説明

電子体温計及び表示制御方法

【課題】 電子体温計において、被検者の体温の状態を容易に把握できるようにする。
【解決手段】 被検者の体温を測定する電子体温計であって、測定により得られた体温情報を表示する表示手段と、測定により得られた体温情報を時刻情報と対応付けて格納する格納手段と、今回の測定により得られた体温情報と、前記格納手段に格納された、前回の測定により得られた体温情報とを用いて、体温差と単位時間あたりの体温の変化量を算出する算出手段と、を備え、前記表示手段は、前記算出手段により算出された前記体温差と前記単位時間あたりの体温の変化量とに応じた、予め定められた傾きを有する識別子を、今回の測定により得られた体温情報とともに、表示することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者の体温を測定する電子体温計及びその表示制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子体温計にはLCD等の表示部が設けられており、測定された被検者の体温情報を測定完了と同時にユーザに表示するよう構成されている(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
また、女性体温計の場合にあっては、測定した体温情報を測定日時と対応付けて記録する機能を備えており、表示部に、前回値を表示させたり、トレンドグラフを表示させたりすることもできる(例えば、下記特許文献2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−24530号公報
【特許文献2】特開平8−101075号公報
【特許文献3】特開平10−281892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、発熱時等に被検者の体温を測定する場合においては、現在の体温情報を知るだけでなく、被検者の現在の体温が上昇過程にあるのか、平衡状態にあるのか、あるいは下降過程にあるのか、といった体温の変化の方向を把握しておくことが重要となってくる。
【0006】
これに対して、従来の電子体温計では、ユーザが、過去の測定結果を呼び出し、順次表示部に表示させたり、トレンドグラフとして表示させたりすることで、体温の変化の方向を読み取る必要があった。
【0007】
しかしながら、被検者の発熱中にこれらの操作を行うことはユーザにとって煩わしい。このため、発熱時の体温測定に用いられる電子体温計においては、測定完了時に表示部に表示された被検者の現在の体温が、どのような状態にあるのか(上昇過程にあるのか、平衡状態にあるのか、あるいは下降過程にあるのかといった体温の変化の方向)を、ユーザがすぐに把握できるように構成されていることが望ましい。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、電子体温計において、被検者の体温の状態を容易に把握できるように構成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明に係る電子体温計は以下のような構成を備える。即ち、
被検者の体温を測定する電子体温計であって、
測定により得られた体温情報を表示する表示手段と、
測定により得られた体温情報を時刻情報と対応付けて格納する格納手段と、
今回の測定により得られた体温情報と、前記格納手段に格納された、前回の測定により得られた体温情報とを用いて、体温差と単位時間あたりの体温の変化量とを算出する算出手段と、を備え、
前記表示手段は、前記算出手段により算出された前記体温差と前記単位時間あたりの体温の変化量とに応じた、予め定められた傾きを有する識別子を、今回の測定により得られた体温情報とともに、表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電子体温計において、被検者の体温の状態を容易に判断できるようにすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る電子体温計の外観構成の一例を示す図である。
【図2】電子体温計のシステム構成を示す図である。
【図3】電子体温計の体温測定処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】電子体温計の表示部の表示例を示す図である。
【図5】表示部に表示される識別子の区分を示す図である。
【図6】電子体温計の体温変化表示処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】電子体温計の前回値初期化処理の流れを示すフローチャートである。
【図8】被検者の発熱時の体温の変化の様子を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0013】
[第1の実施形態]
1.電子体温計の外観構成
図1は、本発明の一実施形態に係る棒状の電子体温計100の外観構成を示す図である。図1(A)は、電子体温計100の表側の平面図であり、図1(B)は、電子体温計100の裏側の平面図である。
【0014】
図1(A)において、101は電子体温計100の本体ハウジング(筺体101)であり、102は電子体温計100の尾部ハウジング(筺体102)である。筺体102は、筺体101に対して、着脱可能に取り付けられている(図1(B)において、105は、筺体102を筺体101に取り付けた後、ネジ留めするためのねじ穴である)。
【0015】
103はエンドキャップである。エンドキャップ103は、サーミスタなどの感温素子が内蔵された温度計測部に対して被検者の体温が伝導しやすいように、ステンレスなどの金属により被覆されている。104は体温測定処理の結果として体温データ等を表示する表示部であり、透明の熱可塑性樹脂で形成された窓部材104aにより覆われている。
【0016】
2.電子体温計のシステム構成
次に、電子体温計のシステム構成について図2を参照しながら説明する。図2は、電子体温計100のシステム構成を示す図である。
【0017】
図2に示すように、電子体温計100は、温度を計測しそれをデジタル値として出力する温度計測部210と、計測された温度から予測温度を演算すると共に電子体温計100全体を制御する演算制御部220と、体温測定処理の結果として体温データ等を表示する、バックライト用のLED231を備えた表示部104と、音声を出力するブザー部240と、ユーザからの操作を受け付ける入力部250と、各部に電源を供給する電源部260とを備える。
【0018】
温度計測部210は、並列に接続された感温部に設置されたサーミスタ及びコンデンサと、測温用CR発振回路とから構成され、サーミスタの温度に対応するカウンタ226のカウント量の変化に従い、温度をデジタル量として出力する。なお、温度計測部210の構成は一例であって、これに限定されるものではない。
【0019】
演算制御部220は、測定結果(体温データ)を日付及び時刻情報と対応付けて格納するRAM223と、体温測定に必要なパラメータや予測式プログラム等を格納したROM(コンピュータ読取可能な記憶媒体)222と、日付及び時刻情報を管理するタイマ224とを備える。
【0020】
更に、表示部104を制御するための表示制御部227と、測温用CR発振回路の発振信号をカウントするカウンタ226と、ROM222の予測式プログラムに従い予測演算等を行う演算処理部221とを備える。更に、カウンタ226や演算処理部221、表示制御部227を制御する制御回路225を備える。なお、体温データなどを格納する一時記憶領域には、不揮発性の書き換え可能メモリを用いるようにしてもよい。
【0021】
3.電子体温計の体温測定手順
続いて、図3を用いて電子体温計100における体温測定処理の流れを説明する。図3は電子体温計100の体温測定処理の流れを示すフローチャートである。
【0022】
電子体温計100の電源部260がONされると体温測定処理が開始され、ステップS301では、電子体温計100の初期化が行われるとともに、温度計測部210による温度計測が開始される。また、演算処理部221では、所定間隔、例えば、0.5秒おきに温度データの算出が行われる。
【0023】
ステップS302では、体温測定開始条件が成立したか否かを判断する。具体的には、前回の温度計測により算出された温度データの値(つまり、0.5秒前の温度データの値)からの上昇度が、所定温度以上(例えば、1℃以上)となったか否かを判断する。
【0024】
ステップS302において上昇度が所定温度以上になったと判断した場合には、体温測定開始条件が成立したと判断し、当該温度データを算出したタイミングを、予測体温演算の基準点(t=0)として設定する。つまり、電子体温計100では、急激な温度上昇が計測されると、被検者が、所定の計測部位に電子体温計100を装着したものとみなす。
【0025】
ステップS302において、体温測定開始条件が成立したと判断されると、ステップS303に進み、温度データの取り込みを開始する。具体的には、算出された温度データと、当該温度データを算出したタイミングとを、時系列データとしてRAM223に格納する。
【0026】
ステップS304では、ステップS303において格納された温度データを用いて、所定の予測式により、予測体温を演算する。
【0027】
ステップS305では、基準点(t=0)から所定時間(例えば25秒)、経過した後に、ステップS304において演算された一定区間(例えば、t=25〜30秒)における予測値が、予め設定された予測成立条件を満たすか否かを判断する。具体的には、所定の範囲(例えば、0.1℃)以内に収まっているか否かを判断する。
【0028】
ステップS305において、予測成立条件を満たすと判断された場合には、ステップS306に進み、予測体温の演算を終了するとともに、温度計測部210による温度計測を終了する。
【0029】
ステップS307では、ブザー部240が予測体温の演算が終了した旨の音声を出力し、表示部104に、演算された予測体温(体温データ)を表示する。
【0030】
一方、ステップS305において、予測成立条件を満たさないと判断された場合には、ステップS311に進む。ステップS311では、基準点(t=0)から所定時間(例えば300秒)経過したか否かを判断し、経過したと判断された場合には、体温の演算を強制終了するとともに、温度計測部210による温度計測を強制終了する。なお、強制終了した場合には、その際に演算されていた体温(体温データ)を、表示部104に表示する(ステップS307)。
【0031】
ステップS308では、ステップS306またはステップS311において演算された体温データと、前回値(前回の体温測定処理において演算され、RAM223の特定領域に測定時刻とともに前回値として格納された体温データ)とを対比し、体温がどのように変化しているかを判断する。更に、判断結果に対応する識別子を表示部104に表示する。なお、ステップS308の体温変化表示処理の詳細は後述する。
【0032】
ステップS309では、ステップS306またはステップS311において演算された体温データを、日付及び時刻情報と対応付けてRAM223に格納する。
【0033】
ステップS310では、体温測定終了指示を受け付けたか否かを判断する。ステップS310において、体温測定終了指示を受け付けていないと判断された場合には待機し、体温測定終了指示を受け付けたと判断された場合には、電源部260をOFFにする。
【0034】
なお、実測値のみを測定する電子体温計にあっては、ステップS303の処理の後、所定時間(5〜10分)後に、ブザー部240で体温の測定が終了した旨の音声を出力し、体温を表示部104に表示した後に、ステップS308に進むものとする。
【0035】
4.体温の変化の方向と識別子との関係
続いて、体温変化表示処理の詳細について説明する。はじめに、体温の変化の方向と表示部104に表示される識別子との関係について、図4及び図5を用いて説明する。図4は、表示部104に表示される体温の変化の方向を示す識別子の表示例を示す図である。
【0036】
図4に示すように、電子体温計100では、体温の変化の方向を3つの区分に分け(I〜III)、5種類の識別子(矢印)を用いて表示する。
【0037】
第1の区分(I)は、今回の体温測定処理において演算された体温データ(今回値)と、前回値(前回の体温測定処理において演算され、RAM223の特定領域に測定時刻とともに前回値として格納された体温データ)との差が、±1℃以上あること、あるいは、前回値から今回値までの体温変化の傾き(単位時間あたりの体温の変化量)が、0.5℃/時以上あることを条件としている。第1の区分の条件を満たす場合には、今回値とともに、今回値の表示方向に対して垂直方向上向きの矢印(411)または垂直方向下向きの矢印(412)を表示する。
【0038】
第2の区分(II)は、今回の体温測定処理において演算された体温データ(今回値)と、前回値(前回の体温測定処理において演算され、RAM223の特定領域に測定時刻とともに前回値として格納された体温データ)との差が、±0.5℃以上で±1.0℃未満であること、かつ、前回値から今回値までの体温変化の傾き(単位時間あたりの体温の変化量)が、0.5℃/時未満であることを条件としている。第2の区分の条件を満たす場合には、今回値とともに、今回値の表示方向に対して斜め上向きの矢印(421)または斜め下向きの矢印(422)を表示する。
【0039】
第3の区分(III)は、今回の体温測定処理において演算された体温データ(今回値)と、前回値(前回の体温測定処理において演算され、RAM223の特定領域に測定時刻とともに前回値として格納された体温データ)との差が、±0.5℃未満であることを条件としている。第3の区分の条件を満たす場合には、今回値とともに、今回値の表示方向に対して水平方向の矢印(431)を表示する。
【0040】
なお、第3の区分の条件を満たす場合であって、前回値を演算した際の測定時刻と、今回値を演算した際の測定時刻との差(時間差)が、1時間以内(所定時間以内)であった場合には、今回値のみを表示し、水平方向の矢印(431)の表示は行わないものとする。
【0041】
図5は表示部104に表示される識別子の区分を示す図である。図5において、横軸は、前回値と今回値との差(体温差)を示しており、縦軸は、前回値を演算した際の測定時刻と、今回値を演算した際の測定時刻との差(時間差)を示している。
【0042】
上記第1乃至第3の区分(I〜III)を、体温差と時間差とにより構成される2次元領域にあてはめると、図5のように区分される。なお、領域501は、矢印が表示されない条件を示す領域である。
【0043】
5.体温変化表示処理の流れ
次に、体温変化表示処理(ステップS308)の流れについて、図6及び図7を用いて説明する。
【0044】
図6は、電子体温計100における体温変化表示処理の流れを示すフローチャートであり、図7は、体温変化表示処理において用いられる前回値を初期化するための前回値初期化処理の流れを示すフローチャートである。
【0045】
ステップS601では、前回値を初期化するための前回値初期化処理を実行する。具体的には、図7のステップS701に進み、前回値の測定時刻と今回値の測定時刻とを対比する。ステップS702では、前回値の測定時刻と今回値の測定時刻との時間差が、所定時間以上(閾値以上)あるか否かを判定する。
【0046】
ステップS702において、前回値の測定時刻と今回値の測定時刻との時間差が、所定時間(例えば、閾値=72時間)以上あると判定された場合には、体温の変化の方向を表示するために、現時点で前回値としてRAM223の特定領域に測定時刻とともに格納されている体温データは適切でないと判断し、ステップS703において今回値を測定時刻とともに前回値に上書きする。その後、ステップS309に戻る。この場合、表示部104には、今回値の表示のみが行われ、矢印の表示は行われない。
【0047】
このように、電子体温計100では前回値の測定時刻と今回値の測定時刻との時間差が大きい場合には、前回値と今回値とを比較することに意味がないと判断し、矢印の表示も行わない。
【0048】
一方、ステップS702において、前回値の測定時刻と今回値の測定時刻との時間差が、所定時間未満(閾値未満)であると判定された場合には、体温の変化の方向を表示するための体温データとして、現時点で前回値としてRAM223の特定領域に測定時刻とともに格納されている体温データは適切であると判断し、図6のステップS602に戻る。
【0049】
ステップS602では、今回値と前回値とを対比し、今回値と前回値との体温差を算出する。また、ステップS603では、ステップS602において算出された体温差と、今回値の測定時刻と前回値の測定時刻との時間差とを用いて、体温変化の傾き(単位時間あたりの体温の変化量)を算出する。
【0050】
ステップS604では、ステップS602において算出された体温差が、1.0℃以上(閾値以上)あるか否かを判定する。ステップS604において、体温差が1.0℃以上あると判定された場合には、ステップS608に進む。
【0051】
ステップS608では、前回値よりも今回値の方が体温が高い場合には、垂直方向上向きの矢印(411)を表示部104に表示する。また、前回値よりも今回値の方が体温が低い場合には、垂直方向下向きの矢印(412)を表示部104に表示する。これにより、ユーザは、表示部104に表示されている今回値が、前回値と比較して急激に上昇(または下降)したことを、容易に把握することができる。
【0052】
一方、ステップS604において、体温差が1.0℃未満(閾値未満)であると判定された場合には、ステップS605に進む。ステップS605では、ステップS603において算出された単位時間あたりの体温の変化量が、0.5℃/時以上(閾値以上)あるか否かを判定する。
【0053】
ステップS605において、単位時間あたりの体温の変化量が、0.5℃/時以上(閾値以上)あると判定された場合には、ステップS608に進む。一方、ステップS605において、単位時間あたりの体温の変化量が0.5℃/時未満(閾値未満)であると判定された場合には、ステップS606に進む。
【0054】
ステップS606では、ステップS602において算出された体温差が、0.5℃以上(閾値以上)あるか否かを判定する。ステップS606において、体温差が0.5℃以上(閾値以上)あると判定された場合には、ステップS609に進む。
【0055】
ステップS609では、前回値よりも今回値の方が体温が高い場合には、斜め上向きの矢印(421)を表示部104に表示する。また、前回値よりも今回値の方が体温が低い場合には、斜め下向きの矢印(422)を表示部104に表示する。これにより、ユーザは、表示部104に表示されている今回値が、前回値と比較してやや上昇(または下降)したことを、容易に把握することができる。
【0056】
一方、ステップS606において、体温差が0.5℃未満であると判定された場合には、ステップS607に進む。ステップS607では、前回値の測定時刻と、今回値の測定時刻との時間差が、1時間以内(所定時間以内)であるか否かを判定し、1時間以内ではないと判定された場合には、ステップS610に進む。
【0057】
ステップS610では、水平方向の矢印(431)を表示部104に表示する。これにより、ユーザは、表示部104に表示されている今回値が、前回値と概ね同じであり、平衡状態にあることを、容易に把握することができる。
【0058】
一方、ステップS607において1時間以内であると判定された場合には、体温変化の方向を示す識別子の表示を行うことなく、図3のステップS309に戻る。
【0059】
なお、ステップS608〜ステップS610のいずれかにおいて、表示部104に矢印を表示した場合には、ステップS611に進み、前回値を今回値で上書きした後、ステップS309に戻る。
【0060】
6.実施例
次に、体温測定処理の実施例について図8を用いて説明する。図8は、発熱時の体温の変化を模式的に示した図であり、横軸は時間を、縦軸は体温をそれぞれ示している。図8において、曲線800は被検者の実際の体温変化を示しており、曲線800上に付された各丸印は電子体温計100を用いて体温測定を行ったタイミングを示している。
【0061】
また、各丸印の近傍に付された矢印は、各丸印のタイミングで体温測定を行った際に、表示部104に表示された矢印を示している。なお、各丸印のうち、黒丸印は、体温測定により演算された体温データが前回値として格納されたことを示しており、白丸印は、体温測定により演算された体温データが前回値として格納されなかったことを示している。
【0062】
図8に示すように、被検者の体温が上がりはじめたタイミング801で体温測定が行われると、前回値の測定時刻(図8において不図示)と今回値の測定時刻との間に、所定時間以上(閾値以上)の時間差があるため、今回値の体温データにより、前回値の体温データが上書きされる(ステップS701→S702→S703)。この場合、表示部104に矢印が表示されることはなく、今回値が表示された後、体温測定処理が終了する(ステップS309→S310)。
【0063】
続いて、タイミング802で体温測定が行われると、タイミング801で演算された体温データを前回値として、体温差及び傾きが算出される。この場合、前回値と今回値との体温差及び傾きが領域501の条件を満たすため、表示部104に矢印が表示されることはなく、今回値が表示された後、体温測定処理が終了する(ステップS604→S605→S606→S607でYes)。
【0064】
続いて、タイミング803で体温測定が行われると、タイミング801で演算された体温データを前回値として、体温差及び傾きが算出される。この場合、前回値と今回値との体温差及び傾きが第2の区分(II)の条件を満たすため、表示部104には矢印823が表示されるとともに、今回値により、前回値が上書きされる(ステップS604→S605→S606→S609→S611)。
【0065】
続いて、タイミング804で体温測定が行われると、タイミング803で演算された体温データを前回値として、体温差及び傾きが算出される。この場合、前回値と今回値との体温差及び傾きが第1の区分(I)の条件を満たすため、表示部104には矢印824が表示されるとともに、今回値により、前回値が上書きされる(ステップS604→S608→S611)。
【0066】
以降、タイミング805〜806、810〜813では、算出された体温差及び傾きに対応する矢印が表示されるとともに、体温測定により演算された体温データを、次の体温測定の際に用いる前回値として格納する。一方、タイミング807〜809では、算出された体温差及び傾きが、領域501の条件を満たすため、表示部104に矢印が表示されることはなく、また、体温測定により演算された体温データが前回値としてRAM223の特定の領域に測定時刻とともに格納されることもない(このため、タイミング810では、タイミング806で演算された体温データが前回値として用いられることとなる)。
【0067】
以上の説明から明らかなように、本実施形態に係る電子体温計100では、体温測定処理により得られた体温情報を日付及び時刻情報と対応付けて格納する構成とした。また、体温測定処理により得られた体温情報(今回値)を、前回値と比較することで、今回値が演算された際の被検者の体温が、上昇過程にあるのか、平衡状態にあるのか、下降過程にあるのかをただちに認識することができるようになる。つまり、被検者の体温の状態(体温の変化の方向)を、容易に把握できるようになる。
【0068】
[第2の実施形態]
上記第1の実施形態では、体温差と傾きとに基づいて、第1乃至第3の区分に分類し、5種類の矢印により被検者の体温の変化を表現することとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、区分数を増やし、識別子の種類を増やすようにしてもよい。また、識別子の色は黒色に限定されず、区分に応じて変化させるようにしてもよい。更に、識別子の形、大きさを区分に応じて変化させるように構成してもよい。
【0069】
また、上記第1の実施形態では、体温データは、日付及び時刻情報と対応付けてRAM223に格納されることとしたが、本発明はこれに限定されず、例えば、表示部104に矢印が表示された場合にあっては、当該矢印も対応付けて格納するように構成してもよい。
【0070】
また、上記第1の実施形態では、体温測定において演算された体温データは、日付及び時刻情報と対応付けてRAM223に格納されるとともに、前回値として、別途、特定領域に格納される構成としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、日付及び時刻情報と対応付けて格納された体温データのうち、前回値として処理されるべき体温データについては、所定のフラグを付加するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0071】
100・・・電子体温計、101・・・筐体、102・・・筐体、103・・・エンドキャップ、104・・・表示部、104a・・・窓部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の体温を測定する電子体温計であって、
測定により得られた体温情報を表示する表示手段と、
測定により得られた体温情報を時刻情報と対応付けて格納する格納手段と、
今回の測定により得られた体温情報と、前記格納手段に格納された、前回の測定により得られた体温情報とを用いて、体温差と単位時間あたりの体温の変化量とを算出する算出手段と、を備え、
前記表示手段は、前記算出手段により算出された前記体温差と前記単位時間あたりの体温の変化量とに応じた、予め定められた傾きを有する識別子を、今回の測定により得られた体温情報とともに、表示することを特徴とする電子体温計。
【請求項2】
前記表示手段は、前記体温差が予め定められた閾値以上であった場合、あるいは、前記単位時間あたりの体温の変化量が予め定められた閾値以上であった場合に、前記識別子である矢印を、前記体温情報の表示方向に対して、上向きまたは下向きに表示することを特徴とする請求項1に記載の電子体温計。
【請求項3】
前記表示手段は、前記体温差が予め定められた範囲にあり、かつ前記単位時間あたりの体温の変化量が予め定められた閾値未満であった場合に、前記識別子である矢印を、前記体温情報の方向に対して、斜め上向きまたは斜め下向きに表示することを特徴とする請求項1に記載の電子体温計。
【請求項4】
前記表示手段は、前記体温差が予め定められた閾値未満であり、かつ、前回の測定と今回の測定との時間差が、所定時間以内ではない場合に、前記識別子である矢印を、前記体温情報の表示方向に対して、水平方向に表示することを特徴とする請求項1に記載の電子体温計。
【請求項5】
前記表示手段は、前記体温差が予め定められた閾値未満であり、かつ、前回の測定と今回の測定との時間差が、所定時間以内である場合に、前記識別子である矢印の表示を行わないことを特徴とする請求項4に記載の電子体温計。
【請求項6】
被検者の体温を測定する電子体温計の表示制御方法であって、
測定により得られた体温情報を表示する表示工程と、
測定により得られた体温情報を時刻情報と対応付けて格納手段に格納する格納工程と、
今回の測定により得られた体温情報と、前記格納手段に格納された、前回の測定により得られた体温情報とを用いて、体温差と単位時間あたりの体温の変化量とを算出する算出工程と、を備え、
前記表示工程は、前記算出工程において算出された前記体温差と前記単位時間あたりの体温の変化量とに応じた、予め定められた傾きを有する識別子を、今回の測定により得られた体温情報とともに、表示することを特徴とする電子体温計の表示制御方法。
【請求項7】
請求項6に記載の表示制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを格納したコンピュータ読取可能な記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−68487(P2013−68487A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206534(P2011−206534)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)