説明

電子レベル装置及びこの電子レベル装置に用いる標尺

【課題】複数個の標尺を同時に認識して各標尺の視準高さを自動的に求めることが可能な電子レベルを提供する。
【解決手段】本発明の電子レベル3は、コードパターンが割り当てられた標尺の像を含む画像が形成される二次元撮像素子12を有する広角レンズ系6、画像から標尺の像を抽出する抽出部14、抽出部14により抽出された標尺の像における広角レンズ系6の視準光軸Oに相当する部位のコードパターンによりこのコードパターン部位が意味する高さ測定値RH’を求める高さ測定値演算部15、高さ測定値RH’により視準高さRHを演算する演算部16を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個の標尺を同時に認識して、各標尺の視準高さを自動的に求めることのできる電子レベル(水準儀)及びこの電子レベルに用いる標尺に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子レベルには、各標尺を視準して、各標尺に形成されているコードパターンを電子的に解読して、視準高さを自動的に求めるものが知られている(例えば、特許文献1参照、特許文献2参照。)。
【0003】
この種の電子レベルによれば、読み取り誤差が少なく、測量時間の短縮化を図ることができるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−229737号公報
【特許文献2】特許第3795190号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の電子レベルでは、標尺を逐一視準してコードパターンを読み取り、視準高さを求めなければならず、同時に複数個の標尺を認識して視準高さを求めることができないという不都合がある。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みて為されたもので、複数個の標尺を同時に認識して各標尺の視準高さを自動的に求めることが可能な電子レベルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電子レベルは、コードパターンが割り当てられた標尺の像を含む画像が形成される二次元撮像素子を有する広角レンズ系と、前記画像から前記標尺の像を抽出する抽出部と、該抽出部により抽出された標尺の像における前記広角レンズ系の視準光軸に相当する部位のコードパターンにより該コードパターン部位が意味する高さ測定値を求める高さ測定値演算部と、前記高さ測定値により視準高さを演算する演算部とを備えていることを特徴とする。
【0008】
また、高さを測定可能でかつ異なる高さを意味する識別可能なコードパターンが割り当てられた複数個の標尺の像を含む画像が形成される二次元撮像素子を有する広角レンズ系と、前記画像から前記複数個の標尺の像をそれぞれ抽出する抽出部と、該抽出部により抽出された複数個の標尺の像における前記広角レンズ系の視準光軸に相当する部位のコードパターンにより該コードパターン部位が意味する高さ測定値をそれぞれ求める高さ測定値演算部と、該高さ測定値演算部により得られた高さ測定値から前記各標尺の実際の視準高さを得るためのオフセット値を求めかつ前記高さ測定値演算部により得られた高さ測定値から前記オフセット値を減算して実際の視準高さを標尺毎に求める視準高さ演算部とを備えているのが望ましい。
【0009】
各標尺には、1個の標尺の実際の高さに対応するコードパターンを複数個に分割して実際の高さとは異なる高さ意味するコードパターンを割り当てるのがより望ましい。
二次元撮像素子は、前記広角レンズ系の視準光軸に対して縦方向に傾斜されていることが望ましい。
【0010】
また、視準光軸の上側に設けられた上側スタジア線に相当するコードパターン部位により求められた上側高さ測定値と視準光軸の下側に設けられた下側スタジア線に相当するコードパターン部位により求められた下側高さ測定値との差により上下スタジア線間の標尺長を求め、求められた標尺長にスタジア乗数をかけ算することにより各標尺までの距離を求める距離演算部を有することがより望ましい。
【0011】
標尺毎に求められた実際の視準高さのデータをそれぞれ記憶すると共に前記標尺毎に求められた距離を記憶する記憶部と、この記憶部に記憶されている視準高さのデータと距離のデータとを前記各標尺に設けられた受信装置に向けて送信する送信部とを有することが更に望ましい。
【0012】
本発明に係る電子レベルに用いられる標尺は、1個の標尺の高さを意味するコードパターンが拡大されかつ複数個に分割されて実際の視準高さとは異なる高さを意味するコードパターンが割り当てられた標尺である。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る電子レベル及び標尺によれば、複数個の標尺を同時に認識して各標尺の視準高さを自動的に求めることができる。
【0014】
また、1個の標尺の実際の高さに対応するコードパターンを複数個に分割して実際の高さとは異なる高さを意味するコードパターンが割り当てられた複数個の標尺の像を含む画像が形成される二次元撮像素子を有する広角レンズ系と、前記画像から前記複数個の標尺の像をそれぞれ抽出する抽出部と、該抽出部により抽出された複数個の標尺の像毎に前記広角レンズ系の視準光軸に相当する部位のコードパターンにより該コードパターン部位が意味する高さ測定値をそれぞれ求める高さ測定値演算部と、該高さ測定値演算部により得られた高さ測定値から前記各標尺の実際の視準高さを得るためのオフセット値を求めかつ前記高さ測定値演算部により得られた高さ測定値から前記オフセット値を減算して実際の視準高さを標尺毎に求める視準高さ演算部とを備えることにすれば、1個の標尺の実際の高さに対応するコードパターンを拡大して複数個に分割して各標尺に割り当て、各標尺に割り当てたコードパターンにより得られた高さ測定値とオフセット値とにより、標尺毎に実際の視準高さを求めることができることになるので、近距離から遠距離までの範囲内に存在する標尺について、解像度を損なうことなく標尺毎の視準高さを同時に自動的に測定可能であるという効果を奏する。
【0015】
また、1個の標尺の実際の高さに対応するコードパターンを複数個に分割して実際の視準高さとは異なる高さを意味するコードパターンを複数個の標尺に割り当てたので、各標尺に割り当てたコードパターンを読み取ることにより得られた高さ測定値により、自動的に各標尺を識別でき、各標尺を識別するための識別マーク等を設ける必要がないので、標尺の製作も容易であるという効果を奏する。
【0016】
更に、既存の標尺のコードパターンを用いることができるので、視準高さを求めるための演算処理に用いるプログラムを大幅に変更することなく、標尺の同時測定が可能である。
【0017】
視準光軸に対して二次元撮像素子を縦に傾けて配設すれば、近距離の画像のぼけ量を低減することができるので、近距離側に存在する標尺のコードパターンの読み取り精度の劣化を防止できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は本発明に係る電子レベルに用いる標尺の一例を示す説明図であって、(A)は既存の標尺に形成されているコードパターンの説明図、(B)は既存の標尺に形成されているコードパターンを5倍に拡大した状態の説明図、(C)は(B)に示すコードパターンを複数個のコードパターンに分割して割り当てた複数個の標尺を示す説明図である。
【図2】図2は電子レベルの概略構成を示す斜視図である。
【図3】図3は電子レベル本体の内部構成を示すブロック図である。
【図4】図4は測量作業の一例を説明するための説明図であって、(A)はその平面図、(B)は側面図、(C)はフレームメモリに記憶されている画像を可視化して示す模式図である。
【図5】図5はフレームメモリに記憶されている画像から標尺の像を抽出する一例を示す説明図であって、(A)は標尺Aのコードパターンに対応するコードパターン信号の一例を示し、(B)は標尺A、B、Hが存在しない場合の信号の一例を示し、(C)は標尺Bのコードパターンに対応するコードパターン信号の一例を示し、(D)は標尺Hのコードパターンに対応するコードパターン信号の一例を示している。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0019】
(本発明に係る電子レベルに用いる標尺)
図1は本発明に係る電子レベルに用いる標尺の一例を示す説明図であって、(A)は既存の標尺に形成されているコードパターンの説明図、(B)は既存の標尺に形成されているコードパターンを5倍に拡大した状態の説明図、(C)は(B)に示すコードパターンを複数個のコードパターンに分割して割り当てた複数個の標尺を示す説明図である。
【0020】
その図1(A)において、1は既存の標尺である。この既存の標尺1には高さ方向にコードパターンCPが形成されている。このコードパターンCPは標尺1の実際の高さに対応し、例えば、このコードパターンCPは白部CPWの高さ方向幅と黒部CPBの高さ方向幅と白部CPW及び黒部CPBのピッチ間隔PCHにより標尺1の高さが決定可能とされている。
標尺1の長さを例えば5mとすると、このコードパターンCPの各部位は0m〜5mの範囲内の各高さに対応している。
【0021】
この既存の標尺1を5倍に拡大して形成することにより図1(B)に示す標尺2が得られる。この標尺2の全長は25mであり、この標尺2に形成されているコードパターンCP’は、図1(A)に示すコードパターンCPが5倍に拡大して形成されている。
【0022】
コードパターンCP’の白部CPWの高さ方向幅及び黒部CPBの高さ方向幅、白部CPW及び黒部CPBのピッチPCHも図1(A)に示すコードパターンCPの白部CPWの高さ方向幅及び黒部CPBの高さ方向幅、ピッチPCHに対して5倍に拡大される。
【0023】
コードパターンCP’のコードパターン部位は、全長25mの標尺2の実際の高さに対応している。この標尺2を分割して得られた標尺が図1(C)に示されている。その図1(C)には、図1(B)に示す標尺が3m毎に分割されている。
【0024】
図1(B)に示す標尺2を3m毎に分割することにより、符号Aないし符号Hで示す全長3mの8本の標尺が作成される。
各標尺A〜Hに形成されたコードパターンCP”は、それぞれ図1(B)に示すコードパターンCP’の高さを意味し、各標尺A〜Hの実際の視準高さRHとは異なる高さを意味するコードパターンCP”が割り当てられている。
【0025】
(オフセット値の説明)
各標尺A〜Hに割り当てられているコードパターンCP”は、図1(B)に示すコードパターンCP’の高さを意味しているので、各標尺A〜Hについての実際の視準高さRHを意味しておらず、この意味で各標尺A〜Hに割り当てられているコードパターンCP”により求められる高さ測定値RH’は、各標尺A〜Hの実際の視準高さRHに対してオフセットしている。
【0026】
従って、標尺A〜H毎に得られたコードパターンCP”の高さ測定値RH’から実際の視準高さRHを求めるためには、標尺A〜H毎にオフセット値Ofを減算しなければならない。
【0027】
例えば、標尺Aのオフセット値Ofは「0」、標尺Bのオフセット値Ofは「3」、標尺Cのオフセット値Ofは「6」、標尺Dのオフセット値Ofは「9」、標尺Eのオフセット値Ofは「12」、標尺Fのオフセット値Ofは「15」、標尺Gのオフセット値Ofは「18」、標尺Hのオフセット値Ofは「21」である。これらのオフセット値Ofは、標尺A〜H毎に得られたコードパターンCP”の高さ測定値RH’を用いて判断できる。
【0028】
このようにして、各標尺A〜Hに1個の標尺2の実際の高さに対応するコードパターンCP’を複数個に分割して、実際の高さとは異なる高さを意味するコードパターンCP”を各標尺A〜Hに割り当てることにより、各標尺A〜Hを識別すると共に、その標尺A〜Hの実際の高さとは異なる高さを意味するコードパターンCP”の部位により得られた高さ測定値からオフセット値Ofを減算することにより、各標尺A〜Hの実際の視準高さRHを求めることが可能となる。
【0029】
(電子レベルの説明)
図2は電子レベルの概略構成を示す斜視図である。この図2において、3は電子レベルであり、この電子レベル3は整準装置4と電子レベル本体5とから概略構成されている。
電子レベル本体5には、図3に示すように、広角レンズ系6と、画像処理部7と表示部8と、記憶部9と、送信部10と、チルトセンサ15’とが設けられている。なお、表示部8は撮像された画像を表示するものであるが、この表示部8はあってもなくとも良い。
【0030】
広角レンズ系6は、対物レンズ部11とCCD、CMOS等の二次元撮像素子12とから概略構成されている。二次元撮像素子12は、広角レンズ系6の焦点近傍に設けられている。その二次元撮像素子12は、視準光軸Oに対して縦方向に傾斜されている。この二次元撮像素子12には、被写体画像が縮小結像され、広角レンズ系6の焦点深度は、略無限大である。
【0031】
画像処理部7は、フレームメモリFMと、CPU13と、抽出部14と、高さ測定値演算部15と、視準高さ演算部16と、距離演算部17とを備えている。
【0032】
CPU13は、表示部8、記憶部9、送信部10、二次元撮像素子12、フレームメモリFM、抽出部14、高さ測定値演算部15、視準高さ演算部16、距離演算部17を制御する機能を有する。
【0033】
また、CPU13は、チルトセンサ15’のチルト信号により画像内の基準位置LH(図4(C)参照)を設定する機能を有する。
すなわち、整準装置4により電子レベル本体5を水平に整準すると、視準光軸Oが水平に保たれ、視準光軸Oが画像中心O’の基準位置に設定される。
【0034】
撮像スイッチSW1をオンすると、二次元撮像素子12に蓄積されている画素データが逐次読み出されて、フレームメモリFMに向けて出力され、フレームメモリFMに画像が記憶される。
【0035】
ついで、CPU13はフレームメモリFMに記憶されている画素データを読み出して抽出部14に向けて出力する。
抽出部14は、フレームメモリFMに記憶されている画像の中から複数個の標尺の像をそれぞれ抽出する機能を有する。
【0036】
高さ測定値演算部15は、抽出部14により抽出された複数個の標尺の像毎に広角レンズ系6の視準光軸Oに相当する部位(基準位置LH(図4(C)参照)に相当する部位)のコードパターンCP”によりこのコードパターンCP”の部位が意味する高さ測定値RH’をそれぞれ求める機能を有する。
【0037】
視準高さ演算部16は、高さ測定値演算部15により得られた高さ測定値RH’から各標尺A〜Hの実際の視準高さRHを得るためのオフセット値Ofを求めかつ高さ測定値演算部15により得られた高さ測定値RH’からオフセット値Ofを減算して実際の視準高さRHを標尺毎に求める機能を有する。
【0038】
距離演算部17は、視準光軸Oの上側に設けられた上側スタジア線に相当するコードパターン部位により求められた上側高さ測定値と視準光軸Oの下側に設けられた下側スタジア線に相当するコードパターン部位により求められた下側高さ測定値との差により上下スタジア線間の標尺長lを求め、求められた標尺長lにスタジア乗数αをかけ算することにより電子レベル本体5の機械中心から標尺A〜Hまでの距離LA〜LHをそれぞれ求める機能を有している。
距離(LA〜LH)=スタジア乗数(α)×標尺長(l)
【0039】
記憶部9は、標尺A〜H毎に求められた実際の視準高さRHのデータをそれぞれ記憶すると共に標尺A〜H毎に求められた距離(LA〜LH)のデータを記憶する機能を有する。
送信部10は、送信スイッチSW2がオンされると、CPU13の制御に基づいて記憶部9に記憶されている視準高さRHのデータと距離(LA〜LH)のデータとを各標尺A〜Hに設けられている各受信装置18に向けて送信する機能を有する。
【0040】
各受信装置18は、図2に示すように、視準高さRHと距離(LA〜LH)とを表示する表示部19を有する。送信部10は、各受信装置18に向けて視準高さRHのデータと距離(LA〜LH)のデータとを公知の無線手段により送信し、各受信装置18はその標尺A〜Hに対応する視準高さRHとその標尺に対応する距離LA〜LHとを標尺毎に表示する。
【0041】
(測量作業の一例)
図4は測量作業の一例を説明するための説明図であって、図4(A)は平面図、図4(B)は側面図、図4(C)はフレームメモリFMに撮像された画像を可視化して示した模式図である。
【0042】
ここでは、図4(A)に示すように、3本の標尺A、B、Hの視準高さRHを求める場合について説明することにし、標尺Aは電子レベル3から近距離の測点に立てられ、標尺Bは電子レベル3から遠距離の測点に立てられ、標尺Hは電子レベル3から中距離の測点に立てられているものとする。
【0043】
また、図4(B)に示すように、遠距離の測点に立てられている標尺Bの地面の高さは、近距離の測点に立てられている標尺Aの地面の高さよりも低く、中距離の測点に立てられている標尺Hの地面の高さは、近距離の測点に立てられている標尺Aの地面高さよりも高いものとする。
【0044】
図4(A)、図4(B)に示す位置関係にある各標尺A、B、Hを同時に撮像すると、図4(C)に模式的に示す画像が得られる。
その図4(C)において、符号A’は標尺Aに対応する像であり、符号B’は標尺Bに対応する像であり、符号H’は標尺Hに対応する像である。
【0045】
図4(C)に示すように、標尺Aは近距離に存在しているので、像A’は画像中で大きく映っており、標尺Bは遠距離に存在しているので、像B’は画像中で小さく映っており、標尺Hは近距離と遠距離との間の中間位置にあるので、像H’は画像中で像A’の大きさと像B’の大きさとの中間の大きさで映っている。
像A’、像B’、像H’はコードパターンCP”からなる像であるので、白黒模様のパターン像である。
【0046】
図4(C)に示す画像中には、標尺A、B、H以外の物体の像も映っているが、ここでは、説明の便宜のため、捨象されている。
抽出部14は、各画素(Gij)の列j毎に画素データGiをi=1番目からi=m番目まで読み出し、画素データGiが白レベルと黒レベルとを繰り返すコードパターン信号CPSを含むか否かを判断する。
【0047】
列jがコードパターンCP”に対応する像を含む場合、例えば、図5(A)に示すコードパターン信号CPSが得られ、列jがコードパターンCP”に対応する像を含まない場合、図5(B)に示すようにコードパターン信号CPSは得られない。
抽出部14は、この処理を各画素(Gij)の列jについて、j=1番目からj=n番目まで繰り返す。
【0048】
図5(A)は、例えば、j=2についてのコードパターン信号CPSを示している。標尺Aは電子レベル3に対して近距離に位置して、その像A’の横幅が広いため、各画素(Gij)の列jについて、j=3、j=4等の数列に渡って繰り返して同様のコードパターン信号CPSが得られる。
【0049】
これに対して、例えば、標尺Bは電子レベル3に対して遠距離に位置して、その像B’は横幅が狭いため、各画素(Gij)の列jについて、同様のコードパターン信号CPSが繰り返し得られる回数は少ない。
【0050】
また、像B’に対応するコードパターン信号CPSは遠距離にあるので、図5(C)に示すように、白レベルと黒レベルとの間の間隔は密である。なお、図5(D)は像H’のコードパターンCP”に対応するコードパターン信号CPSを示している。
【0051】
この各画素(Gij)の列j毎に画素データGiをi=1番目からi=m番目まで読み出す処理を、j=1からj=nについて繰り返し行うことにより、像A’、像B’、像H’が抽出される。
【0052】
抽出部14は、像A’、像B’、像H’を抽出した後、その像A’、像B’、像H’のコードパターンCP”に対応するコードパターン信号CPSを高さ測定値演算部15と距離演算部17とに向かって出力する。
【0053】
高さ測定値演算部15は、図4に示す視準軸(画像中心O’)Oを含む水平線(基準位置)LHの上下に存在する上側のスタジア相当線LHUと下側のスタジア相当線LHLの範囲内のコードパターンCP”の部位に対応するコードパターン信号CPS’の黒レベルの幅CPB’と白レベルの幅CPW’と黒レベル及び白レベルのピッチPCH’により、高さ測定値RH’を演算する。
【0054】
その高さ測定値RH’のデータは、標尺毎に視準高さ演算部16に向けて出力される。視準高さ演算部16は、高さ測定値RH’から減算すべきオフセット値Ofを求める。このオフセット値Ofは、得られた高さ測定値RH’が、「0から3未満」の範囲内、「3から6未満」、「6から9未満」、「9から12未満」、「12から15未満」、「15から18未満」、「18から21未満」、「21から24未満」のいずれの値であるかを判断することにより決定される。
【0055】
また、その高さ測定値RH’がどの範囲内の数値であるかを判断することにより、その得られた高さ測定値RH’が、複数の標尺A〜Hうち、いずれの標尺であるか否かを識別できる。
【0056】
視準高さ演算部16は、高さ測定値演算部15により得られた高さ測定値RH’からオフセット値Ofを減算することにより、実際の視準高さRHを求める。
すなわち、RH=RH’−Of
【0057】
この実際の視準高さRHのデータは、記憶部9に向けて出力され、記憶部9の該当する標尺A〜Hの記憶領域にそれぞれ記憶される。
ここでは、標尺A、B、Hに対応する視準高さRHのデータが記憶部9の各記憶領域にそれぞれ記憶される。
【0058】
距離演算部17は、スタジア相当線LHUに存在するコードパターンCP”の部位により得られた上側高さ測定値RH”とスタジア相当線LHLに存在するコードパターンCP”により得られた下側高さ測定値RH”との差により、上下スタジア相当線間の標尺長lを求め、既述したように電子レベル3の機械中心から各標尺A、B、Hまでの距離Lをそれぞれ求める。
【0059】
距離演算部17により求められた各標尺A〜Hの距離Lのデータは、記憶部9に送られて記憶部9の該当する標尺A〜Hの記憶領域にそれぞれ記憶される。
送信スイッチSW2を操作すると、CPU13は、記憶部9に記憶されている視準高さRHのデータと距離Lのデータとが送信部10に向かって出力させ、送信部10は各標尺A〜Hに割り当てられているチャネルに基づいて、各標尺A〜Hの受信部18に向けて視準高さRHのデータと距離のデータとを送信する。
【0060】
以上、この実施例では、1個の標尺の実際の高さに対応するコードパターンを複数個に分割して実際の視準高さとは異なる高さを意味するコードパターンを複数個の標尺に割り当てることにして説明したが、これに限るものではない。
【0061】
例えば、高さを測定可能でかつ異なる高さを意味する識別可能なコードパターンが割り当てられた複数個の標尺の像を含む画像が形成される二次元撮像素子を有する広角レンズ系と、前記画像から前記複数個の標尺の像をそれぞれ抽出する抽出部と、該抽出部により抽出された複数個の標尺の像における前記広角レンズ系の視準光軸に相当する部位のコードパターンにより該コードパターン部位が意味する高さ測定値をそれぞれ求める高さ測定値演算部と、該高さ測定値演算部により得られた高さ測定値から前記各標尺の実際の視準高さを得るためのオフセット値を求めかつ前記高さ測定値演算部により得られた高さ測定値から前記オフセット値を減算して実際の視準高さを標尺毎に求める視準高さ演算部とを備える構成としても良い。
【0062】
また、例えば、コードパターンが割り当てられた標尺の像を含む画像が形成される二次元撮像素子を有する広角レンズ系と、前記画像から前記標尺の像を抽出する抽出部と、該抽出部により抽出された標尺の像における前記広角レンズ系の視準光軸に相当する部位のコードパターンにより該コードパターン部位が意味する高さ測定値を求める高さ測定値演算部と、前記高さ測定値により視準高さを演算する演算部とを備える構成としても良い。
【符号の説明】
【0063】
3…電子レベル
6…広角レンズ系
12…二次元撮像素子
15…高さ測定値演算部
16…視準高さ演算部
RH…視準高さ
RH’…高さ測定値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コードパターンが割り当てられた標尺の像を含む画像が形成される二次元撮像素子を有する広角レンズ系と、前記画像から前記標尺の像を抽出する抽出部と、該抽出部により抽出された標尺の像における前記広角レンズ系の視準光軸に相当する部位のコードパターンにより該コードパターン部位が意味する高さ測定値を求める高さ測定値演算部と、前記高さ測定値により視準高さを演算する演算部とを備えていることを特徴とする電子レベル。
【請求項2】
高さを測定可能でかつ異なる高さを意味する識別可能なコードパターンが割り当てられた複数個の標尺の像を含む画像が形成される二次元撮像素子を有する広角レンズ系と、前記画像から前記複数個の標尺の像をそれぞれ抽出する抽出部と、該抽出部により抽出された複数個の標尺の像における前記広角レンズ系の視準光軸に相当する部位のコードパターンにより該コードパターン部位が意味する高さ測定値をそれぞれ求める高さ測定値演算部と、該高さ測定値演算部により得られた高さ測定値から前記各標尺の実際の視準高さを得るためのオフセット値を求めかつ前記高さ測定値演算部により得られた高さ測定値から前記オフセット値を減算して実際の視準高さを標尺毎に求める視準高さ演算部とを備えていることを特徴とする電子レベル。
【請求項3】
前記各標尺には、1個の標尺の実際の高さに対応するコードパターンを複数個に分割して実際の高さとは異なる高さ意味するコードパターンが割り当てられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子レベル。
【請求項4】
前記二次元撮像素子が前記広角レンズ系の視準光軸に対して縦方向に傾斜されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の電子レベル。
【請求項5】
前記視準光軸の上側に設けられた上側スタジア線に相当するコードパターン部位により求められた上側高さ測定値と前記視準光軸の下側に設けられた下側スタジア線に相当するコードパターン部位により求められた下側高さ測定値との差により上下スタジア線間の標尺長を求め、求められた標尺長にスタジア乗数をかけ算することにより各標尺までの距離を求める距離演算部を有することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の電子レベル。
【請求項6】
標尺毎に求められた実際の視準高さのデータをそれぞれ記憶すると共に前記標尺毎に求められた距離を記憶する記憶部と、この記憶部に記憶されている視準高さのデータと距離のデータとを前記各標尺に設けられた受信装置に向けて送信する送信部とを有することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の電子レベル。
【請求項7】
請求項3に記載の電子レベルに用いられる標尺であって、1個の標尺の高さを意味するコードパターンが拡大されかつ複数個に分割されて実際の視準高さとは異なる高さを意味するコードパターンが割り当てられた標尺。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−145463(P2012−145463A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4492(P2011−4492)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000220343)株式会社トプコン (904)