説明

電子レベル用標尺

【課題】電子レベル用標尺の携帯性を向上させ、又運搬、取扱の利便性を向上させる。
【解決手段】電子レベル用標尺1であって、通常測定用のバーコード13を縮尺し、白黒を反転した近距離用バーコード14が基体に刻印され、前記基体はコンベックスの帯状の薄板鋼板である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子レベルに用いられる電子レベル用標尺に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電子レベル用標尺(スタッフ)としては、断面が矩形の棒状の長尺部材の表面に、長手方向に沿って、所定のピッチ、所定のパターンでバーコードが形成された電子レベル用標尺が知られている。
【0003】
前記バーコードは、水平方向に延びるバー(黒塗り部)が長手方向に所定のピッチで刻印され、又バーの幅(上下方向の寸法)が所定の関係で変化したものであり、幅の変化を検出することで、周波数に変換でき、更に周波数の位相を検出することで高さを測定することができる様になっている。
【0004】
或は、他のバーコードとしては複数種類、例えば7種類の幅の異なるバーが等ピッチでランダムなパターン(重複したパターンがない様に)で刻印され、パターンを確認することで高さが測定できる様になっている。
【0005】
上記した電子レベル用標尺は、いずれも遠距離からの高さ測定が可能な様に、パターンの大きさ、電子レベル用標尺の長さ等が設定されている。この為、電子レベル用標尺の長さは、3m〜5mと長尺となっており、大きさ、重さ等、運搬、取扱の点で面倒なものとなっている。
【0006】
又、伸縮可能となっているものもあるが、大きさ、重さ等の点で大きく利便性が向上しているとは言えないものであった。
【0007】
更に、電子レベルの視野角は大きくないので、近距離での測定では、バーコードのパターンが一部しか視認できない状態となり、測定の作業性が低下していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−4959号公報
【特許文献2】特開平11−183164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は斯かる実情に鑑み、電子レベル用標尺の携帯性を向上させ、又運搬、取扱の利便性を向上させるものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、電子レベル用標尺であって、通常測定用のバーコードを縮尺し、白黒を反転した近距離用バーコードが基体に刻印された電子レベル用標尺に係るものである。
【0011】
又本発明は、前記基体はコンベックスの帯状の薄板鋼板である電子レベル用標尺に係るものである。
【0012】
又本発明は、前記基体は、帯状の板材である電子レベル用標尺に係るものである。
【0013】
又本発明は、前記基体の一面に長さ測定用の目盛が刻印され、他面に前記近距離用バーコードが刻印された電子レベル用標尺に係るものであり、又前記基体の一面に通常測定用のバーコードが刻印され、他面に前記近距離用バーコードが刻印された電子レベル用標尺に係るものである。
【0014】
又本発明は、コンベックスの薄板鋼板収納容器に円形気泡管が設けられた電子レベル用標尺に係るものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電子レベル用標尺であって、通常測定用のバーコードを縮尺し、白黒を反転した近距離用バーコードが基体に刻印されたので、近距離測定が円滑に行えると共に電子レベル用標尺の小型化が可能となり、電子レベル用標尺の運搬、取扱いの利便性が向上する。
【0016】
又本発明によれば、前記基体はコンベックスの帯状の薄板鋼板であるので、不使用時には基体をコンパクトに収納でき、小型化、軽量化が図れ、運搬、取扱いの利便性が更に向上する。
【0017】
又本発明によれば、前記基体の一面に長さ測定用の目盛が刻印され、他面に前記近距離用バーコードが刻印されたので、簡便な長さ測定と共に高さ測定も可能となる。
【0018】
又本発明によれば、前記基体の一面に通常測定用のバーコードが刻印され、他面に前記近距離用バーコードが刻印されたので、小型化、軽量化が図れ、運搬、取扱いの利便性を損うことなく、近距離、遠距離での測定を可能とする。
【0019】
又本発明によれば、コンベックスの薄板鋼板収納容器に円形気泡管が設けられたので、電子レベル用標尺として使用する場合に、鉛直状態を維持でき測定精度が向上する等の優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】電子レベル用標尺、電子レベルによる測定を示す概略説明図である。
【図2】電子レベルの概略構成図である。
【図3】電子レベル用標尺に刻印されたバーコードと電子レベルの視野との関係を示す説明図である。
【図4】(A)は電子レベル用標尺に刻印される通常バーコード、(B)は電子レベル用標尺に刻印される近距離用バーコードを示す図である。
【図5】本発明をコンベックスに実施した場合の図であり、(A)はスケールの一部を引出した状態の正面図、(B)は引出したスケールの平面図、(C)は引出したスケールの底面図、(D)はスケールの断面を示し、図5(B)のA−A矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0022】
先ず、図1は、本発明に係る電子レベル用標尺が実施される測定の概略を示している。
【0023】
電子レベル用標尺(以下標尺)1が測定点に立設され、電子レベル2により標尺1を視準し、該標尺1に印刷或は刻設(以下、刻印)されたバーコード3を読取り、視準位置の高さhを測定している。
【0024】
前記電子レベル2は、図2に示される様に、視準光学系4、ラインセンサ5、制御演算部6を有しており、更に前記視準光学系4は合焦レンズ7aを含む対物レンズ部7、光軸の自動補償機構であるコンペンセータ8、ビームスプリッタ9、接眼レンズ部10を有している。前記ビームスプリッタ9は、前記視準光学系4に入射する標尺1からの反射光を分割し前記ラインセンサ5に受光させる。
【0025】
前記制御演算部6は、前記ラインセンサ5からの信号を取込むと共に信号の取込みを制御しており、取込んだ信号を処理して、前記バーコード3のパターンを読取り、視準位置の高さを演算し、更に、パターンの像の大きさから前記標尺1迄の距離を演算する様になっている。
【0026】
前記標尺1は、真直な基体にバーコード3が刻印されたものであり、基体に刻印されるバーコード3のパターンはいくつかの種類が用いられている。
【0027】
例えば、特許文献1に示されるものがあり、特許文献1に示されるバーコードのパターンは、同一ピッチで形成されたバーコードのパターンが2種類刻印され、それぞれのパターンはバーの太さが第1周期と異なる第2周期で変更されている。
【0028】
前記制御演算部6は、前記ラインセンサ5からの信号を処理することで、それぞれのパターンから第1周期と第2周期とを検出し、第1周期と第2周期との位相差から視準位置の高さを算出する。又、ラインセンサ5からラインセンサ5上の像の大きさ(例えばバーの間隔)と、バーの間隔の実寸法及び電子レベル2の焦点距離から電子レベル用標尺迄の距離を演算する様になっている。
【0029】
又特許文献2に示されるバーコードのパターンは、太さの異なる複数種のバーを1組として所要組が刻印され、全ての組でバーの配列が異なる様にし、前記制御演算部6はバーコードを読込むと共にバーの配列を読取り、読取ったバー及び配列がどの組に属するかを確認し、配列の組を特定し、バーの配列の中での位置を特定することで視準位置の高さを算出する様になっている。
【0030】
いずれの場合も、標尺1は所定の距離が測定できる様な長さと、遠方でもバーコード、パターンが検出できる様な、バーの大きさ、太さ、間隔となっている。従って、上記した様に標尺1は、3m〜5mの長さを有し、大きく、重いものとなっている。又、折畳み、或は伸縮が可能となっているものもあるが、利便性を著しく向上させる迄には至っていない。
【0031】
又、遠距離を測定できる標尺1を近距離の測定に用いた場合、前記視準光学系4の画角は大きくないので、視野4aの中に入るバー3aの数が限られ、1周期分、或は1組分のバーのパターンが入りきらない場合が生じる。
【0032】
例えば、図3の様に、パターンを構成する一部のバー3aしか、像として取得できない場合は、測定が円滑に行えない場合、或は測定が困難となる場合がある。
【0033】
そこで、本実施例では近距離用のバーコードを作成し、標尺1に刻印する。図4(A)は通常バーコード13を示し、図4(B)は近距離用バーコード14を示している。尚、近距離用バーコード14は別途用意した標尺1′に刻印してもよいし、或は通常バーコード13が刻印されている標尺1の他の面に刻印してもよい。
【0034】
前記近距離用バーコード14は、前記通常バーコード13を縮小し、更に白黒を反転表示させたものであり、縮尺率としては、例えば50%である。従って、該通常バーコード13が5mであるとすると、前記近距離用バーコード14は2.5mに縮小される。
【0035】
白黒を反転することで、画像上から確実に近距離用バーコード14であることが判別でき、更に通常バーコード13と同一のパターンであるので、パターンから測定する為の演算プログラムは通常バーコード用のものと同一のものでよく、得られた結果を単に縮尺率で補正(換算)すればよい。従って、既存の電子レベルにも適用が可能である。
【0036】
尚、用いられるバーコードのパターンは、特許文献1、特許文献2に示されるもの或はその他任意のものを用いることができる。又、縮尺についても、50%に限らず適宜設定できることは言う迄もない。
【0037】
而して、近距離測定を行う場合、例えば住宅建設時の基礎工事等では、長さは2m程度の標尺1を用いればよく、運搬、取扱い性が著しく向上する。
【0038】
次に、図5により、運搬、取扱い性等、利便性を更に向上させた標尺1について説明する。
【0039】
図5は、コンベックス(巻尺)に本発明を実施した場合を示している。
【0040】
コンベックス15は、長さ測定用のスケール16であり帯状の薄板鋼板をケース17内に巻取り収納したものである。前記スケール16自体は屈曲可能であるが、該スケール16を引出した状態では、該スケール16の横断面が湾曲した状態となり、引出した部分の真直状態が維持できる様になっている。又、前記スケール16は引出し状態でロックすることができ、更にロックを解除すると、スケール16自体の復元作用で前記ケース17内に巻取られる様になっている。
【0041】
コンベックス15の場合、帯状の薄板鋼板がスケール16の基体であり、基体の一面、例えば凹曲面には距離測定用の目盛18が刻印されており、他面、例えば凸曲面には前記近距離用バーコード14が刻印される。
【0042】
前記コンベックス15では、前記目盛18によって通常の長さ測定ができると共に、前記スケール16を引出し、前記近距離用バーコード14を電子レベル2側に向け、直立状態に維持することで、近距離用の標尺1としての使用が可能となる。
【0043】
近距離用バーコード14が用いられる、基礎工事等の高さ測定では、高精度は要求されてなく、作業者が直立と認識できる状態に保持できればよい。更に基礎工事等の高さ測定では、相対精度が要求されるものであり、前記近距離用バーコード14の刻印の絶対精度は然程要求されない。従って、通常のコンベックス15が持つ精度で充分である。
【0044】
尚、直立状態を認識できる様に、前記ケース17に円形気泡管等の傾斜検出器を設けてもよい。
【0045】
更に、前記スケール16の基体を通常のコンベックス15に用いられているものより、幅広のもの、例えば30mm〜40mmとし、一面に前記通常バーコード13を刻印し、他面に近距離用バーコード14を刻印し、標尺専用のコンベックスとしてもよい。
【0046】
本実施例によれば、前記スケール16を巻取った状態では、前記ケース17単体の大きさとなり、前記スケール16がコンパクトに収納され、持運び、取扱いが極めて容易となる。更に、標尺1自体は薄板鋼板であり、軽量化が可能である。
【0047】
尚、上記実施例では、コンベックス15のスケール16の一面に近距離用バーコード14を刻印したが、帯状の板材の一面、例えばステンレス製の定規の一面に近距離用バーコード14を刻印してもよい。或は、折畳み可能とした定規の一面に近距離用バーコード14を刻印してもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 標尺
2 電子レベル
4 視準光学系
5 ラインセンサ
6 制御演算部
7 対物レンズ部
8 コンペンセータ
9 ビームスプリッタ
10 接眼レンズ部
13 通常バーコード
14 近距離用バーコード
15 コンベックス
16 スケール
17 ケース
18 目盛

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子レベル用標尺であって、通常測定用のバーコードを縮尺し、白黒を反転した近距離用バーコードが基体に刻印されたことを特徴とする電子レベル用標尺。
【請求項2】
前記基体はコンベックスの帯状の薄板鋼板である請求項1の電子レベル用標尺。
【請求項3】
前記基体は、帯状の板材である請求項1の電子レベル用標尺。
【請求項4】
前記基体の一面に長さ測定用の目盛が刻印され、他面に前記近距離用バーコードが刻印された請求項2又は請求項3の電子レベル用標尺。
【請求項5】
前記基体の一面に通常測定用のバーコードが刻印され、他面に前記近距離用バーコードが刻印された請求項2又は請求項3の電子レベル用標尺。
【請求項6】
コンベックスの薄板鋼板収納容器に円形気泡管が設けられた請求項2の電子レベル用標尺。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−15405(P2013−15405A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148281(P2011−148281)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000220343)株式会社トプコン (904)