電子ビーム溶接方法
【課題】 溶接部の溶け込みピークが狙い位置からずれることなく安定した溶接を行うことができる電子ビーム溶接方法を提供すること。
【解決手段】 本発明の電子ビーム溶接方法では、ベース12に対してキャリア11に備わる各支柱13a,13b,13cの底面(溶け込み形状EBW)を溶接するために、位置aから位置cまでの区間を0.2mmピッチで区切り、溶接区間の左右端から中央に向かって電子ビームEBを高速偏向して左右交互に各区間ごとに必要なパルス照射回数を照射して、各区間における溶け込み深さを制御する。このとき、ビーム電流を常に一定に制御する。
【解決手段】 本発明の電子ビーム溶接方法では、ベース12に対してキャリア11に備わる各支柱13a,13b,13cの底面(溶け込み形状EBW)を溶接するために、位置aから位置cまでの区間を0.2mmピッチで区切り、溶接区間の左右端から中央に向かって電子ビームEBを高速偏向して左右交互に各区間ごとに必要なパルス照射回数を照射して、各区間における溶け込み深さを制御する。このとき、ビーム電流を常に一定に制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ビームを被溶接部材の溶接部に照射して、その部分を溶融させて被溶接部材を溶接する電子ビーム溶接方法に関する。より詳細には、溶接部における溶け込み深さ(形状)を高精度に管理することができる電子ビーム溶接方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
溶接方法の1つとして、電子ビーム溶接がある。この電子ビーム溶接は、真空中で電子ビームを被溶接部材に照射することにより、光に近い速度に加速され集束された電子を被溶接部材に衝突させ、その衝突点に発生する超高熱を利用して、被溶接部材の溶接を行うようになっている。
【0003】
このような電子ビーム溶接方法では、例えば特公平6−35071号公報に記載されているように、溶接部の溶け込み深さはビーム電流を変化させることにより制御されている。具体的には、図15に示すように、溶接開始部では徐々にビーム電流を大きくしていき、溶接終了部ではビーム電流を徐々に小さくしていく。これにより、図16に示すような溶け込み形状が形成されて被溶接部材の溶接が行われるようになっている。なお、図15は、ビーム電流の変化の様子を表す図であり、図16は、被溶接部材の溶け込み深さを示す断面図である。
【0004】
しかしながら、上記した従来の電子ビーム溶接方法では、溶接始終端部(図16のt1〜t2の区間、およびt3〜t4の区間)において、溶け込み深さ(形状)にばらつきが生じてしまうという問題があった。なぜなら、この区間で図15に示すようにビーム電流を変化させているため、ビーム電流が不安定となるからである。このため、溶接部における溶け込み深さ(形状)を精度よく形成することができなかった。
【0005】
また、従来の電子ビーム溶接方法では、ビーム電流を上昇させた後、瞬時にビーム電流を下降させることができない。このため、図17に示すような三角形の溶け込み形状を形成することができなかった。
【0006】
そこで、このような問題を解決すべく本出願人は、特願2004−34429にて、溶接部の溶け込み形状を精度よく形成して安定した溶接を行うことができる電子ビーム溶接方法を提案した。この電子ビーム溶接方法では、ビーム電流を一定にし、パルス照射数を変化させることにより、所望の溶け込み形状を精度良く形成することができるようになっている。
【0007】
【特許文献1】特公平6−35071号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の電子ビーム溶接方法では、溶け込みピークが狙い位置からずれてしまうおそれがあることがわかった。例えば、三角形の溶け込み形状を形成する場合では、図18に示すように、溶け込みピークがセンターから溶接方向へずれ量Eだけずれてしまうおそれがある。上記の電子ビーム溶接方法では、溶接部分の一端から他端に向けて電子ビームの照射が行われる(溶接方向が1方向である)ため、被溶接部材における蓄熱による熱伝導によって溶接方向に溶け込みが助長され溶け込みピークがずれると考えられる。そして、溶け込みピークがずれてしまうと、狙いの溶け込み形状を得ることができずビームの突き抜け不良等が発生するおそれがある。
【0009】
ここで、溶け込みピークのずれをなくすには、溶け込みピークのずれ量を実験データにより予め求めておき、そのずれ量を見込んで電子ビームの照射を制御すればよい。ところが、このような方法では、溶け込み形状が変われば、各形状に合わせて溶け込みピークのずれ量をそれぞれ求めなければならないため非常に煩雑である。
【0010】
そこで、本発明は上記した問題点を解決するためになされたものであり、溶接部の溶け込みピークが狙い位置からずれることなく安定した溶接を行うことができる電子ビーム溶接方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するためになされた本発明に係る電子ビーム溶接方法は、電子ビームを被溶接部材の溶接部に照射して、その部分を溶融させて被溶接部材を溶接する電子ビーム溶接方法であって、前記溶接部を複数の区間に区切り、前記各区間に対する電子ビームの照射を、前記溶接部の左右端から中央に向けて左右交互に行い、前記各区間ごとにおける電子ビームのパルス照射回数を変化させることにより、前記各区間における溶け込み深さを制御することを特徴とする。
【0012】
この電子ビーム溶接方法では、溶接部を複数の区間に区切って、各区間ごとに電子ビームのパルス照射回数を変化させ、各区間における溶け込み深さを制御する。そして、各区間に対する電子ビームの照射を、溶接部の左右端から中央に向けて左右交互に行って溶接を行う。すなわち、各区間ごとに行う電子ビーム溶接を1方向ではなく左右交互に行って、最終的に溶接部全体を溶接するのである。このように、各区間における電子ビーム溶接が左右交互に行われるため、被溶接部材における蓄熱差がなくなり、熱伝導による溶け込みのずれが生じなくなる。
【0013】
そして、各区間における溶け込み深さは、電子ビームのパルス照射回数に応じて変化するので、各区間における溶け込み深さを精度よく管理することができる。そのため、溶け込みピークがずれることなく、溶接部全体の溶け込み形状を正確に形成することができるので、安定した溶接を行うことができる。その結果、図17に示すような三角形の溶け込み形状であっても正確に形成することができる。
【0014】
ここで、電子ビーム溶接を行うためには、電子ビームと被溶接部材とを相対移動させる必要がある。そのためには、被溶接部材を固定して電子ビームを照射する電子銃を移動させる、あるいは逆に、電子銃を固定して被溶接部材を移動させることも考えられるが、電子銃、被溶接部材ともに固定して電子ビーム自体を高速偏向させればよい。電子ビーム自体を高速偏向させる方が簡単であり、かつ溶接部における溶け込み深さをより高精度に管理することができるからである。
【0015】
また、電子ビームのパルス照射周波数は、1〜10kHzの範囲内で設定すればよい。1kHzよりも小さく設定すると安定した溶接ができず、10kHzよりも大きく設定するとビーム照射の制御系に余分な負荷がかかり電子ビームが不安定なものになるからである。
【0016】
なお、溶接部を複数に区切った各区間の区間ピッチは、溶け込み深さの要求精度によって設定すればよい。この区間ピッチは、最大で0.7mm程度まで設定可能であるが、好ましくは0.2mm程度に設定することが望ましい。区間ピッチを0.7mmよりも大きく設定すると、溶接部における溶け込み形状が安定しない一方、区間ピッチを0.2mmよりも小さくすると、電子ビームと被溶接部材の相対移動の制御が複雑になるだけで溶接部における溶け込み形状の精度にはさほど影響しない(つまり、精度が向上しない)からである。
【0017】
そして、前記各区間における電子ビームのパルス照射回数Knは、前記溶接部における最深部の溶け込み深さをhc、前記最深部における電子ビームのパルス照射回数をKc、前記各区間における狙いの溶け込み深さをhnとすると、
Kn=Kc・(hn/hc)2
となる関係式により設定すればよい。
【0018】
ここで、溶接部の形状はあらかじめわかっているので、溶接部における最深部の溶け込み深さhc、および各区間における狙いの溶け込み深さhnは簡単に求められる。一方、パルス照射回数Kcと溶け込み深さhcとの関係は、被溶接部材の材質、ビーム電流、ビーム加速電圧、フォーカス等によって大きく変化するため、両者の関係をあらかじめ実験により求めておくことが必要である。具体的には、テストピースを準備して、実際に溶接を行う条件下において、要求される溶け込み深さが得られるまで電子ビームをテストピースに照射し、そのときのパルス照射回数を測定すればよい。このように、パルス照射回数Kcと溶け込み深さhcとの関係も、非常に簡単に求めることができる。したがって、各区間における電子ビームのパルス照射回数Knを、上記の関係式により非常に簡単に決定することができる。
【0019】
電子ビームのパルス照射回数Knを求めるために、溶接部における最深部の溶け込み深さhcとそれを得るために必要なパルス照射回数Kcを使用するのは、それ以外の部分(区間)におけるパルス照射回数Knを内挿法により求めるためである。これにより、外挿法を使用する場合に比べ、パルス照射回数Knをより精度よく求めることができる。そして、その結果として、溶け込み形状を高精度に管理し安定した溶接を行うことができるからである。
【0020】
また、本発明に係る電子ビーム溶接方法においては、ビーム電流を一定にして電子ビームのパルス照射回数を変化させることが望ましい。こうすることにより、ビーム電流が不安的になることがないので、溶接部における溶け込み形状をより精度よく管理することができるからである。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る電子ビーム溶接方法によれば、上記した通り、溶接部の溶け込みピークが狙い位置からずれることなく安定した溶接を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の電子ビーム溶接方法を具体化した最も好適な実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。本実施の形態では、図1に示すような部品10(自動車のA/T部品)を製造するために、図2および図3に示すキャリア11をベース12に溶接する場合について説明する。キャリア11とベース12の材質は、ともに炭素鋼である。なお、図1は、溶接後の部品(完成品)を示す斜視図である。図2は、キャリアを示す斜視図である。図3は、キャリアの底面図である。
【0023】
ここで、キャリア11は、図2および図3に示すように、3本の支柱13a,13b,13cが備わっている。そして、これらの支柱13a,13b,13cの底面がベース12に対して溶接されて部品10(図1参照)が完成する。これら支柱13a,13b,13cは、すべて同一形状であり、略三角柱形状をなしている。そして、キャリア11とベース12とを溶接するためには、これらの支柱13a,13b,13cの各底面部を溶融させることが必要となる。そのため、各溶接部(溶け込み形状)EBWは、三角形状となる。そして、各支柱13a,13b,13cの底面に、三角形状の溶接部EBWを正確に形成しないと、ビーム貫通不良や完成品の剛性不足などの不具合が発生してしまうので、三角形状の溶接部EBWを正確に形成することが必要となる。
【0024】
次に、上記したキャリア11とベース12との溶接を行う装置の概要について、図4を参照しながら説明する。図4は、電子ビーム溶接装置20の概略構成を示す構成図である。この電子ビーム溶接装置20は、電子ビームEBを溶接部EBWに対して発射する電子銃21と、電子銃21から照射される電子ビームEBが通過する金属蒸気シール筒22と、金属蒸気シール筒22の周辺に配置され、金属蒸気シール筒22内の磁界を自由に変化させる偏向コイル23とを備えている。そして、図示しない制御回路が電子銃21および偏向コイル23に接続されており、電子ビームEBの照射や偏向などが制御されるようになっている。
【0025】
このような電子ビーム溶接装置20では、まず、電子銃21から電子ビームEBが発射される。そうすると、電子ビームEBは、金属蒸気シール筒22内を通過する。このとき、偏向コイル23に所定の電流を供給すると、金属蒸気シール筒22内の磁界が変化する。そして、偏向コイル23に供給する電流の大きさに応じて、金属蒸気シール筒22内の磁界の変化割合が変化する。このようにして電子ビーム溶接装置20は、金属蒸気シール筒22内の磁界を変化させることにより、電子ビームEBの照射方向を偏向させ、電子ビームEBを溶接部EBWの左右端から中央に向けて左右交互に照射する。これにより、電子ビーム溶接装置20は、被溶接部材の溶接部EBW全域を溶融させて被溶接部材を溶接することができるようになっている。
【0026】
次に、上記の電子ビーム溶接装置20を使用した溶接方法、つまり本実施の形態に係る電子ビーム溶接方法について、図5を参照しながら説明する。図5は、本実施の形態に係る電子ビーム溶接方法の概要を説明するための説明図である。まず、電子ビーム溶接装置20において、電子銃21から発射される電子ビームEBのパルス照射周波数を1kHzに設定する。このとき、ビーム電流、ビーム加速電圧、フォーカスは一定に設定する。つまり、溶接中はこれらの値を変更しない。また、被溶接部材(キャリア11とベース12)を所定位置に固定する。
【0027】
なお、電子ビームのパルス照射周波数は、1〜10kHzの範囲内で設定することが可能である。1kHzよりも小さく設定すると安定した溶接ができず、10kHzよりも大きく設定するとビーム照射の制御系に余分な負荷がかかり電子ビームが不安定なものになるからである。
【0028】
次いで、図5に示すように、溶接区間を0.2mmピッチで区切り、各区間Pc,P1〜Pnにおける電子ビームEBのパルス照射回数Kc,K1〜Knを次式を用いて設定する。
Kn=Kc・(hn/hc)2
例えば、hc=10mm、Kc=40回であって、求めたい区間Pnの狙い溶け込み深さhnがhn=5mmであるとすると、区間Pnにおける電子ビームEBのパルス照射回数Knは、Kn=10回となる。
【0029】
なお、各区間の区間ピッチは、溶け込み深さの要求精度に応じて設定すればよく、最大で0.7mm程度まで設定可能である。ここで、区間ピッチを0.7mmよりも大きく設定すると、溶接部における溶け込み形状が安定しない。その一方、区間ピッチを0.2mmよりも小さくしても電子ビームEBの偏向制御が複雑になるだけで溶接部における溶け込み形状の精度は向上しない。したがって、本実施の形態では、区間ピッチを0.2mmに設定しているのである。
【0030】
また、図5に示す下向き矢印は、電子ビームの照射回数のイメージを表している。つまり、下向き矢印が少ない区間では電子ビームの照射回数が少なく、下向き矢印が多い区間では電子ビームの照射回数が多い。従って、図5では、三角形状の溶け込み形状を形成するために、左右端よりも中央に位置する区間における下向き矢印の数(つまり、電子ビームの照射回数)が多くなっている。
【0031】
そして、上記のようにして求めた各区間Pc,P1〜Pnにおける電子ビームEBのパルス照射回数Kc,K1〜Knに応じて、各区間内で等間隔にパルス照射するように、各区間における照射ピッチを求める。なお、本実施の形態では、区間ピッチを0.2mmとしているため、各区間Pc,P1〜Pnにおける照射ピッチは、「0.2/(各区間における電子ビームのパルス照射回数)」となる。
【0032】
以上の設定にて、図6に示すように、溶接部左右端から中央(中心)に向かって、電子ビームEBを高速偏向させながら、図示する(1)(2)(3)…の順で左右交互に照射していく。これにより、溶接部EBWを溶融させて溶接を行う。図6では、溶接部左端から溶接(電子ビームの照射)を開始しているが、溶接部右端から溶接を開始してもよい。なお、図6は、照射順序を模式的に示す説明図である。
【0033】
このように、本実施の形態に係る電子ビーム溶接方法では、溶接部EBWを複数の区間Pc,P1〜Pnに区切って、ビーム電流を一定にして各区間Pc,P1〜Pnごとに電子ビームEBのパルス照射回数Kc,K1〜Knを変化させ、各区間Pc,P1〜Pnにおける溶け込み深さを制御する。このとき、各区間に対する電子ビームEBの照射を、電子ビームEBを高速偏向させることにより溶接部EBWの左右端から中心に向かって左右交互に行う。
【0034】
これにより、各区間における溶け込み深さは、電子ビームのパルス照射回数に応じて変化するので、各区間における溶け込み深さを精度よく管理することができる。また、電子ビームEBの照射が左右交互に行われるため、被溶接部材における蓄熱差がなくなり熱伝導による溶け込みのずれがなくなる。その結果として、三角形状の溶接部EBWにおける溶け込みを、溶け込みピーク位置がずれることなく正確に形成することができ、安定した溶接を行うことができる。
【0035】
続いて、ベース12に対してキャリア11を溶接する場合について、図7〜図9を参照しながら具体的な数値を挙げて説明する。図7は、ベース12に対してキャリア11を溶接する場合における溶接方法および要求される溶け込み形状を説明する説明図である。図8は、溶接位置と電子ビームのパルス照射回数およびビーム電流との関係を示すグラフである。図9は、溶け込み深さが10mmの位置(図7に示す位置b)において、ビーム電流を変化させた場合におけるパルス照射回数の変化を示す図である。
【0036】
ベース12に対してキャリア11を溶接する場合には、図7に示すような正三角形(最深部bの溶け込み深さが10mm)の溶け込み形状を形成することが要求される。完成品10は、高剛性が要求されるものであり、可能な限り広範囲で溶接する必要があるからである。そして、このような溶け込み形状を形成すべく、上記した方法により図7に示すように、位置aから位置cまでの区間を0.2mmピッチで区切り、電子ビームEBを高速偏向して左右交互に各区間ごとに所定回数ずつ照射する。このときの溶接条件は、図8に示すように、最深部bにおけるパルス照射回数KcはKc=40回であり、ビーム電流IはI=75mAである。なお、図8に示すグラフは、ビーム加速電圧60kV、パルス照射周波数1kHz、JUSTフォーカスの場合である。
【0037】
図8に示すパルス照射回数Knは、
Kn=Kc・(hn/hc)2
により設定される。ここで、Kc=40回、hc=10mmであるから、
Kn=0.4(hn)2
となる。すなわち、パルス照射回数Knが簡単な二次関数になる。
【0038】
なお、加工対象ワークの材料特性やワーク形状により部分的に溶け込み不足などが発生した場合には、そのような溶け込み不足などが発生した区間のパルス照射回数に補正値「±K′m」を入れる必要がある。
【0039】
このことからも明らかなように、図8に示すように、パルス照射回数Knのグラフは、
溶接位置(最深部)bを境界として左右に線対称な2次関数グラフとなる。一方、ビーム電流Iは、図8に示すように溶接を行っている間は常に一定である。これらのことから、本実施の形態に係る電子ビーム溶接方法によれば、図7に示す三角形状の溶け込みを形成して安定した溶接を行うことができるがわかる。また、電子ビームEBの照射が左右交互に行われるため、被溶接部材における蓄熱差がなくなり熱伝導による溶け込みのずれがなくなる。そして、実際に溶接したものを調べたところ、ビームの突き抜け不良や溶け込み不足などが発生することなく、また溶け込みピークがずれることなく、三角形状の溶け込み形状が形成されていたことが確認された。
【0040】
ここで、ビーム電流とパルス照射回数との関係について図9を参照しながら説明する。溶け込み深さhが一定であれば、ビーム電流Iはパルス照射回数Kの平方根に反比例することが知られている。つまり、ビーム電流Iとパルス照射回数Kとの関係は、
I・√K=C(定数)
となる。
【0041】
したがって、照射区間ピッチが0.2mm、パルス照射周波数が1kHz、材質が炭素鋼の場合、図7に示す溶接位置(最深部:溶け込み深さ10mm)bでは、ビーム電流IはI=75mA、パルス照射回数KはK=40回であるから、
75・√40=474.3
となる。このようにして算出された定数C(=474.3)は、前述の条件下では固有値であり、この固有値に基づいてビーム電流Iとパルス照射回数Kとの関係が図9に示すように求められる。
【0042】
図9から明らかなように、ビーム電流Iを小さくするとパルス照射回数Kが増加し、ビーム電流Iを大きくするとパルス照射回数Kは減少する。ここで、理論的には、ビーム電流Iを非常に小さくしてもパルス照射回数Kを増やせば所望の溶け込み深さを得ることができる。しかしながら、実際上は加工(溶接)時間も考慮する必要がある。つまり、加工(溶接)時間が長くなるのは、実用的ではない。このようなことから、加工(溶接)時間も考慮すると、周波数1kHzのときパルス照射回数Kが数十回程度となるようにビーム電流Iを設定することが好ましい。なお、ビーム電流Iの上限は、溶接装置のスペックで決まってしまう。例えば、6kW仕様の溶接装置を使用した場合で、電子ビームの加速電圧が60kVであるとすると、ビーム電流Iの最大値は100mAとなる。
【0043】
したがって、前述の条件下で固有値C=474.3を有する場合には、図9からわかるように、ビーム電流IとしてI=50〜100mAの範囲内で設定すればよい。より好ましくは、溶接装置のスペックから定まる最大ビーム電流値の半分程度にするのがよい。これにより、加工(溶接)時間を長くすることなく溶接装置への負担もかからないからである。
【0044】
次に、被溶接部材(材質)を変更した場合における、ビーム電流とパルス照射回数との関係について、図10〜図12を参照しながら説明する。図10は、6kW:60kV仕様の電子ビーム溶接装置において、炭素鋼と同一条件下で溶接した場合における各材質ごとの溶け込み深さを示す図である。図11は、炭素鋼と同一条件下で溶接した場合に、各材質ごとに必要とされるビーム電流を示す図である。図12は、各材質ごとにおけるビーム電流とパルス照射回数との関係を示す図である。
【0045】
まず、炭素鋼と同一条件下で溶接した場合、各材質では図10に示すような溶け込み深さが得られた。すなわち、炭素鋼(鉄)で10mmの溶け込み深さが得られる溶接条件下において、銅の場合には3.1mm、アルミニウムの場合には18.8mm、ステンレス鋼の場合には12.5mmの溶け込み深さがそれぞれ得られた。
【0046】
ここで、溶け込み深さとビーム電流Iは比例関係にあるので、各材質で10mmの溶け込み深さを得るためには、各材質ごとに図11に示すような大きさのビーム電流が必要となる。すなわち、銅の場合には242mA(定数C=1530.1)、アルミニウムの場合には40mA(定数C=252.3)、ステンレス鋼の場合には60mA(定数C=379.5)のビーム電流がそれぞれ必要になる。なお、電子ビームのパルス照射回数は、すべて40回である。
【0047】
そして、図11に示す各材質の固有値(定数C)に基づいて、
I・√K=C(定数)
となる関係式からビーム電流Iとパルス照射回数Kとの関係を求めると図12に示す通りになる。ここで、図11から明らかなように、どの材質でも、ビーム電流Iを小さくするとパルス照射回数Kが増加し、ビーム電流Iを大きくするとパルス照射回数Kは減少することがわかる。また、図9と図11とを比較すると、アルミニウムおよびステレス鋼であれば、炭素鋼(鉄)と同一の条件で溶接を行うことができることがわかる。これに対して、銅の場合には、ビーム電流が最大値100mAを超えてしまうため、溶接条件を変更しないと成り立たない。
【0048】
以上、詳細に説明したように本実施の形態に係る電子ビーム溶接方法によれば、ベース12に対してキャリア11を溶接するために、位置aから位置cまでの区間を0.2mmピッチで区切り、電子ビームEBを高速偏向して溶接区間の左右端から中央に向かって左右交互に各区間ごとに必要なパルス照射回数を照射することにより、各区間における溶け込み深さを制御する。このとき、ビーム電流は一定に制御されている。
【0049】
このため、各区間における溶け込み深さは、電子ビームEBのパルス照射回数に応じて変化するので、各区間における溶け込み深さを精度よく管理することができる。また、電子ビームEBの照射が左右交互に行われるため、キャリア11およびベース12における蓄熱差がなくなり熱伝導による溶け込みピークのずれがなくなる。その結果として、キャリア11の各支柱13a,13b,13cの底面を広範囲に正確に溶け込ませることができる。つまり、三角形状の溶接部EBWにおける溶け込みを、溶け込みピーク位置がずれることなく正確に形成することができる。その結果として、ビームの突き抜け不良や溶け込み不足などが発生することなく、安定した溶接を行うことができる。
【0050】
なお、上記した実施の形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。例えば、上記した実施の形態では、溶け込み形状が三角形の場合について例示したが、本発明によれば、三角形状以外の溶け込み形状、例えば、図13あるいは図14に示すようなものであっても正確に形成することができる。その結果、図13に示すような溶接部EBW1や、図14に示すような溶接部EBW2を有する被溶接部材でも安定した溶接を行うことができる。
【0051】
また、上記した実施の形態では、溶接部の左右端から中央に向かって左右交互に電子ビームを照射して溶接を行っているが、溶接部の中央から左右端に向かって左右交互に電子ビームを照射して溶接を行うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本実施の形態に係る電子ビーム溶接方法にて製造した完成部品を示す斜視図である。
【図2】キャリアの斜視図である。
【図3】キャリアの底面図である。
【図4】電子ビーム溶接装置の概略構成を示す構成図である。
【図5】本実施の形態に係る電子ビーム溶接方法の概要を説明するための説明図である。
【図6】照射順序を模式的に示す説明図である。
【図7】図1に示す完成部品を製造するための溶接方法および要求される溶け込み形状を説明するための説明図である。
【図8】出力6kW、加速電圧60kV、周波数1kHzの時における、溶接位置と電子ビームのパルス照射回数およびビーム電流との関係を示すグラフである。
【図9】出力6kW、加速電圧60kV、周波数1kHz、照射区間ピッチ0.2mmの時、溶け込み深さが10mmの位置(図7に示す位置b)において、ビーム電流を変化させた場合におけるパルス照射回数の変化を示す図であ
【図10】出力6kW、加速電圧60kV、周波数1kHz、照射区間ピッチ0.2mmの時、炭素鋼と同一条件下で溶接した場合における各材質ごとの溶け込み深さを示す図である。
【図11】出力6kW、加速電圧60kV、周波数1kHz、照射区間ピッチ0.2mmの時、炭素鋼と同一条件下で溶接した場合に、各材質ごとに必要とされるビーム電流を示す図である。
【図12】出力6kW、加速電圧60kV、周波数1kHz、照射区間ピッチ0.2mmの時、各材質ごとにおけるビーム電流とパルス照射回数との関係を示す図である。
【図13】溶け込み形状の変形例を示す図である。
【図14】溶け込み形状の別の変形例を示す図である。
【図15】従来の電子ビーム溶接におけるビーム電流の変化の様子を示す図である。
【図16】従来の電子ビーム溶接における被溶接部材の溶け込み形状を示す図である。
【図17】従来の電子ビーム溶接では不可能であった溶け込み形状の一例を示す図である。
【図18】従来の電子ビーム溶接により三角形の溶け込み形状を形成しようとしたときに実際に形成された溶け込み形状を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
10 完成品
11 キャリア
12 ベース
13a,13b,13c 支柱
20 電子ビーム溶接装置
21 電子銃
22 金属蒸気シール筒
23 偏向コイル
EB 電子ビーム
EBW 溶接部
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子ビームを被溶接部材の溶接部に照射して、その部分を溶融させて被溶接部材を溶接する電子ビーム溶接方法に関する。より詳細には、溶接部における溶け込み深さ(形状)を高精度に管理することができる電子ビーム溶接方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
溶接方法の1つとして、電子ビーム溶接がある。この電子ビーム溶接は、真空中で電子ビームを被溶接部材に照射することにより、光に近い速度に加速され集束された電子を被溶接部材に衝突させ、その衝突点に発生する超高熱を利用して、被溶接部材の溶接を行うようになっている。
【0003】
このような電子ビーム溶接方法では、例えば特公平6−35071号公報に記載されているように、溶接部の溶け込み深さはビーム電流を変化させることにより制御されている。具体的には、図15に示すように、溶接開始部では徐々にビーム電流を大きくしていき、溶接終了部ではビーム電流を徐々に小さくしていく。これにより、図16に示すような溶け込み形状が形成されて被溶接部材の溶接が行われるようになっている。なお、図15は、ビーム電流の変化の様子を表す図であり、図16は、被溶接部材の溶け込み深さを示す断面図である。
【0004】
しかしながら、上記した従来の電子ビーム溶接方法では、溶接始終端部(図16のt1〜t2の区間、およびt3〜t4の区間)において、溶け込み深さ(形状)にばらつきが生じてしまうという問題があった。なぜなら、この区間で図15に示すようにビーム電流を変化させているため、ビーム電流が不安定となるからである。このため、溶接部における溶け込み深さ(形状)を精度よく形成することができなかった。
【0005】
また、従来の電子ビーム溶接方法では、ビーム電流を上昇させた後、瞬時にビーム電流を下降させることができない。このため、図17に示すような三角形の溶け込み形状を形成することができなかった。
【0006】
そこで、このような問題を解決すべく本出願人は、特願2004−34429にて、溶接部の溶け込み形状を精度よく形成して安定した溶接を行うことができる電子ビーム溶接方法を提案した。この電子ビーム溶接方法では、ビーム電流を一定にし、パルス照射数を変化させることにより、所望の溶け込み形状を精度良く形成することができるようになっている。
【0007】
【特許文献1】特公平6−35071号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の電子ビーム溶接方法では、溶け込みピークが狙い位置からずれてしまうおそれがあることがわかった。例えば、三角形の溶け込み形状を形成する場合では、図18に示すように、溶け込みピークがセンターから溶接方向へずれ量Eだけずれてしまうおそれがある。上記の電子ビーム溶接方法では、溶接部分の一端から他端に向けて電子ビームの照射が行われる(溶接方向が1方向である)ため、被溶接部材における蓄熱による熱伝導によって溶接方向に溶け込みが助長され溶け込みピークがずれると考えられる。そして、溶け込みピークがずれてしまうと、狙いの溶け込み形状を得ることができずビームの突き抜け不良等が発生するおそれがある。
【0009】
ここで、溶け込みピークのずれをなくすには、溶け込みピークのずれ量を実験データにより予め求めておき、そのずれ量を見込んで電子ビームの照射を制御すればよい。ところが、このような方法では、溶け込み形状が変われば、各形状に合わせて溶け込みピークのずれ量をそれぞれ求めなければならないため非常に煩雑である。
【0010】
そこで、本発明は上記した問題点を解決するためになされたものであり、溶接部の溶け込みピークが狙い位置からずれることなく安定した溶接を行うことができる電子ビーム溶接方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するためになされた本発明に係る電子ビーム溶接方法は、電子ビームを被溶接部材の溶接部に照射して、その部分を溶融させて被溶接部材を溶接する電子ビーム溶接方法であって、前記溶接部を複数の区間に区切り、前記各区間に対する電子ビームの照射を、前記溶接部の左右端から中央に向けて左右交互に行い、前記各区間ごとにおける電子ビームのパルス照射回数を変化させることにより、前記各区間における溶け込み深さを制御することを特徴とする。
【0012】
この電子ビーム溶接方法では、溶接部を複数の区間に区切って、各区間ごとに電子ビームのパルス照射回数を変化させ、各区間における溶け込み深さを制御する。そして、各区間に対する電子ビームの照射を、溶接部の左右端から中央に向けて左右交互に行って溶接を行う。すなわち、各区間ごとに行う電子ビーム溶接を1方向ではなく左右交互に行って、最終的に溶接部全体を溶接するのである。このように、各区間における電子ビーム溶接が左右交互に行われるため、被溶接部材における蓄熱差がなくなり、熱伝導による溶け込みのずれが生じなくなる。
【0013】
そして、各区間における溶け込み深さは、電子ビームのパルス照射回数に応じて変化するので、各区間における溶け込み深さを精度よく管理することができる。そのため、溶け込みピークがずれることなく、溶接部全体の溶け込み形状を正確に形成することができるので、安定した溶接を行うことができる。その結果、図17に示すような三角形の溶け込み形状であっても正確に形成することができる。
【0014】
ここで、電子ビーム溶接を行うためには、電子ビームと被溶接部材とを相対移動させる必要がある。そのためには、被溶接部材を固定して電子ビームを照射する電子銃を移動させる、あるいは逆に、電子銃を固定して被溶接部材を移動させることも考えられるが、電子銃、被溶接部材ともに固定して電子ビーム自体を高速偏向させればよい。電子ビーム自体を高速偏向させる方が簡単であり、かつ溶接部における溶け込み深さをより高精度に管理することができるからである。
【0015】
また、電子ビームのパルス照射周波数は、1〜10kHzの範囲内で設定すればよい。1kHzよりも小さく設定すると安定した溶接ができず、10kHzよりも大きく設定するとビーム照射の制御系に余分な負荷がかかり電子ビームが不安定なものになるからである。
【0016】
なお、溶接部を複数に区切った各区間の区間ピッチは、溶け込み深さの要求精度によって設定すればよい。この区間ピッチは、最大で0.7mm程度まで設定可能であるが、好ましくは0.2mm程度に設定することが望ましい。区間ピッチを0.7mmよりも大きく設定すると、溶接部における溶け込み形状が安定しない一方、区間ピッチを0.2mmよりも小さくすると、電子ビームと被溶接部材の相対移動の制御が複雑になるだけで溶接部における溶け込み形状の精度にはさほど影響しない(つまり、精度が向上しない)からである。
【0017】
そして、前記各区間における電子ビームのパルス照射回数Knは、前記溶接部における最深部の溶け込み深さをhc、前記最深部における電子ビームのパルス照射回数をKc、前記各区間における狙いの溶け込み深さをhnとすると、
Kn=Kc・(hn/hc)2
となる関係式により設定すればよい。
【0018】
ここで、溶接部の形状はあらかじめわかっているので、溶接部における最深部の溶け込み深さhc、および各区間における狙いの溶け込み深さhnは簡単に求められる。一方、パルス照射回数Kcと溶け込み深さhcとの関係は、被溶接部材の材質、ビーム電流、ビーム加速電圧、フォーカス等によって大きく変化するため、両者の関係をあらかじめ実験により求めておくことが必要である。具体的には、テストピースを準備して、実際に溶接を行う条件下において、要求される溶け込み深さが得られるまで電子ビームをテストピースに照射し、そのときのパルス照射回数を測定すればよい。このように、パルス照射回数Kcと溶け込み深さhcとの関係も、非常に簡単に求めることができる。したがって、各区間における電子ビームのパルス照射回数Knを、上記の関係式により非常に簡単に決定することができる。
【0019】
電子ビームのパルス照射回数Knを求めるために、溶接部における最深部の溶け込み深さhcとそれを得るために必要なパルス照射回数Kcを使用するのは、それ以外の部分(区間)におけるパルス照射回数Knを内挿法により求めるためである。これにより、外挿法を使用する場合に比べ、パルス照射回数Knをより精度よく求めることができる。そして、その結果として、溶け込み形状を高精度に管理し安定した溶接を行うことができるからである。
【0020】
また、本発明に係る電子ビーム溶接方法においては、ビーム電流を一定にして電子ビームのパルス照射回数を変化させることが望ましい。こうすることにより、ビーム電流が不安的になることがないので、溶接部における溶け込み形状をより精度よく管理することができるからである。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る電子ビーム溶接方法によれば、上記した通り、溶接部の溶け込みピークが狙い位置からずれることなく安定した溶接を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の電子ビーム溶接方法を具体化した最も好適な実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。本実施の形態では、図1に示すような部品10(自動車のA/T部品)を製造するために、図2および図3に示すキャリア11をベース12に溶接する場合について説明する。キャリア11とベース12の材質は、ともに炭素鋼である。なお、図1は、溶接後の部品(完成品)を示す斜視図である。図2は、キャリアを示す斜視図である。図3は、キャリアの底面図である。
【0023】
ここで、キャリア11は、図2および図3に示すように、3本の支柱13a,13b,13cが備わっている。そして、これらの支柱13a,13b,13cの底面がベース12に対して溶接されて部品10(図1参照)が完成する。これら支柱13a,13b,13cは、すべて同一形状であり、略三角柱形状をなしている。そして、キャリア11とベース12とを溶接するためには、これらの支柱13a,13b,13cの各底面部を溶融させることが必要となる。そのため、各溶接部(溶け込み形状)EBWは、三角形状となる。そして、各支柱13a,13b,13cの底面に、三角形状の溶接部EBWを正確に形成しないと、ビーム貫通不良や完成品の剛性不足などの不具合が発生してしまうので、三角形状の溶接部EBWを正確に形成することが必要となる。
【0024】
次に、上記したキャリア11とベース12との溶接を行う装置の概要について、図4を参照しながら説明する。図4は、電子ビーム溶接装置20の概略構成を示す構成図である。この電子ビーム溶接装置20は、電子ビームEBを溶接部EBWに対して発射する電子銃21と、電子銃21から照射される電子ビームEBが通過する金属蒸気シール筒22と、金属蒸気シール筒22の周辺に配置され、金属蒸気シール筒22内の磁界を自由に変化させる偏向コイル23とを備えている。そして、図示しない制御回路が電子銃21および偏向コイル23に接続されており、電子ビームEBの照射や偏向などが制御されるようになっている。
【0025】
このような電子ビーム溶接装置20では、まず、電子銃21から電子ビームEBが発射される。そうすると、電子ビームEBは、金属蒸気シール筒22内を通過する。このとき、偏向コイル23に所定の電流を供給すると、金属蒸気シール筒22内の磁界が変化する。そして、偏向コイル23に供給する電流の大きさに応じて、金属蒸気シール筒22内の磁界の変化割合が変化する。このようにして電子ビーム溶接装置20は、金属蒸気シール筒22内の磁界を変化させることにより、電子ビームEBの照射方向を偏向させ、電子ビームEBを溶接部EBWの左右端から中央に向けて左右交互に照射する。これにより、電子ビーム溶接装置20は、被溶接部材の溶接部EBW全域を溶融させて被溶接部材を溶接することができるようになっている。
【0026】
次に、上記の電子ビーム溶接装置20を使用した溶接方法、つまり本実施の形態に係る電子ビーム溶接方法について、図5を参照しながら説明する。図5は、本実施の形態に係る電子ビーム溶接方法の概要を説明するための説明図である。まず、電子ビーム溶接装置20において、電子銃21から発射される電子ビームEBのパルス照射周波数を1kHzに設定する。このとき、ビーム電流、ビーム加速電圧、フォーカスは一定に設定する。つまり、溶接中はこれらの値を変更しない。また、被溶接部材(キャリア11とベース12)を所定位置に固定する。
【0027】
なお、電子ビームのパルス照射周波数は、1〜10kHzの範囲内で設定することが可能である。1kHzよりも小さく設定すると安定した溶接ができず、10kHzよりも大きく設定するとビーム照射の制御系に余分な負荷がかかり電子ビームが不安定なものになるからである。
【0028】
次いで、図5に示すように、溶接区間を0.2mmピッチで区切り、各区間Pc,P1〜Pnにおける電子ビームEBのパルス照射回数Kc,K1〜Knを次式を用いて設定する。
Kn=Kc・(hn/hc)2
例えば、hc=10mm、Kc=40回であって、求めたい区間Pnの狙い溶け込み深さhnがhn=5mmであるとすると、区間Pnにおける電子ビームEBのパルス照射回数Knは、Kn=10回となる。
【0029】
なお、各区間の区間ピッチは、溶け込み深さの要求精度に応じて設定すればよく、最大で0.7mm程度まで設定可能である。ここで、区間ピッチを0.7mmよりも大きく設定すると、溶接部における溶け込み形状が安定しない。その一方、区間ピッチを0.2mmよりも小さくしても電子ビームEBの偏向制御が複雑になるだけで溶接部における溶け込み形状の精度は向上しない。したがって、本実施の形態では、区間ピッチを0.2mmに設定しているのである。
【0030】
また、図5に示す下向き矢印は、電子ビームの照射回数のイメージを表している。つまり、下向き矢印が少ない区間では電子ビームの照射回数が少なく、下向き矢印が多い区間では電子ビームの照射回数が多い。従って、図5では、三角形状の溶け込み形状を形成するために、左右端よりも中央に位置する区間における下向き矢印の数(つまり、電子ビームの照射回数)が多くなっている。
【0031】
そして、上記のようにして求めた各区間Pc,P1〜Pnにおける電子ビームEBのパルス照射回数Kc,K1〜Knに応じて、各区間内で等間隔にパルス照射するように、各区間における照射ピッチを求める。なお、本実施の形態では、区間ピッチを0.2mmとしているため、各区間Pc,P1〜Pnにおける照射ピッチは、「0.2/(各区間における電子ビームのパルス照射回数)」となる。
【0032】
以上の設定にて、図6に示すように、溶接部左右端から中央(中心)に向かって、電子ビームEBを高速偏向させながら、図示する(1)(2)(3)…の順で左右交互に照射していく。これにより、溶接部EBWを溶融させて溶接を行う。図6では、溶接部左端から溶接(電子ビームの照射)を開始しているが、溶接部右端から溶接を開始してもよい。なお、図6は、照射順序を模式的に示す説明図である。
【0033】
このように、本実施の形態に係る電子ビーム溶接方法では、溶接部EBWを複数の区間Pc,P1〜Pnに区切って、ビーム電流を一定にして各区間Pc,P1〜Pnごとに電子ビームEBのパルス照射回数Kc,K1〜Knを変化させ、各区間Pc,P1〜Pnにおける溶け込み深さを制御する。このとき、各区間に対する電子ビームEBの照射を、電子ビームEBを高速偏向させることにより溶接部EBWの左右端から中心に向かって左右交互に行う。
【0034】
これにより、各区間における溶け込み深さは、電子ビームのパルス照射回数に応じて変化するので、各区間における溶け込み深さを精度よく管理することができる。また、電子ビームEBの照射が左右交互に行われるため、被溶接部材における蓄熱差がなくなり熱伝導による溶け込みのずれがなくなる。その結果として、三角形状の溶接部EBWにおける溶け込みを、溶け込みピーク位置がずれることなく正確に形成することができ、安定した溶接を行うことができる。
【0035】
続いて、ベース12に対してキャリア11を溶接する場合について、図7〜図9を参照しながら具体的な数値を挙げて説明する。図7は、ベース12に対してキャリア11を溶接する場合における溶接方法および要求される溶け込み形状を説明する説明図である。図8は、溶接位置と電子ビームのパルス照射回数およびビーム電流との関係を示すグラフである。図9は、溶け込み深さが10mmの位置(図7に示す位置b)において、ビーム電流を変化させた場合におけるパルス照射回数の変化を示す図である。
【0036】
ベース12に対してキャリア11を溶接する場合には、図7に示すような正三角形(最深部bの溶け込み深さが10mm)の溶け込み形状を形成することが要求される。完成品10は、高剛性が要求されるものであり、可能な限り広範囲で溶接する必要があるからである。そして、このような溶け込み形状を形成すべく、上記した方法により図7に示すように、位置aから位置cまでの区間を0.2mmピッチで区切り、電子ビームEBを高速偏向して左右交互に各区間ごとに所定回数ずつ照射する。このときの溶接条件は、図8に示すように、最深部bにおけるパルス照射回数KcはKc=40回であり、ビーム電流IはI=75mAである。なお、図8に示すグラフは、ビーム加速電圧60kV、パルス照射周波数1kHz、JUSTフォーカスの場合である。
【0037】
図8に示すパルス照射回数Knは、
Kn=Kc・(hn/hc)2
により設定される。ここで、Kc=40回、hc=10mmであるから、
Kn=0.4(hn)2
となる。すなわち、パルス照射回数Knが簡単な二次関数になる。
【0038】
なお、加工対象ワークの材料特性やワーク形状により部分的に溶け込み不足などが発生した場合には、そのような溶け込み不足などが発生した区間のパルス照射回数に補正値「±K′m」を入れる必要がある。
【0039】
このことからも明らかなように、図8に示すように、パルス照射回数Knのグラフは、
溶接位置(最深部)bを境界として左右に線対称な2次関数グラフとなる。一方、ビーム電流Iは、図8に示すように溶接を行っている間は常に一定である。これらのことから、本実施の形態に係る電子ビーム溶接方法によれば、図7に示す三角形状の溶け込みを形成して安定した溶接を行うことができるがわかる。また、電子ビームEBの照射が左右交互に行われるため、被溶接部材における蓄熱差がなくなり熱伝導による溶け込みのずれがなくなる。そして、実際に溶接したものを調べたところ、ビームの突き抜け不良や溶け込み不足などが発生することなく、また溶け込みピークがずれることなく、三角形状の溶け込み形状が形成されていたことが確認された。
【0040】
ここで、ビーム電流とパルス照射回数との関係について図9を参照しながら説明する。溶け込み深さhが一定であれば、ビーム電流Iはパルス照射回数Kの平方根に反比例することが知られている。つまり、ビーム電流Iとパルス照射回数Kとの関係は、
I・√K=C(定数)
となる。
【0041】
したがって、照射区間ピッチが0.2mm、パルス照射周波数が1kHz、材質が炭素鋼の場合、図7に示す溶接位置(最深部:溶け込み深さ10mm)bでは、ビーム電流IはI=75mA、パルス照射回数KはK=40回であるから、
75・√40=474.3
となる。このようにして算出された定数C(=474.3)は、前述の条件下では固有値であり、この固有値に基づいてビーム電流Iとパルス照射回数Kとの関係が図9に示すように求められる。
【0042】
図9から明らかなように、ビーム電流Iを小さくするとパルス照射回数Kが増加し、ビーム電流Iを大きくするとパルス照射回数Kは減少する。ここで、理論的には、ビーム電流Iを非常に小さくしてもパルス照射回数Kを増やせば所望の溶け込み深さを得ることができる。しかしながら、実際上は加工(溶接)時間も考慮する必要がある。つまり、加工(溶接)時間が長くなるのは、実用的ではない。このようなことから、加工(溶接)時間も考慮すると、周波数1kHzのときパルス照射回数Kが数十回程度となるようにビーム電流Iを設定することが好ましい。なお、ビーム電流Iの上限は、溶接装置のスペックで決まってしまう。例えば、6kW仕様の溶接装置を使用した場合で、電子ビームの加速電圧が60kVであるとすると、ビーム電流Iの最大値は100mAとなる。
【0043】
したがって、前述の条件下で固有値C=474.3を有する場合には、図9からわかるように、ビーム電流IとしてI=50〜100mAの範囲内で設定すればよい。より好ましくは、溶接装置のスペックから定まる最大ビーム電流値の半分程度にするのがよい。これにより、加工(溶接)時間を長くすることなく溶接装置への負担もかからないからである。
【0044】
次に、被溶接部材(材質)を変更した場合における、ビーム電流とパルス照射回数との関係について、図10〜図12を参照しながら説明する。図10は、6kW:60kV仕様の電子ビーム溶接装置において、炭素鋼と同一条件下で溶接した場合における各材質ごとの溶け込み深さを示す図である。図11は、炭素鋼と同一条件下で溶接した場合に、各材質ごとに必要とされるビーム電流を示す図である。図12は、各材質ごとにおけるビーム電流とパルス照射回数との関係を示す図である。
【0045】
まず、炭素鋼と同一条件下で溶接した場合、各材質では図10に示すような溶け込み深さが得られた。すなわち、炭素鋼(鉄)で10mmの溶け込み深さが得られる溶接条件下において、銅の場合には3.1mm、アルミニウムの場合には18.8mm、ステンレス鋼の場合には12.5mmの溶け込み深さがそれぞれ得られた。
【0046】
ここで、溶け込み深さとビーム電流Iは比例関係にあるので、各材質で10mmの溶け込み深さを得るためには、各材質ごとに図11に示すような大きさのビーム電流が必要となる。すなわち、銅の場合には242mA(定数C=1530.1)、アルミニウムの場合には40mA(定数C=252.3)、ステンレス鋼の場合には60mA(定数C=379.5)のビーム電流がそれぞれ必要になる。なお、電子ビームのパルス照射回数は、すべて40回である。
【0047】
そして、図11に示す各材質の固有値(定数C)に基づいて、
I・√K=C(定数)
となる関係式からビーム電流Iとパルス照射回数Kとの関係を求めると図12に示す通りになる。ここで、図11から明らかなように、どの材質でも、ビーム電流Iを小さくするとパルス照射回数Kが増加し、ビーム電流Iを大きくするとパルス照射回数Kは減少することがわかる。また、図9と図11とを比較すると、アルミニウムおよびステレス鋼であれば、炭素鋼(鉄)と同一の条件で溶接を行うことができることがわかる。これに対して、銅の場合には、ビーム電流が最大値100mAを超えてしまうため、溶接条件を変更しないと成り立たない。
【0048】
以上、詳細に説明したように本実施の形態に係る電子ビーム溶接方法によれば、ベース12に対してキャリア11を溶接するために、位置aから位置cまでの区間を0.2mmピッチで区切り、電子ビームEBを高速偏向して溶接区間の左右端から中央に向かって左右交互に各区間ごとに必要なパルス照射回数を照射することにより、各区間における溶け込み深さを制御する。このとき、ビーム電流は一定に制御されている。
【0049】
このため、各区間における溶け込み深さは、電子ビームEBのパルス照射回数に応じて変化するので、各区間における溶け込み深さを精度よく管理することができる。また、電子ビームEBの照射が左右交互に行われるため、キャリア11およびベース12における蓄熱差がなくなり熱伝導による溶け込みピークのずれがなくなる。その結果として、キャリア11の各支柱13a,13b,13cの底面を広範囲に正確に溶け込ませることができる。つまり、三角形状の溶接部EBWにおける溶け込みを、溶け込みピーク位置がずれることなく正確に形成することができる。その結果として、ビームの突き抜け不良や溶け込み不足などが発生することなく、安定した溶接を行うことができる。
【0050】
なお、上記した実施の形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。例えば、上記した実施の形態では、溶け込み形状が三角形の場合について例示したが、本発明によれば、三角形状以外の溶け込み形状、例えば、図13あるいは図14に示すようなものであっても正確に形成することができる。その結果、図13に示すような溶接部EBW1や、図14に示すような溶接部EBW2を有する被溶接部材でも安定した溶接を行うことができる。
【0051】
また、上記した実施の形態では、溶接部の左右端から中央に向かって左右交互に電子ビームを照射して溶接を行っているが、溶接部の中央から左右端に向かって左右交互に電子ビームを照射して溶接を行うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本実施の形態に係る電子ビーム溶接方法にて製造した完成部品を示す斜視図である。
【図2】キャリアの斜視図である。
【図3】キャリアの底面図である。
【図4】電子ビーム溶接装置の概略構成を示す構成図である。
【図5】本実施の形態に係る電子ビーム溶接方法の概要を説明するための説明図である。
【図6】照射順序を模式的に示す説明図である。
【図7】図1に示す完成部品を製造するための溶接方法および要求される溶け込み形状を説明するための説明図である。
【図8】出力6kW、加速電圧60kV、周波数1kHzの時における、溶接位置と電子ビームのパルス照射回数およびビーム電流との関係を示すグラフである。
【図9】出力6kW、加速電圧60kV、周波数1kHz、照射区間ピッチ0.2mmの時、溶け込み深さが10mmの位置(図7に示す位置b)において、ビーム電流を変化させた場合におけるパルス照射回数の変化を示す図であ
【図10】出力6kW、加速電圧60kV、周波数1kHz、照射区間ピッチ0.2mmの時、炭素鋼と同一条件下で溶接した場合における各材質ごとの溶け込み深さを示す図である。
【図11】出力6kW、加速電圧60kV、周波数1kHz、照射区間ピッチ0.2mmの時、炭素鋼と同一条件下で溶接した場合に、各材質ごとに必要とされるビーム電流を示す図である。
【図12】出力6kW、加速電圧60kV、周波数1kHz、照射区間ピッチ0.2mmの時、各材質ごとにおけるビーム電流とパルス照射回数との関係を示す図である。
【図13】溶け込み形状の変形例を示す図である。
【図14】溶け込み形状の別の変形例を示す図である。
【図15】従来の電子ビーム溶接におけるビーム電流の変化の様子を示す図である。
【図16】従来の電子ビーム溶接における被溶接部材の溶け込み形状を示す図である。
【図17】従来の電子ビーム溶接では不可能であった溶け込み形状の一例を示す図である。
【図18】従来の電子ビーム溶接により三角形の溶け込み形状を形成しようとしたときに実際に形成された溶け込み形状を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
10 完成品
11 キャリア
12 ベース
13a,13b,13c 支柱
20 電子ビーム溶接装置
21 電子銃
22 金属蒸気シール筒
23 偏向コイル
EB 電子ビーム
EBW 溶接部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ビームを被溶接部材の溶接部に照射して、その部分を溶融させて被溶接部材を溶接する電子ビーム溶接方法であって、
前記溶接部を複数の区間に区切り、
前記各区間に対する電子ビームの照射を、前記溶接部の左右端から中央に向けて左右交互に行い、
前記各区間ごとにおける電子ビームのパルス照射回数を変化させることにより、前記各区間における溶け込み深さを制御することを特徴とする電子ビーム溶接方法。
【請求項2】
請求項1に記載する電子ビーム溶接方法において、
前記各区間における電子ビームのパルス照射回数Knは、前記溶接部における最深部の溶け込み深さをhc、前記最深部における電子ビームのパルス照射回数をKc、前記各区間における狙いの溶け込み深さをhnとすると、
Kn=Kc・(hn/hc)2
となる関係式により設定されることを特徴とする電子ビーム溶接方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する電子ビーム溶接方法において、
ビーム電流を一定にして電子ビームのパルス照射回数を変化させることを特徴とする電子ビーム溶接方法。
【請求項1】
電子ビームを被溶接部材の溶接部に照射して、その部分を溶融させて被溶接部材を溶接する電子ビーム溶接方法であって、
前記溶接部を複数の区間に区切り、
前記各区間に対する電子ビームの照射を、前記溶接部の左右端から中央に向けて左右交互に行い、
前記各区間ごとにおける電子ビームのパルス照射回数を変化させることにより、前記各区間における溶け込み深さを制御することを特徴とする電子ビーム溶接方法。
【請求項2】
請求項1に記載する電子ビーム溶接方法において、
前記各区間における電子ビームのパルス照射回数Knは、前記溶接部における最深部の溶け込み深さをhc、前記最深部における電子ビームのパルス照射回数をKc、前記各区間における狙いの溶け込み深さをhnとすると、
Kn=Kc・(hn/hc)2
となる関係式により設定されることを特徴とする電子ビーム溶接方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載する電子ビーム溶接方法において、
ビーム電流を一定にして電子ビームのパルス照射回数を変化させることを特徴とする電子ビーム溶接方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2006−297473(P2006−297473A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−126955(P2005−126955)
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月25日(2005.4.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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