説明

電子ピストンストロークピペット

本発明は、手動ピストンストロークピペットに適する操作環境を有する電子ピストンストロークピペットの機能部分に関する。本発明によれば、ピストンストロークピペットは、ピペットコーン(12)を備え、ピペットコーン内には、可動ピストン(11)が設けられ、可動ピストンは、ピストンの上下運動のため、ピストンロッド(10)を介してギヤボックス(7)に剛固に接続され、ギヤボックスが、駆動モータ(5)により駆動されるピストンストロークピペットは、制御回路ボード(3)が、回転し押す操作部分(1)としての上側部分と、電子システムとの円筒接続としてのウェブとから構成され、制御回路ボード(3)及びディスプレイ(2)が、上側部分のディスプレイハウジング(2)に組み込まれ、駆動モータ(5)及び(再充電可能)バッテリが、ピペットハウジング(9)の底部部分に組み込まれていることを特徴とする。本発明の適用分野は、分析化学及び医薬診断である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手動ピストンストロークピペットに適する操作環境を有する電子ピストンストロークピペットの機能部分に関する。本発明の適用分野は、分析化学及び医薬診断である。
【背景技術】
【0002】
ピストンストロークピペットは、ストロークピストンを有する容量測定装置である。プラスチック又はガラスチップは、ピストンストロークピペットに配置されている。ピストンが、下側吸引位置にある場合、チップは、測定及び投与すべき液体に浸される。ピストンの戻りにより、液体は吸引される。容量を決定する限度間にピストンを押し下げし又は移動することにより、投与すべき液体の容量は、吐出される。エアークッション式ピストンストロークピペットでは、付加的なエアークッションが存在しうる。すなわち、付加的なエアークッションを、最後の流体容量を吐出するのに用いることができる。
【0003】
ピストンストロークピペットの種類
一般的には、手動(機械)ピストンストロークピペットと自動(電子)ピストンストロークピペットとに分類される。
【0004】
手動(機械)ピストンストロークピペットの容量設定
手動(機械)ピストンストロークピペットでは、容量設定(ピストン位置)は、主として、マイクロリットル又はミリリットルの範囲内でカウンタ又はマイクロメータねじを介して段階的に行われる。ディスプレイは、数値化され、機械的である。
【0005】
自動(電子)ピストンストロークピペットの容量設定
自動(電子)ピストンストロークピペットでは、容量設定(ピストン設定)は、電子的に制御され調整されたキー又は小型押しボタンを介して行われる。キー及び押しボタンは、主として、対応の制御パネルの上部上に、ある角度を成して、及び/又は、側面上に見られる。ディスプレイは、電子化されている。
【0006】
手動(機械)ピストンストロークピペットのピペッティング
大部分の手動(機械)ピペットでは、上述されたピストンの上下運動は、手動で実行されたストロークにより行われる。このため、ピペットの上部上に位置付けされた押しボタンは、親指圧力により下方へ誘導され、並びに/又は、親指圧力の低下及びばね力の開始により再び上方へ誘導されて戻される。正確な投与量は、親指圧力の均等な誘導を前提とする。幾つかの手動(機械)ピストンストロークピペットでは、ピペッティングは、側方の指圧力により行われる。
【0007】
自動(電子)ピストンストロークピペットのピペッティング
自動(電子)ピストンストロークピペットでは、上述されたピストンの上下運動は、電子的に制御され、ピストンストロークピペットに組み込まれた超小型電気モータ又はリニアアクチュエータにより実行される。ピペッティング過程、すなわち、ピペッティングする容量の獲得、及び、ピペッティングされた容量の吐出は、この場合も、主に制御パネル上に見られ、又は、ピペット上で分離されている対応のトリガーキー又はトリガースライドを介して開始される。必要な作業ステップは、主として、ディスプレイ上に示される。
【0008】
手動(機械)ピストンストロークピペットは、以下の長所及び短所を有する。
【0009】
特に、手動(機械)ピストンストロークピペットの産業医学上の欠点は、充分に既知である。例えば、標準のピストンストロークピペットを用いて、実際のピペッティングを親指圧力により実行するためには、約800〜1200グラムのトリガー重量が要求される。研究室における連続的なピペッティングでは、一日当たり約1000回のピペッティング過程がなされなければならないことがある。このことは、圧力をかける人の親指又は指に一日当たり約0.8〜1.2トンの重量の負担がかけられていることを意味する。
【0010】
更に、均等でない親指又は指圧力は、ピペッティングの正確度及び精度に対して恒常的なリスクである。
【0011】
手動(機械)ピストンストロークピペットの主な利点は、かなり好ましい購買価格(コスト)及び簡単な操作である。容量を設定し、ピペッティングするのに、一つの機能ボタン(親指ボタン)しか必要とされない。更に、手動(機械)ピストンストロークピペットの人間工学的な周知の設計は、明白であり、ユーザに完全に受け入れられている。
【0012】
自動(電子)ピストンストロークピペットは、以下の長所及び短所を有する。
【0013】
自動ピストンストロークピペットにおいてピペッティングするためのトリガー重量、すなわち、約50グラムは、かなり低く、産業医学上の観点からほとんど負担がない。ピストン誘導は、電子的に制御され、従って、かなり正確かつ精密である。電子ピストンストロークピペットの場合、本質的にピペッティング以上のことが可能である。分注、力価測定、複数分注、連続分注又はミキシングのような、研究室での他の用途を、ソフトウェアを用いて行うことができる。
【0014】
自動(電子)ピストンストロークピペットの重大な欠点は、構造上の欠陥並びに複雑な切替及び制御パネルにより部分的に起因する比較的高い購買価格であり、切替及び制御パネルの小型ボタン及びキーは、操作するのが難しく複雑である(手動ピストンストロークピペットの場合、一つの操作ボタンだけを用いる)。更に、手動ピストンストロークピペットの人間工学的かつ明白な設計は、この場合も、電子ピストンストロークピペットには見当らない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
新たな自動(電子)ピストンストロークピペットの構造及び開発では、手動(機械)ピストンストロークピペットの利点と自動(電子)ピストンストロークピペットの利点とを組み合わせ、自動(電子)ピストンストロークピペットの欠点を最小限に抑えるピストンストロークピペットを開発することが課題である。これに関連して最も重要な点は、極めて周知な手動ピストンストロークピペットに可能な限り近づき、かつ、操作者が精通している環境において、操作者が、人間工学的に好ましい作業を実行できるようにする自明の操作パネルを生成することである。そのため、手動ピストンストロークピペットの操作ボタンの機能を可能な限り正確に模倣することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
これに対して、全く驚くべきことには、ピペッティングの全く意外な適用分野において対応の修正を加えれば、携帯電話製品及び娯楽電子機器の操作要素を、非常に良好に用いることができることが分かった。この回転押しボタンは、手動ボタンの機能を完璧に実行する。更に、電子バージョンの付属品としてのピペットは、手動ピペットに非常に類似することになり、このことは、手動ピペットを用いてこれまで実行された作業ステップを維持する結果として、広く受け入れられることにつながり、かつ、エラーのない操作につながる。
【0017】
本発明によれば、電子ピストンストロークピペット用のこの制御装置(これ以降、操作ボタンと称する)は、操作ボタンの設計及び仕上げがピストンストロークピペットの全体の外観に一致し、一般的なピストンストロークピペットの認知性にも一致するように開発された。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る電子ピストンストロークピペットを概略的に示す全体図である。
【図2】操作ボタン及びディスプレイハウジングを示す図である。
【図3】操作ボタンを示す図である。
【図4】操作ボタン及び指グリップ領域を示す図である。
【図5】機能部分を示す図である。
【図6】機能部分を備えたグリップキャップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
電子ピストンストロークピペットは、図1に概略的に描写されている。
【0020】
本発明によれば、操作ボタン1は、熱可塑性プラスチック又は金属から成り、好ましくは、ポリプロピレン、ABS又はPOMから成る。操作ボタン全体は、1又は2の部分、すなわち、
1.回転し押圧する実際の操作部分としての上側部分と、
2.電子機器との円筒接続及び/又は係合としての下側部分と
を備える。
【0021】
操作ボタン1及びディスプレイハウジング4の概略的な描写は、図2から分かる。より詳細な描写は、図3〜図6から分かる。
【0022】
操作ボタンの上側部分の形状は、円形又は多角形であり、好ましくは、6〜9角を有する。容量を区別するために、異なる色の被覆スリーブを上側部分上で着脱することができ、及び/又は、詰め込むことができる。上側部分は、18〜22mm、好ましくは、19mm±0.5mmの直径を有する。上側部分は、7〜9mm、好ましくは、8mm±0.5mmの厚さを有する。
【0023】
図3の「操作ボタン」を参照されたい。
【0024】
操作ボタンの下側部分の形状は、8〜14mm、好ましくは、11mm±0.5mmの直径を有する円筒形である。上側部分の下側端から下側部分の下側端までの下側部分の長さは、10〜25mm、好ましくは、14mm±0.5mmである。
【0025】
図4の「操作ボタン及び機能部分の指グリップ領域」を参照されたい。
【0026】
特に、本発明によれば、機能部分は、以下のように設計されている。
【0027】
‐ 機能メニュー及びサブメニューを操作ボタンの回転運動により選択することができる。
【0028】
‐ これら機能メニュー内で、容量、ピペッティング速度、較正などのような設定を、操作ボタンの回転運動により選択することができる。
【0029】
‐ 当該選択を確認することができ、事前に選択された機能に従って、吸引及び吐出を、プログラムされた順に操作圧力の圧力運動によりトリガーすることができる。
【0030】
‐ ディスプレイ、電子機器、駆動モータ及び(再充電可能)バッテリは、機能部分に組み込まれている。
【0031】
‐ 完全な機能部分は、熱可塑性プラスチック又は金属から製造され、好ましくは、ポリプロピレン、POM又はABSから製造される。
【0032】
‐ 機能部分は、125〜150mm、好ましくは、130mmの全長を示す。
【0033】
図5の機能部分を参照されたい。
【0034】
‐ 機能部分の上部におけるハウジングディスプレイ及び電子機器ボードは、38〜48mm、好ましくは、42.5 mmの幅と、55〜70mm、好ましくは、58.3mmの長さとを示し、操作ボタンも、このハウジングに配置されていることを示す。
【0035】
‐ 機能部分は、ディスプレイ及び電子機器ボードが機能部分の拡張された指グリップ領域内に収容(詰め込み及び/又はねじ接続)されるように人間工学的に形状化されている。これに関連して、ディスプレイは、22〜30mm、好ましくは、24.2mmの幅と、10〜20mm、好ましくは、16.6mmの全高とを示す。
【0036】
‐ これに関連して、指グリップ領域の下側部分は、操作者の人差し指が、指凹部に快適にかつしっかりと嵌り、操作者の手の中で機能部分を最適な位置に至らせ、指グリップが、R10〜R15、好ましくは、R12の半径を備えるように形状化されている。
【0037】
図5の機能部分を参照されたい。
【0038】
‐ ピペットチップエジェクタボタンは、機能部分の指グリップ領域の上部裏側に位置付けられ、従って、操作者の親指を用いてピペットチップエジェクタボタンを最適に操作することができる。
【0039】
図5の機能部分を参照されたい。
【0040】
‐ 電子的に制御されたリニアアクチュエータは、詰め込み及び/又はねじ接続により、機能部分の下側円筒形又は四角若しくは九角の多角形部分、好ましくは、円形又は六角の多角形部分に嵌め込まれている。リニアアクチュエータは、ピペットの所要のピストンストロークを下向き又は上向きの方向に実行するのに用いられる。
【0041】
‐ 小型電気モータ(リニアアクチュエータ)のバッテリ又は再充電可能バッテリも、機能部分の下側円筒形又は多角形部分に嵌め込まれている。これに関連して、機能部分の下側円筒形又は多角形部分の前方部分は、軽度から中程度の湾曲が、取り外し可能なグリップキャップにより生じるように形状化されている。グリップキャップの下には、小型の円形又は正方形バッテリ、好ましくは、市場で入手し易い円形バッテリが、スペースを取らないように嵌め込まれている。このバッテリ及び/又は再充電可能バッテリ室は、53〜60mm、好ましくは、54.58mmの長さを示し、グリップキャップで被覆されている。
【0042】
図5の機能部分を参照されたい。
【0043】
‐ このグリップキャップは、90〜120mm、好ましくは、97mmの全長を示し、R100〜R110の外部曲率半径と、R85〜R90、好ましくは、R87.64の内部曲率半径とを示す。
【0044】
図6の機能部分のグリップキャップを参照されたい。
【0045】
‐ グリップキャップには、最適な取り扱いをするため、通気溝が設けられている。通気溝を横方向及び縦方向の両方に配設することができる。グリップキャップに組み込まれた通気溝は、R1.5〜R1.9、好ましくは、R1.75の半径を有する。
【0046】
図6の機能部分のグリップキャップを参照されたい。
【0047】
‐ バッテリの配置に沿ったグリップキャップの軽度から中程度の湾曲は、機能部分の下側円筒形又は多角形部分の人間工学的な設計にかない、これにより、操作者の手の内側は、機能部分を最適に取り囲むことができる。取り付け及びバッテリ交換などのため、グリップキャップを取り外すことができ、及び/又は、取り換えることができる。
【0048】
図6の機能部分のグリップキャップを参照されたい。
【0049】
‐ ピストン、ピペットチップ保持コーン、エジェクタスリーブ及びエジェクタ連係部を有する別個のピストンストロークシステムを、本発明に従って簡単かつ容易に機能部分に挿入又はねじ込むことができるように、機能部分の底部における連結又は嵌め込み領域の長さは、35〜40mm、好ましくは、37.4mmである。機能部分は、底部において、30〜40mm、好ましくは、32.8mmの直径を有する。
【0050】
図5の機能部分を参照されたい。
【符号の説明】
【0051】
1:押圧及び回転ボタン
2:ディスプレイ
3:制御ボード
4:ボード/ディスプレイハウジング
5:駆動モータ
6:再充電可能バッテリ
7:駆動軸/動力伝達装置
8:ピストン連結器
9:ピペットハウジング
10:ピストンロッド
11:ガスケット表面、ピストン
12:ピペットコーン
13:ピペットチップ
14:スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピペットコーン(12)を備える電子ピストンストロークピペットであって、可動ピストン(11)は、上向き及び下向き運動のため、ピストンロッド(10)を介して動力伝達装置(7)と剛固に接続され、これに関連して、前記動力伝達装置は、駆動モータ(5)により駆動される電子ピストンストロークピペットにおいて、前記制御ボード(3)は、回転し押圧する操作部分(1)として上側部分を備え、前記電子機器との円筒接続として棒状体を備え、前記制御ボード(3)及びディスプレイ(2)は、前記上側部分の前記ディスプレイハウジング(2)に組み込まれ、駆動モータ(5)及びバッテリ(再充電可能バッテリ)は、前記ピペットハウジング(9)の前記下側部分に組み込まれている電子ピストンストロークピペット。
【請求項2】
請求項1に記載の電子ピストンストロークピペットにおいて、前記制御ボード(3)は、プラスチック、好ましくは、ポリプロピレン、ABS若しくはPOM、又は、金属を備える電子ピストンストロークピペット。
【請求項3】
請求項1に記載の電子ピストンストロークピペットにおいて、前記制御ボード(3)の前記上側部分の形状は、円形又は多角形であり、好ましくは、六〜九角を有する電子ピストンストロークピペット。
【請求項4】
請求項1に記載の電子ピストンストロークピペットにおいて、前記制御ボード(3)の前記上側部分は、18〜22mm、好ましくは、19mmの直径を有し、7〜9mm、好ましくは、8mmの厚さを有する電子ピストンストロークピペット。
【請求項5】
請求項1に記載の電子ピストンストロークピペットにおいて、前記制御ボード(3)の前記下側部分の形状は、円筒形であり、前記制御ボード(3)の前記下側部分は、10〜25mm、好ましくは、11mmの直径を示す電子ピストンストロークピペット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−503182(P2012−503182A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−527206(P2011−527206)
【出願日】平成21年9月22日(2009.9.22)
【国際出願番号】PCT/DE2009/001310
【国際公開番号】WO2010/034290
【国際公開日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(511072954)アーハーエン バイオテクノロジー ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】