説明

電子ビーム加工方法

【課題】電子ビームの照射によって被加工物の表面を加工するに際して、加工ムラを出さずに加工時間を低減する電子ビーム加工方法を得る。
【解決手段】被加工物の形状データに基づいて被加工物の表面に所定の間隔を有する電子ビームの照射点を決定し、照射点に電子ビームを照射するとともに、予め設定した周期で照射点ごとに順次、照射点を中心にした領域で電子ビームを偏向させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子ビームの照射によって被加工物の表面を加工する加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電子ビーム加工方法においては、予め設定された被加工物の表面形状の情報に基づき、電子ビームの照射位置を1回ごとに微少距離だけ動かして、被加工物の表面に電子ビームを照射し表面を加工する。(例えば特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−35263号公報(第7頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の電子ビーム加工方法においては、被加工物の加工ムラを出さないためには、電子ビームの照射点の間隔を狭くする必要があり、電子ビームの照射点の数が多くなるので、被加工物の加工時間が長くなるという問題があった。
【0005】
この発明は、上記のような問題を解決するためになされたもので、電子ビームの照射によって被加工物の表面を加工するに際して、加工ムラを出さずに加工時間を低減する電子ビーム加工方法を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る電子ビーム加工方法においては、被加工物の形状データに基づいて上記被加工物の表面に所定の間隔を有する電子ビームの照射点を決定し、照射点に電子ビームを照射するとともに、予め設定した周期で照射点ごとに順次、照射点を中心にした領域で上記電子ビームを偏向させる。
【発明の効果】
【0007】
この発明は、電子ビームの照射点を中心にした領域内で電子ビームを偏向させるので、照射点の間を確実に加工できる。従って、照射点の間隔を大きくして被加工物の照射点の数を少なくすることができ、加工ムラを出さずに加工時間を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1から3を示す電子ビーム加工方法による電子ビーム加工装置の構成を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1から3における被加工物の形状と形状データの一例を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1から3における電子ビームの照射経路と加工パラメータの設定例を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態1から3における電子ビームの偏向の経路を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態1における照射点を中心とした領域の電子ビームの偏向の原理を示す図である。
【図6】この発明の実施の形態1における照射点を中心とした領域の電子ビームの偏向の範囲を示す図である。
【図7】この発明の実施の形態1における照射点を中心とした領域の電子ビームの偏向の電流波形を示す図である。
【図8】従来技術とこの発明の実施の形態1における照射点を中心とした加工範囲を示す図である。
【図9】この発明の実施の形態1における照射点を中心とした領域の電子ビームの偏向の電流波形を示す図である。
【図10】この発明の実施の形態1における照射点を中心とした領域の電子ビームの偏向の電流波形を示す図である。
【図11】この発明の実施の形態2における照射点を中心とした領域の電子ビームの偏向の範囲を示す図である。
【図12】この発明の実施の形態2における照射点を中心とした領域の電子ビームの偏向の電流波形を示す図である。
【図13】この発明の実施の形態3における照射点を中心とした領域の電子ビームの照射点と偏向の範囲を示す図である。
【図14】この発明の実施の形態3における照射点を中心とした領域の電子ビームの偏向の電流波形を示す図である。
【図15】この発明の実施の形態3における照射点を中心とした領域の電子ビームの照射点と偏向の範囲を示す図である。
【図16】この発明の実施の形態3における照射点を中心とした領域の電子ビームの照射点と偏向の範囲を示す図である。
【図17】この発明の実施の形態1から3における加工パラメータを設定するための動作手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、この発明を実施するための実施の形態1における電子ビーム加工方法に使用する電子ビーム加工装置の構成を示す図である。図1において、被加工物12は図示しない搬送テーブルによって供給されて加工室11に置かれ、電子ビームが被加工物12の表面に照射されることによって、照射エネルギーで表面が溶融して加工される。電子ビームが通過する経路は真空にする必要があるため、電子ビームが発生する電子銃室1と、被加工物12が置かれる加工室11は、電子ビーム加工装置が起動する前にそれぞれ電子銃室排気装置15と加工室排気装置16によって排気されて真空状態にされる。電子ビームは、直流の高電圧電源が陰極3と陽極4の間に印加されることによって陰極3から放出される。放出された電子ビームは陽極4とオリフィス5を通過して、収束レンズ7と偏向コイル8によって被加工物12の所定の位置に照射されるように調整される。
【0010】
電子ビームを所定の位置に照射させる条件、すなわち加工パラメータは収束レンズ7の電流、偏向コイル8の電流および電子ビーム電流である。収束レンズ7は、周回状のコイルの内部に発生する磁界により電子ビームを収束させるもので、供給される収束レンズ電流の大きさによって電子ビームが収束する距離が変わる。偏向コイル8は、コイルから発生した磁界によって電子ビームの向きを変えるもので、供給される偏向コイル電流の大きさによって偏向角度が変わる。偏向コイル電流がゼロで偏向角度はゼロになり、電流の正負によって偏向の向きは逆になる。また、偏向コイル8は二次元方向すなわちX軸とY軸の両方の偏向角度が調整できるように、X軸偏向コイル電流とY軸偏向コイル電流が個別に供給され、任意の照射点に偏向角度を合わせることができる。電子ビーム電流は陰極3より放出される電子ビームの量に相当し、被加工物12に照射される電子ビームの照射エネルギーを決めている。この電子ビーム電流の大きさは、高電圧電源装置13を通して陰極3に供給されるバイアス電源によって決まる。
【0011】
次に、本実施の形態における電子ビーム加工方法の動作を図1と図17を用いて説明する。図17には以下に示す動作のステップ1から4の範囲が示されている。最初にステップ1を説明する。図1に示す電子ビーム加工装置に起動指令が出される前に、加工される被加工物12の表面の形状データをCADデータとして電子ビーム加工データ作成装置17に入力する。被加工物12の表面は例えば図2に示すような形状で、その形状データは細分化されたドットのXY座標として入力されている。この形状データのドット座標に基づいて電子ビーム加工データ作成装置17は、形状データのドット座標の範囲内で照射点の所定の間隔を決定する。この照射点の所定の間隔は、照射点を中心にして電子ビームを偏向させて加工できる範囲に近い値とする。この照射点の所定の間隔に基づき、電子ビームの全照射点のXY座標データが決定される。なお、図2に示すような被加工物12の加工面の基準位置(X=0、Y=0)を基準点にして、ある照射点の座標を(X1、Y1)とする。
【0012】
次に図17におけるステップ2では、座標(X1、Y1)を持つ照射点に電子ビームを照射するための加工パラメータを収束電流Ic1、X軸偏向コイル電流Id1x、Y軸偏向コイル電流Id1y、および電子ビーム電流Ie1として、これらの加工パラメータは電子ビーム加工データ作成装置17によって以下の手順で決定される。
【0013】
収束レンズ7から加工面の基準位置までの収束中心距離Lcの値は予め入力されており、図4に示すように収束レンズ7から照射点までの収束距離Lc1は加工面の基準位置から照射点までの距離L1で決まる。この距離L1は照射点の座標(X1、Y1)から演算され、予め設定されたデータにより上記の距離L1から必要な照射点の収束電流Ic1の値が決定される。
【0014】
電子ビームの偏向コイル8の中心位置から加工面の基準位置までの距離Ldの値は予め入力されており、図4に示すように照射点の座標(X1、Y1)より偏向角度θ1と、この偏向角度θ1をX軸とY軸の成分に分割したX軸偏向角度θ1xとY軸偏向角度θ1yが演算される。これらのX軸偏向角度θ1xとY軸偏向角度θ1yから、予め設定されたデータにより必要なX軸偏向電流Id1xとY軸偏向電流Id1yの値が決定される。
【0015】
加工面の基準位置以外の照射点位置においては加工面の基準位置に比べて、電子ビームが照射される角度すなわち偏向角度が大きくなるので、電子ビームの照射エネルギーを均一化するために、偏向角度に応じて電子ビーム電流が変更される必要がある。照射点の偏向角度θ1は加工面の基準位置からの距離L1に依存するので、照射点座標(X1、Y1)から演算された距離L1の値に基づいて、予め設定されたデータにより必要な電子ビーム電流Ie1が決定される。
【0016】
これらの加工パラメータの全照射点における値は、電子ビーム加工データ出力制御装置18内の収束レンズ電流データ格納エリア22、X軸偏向電流データ格納エリア23、Y軸偏向電流データ格納エリア24および電子ビーム電流データ格納エリア21に格納される。電子ビーム加工装置の起動後に、収束レンズ電流Ic1は収束レンズ電流制御回路29により実電流の収束レンズ電流Icに変換されて収束レンズ7に供給され、電子ビーム電流Ie1は電子ビーム電流制御回路28により電子ビーム電流設定データIeに変換されて高電圧電源装置13に指令されて、設定された電子ビーム電流Ieに対応した陰極3のバイアス電源が陰極3に供給される。
【0017】
被加工物12が加工室11に供給されて所定の位置に置かれると、電子銃室1と加工室11の内部が排気されて真空状態にされる。電子ビーム加工装置を起動するための電子ビーム発生信号がシーケンス制御回路27から出力されると、高電圧電源13から高電圧ケーブル14を通して高電圧電源が印加された陰極3から電子ビームが放出される。ここで、起動の開始時点においては、電子ビーム待機ブロック20に電子ビームが照射されるように、待機用の電子ビーム電流と収束レンズ電流とX軸偏向コイル電流およびY軸偏向コイル電流が電子ビーム加工データ作成装置17から指令される。
【0018】
電子ビーム待機ブロック20は、電子ビーム加工装置を起動した時点で電子ビームの照射エネルギーが所定の値に立ち上がるまでの期間、一時的に電子ビームを照射して待機しておくものである。次に、シーケンス制御回路27から加工開始信号が出されると、上記の格納された照射点の加工パラメータと、以下に説明するような照射点を中心にした領域で電子ビームが偏向する動作と合わせて、電子ビームは被加工物12の照射点に順番に照射される。
【0019】
次に、照射点を中心にして予め設定された領域で予め設定された周期で電子ビームが偏向する動作(以下、小振幅偏向と言う)を説明する。これは、図17におけるステップ3である。本実施の形態では小振幅偏向を図6に示すような直線上の領域として、電子ビームは各照射点を中心にしてX軸方向に直線上を振幅Loxで往復する。小振幅偏向の振幅Loxは、電子ビーム加工データ作成装置17にて決定されたX軸方向の所定の照射点間隔Lxに基づいて決定され、図5に示すように小振幅偏向の振幅Loxと偏向距離Ldの関係によって小振幅偏向の角度範囲θoxが決定される。小振幅偏向電流データ発生回路25は、シーケンス制御回路27からの指令により、格納している電流波形データを選択しその周期toを設定するとともに、上記の小振幅偏向の角度範囲θoxに応じた電流波形の振幅を設定し、X軸小振幅偏向コイル電流Idoxの波形を出力する。
【0020】
ここではX軸小振幅偏向コイル電流Idoxの波形を図7(a)に示すような三角波とし、照射点ごとに電子ビームは直線上を1回往復する。このX軸小振幅偏向コイル電流Idoxの波形がX軸偏向コイル電流制御回路30に出力されて、照射点ごとにX軸偏向電流データ格納エリア23から出力されるX軸偏向コイル電流Id1xの値(図7(b))と加算されて実電流の偏向コイル電流Idxとなり(図7(c))、偏向コイル8に供給される。ここで、照射点の加工パラメータの決定手順で説明したようにX軸偏向コイル電流Id1xは照射点ごとに設定される値であり、一方、X軸小振幅偏向コイル電流Idoxは上記のように一定の波形と周期および振幅を持つ。
【0021】
上記のように電子ビームが照射点を中心にして所定の直線上の領域で往復して偏向するので、電子ビームの照射範囲が大きくなる。さらに、電子ビームが照射された箇所においては熱伝導により照射エネルギーが周囲に広がるので、被加工物12が加工される範囲は、電子ビームが照射される範囲と上記の照射エネルギーがその周囲に広がった範囲の両方である。ここで、本発明の小振幅偏向動作を行わない従来技術においては図8(a)に一例を示すように加工範囲は照射点中心の円形内に限られるが、本発明においては照射点中心の加工範囲は図8(b)に示すようなより広い範囲となる。従来技術での加工範囲を照射点を中心として半径rとすると、加工面の全範囲を加工するためには隣り合う照射点の加工範囲の重複を要するので照射点間隔のX軸方向LxおよびY軸方向Lyは1.5r程度にする必要がある。一方、小振幅偏向を採用した本発明においては小振幅偏向の振幅Loxを例えば5rに設定すると、図8の例では照射点間隔Lxは6r程度、Lyは2r程度でよく、この場合は照射点の数は従来技術に比べて約1/5〜1/6に低減できる。小振幅偏向の振幅Loxを上記より大きくすれば照射点間隔も大きくできるので、照射点の数もさらに低減できる。
【0022】
上記で説明したように、照射された箇所から広がる照射エネルギーの範囲で加工範囲も決まるので、小振幅偏向の振幅Loxは照射点の所定の間隔Lxに近い値で設定すればよい。なお、電子ビームは連続して照射されているため、ある照射点から次の照射点への移動にあたっては小振幅偏向の振幅Lox以外の箇所に電子ビームが一時的に照射されることになるが、上記の移動時間は照射点の移動の周期に比べて短いため、照射されるエネルギーの分布にはほとんど影響を与えない。また、本実施の形態では、小振幅偏向はX軸方向のみについて動作するためY軸方向の偏向はなくY軸方向の振幅Loyおよび角度範囲θoyはゼロであるため、小振幅偏向電流データ発生回路25が出力するY軸小振幅偏向コイル電流Idoyはゼロの値である。
【0023】
ある照射点から次の照射点への移動は照射点の座標(X1、Y1)に応じた加工パラメータの設定によって行われ、この加工パラメータの変更はクロック周波数発生回路26が発生するクロック周波数信号に同期する。すなわち、クロック周波数信号に同期して照射点が移動する。また、上記に説明したステップ3の動作が照射点ごとに繰り返される。これらの動作は図17におけるステップ4に示す範囲である。
【0024】
図3に、加工面のX軸方向の照射点についての収束レンズ電流、偏向コイル電流および電子ビーム電流の設定の一例を示す。ここでは、偏向コイル8から加工面の基準位置までの距離、すなわち偏向距離を400mmとしている。収束レンズ電流は加工面の基準位置から遠くなると小さく設定され、電子ビーム電流は加工面の基準位置から遠くなると大きく設定される。収束電流および電子ビーム電流とも加工面の基準位置に近い範囲(図3では+50mmから−50mm)では一定の値としているが、この範囲での収束距離と電子ビームの照射エネルギーの変化量は微小なためである。
【0025】
全照射点への電子ビームの照射が完了すると加工は終了となって電子ビーム加工装置に停止が指令され、被加工物12は加工室11より取り出される。
【0026】
このように構成された電子ビーム加工方法においては、電子ビームの照射点を中心にした領域内で電子ビームを偏向させるので、照射点の間を確実に加工できる。従って、照射点の間隔を大きくして被加工物の照射点の数を少なくすることができるため、加工ムラを出さずに加工時間を低減することができる。また、加工時間の低減により、時間の経過とともに拡大する被加工物の加工熱の分布差を低減することができ、被加工物の熱歪みを低減することができるので高い加工品質を得ることができる。また、電子ビームの偏向角度にかかわらず照射点ごとに被加工物の表面の広い範囲にわたって均一に電子ビームの照射エネルギーを与えることができるので、大きな形状の被加工物であっても加工ムラを出さずに加工時間を低減することができる。
【0027】
上記の実施の形態では、小振幅偏向の周期は電子ビームの照射点を順番に移動する周期と一致させているが、クロック周波数の設定できる範囲で小振幅偏向の周期を設定することができる。例えば図9に示すように小振幅偏向の周期を短くして、照射点の移動周期の1/2とすれば、電子ビームは1個の照射点で直線上を2回往復することにより、上記と同様の効果を得ることができる。
【0028】
上記の実施の形態では、小振幅偏向の電流波形は三角波としているが、これは小振幅偏向電流データ発生回路25の電流波形の選択により三角波以外の他の波形とすることもできる。例えば図10に示すように正弦波とすることでも、三角波の場合と同様の効果を得ることができる。
【0029】
実施の形態2.
実施の形態1では小振幅偏向の波形を電子ビームの照射が移動する方向、すなわちX軸方向に合わせた直線上の往復としているが、照射点を中心とした交差する複数の直線、すなわちX軸方向とY軸方向の両方の往復としてもよい。図11は、この発明を実施するための電子ビーム加工方法における小振幅偏向の照射点を中心とした領域を示す図である。電子ビーム加工装置の構成は実施の形態1と同一である。この実施の形態においては、電子ビームが照射点ごとに照射点を中心にしてX軸方向とY軸方向の両方に交互に1回ずつ往復して偏向する。
【0030】
次に、本実施の形態の動作を小振幅偏向について説明する。電子ビーム加工データ作成装置17にて決定されたX軸方向の所定の照射点間隔LxとY軸方向の所定の照射点間隔Lyに基づいて、電子ビーム加工データ作成装置17によって小振幅偏向の振幅LoxとLoyが決定され、小振幅偏向の角度範囲θoxとθoyが決定される。小振幅偏向電流データ発生回路25は格納している電流波形と周期toを設定するとともに、これらの角度範囲θoxとθoyに応じた振幅を設定し、図12に示すようなX軸小振幅偏向コイル電流Idoxの波形とY軸小振幅偏向コイル電流Idoyの波形を出力する。実施の形態1と同様に、照射点ごとにX軸偏向電流データ格納エリア23とY軸偏向電流データ格納エリア24からそれぞれ出力されるX軸偏向コイル電流Id1xとY軸偏向コイル電流Id1yと加算されてそれぞれX軸偏向コイル電流IdxおよびY軸偏向コイル電流Idyとなり、偏向コイル8に供給される。
【0031】
ここで、被加工物12のできるかぎり広い範囲にわたって加工されるように、X軸の小偏向の振幅Loxは照射点のX軸の間隔Lxに近い値で、Y軸の小偏向の振幅Loyは照射点の間隔Lyに近い値でそれぞれ設定される。また、小振幅偏向の周期toはクロック周波数の範囲内で任意に設定することができる。
【0032】
実施の形態2では、小振幅偏向がX軸とY軸の両方向にて行われるため、照射点のX方向とY方向の両方の間隔に合わせて電子ビームを照射する領域を設定することができるので、電子ビームを照射する範囲を大きくすることができ、実施の形態1と同様に被加工物の加工ムラを出さずに加工時間を低減することができる。
【0033】
実施の形態3.
実施の形態1または2では小振幅偏向の照射点を中心とした領域を直線としているが、円形とすることもできる。図13に示すような円を描くように、X軸方向の偏向角度θoxとY軸方向の偏向角度θoyに応じて、小振幅偏向電流データ発生回路25よりX軸小振幅偏向電流IdoxとY軸小振幅偏向電流Idoyが図14に示すような波形として出力される。ここで、小振幅偏向の振幅Loxすなわち円の直径は照射点の間隔より小さい値で設定される。なお、電子ビームが照射点から円周上に移動するときに、照射点と円周上以外の箇所に一時的に電子ビーム照射されることになるが、上記の移動の時間は円周上の移動時間に比べて短いため、照射されるエネルギーの分布に影響は与えない。
【0034】
実施の形態3では、小振幅偏向が照射点を中心にした円形状に行われるため、照射点の中間の領域に電子ビームを照射することができるので、電子ビームを照射する範囲を大きくすることができ、実施の形態1および2と同様に被加工物の加工ムラを出さずに加工時間を低減することができる。
【0035】
上記の実施の形態では、小振幅偏向の照射点を中心とした領域を円形としているが、これを図15に示すような楕円形とすることもできる。領域を楕円形とすることにより、照射点の間隔がX軸方向とY軸方向で異なる場合にも、照射点の間隔に合わせて加工ムラを出さない形状を設定することができることができる。
【0036】
また、上記の実施の形態では、小振幅偏向の照射点を中心とした領域を円形または楕円形としているが、これを図16に示すような四角形状とすることもできる。小振幅偏向の領域を楕円形とする場合と同様に、照射点の間隔がX軸方向とY軸方向で異なる場合にも、照射点の間隔に合わせて加工ムラを出さない形状を設定することができることができる。
【符号の説明】
【0037】
2 陰極
7 収束レンズ
8 偏向コイル
12 被加工物
17 電子ビーム加工データ作成装置
18 電子ビーム加工データ出力制御装置
21 電子ビーム電流データ格納エリア
22 収束レンズ電流データ格納エリア
23 X軸偏向電流データ格納エリア
24 Y軸偏向電流データ格納エリア
25 小振幅偏向電流データ発生回路
28 電子ビーム電流制御回路
29 収束レンズ電流制御回路
30 X軸偏向コイル電流制御回路
31 Y軸偏向コイル電流制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陰極から連続して放出される電子ビームを収束レンズと偏向コイルによって被加工物の表面に照射し加工を行う電子ビーム加工方法において、上記被加工物の形状データに基づいて上記被加工物の表面に所定の間隔を有する上記電子ビームの照射点を決定する第1のステップと、この照射点の位置に対応して上記電子ビームの電流と上記収束レンズの電流および上記偏向コイルの電流を設定する第2のステップと、上記照射点に上記電子ビームを照射するとともに上記照射点を中心にした領域で上記電子ビームを偏向させる第3のステップと、この第3のステップを予め設定した周期で照射点ごとに順次行う第4のステップとを有する電子ビーム加工方法。
【請求項2】
照射点を中心にした領域は直線とする請求項1に記載の電子ビーム加工方法。
【請求項3】
照射点を中心にした領域は円形とする請求項1に記載の電子ビーム加工方法。
【請求項4】
照射点を中心にした領域は楕円形とする請求項1に記載の電子ビーム加工方法。
【請求項5】
照射点を中心にした領域は四角形とする請求項1に記載の電子ビーム加工方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2012−187608(P2012−187608A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53212(P2011−53212)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】