説明

電子デバイス検査装置及び電子デバイスを保持する治具

【課題】所望する傾斜状態で電子デバイスの電気的特性の検査を行なうことができる電子デバイス検査装置を提供する。
【解決手段】加速度センサー等の電子デバイスを検査する電子デバイス検査装置に、電子デバイスを温度調整する温度調整手段30、鉛直方向と直交する第1の水平方向を軸心として第1のモータ35により回転される第1の軸部36、第1の水平方向を軸心として回転される挟持手段28、挟持手段28の固定された第1の軸部36を第2のモータ38により任意の角度に回転させる第2の軸部39を備える。これにより、挟持手段28に挟持された電子デバイスを保持した治具7を、第1の軸部36と第2の軸部39からなる2軸により任意の方向に自由に傾斜させることができるので、温度調整手段30で所定の温度になされた電子デバイスを所望する任意の方向に傾斜させた状態で電気的特性の検査を行なうことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の傾斜状態で電子デバイスの電気的特性を検査する電子デバイス検査装置及び電子デバイスを保持する治具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話などの電子機器には、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いた加速度センサーが搭載されてきている。こうした加速度センサーには、傾斜角度の検出を行なうための電子デバイスが搭載されているが、その個体差、常温、低温、高温等の環境下において出力される電圧に変化が生じるため、常温、低温、高温時の環境下で、製造された電子デバイスの電気的特性の検査が一般的に行われている。
【0003】
特許文献1には、常温、低温、高温の環境下で電子デバイスの姿勢を変化させ、所定の傾斜角度における電子デバイスの電気的特性を検査する検査方法及び装置が開示されている。また、特許文献2には、電子デバイスを所定角度に傾斜させた状態でその電子デバイスの電気的特性を検査する検査方法及び装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−292774号公報
【特許文献2】特開2005−326384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来における一般的な電子デバイスの電気的特性の検査においては、低温、常温、高温に電子デバイスを温度変化させた状態で行なうため、例えば、−30℃等に極めて低温化された電子デバイスを単に25℃などの常温にしたりすると、その温度変化の過程で電子デバイスの表面に結露が発生する懸念があり、結露が発生したりすると、電子デバイスを搬送する装置の作動に伴い、電子デバイスに付着した結露が飛散したり滴下してしまい、装置や電子デバイスの故障を招いてしまう虞がある。
【0006】
また、特許文献1及び2においては、低温、常温、及び高温の三者で検査対象たる電子デバイスを検査するに際し、直線的に配列された低温調整検査部、常温調整検査部、高温調整検査部へ直線的に配設されたコンベアを用いて電子デバイスが搬送されることから、電子デバイスをロードするコンベアの入口とアンロードする出口の距離が必然的に離れざるを得ないため、オペレータが、電子デバイスの供給及び回収作業が正常に行なわれているか否か保守・点検するに際しては、いちいちコンベアの入口と出口との間を移動しなければならず作業性に劣ることになる。
【0007】
特許文献1及び2における検査装置おいては、電子デバイスを傾斜することを目的とした単独の回転測定ユニットを備え、保持した電子デバイスを回転測定ユニットにより一定方向に回転させることで、0度、90度、180度、270度の角度で傾斜させた状態で電子デバイスの電気的特性を検査することが可能ではあるものの、電子デバイスを傾斜させる方向いかんによっては、傾斜角度が同じであったとしても電子デバイスの電気的特性に変化が生じるため、回転方向を各種方向に変えて検査するには、所望する回転方向になるように、回転測定ユニットに保持される電子デバイスの向きをいちいち手作業で変えるなどして対応しなければならないことから、上下・左右・前後方向の3方向に電子デバイスを傾斜させた状態で検査を行なうには、手作業で電子デバイスの取り付け方向を着脱して向きを代える作業が生じてしまうことから、検査工程に時間を費やしてしまい、製品のコストの上昇を招いてしまう。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、所望する傾斜状態で電子デバイスの電気的特性の検査を行なうことができる電子デバイス検査装置及び電子デバイスを保持する治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る電子デバイス検査装置は、
鉛直方向と直交する第1の水平方向を軸心として、第1のモータにより回転される第1の軸部と、
該第1の軸部に固定されることにより前記第1の水平方向を軸心として回転される挟持手段と、
該挟持手段を回転自在に保持する保持部材と、
前記挟持手段の固定された前記第1の軸部を、前記第1の水平方向と直交する第2の水平方向を軸心として、第2のモータにより水平方向から任意の角度に回転させる第2の軸部とを備え、
前記挟持手段に挟持された電子デバイスを保持した治具を、前記第1の軸部と前記第2の軸部とを軸心方向として回転できるようにすることで、前記挟持手段に前記治具を介して保持された電子デバイスを任意の角度に傾斜させた状態でその電気的特性を検査する検査ユニットを、備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項1の電子デバイス検査装置の発明によれば、第1の軸部と第2の軸部を軸心として、挟持手段に挟持された電子デバイスを回転(X´、Y´、Z´回転)させ傾斜させることができ、しかも、第2の軸部を軸心として第1の軸部を所望する位置に回転させ傾斜させることで、第1,第2の軸部からなる2軸を用いて挟持手段に保持した電子デバイスを向けられない方向はないよう全方向に自由に傾斜させることができる。よって、所望する任意の方向に電子デバイスを自由に傾斜させた状態で検査を行なうことができる。
【0011】
請求項2に係る電子デバイス検査装置は、請求項1において、
前記電子デバイスの保持された治具を挟持した状態で、前記電子デバイスを加熱又は冷却する温度調整手段を、前記挟持手段に設けたことを特徴とする。
【0012】
請求項2の電子デバイス検査装置の発明によれば、任意の方向に傾斜された電子デバイスの検査を、温度調整手段の加熱や冷却により、常温、低温、冷却した状態で行うことができる。
【0013】
請求項3に係る電子デバイス検査装置は、請求項2において、
前記温度調整手段により前記電子デバイスを常温、低音、高温にした状態で、前記治具に保持された電子デバイスを所定方向に傾斜させた状態で電気的特性の検査を行なうことができるように、
前記検査ユニットとして、
前記電子デバイスを常温で検査する常温検査ユニットと、
前記電子デバイスを前記常温より低い低温で検査する低温検査ユニットと、
前記電子デバイスを前記常温より高い高温で検査する高温検査ユニットと、を備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項3の電子デバイス検査装置によれば、電子デバイス検査装置に構成される検査ユニットとして、常温検査ユニット、低温検査ユニット、及び高温検査ユニットを備えたので、電子デバイスを、常温、低温、及び高温にした状態で電気的特性の検査を行うことができる。
【0015】
請求項4に係る電子デバイス検査装置は、請求項3において、
前記常温検査ユニットで常温化される前記電子デバイスの常温温度を、15℃以上35℃以下とすることを特徴とする。
【0016】
請求項4の電子デバイス検査装置によれば、15℃以上35℃以下の常温状態の電子デバイスの検査、それより高い高温状態における電子デバイスの検査、常温より低い低温状態における電子デバイスの検査を行なうことができる。
【0017】
請求項5に係る電子デバイス検査装置は、請求項1〜4の何れか1項において、
前記電子デバイスを収容する載置凹部と、一方を支点として作動される板バネを収容した板バネ挿入凹部とを前記治具に連設して形成し、
前記挟持手段により前記治具を挟持するのに伴い、前記載置凹部に収容された電子デバイスに対して前記板バネを弾接させる作動手段を前記挟持手段に設けたことを特徴とする。
【0018】
請求項5の電子デバイス検査装置によれば、挟持手段が治具を挟持するのに伴い、作動手段が板バネを介して電子デバイスを弾接し位置決めするので、治具に対して電子デバイスが位置ずれしないよう確実に保持させることができる。
【0019】
請求項6に係る電子デバイスを保持する治具は、請求項5において、
前記電子デバイスを収容した載置凹部と、
該載置凹部と連設されると共に一方を支点として作動される板バネを収容した板バネ挿入凹部と、
該板バネ挿入凹部に収容された板バネを押圧するための、前記作動手段たる板バネ動作ピンが挿脱されるピン挿通孔とを前記治具に形成し、
前記挟持手段により前記治具を挟持するのに伴い前記板バネ動作ピンがピン挿通孔に挿通されたとき、
前記板バネ動作ピンにより前記板バネが押圧されることで前記載置凹部に収容された電子デバイスに対し前記板バネが弾接される位置になるように、前記板バネ挿入凹部に連設して前記ピン挿通孔を形成したことを特徴とする。
【0020】
請求項6の電子デバイスを保持する治具によれば、挟持手段が治具を挟持するのに伴い、挟持手段の板バネ動作ピンが治具に形成されたピン挿通孔されたときに、板バネが載置凹部に収容された電子デバイスを弾接する位置になるように、板バネ動作ピンが挿通されるピン挿通孔を板バネ挿入凹部に連設して形成しているので、治具に対して載置凹部に収容された電子デバイスが位置ずれしないよう保持させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、第1,第2の軸部からなる2軸により挟持手段に保持した電子デバイスを向けられない方向はないよう全方向に自由に傾斜させ、所望する任意の方向に電子デバイスを自由に傾斜させた状態で検査を行なうことができる。よって、電子デバイスを傾斜させる方向を所望する傾斜状態で検査するに際し、従来のように、手作業で電子デバイスの傾斜方向を変えるためにその取り付け方向を着脱して向きを代えるような煩雑な作業を解消することができ、電子デバイスの電気的特性の検査を短時間で効率良く行なうことが可能になるから、ひいては、製品のコストを安価に抑えることができる。
【0022】
さらに、温度調整手段により所望する方向に傾斜された電子デバイスの検査を、常温検査ユニット、低温検査ユニット、高温検査ユニット等により、15℃以上35℃以下等の常温、これより低い低温、或いは、常温より高い高温にさせた状態で行うことができるから、これらの各々の環境下における、電子デバイスの電気的特性を判別することができる。
【0023】
さらに、挟持手段が治具を挟持するのに伴い、板バネを電子デバイスに弾接させ、治具に対して電子デバイスが位置ずれしないよう確実に保持させることができるから、電子デバイスの電気的特性の検査を高精度で行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一例の電子デバイスの電気的特性の検査を行なう電子デバイス検査装置を示す平面図である。
【図2】同上、電子デバイス検査装置に構成された常温検査ユニットを側方から視た状態を示す側面図である。
【図3】同上、常温検査ユニットの要部を示す拡大側面図である。
【図4】同上、常温検査ユニットを上方から視た状態を示す平面図である。
【図5】同上、Y軸方向に挟持手段を配置した状態の常温検査ユニットを示す斜視図である。
【図6】同上、挟持手段をZ軸方向に配置すると共に下方側に90度回転させた状態の常温検査ユニットを示す斜視図である。
【図7】同上、挟持手段をY軸方向に配置すると共に90度回転させた状態の常温検査ユニットを示す斜視図である。
【図8】同上、挟持手段をZ軸方向に配置すると共に上方側に90度回転させた状態の常温検査ユニットを示す斜視図である。
【図9】同上、Y軸方向に挟持手段を配置した状態の常温検査ユニットを示す斜視図である。
【図10】同上、挟持手段をY軸方向に配置すると共に90度回転させた状態の常温検査ユニットを示す斜視図である。
【図11】同上、挟持手段をY軸方向に配置すると共に180度回転させた状態の常温検査ユニットを示す斜視図である。
【図12】同上、複数の電子デバイスを保持する治具を示す平面図である。
【図13】同上、治具の要部を示す拡大平面図である。
【図14】同上、電子デバイスを治具に保持した状態を示す拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明を実施するための最良の形態としての実施例を以下に説明する。もちろん、本発明は、その発明の趣旨に反しない範囲で、実施例において説明した以外の構成のものに対しても容易に適用可能なことは説明を要するまでもない。
【0026】
図1はMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いた加速度センサーや傾斜角度センサー等の電子デバイスの電気的特性の検査を行なう電子デバイス検査装置を示す平面図である。同図に示すように、電子デバイス検査装置1には、駆動源たるサーボモータ2により、機台3に回転自在に保持された、鉛直方向の回転軸部4を軸心として回転される略円盤状のターンテーブル5、このターンテーブル5に保持された治具7に検査対象たる電子デバイス6をロード位置aにて供給したりアンロード位置bから回収を行なうロボット8、後述する、3つの検査ユニット(常温検査ユニット10、低温検査ユニット11、高温検査ユニット12)、これら3つの検査ユニット10,11,12で0度〜180度等の角度で傾斜させた状態であって所定の温度になされた電子デバイス6の検査結果情報の補正(補正計算)を行なうと共にそれと同時に電子デバイス6の検査結果情報を対応する電子デバイス6に書き込みを行なうデータ記録手段としてのキャリブレーション装置13、電子デバイス6に品名・Lotナンバーなどを印字するレーザーマーク装置等の印字装置14、常温検査ユニット10による電子デバイス6の常温検査後に、ターンテーブル5により搬送されてきた電子デバイスの結露を抑えるドライエアー供給室15、第1,第2の予備加熱手段16,17等を備えている。なお、前記治具7はアルマイト処理がなされていることで絶縁性を有していると共に外観は平板状の矩形に形成されており、また、ターンテーブル5の外周側には、前記回転軸部4を中心として18度間隔で前記治具7が着脱自在に保持されている。
【0027】
本実施例におけるターンテーブル5は一定方向(図1に示す反時計回り)に回転されるように構成されており、ロボット8により、治具7の所定位置(後述する載置凹部46)に複数の電子デバイス6の供給が行なわれるようになっており、電子デバイスが供給されるロード位置aから電子デバイス6の回収されるアンロード位置b間の略円形の搬送経路の途中には、常温検査ユニット10、低温検査ユニット11、高温検査ユニット12がターンテーブル5の外周に沿うようにして配設されている。
【0028】
また、20は検査対象たる複数の電子デバイス6が予めストックされるトレイ装置であり、このトレイ装置20のロードトレイ18に載置された電子デバイス6は、前述したロボット8によりロードトレイ18上に載置された電子デバイス6を、ロード位置aに配置された治具7に供給する一方で、キャリブレーション装置13に出力された電子デバイス6の検査結果情報が、所定の条件を満たした良品の場合には、ロボット8がターンテーブル5の回転によりアンロード位置bに配置された治具7から良品の電子デバイス6を選別して良品用トレイ21へと移載する一方で、所定の検査条件を満たさない不良の電子デバイス6の場合には、ロボット8がアンロード位置bに配置された治具7から不良品専用トレイ22へ移載して回収される。
【0029】
図2は常温検査ユニットを側方から視た状態を示す側面図、図3は常温検査ユニットの要部を示す拡大側面図、図4は常温検査ユニットを上方から視た状態を示す平面図である。図2〜図4に示すように、常温検査ユニット10は、機台3に固定されたガイドレール23に沿って進退されるようになっていると共に、ターンテーブル5の回転により搬送されてきた治具7を挟持する挟持手段28を備え、この挟持手段28には、プローブ装置24が上部に設けられると共に上下にスライド自在な支持部25と、保持部26等からなる挟持手段28を備えている。挟持手段28により水平に挟持される治具7は、支持部25が上方にスライドすることで保持部26の下面に構成された温度調整手段30の下面とプローブ装置24の上面とにより電子デバイス6の保持された治具7を挟持した状態で、電子デバイス6の電気的特性の検査が行なわれるようになっており、ターンテーブル5から常温検査ユニット10へ電子デバイス6の保持された治具7が引き渡される際には、常温検査ユニット10に最も近接したターンテーブル5の係止爪31に係止されている治具7が挟持手段28により挟持された後、治具7が係止爪31から外されてターンテーブル5上から常温検査ユニット10へと取り出され、常温検査ユニット10がガイドレール23により後退(図2に示す左方向)されてから、温度調整手段30が加熱(若しくは冷却)されることにより治具7に保持された複数の電子デバイス6が常温化(本実施例では25℃)される。
【0030】
ここで、常温検査ユニット10等について、図5〜図11及び図2に基づきさらに詳述する。これらの図に示すように、常温検査ユニット10は、機台3に固定されたガイドレール23にフレーム43を介して進退自在に取り付けられており、第1の軸部36の軸心はY軸方向からZ軸方向等に回転移動できる一方で第2の軸部39の軸心はX軸方向に保持されている。常温検査ユニット10には、第1のモータ35の第1の軸部36の先端に、前述した挟持手段28が固定されており、図5においては、挟持手段28が鉛直方向と直交する水平なY軸方向を軸心として回転自在に保持されている。また、第1のモータ35の第1の軸部36はコ字型の保持部材37により回動自在に保持されており、この保持部材37は、第2のモータ38を駆動することにより、この第2のモータ38の第2の軸部39に固定されたプーリ40、及び、駆動伝達ベルト41、被動プーリ42を介して、第1の軸部36と直交関係を有する第2の軸部39のX軸方向を軸心として保持部材37を回転することができる。
【0031】
また、保持部材37は、図5に示されているように、挟持手段28で治具7を水平に保持した状態から、図6や図8に示すように、第1の軸部36を90度回転することにより、第1のモータ35の第1の軸部36の軸心を、Y軸方向から鉛直方向のZ軸方向等に切り替えることができるようになっており、第1の軸部36と第2の軸部39の2軸により、相互に直交関係を有するX軸、Y軸、Z軸方向を軸心として3次元的に、挟持手段28に挟持した治具7を傾斜することが可能になっている。なお、常温検査ユニット10について説明したが、低温検査ユニット11及び高温検査ユニット12についても、常温検査ユニット10と実質的に同様の構成を備えており、前者の低温検査ユニット11においては、常温検査ユニット10で常温化された治具7に保持されている複数の電子デバイス6が、低温検査ユニット11の温度調整手段30により低温化(本実施例では−20℃)され、後者の高温検査ユニット12においては、低温検査ユニット11で低温化された治具7に保持されている複数の電子デバイス6が、高温検査ユニット12の温度調整手段30により高温化(本実施例では80℃)される点で前述した常温検査ユニット10とはその機能が異なるに過ぎないことから、低温検査ユニット11及び高温検査ユニット12の説明は省略する。
【0032】
次に、複数の電子デバイス6を保持する治具7について、図12〜図14により以下にさらに説明する。図12は複数の電子デバイスが保持される治具を示す平面図、図13は治具の要部を示す拡大平面図、図14は電子デバイスを治具に保持させた状態を示す拡大平面図である。図12に示すようにこの治具7には、治具7が位置決めされるための位置決め孔45が一対形成されていると共に、治具7に保持される電子デバイス6の数(本実施例では24箇所)に対応して、電子デバイス6が載置される凹状の載置凹部46と、板バネ挿入凹部47と、ピン挿通孔48とからなる形成部が24箇所形成されている。
【0033】
図13に示すように、板バネ挿入凹部47の基端部側には、板バネ支点部50が設けられており、板バネ挿入凹部47に挿通されている板バネ51は、板バネ支点部50により一方が固定されている。そして、図14に示すように、載置凹部46の上に載置された電子デバイス6は、ピン挿通孔48に板バネ動作ピン52が挿入されることで板バネ51の先端部が電子デバイス6の側部側の角部を板バネ51の弾性力により押圧され、治具7から電子デバイス6が脱落等しないよう位置決めされ且つ強固に保持される。そして、電子デバイス6の電気的特性を検査する際には、載置凹部46に形成された挿通孔53から、プローブ装置24に備えたコンタクトプローブ(導電接触子)54が挿通され、コンタクトプローブ(導電接触子)54が電子デバイス一方面の端子に接続されることで、治具7に保持されている電子デバイス6を、所定の温度(本実施例では、25℃(常温)、−20℃(低温)、80℃(高温))であって、且つ前述したX軸、Y軸、Z軸を軸心方向として所定角度に回転(X´回転、Y´回転、Z´回転)させ傾斜(0度、90度、180度等)させた状態で電気的特性の検査が行なわれる。なお、X´回転とはX軸を軸心とする回転方向を指し、Y´回転はY軸を軸心とする回転方向を指し、Z´回転はZ軸を軸心とする回転方向を指すものとして定義する。
【0034】
次に、電子デバイス検査装置1における電子デバイス6の検査工程について説明する。
【0035】
先ず、トレイ装置20にストックされている複数の電子デバイス6を保持したロードトレイ18から、ターンテーブル5の係止爪31に係止されていると共にロード位置aに有する治具7のすべての載置凹部46に対して、ロボット8により電子デバイス6が載置され満たされると、ターンテーブル5は回転軸部4を中心として反時計回りに18度毎に回転され、その回転の度に、ロード位置aへ搬送された治具7の載置凹部46には、前述した工程と同様に、順次電子デバイス6が載置され満たされてゆく。
【0036】
ターンテーブル5の回転に伴い、電子デバイス6の載置された治具7が常温検査ユニット10まで搬送されてゆくと、常温検査ユニット10の挟持手段28により治具7が水平状態で挟持され、これに伴い、治具7の位置決め孔45及びピン挿通孔48に、図3に示す温度調整手段30に一体に設けられた板バネ動作ピン52が挿通され、さらに板バネ動作ピン52がピン挿通孔48に挿入され、板バネ51の先端部は電子デバイス6の側部側の角部を弾性的に押圧し、載置凹部46内の電子デバイス6は位置決めされ且つ強固に保持されると共に、プローブ装置24に設けたコンタクトプローブ54が挿通孔53を介して各電子デバイス6の端子に接触され、治具7及び治具7に保持された電子デバイス6は水平に保持される(図5に示した状態)。
【0037】
そして、係止爪31から治具7が取り外され、常温検査ユニット10はガイドレール23により後退され、ターンテーブル5と接触しない位置まで後退されると、常温検査ユニット10に対して、治具7を介して保持された電子デバイス6は、温度調整手段30により加熱(或いは冷却)されることで、25℃の常温が維持され、その状態において、X軸、Y軸、Z軸の3方向の各々を軸心方向として、0度、90度、180度の所定の各角度で傾斜された各電子デバイス6の電気的特性の検査が行なわれ、その各検査結果情報がプローブ装置24を介してキャリブレーション装置13に出力され、次に、常温検査ユニット10はガイドレール23に沿って前進され、ターンテーブル5上のもとの位置に治具7が戻され、再び係止爪31に係止されターンテーブル5に保持される。
【0038】
続いて、ターンテーブル5の回転に伴い、複数の電子デバイス6が保持された治具7が乾燥空気の満たされたドライエアー供給室15内に搬送され、その内部で電子デバイス6の乾燥がなされ、乾燥中にある電子デバイス6の保持された治具7が低温検査ユニット11まで搬送されてゆくと、常温検査ユニット10のときと同様に、低温検査ユニット11の挟持手段28によって治具7が挟持され、これに伴い、治具7の位置決め孔45及びピン挿通孔48に温度調整手段30に一体に設けられた板バネ動作ピン52が挿通され、さらに板バネ動作ピン52がピン挿通孔48に挿入され、板バネ51の先端部は電子デバイス6の側部側の角部を弾性的に押圧し、載置凹部46内の電子デバイス6は位置決めされ且つ強固に保持され、プローブ装置24に設けたコンタクトプローブ54が挿通孔53を介して各電子デバイス6の端子に接触され、治具7及び治具7に保持された電子デバイス6が水平に保持され、係止爪31から治具7が取り外され、低温検査ユニット11はガイドレール23により後退され、ターンテーブル5と接触しない位置まで後退される。そして、低温検査ユニット11に治具7を介して保持された電子デバイス6は、温度調整手段30により冷却されることで、−20℃の低温が維持され、その状態において、X軸、Y軸、Z軸の3方向の各々を軸心方向として、0度、90度、180度の所定の各角度で傾斜された各電子デバイス6の電気的特性の検査が行なわれ、その各検査結果情報がキャリブレーション装置13に出力され、低温検査ユニット11はガイドレール23に沿って前進され、ターンテーブル5上のもとの位置に治具7が戻され、再び係止爪31に係止されターンテーブル5に保持される。
【0039】
続いて、ターンテーブル5の回転に伴い、冷却された電子デバイス6の保持された治具7が高温検査ユニット12まで搬送されてゆくと、常温検査ユニット10や低温検査ユニット11のときと同様に、高温検査ユニット12の挟持手段28によって治具7が挟持され、これに伴い、治具7の位置決め孔45及びピン挿通孔48に、温度調整手段30に一体に設けられた板バネ動作ピン52が挿通され、さらに板バネ動作ピン52がピン挿通孔48に挿入され、板バネ51の先端部は電子デバイス6の側部側の角部を弾性的に押圧し、載置凹部46内の電子デバイス6は位置決めされ且つ強固に保持され、プローブ装置24に設けたコンタクトプローブ54が挿通孔53を介して各電子デバイス6の端子に接触され、治具7及び治具7に保持された電子デバイス6が水平に保持され、係止爪31から治具7が取り外され、高温検査ユニット12はガイドレール23により後退され、ターンテーブル5と接触しない位置まで後退される。
そして、高温検査ユニット12に治具7を介して保持された電子デバイス6は、温度調整手段30により加熱されることで、80℃の高温に維持され、その状態において、X軸、Y軸、Z軸の3方向の各々を軸心方向として、0度、90度、180度の所定の各角度で傾斜された各電子デバイス6の電気的特性の検査が行なわれ、その各検査結果情報がキャリブレーション装置13に出力され、高温検査ユニット12はガイドレール23に沿って前進され、ターンテーブル5上のもとの位置に治具7が戻され、再び係止爪31に係止されターンテーブル5に保持される。
【0040】
次に、常温、低温、高温の順序で検査された複数の電子デバイス6を保持した治具7は、ターンテーブル5の回転に伴いキャリブレーション装置13まで搬送されてゆくと、常温検査ユニット10、低温検査ユニット11、及び高温検査ユニット12から出力された各電子デバイス6の各々に対応する検査結果情報に基づき、電子デバイスのそれぞれに電気的特性の書き込み及び補正計算が行なわれる。
【0041】
続いて、常温、低温、高温の順序で検査された複数の電子デバイス6を保持した治具7は、ターンテーブル5の回転に伴い印字装置14まで搬送されてゆき、所定の条件を満たした良品の場合には、印字装置14により品名・Lotナンバーなど(図示せず)が電子デバイス6の表面に付与され、この品目・Lotナンバーなどの付与された電子デバイス6は、ロボット8によりロード位置a近傍に配置されているアンロード位置bから良品用トレイ21へと回収される。その一方で、所定の条件を満たさない不良品の場合には、ロボット8によりアンロード位置bから不良品専用トレイ22へ不良品の電子デバイス6が回収される。そして、こうした動作工程が順次繰り返し行なわれることで、電子デバイス6の検査が多数連続して行われる。
【0042】
以上のように、本発明の一例によれば、鉛直方向(Z軸方向)と直交する第1の水平方向(Y軸方向)を軸心として、第1のモータ35により回転される第1の軸部36と、第1の軸部36に固定されることにより第1の水平方向(Y軸方向)を軸心として回転される挟持手段28と、挟持手段28の固定された第1の軸部36を回転自在に保持する保持部材37と、挟持手段28の固定された第1の軸部36を、鉛直方向(Z軸方向)及び第1の水平方向(Y軸方向)の各々と直交する第2の水平方向(X軸方向)を軸心として、第2のモータ38により保持部材37等を介して、鉛直方向(Z軸方向)等へ回転する第2の軸部39とを備え、挟持手段28に挟持された電子デバイス6を保持した治具7を、相互に直交関係を有する第1の水平方向(Y軸方向)、鉛直方向(Z軸方向)、第2の水平方向(X軸方向)を軸心方向として3方向に回転(Y´回転、Z´回転、X´回転)できるようにすることで、挟持手段28に治具7を介して保持された電子デバイス6を所定方向に傾斜させた状態でその電気的特性の検査を行なうことができる。しかも、第1の水平方向(Y軸方向)に配置された第1の軸部36を、第2の水平方向(X軸方向)を軸心として、Y軸方向以外の任意の角度にも回転させることができる第2の軸部39を備えているので、第1の軸部36の軸心方向をZ軸方向に配置できるのはもちろんのこと、それ以外の所望する任意の位置にも回転して配置させることができる。よって、第1,第2の軸部36,39からなる2軸を用いて、挟持手段28に保持した電子デバイス6を向けられない方向はないよう全方向に自由に傾斜させることが可能になり、所望する任意の方向に電子デバイス6を自由に傾斜させた状態で検査を行なうこともできる。従って、電子デバイス6の傾斜方向を変えて電子デバイスの検査をするに際し、従来のように、手作業で電子デバイスの取り付け方向を着脱して向きを代える煩雑な作業を解消でき、電子デバイス6の電気的特性の検査を短時間で効率良く行ない製品のコストを抑えることができる。
【0043】
さらに、温度調整手段30により電子デバイス6を常温、低音、高温にした状態で、第1の水平方向(Y軸方向)、鉛直方向(Z軸方向)、第2の水平方向(X軸方向)を軸心方向として回転させ、治具7に保持された電子デバイス6を所定方向に傾斜させた状態で電気的特性の検査を行なうことができるように、電子デバイス6を常温で検査する常温検査ユニット10と、電子デバイス6を常温より低い低温で検査する低温検査ユニット11と、電子デバイス6を常温より高い高温で検査する高温検査ユニット12とを備え、これらの検査ユニット10,11,12の各挟持手段28に電子デバイス6の加熱又は冷却をする温度調整手段30を設けたので、X軸、Y軸、Z軸を軸心方向として、0度、90度、及び180度に傾斜させた電子デバイス6や、任意の方向に回転させ傾斜させた電子デバイス6の検査を、各温度調整手段30の加熱や冷却により、常温、低温、冷却した状態で行うことができる。よって、環境下の異なる電子デバイス6の電気的特性を判別することが可能になる。
【0044】
さらに、電子デバイス6を収容する載置凹部46と、一方を支点として作動される板バネ51を収容した板バネ挿入凹部47とを治具7に連設して形成し、挟持手段28により治具7を挟持するのに伴い、載置凹部46に収容された電子デバイス6に対して板バネ51を弾接させる作動手段たる板バネ動作ピン52を挟持手段28に設けると共に、板バネ動作ピン52により板バネ51が押圧されることで載置凹部46に収容された電子デバイス6に対し板バネ51が弾接される位置になるように、板バネ挿入凹部47に連設してピン挿通孔48を形成したので、治具7に対し載置凹部46に収容された電子デバイス6が位置ずれしないよう確実に保持させることができるから、電子デバイス6の電気的特性の検査を高精度で行なうことができる。
【0045】
以上、本発明の一例を詳述したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。例えば本実施例では、図1に示すように、第1,第2の予備加熱手段16,17を備えていることから、常温検査ユニット10や高温検査ユニット12へ電子デバイス6が治具7と共に回転搬送されてゆく途中の前段階で、電子デバイス6を予め加熱するようにしてもよい。また、本実施例では、高温を80℃、常温を25℃、低温を−20℃としたが、高温を70℃以上90℃以下、常温を15℃以上35℃以下、低温を−30以上−10℃以下にするなど適宜選定実施してもよく、また、高温、常温、低温の温度が規格化された際には、その規格に対応した常温、低温、高温に温度設定できるようにしてもよい。また、本実施例における温度調整手段30により加熱や冷却を行う際には、ペルチェ素子を冷却源・加熱源としてもよいし、また、加熱源のみあれば足りる場合には、セラミックヒータを具備した加熱プレート等を高温検査ユニット12の温度調整手段として適宜選定してもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 電子デバイス検査装置
6 電子デバイス
7 治具
10 常温検査ユニット(検査ユニット)
11 低温検査ユニット(検査ユニット)
12 高温検査ユニット(検査ユニット)
28 挟持手段
30 温度調整手段
35 第1のモータ
36 第1の軸部
37 保持部材
38 第2のモータ
39 第2の軸部
46 載置凹部
47 板バネ挿入凹部
48 ピン挿通孔
51 板バネ
52 板バネ動作ピン(作動手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向と直交する第1の水平方向を軸心として、第1のモータにより回転される第1の軸部と、
該第1の軸部に固定されることにより前記第1の水平方向を軸心として回転される挟持手段と、
該挟持手段を回転自在に保持する保持部材と、
前記挟持手段の固定された前記第1の軸部を、前記第1の水平方向と直交する第2の水平方向を軸心として、第2のモータにより水平方向から任意の角度に回転させる第2の軸部とを備え、
前記挟持手段に挟持された電子デバイスを保持した治具を、前記第1の軸部と前記第2の軸部とを軸心方向として回転できるようにすることで、前記挟持手段に前記治具を介して保持された電子デバイスを任意の角度に傾斜させた状態でその電気的特性を検査する検査ユニットを、備えたことを特徴とする電子デバイス検査装置。
【請求項2】
前記電子デバイスの保持された治具を挟持した状態で、前記電子デバイスを加熱又は冷却する温度調整手段を、前記挟持手段に設けたことを特徴とする請求項1記載の電子デバイス検査装置。
【請求項3】
前記温度調整手段により前記電子デバイスを常温、低音、高温にした状態で、前記治具に保持された電子デバイスを所定方向に傾斜させた状態で電気的特性の検査を行なうことができるように、
前記検査ユニットとして、
前記電子デバイスを常温で検査する常温検査ユニットと、
前記電子デバイスを前記常温より低い低温で検査する低温検査ユニットと、
前記電子デバイスを前記常温より高い高温で検査する高温検査ユニットと、を備えたことを特徴とする請求項2記載の電子デバイス検査装置。
【請求項4】
前記常温検査ユニットで常温化される前記電子デバイスの常温温度を、15℃以上35℃以下とすることを特徴とする請求項3記載の電子デバイス検査装置。
【請求項5】
前記電子デバイスを収容する載置凹部と、一方を支点として作動される板バネを収容した板バネ挿入凹部とを前記治具に連設して形成し、
前記挟持手段により前記治具を挟持するのに伴い、前記載置凹部に収容された電子デバイスに対して前記板バネを弾接させる作動手段を前記挟持手段に設けたことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の電子デバイス検査装置。
【請求項6】
前記電子デバイスを収容した載置凹部と、
該載置凹部と連設されると共に一方を支点として作動される板バネを収容した板バネ挿入凹部と、
該板バネ挿入凹部に収容された板バネを押圧するための、前記作動手段たる板バネ動作ピンが挿脱されるピン挿通孔とを前記治具に形成し、
前記挟持手段により前記治具を挟持するのに伴い前記板バネ動作ピンがピン挿通孔に挿通されたとき、
前記板バネ動作ピンにより前記板バネが押圧されることで前記載置凹部に収容された電子デバイスに対し前記板バネが弾接される位置になるように、前記板バネ挿入凹部に連設して前記ピン挿通孔を形成したことを特徴とする請求項5に記載の電子デバイスを保持する治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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