説明

電子レンジ加熱用包装容器

【課題】蒸気の放出量を抑えることが可能であって、蒸気放出後も内部を高圧に保って食材を加圧調理することができる電子レンジ加熱用包装容器を提供すること。
【解決手段】カップ状の容器本体と、該容器本体の開口部周縁に沿ってヒートシールされて該開口部を被覆する蓋材とからなる電子レンジ加熱用包装容器であって、該蓋材は内蓋と外蓋の二層構造とされており、該内蓋と外蓋は、少なくとも前記開口部周縁を含む一部分においてのみ接着されるとともに、該開口部周縁においてはイージーピールフィルムを介して接着され、前記内蓋は前記接着部分以外の部分に通気口を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジによる加熱調理時に容器内で発生する蒸気を外部へと放出することができる電子レンジ加熱用包装容器に関し、より詳しくは、蒸気の急激な放出を防ぐことが可能であって、蒸気放出後においても容器内の圧力を高く維持することが可能な電子レンジ加熱用包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カップ状の容器本体の内部に調理済や半調理済の食材を収容し、容器本体の開口部を合成樹脂フィルムで被覆することにより密封し、容器ごと電子レンジで加熱することによって食材を加熱調理できるようにした電子レンジ加熱用包装容器が存在している。
【0003】
通常、このような電子レンジ加熱用包装容器には、加熱時に食材から発生する蒸気により内圧が上昇して容器が破裂してしまうことを防ぐために、内圧が一定値以上になったときに蒸気を外部へと逃がすための機構が設けられている。
【0004】
このような蒸気抜き機構を有する電子レンジ加熱用容器としては、例えば下記特許文献1に開示された容器が存在している。
特許文献1に開示された電子レンジ加熱用容器は、容器本体の開口部を被覆する蓋材に通気口を設け、更にこの通気口を覆うように被覆体を貼付したものであり、容器の内圧が一定値以上になると、通気口を覆う被覆体が剥がれ、露出した通気口から蒸気が外部に放出される。
【0005】
この電子レンジ加熱用容器によれば、容器内部の圧力が過剰に高まることが防がれるため、容器の破裂を防ぐことが可能となる。
しかしながら、この電子レンジ加熱用容器では、露出した通気口から蒸気が外部に一気に放出され、これにより容器の内圧が急激に低下してしまうため、食材の加圧調理を行うことができなかった。
【0006】
【特許文献1】特開2004−331156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、電子レンジによる加熱調理時に容器内で発生する蒸気を外部へと逃がすことができる電子レンジ加熱用包装容器において、蒸気の放出量を抑えることが可能であって、蒸気放出後も内部を高圧に保って食材を加圧調理することができる電子レンジ加熱用包装容器を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、カップ状の容器本体と、該容器本体の開口部周縁に沿ってヒートシールされて該開口部を被覆する蓋材とからなる電子レンジ加熱用包装容器であって、該蓋材は内蓋と外蓋の二層構造とされており、該内蓋と外蓋は、少なくとも前記開口部周縁を含む一部分においてのみ接着されるとともに、該開口部周縁においてはイージーピールフィルムを介して接着され、前記内蓋は前記接着部分以外の部分に通気口を有していることを特徴とする電子レンジ加熱用包装容器に関する。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記内蓋と外蓋が、前記開口部周縁以外の部分においても接着されていることを特徴とする請求項1記載の電子レンジ加熱用包装容器に関する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、電子レンジでの加熱調理時に容器内で発生した蒸気により内圧が上昇すると、蒸気が、内蓋に設けられた通気口を通って内蓋と外蓋の間に入り込んで外蓋を膨らませる。外蓋の膨張が所定量に達すると、内蓋と外蓋との接着が、イージーピールフィルムが介装された開口部周縁の一部分が剥離し、蒸気が外部へと放出される。そして、蒸気が放出されると、内蓋と外蓋の間の圧力が低下して剥離部分が閉じ、続いて内蓋と外蓋の間の圧力が上昇して剥離部分が開いて蒸気が放出される。このようにして、内蓋と外蓋の間の圧力の増減が繰り返されることによって、蒸気の放出が一気に起こることがなく間欠的なものとなり、これによって蒸気の急激な放出が抑制され、蒸気放出による内圧の低下を低く抑えることができ、食材を良好に加圧調理することが可能となる。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、内蓋と外蓋が開口部周縁以外の部分においても接着されているため、内蓋と外蓋の密着性が高くなり、内蓋と外蓋の間の圧力が低下して剥離部分が閉じたときの密封性が向上することによって、蒸気の放出をより効果的に抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る電子レンジ加熱用包装容器(以下、単に容器という場合がある)の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明に係る電子レンジ加熱用包装容器の概略断面図であり、図2は図1の部分拡大図である。
【0013】
本発明に係る電子レンジ加熱用包装容器は、内容物取り出し用の開口部(11)を有するカップ状の容器本体(1)と、該容器本体の開口部周縁に沿ってヒートシールされて該開口部を被覆する蓋材(2)とから構成されている。
【0014】
容器本体(1)の開口部周縁にはフランジ(3)が形成されており、蓋材(2)はその周縁部が該フランジの表面に対してヒートシールされている。
【0015】
容器本体(1)は、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂等のオレフィン系樹脂や、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂や、これらの混合樹脂の単層又は積層体から構成することができる。また、ガスバリア性を付与するために、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)等の合成樹脂やアルミ蒸着層等からなるガスバリア層を設けることもできる。
【0016】
図示例では、容器本体(1)は、基材(5)の表面に剥離層(6)が積層された構造を有している。
基材(5)は三層構造となっている。三層構造の具体例としては、例えば下層から順に、ポリプロピレン層/ガスバリア層/ポリプロピレン層、或いはポリエチレン層/ガスバリア層/ポリエチレン層という構造を例示することができる。このとき、ガスバリア層としては、例えばエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)を用いる構成を例示することができる。
剥離層(6)としては、例えば高密度ポリエチレン樹脂を用いることができる。
【0017】
蓋材(2)は、内蓋(7)と外蓋(8)の二層構造とされている。
内蓋(7)としては、基材(71)の両面にシーラント層(72)を有する合成樹脂フィルムが用いられる。基材(71)としては、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等を用いることができ、シーラント層(72)としては、LLDPE、ポリプロピレン等を用いることができる。
外蓋(8)としては、基材(81)の片面に、接着剤層(82)を介してイージーピールフィルム(83)をドライラミネートした構造を有する合成樹脂フィルムが用いられる。基材(81)としては、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等を用いることができ、イージーピールフィルム(83)としては、ポリプロピレン系のイージーピールフィルムやポリエチレン系のイージーピールフィルムを用いることができる。
尚、本発明においては、外蓋(8)を三層構造(接着剤層は層数にカウントせず)とする構成(例えば、基材とイージーピールフィルムの間にガスバリア層を介在させる構成等)も好適に採用することができる。
【0018】
図3は蓋材(2)を構成する内蓋(7)と外蓋(8)を別々に示した平面図であって、(a)は内蓋を示し、(b)は外蓋を示している。
図示の如く、内蓋(7)にはその中心に円形穴からなる通気口(9)が形成されている。この通気口(9)は後述する如く蒸気の通路となるものである。一方、外蓋(8)には通気口は形成されていない。
【0019】
内蓋(7)に形成される通気口(9)の形状は円形に限定されず、例えばスリット状であってもよい。
【0020】
内蓋(7)と外蓋(8)は、内蓋(7)が内側(下側)、外蓋(8)が外側(上側)となるように重ね合わされて接着されることにより、1枚の蓋材(2)を形成している。
このとき、内蓋(7)と外蓋(8)は、全面に亘って接着されるのではなく、少なくとも容器本体(1)の開口部周縁を含む一部分においてのみ接着され、他の部分においては接着されない。
【0021】
図4(a)(b)は、内蓋(7)と外蓋(8)とを重ね合わせて接着した状態の一例を示す平面図であって、図中のハッチングを施した部分が接着されている部分である。
図4(a)の例は、容器本体(1)の開口部周縁のみにおいて内蓋(7)と外蓋(8)を接着した例であり、図4(b)の例は、開口部周縁に加えてそれ以外の部分も接着した例である。
【0022】
図4(b)の例をより具体的に説明すると、開口部周縁以外の接着部は通気口(9)を挟むように互いに平行な直線状に且つ開口部周縁の接着部と繋がるように形成されている。
尚、本発明においては、開口部周縁以外の接着部を別の形状とすることも可能であるが、接着部は内蓋(7)の通気口(9)の位置を避けて形成することが必要である。これは、接着部によって内蓋(7)の通気口(9)の周囲が外蓋(8)と密着してしまうと、後述する蒸気放出時において内蓋(7)と外蓋(8)の間に蒸気を溜めることができなくなり、蒸気放出抑制効果が発揮できなくなるためである。
【0023】
内蓋(7)と外蓋(8)は、容器本体(1)の開口部周縁とそれ以外の部分(例えば図4(b)に示した平行線部分)の両方の部分において、イージーピールフィルム(83)を介して接着(ヒートシール)されている。
【0024】
以下、本発明に係る電子レンジ加熱用包装容器の作用について説明する。
本発明に係る電子レンジ加熱用包装容器を使用する際には、先ず容器本体の中に調理済もしくは半調理済の食材を収容した後、容器本体の開口部周縁において、容器本体に対して蓋材をヒートシールすることによって、食材が内部に密封された容器を製造する(図1参照、食材の図示は省略している)。
そして、このように製造された食材入りの容器を購入した利用者は、容器を電子レンジに入れて加熱する。
【0025】
容器が電子レンジにより加熱されると、食材から発生する蒸気によって容器の内圧が上昇する。そして、蒸気は、内蓋(7)に設けられた通気口(9)を通って内蓋(7)と外蓋(8)の間に入り込み、外蓋(8)を膨らませる(図5参照)。このとき、蒸気が通気口(9)を通って内蓋(7)の外(外蓋(8)との間)に抜けるため、内蓋(7)はあまり膨らまない。
【0026】
内蓋(7)と外蓋(8)の間の内圧(蒸気圧)が一定値以上になると、内蓋(7)と外蓋(8)との接着が、イージーピールフィルムが介装された開口部周縁において一部剥離し、この剥離部分から蒸気が外部へと放出される(図6参照)。
【0027】
蒸気が放出されると、内蓋(7)と外蓋(8)の間の圧力が低下するため、外蓋(8)が下降して剥離部分が閉じ(図7参照)、これにより蒸気の放出が抑えられる。
そして、剥離部分が閉じると、内蓋(7)と外蓋(8)の間の圧力が再び上昇するため、剥離部分が再度開いて蒸気が外部へと放出される(図6参照)。
【0028】
このように、内蓋(7)と外蓋(8)の間の圧力の増減が繰り返されることによって、図6及び図7の状態が繰り返される。
これにより、蒸気の放出が一気に起こることがなく間欠的なものとなるため、蒸気の急激な放出が抑制される。その結果、蒸気放出による内圧の低下を低く抑えることができ、食材を良好に加圧調理することが可能となる。
【0029】
以上は、内蓋(7)と外蓋(8)とが開口部周縁のみにおいて接着されている蓋材(2)(図4(a)参照)を使用した場合の作用である。
図8は、図4(b)に示すように、内蓋(7)と外蓋(8)とを開口部周縁以外の部分においても接着した蓋材(2)を用いた場合の作用を示す図である。尚、図8は図4(a)の蓋材を用いた場合の図5の状態に相当する図である。
この場合、内蓋(7)と外蓋(8)の密着性が高くなるため、内蓋(7)と外蓋(8)の間の圧力が低下して剥離部分が閉じたとき(図7の状態に相当)の密封性が向上し、蒸気の放出をより効果的に抑制することが可能となる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明に係る電子レンジ加熱用包装容器の実施例を示すことにより、本発明の効果をより明確にする。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
1.サンプルの作成
(A)実施例サンプル
容器本体として、基材がポリプロピレン層/ガスバリア層(エチレン−ビニルアルコール共重合体)/ポリプロピレン層の三層構造からなり、剥離層が高密度ポリエチレン樹脂からなる合成樹脂をカップ状に成形したもの(容積250cc)を用いた。
蓋材としては、内蓋がナイロンからなる基材の両面にLLDPEからなるシーラント層を設けたもの、外蓋がナイロンからなる基材の片面に接着剤層を介してポリエチレン系のイージーピールフィルムをドライラミネートしたものを用い、内蓋と外蓋は周縁部のみにおいてイージーピールフィルムを介してヒートシールにより接着した。
上記容器本体の開口部周縁に上記蓋材をヒートシールにより接着することにより、図1乃至図4に示した構造を有する実施例サンプルを得た。
(B)比較例サンプル
市販の電子レンジ加熱用包装袋を比較例サンプルとして用いた。
この比較例サンプルの袋は、寸法が長さ220mm×幅155mm、素材の構成がナイロン15μm/DL/レトルトCPP50μmであり、袋の略中央においてナイロン層に直径10mmの円形穴が設けられているものである。
【0031】
2.実験方法
実施例及び比較例サンプルに水道水100ccを入れた後、ヒートシールを施して内部を密封し、これを電子レンジ(RE−S100:シャープ株式会社製)に入れて加熱し、容器及び袋内の圧力を測定した。
容器及び袋の内圧は、容器及び袋内に挿入した耐圧ホースを介して外部に設置した圧力計(PGHデジタル圧力計:株式会社モルテン製)により測定した。
【0032】
3.実験結果
実施例及び比較例サンプルについて、蒸気放出前の最高圧力と蒸気放出後の平均圧力(蒸気放出開始後から完了までの平均圧力)の測定結果を表1に示す。尚、表中の測定値は、室内圧(大気圧)との圧力差(bar)で示されている。
【0033】
【表1】

【0034】
表1に示されるように、実施例サンプルでは、蒸気放出開始後においても暫くの時間、容器内の圧力は大気圧よりも高く維持されていたが、比較例サンプルでは、蒸気放出開始と同時に袋内の圧力が急激に低下してすぐに大気圧と同じ圧力となった。
この実験結果から、本発明に係る電子レンジ加熱用包装容器は、従来の電子レンジ加熱用包装袋に比べて蒸気が一気に放出されることを抑制する蒸気放出抑制効果が高く、蒸気放出後も内部を高圧に維持することができることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、電子レンジにより食材を加熱加圧料理するための加熱用包装容器として好適に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る電子レンジ加熱用包装容器の概略断面図である。
【図2】図1の部分拡大図である。
【図3】蓋材を構成する内蓋と外蓋を別々に示した平面図であって、(a)は内蓋を示し、(b)は外蓋を示している。
【図4】内蓋と外蓋とを重ね合わせて接着した状態の一例を示す平面図である。
【図5】本発明に係る電子レンジ加熱用包装容器の作用についての説明図である。
【図6】本発明に係る電子レンジ加熱用包装容器の作用についての説明図である。
【図7】本発明に係る電子レンジ加熱用包装容器の作用についての説明図である。
【図8】本発明に係る電子レンジ加熱用包装容器において、別の蓋材を用いた場合の作用についての説明図である。
【符号の説明】
【0037】
1 容器本体
2 蓋材
7 内蓋
8 外蓋
9 通気口
11 開口部
83 イージーピールフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カップ状の容器本体と、該容器本体の開口部周縁に沿ってヒートシールされて該開口部を被覆する蓋材とからなる電子レンジ加熱用包装容器であって、該蓋材は内蓋と外蓋の二層構造とされており、該内蓋と外蓋は、少なくとも前記開口部周縁を含む一部分においてのみ接着されるとともに、該開口部周縁においてはイージーピールフィルムを介して接着され、前記内蓋は前記接着部分以外の部分に通気口を有していることを特徴とする電子レンジ加熱用包装容器。
【請求項2】
前記内蓋と外蓋が、前記開口部周縁以外の部分においても接着されていることを特徴とする請求項1記載の電子レンジ加熱用包装容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−204073(P2007−204073A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−22672(P2006−22672)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(390033868)株式会社メイワパックス (27)
【Fターム(参考)】