説明

電子ヒューズ回路内の電流検知素子としての受動ヒューズの使用

トランジスタと、トランジスタに結合される受動ヒューズと、受動ヒューズ及びトランジスタの両方に結合される制御ロジックとを備えるシステム。制御ロジックは、受動ヒューズの両端での電圧降下を検知することによって、受動ヒューズの中に流れる電流を判断し、受動ヒューズの中に流れる電流が所定の値を超える場合には、トランジスタに信号を送り、オフにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ヒューズ回路内の電流検知素子としての受動ヒューズの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
電気回路及び電子回路において故障電流を分離するために、従来から受動ヒューズが用いられている。
ヒューズは、金属線又はストリップを含むヒュージブルリンクデバイスであり、その中に過大な電流が流れると溶融する。
これによって、回路から離れて開放するだけの間隙が生じ、その回路の残りの部分に、回路に損傷を与える可能性がある過大な電流が流れないようにする。
【0003】
電子ヒューズ回路は従来のヒューズと同じ機能を有し、ヒュージブルリンクの溶融に頼ることなく、過大な電流から回路の残りの部分を保護する。
電子ヒューズ回路は、電流が過大であるときに電界効果トランジスタをオフにするコントローラを含む。
このようにトランジスタをオフにすることによって、回路の残りの部分に電流が流れるのを阻止し、それにより、過大な電流による損傷を防ぐ。
【0004】
典型的には、トランジスタの中に流れる電流を検知するために抵抗器が用いられる。
その際、コントローラは、この抵抗器によって検知される電流が所定の限度を超えているか否かを判断する。
その電流が所定の限度よりも高い場合には、コントローラはトランジスタをオフにする。
他の電流検知方法は、トランジスタの両端での電圧降下、又は出力フィルタインダクタの両端での電圧降下を用いて、トランジスタの中に流れる電流の量を求める。
何らかの理由によって電子ヒューズ回路が動作しない場合に、過大な電流によって回路の残りの部分が損傷するのを防ぐために、電子ヒューズ回路において受動ヒューズがバックアップとして利用される。
しかしながら、抵抗器の使用、又はトランジスタの中に流れる電流を検知する上記の任意の他の方法は、電子ヒューズ回路を大きくすると共にそのコストを増加させる。
したがって、電子ヒューズ回路内の電流検知素子として抵抗器を使用する必要性をなくすシステムを設計することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0005】
本発明にかかるシステムは、トランジスタと、前記トランジスタに結合される受動ヒューズと、前記受動ヒューズ及び前記トランジスタに結合される制御ロジックとを備え、前記制御ロジックは、前記受動ヒューズの両端での電圧降下を検知し、該受動ヒューズの両端での該電圧降下を電流に変換し、前記制御ロジックによって検知される電流が所定の限度を超える場合には、前記トランジスタに信号を送り、オフにする。
【0006】
本発明の例示的な実施形態を詳細に説明するために、ここで、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施形態による回路システムの1つの例示的な実施形態を示す図である。
【図2】産業界において現在用いられている電子ヒューズ回路の1つの例示的な実施形態を示す図である。
【図3】本発明の実施形態による電子ヒューズ回路の1つの例示的な実施形態を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に従って実施される方法の1つの例示的な流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
表記及び用語
以下の説明及び特許請求の範囲を通じて、特定のシステム構成要素を参照するために或る特定の用語が用いられる。
複数のコンピュータ企業が1つの構成要素を異なる名称によって呼ぶ場合があることは当業者には理解されよう。
本明細書は、名称は異なるが、機能は異ならない構成要素を区別することは意図していない。
以下の検討において、そして特許請求の範囲において、用語「〜を含む(including)」及び「〜を備える(comprising)」は限定されないように使用され、それゆえ、「限定はしないが、〜を含む」を意味するように解釈されるべきである。
また、用語「結合する」は、間接の、直接の、光による、又は無線による電気的接続のいずれかを意味することを意図している。
したがって、第1のデバイスが第2のデバイスに結合する場合には、その接続は、直接の電気的接続を通じて、他のデバイス及び接続を経由する間接の電気的接続を通じて、光による電気的接続を通じて、又は無線による電気的接続を通じて、行なわれる場合がある。
【0009】
詳細な説明
以下の検討は本発明の種々の実施形態を対象とする。
これらの実施形態のうちの1つ又は複数が好ましい場合があるが、開示される実施形態は、特許請求の範囲を含む本開示の範囲を限定するものとして、解釈されるべきでなく、他の方法で使用されるべきでもない。
さらに、以下の説明が広範な適用範囲を有すること、及び任意の実施形態の検討はその実施形態を例示することだけを意図しており、特許請求の範囲を含む本開示の範囲がその実施形態に限定されることを暗示するつもりはないことは当業者には理解されよう。
【0010】
図1は、本発明の実施形態による回路システム150を示す。
回路システム150は電子ヒューズ回路100を含み、その電子ヒューズ回路100は論理回路110に結合される。
論理回路110は、過大な電流によって悪影響を及ぼされる場合がある任意の回路であり得る。
図1において、1つの論理回路だけが電子ヒューズ回路100に結合されるように示されるが、2つ以上の論理回路が同じように電子ヒューズ回路100に結合される場合がある。
電力が、論理回路110に入る前に、電子ヒューズ回路100に送られる。
電子ヒューズ回路100は、たとえば短絡によって、電子ヒューズ回路100の中に流れる電流が過大になる場合には、論理回路110への電流を遮断するように設計される。
【0011】
図2は、産業界において現在使用されている電子ヒューズ回路200の1つの例示的な実施形態を示す。
電子ヒューズ回路200は、受動ヒューズ202と、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(「MOSFET」)204と、電流検知抵抗器206と、コントローラ208とを備える。
オンにされるとき、MOSFET204によって、電子ヒューズ回路200の中に電流を流すことができるようになる。しかしながら、MOSFET204がオフにされる場合には、電子ヒューズ回路200の中に電流が流れることができない。
何らかの理由によって電子ヒューズ回路200が動作しない場合に、過大な電流によって回路の残りの部分が損傷するのを防ぐ(発火又は任意の他の危険な状態を防ぐ)ために、受動ヒューズ202がバックアップとして用いられる。
【0012】
電流検知抵抗器206及びMOSFET204の両方にコントローラ208が結合される。
電流検知抵抗器206によって検知される電流はコントローラ208によって判断される。
これは、電流検知抵抗器206がコントローラ208のピン1及び2に接続されるという事実によって果たされる。
これらのピンは、電流検知抵抗器206の両端(across)での電圧降下を監視し、その電圧降下は、電流検知抵抗器206の中に流れる電流と共に変化する。
コントローラ208は、電流検知抵抗器206の中に流れる電流が所定のしきい値よりも高いか否かを判断する。
コントローラ208が、検知される電流がしきい値よりも高いと判断する場合には、コントローラ208は、MOSFET204のゲートに信号を送り、MOSFET204をオフにする。
しかしながら、コントローラ208が、検知される電流が所定のしきい値よりも低いと判断する場合には、コントローラ208はMOSFET204をオフにすることなく、電流検知抵抗器206の中に流れる電流を監視し続ける。
【0013】
過大な電流が流れるときに、何らかの理由によって電子ヒューズ回路200がMOSFET204をオフすることができない場合には、ヒューズ202がバックアップとして用いられる。
ヒューズ202は、ヒュージブルリンク、通常は金属線又はストリップを含み、その中に過大な電流が流れると溶融し、電子ヒューズ回路200の残りの部分に電流が流れないようにする。
したがって、(産業界において現在使用されている)電子ヒューズ回路200は、回路の中に過大な電流が流れないようにするために、電流検知抵抗器206及びヒューズ202の両方を含む。
【0014】
図3は、本発明の実施形態による電子ヒューズ回路100の1つの例示的な実施形態を示す。
電子ヒューズ回路100は、ヒューズ302と、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ304と、出力フィルタコンデンサ(capacitor)306、308及び310と、コントローラ312と、コントローラ312に関連付けられる抵抗器314、316、318、320、322、324、326及び340と、コントローラ312に関連付けられるコンデンサ328、330、332、334、336及び338を備える。
上記のように、電子ヒューズ回路100は、電流が過大になった場合に、電子ヒューズ回路100に結合されている場合がある他の回路(たとえば、図1からの回路110)への電流を遮断するように設計される。
【0015】
MOSFET304は、オンにされると、電子ヒューズ回路100の中に電流が流れることを可能にする。
NチャネルMOSFETとして示されるが、MOSFET304は、任意のタイプの電界効果トランジスタ(FET)とすることができる。
MOSFET304がオフにされるときに、電子ヒューズ回路100を通って論理回路110まで電流は流れない。
図3は、電子ヒューズ回路100への12ボルト入力を示す。
MOSFET304がオンであるとき、論理回路110への12ボルト出力が生じる(MOSFET304及びヒューズ302の両端での電圧降下分だけ小さい)。
しかしながら、MOSFET304がオフにされる場合には、MOSFET304を通って電流が流れなくなるという事実に起因して、出力電圧は存在しなくなり、論理回路110に印加されない。
図3において、12ボルト出力に対応する12ボルト入力が示されるが、代替の入力及び出力電圧が用いられる場合もある。
【0016】
ヒューズ302はMOSFET304に結合される受動ヒューズであり、MOSFET304の中に流れる電流を検知する電流検知素子として用いられる。
ヒューズ302は、市販されているか、又は後に開発される任意のタイプの受動ヒューズとすることができる。
たとえば、10〜15アンペアの電流を必要とする回路システム150の場合に、Cooper Bussmann CC12M20A、20アンペア/12ボルト受動ヒューズが良好に機能するであろう。
ヒューズ302は或る大きさの抵抗を有し、CC12M20Aの場合には約2ミリオームを有するので、ヒューズ302は、MOSFET304の中に流れる電流を検知することができる。
【0017】
ヒューズ302及びMOSFET304の両方にコントローラ312が結合される。
たとえば、Intersil P/N ISL6115コントローラが、コントローラ312として良好に機能するであろう。しかしながら、他のコントローラも同様に機能することができる。
ヒューズ302の中に流れる電流は、ヒューズ302の両端での電圧降下として検知され、コントローラ312によって監視される。
これは、ヒューズ302がコントローラ312のピン1及び2に接続されるという事実によって果たされる。
これらのピンは、ヒューズ302の両端での電圧降下を監視し、その電圧降下は、ヒューズ302の中に流れる電流と共に変化する。
コントローラ312は、ヒューズ302の中に流れる電流が所定のしきい値よりも高いか否かを判断する。
12アンペアしきい値が、用いられる場合がある1つのしきい値である。しかしながら、任意の電流しきい値を用いることができる。
この所定の値は、論理回路110に損傷を与えることになる電流レベルよりも低いレベルにある。それにより、論理回路110への損傷を防ぐ。
コントローラ312が、検知された電流がしきい値よりも高いと判断する場合には、コントローラ312は、MOSFET304のゲートに信号を送り、MOSFET304をオフにする。
これにより、電子ヒューズ回路100を通って論理回路110に電流が流れ込むのを阻止する。
しかしながら、コントローラ312が、検知された電流がしきい値よりも低いと判断する場合には、コントローラ312は、MOSFET304をオフにすることなく、ヒューズ302の中に流れる電流を監視し続ける。
それゆえ、MOSFET304はオンのままであり、電子ヒューズ回路100を通って論理回路110に電流が流れ込む。
【0018】
過大な電流が中に流れるときに、何らかの理由によって電子ヒューズ回路100がMOSFET304をオフできない場合には、過大な電流によって論理回路110が損傷するのを防ぐために、ヒューズ302がバックアップとしての役割も果たす。
ヒューズ302は、ヒュージブルリンク、通常は金属線又はストリップを含み、その中に過大な電流が流れると溶融する。
したがって、電子ヒューズ回路100は、電子ヒューズ回路100に結合される論理回路110又は任意の他のデバイスに過大な電流を流すことはできない。
ヒューズ302は電流検知素子及びバックアップヒューズの両方の役割を果たすので、他の場合に含まれ得る別個の電流検知は不要である。
したがって、電子ヒューズ回路100のサイズ及びコストが削減される。
また、別個の電流検知抵抗器を用いることに関連する電力損も解消され、電子ヒューズ回路100の効率を高める。
【0019】
図4は、本発明の実施形態に従って実施される方法400の1つの例示的な流れ図を示す。
その方法は、ブロック402において、図3からのヒューズ302の中に流れる電流の量を検知することを含む。
上記のように、ヒューズ302は、それに関連付けられる抵抗を有し、それによりヒューズ302を電流検知デバイスとして使用できるようになる。
方法400は、ブロック404において継続し、コントローラ312が、ヒューズ302を用いて検知された電流が所定の値よりも高いか否かを判断する。
その電流が所定の値よりも低い場合には、その方法400はブロック402において、ヒューズの中に流れる電流の検知(402)を再開する。
しかしながら、電流が所定の値よりも高い場合には、ブロック406において示されるように、コントローラ312は、MOSFET304に信号を送り、オフにする。
これにより、論理回路110に電流が流れ込むのを阻止し、損傷を防ぐ。
【0020】
上記の検討は、本発明の原理及び種々の実施形態を例示することを意図している。
上記の開示が完全に理解されると、数多くの変形及び変更が当業者には明らかになるであろう。
添付の特許請求の範囲は全てのそのような変形及び変更を含むように解釈されることが意図されている。
【符号の説明】
【0021】
100 電子ヒューズ回路
110 回路
302 ヒューズ
304 金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ
306、308及び310 出力フィルタコンデンサ
312 コントローラ
314、316、318、320、322、324、326及び340 抵抗器
328、330、332、334、336及び338 コンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランジスタと、
前記トランジスタに結合される受動ヒューズと、
前記受動ヒューズ及び前記トランジスタに結合される制御ロジックと
を備え、
前記制御ロジックは、前記受動ヒューズの両端での電圧降下を検知し、該受動ヒューズの両端での該電圧降下を電流に変換し、前記制御ロジックによって検知される電流が所定の限度を超える場合には、前記トランジスタに信号を送り、オフにする
システム。
【請求項2】
前記トランジスタは金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(「MOSFET」)である
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記受動ヒューズは20アンペア、32ボルト受動ヒューズである
請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記制御ロジックは、検知抵抗器の両端での電圧降下に基づいて前記トランジスタをオフにしない
請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
論理回路と、
前記論理回路に結合されるヒューズ回路と
を備え、
前記ヒューズ回路は、
トランジスタと、
該トランジスタに結合される受動ヒューズと、
制御ロジックと
を備え、
前記制御ロジックは、前記受動ヒューズの両端での電圧降下を検知し、該受動ヒューズの両端での該電圧降下を電流に変換し、前記制御ロジックによって検知される電流が所定の限度を超える場合には、前記トランジスタに信号を送り、オフにする
システム。
【請求項6】
前記トランジスタは金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(「MOSFET」)である
請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記受動ヒューズは20アンペア、32ボルト受動ヒューズである
請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記制御ロジックは、検知抵抗器の両端での電圧降下に基づいて前記トランジスタをオフにしない
請求項5に記載のシステム。
【請求項9】
受動ヒューズの両端での電圧降下を監視する手段と、
前記受動ヒューズの両端での前記電圧降下が所定のレベルよりも高い電流に等しい場合にトランジスタをオフする手段と
を備えるシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−517262(P2011−517262A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501772(P2011−501772)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【国際出願番号】PCT/US2008/058947
【国際公開番号】WO2009/123615
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(503003854)ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. (1,145)
【Fターム(参考)】