説明

電子ビーム処理装置用のチャンバー設備

【課題】電子ビーム発生器を移動させるためのコンパクトな構成を有するチャンバー設備を提供する。
【解決手段】チャンバー設備は、チャンバー内空間14を画定するとともに第1開口部46を有するチャンバーハウジング12と、第1開口部46の範囲内を移動可能な台車52と、電子ビーム軸45に沿って電子ビームを発生させる電子ビーム発生器42と、ディスク70とを備える。電子ビーム発生器42が台車52に設けられており、台車52が第1開口部46の範囲内を移動したときに、電子ビームが第1開口部46を通過する。ディスク70は、チャンバーハウジング12と台車52の間に設けられており、第1開口部46に対して垂直な回転軸72回りに、少なくとも第1位置(A)と第2位置(B)の間を回転可能である。ディスク70は回転軸72から離れているとともに半径方向に沿って伸びている第2開口部74を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ビーム処理装置用のチャンバー設備に関する。より詳細には、本発明は、台車システムを有するとともに、真空下でワークピースを電子ビーム溶接するためのチャンバー設備に関する。
【背景技術】
【0002】
ワークピースに対する電子ビーム溶接のような電子ビーム処理は、典型的には、ワークピース用の保持具が設けられているチャンバー内で処理される。保持具は、チャンバーの開閉可能な開口部を介して、ワークピースの取り付け、及び取り外しを行う。常圧の雰囲気下では、電子ビームは短い距離でもエネルギー密度を失う。このため、処理は、真空下で実施される。
【0003】
溶接の際に必要とされる電子ビームとワークピースの間の相対移動は、外部においてビームを偏光等させることによって行われる。例えば、相対移動は、ワークピースに対して電子ビーム発生器を移動させることによって行われる。この場合、電子ビーム発生器は、例えば、モーターによって動かされる一軸又はX−Y軸台車システムに搭載される。
【0004】
図4及び図5に、従来の台車システムを有するチャンバー設備10を示す。
【0005】
チャンバー設備10は、チャンバーハウジング12を備えている。チャンバーハウジング12は、チャンバーハウジング12の長手軸15に対して垂直な断面において円形であるチャンバー内空間14を画定する(図5参照)。チャンバー内空間14では、例えば、真空下でワークピースの電子ビーム溶接のような電子ビーム処理が行われる。チャンバーハウジング12は、相互に対向する側壁16,18(図5)と、図4において水平方向に伸びている平面状の上側21を有する上壁20と、湾曲状の下側23を有する下壁22と、平面状の後壁24と、後壁24とは反対側に設けられている取り付け/取り外し開口部26を備えている。側壁16,18は、上壁20と下壁22が相互に対向するとともに、後壁24が上壁20及び下壁22に対して垂直となるように、後壁24と上壁20と下壁22に対して流体密封状態によって接続されている。取り付け/取り外し開口部26は、ドア28によって密閉状態で閉じることが可能である。取り付け/取り外し開口部26は、その縁を一巡して設けられている図示されないシールを備えている。そのシールは、閉じた状態において、取り付け/取り外し開口部26の縁とドア28の間に位置する。
【0006】
チャンバーハウジング12の上側21は、中央部にスロット型開口部30を備えている。本明細書でいうスロット型とは、スロット型開口部30の長さがその幅よりも長いことであり、これにより、平面視したときに、細長い穴のように形成されている。スロット型開口部30は、チャンバーハウジング12の長手軸15に対して平行に伸びており、そのため、後壁24及び取り付け/取り外し開口部26に対して垂直な方向に伸びる方向に対して平行に伸びている。図4に示されるように、スロット型開口部30から取り付け/取り外し開口部26までの距離はスロット型開口部30の長さの略25%であり、スロット型開口部30から後壁24までの距離はスロット型開口部30の長さの25%以下である。この結果、スロット型開口部30から取り付け/取り外し開口部26までの距離、及びスロット型開口部30から後壁24までの距離のいずれもが、スロット型開口部30の長さよりも短くなる。シール31は、上側21に設けられている。これにより、シール31は、スロット型開口部30の縁に沿って一巡している。
【0007】
チャンバー設備10はさらに、台車システム32を備えている。台車システム32は、2つの支持部34と、台車36と、2つの直線ガイド38を備えている。支持部34は、矩形の箱型であり、スロット型開口部30の長さの3倍相当の長さを有する。この結果、搭載された状態では、支持部34は、長手軸15に沿って、後壁24が存在する領域の上壁20及び/又は上側21、同様に、取り付け/取り外し開口部26が存在する領域の上壁20及び/又は上側21よりも明らかに外側に突出する。支持部34はチャンバー12の上側21に設けられており、それらは互いに空間を置くとともに平行関係を持って対向している。さらに、支持部34は、スロット型開口部30に対しても平行である。支持部34の対向側面の各々からスロット型開口部30までの距離は、スロット型開口部30の幅の約2倍である。直線ガイド38は、レールとして形成されているとともに、支持部34と同じ長さを有する。直線ガイド38は、支持部34の対向側面に設けられている。
【0008】
台車36は直線ガイド38の間に設けられている。台車36は、直線ガイド38間の空間に実質的に対応する幅を有するとともに、スロット型開口部30の長さの2倍よりも長い長さを有する。台車36は、スロット型開口部30の幅よりも短い直径を有する円形開口部40を中央に備えている。台車36は支持部34の間に設けられており、これにより、直線ガイド38間を直線ガイド38によって案内されて直線状に移動可能であり、さらに、チャンバー内空間14に対向する面を利用してシール31に接触する。開口部40とスロット型開口部30は、この構成によってオーバーラップする。
【0009】
電子ビーム発生器42は、電子ビーム発生器42の下側に固定して設けられているビームノズル44を備えている。電子ビーム発生器42は、チャンバー内空間14に対向する台車36の面に設けられている。これにより、ビームノズル44は、開口部40を通過してスロット型開口部30内に向けて突出しており、電子ビーム発生器42は流体密封状態で開口部40を取囲む。電子ビーム発生器42は、電子ビームを発生するように適合されている。その電子ビームは、ビームノズル44を通って電子ビーム軸45に沿ってチャンバー内空間14内に伝播する。
【0010】
電子ビーム処理をしている間は、図示しない駆動装置によって台車36が電子ビーム発生器42とともに移動可能である。これにより、電子ビームは、チャンバー内空間14内の異なる位置に到達することが可能である。台車36と支持部34の幾何学的な構成は、台車36がどの位置においてもシール31に接触することを可能にしており、この結果、チャンバー設備10の外部環境に対するチャンバー内空間14の密閉が保証される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明は、ビーム発生器を移動させるためのコンパクトな構成を有するチャンバー設備を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本明細書に開示される技術は、電子ビーム処理装置用のチャンバー設備を提供することができる。チャンバー設備は、チャンバー内空間を画定するとともに第1開口部を有するチャンバーハウジングと、第1開口部の範囲内で移動可能な台車と、電子ビーム軸に沿って電子ビームを発生させるための電子ビーム発生器と、ディスクとを備えている。電子ビーム発生器は台車に設けられており、これにより、台車が第1開口部の範囲内を移動するときに電子ビームは第1開口部を通過する。ディスクは、チャンバーハウジングと台車の間に設けられており、第1開口部に対して垂直な回転軸回りに、少なくとも第1位置と第2位置の間を回転可能である。さらに、ディスクは、少なくともディスクの一部分に設けられた第2開口部を備えており、その第2開口部は回転軸から離れているとともに半径方向に沿って伸びている。ディスクの回転軸は、ディスクが第1位置と第2位置の間を回転したときに、少なくとも電子ビーム軸の存在する領域において第1開口部と第2開口部がオーバーラップするように設けられている。したがって、台車がチャンバーハウジングの寸法によって画定される領域内を移動することが可能となる。このことは、台車用のガイドの寸法がチャンバーハウジングのサイズ及び/又は寸法を超えないことを意味する。
【0013】
好ましくは、第1開口部が円形である。これにより、X−Y台車と組み合わされる電子ビーム発生器は、第1開口部の面内のあらゆる位置に電子ビームを偏光させることなく移動させることが可能である。
【0014】
好ましくは、第1開口部がスロット型である。これにより、特に電子ビーム発生器を移動させるためのコンパクトな構成が可能である。
【0015】
好ましくは、第2開口部がスロット型である。これにより、ディスクが電子ビーム発生器のノズルによって回転可能である。
【0016】
好ましくは、フランジが電子ビーム発生器に設けられており、1つのシールがフランジとディクスの間に設けられて第2開口部を取囲むのが望ましく、さらに、もう1つのシールがディスクとチャンバーハウジングの間に設けられて第1開口部を取囲むのが望ましい。これにより、チャンバー内空間は、チャンバー設備の外部環境から密閉及び/又は閉ざされて、台車と無関係に密閉が実現され得る。
【0017】
好ましくは、フランジは台車と一体的に形成されている。
【0018】
好ましくは、フランジと台車は2つの分離した部品である。
【0019】
好ましくは、チャンバー設備は、台車としてX−Y台車を備えている。
【0020】
好ましくは、電子ビーム発生器はビームノズルを備えており、ディスクはそのビームノズルによって回転可能である。
【0021】
好ましくは、ディスクはビームノズルによって回転させられる。これにより、電子ビームの正確な位置合わせが実現される。
【0022】
好ましくは、ディスクは回転用の駆動部によって駆動可能である。これにより、台車がビームノズルによって移動可能である。
【0023】
好ましくは、第2開口部は、第1開口部の長さの半分と電子ビーム発生器のビームノズルの直径を加えた長さよりも長くない長さを備えている。これにより、回転軸と第1開口部をより大きく離間させることが可能となり、ディスクを回転させるためのトルクが増加する。
【0024】
好ましくは、ディスクの回転軸は、第2開口部内を伸びていない。これにより、シールしなければならない第2開口部の面積が小さくなる。
【0025】
好ましくは、チャンバー設備は相互に空間を置いて平行な突出部を有する支持部を備えており、台車がその突出部の2つの対向側面で案内される。これにより、極めて良好な案内が可能である。
【0026】
好ましくは、ディスクは、支持部とディスクの外周面の間に設けられたベアリングによって回転可能に支えられている。これにより、ディスクは、ガイド内にしっかりと保持されるとともに回転可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施例に係るチャンバー設備の縦断面図を示す。
【図2】本発明の実施例に係るチャンバー設備の横断面図を示す。
【図3】本発明の実施例に係るチャンバー設備のディスクの拡大平面図を示す。
【図4】従来のチャンバー設備の縦断面図を示す。
【図5】従来のチャンバー設備の横断面図を示す。
【実施例】
【0028】
図1〜3に、本発明の実施例に係るチャンバー設備10を示す。図4及び図5に関連した序論で開示された従来のチャンバー設備の構成要素に対応する構成要素は、同一の符号を用いて示されることに留意されたい。以下では、図4及び図5で開示された従来のチャンバー設備と相違する点のみを説明する。その他の点に関しては、図4及び図5に関する記載はまた、本実施例にも適用される。
【0029】
チャンバーハウジング12の上側21は平面状であり、その中央部に第1開口部46を備えている。第1開口部46はスロット型で形成されている。第1スロット型開口部46は、長手軸15に対して平行に伸びている。図1に示されるように、第1スロット型開口部46から取り付け/取り外し開口部26までの距離は、第1スロット型開口部46の長さの約25%であり、第1スロット型開口部46から後壁24までの距離も同様に、第1スロット型開口部46の長さの約25%である。
【0030】
チャンバー設備10はさらに、台車システム48を備えている。台車システム48は支持部50と、台車52と、2つの直線ガイド54を備えている。支持部50は、長手軸15の方向(以下、長手方向ともいう)における上側21の寸法に一致する長さと、長手軸15に直交する横断方向における平面状の上側21の寸法に一致する幅を備えている。長手方向と横断方向に直交する高さ方向では、支持部50は下側部分56と上側部分58を備えており、それらは一体的に形成されている。下側部分56は円形の開口部60を備えている。開口部60の直径は、第1スロット型開口部46の長さよりも長い。上側部分58は、2つの矩形状の箱型の突出部62,64として形成されている。突出部62,64は、それらが平行に空間を置いた位置関係で相互に対向するとともに、支持部50の全長さを伸びるように形成されている。突出部62,64の対向側面間の距離は、開口部60の直径に一致する。突出部62,64の対向側面間の中央線は、支持部50の下側部分58の開口部60の中央点を通過する。
【0031】
支持部50は、チャンバーハウジング12の上側に設けられている。突出部62,64は、第1スロット型開口部46に対して平行である。支持部50の突出部62,64の間の中央線は、高さ方向から見たときに、第1スロット型開口部46の中央線と一致しない。したがって、開口部60の中央点は、支持部50の横断方向に距離aだけ支持部50の中央線に対してオフセットされている。その距離aは、第1スロット型開口部46の幅の約1.5倍に一致する。直線ガイド54は、レールとして形成されており、突出部62,64と同一の長さを有する。ボールベアリングとして形成されているとともに開口部60の直径に適合した直径を有するベアリング66が開口部60内に設けられている。ベアリング66は開口部60の縁に取り付けられている。ベアリング66は、高さ方向に沿って及び/又は高さ方向に反して働く力を吸収するように適合されている。
【0032】
電子ビーム発生器42は、電子ビーム発生器42の下側面に固定して設けられているビームノズルを備えている。
【0033】
ベアリング66の直径に適合した直径を有する円形状のディスク70が開口部60内に設けられており、ディスク70はその外周面に設けられたベアリング66を介して回転軸72回りに回転可能である。ディスク70の面のうちのチャンバー内空間14に対向する面が、半径方向の外側領域にあるシール68に接触している。回転軸72は、高さ方向に伸びている。回転軸72は、開口部60の中央点と、突出部62,64の対向側面の間の中央線を通過している。これにより、ディスク70の回転軸72は、第1スロット型開口部46の長手方向の中央線に対して横断方向に距離aだけオフセットされている。この理由は、チャンバー設備10の動作に関連して後に説明する。ディスク70は、第2開口部74を備えている。第2開口部74は、スロット型で形成されており、回転軸72から離れているとともに半径方向に沿って伸びている。回転軸72は第2スロット型開口部74内を伸びていない。第2スロット型開口部74は、第1スロット型開口部46の半分の長さに、ビームノズル44の直径を加えた長さよりも長くない長さを備えている。より好ましくは、第2スロット型開口部74は、第1スロット型開口部46の半分の長さに、ビームノズル44の直径を加えるとともに、距離aを引いた長さを備えている。その結果、ディスク70の半径方向で見たときに、第2スロット型開口部74の外側部分と第1スロット型開口部46の2つの端部が、ディスク70の回転位置には関係なく、オーバーラップすることができる。シール76が、チャンバー内空間14とは反対の方向を向いているディスク70の面に設けられており、第2スロット型開口部74の縁に沿ってこれを取囲んでいる。
【0034】
第1スロット型開口部46の長さよりも長く、ディスク70の直径よりも短い直径を有する円形状のシール68が、チャンバーハウジング12の上側21に設けられて第1スロット型開口部46を取囲んでいる。これにより、高さ方向で見たときに、シール68の中央点は、開口部60の中央点にオーバーラップする。ベアリング66は、チャンバー内空間14と外部環境の間の圧力差に基づいてディスク70に働く力を吸収する。その結果、シール68は、この力のごく一部のみを吸収する。
【0035】
電子ビーム発生器42は、チャンバー内空間14に対向する下側端にフランジ52を備えている。フランジ52は、圧力密閉状態でビームノズル44を密閉する。本実施例では、フランジは同時に台車52を構成する。台車/フランジ(以下では、台車とのみいう)52は、横断方向に幅を備えており、その幅は直線ガイド54間の空間に適合している。台車52はさらに、長手方向において、第2スロット型開口部74の長さの2倍からビームノズル44の直径を引いた長さよりも長い長さを備えている。台車52は、第2スロット型開口部74の幅よりも小さな直径の円形状の開口部78を中央部に備えている。台車52は、支持部60の上側部分56の突出部62,64の間に設けられている。これにより、台車52は、突出部62,64の間で案内されて直線状に移動可能であり、さらに、フランジとしてシール76に接触する。以上のように、台車/フランジ52は、圧力差によって生成される力がシール76によって吸収されず、ベアリング(図示せず)によって吸収されるように支えられていてもよい。
【0036】
電子ビーム発生器42は、台車52の面のうちのチャンバー内空間14から離れる向きに向いている面に設けられており、電子ビーム発生器42は台車52に接続されているとともに流体密閉状態で開口部78を取囲んでいる。ビームノズル44は、開口部78の直径よりも小さく、かつ、2つのスロット型開口部46,47の幅よりも短い直径を備えている。さらに、ビームノズル44は、台車52、ディスク70及び第1スロット型開口部46の高さの合計よりも長い高さによって、電子ビーム発生器42の下側面から突出する。これにより、ビームノズル44は、開口部78を通過し、第2スロット型開口部74を通過し、第1スロット型開口部46内に向けて突出する。電子ビーム発生器42は、ビームノズル44を通してチャンバー内空間14に電子ビーム軸45に沿って伝播する電子ビームを生成するように適合されている。台車52の移動は、図示されない駆動部によって行われる。チャンバー内空間14は、シール68,70とディスク70と台車52によって、周囲及び/又は環境に対して密閉される。本実施例では、ビームノズルが、隙間無しでディスク70の第2スロット型開口部74内に挿入されており、ディスク70がビームノズル44の移動によって回転軸72回りに回転される。
【0037】
電子ビーム処理装置の他の構成要素は、よく知られた既存のものであり、これらの構成要素の記載は省略する。これらの他の構成要素には、例えば、チャンバー内を真空引きするため及びチャンバー内に流体を導入するための吸入/吸引口、ポンプステーション、偏光コイル、電子ビーム発生器用の接続部、台車を移動させるための駆動部などが挙げられる。これらの他の構成要素は、チャンバーハウジング及び/又は支持部に設けられ得る。
【0038】
チャンバー設備10は、代替の技術的構成を備えていてもよい。以下、いくつかの変形例を記載する。
【0039】
電子ビーム発生器に取り付けられてディスク内の第2開口部にオーバーラップするフランジを、台車とは別個に形成してもよい。
【0040】
ディスク70の外周面(又は、突出部から)の配置に追加して、又はこれの代替として、ベアリング66がディスク70とチャンバーハウジング12の間に設けられていてもよい。
【0041】
第1スロット型開口部46の端部から後壁24まで、及び、取り付け/取り外し開口部26までの距離はそれぞれ、第1スロット型開口部46の長さの0〜100%の範囲内であり、好ましくは5〜50%の範囲内であり、より好ましくは5〜25%の範囲内である。
【0042】
距離aは、0からディスクの半径の半分の範囲であるのが望ましい。
【0043】
第1開口部は、チャンバーハウジングの上側に形成される必要はなく、チャンバーハウジングのどの壁に形成されてもよい。
【0044】
第1開口部は、スロット型である必要はなく、平面視したときに、ディスク70のシール68内においてあらゆる輪郭(例えば、円形、四辺形、矩形等)を有することができる。また、1つ以上の第1開口部が設けられていてもよい。
【0045】
第2開口部もまた、スロット型である必要はないが、スロット型であるのが望ましい。
【0046】
ディスクは、自身の駆動部によって駆動されてもよい。このために、ディスクがベアリングと台車の間の外周面にギアリングを備えていてもよい。この場合、駆動部のギアホイールがギアリングに噛み合う。ギアリングは、ベアリングとチャンバーハウジングの上側との間に設けられてもよい。ディスクが回転したときに、第2スロット型開口部の端部が電子ビーム発生器のビームノズルを押圧し、台車がビームノズルとともに移動する。
【0047】
上述したように、代替として、フランジが台車と一体とならないように形成される。
【0048】
このことは、いわゆるX−Y台車(すなわち、互いに直交する方向に移動可能な2つの台車部分を有する台車)を可能にする。X−Y台車は、ビームノズルがフランジ内の開口部を通過して、第2(スロット型)開口部を通過するとともに第1開口部内に向けて突出するように、電子ビーム発生器を運搬する。これにより、電子ビームは、ビームノズルを通ってチャンバー内空間を伝播することができる。
【0049】
ビームノズルがディスクの回転軸と同心の位置に移動可能となるような第2開口部の構造は、X−Y台車と組み合わされた電子ビーム発生器によって、ビームノズルを第1開口部の面内のあらゆる位置に移動させることを可能にする。この際、従来のチャンバー設備のような状態でチャンバーハウジングに突出する台車システムを用いる必要がない。
【0050】
上述した台車とフランジの分離は、チャンバーハウジングとディスクの間及びディスクとフランジの間のシールによって、台車とは関係なく、周囲及び/又は環境からチャンバー内空間を密閉することが可能になる。
【0051】
ビームノズルがディスクの回転軸に向けて移動すると、上述実施例におけるビームノズルによるディスクを回転させるためのトルクが低下する。このため、追加して、又は上記構成の代替として、サーボ駆動部のような駆動部がディスクを回転するために設けられていてもよい。これは、第2開口部がディスクの回転軸を内包するような第2開口部のサイズのときに特に有用である。
【0052】
取り付け/取り外し開口部は、チャンバーハウジングのどの面に設けられてもよい。チャンバーハウジングの任意の位置に配置された複数の取り付け/取り外し開口部が設けられていてもよい。チャンバーハウジングは、任意の形態を有することができる。例えば、チャンバーハウジングは、立方体型、箱型又は球型で形成されてもよい。チャンバーハウジングは、台車システムが搭載される面の一部において、支持部がチャンバーハウジングに搭載可能となるように、構成されていれば十分である。例えば、球型の環状突出部によって、これは実現され得る。取り付け/取り外し開口部の端部周囲のシールに代えて、ドアがシールを備えていてもよい。
【0053】
図1〜3を参照して、以下にチャンバー設備10の動作方法を記載する。
【0054】
図1に示されるように、台車52がチャンバーハウジング12の右側(すなわち、取り付け/取り外し開口部26側)に配置されている。この結果、電子ビームノズル44を有する電子ビーム発生器42は、第1スロット型開口部46の右側に存在する。この位置は、台車52(同様に、ディスク70)の第1位置Aに対応する。例えば、真空下及び/又は減圧下(本発明の実施例に係るチャンバー設備では、10−1mbar〜10−6mbarであり得る)の電子ビーム溶接のような処理動作中では、台車52が図示されない駆動部によって後壁24に向けて移動する。これは、台車52が電子ビーム発生器とともに図1の左側に向けて移動することを意味する。ディスク70の回転軸72が第1スロット型開口部46から離れているので、第1スロット型開口部46と第2スロット型開口部74は完全にはオーバーラップしないものの、少なくとも電子ビーム軸45及び/又はビームノズル44の領域においてオーバーラップする。台車52が移動すると、ビームノズル44がディスク70の第2スロット型開口部74の端部を押圧する。この結果、トルクがディスク70の回転軸72回りに作用し、ディスク70が周方向に沿って回転軸72回りを左に向けてベアリング66によって回転するとともに、台車52が左側に向けて移動する。図3で明らかなように、ビームノズル44はまず第2スロット型開口部74内を半径方向内側に向けて移動し、次に、半径方向外側に向けて移動する。このことは、図3の台車52の移動に応じてビームノズル44が異なる位置に移動する様子に示されている。実際、台車52は、直線状に左に向けて移動し、ビームノズル44を用いてディスク70を回転させる。それにより、第2スロット型開口部74がビームノズル44に対して移動する。したがって、台車52が移動すると、ディスク70がビームノズル44によって台車52とともに移動及び/又は台車52とともに回転する。駆動部を利用して台車52を直接的に移動させると、台車は正確に位置決めされ、電子ビームの高い位置決めが可能となる。
【0055】
台車52が完全に左に移動すると、ディスク70は位置Bに位置する。この位置Bでは、ビームノズル44が第2スロット型開口部74の左側に位置する。また、台車52が逆に移動すること(すなわち、図1の左から右に)が可能であることも理解されるだろう。図3の2方向矢印Pで示されるように、往復移動もまた可能である。
【0056】
図3は、最小長さを有する第2スロット型開口部74を示す。最小長さを有する第2スロット型開口部74は、ディスク70の半径方向において、外側端部を有する。その外側端部は、第1スロット型開口部46の端部に一致する(すなわち、位置A,B)。位置A,Bにおける第1スロット型開口部46と第2スロット型開口部74のオーバーラップ領域は、ビームノズル44が通過する大きさを有する。さらに、最小長さを有する第2スロット型開口部74は、ディスク70の半径方向において、内側端部を有する。その内側端部は、第1スロット型開口部46の中央部に一致する(すなわち、位置C)。位置Cにおける第1スロット型開口部46と第2スロット型開口部74のオーバーラップ領域は、ビームノズル44が通過する大きさを有する。第2スロット型開口部74が最小長さを有していると、第2スロット型開口部74を密閉する台車52は、最小のサイズにすることができる。上述したように、台車52が第2スロット型開口部74を密閉する限り、第2スロット型開口部74の長さを最小長さよりも長くすることができる。しかしながら、第2スロット型開口部74の長さは、第1スロットスロット型開口部46の半分の長さに、ビームノズル44の直径を加えた長さよりも長くないのが望ましい。これにより、台車52は、コンパクトな設備構成とすることができる。
【符号の説明】
【0057】
10:チャンバー設備
12:チャンバーハウジング
14:チャンバー内空間
15:長手軸
16,18:側壁
20:上壁
21:上側
22:下壁
23:下側
24:後壁
26:取り付け/取り外し開口部
28:ドア
30:スロット型開口部
31:シール
32:台車システム
34:支持部
36:台車
38:直線ガイド
40:開口部
42:電子ビーム発生器
44:ビームノズル
45:電子ビーム軸
46:第1開口部
48:台車システム
50:支持部
54:直線ガイド
56:下側部分
58:上側部分
60:開口部
62,64:突出部
66:ベアリング
68:シール
70:ディスク
72:回転軸
74:第2開口部
76:シール
78:開口部
A:第1位置
B:第2位置
P:2方向矢印






【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ビーム処理装置用のチャンバー設備であって、
チャンバー内空間(14)を画定するとともに、第1開口部(46)を有するチャンバーハウジング(12)と、
第1開口部(46)の範囲内を移動可能な台車(52)と、
電子ビーム軸(45)に沿って電子ビームを発生させるための電子ビーム発生器(42)と、
チャンバーハウジング(12)と台車(52)の間に設けられており、第1開口部(46)に対して垂直な回転軸(72)回りに、少なくとも第1位置(A)と第2位置(B)の間において回転可能であるディスク(70)と、を備えており、
電子ビーム発生器(42)が台車(52)に設けられており、これにより、台車(52)が第1開口部(46)の範囲内を移動したときに、電子ビームが第1開口部(46)を通過し、
ディスク(70)は、ディスク(70)の少なくとも一部にディスク(70)の回転軸(72)から離れているとともに半径方向に沿って伸びている第2開口部(74)を有しており、
ディスク(70)の回転軸(72)は、ディスク(70)が第1位置(A)と第2位置(B)の間を回転したときに、少なくとも電子ビーム軸(45)の領域において第1開口部(46)と第2開口部(74)がオーバーラップするように設けられているチャンバー設備。
【請求項2】
第1開口部(46)が円形である請求項1に記載のチャンバー設備。
【請求項3】
第1開口部(46)がスロット型である請求項1に記載のチャンバー設備。
【請求項4】
第2開口部(74)がスロット型である請求項1〜3のいずれか一項に記載のチャンバー設備。
【請求項5】
フランジ(52)が電子ビーム発生器(42)に設けられており、1つのシール(76)がフランジ(52)とディスク(70)の間に設けられて第2開口部(74)を取囲んでおり、もう1つのシール(68)がディスク(70)とチャンバーハウジング(12)の間に設けられて第1開口部(46)を取囲んでいる請求項1〜4のいずれか一項に記載のチャンバー設備。
【請求項6】
フランジ(52)が台車(52)と一体に形成されている請求項5に記載のチャンバー設備。
【請求項7】
フランジ(52)と台車(52)は別体である請求項5に記載のチャンバー設備。
【請求項8】
台車としてX−Y台車を含む請求項7に記載のチャンバー設備。
【請求項9】
電子ビーム発生器(42)がビームノズル(44)を含む請求項1〜8のいずれか一項に記載のチャンバー設備。
【請求項10】
ディスク(70)がビームノズル(44)によって回転される請求項9に記載のチャンバー設備。
【請求項11】
ディスク(70)が回転駆動部によって駆動可能である請求項1〜10のいずれか一項に記載のチャンバー設備。
【請求項12】
第2開口部(74)は、第1開口部(46)の半分の長さに、電子ビーム発生器(42)のビームノズル(44)の直径を加えた長さよりも長くない長さを備えている請求項9〜11のいずれか一項に記載のチャンバー設備。
【請求項13】
ディスク(70)の回転軸(72)が第2開口部(74)を通過しない請求項1〜12のいずれか一項に記載のチャンバー設備。
【請求項14】
平行であるとともに空間を置いて離れている突出部(62,64)を有する支持部(50)を備えており、
台車(52)が、突出部(62,64)の2つの対向側面によって案内される請求項1〜13のいずれか一項に記載のチャンバー設備。
【請求項15】
ディスク(70)が、支持部(50)とディスク(70)の外周面の間に設けられているベアリング(66)によって回転可能に支えられている請求項14に記載のチャンバー設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−42447(P2010−42447A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−168267(P2009−168267)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(507198738)オール ウェルディング テクノロジーズ アーゲー (3)
【氏名又は名称原語表記】All Welding Technologies AG
【住所又は居所原語表記】Emmy−Noether−Strase 2, DE−82216 Maisach Germany
【Fターム(参考)】