINACに結合するためのコマンドおよび/またはAFCを始動するためのコマンドを含むことができる。ステップ100、102、および104の間の時間間隔ならびに各ステップの順序は、結果として第1組の電子が所望の線量率および第1エネルギーで放出されるように選択することができる。長さが1m未満のLINACでは、第1組の電子がLINACのその長さを進むのに数ナノ秒(例えば、約3ns)かかる可能性があり、電磁波のLINAC内への充填時間は、およそ数百ナノ秒またはマイクロ秒程度(例えば、xバンドに対して約200ns、およびsバンドに対して約1μs)である可能性があり、電子スイッチの切り替え時間は、およそ数マイクロ秒〜数10マイクロ秒程度である可能性がある。従って、ある実施形態では、ステップ104(例えば、電磁波のLINACへの結合)は、ステップ100およびステップ102の前に実行することができる。ステップ106では、電子スイッチ40、42を第2起動状態に実質的に同時に起動するために、コマンドが発行される。ステップ108では、第2組の電子を縦導管10に注入するため、電子銃に対してコマンドが発行される。ステップ110では、第2組の電子がLINACから、第1エネルギーと異なる第2エネルギーで放出されるように、LINACを操作するためにコマンドが発行される。
【0035】
一実施形態では、電子スイッチ40、42は、離調された側面空洞の下流側のLINACの部分を分離する第1起動状態に起動することができ、その分離した領域での加速電場を実質的に減少させる。第1組の電子は、離調された側面空洞の上流側の主空洞内では、電磁波の電場の実質的に最大到達可能な振幅によって加速されることになり、離調された側面空洞の下流側の分離された領域では、削減された加速電場によって加速されることになる。この実施形態では、電子スイッチ40、42の第2起動状態は、第2組の電子が実質的に全ての主空洞内で、電磁波の電場の実質的に最大到達可能な振幅によって加速されるように、離調可能な側面空洞32、34の共振周波数を変更することができる。すなわち、電子スイッチ40、42は、それらが、電子スイッチを備えていない側面空洞(図1の側面空洞30、36などのように)として本質的に機能するように、共振状態に起動される。この実施形態では、第1エネルギーは第2エネルギーより低い可能性がある。
【0036】
第2エネルギーより大きな第1エネルギーを取得するための操作では、第2起動状態は、離調された側面空洞の下流側のLINACの部分を分離することができ、他方、第1起動状態は、第1組の電子が実質的に全ての主空洞内で、電磁波の電場の実質的に最大到達可能な振幅によって加速されるように、離調可能な側面空洞32、34の共振周波数を変更することができる。
【0037】
一例では、ステップ100〜110の全てを、電磁波の単一パルスの持続時間に実行することができる。例えば、電磁波のLINACへの充填時間中に、定常状態に注入されたビームをほとんど直ちに獲得するため、第1組の電子をLINACに注入する(ステップ102)ためのコマンドを発行することができる。電子スイッチは、その後、実質的に同時に、第2起動(ステップ106)に起動することができ、それは、離調可能な側面空洞の下流の主空洞内に電磁場を生じることができる。LINACの下流領域にある電磁場がまだ生じている間に、第2組の電子をLINACに注入するためのコマンドを発行することができ(ステップ108)、これによってビームエネルギーがほぼ直ちに、定常状態に注入されたビームを得ることができる。この例では、電磁波は、ステップ100の後であるがステップ102の前に、LINACに結合することができる。
【0038】
別の例では、ステップ100〜104は、電磁波の第1パルスの間に実行することができ、そして、ステップ106〜110は、電磁波の第2パルスの間に実行することができる。
【0039】
電子スイッチ40および42が同一のタイプであれば、それらは、各起動状態に対して、同様に起動することができる。すなわち、第1起動状態に達するために、電子スイッチ40および42は、同程度まで起動することができる。例えば、同一レベルの電流または電圧を各々に印加することができるか、または同一タイプの伝送線路(同軸ケーブル)が各々に取り付けられる。第2起動状態に達するために、電子スイッチ40および42は、第1起動状態とは異なる起動状態に、実質的に同時に起動することができる。例えば、同一レベルの電流または電圧が印加されるか、または伝送線路のタイプ(同軸ケーブル)が各々に取り付けられているが、それらは、第1起動状態に対して適用されものとは異なる。電子スイッチ40および42が異なるタイプの電子スイッチで、例えば、一方がマイクロ波スイッチで他方が電気機械スイッチの場合、その2つは異なる程度に起動することができるが、最終結果は、それら各々は、それぞれの離調可能な側面空洞のインピーダンスを本質的に同程度まで変更し、それぞれの離調可能な側面空洞の共振周波数に同様の影響を与える。
【0040】
図1の図では、定在波LINACは、対角線上に配置された2つの離調可能な側面空洞を含むが、当業者によって適切と考えられる任意の構成を使用することができる。例えば、方法は、図4に示す定在波LINACを用いても実行可能であり、そこでは、LINACの側面に相互に隣接して配置された、2つの離調可能な側面空洞の電子スイッチが実質的に同時に起動される。この配列では、離調可能な側面空洞は、約2πラジアンによって分離される。この配列は、結合したLINAC−離調可能な側面空洞がこの構成ではより狭いため、サイズまたはスペースの制約がある場合には、好ましい場合がある。
【0041】
さらに、本明細書で開示の方法に従い、3つ以上の離調された側面空洞が使用することができる。本明細書で説明した定在波LINACなどのπ/2二重周期型構造では、図1に示すような2つの隣接する側面空洞は、ほぼ半波長(πラジアン)離れている。図4に示すような離調された側面空洞は、1波長(2πラジアン)離れている。ある実施形態では、本明細書で開示のシステムおよび方法は、半波長の整数倍の離間した離調された側面空洞に適用することができる。特定の実施形態では、離調された側面空洞は、最大で約3/2波長(3πラジアン)まで離間し、または最大約2波長(4πラジアン)まで離間することができる。マイクロ波伝送線路では、半波長の約整数倍離れた2つのインピーダンスを、相互に並列して効果的に考慮することができる。それ故、適切な調整により、パワーの反射に伴う消散を2つ以上の離調可能な側面空洞間で分割することができるように、2つ以上の離調可能な側面空洞が、ほぼ均等な量のパワーを消散するようになすことができる。すなわち、電子的に離調する2つの隣接した離調可能な側面空洞がまだ、望ましくないか、または許容できない電子スイッチの発熱という結果をもたらしている場合には、第3の隣接する離調可能な側面空洞を離調することで、発熱の可能性をさらに削減するのに貢献することができる。従って、本明細書で開示の方法は、3つの離調可能な側面空洞を備えたLINACに適用可能である。図4は、対角線状に相互に向かい合うように配置された3つの離調可能な側面空洞を備えたLINACを示しているが、3つの他の配置が使用されてもよい。3つの離調可能な側面空洞は、2つの離調可能な側面空洞を備えたLINACについて前述したように、実質的に同時に起動することができる。さらに、本方法は、LINACの本体に対して任意の順列で配置された、4つ(図5に示す例など)以上の離調可能な側面空洞を備えたLINACに適用することができる。
【0042】
〔2.2 変更された離調可能な側面空洞〕
別の態様では、LINACが、実質的に全ての主空洞で、電磁波の電場の実質的に最大到達可能な振幅によって電子ビームが加速されるモードで操作される時に、離調可能な側面空洞の共振周波数を同調するために電子スイッチを起動する必要がないように、離調可能な側面空洞が変更されてもよい。1つ以上の変更された離調可能な側面空洞を備えたシステムは、LINACの高速切り替え操作中に電子スイッチでの好都合に低い発熱で操作されてもよい。特に、高エネルギー操作に関して起こる可能性がある過熱を回避するため、電子スイッチは、非離調(un−detuned)構造のような側面室と統合される。
【0043】
電子スイッチを備える側面空洞は、機械スイッチが高エネルギー操作で使用される場合、引き出されているマイクロ波パワーのために、機械スイッチが多量の発熱を経験しない場合があるという点において、機械スイッチを備えた側面空洞と異なる。上述の通り、過熱は、電子スイッチにとって問題となる可能性がある。電子スイッチが側面空洞の正確な同調のために使用される場合、電子スイッチは、加速器がその高エネルギーモードで操作されている時、側面空洞内の実行パワー(conducting power)である。すなわち、側面空洞内の電子スイッチは、たとえその側面空洞を離調するように起動されていなくても、若干の発熱を経験する場合がある。変更されていない側面空洞では、電子スイッチは、例えば、2つの異なるタイプの伝送線路間(その一方は側面空洞をLINACの共振周波数にするように同調され、他方は側面空洞を離調するように同調されている)で切り替えることにより、ある起動状態(最大到達可能なエネルギーの電子出力のため)と別の起動状態(より低エネルギーの電子出力のため)との間で切り替えられてもよい。このアプローチで、電子スイッチは、LINACの操作中に若干の発熱を経験する。
【0044】
この態様では、離調可能な側面空洞は、導電性部材が適切な位置にあるが、電子スイッチが起動されていない間に、その離調可能な側面空洞が、定在波LINACの共振周波数を持つように同調されるように、変更される。定在波線形加速器は、少なくとも1つの変更された離調可能な側面空洞(すなわち、電子スイッチを備える側面空洞)を備える。変更された離調可能な側面空洞は、変更された離調可能な側面空洞のリアクタンスが、LINACに結合された電磁波の存在下で、電子スイッチが起動されていない時に、電子スイッチを備えていない側面空洞のリアクタンスと実質的に同様になるように、構成される。すなわち、離調可能な側面空洞の容量性リアクタンスおよび/または誘導性リアクタンスを変更することができる。変更された離調可能な側面空洞は、電子スイッチのいずれも起動していなければ、本質的に定在波LINACのノードとして機能し、結果として、変更された離調可能な側面空洞におけるパワー損失が最小になるか、または全くなくなる。
【0045】
変更された離調可能な側面の電子スイッチが起動されている場合、その側面空洞は離調されて、その変更された離調可能な側面空洞の下流側の定在電磁波を分離する。結果として、2.1節で説明したとおり、LINACの縦導管に注入された電子の組は、下流側の主空洞内で著しく小さい加速度を受けて、より低いエネルギーで放出される。変更された離調可能な側面空洞の電子スイッチは、2.1節で上述したような、当技術分野で周知の任意の手段によって起動することができる。非限定的な例として、電子スイッチは、その電子スイッチへの電流の印加、その電子スイッチへの電圧の印加、または1つ以上の同軸伝送線路の接続により起動することができる。
【0046】
図7Aは、変更されていない離調可能な側面空洞70の一例を示し、それは、LINACの操作中に過熱する傾向があり得る。変更されていない離調可能な側面空洞は、電子スイッチ72、導電性部材74、およびポスト76を含む。導電性部材74は、導電性ループまたは導電性プロングとすることができる。ポスト76の表面は、相互に平行して並んでいる。図7Bは、導電性プロング84が適切な位置にあるが、電子スイッチ82が起動されていない間に、離調可能な側面空洞が、定在波LINACの共振周波数を持つように同調されるように変更されている、離調可能な側面空洞80の一例を示す。図7Bでは、ポスト86の表面が、変更された離調可能な側面空洞のリアクタンスを変更するために変更されて、変更された離調可能な側面空洞は、電子スイッチに対するパワー損失なしで、LINACの共振周波数で作動する。図7Bの例では、ポストの表面の形状が丸みを帯びた形状にされており、それは、その2つのポスト間のキャパシタンスを変更し、ひいては側面空洞のリアクタンスを変更し、この変更された離調可能な側面空洞は、電子スイッチが起動されていなければ、LINACの「ノード」のように動作する。丸みを帯びた形状が図7Bに描かれているが、結果的に、電子スイッチが起動されていない場合にLINACの「ノード」のように動作する、変更された離調可能な側面空洞をもたらす、任意の他の形態が、この態様に適用可能である。別の例では、キャパシタンス、およびひいてはリアクタンスを変更するために、変更された離調可能な側面空洞のポストの面が、互いにより近づけられるか、またはさらに離される。さらに別の例では、側面空洞のサイズ(および、それ故、量)を、その側面空洞のインダクタンス(および、ひいてはリアクタンス)を変更するために、変更することができる。さらに別の例では、導電性部材が適切な位置にあるが、電子スイッチが開回路(open circuited)である間に、離調可能な側面空洞が、LINACの共振周波数を持つように同調されるように、離調可能な側面空洞が変更される。例えば、異なる同軸ケーブルの接続によって離調されている離調可能な側面空洞に対して、同軸ケーブル内のXバンドでの波長が約1インチ(同軸コネクタから電子スイッチまでの距離)で、共振する場合があるため、それ故、加速器の動作周波数で非共振であるように同調される短い遅延線が付加されてもよい。さらに別の例では、ポストは、リアクタンスを変更するために、離調可能な側面空洞の残りの材料とは異なる材料(例えば、異なる金属もしくは合金、または、セラミック、またはそれらの混合物を含むがそれに限定されない誘電体などの、しかしそれに制限されない)で作られている。例えば、側面空洞の本体は銅で作ることができ、ポストは、銅合金、真鍮、セラミック、または他の適切な材料で作ることができる。
【0047】
図8は、変更された離調可能な側面空洞を備えたLINACの操作の流れ図を示す。図8のステップ200では、第1組の電子をLINACの縦導管10に注入するため、電子銃に対してコマンドを発行する。ステップ202では、第1組の電子がLINACから第1エネルギーで放出されるように、LINACを操作するためのコマンドが発行される。ステップ200と202の間の時間間隔および各ステップの順序は選択可能であり、その結果、第1組の電子が所望の線量率および第1エネルギーで放出される。ステップ204では、変更された離調可能な側面空洞の電子スイッチを起動するためにコマンドが発行され、それは、離調された側面空洞の下流側のLINACの部分を分離して、その分離した領域の加速電場を実質的に減少させる。ステップ206では、第2組の電子を縦導管10に注入するため、電子銃に対してコマンドが発行される。第2組の電子は、離調された側面空洞の上流側の主空洞では、電磁波の電場の実質的に最大到達可能な振幅によって加速され、そして、離調された側面空洞の下流側の分離された領域では、削減された加速電場によって加速されることになる。ステップ208では、第2組の電子がLINACから、第1エネルギーとは異なる第2エネルギーで放出されるように、LINACを操作するためのコマンドが発行される。
【0048】
この態様によるシステムは、2つ以上の変更された離調可能な側面空洞も備えてもよい。このLINACの操作では、第2組の電子を第2エネルギーで放出するために、2つ以上の変更された離調可能な側面空洞の電子スイッチを、前述のとおり実質的に同時に起動することができ、電子スイッチの好都合に低い発熱を達成する。
【0049】
〔3.X線〕
X線は、LINACからの加速された電子ビームまたは電子バンチによる標的材料の照射から生成される。X線は、2つの異なるメカニズムにより標的から生成することができる。第1メカニズムでは、原子の低エネルギーレベル(内殻)からの電子が原子を離れるように、LINACからの電子の標的原子への衝突が十分なエネルギーを分け与えて、低エネルギーレベルの空孔を作る。原子の高エネルギーレベルの電子は、低エネルギーレベルに降下してその空孔を埋め、その余分なエネルギーをX線光子として放出する。高エネルギーレベルと低エネルギーレベルとの間のエネルギー差は離散値であるため、これらのX線光子は、X線スペクトル内にくっきりとした線(特徴線と呼ばれる)で現れる。第2メカニズムでは、LINACからの電子ビームまたはバンチは、標的原子近くの強電場によって散乱されて、制動放射線を放出する。制動放射線は、連続スペクトルでX線光子を生成し、X線の強度は、入射電子のエネルギーでゼロから増大する。すなわち、LINACからの電子によって生成することができる最高エネルギーのX線は、それらがLINACから放出された時の電子の最高エネルギーである。制動放射線は、多く用途にとって、特徴線よりも興味深い可能性がある。
【0050】
X線生成の標的として有用な材料としては、タングステン、特定のタングステン合金(タングステンカーバイド、またはタングステン(95%)‐レニウム(5%)などがあるが、これらに限定されない)、モリブデン、銅、白金およびコバルトが上げられる。
【0051】
〔4.器具類〕
定在波LINACの操作で使用される場合がある特定の器具としては、電子銃、変調器、および電磁波源が挙げられる。
【0052】
〔4.1 電子銃〕
電子銃は、特定の運動エネルギーを有する1組の電子(または電子ビーム)を放出するために、電子放出器として使用される。電子銃は、当業者によって適切と考えられる任意の電子銃とすることができる。例えば、L3電子銃組立品、モデル番号M592(米国カリフォルニア州サンカルロス所在のL3 Communications Corporation)を使用することができる。電子銃は、電子ストリームを放出するための熱電子陰極を含むことができる。電子銃は、電子ストリームの焦点を合わせるための焦点調節部品も含んでもよい。例えば、電子ビームの焦点を合わせて、陽極(anode)の向こう側に現れる最小直径を持つ収束ビームを作り出すよう、電場を形成するために焦点電極が使用することができる。いくつかの電子銃では、焦点調整部品は、陽極と熱電子陰極との間に配置されているグリッドであり、それは、電子ストリームの直径を制御するための場を印加する。かかるグリッドは、陽極および陰極に共通の縦軸に対して同心に配置された開口部を持つことができる。いくつかの電子銃では、グリッドは、グリッドに印加される電圧に応じて、ビームの入り切りおよびビーム電流の制御が可能なインターセプト画面(intercepting screen)を含むことができる。陽極は、縦軸に同心の開口部も持つことができる。陽極の開口部の直径は、陰極の直径よりも小さい可能性がある。グリッドと陽極との間に収束軸電場を生成するために、陰極に関連してグリッドおよび陽極に電圧を印加でき、これにより、陰極から陽極に向かって増大する電流密度を有する電子の準層流(quasi−laminar)引き起こすことができる。電子銃に印加する電圧を下げると、電子銃から放出される電子の運動エネルギーを減少させることができる。
【0053】
〔4.2 変調器〕
変調器は、数マイクロ秒持続する高電圧パルスを生成する。これらの高電圧パルスは、電磁波源(以下の4.3節で説明)、電子銃(4.1節を参照)、または両方に同時に印加することができる。電源装置はDC電圧を変調器に提供し、変調器はこれを高電圧パルスに変換する。例えば、マグネトロンに関連して、Solid State Magnetron Modulator−M1または−M2(スウェーデン国ウプサラ所在のScandiNova Systems AB)を使用することができる。別の例では、クライストロンに関連して、Solid State Klystron Modulator−K1または−K2(スウェーデン国ウプサラ所在のScandiNova Systems AB)を使用することができる。
【0054】
〔4.3 マイクロ波発振器〕
電磁波源は、当業者によって適切と考えられる任意の電磁波源でよい。LINAC用の電磁波源(無線周波数(RF)帯域のマイクロ波内)は一般的に、マグネトロン発振器またはクライストロン増幅器のいずれかである。両方のタイプの器具において、RF源のサイズおよび出力能力は、おおよそ電磁波の波長に比例する。電磁波は、その振幅、周波数、または位相を変更することにより変更することができる。
【0055】
〔4.3.1 マグネトロン〕
マグネトロンは、数マイクロ秒間持続し、かつ毎秒数百パルスの繰り返し率でマイクロ波パルスを生成するように、高出力発振器として機能する。各パルス内のマイクロ波の周波数は、通常、約3,000MHz(Sバンド)または9,000MHz(Xバンド)である。超高ピークビーム電流または高平均電流に対しては、800〜1500MHz(Lバンド)のパルスを使用することができる。マグネトロンは、当業者によって適切と考えられる任意のマグネトロンとすることができる。例えば、CTL Xバンドパルスマグネトロン、モデル番号PM−1100X(米国カリフォルニア州ワトソンビル所在のL3 Communications、Applied Technologies)を使用することができる。通常、マグネトロンは、銅の固体片から機械加工された共振空洞を備え、中央に配置された陰極と外側の陽極を持つ円筒構造を有する。陰極と陽極との間の空間は真空にされている。陰極は、内部フィラメントによって加熱され、電子は熱電子放出によって生成される。静磁場が空洞の断面に対して垂直に印加され、パルスDC電場が陰極と陽極との間に印加される。陰極から放出された電子は、パルスDC電場の作用により、かつ、磁場の影響下で、陽極に向かって加速される。従って、電子は、複雑な螺旋を描くような動きで、共振空洞に向かって移動し、それらにマイクロ波の周波数で電磁波放射線を放射させる。生成されたマイクロ波パルスは、移動導波管(transfer waveguide)を経て、加速器構造に供給される。マグネトロンは、通常、低エネルギーLINAC(6MVまたはそれ以下)に動力を供給するため、1または2MVの最大出力で作動する。マグネトロンは、比較的安価とすることができ、小型化することができるため、多くの用途で有利であるが、出力と寿命が限られ、電磁波の周波数と位相に対して提供することができる制御が比較的制限されている。連続波マグネトロン装置は、約75〜85%の効率で、1GHzで約100kWの出力を有することができるが、パルス装置は約60〜77%の効率で作動することができる。マグネトロンは、位相に敏感でない場合がある単一セクションの低エネルギー線形加速器で使用することができる。マグネトロンは、通常、マイクロ波出力を安定化させるために、フィードバックシステムと共に使用される。
【0056】
〔4.3.2 クライストロン〕
クライストロンは、当業者によって適切と考えられる任意のクライストロンとすることができる。例えば、CPI Sバンドパルスクライストロン、モデル番号VKS−8262G(米国カリフォルニア州パロアルト所在のCommunications and Power Industries(CPI))を使用することができる。クライストロンは、DC電子ビームの運動エネルギーをマイクロ波パワーに変換することにより増幅器として機能する。熱電子陰極によって生成される電子ビーム(低仕事関数(low work function)材料の加熱ペレット)は、高圧電極(通常、数10〜数100キロボルト)によって加速される。この電子ビームは、その後、入力空洞を通過する。マイクロ波は、クライストロン空洞の自然共振周波数で、またはその付近で、クライストロンの入力空洞に注入される。マイクロ波の電場は、以前の連続電子ビームに入力周波数でバンチを形成させる。バンチングを強化するため、クライストロンは、追加のバンチャー空洞を含むことができる。電子ビームによって搬送されるマイクロ波周波数電流は、マイクロ波周波数磁場を生成し、それは、順に、それに続く共振空洞のギャップを越えて、電圧を励起する。出力空洞では、発生したマイクロ波パワーがクライストロンから出て、結合される。エネルギーが減少している、使用済みの電子ビームは、収集器で捕捉される。クライストロンからのマイクロ波出力はマイクロ波入力よりもずっと大きい(通常、50〜60db)可能性があるため、クライストロンは増幅器として機能し、結果的に、マイクロ波入力に関して位相が安定し得る増幅したマイクロ波パワーが得られる。クライストロンは増幅器であるため、出力マイクロ波の周波数および振幅の変更を素早く行うことができる。
【0057】
〔5.例示的な器具およびコンピュータプログラムの実装〕
本明細書で開示される方法の態様は、次のプログラムおよび方法に従って、本節で説明するコンピュータシステムなどのコンピュータシステムを用いて実行することができる。例えば、かかるコンピュータシステムは、本明細書で開示の方法に従って、電子スイッチを異なる起動状態に起動するために、制御装置に対するコマンド、またはLINACの様々な他の構成要素を操作するためのコマンドを格納および発行することができる。そのシステムおよび方法は、例えば、単一の汎用コンピュータ、または並列処理コンピュータシステム、またはワークステーション、またはネットワークシステム(例えば、図9に示すようなクライアント−サーバー構成)など、様々な種類のコンピュータアーキテクチャで実装されてもよい。
【0058】
本明細書で開示の方法を実装するために適切なコンピュータシステム例を図9に示す。図9に示すとおり、本明細書で開示された1つ以上の方法およびシステムを実装するためのコンピュータシステムは、例えば、他のローカルコンピュータシステムへのローカルエリアネットワーク(LAN)の部分、および/または他のリモートコンピュータシステムに接続されている、インターネットなどのワイドエリアネットワーク(WAN)の部分とすることができる、ネットワークリンクに接続することができる。ソフトウェア構成要素は、1つ以上のプロセッサに1つ以上の制御装置に対するコマンドを発行させるプログラムを含むことができ、それにより、その1つ以上の制御装置が、電子銃に第1組の電子をLINACの縦導管に注入させ、電子スイッチを起動状態に起動させ、そして、LINACを操作する(電磁波のLINACへの結合、およびAFCの始動のためのコマンドを含む)コマンドを発行する。例えば、システムは、1つ以上の制御装置に、2つ以上の電子スイッチを実質的に同時に、離調された側面空洞の下流側のLINAC部分を分離する(前述のとおり)起動状態に起動させるコマンドを受け取ることができる。プログラムは、システムに、方法のステップを指定の順序で、ステップ間を指定の時間間隔で実行するためのコマンドをデータ記憶(例えば、データベース)から取得させることができる。かかるデータ記憶は、大容量記憶(例えば、ハードドライブ)もしくは他のコンピュータ可読媒体に格納して、コンピュータにロードすることができ、また、データ記憶は、ネットワークを用いてコンピュータシステムによりアクセスすることができる。
【0059】
本明細書で説明した例示的なプログラム構造およびコンピュータシステムに加え、他の代替的なプログラム構造およびコンピュータシステムが当業者には容易に明らかであろう。かかる代替システムは、前述したコンピュータシステムおよびプログラム構造から精神および範囲のいずれにおいて逸脱することなく、それ故、添付の特許請求の範囲内に含まれることを意図するものである。
【0060】
〔引用文献〕
本明細書で引用した全ての参考文献は、各個々の公開または特許または特許出願が、具体的かつ個別にその内容全体が全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれることが示されているかのように、その内容全体が全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。本明細書における参考文献の考察または引用は、かかる参照が本発明の先行技術であることの承認として解釈されるものではない。
【0061】
〔変更〕
本発明の多くの変更および変形を、当業者には明らかであろうように、その精神および範囲から逸脱することなく実施することができる。本明細書で説明した特定の実施形態は、ほんの一例としてのみ提供されており、本発明は、添付の特許請求の範囲の条項、およびかかる特許請求の範囲が権利を与えられている均等物の完全な範囲によってのみ限定されるものとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
定在波線形加速器の、前記加速器の側面空洞に配置された電子スイッチの発熱が好都合に低くなるような、高速切り替え操作の方法であって、
第1組の電子を前記加速器の縦導管に注入することであって、
前記加速器が複数の主空洞および複数の側面空洞を備え、各前記側面空洞が前記複数の主空洞の2つの隣接する主空洞と連通し、
前記縦導管が前記複数の主空洞と連通し、
前記複数の側面空洞の少なくとも2つの側面空洞の各々が電子スイッチを備え、それによって少なくとも2つの離調可能な側面空洞を提供し、
前記第1組の電子が前記縦導管内で、前記加速器に結合された電磁波によって加速され、
前記離調可能な側面空洞の前記電子スイッチが第1起動状態に起動される時に、前記第1組の電子が前記加速器から第1エネルギーで放出される、第1組の電子を縦導管に注入することと、
前記離調可能な側面空洞の少なくとも2つの前記電子スイッチを実質的に同時に、第2起動状態に起動することと、
第2組の電子を前記縦導管に注入することであって、
前記第2組の電子が、前記第1エネルギーと異なる第2エネルギーで、前記加速器から放出される、第2組の電子を縦導管に注入することと、を含む方法。
【請求項2】
前記離調可能な側面空洞が、前記電子スイッチが前記第1起動状態に起動される場合に離調される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1組の電子を前記縦導管内に注入する前に、前記離調可能な側面空洞の前記電子スイッチを、実質的に同時に、前記第1起動状態に起動することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1組の電子を前記注入することの前に、前記電子スイッチが、少なくとも1切り替え時間の時間間隔で、前記第1起動状態に起動される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第2組の電子を前記注入することの前に、前記電子スイッチが、少なくとも1切り替え時間の時間間隔で、前記第2起動状態に起動される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記電子スイッチが前記第2起動状態に起動される場合に、前記少なくとも2つの離調可能な側面空洞が離調される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記離調可能な側面空洞が前記加速器の側面に相互に隣接して配置されている、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記離調可能な側面空洞が、前記加速器の両側に対角線状に相互に向かい合うように配置されている、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記電子スイッチに第1電流を印加することにより、前記電子スイッチが前記第1起動状態に起動される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記電子スイッチを前記第2起動状態に起動する前記ステップが、前記電子スイッチに第2電流を印加することを含み、前記第1電流が前記第2電流と異なる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
各前記電子スイッチが導電性部材を含み、前記導電性部材が前記離調可能な側面空洞の内部に配置されている、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記離調可能な側面空洞の外部に延出する前記電子スイッチの端部が、少なくとも1つの同軸伝送線路に接続することができる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
第1同軸伝送線路を各前記電子スイッチに接続することにより、前記電子スイッチが第1起動状態に起動される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記電子スイッチを前記第2起動状態の電子スイッチに起動する前記ステップが、第2同軸伝送線路を各前記電子スイッチに接続することを含み、前記第1同軸伝送線路が前記第2同軸伝送線路と異なる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記加速器が3つ以上の離調可能な側面空洞を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
複数の主空洞および複数の側面空洞を備える定在波線形加速器であって、
各前記側面空洞が前記複数の主空洞の2つの隣接する主空洞に連結し、
前記複数の側面空洞の少なくとも1つの側面空洞が電子スイッチを備え、それによって少なくとも1つの離調可能な側面空洞を提供し、
前記少なくとも1つの離調可能な側面空洞のリアクタンスが、前記加速器に結合された電磁波の存在下で、前記電子スイッチが起動されていない場合に、電子スイッチを備えていない前記側面空洞のリアクタンスと実質的に同様になるように、前記少なくとも1つの離調可能な側面空洞が構成される、定在波線形加速器。
【請求項17】
前記少なくとも1つの離調可能な側面空洞がさらに1つ以上のポストを備え、前記少なくとも1つの離調可能な側面空洞の前記リアクタンスが、前記加速器に結合された前記電磁波の存在下で、前記電子スイッチが起動されていない場合に、電子スイッチを備えていない側面空洞の前記リアクタンスと実質的に同様になるように、前記ポストが構成される、請求項16に記載の定在波線形加速器。
【請求項18】
前記少なくとも1つの離調可能な側面空洞が1つ以上のポストをさらに備え、前記離調可能な側面空洞が銅を含み、前記1つ以上のポストの材料が銅合金、真鍮、セラミック、またはそれらの組み合わせである、請求項16に記載の定在波線形加速器。
【請求項19】
電磁波を前記加速器に結合することであって、
前記加速器が複数の主空洞および複数の側面空洞を備え、
各前記側面空洞が前記複数の主空洞の2つの隣接する主空洞に連結し、
前記複数の側面空洞の少なくとも1つの側面空洞が電子スイッチを備え、それによって少なくとも1つの離調可能な側面空洞を提供し、
前記少なくとも1つの離調可能な側面空洞のリアクタンスが、前記加速器に結合された電磁波の存在下で、前記電子スイッチが起動されていない場合に、電子スイッチを備えていない前記側面空洞のリアクタンスと実質的に同様になるように、前記少なくとも1つの離調可能な側面空洞が構成される、電磁波を前記加速器に結合することと、
前記加速器からあるエネルギーで放出される、電子の組を前記加速器に注入することとを含む、定在波線形加速器を操作する方法。
【請求項20】
前記電磁波が前記加速器に前記結合されることの前に、前記電子スイッチが起動される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記電子スイッチに電流を印加することにより、前記電子スイッチが起動される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記電子スイッチが導電性部材を含み、前記導電性部材が前記離調可能な側面空洞の内部に配置されている、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記電子スイッチの端部が前記離調可能な側面空洞の外部に延出し、前記電子スイッチの前記端部が少なくとも1つの同軸伝送線路に接続することができる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
同軸伝送線路を前記電子スイッチの前記端部に接続することにより、前記電子スイッチが起動される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
定在波線形加速器の、前記加速器の側面空洞内に配置された電子スイッチの発熱が好都合に低くなるような、高速切り替え操作の方法であって、
第1組の電子を前記加速器の縦導管に注入することであって、
前記加速器が複数の主空洞および複数の側面空洞を備え、各前記側面空洞が前記複数の主空洞の2つの隣接する主空洞と連通し、
前記縦導管が前記複数の主空洞と連通し、
前記複数の側面空洞の少なくとも1つの側面空洞の各々が電子スイッチを備え、それによって少なくとも1つの離調可能な側面空洞を提供し、
前記少なくとも1つの離調可能な側面空洞のリアクタンスが、前記加速器に結合された電磁波の存在下で、前記電子スイッチが起動されていない場合に、電子スイッチを備えていない前記側面空洞のリアクタンスと実質的に同様になるように、前記少なくとも1つの離調可能な側面空洞が構成され、
前記第1組の電子が前記縦導管内で前記加速器に結合された電磁波によって加速され、
前記第1組の電子が、前記電子スイッチが起動されていない場合に、前記加速器から第1エネルギーで放出される、第1組の電子を前記加速器の縦導管に注入することと、
前記少なくとも1つの離調可能な側面空洞の前記電子スイッチを起動することと、
前記第2組の電子が、前記第1エネルギーと異なる第2エネルギーで、前記加速器から放出される、第2組の電子を前記縦導管に注入することと、を含む方法。
【請求項26】
前記第2組の電子を前記注入することの前に、前記電子スイッチが起動される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記電子スイッチに電流を印加することにより、前記電子スイッチが起動される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記電子スイッチが導電性部材を含み、前記導電性部材が前記離調可能な側面空洞の内部に配置されている、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記電子スイッチの端部が前記離調可能な側面空洞の外部に延出し、前記電子スイッチの前記端部が少なくとも1つの同軸伝送線路に接続することができる、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
同軸伝送線路を前記電子スイッチの前記端部に接続することにより、前記電子スイッチが起動される、請求項29に記載の方法。
【請求項1】
定在波線形加速器の、前記加速器の側面空洞に配置された電子スイッチの発熱が好都合に低くなるような、高速切り替え操作の方法であって、
第1組の電子を前記加速器の縦導管に注入することであって、
前記加速器が複数の主空洞および複数の側面空洞を備え、各前記側面空洞が前記複数の主空洞の2つの隣接する主空洞と連通し、
前記縦導管が前記複数の主空洞と連通し、
前記複数の側面空洞の少なくとも2つの側面空洞の各々が電子スイッチを備え、それによって少なくとも2つの離調可能な側面空洞を提供し、
前記第1組の電子が前記縦導管内で、前記加速器に結合された電磁波によって加速され、
前記離調可能な側面空洞の前記電子スイッチが第1起動状態に起動される時に、前記第1組の電子が前記加速器から第1エネルギーで放出される、第1組の電子を縦導管に注入することと、
前記離調可能な側面空洞の少なくとも2つの前記電子スイッチを実質的に同時に、第2起動状態に起動することと、
第2組の電子を前記縦導管に注入することであって、
前記第2組の電子が、前記第1エネルギーと異なる第2エネルギーで、前記加速器から放出される、第2組の電子を縦導管に注入することと、を含む方法。
【請求項2】
前記離調可能な側面空洞が、前記電子スイッチが前記第1起動状態に起動される場合に離調される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1組の電子を前記縦導管内に注入する前に、前記離調可能な側面空洞の前記電子スイッチを、実質的に同時に、前記第1起動状態に起動することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1組の電子を前記注入することの前に、前記電子スイッチが、少なくとも1切り替え時間の時間間隔で、前記第1起動状態に起動される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第2組の電子を前記注入することの前に、前記電子スイッチが、少なくとも1切り替え時間の時間間隔で、前記第2起動状態に起動される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記電子スイッチが前記第2起動状態に起動される場合に、前記少なくとも2つの離調可能な側面空洞が離調される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記離調可能な側面空洞が前記加速器の側面に相互に隣接して配置されている、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記離調可能な側面空洞が、前記加速器の両側に対角線状に相互に向かい合うように配置されている、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記電子スイッチに第1電流を印加することにより、前記電子スイッチが前記第1起動状態に起動される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記電子スイッチを前記第2起動状態に起動する前記ステップが、前記電子スイッチに第2電流を印加することを含み、前記第1電流が前記第2電流と異なる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
各前記電子スイッチが導電性部材を含み、前記導電性部材が前記離調可能な側面空洞の内部に配置されている、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記離調可能な側面空洞の外部に延出する前記電子スイッチの端部が、少なくとも1つの同軸伝送線路に接続することができる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
第1同軸伝送線路を各前記電子スイッチに接続することにより、前記電子スイッチが第1起動状態に起動される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記電子スイッチを前記第2起動状態の電子スイッチに起動する前記ステップが、第2同軸伝送線路を各前記電子スイッチに接続することを含み、前記第1同軸伝送線路が前記第2同軸伝送線路と異なる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記加速器が3つ以上の離調可能な側面空洞を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
複数の主空洞および複数の側面空洞を備える定在波線形加速器であって、
各前記側面空洞が前記複数の主空洞の2つの隣接する主空洞に連結し、
前記複数の側面空洞の少なくとも1つの側面空洞が電子スイッチを備え、それによって少なくとも1つの離調可能な側面空洞を提供し、
前記少なくとも1つの離調可能な側面空洞のリアクタンスが、前記加速器に結合された電磁波の存在下で、前記電子スイッチが起動されていない場合に、電子スイッチを備えていない前記側面空洞のリアクタンスと実質的に同様になるように、前記少なくとも1つの離調可能な側面空洞が構成される、定在波線形加速器。
【請求項17】
前記少なくとも1つの離調可能な側面空洞がさらに1つ以上のポストを備え、前記少なくとも1つの離調可能な側面空洞の前記リアクタンスが、前記加速器に結合された前記電磁波の存在下で、前記電子スイッチが起動されていない場合に、電子スイッチを備えていない側面空洞の前記リアクタンスと実質的に同様になるように、前記ポストが構成される、請求項16に記載の定在波線形加速器。
【請求項18】
前記少なくとも1つの離調可能な側面空洞が1つ以上のポストをさらに備え、前記離調可能な側面空洞が銅を含み、前記1つ以上のポストの材料が銅合金、真鍮、セラミック、またはそれらの組み合わせである、請求項16に記載の定在波線形加速器。
【請求項19】
電磁波を前記加速器に結合することであって、
前記加速器が複数の主空洞および複数の側面空洞を備え、
各前記側面空洞が前記複数の主空洞の2つの隣接する主空洞に連結し、
前記複数の側面空洞の少なくとも1つの側面空洞が電子スイッチを備え、それによって少なくとも1つの離調可能な側面空洞を提供し、
前記少なくとも1つの離調可能な側面空洞のリアクタンスが、前記加速器に結合された電磁波の存在下で、前記電子スイッチが起動されていない場合に、電子スイッチを備えていない前記側面空洞のリアクタンスと実質的に同様になるように、前記少なくとも1つの離調可能な側面空洞が構成される、電磁波を前記加速器に結合することと、
前記加速器からあるエネルギーで放出される、電子の組を前記加速器に注入することとを含む、定在波線形加速器を操作する方法。
【請求項20】
前記電磁波が前記加速器に前記結合されることの前に、前記電子スイッチが起動される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記電子スイッチに電流を印加することにより、前記電子スイッチが起動される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記電子スイッチが導電性部材を含み、前記導電性部材が前記離調可能な側面空洞の内部に配置されている、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記電子スイッチの端部が前記離調可能な側面空洞の外部に延出し、前記電子スイッチの前記端部が少なくとも1つの同軸伝送線路に接続することができる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
同軸伝送線路を前記電子スイッチの前記端部に接続することにより、前記電子スイッチが起動される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
定在波線形加速器の、前記加速器の側面空洞内に配置された電子スイッチの発熱が好都合に低くなるような、高速切り替え操作の方法であって、
第1組の電子を前記加速器の縦導管に注入することであって、
前記加速器が複数の主空洞および複数の側面空洞を備え、各前記側面空洞が前記複数の主空洞の2つの隣接する主空洞と連通し、
前記縦導管が前記複数の主空洞と連通し、
前記複数の側面空洞の少なくとも1つの側面空洞の各々が電子スイッチを備え、それによって少なくとも1つの離調可能な側面空洞を提供し、
前記少なくとも1つの離調可能な側面空洞のリアクタンスが、前記加速器に結合された電磁波の存在下で、前記電子スイッチが起動されていない場合に、電子スイッチを備えていない前記側面空洞のリアクタンスと実質的に同様になるように、前記少なくとも1つの離調可能な側面空洞が構成され、
前記第1組の電子が前記縦導管内で前記加速器に結合された電磁波によって加速され、
前記第1組の電子が、前記電子スイッチが起動されていない場合に、前記加速器から第1エネルギーで放出される、第1組の電子を前記加速器の縦導管に注入することと、
前記少なくとも1つの離調可能な側面空洞の前記電子スイッチを起動することと、
前記第2組の電子が、前記第1エネルギーと異なる第2エネルギーで、前記加速器から放出される、第2組の電子を前記縦導管に注入することと、を含む方法。
【請求項26】
前記第2組の電子を前記注入することの前に、前記電子スイッチが起動される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記電子スイッチに電流を印加することにより、前記電子スイッチが起動される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記電子スイッチが導電性部材を含み、前記導電性部材が前記離調可能な側面空洞の内部に配置されている、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記電子スイッチの端部が前記離調可能な側面空洞の外部に延出し、前記電子スイッチの前記端部が少なくとも1つの同軸伝送線路に接続することができる、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
同軸伝送線路を前記電子スイッチの前記端部に接続することにより、前記電子スイッチが起動される、請求項29に記載の方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【公表番号】特表2012−533153(P2012−533153A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519611(P2012−519611)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/040864
【国際公開番号】WO2011/005668
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(505172824)アキュレイ インコーポレイテッド (13)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【国際出願番号】PCT/US2010/040864
【国際公開番号】WO2011/005668
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(505172824)アキュレイ インコーポレイテッド (13)
【Fターム(参考)】
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