電子光学機器
【課題】 コンピュータ制御された電子光学機器において、電子ビーム軌道を可視化することにより操作性を向上させる。
【解決手段】 電子光学系の設計値及び/又は軸調整データに基づいて作成される電子ビーム軸軌道の内部データと、電子光学系の設定パラメータとに基づいて電子ビーム軌道を計算する演算手段と、前記演算手段により求められた前記電子ビーム軌道を表示する表示手段とを備え、変更された設定パラメータを読み取り、電子ビーム軌道をリアルタイムでシミュレーション計算し、可視化して表示する。
【解決手段】 電子光学系の設計値及び/又は軸調整データに基づいて作成される電子ビーム軸軌道の内部データと、電子光学系の設定パラメータとに基づいて電子ビーム軌道を計算する演算手段と、前記演算手段により求められた前記電子ビーム軌道を表示する表示手段とを備え、変更された設定パラメータを読み取り、電子ビーム軌道をリアルタイムでシミュレーション計算し、可視化して表示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過電子顕微鏡や走査電子顕微鏡などの電子光学機器に係わり、特にコンピュータ制御により操作する装置の操作性を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
試料に電子線を照射して観察や分析等を行う電子光学機器としては、透過型電子顕微鏡や走査型電子顕微鏡等があるが、とりわけ透過型電子顕微鏡(以下、電子顕微鏡)は高い空間分解能を持つため、極微小領域の材料評価に多く利用されている。電子顕微鏡は高い空間分解能を持つだけでなく、多くの種類の情報が得られることも特徴である。例えば、比較的大きなビーム径の電子線を試料に照射して透過した電子のコントラストを見る透過電子顕微鏡像を得る透過電子顕微鏡モードや、電子線を細く絞って試料を走査し、透過電子顕微鏡像を得る走査透過電子顕微鏡モードがある。また、結晶性の試料であれば、電子レンズの使用条件を変えて回折図形を得る回折モードにもできる。さらに、X線分析装置や電子分光装置を付加して、元素分析や化学状態分析を行うことも可能である。
【0003】
上記のように様々な使用法があるため、電子顕微鏡を使用目的に合った状態に正しく設定したり、顕微鏡像を表示させてビームアライメント(軸合わせ)装置や非点補正装置を充分に調整することが重要である。しかし、電子顕微鏡には、多くの電子レンズ、ビームアライメント装置、絞りなどが構成されているので、これらを正しく調整するのは簡単ではない。そのため、特開2003-331773号公報に開示されているように、ロンチグラムを表示させて、操作者がロンチグラムを観察しながら非点補正や軸合わせを簡単に行えるようにした装置もある。また、実開昭60-129064号公報に示されるように、電子顕微鏡の電子ビーム偏向系の動作状態または電子レンズ系による観察モードを電子線の軌跡と共に図形表示するようにして、操作者が装置状態を理解しやすいようにした装置もある。
【特許文献1】特開2003-331773号公報
【特許文献2】実開昭60-129064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように電子顕微鏡は近年高度な情報を得ることが可能となってきたため、その操作には装置の原理と動作に深い理解が益々要求されるようになってきている。そのため、操作の習得に熟練を必要とし初心者には敷居の高い装置となっている。
【0005】
代表的な例を挙げると、電子顕微鏡の軸合わせを行う時、電子ビームが観察視野(蛍光板上またはTV画面上等)から外れていることがある。このような状況になると、電子ビームがどの位置にあるのか、電子ビームが見えない原因が何であるのかを突き止めるために、電子顕微鏡の初心者はもとより熟練者でも多くの時間を費やしてしまうことがままある。
【0006】
上述の特開2003-331773号公報に示されているロンチグラムを利用する方法は、透過電子顕微鏡像を得るモードと走査透過電子顕微鏡像を得るモードを切換えた時にも簡単に非点補正や軸調整が行える点で便利であるが、電子ビーム軌道そのものの状態を知ることができないので、様々な使用目的に対する装置の設定状態を知るには不十分である。また、実開昭60-129064号公報に示される装置では、電子ビームの軌跡が表示されるようになっている点で操作者にとって分かりやすいが、操作者の摘子操作にあわせて、例えば偏向コイルが励磁されている状態か否かの状態表示とそれに伴う原理的光線図を模式的に表示のみであり、正確な電子ビーム軌道を知りたいという課題は解決されていない。
【0007】
本発明は、上記問題を解決することを目的としてなされたもので、電子光学理論を応用して電子ビーム軌道をリアルタイムでシミュレーション計算し、可視化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の問題を解決するために、本発明は、
試料に電子線を照射して観察や分析等を行う電子光学機器であって、電子光学系を制御するための制御手段と、前記電子光学系の設定パラメータを読み取る手段を有し、
前記電子光学系の設計値及び/又は軸調整データに基づいて計算される電子ビーム軌道計算に必要な内部データと前記電子光学系の設定パラメータとに基づいて電子ビーム軌道を計算する演算手段と、前記演算手段により求められた前記電子ビーム軌道を表示する表示手段とを備え、
電子ビーム軌道を前記演算手段で再計算により求めて、前記表示手段により可視化して表示することを特徴とする。
【0009】
また本発明は、予め求められている前記内部データを記憶する記憶手段を備え、前記記憶手段から読み出された前記内部データと前記電子光学系の設定パラメータとに基づいて前記演算手段により電子ビーム軌道を計算し、前記表示手段により可視化して表示することを特徴とする。
【0010】
また本発明は、前記電子光学系の設計値及び/又は軸調整データに基づいて計算される電子ビーム軌道計算に必要な内部データを作成する作成手段を備え、前記作成手段により作成された前記内部データと前記電子光学系の設定パラメータとに基づいて前記演算手段により電子ビーム軌道を計算し、前記表示手段により可視化して表示することを特徴とする。
【0011】
また本発明は、前記電子光学系の設定パラメータの少なくともひとつが変更されたことを検出する手段を備え、前記電子光学系の設定パラメータの少なくともひとつが変更されたことを検出すると、前記電子光学系の設定パラメータを読み取り、電子ビーム軌道を前記演算手段で再計算により求めて、前記表示手段により可視化して表示することを特徴とする。
【0012】
また本発明は、予め設定された一定時間間隔で、前記電子光学系の設定パラメータを読み取り、電子ビーム軌道を前記演算手段で再計算により求めて、前記表示手段により可視化して表示することを特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記内部データの少なくともひとつは、前記電子光学機器の電子光学系設計パラメータ値を使用して作成される、レンズ形状と位置座標の関係及び偏向器形状と位置座標の関係を表すメッシュデータであることを特徴とする。
【0014】
また本発明は、前記内部データの少なくともひとつは、前記メッシュデータと電子光学系設計パラメータ値及びレンズ設計パラメータ値を使用して、有限要素法で計算される軸上電位と軸上磁場であることを特徴とする。
【0015】
また本発明は、前記有限要素法で計算される軸上電位と軸上磁場から電子ビームの具体的な基準軌道を計算する手法として、Runge-Kutta法を用いることを特徴とする。
【0016】
また本発明は、前記内部データの少なくともひとつは、前記電子光学系の電圧軸、電流軸等の軸調整データから計算された、前記電子光学系の機械的なレンズ中心のずれ量であることを特徴とする。
【0017】
また本発明は、前記電子ビーム軌道を表示する手段は、電子ビーム軸の軌道を表す光軸軌道、または絞りによって決定される複数の軌道を表す境界軌道、または物面の一点から出た全ての電子線が一点で交差することを表現できる複数の軌道を表す結像軌道、または物面で入射角が同じ全ての電子線が回折面(焦点面)で一点に交差することを表現できる複数の軌道を表す回折軌道、のうちの少なくともひとつを表示する手段を備えることを特徴とする。
【0018】
また本発明は、前記電子ビーム軌道の付帯情報として、任意の位置での電子ビーム径、レンズ主面位置、像形成位置(像面位置)、回折像形成位置(焦点位置)、像回転角度、クロスオーバー位置、レンズ軸上電場、レンズ軸上磁場のうちの少なくともひとつを表示する手段を備えることを特徴とする。
【0019】
また本発明は、前記電子ビーム軌道を表示する手段は、鏡筒断面と直行して断面円中心を軸中心とする座標(Z)と、鏡筒断面方向に平行で断面円中心を原点とする回転座標系ベクトルの距離(R)との比率(Z-R比率)を任意に設定する手段を備えることを特徴とする。
【0020】
また本発明は、前記電子光学系の設定パラメータと前記演算手段により求められた前記電子ビーム軌道とから、電子ビームが電子光学系の途中で遮蔽される障害原因を検知して警告を表示する手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、リアルタイムで電子ビーム軌道を可視化することが可能となるので、様々な使用目的にあわせて装置を正しく設定する操作を容易に行うことができる。また、装置調整作業や試料観察などにおいて、操作者の装置操作に対する理解を促進することができる。また、警告機能を搭載することにより、電子ビームが遮断される等の原因を操作者が簡単に突き止められるようになり操作性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下図面を参照しながら、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は本発明に基づく電子顕微鏡の構成例の概略を示したものである。図1において、電子顕微鏡の鏡筒1内に配置された電子銃2から発生した電子ビーム3は、図示しない加速管で加速され集束レンズ系5により集束されて試料6に照射される。電子銃アライメント4は、電子銃2から発生し加速されて集束レンズ系5を通過する電子ビームの軸合わせのために設けられている。集束レンズ絞り6は電子ビーム外周部の収差の大きい部分を遮蔽するために設けられている。なお、集束レンズ絞り6は複数の穴径の異なる開口部を有しており、各種モードに応じた穴径を選択し、絞り駆動電源21で開口部を光軸上に設定するようになっている。集束レンズアライメントコイルは、集束レンズ系5によって集束された電子ビームの軸ずれを補正するために設けられている。
【0023】
試料を透過した電子ビームは対物レンズ系10で集束され、さらに中間レンズ系12と投影レンズ系14で構成される結像レンズ系を通過し、蛍光板16上に顕微鏡像15が投影される。対物レンズ10の上方には、対物レンズ絞り9が配置され、電子ビーム外周部の収差の大きい部分を遮蔽するようになっている。対物レンズ絞り9は、複数の穴径の異なる開口部を有しており、各種モードに応じた穴径を選択し、絞り駆動電源21で開口部を光軸上に設定するようになっている。投影レンズアライメントコイル13は、電子ビームの軸合わせのために用いられる。
【0024】
制限視野絞り11は、回折モードで回折図形を得る場合に、試料で回折された電子ビームの試料上の範囲を制限するために用いられる。すなわち、制限視野絞り11の位置は対物レンズの像面となっているので、
試料上の視野範囲=制限視野絞り穴径÷対物レンズの拡大倍率
とすることができる。制限視野絞り11は複数の穴径の異なる開口部を有しており、選択する視野範囲に応じた穴径を選択し、絞り駆動電源21で開口部を光軸上に設定するようになっている。
【0025】
電子銃2には高電圧電源18から所望の高電圧が印加される。集束レンズ系5、対物レンズ系10、中間レンズ系12、投影レンズ系14にはレンズ電源20から励磁電流が供給される。電子銃アライメントコイル4、集束レンズアライメントコイル7、投影レンズアライメントコイル14には、軸合わせ操作に伴って必要な電流がアライメント電源19から供給され、各コイルから発生した磁場により電子ビームが偏向されるようになっている。集束レンズ絞り6、対物レンズ絞り9、制限視野絞り11は、絞り駆動電源21によって異なる穴径の開口部を光軸上に設定する。
【0026】
電子検出器17は検出器電源22によって駆動され、必要に応じて所定の位置に設定される。電子検出器17で検出された信号は、画像信号増幅器23に送られる。
【0027】
高電圧電源18、アライメント電源19、レンズ電源20、絞り駆動電源21、検出器電源22、画像信号増幅器23は、インタフェース25を介してコンピュータ24に接続されている。コンピュータ24には、液晶モニタなどの表示装置28、キーボード、マウス等の入力装置29が接続されている。また、コンピュータ24内部には、リアルタイムで電子軌道を可視化し表示するための可視化プログラム26が格納され、記憶部27には、電子軌道を計算するために使用される内部データが格納されている。
【0028】
なお、記憶部27格納される内部データは、予め作成されデータテーブルのような形で記憶されていても良いし、必要な時にその都度計算しても良い。従って、全ての内部データをその都度計算で求めるようにすれば、記憶部27は必ずしも必要ではない。
【0029】
実際の電子顕微鏡においては、上述した以外にも補助的レンズ、非点補正コイル、像移動コイルなどが配置されているが、ここでは概略の説明にとどめるため、これらの説明は省略している。また、実際の装置ではアナログ回路とデジタル回路が混在しているため、A/D変換器やD/A変換器が配置されているが、図を簡単にするために省略されている。
【0030】
本発明の動作の概要は、コンピュータ24内の可視化プログラム26が動作し、電子顕微鏡からインタフェース25を介して、現在の加速電圧、レンズ、アライメントコイル絞りなどの設定パラメータを読み取り、電子光学系の設計値及び/又は軸調整データに基づいて計算される電子ビーム軌道計算に必要な内部データとから電子ビーム軌道を計算し、表示装置に表示することである。
【0031】
上記の電子ビーム軌道を求めるために、電子光学系の軸上電位と軸上磁場を計算する必要があり、この計算手法として本発明では有限要素法(FEM:Finite Element Method)を使用しているが、本発明がこれに限定されるわけではなく、差分法(FDM:Finite Difference Method)、境界要素法(BEM:Boundary Element Method)など他の手法を用いても良い。さらに、軸上電位と軸上磁場から具体的な電子ビームの基準軌道を求める数値計算手法として、Runge-Kutta法を使用しているが、本発明がこれに限定されるわけではなく、他の数値計算手法を用いても良い。
【0032】
次に、図1に示した電子顕微鏡の構成例において、電子光学系の設計値や調整データに基づいて計算される電子ビーム軸軌道の内部データについて、詳細に説明する。以下に説明する内部データは、電子光学系の設計値と軸調整データに基づいて予め作成され、コンピュータ24内部の記憶部27に格納されている。
【0033】
前記内部データのひとつは、電子光学機器の電子光学系設計から得られるパラメータ値を使用して作成される、電子光学系のメッシュデータである。図8にメッシュデータの例を示す。メッシュで分割された各領域は有限要素法を用いる解析の単位領域である。この処理において電子光学系設計から得られる必要なパラメータ値はレンズ形状及び偏向器形状と位置座標などである。
【0034】
別の前記内部データのひとつは、前記メッシュデータと電子光学系設計及びレンズデータ設計から得られるパラメータ値を使用して、有限要素法で計算される軸上電位と軸上磁場である。図9に軸上磁場のデータ例を示す。この処理において電子光学系設計から得られる必要なパラメータ値は、レンズコイルの巻き数(磁界型レンズの場合)、アライメントコイルの偏向角(コイルに流す電流の変化に対する偏向角度)、光学系物面座標(タングステン系電子銃ではクロスオーバー座標、電界放射系の電子銃ではエミッタ座標)などである。またこの処理においてレンズデータから得られる必要なパラメータ値は、各電子ビーム径と各結像レンズ系の設定条件の組み合わせにおける各レンズ電流値、回折モードにおいて各カメラ長モードに対応した結像レンズ系設定条件の組み合わせにおける各レンズ電流値などである。
【0035】
また別の前記内部データのひとつは、電子光学系の電圧軸や電流軸等の軸調整データから計算された、前記電子光学系の機械的なレンズ中心のずれ量である。この処理において電子光学系の調整データから得られる必要なデータは、対物レンズの調整電流値、各アライメントコイルの調整電流値などがある。
【0036】
次に、電子ビーム軌道の表示設定条件について説明する。操作者によって設定される表示設定条件には、表示軌道形式、光学系表示モード、Z−R比率がある。表示軌道形式にはビーム軸表示形式(光軸軌道用)、ビーム束表示形式(境界軌道用)、結像/回折表示(結像軌道及び回折軌道用)がある。光学系表示モードには、全光学系表示モード、照射系表示モード、結像系表示モードなどが有る。またZ-R比率を設定することにより、一般にR軸に比べて変化量の小さいZ軸の変化量を操作者が自由に強調できる。Z軸とR軸の関係を図7に示す。Zは鏡筒断面と直行して断面円中心を軸中心とする座標を示し、Rは鏡筒断面方向に平行で断面円中心を原点とする回転座標系ベクトルの距離を表す。従って電子ビーム軌道は、図7のZ軸とR軸を含む平面内で表される。
【0037】
図3に照射系表示モードにおけるビーム軸(光軸軌道)表示とビーム束(境界軌道)表示の例、図4に結像系表示モードにおけるビーム軸(光軸軌道)表示とビーム束(境界軌道)表示の例、図5に結像系表示モードにおける結像/回折表示の例をそれぞれ示す。
【0038】
次に、電子ビーム軌道の付帯情報表示について説明する。本発明においては、上記した電子ビームの軌道表示を行うために求めた電子光学系及び電子ビーム軌道に関する詳細なデータを、付帯情報として表示することができる。これら付帯情報としては、任意の位置での電子ビーム径(特に試料面上)、レンズ主面位置、像形成位置(像面位置)、回折像形成位置(焦点位置)、像回転角度、クロスオーバー位置、レンズ軸上電場、レンズ軸上磁場などが有る。図10に結像系表示モードにおける電子ビーム軌道の付帯情報を表示した例を示す。図中の四角形で囲まれた「電子ビーム径」、「クロスオーバー位置」、「物面位置」、「像面位置」が付帯情報として表示されている。さらに、“選択したレンズの付帯情報表示範囲”として示されている領域をマウス等で指定すると、図11に示すように、選択したレンズ(図10の例では第一中間レンズ)に関する詳細な付帯情報が表示される。図11においては軸上電位を表示しているが、選択の切替えにより軸上磁場を表示することができる。
【0039】
次に、図2に基づいて、電子顕微鏡を例にとり本発明の動作フローを各ステップに沿って説明する。なお、予め作成された前記内部データは、可視化プログラム26が動作する前にコンピュータ24内部の記憶部27に格納されているものとする。
【0040】
(S1)電子ビーム軌道可視化装置の起動と共に可視化装置の初期化と可視化プログラムの起動が行われる。操作者は、入力装置29を用いて電子ビーム軌道の表示設定条件を入力する。
(S2、S3、S4)電子光学系の設定パラメータが操作者によって変更されるか可視化装置停止命令が有るまで現軌道表示状態を保つ。 操作者による電子光学系の設定パラメータの変更が検出されたらステップS5へ進む。
(S5)電子光学系の設定パラメータの変更が電子レンズの場合はステップS6へ進み、偏向器の場合はステップS7へ進む。
(S6)設定パラメータが変更された電子レンズのコイル電流値とメッシュデータ(内部データとして保存されているもの)とから、電子光学系の軸上電位、軸上磁場を有限要素法で計算する。日常操作においてコイル電流値が頻繁に変更される可能性の有る電子レンズの例としては、対物レンズ、集束レンズ、中間レンズ等が挙げられる。
(S7)設定パラメータが変更された偏向器について、更新されたコイル電流値に対する偏向角度を内部データに基づいて求め、設定パラメータを更新する。
(S8)ステップS6またはステップS7において得られた軸上電位及び軸上磁場と電子光学系の設定パラメータから、基準軌道をRunge-Kutta法で数値計算する。なおこのステップでの処理においては、加速電圧値、各偏向器の偏向角度(コイル電流値から決まる)が必要である。
(S9)ステップS8で得られた基準軌道から電子光学系の近軸諸量を計算する。ここで求める近軸諸量の具体例としては、物面位置座標、像面位置座標、倍率、像回転角、焦点距離、焦点位置座標、主面位置座標、主面間隔などがある。
(S10)ステップS8で得られた基準軌道から、各種の電子ビーム軌道を計算する。各種電子ビーム軌道の例としては、光軸軌道、境界軌道、結像軌道、回折軌道などがある。
(S11)ステップS1で操作者が指定した表示軌道形式、光学系表示モード、Z-R比率に従って、電子ビーム軌道の表示が更新される。
(S12)電子ビーム軌道の付帯情報表示を更新する。
(S13)計算の結果、電子ビームが観察視野にあるか否かを判断する。視野上にある場合はステップS2に戻り、電子ビームが観察視野に現われないことが検知された場合はステップS14に進む。
(S14)電子ビームが観察視野に現われない障害原因が電子光学系のどの設定パラメータにあるかを操作者に知らせる表示を行い、ステップS2に戻り設定パラメータの変更待ちとなる。
【0041】
ステップS14における障害原因となる設定パラメータとしては、各偏向コイル、各絞りなどが有る。図6に、制限視野絞りによって電子ビームが遮断されている場合の表示例を示す。制限視野絞りの名前(四角で囲んで示す)とそれに対応する電子光学系の中の制限視野絞りを表す部分が、例えば赤色等の警告色を用いた表示に変更される。または変更表示される部分の点滅等を行って目立たせても良いし、警告色への変更と変更表示される部分の点滅等を同時に行っても良い。
【0042】
上述の動作フローは、発明を実施する電子顕微鏡が電子光学系の設定パラメータの少なくともひとつが変更されたことを検出する手段を備えていることを前提とし、操作者によって電子光学系の設定パラメータの少なくともひとつが変更されたことを検出すると、電子光学系の設定パラメータを読み取り、電子ビーム軌道の再計算と再表示を行うようにしている。
【0043】
しかし、必ずしも発明を実施する電子顕微鏡が電子光学系の設定パラメータの少なくともひとつが変更されたことを検出する手段を備えている必要は無く、予め設定された一定時間間隔で、前記電子光学系の設定パラメータを読み取り、設定パラメータが変更されているか否か判断するなどして、必要に応じて電子ビーム軌道の再計算と再表示を行うようにすることも、本発明の技術範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係わる電子顕微鏡の概略の構成例を示す図。
【図2】本発明の動作フローを説明するための図。
【図3】照射系表示モードにおけるビーム軸(光軸軌道)表示とビーム束(境界軌道)表示の例を示す図。
【図4】結像系表示モードにおけるビーム軸(光軸軌道)表示とビーム束(境界軌道)表示の例を示す図。
【図5】結像系表示モードにおける結像/回折表示の例を示す図。
【図6】電子ビームが観察視野に無いとき、障害原因パラメータを操作者に報告する表示例を示す図。
【図7】Z-R比率の座標軸のとり方を説明するための図。
【図8】メッシュデータの例を示す図。
【図9】軸上磁場のデータ例を示す図。
【図10】結像系モードにおける付帯情報の表示例を示す図。
【図11】選択したレンズの詳細な付帯情報の表示例を示す図。
【符号の説明】
【0045】
1:鏡筒 16:蛍光板
2:電子銃 17:電子検出器
3:電子線 18:高電圧電源
4:電子銃アライメントコイル 19:アライメント電源
5:集束レンズ系 20:レンズ電源
6:集束レンズ絞り 21:絞り駆動電源
7:集束レンズアライメントコイル 22:検出器電源
8:試料 23:画像信号増幅器
9:対物レンズ絞り 24:コンピュータ
10:対物レンズ 25:インタフェース
11:制限視野絞り 26:表示プログラム
12:中間レンズ系 27:記憶部
13:投影レンズアライメントコイル 28:表示装置
14:投影レンズ系 29:入力装置
15:顕微鏡像
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過電子顕微鏡や走査電子顕微鏡などの電子光学機器に係わり、特にコンピュータ制御により操作する装置の操作性を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
試料に電子線を照射して観察や分析等を行う電子光学機器としては、透過型電子顕微鏡や走査型電子顕微鏡等があるが、とりわけ透過型電子顕微鏡(以下、電子顕微鏡)は高い空間分解能を持つため、極微小領域の材料評価に多く利用されている。電子顕微鏡は高い空間分解能を持つだけでなく、多くの種類の情報が得られることも特徴である。例えば、比較的大きなビーム径の電子線を試料に照射して透過した電子のコントラストを見る透過電子顕微鏡像を得る透過電子顕微鏡モードや、電子線を細く絞って試料を走査し、透過電子顕微鏡像を得る走査透過電子顕微鏡モードがある。また、結晶性の試料であれば、電子レンズの使用条件を変えて回折図形を得る回折モードにもできる。さらに、X線分析装置や電子分光装置を付加して、元素分析や化学状態分析を行うことも可能である。
【0003】
上記のように様々な使用法があるため、電子顕微鏡を使用目的に合った状態に正しく設定したり、顕微鏡像を表示させてビームアライメント(軸合わせ)装置や非点補正装置を充分に調整することが重要である。しかし、電子顕微鏡には、多くの電子レンズ、ビームアライメント装置、絞りなどが構成されているので、これらを正しく調整するのは簡単ではない。そのため、特開2003-331773号公報に開示されているように、ロンチグラムを表示させて、操作者がロンチグラムを観察しながら非点補正や軸合わせを簡単に行えるようにした装置もある。また、実開昭60-129064号公報に示されるように、電子顕微鏡の電子ビーム偏向系の動作状態または電子レンズ系による観察モードを電子線の軌跡と共に図形表示するようにして、操作者が装置状態を理解しやすいようにした装置もある。
【特許文献1】特開2003-331773号公報
【特許文献2】実開昭60-129064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように電子顕微鏡は近年高度な情報を得ることが可能となってきたため、その操作には装置の原理と動作に深い理解が益々要求されるようになってきている。そのため、操作の習得に熟練を必要とし初心者には敷居の高い装置となっている。
【0005】
代表的な例を挙げると、電子顕微鏡の軸合わせを行う時、電子ビームが観察視野(蛍光板上またはTV画面上等)から外れていることがある。このような状況になると、電子ビームがどの位置にあるのか、電子ビームが見えない原因が何であるのかを突き止めるために、電子顕微鏡の初心者はもとより熟練者でも多くの時間を費やしてしまうことがままある。
【0006】
上述の特開2003-331773号公報に示されているロンチグラムを利用する方法は、透過電子顕微鏡像を得るモードと走査透過電子顕微鏡像を得るモードを切換えた時にも簡単に非点補正や軸調整が行える点で便利であるが、電子ビーム軌道そのものの状態を知ることができないので、様々な使用目的に対する装置の設定状態を知るには不十分である。また、実開昭60-129064号公報に示される装置では、電子ビームの軌跡が表示されるようになっている点で操作者にとって分かりやすいが、操作者の摘子操作にあわせて、例えば偏向コイルが励磁されている状態か否かの状態表示とそれに伴う原理的光線図を模式的に表示のみであり、正確な電子ビーム軌道を知りたいという課題は解決されていない。
【0007】
本発明は、上記問題を解決することを目的としてなされたもので、電子光学理論を応用して電子ビーム軌道をリアルタイムでシミュレーション計算し、可視化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の問題を解決するために、本発明は、
試料に電子線を照射して観察や分析等を行う電子光学機器であって、電子光学系を制御するための制御手段と、前記電子光学系の設定パラメータを読み取る手段を有し、
前記電子光学系の設計値及び/又は軸調整データに基づいて計算される電子ビーム軌道計算に必要な内部データと前記電子光学系の設定パラメータとに基づいて電子ビーム軌道を計算する演算手段と、前記演算手段により求められた前記電子ビーム軌道を表示する表示手段とを備え、
電子ビーム軌道を前記演算手段で再計算により求めて、前記表示手段により可視化して表示することを特徴とする。
【0009】
また本発明は、予め求められている前記内部データを記憶する記憶手段を備え、前記記憶手段から読み出された前記内部データと前記電子光学系の設定パラメータとに基づいて前記演算手段により電子ビーム軌道を計算し、前記表示手段により可視化して表示することを特徴とする。
【0010】
また本発明は、前記電子光学系の設計値及び/又は軸調整データに基づいて計算される電子ビーム軌道計算に必要な内部データを作成する作成手段を備え、前記作成手段により作成された前記内部データと前記電子光学系の設定パラメータとに基づいて前記演算手段により電子ビーム軌道を計算し、前記表示手段により可視化して表示することを特徴とする。
【0011】
また本発明は、前記電子光学系の設定パラメータの少なくともひとつが変更されたことを検出する手段を備え、前記電子光学系の設定パラメータの少なくともひとつが変更されたことを検出すると、前記電子光学系の設定パラメータを読み取り、電子ビーム軌道を前記演算手段で再計算により求めて、前記表示手段により可視化して表示することを特徴とする。
【0012】
また本発明は、予め設定された一定時間間隔で、前記電子光学系の設定パラメータを読み取り、電子ビーム軌道を前記演算手段で再計算により求めて、前記表示手段により可視化して表示することを特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記内部データの少なくともひとつは、前記電子光学機器の電子光学系設計パラメータ値を使用して作成される、レンズ形状と位置座標の関係及び偏向器形状と位置座標の関係を表すメッシュデータであることを特徴とする。
【0014】
また本発明は、前記内部データの少なくともひとつは、前記メッシュデータと電子光学系設計パラメータ値及びレンズ設計パラメータ値を使用して、有限要素法で計算される軸上電位と軸上磁場であることを特徴とする。
【0015】
また本発明は、前記有限要素法で計算される軸上電位と軸上磁場から電子ビームの具体的な基準軌道を計算する手法として、Runge-Kutta法を用いることを特徴とする。
【0016】
また本発明は、前記内部データの少なくともひとつは、前記電子光学系の電圧軸、電流軸等の軸調整データから計算された、前記電子光学系の機械的なレンズ中心のずれ量であることを特徴とする。
【0017】
また本発明は、前記電子ビーム軌道を表示する手段は、電子ビーム軸の軌道を表す光軸軌道、または絞りによって決定される複数の軌道を表す境界軌道、または物面の一点から出た全ての電子線が一点で交差することを表現できる複数の軌道を表す結像軌道、または物面で入射角が同じ全ての電子線が回折面(焦点面)で一点に交差することを表現できる複数の軌道を表す回折軌道、のうちの少なくともひとつを表示する手段を備えることを特徴とする。
【0018】
また本発明は、前記電子ビーム軌道の付帯情報として、任意の位置での電子ビーム径、レンズ主面位置、像形成位置(像面位置)、回折像形成位置(焦点位置)、像回転角度、クロスオーバー位置、レンズ軸上電場、レンズ軸上磁場のうちの少なくともひとつを表示する手段を備えることを特徴とする。
【0019】
また本発明は、前記電子ビーム軌道を表示する手段は、鏡筒断面と直行して断面円中心を軸中心とする座標(Z)と、鏡筒断面方向に平行で断面円中心を原点とする回転座標系ベクトルの距離(R)との比率(Z-R比率)を任意に設定する手段を備えることを特徴とする。
【0020】
また本発明は、前記電子光学系の設定パラメータと前記演算手段により求められた前記電子ビーム軌道とから、電子ビームが電子光学系の途中で遮蔽される障害原因を検知して警告を表示する手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、リアルタイムで電子ビーム軌道を可視化することが可能となるので、様々な使用目的にあわせて装置を正しく設定する操作を容易に行うことができる。また、装置調整作業や試料観察などにおいて、操作者の装置操作に対する理解を促進することができる。また、警告機能を搭載することにより、電子ビームが遮断される等の原因を操作者が簡単に突き止められるようになり操作性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下図面を参照しながら、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は本発明に基づく電子顕微鏡の構成例の概略を示したものである。図1において、電子顕微鏡の鏡筒1内に配置された電子銃2から発生した電子ビーム3は、図示しない加速管で加速され集束レンズ系5により集束されて試料6に照射される。電子銃アライメント4は、電子銃2から発生し加速されて集束レンズ系5を通過する電子ビームの軸合わせのために設けられている。集束レンズ絞り6は電子ビーム外周部の収差の大きい部分を遮蔽するために設けられている。なお、集束レンズ絞り6は複数の穴径の異なる開口部を有しており、各種モードに応じた穴径を選択し、絞り駆動電源21で開口部を光軸上に設定するようになっている。集束レンズアライメントコイルは、集束レンズ系5によって集束された電子ビームの軸ずれを補正するために設けられている。
【0023】
試料を透過した電子ビームは対物レンズ系10で集束され、さらに中間レンズ系12と投影レンズ系14で構成される結像レンズ系を通過し、蛍光板16上に顕微鏡像15が投影される。対物レンズ10の上方には、対物レンズ絞り9が配置され、電子ビーム外周部の収差の大きい部分を遮蔽するようになっている。対物レンズ絞り9は、複数の穴径の異なる開口部を有しており、各種モードに応じた穴径を選択し、絞り駆動電源21で開口部を光軸上に設定するようになっている。投影レンズアライメントコイル13は、電子ビームの軸合わせのために用いられる。
【0024】
制限視野絞り11は、回折モードで回折図形を得る場合に、試料で回折された電子ビームの試料上の範囲を制限するために用いられる。すなわち、制限視野絞り11の位置は対物レンズの像面となっているので、
試料上の視野範囲=制限視野絞り穴径÷対物レンズの拡大倍率
とすることができる。制限視野絞り11は複数の穴径の異なる開口部を有しており、選択する視野範囲に応じた穴径を選択し、絞り駆動電源21で開口部を光軸上に設定するようになっている。
【0025】
電子銃2には高電圧電源18から所望の高電圧が印加される。集束レンズ系5、対物レンズ系10、中間レンズ系12、投影レンズ系14にはレンズ電源20から励磁電流が供給される。電子銃アライメントコイル4、集束レンズアライメントコイル7、投影レンズアライメントコイル14には、軸合わせ操作に伴って必要な電流がアライメント電源19から供給され、各コイルから発生した磁場により電子ビームが偏向されるようになっている。集束レンズ絞り6、対物レンズ絞り9、制限視野絞り11は、絞り駆動電源21によって異なる穴径の開口部を光軸上に設定する。
【0026】
電子検出器17は検出器電源22によって駆動され、必要に応じて所定の位置に設定される。電子検出器17で検出された信号は、画像信号増幅器23に送られる。
【0027】
高電圧電源18、アライメント電源19、レンズ電源20、絞り駆動電源21、検出器電源22、画像信号増幅器23は、インタフェース25を介してコンピュータ24に接続されている。コンピュータ24には、液晶モニタなどの表示装置28、キーボード、マウス等の入力装置29が接続されている。また、コンピュータ24内部には、リアルタイムで電子軌道を可視化し表示するための可視化プログラム26が格納され、記憶部27には、電子軌道を計算するために使用される内部データが格納されている。
【0028】
なお、記憶部27格納される内部データは、予め作成されデータテーブルのような形で記憶されていても良いし、必要な時にその都度計算しても良い。従って、全ての内部データをその都度計算で求めるようにすれば、記憶部27は必ずしも必要ではない。
【0029】
実際の電子顕微鏡においては、上述した以外にも補助的レンズ、非点補正コイル、像移動コイルなどが配置されているが、ここでは概略の説明にとどめるため、これらの説明は省略している。また、実際の装置ではアナログ回路とデジタル回路が混在しているため、A/D変換器やD/A変換器が配置されているが、図を簡単にするために省略されている。
【0030】
本発明の動作の概要は、コンピュータ24内の可視化プログラム26が動作し、電子顕微鏡からインタフェース25を介して、現在の加速電圧、レンズ、アライメントコイル絞りなどの設定パラメータを読み取り、電子光学系の設計値及び/又は軸調整データに基づいて計算される電子ビーム軌道計算に必要な内部データとから電子ビーム軌道を計算し、表示装置に表示することである。
【0031】
上記の電子ビーム軌道を求めるために、電子光学系の軸上電位と軸上磁場を計算する必要があり、この計算手法として本発明では有限要素法(FEM:Finite Element Method)を使用しているが、本発明がこれに限定されるわけではなく、差分法(FDM:Finite Difference Method)、境界要素法(BEM:Boundary Element Method)など他の手法を用いても良い。さらに、軸上電位と軸上磁場から具体的な電子ビームの基準軌道を求める数値計算手法として、Runge-Kutta法を使用しているが、本発明がこれに限定されるわけではなく、他の数値計算手法を用いても良い。
【0032】
次に、図1に示した電子顕微鏡の構成例において、電子光学系の設計値や調整データに基づいて計算される電子ビーム軸軌道の内部データについて、詳細に説明する。以下に説明する内部データは、電子光学系の設計値と軸調整データに基づいて予め作成され、コンピュータ24内部の記憶部27に格納されている。
【0033】
前記内部データのひとつは、電子光学機器の電子光学系設計から得られるパラメータ値を使用して作成される、電子光学系のメッシュデータである。図8にメッシュデータの例を示す。メッシュで分割された各領域は有限要素法を用いる解析の単位領域である。この処理において電子光学系設計から得られる必要なパラメータ値はレンズ形状及び偏向器形状と位置座標などである。
【0034】
別の前記内部データのひとつは、前記メッシュデータと電子光学系設計及びレンズデータ設計から得られるパラメータ値を使用して、有限要素法で計算される軸上電位と軸上磁場である。図9に軸上磁場のデータ例を示す。この処理において電子光学系設計から得られる必要なパラメータ値は、レンズコイルの巻き数(磁界型レンズの場合)、アライメントコイルの偏向角(コイルに流す電流の変化に対する偏向角度)、光学系物面座標(タングステン系電子銃ではクロスオーバー座標、電界放射系の電子銃ではエミッタ座標)などである。またこの処理においてレンズデータから得られる必要なパラメータ値は、各電子ビーム径と各結像レンズ系の設定条件の組み合わせにおける各レンズ電流値、回折モードにおいて各カメラ長モードに対応した結像レンズ系設定条件の組み合わせにおける各レンズ電流値などである。
【0035】
また別の前記内部データのひとつは、電子光学系の電圧軸や電流軸等の軸調整データから計算された、前記電子光学系の機械的なレンズ中心のずれ量である。この処理において電子光学系の調整データから得られる必要なデータは、対物レンズの調整電流値、各アライメントコイルの調整電流値などがある。
【0036】
次に、電子ビーム軌道の表示設定条件について説明する。操作者によって設定される表示設定条件には、表示軌道形式、光学系表示モード、Z−R比率がある。表示軌道形式にはビーム軸表示形式(光軸軌道用)、ビーム束表示形式(境界軌道用)、結像/回折表示(結像軌道及び回折軌道用)がある。光学系表示モードには、全光学系表示モード、照射系表示モード、結像系表示モードなどが有る。またZ-R比率を設定することにより、一般にR軸に比べて変化量の小さいZ軸の変化量を操作者が自由に強調できる。Z軸とR軸の関係を図7に示す。Zは鏡筒断面と直行して断面円中心を軸中心とする座標を示し、Rは鏡筒断面方向に平行で断面円中心を原点とする回転座標系ベクトルの距離を表す。従って電子ビーム軌道は、図7のZ軸とR軸を含む平面内で表される。
【0037】
図3に照射系表示モードにおけるビーム軸(光軸軌道)表示とビーム束(境界軌道)表示の例、図4に結像系表示モードにおけるビーム軸(光軸軌道)表示とビーム束(境界軌道)表示の例、図5に結像系表示モードにおける結像/回折表示の例をそれぞれ示す。
【0038】
次に、電子ビーム軌道の付帯情報表示について説明する。本発明においては、上記した電子ビームの軌道表示を行うために求めた電子光学系及び電子ビーム軌道に関する詳細なデータを、付帯情報として表示することができる。これら付帯情報としては、任意の位置での電子ビーム径(特に試料面上)、レンズ主面位置、像形成位置(像面位置)、回折像形成位置(焦点位置)、像回転角度、クロスオーバー位置、レンズ軸上電場、レンズ軸上磁場などが有る。図10に結像系表示モードにおける電子ビーム軌道の付帯情報を表示した例を示す。図中の四角形で囲まれた「電子ビーム径」、「クロスオーバー位置」、「物面位置」、「像面位置」が付帯情報として表示されている。さらに、“選択したレンズの付帯情報表示範囲”として示されている領域をマウス等で指定すると、図11に示すように、選択したレンズ(図10の例では第一中間レンズ)に関する詳細な付帯情報が表示される。図11においては軸上電位を表示しているが、選択の切替えにより軸上磁場を表示することができる。
【0039】
次に、図2に基づいて、電子顕微鏡を例にとり本発明の動作フローを各ステップに沿って説明する。なお、予め作成された前記内部データは、可視化プログラム26が動作する前にコンピュータ24内部の記憶部27に格納されているものとする。
【0040】
(S1)電子ビーム軌道可視化装置の起動と共に可視化装置の初期化と可視化プログラムの起動が行われる。操作者は、入力装置29を用いて電子ビーム軌道の表示設定条件を入力する。
(S2、S3、S4)電子光学系の設定パラメータが操作者によって変更されるか可視化装置停止命令が有るまで現軌道表示状態を保つ。 操作者による電子光学系の設定パラメータの変更が検出されたらステップS5へ進む。
(S5)電子光学系の設定パラメータの変更が電子レンズの場合はステップS6へ進み、偏向器の場合はステップS7へ進む。
(S6)設定パラメータが変更された電子レンズのコイル電流値とメッシュデータ(内部データとして保存されているもの)とから、電子光学系の軸上電位、軸上磁場を有限要素法で計算する。日常操作においてコイル電流値が頻繁に変更される可能性の有る電子レンズの例としては、対物レンズ、集束レンズ、中間レンズ等が挙げられる。
(S7)設定パラメータが変更された偏向器について、更新されたコイル電流値に対する偏向角度を内部データに基づいて求め、設定パラメータを更新する。
(S8)ステップS6またはステップS7において得られた軸上電位及び軸上磁場と電子光学系の設定パラメータから、基準軌道をRunge-Kutta法で数値計算する。なおこのステップでの処理においては、加速電圧値、各偏向器の偏向角度(コイル電流値から決まる)が必要である。
(S9)ステップS8で得られた基準軌道から電子光学系の近軸諸量を計算する。ここで求める近軸諸量の具体例としては、物面位置座標、像面位置座標、倍率、像回転角、焦点距離、焦点位置座標、主面位置座標、主面間隔などがある。
(S10)ステップS8で得られた基準軌道から、各種の電子ビーム軌道を計算する。各種電子ビーム軌道の例としては、光軸軌道、境界軌道、結像軌道、回折軌道などがある。
(S11)ステップS1で操作者が指定した表示軌道形式、光学系表示モード、Z-R比率に従って、電子ビーム軌道の表示が更新される。
(S12)電子ビーム軌道の付帯情報表示を更新する。
(S13)計算の結果、電子ビームが観察視野にあるか否かを判断する。視野上にある場合はステップS2に戻り、電子ビームが観察視野に現われないことが検知された場合はステップS14に進む。
(S14)電子ビームが観察視野に現われない障害原因が電子光学系のどの設定パラメータにあるかを操作者に知らせる表示を行い、ステップS2に戻り設定パラメータの変更待ちとなる。
【0041】
ステップS14における障害原因となる設定パラメータとしては、各偏向コイル、各絞りなどが有る。図6に、制限視野絞りによって電子ビームが遮断されている場合の表示例を示す。制限視野絞りの名前(四角で囲んで示す)とそれに対応する電子光学系の中の制限視野絞りを表す部分が、例えば赤色等の警告色を用いた表示に変更される。または変更表示される部分の点滅等を行って目立たせても良いし、警告色への変更と変更表示される部分の点滅等を同時に行っても良い。
【0042】
上述の動作フローは、発明を実施する電子顕微鏡が電子光学系の設定パラメータの少なくともひとつが変更されたことを検出する手段を備えていることを前提とし、操作者によって電子光学系の設定パラメータの少なくともひとつが変更されたことを検出すると、電子光学系の設定パラメータを読み取り、電子ビーム軌道の再計算と再表示を行うようにしている。
【0043】
しかし、必ずしも発明を実施する電子顕微鏡が電子光学系の設定パラメータの少なくともひとつが変更されたことを検出する手段を備えている必要は無く、予め設定された一定時間間隔で、前記電子光学系の設定パラメータを読み取り、設定パラメータが変更されているか否か判断するなどして、必要に応じて電子ビーム軌道の再計算と再表示を行うようにすることも、本発明の技術範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係わる電子顕微鏡の概略の構成例を示す図。
【図2】本発明の動作フローを説明するための図。
【図3】照射系表示モードにおけるビーム軸(光軸軌道)表示とビーム束(境界軌道)表示の例を示す図。
【図4】結像系表示モードにおけるビーム軸(光軸軌道)表示とビーム束(境界軌道)表示の例を示す図。
【図5】結像系表示モードにおける結像/回折表示の例を示す図。
【図6】電子ビームが観察視野に無いとき、障害原因パラメータを操作者に報告する表示例を示す図。
【図7】Z-R比率の座標軸のとり方を説明するための図。
【図8】メッシュデータの例を示す図。
【図9】軸上磁場のデータ例を示す図。
【図10】結像系モードにおける付帯情報の表示例を示す図。
【図11】選択したレンズの詳細な付帯情報の表示例を示す図。
【符号の説明】
【0045】
1:鏡筒 16:蛍光板
2:電子銃 17:電子検出器
3:電子線 18:高電圧電源
4:電子銃アライメントコイル 19:アライメント電源
5:集束レンズ系 20:レンズ電源
6:集束レンズ絞り 21:絞り駆動電源
7:集束レンズアライメントコイル 22:検出器電源
8:試料 23:画像信号増幅器
9:対物レンズ絞り 24:コンピュータ
10:対物レンズ 25:インタフェース
11:制限視野絞り 26:表示プログラム
12:中間レンズ系 27:記憶部
13:投影レンズアライメントコイル 28:表示装置
14:投影レンズ系 29:入力装置
15:顕微鏡像
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に電子線を照射して観察や分析等を行う電子光学機器であって、電子光学系を制御するための制御手段と、前記電子光学系の設定パラメータを読み取る手段を有し、
前記電子光学系の設計値及び/又は軸調整データに基づいて計算される電子ビーム軌道計算に必要な内部データと前記電子光学系の設定パラメータとに基づいて電子ビーム軌道を計算する演算手段と、前記演算手段により求められた前記電子ビーム軌道を表示する表示手段とを備え、
電子ビーム軌道を前記演算手段で再計算により求めて、前記表示手段により可視化して表示する、ことを特徴とする電子光学機器。
【請求項2】
予め求められている前記内部データを記憶する記憶手段を備え、前記記憶手段から読み出された前記内部データと前記電子光学系の設定パラメータとに基づいて前記演算手段により電子ビーム軌道を計算し、前記表示手段により可視化して表示する、ことを特徴とする請求項1に記載の電子光学機器。
【請求項3】
前記電子光学系の設計値及び/又は軸調整データに基づいて計算される電子ビーム軌道計算に必要な内部データを作成する作成手段を備え、前記作成手段により作成された前記内部データと前記電子光学系の設定パラメータとに基づいて前記演算手段により電子ビーム軌道を計算し、前記表示手段により可視化して表示する、ことを特徴とする請求項1に記載の電子光学機器。
【請求項4】
前記電子光学系の設定パラメータの少なくともひとつが変更されたことを検出する手段を備え、前記電子光学系の設定パラメータの少なくともひとつが変更されたことを検出すると、前記電子光学系の設定パラメータを読み取り、電子ビーム軌道を前記演算手段で再計算により求めて、前記表示手段により可視化して表示する、ことを特徴とする請求項1、2または3に記載の電子光学機器。
【請求項5】
予め設定された一定時間間隔で、前記電子光学系の設定パラメータを読み取り、電子ビーム軌道を前記演算手段で再計算により求めて、前記表示手段により可視化して表示する、ことを特徴とする請求項1、2または3に記載の電子光学機器。
【請求項6】
前記内部データの少なくともひとつは、前記電子光学機器の電子光学系設計パラメータ値を使用して作成される、レンズ形状と位置座標の関係及び偏向器形状と位置座標の関係を表すメッシュデータである、ことを特徴とする請求項1、2または3に記載の電子光学機器。
【請求項7】
前記内部データの少なくともひとつは、前記メッシュデータと電子光学系設計パラメータ値及びレンズ設計パラメータ値を使用して、有限要素法で計算される軸上電位と軸上磁場である、ことを特徴とする請求項1、2、3または6に記載の電子光学機器。
【請求項8】
前記有限要素法で計算される軸上電位と軸上磁場から電子ビームの具体的な基準軌道を計算する手法として、Runge-Kutta法を用いることを特徴とする請求項1、2、3、6または7に記載の電子光学機器。
【請求項9】
前記内部データの少なくともひとつは、前記電子光学系の電圧軸、電流軸等の軸調整データから計算された、前記電子光学系の機械的なレンズ中心のずれ量である、ことを特徴とする請求項1、2または3に記載の電子光学機器。
【請求項10】
前記電子ビーム軌道を表示する手段は、電子ビーム軸の軌道を表す光軸軌道、または絞りによって決定される複数の軌道を表す境界軌道、または物面の一点から出た全ての電子線が一点で交差することを表現できる複数の軌道を表す結像軌道、または物面で入射角が同じ全ての電子線が回折面(焦点面)で一点に交差することを表現できる複数の軌道を表す回折軌道、のうちの少なくともひとつを表示する手段を備える、ことを特徴とする請求項1、2、3、4または5に記載の電子光学機器。
【請求項11】
前記電子ビーム軌道の付帯情報として、任意の位置での電子ビーム径、レンズ主面位置、像形成位置(像面位置)、回折像形成位置(焦点位置)、像回転角度、クロスオーバー位置、レンズ軸上電場、レンズ軸上磁場のうちの少なくともひとつを表示する手段を備える、ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5または10に記載の電子光学機器。
【請求項12】
前記電子ビーム軌道を表示する手段は、鏡筒断面と直行して断面円中心を軸中心とする座標(Z)と、鏡筒断面方向に平行で断面円中心を原点とする回転座標系ベクトルの距離(R)との比率(Z-R比率)を任意に設定する手段を備える、ことを特徴とする請求項1、2、3、4または5に記載の電子光学機器。
【請求項13】
前記電子光学系の設定パラメータと前記演算手段により求められた前記電子ビーム軌道とから、電子ビームが電子光学系の途中で遮蔽される障害原因を検知して警告を表示する手段を備える、ことを特徴とする請求項1、2、3、4または5に記載の電子光学機器。
【請求項1】
試料に電子線を照射して観察や分析等を行う電子光学機器であって、電子光学系を制御するための制御手段と、前記電子光学系の設定パラメータを読み取る手段を有し、
前記電子光学系の設計値及び/又は軸調整データに基づいて計算される電子ビーム軌道計算に必要な内部データと前記電子光学系の設定パラメータとに基づいて電子ビーム軌道を計算する演算手段と、前記演算手段により求められた前記電子ビーム軌道を表示する表示手段とを備え、
電子ビーム軌道を前記演算手段で再計算により求めて、前記表示手段により可視化して表示する、ことを特徴とする電子光学機器。
【請求項2】
予め求められている前記内部データを記憶する記憶手段を備え、前記記憶手段から読み出された前記内部データと前記電子光学系の設定パラメータとに基づいて前記演算手段により電子ビーム軌道を計算し、前記表示手段により可視化して表示する、ことを特徴とする請求項1に記載の電子光学機器。
【請求項3】
前記電子光学系の設計値及び/又は軸調整データに基づいて計算される電子ビーム軌道計算に必要な内部データを作成する作成手段を備え、前記作成手段により作成された前記内部データと前記電子光学系の設定パラメータとに基づいて前記演算手段により電子ビーム軌道を計算し、前記表示手段により可視化して表示する、ことを特徴とする請求項1に記載の電子光学機器。
【請求項4】
前記電子光学系の設定パラメータの少なくともひとつが変更されたことを検出する手段を備え、前記電子光学系の設定パラメータの少なくともひとつが変更されたことを検出すると、前記電子光学系の設定パラメータを読み取り、電子ビーム軌道を前記演算手段で再計算により求めて、前記表示手段により可視化して表示する、ことを特徴とする請求項1、2または3に記載の電子光学機器。
【請求項5】
予め設定された一定時間間隔で、前記電子光学系の設定パラメータを読み取り、電子ビーム軌道を前記演算手段で再計算により求めて、前記表示手段により可視化して表示する、ことを特徴とする請求項1、2または3に記載の電子光学機器。
【請求項6】
前記内部データの少なくともひとつは、前記電子光学機器の電子光学系設計パラメータ値を使用して作成される、レンズ形状と位置座標の関係及び偏向器形状と位置座標の関係を表すメッシュデータである、ことを特徴とする請求項1、2または3に記載の電子光学機器。
【請求項7】
前記内部データの少なくともひとつは、前記メッシュデータと電子光学系設計パラメータ値及びレンズ設計パラメータ値を使用して、有限要素法で計算される軸上電位と軸上磁場である、ことを特徴とする請求項1、2、3または6に記載の電子光学機器。
【請求項8】
前記有限要素法で計算される軸上電位と軸上磁場から電子ビームの具体的な基準軌道を計算する手法として、Runge-Kutta法を用いることを特徴とする請求項1、2、3、6または7に記載の電子光学機器。
【請求項9】
前記内部データの少なくともひとつは、前記電子光学系の電圧軸、電流軸等の軸調整データから計算された、前記電子光学系の機械的なレンズ中心のずれ量である、ことを特徴とする請求項1、2または3に記載の電子光学機器。
【請求項10】
前記電子ビーム軌道を表示する手段は、電子ビーム軸の軌道を表す光軸軌道、または絞りによって決定される複数の軌道を表す境界軌道、または物面の一点から出た全ての電子線が一点で交差することを表現できる複数の軌道を表す結像軌道、または物面で入射角が同じ全ての電子線が回折面(焦点面)で一点に交差することを表現できる複数の軌道を表す回折軌道、のうちの少なくともひとつを表示する手段を備える、ことを特徴とする請求項1、2、3、4または5に記載の電子光学機器。
【請求項11】
前記電子ビーム軌道の付帯情報として、任意の位置での電子ビーム径、レンズ主面位置、像形成位置(像面位置)、回折像形成位置(焦点位置)、像回転角度、クロスオーバー位置、レンズ軸上電場、レンズ軸上磁場のうちの少なくともひとつを表示する手段を備える、ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5または10に記載の電子光学機器。
【請求項12】
前記電子ビーム軌道を表示する手段は、鏡筒断面と直行して断面円中心を軸中心とする座標(Z)と、鏡筒断面方向に平行で断面円中心を原点とする回転座標系ベクトルの距離(R)との比率(Z-R比率)を任意に設定する手段を備える、ことを特徴とする請求項1、2、3、4または5に記載の電子光学機器。
【請求項13】
前記電子光学系の設定パラメータと前記演算手段により求められた前記電子ビーム軌道とから、電子ビームが電子光学系の途中で遮蔽される障害原因を検知して警告を表示する手段を備える、ことを特徴とする請求項1、2、3、4または5に記載の電子光学機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−210232(P2006−210232A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−22826(P2005−22826)
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000004271)日本電子株式会社 (811)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月31日(2005.1.31)
【出願人】(000004271)日本電子株式会社 (811)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]