説明

電子内視鏡システム

【課題】単一の電子内視鏡と複数のプロセッサからなり、電子内視鏡自体の円滑な操作を保証しつつも、複数のプロセッサに対する操作を術者が簡易かつ確実に実行することができる電子内視鏡システムを提供すること。
【解決手段】電子内視鏡システムは、単一の電子内視鏡と、少なくとも第一と第二プロセッサとを有する電子内視鏡システムであって、電子内視鏡は、各プロセッサの操作に関する指示信号および操作の対象となるプロセッサを特定する特定信号を出力する操作手段、を有し、少なくとも操作手段は、第一プロセッサにのみ接続されており、第一プロセッサは、操作手段から出力される特定信号に基づき、指示信号に応じた第一プロセッサ内部の処理、または指示信号の第二プロセッサへの転送処理の少なくとも一方を実行し、第二プロセッサは、第一プロセッサから転送される指示信号に応じて第二プロセッサ内部の処理を実行する構成にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数種類の撮像手段を持つ単一の電子内視鏡と該内視鏡が接続される複数のプロセッサとを有する電子内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、それぞれ異なる種類の画像を取得可能な複数種類の撮像手段を有する電子内視鏡が知られている。該電子内視鏡は、各撮像手段で撮像された画像に所定の画像処理が施されるように、各撮像手段に対応する複数のプロセッサに接続される。このような単一の内視鏡と複数のプロセッサを有する電子内視鏡システムは、例えば以下の特許文献1に開示される。
【0003】
【特許文献1】特開平7−123345号公報
【0004】
上記特許文献1に例示される電子内視鏡システムでは、使用されるプロセッサごとに独立した操作系統が要求される。従って、術者が各プロセッサに対する操作を行うためには、電子内視鏡にプロセッサごとの操作部を配設する必要がある。そのため、該電子内視鏡に配設される操作ボタン等の点数が多くなるあるいは1のボタンで複数の処理を兼用させるため操作が煩雑になるといった問題点が指摘される。加えて、電子内視鏡とプロセッサ間に配設される信号線の数も増加するため、該信号線が配設されるユニバーサルコードが太くなり、電子内視鏡自体の円滑な操作の妨げとなるおそれも指摘される。
【0005】
なお、各プロセッサ自体でそれぞれ操作を行うという観点もあるが、該観点は該操作を実行するための助手が別途要求されてしまう。そのため、術者の意図する操作が意図するタイミングで確実に行われるとは限らず、好ましくない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、以上の事情に鑑み、単一の電子内視鏡と複数のプロセッサからなる電子内視鏡システムであって、電子内視鏡自体の円滑な操作を保証しつつも、複数のプロセッサに対する操作を術者が簡易かつ確実に実行することができる電子内視鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に記載の電子内視鏡システムは、単一の電子内視鏡と、少なくとも第一と第二プロセッサとを有する電子内視鏡システムであって、第一のプロセッサと第二のプロセッサを接続する接続手段を有し、上記電子内視鏡は、各プロセッサの操作に関する指示信号および操作の対象となるプロセッサを特定する特定信号を出力する操作手段を有し、少なくとも該操作手段は、第一プロセッサにのみ接続されており、上記第一プロセッサは、操作手段から出力される特定信号に基づき、指示信号に応じた第一プロセッサ内部の処理、または指示信号の第二プロセッサへの転送処理の少なくとも一方を実行し、上記第二プロセッサは、第一プロセッサから接続手段を介して転送される指示信号に応じて第二プロセッサ内部の処理を実行することを特徴とする。
【0008】
具体的には、請求項2に記載の電子内視鏡システムによれば、電子内視鏡は、各々異なる画像信号を生成する少なくとも第一撮像手段および第二撮像手段を有し、第一プロセッサは、第一撮像手段と接続され、該第一撮像手段から出力される第一画像信号に画像処理を施す第一画像処理部と、第一制御部と、を有し、第二プロセッサは、第二撮像手段と接続され、該第二撮像手段から出力される第二画像信号に画像処理を施す第二画像処理部と、第二制御部と、を有し、第一制御部は、操作手段から出力される特定信号に基づき、指示信号に応じて第一画像処理部での画像処理、または指示信号の第二制御部への転送処理の少なくとも一方を制御し、第二制御部は、第一制御部から転送される指示信号に応じて第二画像処理部での画像処理を制御するように構成される。
【0009】
他の構成としては、請求項3に記載の電子内視鏡システムによれば、電子内視鏡は、各々異なる画像信号を生成する少なくとも第一撮像手段および第二撮像手段を有し、第一プロセッサは、第一撮像手段および第二撮像手段と接続されており、該第一撮像手段から出力される第一画像信号に画像処理を施す第一画像処理部と、第一制御部と、を有し、第二プロセッサは、第一プロセッサおよび接続手段を介して第二撮像手段と接続されており、該第二撮像手段から出力される第二画像信号に画像処理を施す第二画像処理部と、第二制御部と、を有し、第一制御部は、常時第二画像信号の第二プロセッサへの転送処理を実行すると共に、操作手段から出力される特定信号に基づき、指示信号に応じて第一画像処理部での画像処理、または指示信号の第二制御部への転送処理の少なくとも一方を制御し、第二制御部は、第一制御部から転送される指示信号に応じて第二画像処理部での画像処理を制御することもできる。
【0010】
請求項4に記載の電子内視鏡システムによれば、第一制御部は、特定信号によって該第一プロセッサが特定されている場合には第一画像処理部に指示信号に応じた画像処理を実行させ、特定信号によって第二プロセッサが特定されている場合には、該第二制御部に前記指示信号を転送することができる。
【0011】
請求項5に記載の電子内視鏡システムによれば、第一制御部は、特定信号によって第一プロセッサおよび第二プロセッサが特定されている場合には、画像処理部に指示信号に応じた画像処理を実行させると同時に第二制御部に前記指示信号を転送することができる。
【0012】
請求項6に記載の電子内視鏡システムによれば、第一プロセッサおよび第二プロセッサは、自身が特定されていることを外部に報知する報知手段を有することができる。
【0013】
例えば、請求項7に記載の電子内視鏡システムによれば、報知手段は、各プロセッサがそれぞれ画像処理を施した画像信号に、各プロセッサが特定されている旨の情報を重畳させることができる。
【0014】
請求項8に記載の電子内視鏡システムによれば、操作手段は、特定信号のみが出力される操作部位を有してもよい。あるいは、請求項9に記載の電子内視鏡システムによれば、操作手段は、同一の操作部位に対して異なる操作がなされることにより、特定信号と指示信号が別個に出力されるように構成される。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る電子内視鏡システムによれば、電子内視鏡が持つ操作手段は第一プロセッサにのみ接続されている。そのため、他のプロセッサとの接続に用いられるユニバーサルコードの径を細径化かつ軽量化することができ、電子内視鏡自体の円滑な操作が保証される。また、電子内視鏡が持つ操作手段は、複数のプロセッサに共通であるため、複数のプロセッサに対する操作を術者が簡易かつ確実に実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本実施形態の電子内視鏡システムの構成および作用について説明する。
【0017】
図1は、本実施形態の電子内視鏡システム100の概略構成を表す図である。電子内視鏡システム100は、第一プロセッサ110、第二プロセッサ120、電子内視鏡130、第一モニタ150A、第二モニタ150B、第一記録装置170A、第二記録装置170Bを有する。
【0018】
電子内視鏡130は、術者に把持される把持部130a、被検者の体腔内に挿入される可撓管130b、第一プロセッサとの接続手段としての第一ユニバーサルコード130c、第二プロセッサ120との接続手段としての第二ユニバーサルコード130dからなる。電子内視鏡130は、略同一の被写体(ここでは生体組織)を互いに異なる二種類の態様で撮像する第一撮像部34と第二撮像部35を有する。本実施形態の第一撮像部34は、一般的な対物光学系と撮像素子を有し、通常観察用画像を撮像する。本実施形態の第二撮像部35は、所定の軸方向に走査自在に構成された超音波振動子を有し、超音波画像を撮像する。各撮像部34、35は、撮像結果を、各態様に対応した各プロセッサ110、120に出力する。
【0019】
各プロセッサ110、120は、電子内視鏡130から送信される撮像結果に対して上記の異なる態様に対応した画像処理を施して、画像を生成する。詳しくは、本実施形態では、第一プロセッサ110には、通常観察用の画像信号(第一画像信号に相当)が第一撮像部34から送信される。また、第二プロセッサ120には、超音波振動子からの出力信号および走査位置信号(まとめて第二画像信号に相当)が第二撮像部35から送信される。
【0020】
第一モニタ150A、第一記録装置170Aは、第一プロセッサ110により生成された画像を表示しあるいは記録する外部デバイスである。第二モニタ150B、第二記録装置170Bは、第二プロセッサ120により生成された画像を表示しあるいは記録する外部デバイスである。
【0021】
電子内視鏡システム100を用いた基本的な撮像処理は以下のようにして行われる。まず予め術者が電子内視鏡30の先端、より詳しくは可撓管130bの先端を観察対象の近傍に配設する。例えば、観察対象が体腔内の生体組織である場合には、術者は、可撓管130bの先端を被検者の体腔内における該生体組織が存する位置まで挿入する。
【0022】
第一プロセッサ110は、システムコントローラ11、光源部12、フロントパネル13、撮像素子駆動部14、タイミングコントローラ15、画像処理部16、信号出力部17を有する。
【0023】
システムコントローラ11は、第一プロセッサ110のみならず後述するように電子内視鏡システム100全体を統括して制御する。なお、システムコントローラ11は、フロントパネル13で行われる諸操作に対応した制御処理を行うだけではなく、後述の電子内視鏡130から送信される操作に関する諸信号(例えば、指示信号、特定信号)に対応した制御処理も行う。システムコントローラ11は、撮像処理を実行する際、まず光源部12を発光制御する。光源部12は、光源121、絞り122、絞り駆動機構123、集光レンズ124を有する。システムコントローラ11からの制御信号を受信すると、光源121から光が照射される。本実施形態では、光源121は周知の白色光源、例えばメタルハライドランプや、キセノンランプ、ハロゲンランプ等を使用する。
【0024】
光源121から照射された光は、絞り駆動機構123によって適切な口径に調整された絞り122、集光レンズ124を介して電子内視鏡130のライトガイド31、より詳しくはライトガイド31の入射端31aに入射する。ライトガイド160は光ファイバ束である。よって、入射光は、ライトガイド31内を伝送し、射出端31bから射出される。射出光は、配光レンズ32を介して可撓管130bの先端から照射され、観察対象を照明する。
【0025】
照明された観察対象からの反射光は、対物レンズ33を介して第一撮像部34内に設けられた撮像素子(不図示)の受光面で光学像を結ぶ。第一撮像部34は、プロセッサ110の撮像部駆動回路14によって駆動制御される。詳しくは、撮像部駆動回路14は、システムコントローラ11の制御下、タイミングコントローラ15により規定される所定のタイミングで、第一撮像部34に駆動信号を送信する。第一撮像部34は、撮像部駆動回路14から送信される駆動信号に同期して、上記光学像に基づく各色の画像信号を生成し、第一プロセッサ110の画像処理部16に定期的に送信する。
【0026】
画像処理部16は、第一撮像部34からの画像信号が入力する順に、前段画像信号処理部61、画像メモリ62、後段画像信号処理部63を有する。前段画像信号処理部61は、画像信号にA/D変換をはじめ、後述する各観察モードに好適な画像が生成されるように所定の処理を行う。所定の処理には例えば、色毎のゲイン調整や解像度調整、ホワイトバランスやブラックバランスの調整、ガンマ補正、エンハンス処理等がある。前段画像信号処理部61から出力された画像信号は、各色に関する画像データとして順次画像メモリ62に格納される。格納された各色に対応する画像データは、タイミングコントローラ15から送信されるタイミング信号に同期して後段画像信号処理部63に一斉に出力される。該タイミング信号は、例えば第一モニタ150Aの周期に対応して送信される。
【0027】
後段画像信号処理部63は、画像メモリ62から読み出された画像データにD/A変換を施し、第一モニタ150Aの規格に適合する映像信号(ビデオ信号)を生成する。第一モニタ150Aは、後段画像信号処理部63から出力される映像信号を受信すると該信号に対応する画像(ここでは動画像)を表示する。
【0028】
また、第二プロセッサ120は、システムコントローラ21、フロントパネル23、撮像部駆動回路24、タイミングコントローラ25、画像処理部26、信号入力部27を有する。
【0029】
システムコントローラ21は、フロントパネル23で行われる諸操作に対応した制御処理を行うだけではなく、後述の第一プロセッサ110を介して電子内視鏡130から送信される操作に関する諸信号に対応した制御処理も行う。
【0030】
電子内視鏡130の第二撮像部35は、プロセッサ120の撮像部駆動回路24によって駆動制御される。詳しくは、撮像部駆動回路24は、システムコントローラ21の制御下、タイミングコントローラ25により規定される所定のタイミングで、第二撮像部35に駆動信号を送信する。第二撮像部35は、撮像部駆動回路24から送信される駆動信号に従って、超音波振動子をはじめとする各部位を駆動させ、超音波画像生成に必要な各種信号を第二プロセッサ120に定期的に送信する。
【0031】
画像処理部26は、第二撮像部35から送信される諸信号(超音波振動子からの出力信号および走査位置信号)に基づき、超音波画像を生成する。具体的には、周知のスキャンコンバータを利用して各信号を映像信号に変換する。画像処理部26は、システムコントローラ21の制御下、タイミングコントローラ25から送信されるタイミング信号に同期して、画像処理を実行し、第二モニタ150Bに出力する。第二モニタ150Bは、画像処理部26から出力される映像信号に対応する超音波画像(ここでは動画像)を表示する。
【0032】
以上説明した撮像処理が実行されている間、術者は、任意のタイミングで電子内視鏡130の操作部37を操作することにより、各プロセッサ110、120に所定の操作を実行させることができる。
【0033】
従来であれば、複数のプロセッサに対して操作指示を可能にするためには、操作部(例えばスイッチ群)は、プロセッサに対応するセットだけ配設する必要がある。また、操作部とプロセッサ間の配線もプロセッサの数に対応して増加する。そのため、単一の電子内視鏡と複数のプロセッサからなる電子内視鏡システムの場合、電子内視鏡に配設される操作部の数が無用に増加して、術者の各プロセッサに対する円滑な操作に支障を来しかねない。また、配線数の増加によって、ユニバーサルコードが太くなり、電子内視鏡そのものの操作(例えば、体腔内への挿入動作や、該体腔内における精細な位置調整)にかかる負担が増大するおそれも指摘される。なお、本文では、操作部(より具体的にはスイッチ群とそれに対応する回路)と、該操作部およびプロセッサを接続するための配線とを併せて操作系統という。つまり、従来の電子内視鏡システムでは、該システムを構成するプロセッサの数だけ操作系統が要求される。
【0034】
これに対して、本実施形態の電子内視鏡システム100では、図1に示すように、操作部37は、把持部130aに、1セットのみ配設されている。また、該操作部130aは、第一プロセッサ110のシステムコントローラ11にのみ接続されており、第二プロセッサ120のシステムコントローラ21には接続されていない。つまり、本実施形態の電子内視鏡システム100では、単一の操作系統しか配設されていない。
【0035】
具体的には、操作部37は、各プロセッサ110、120が実行可能な操作に関する指示を行う各種スイッチを有する。スイッチの数を増やせば各プロセッサへの操作指示の種類が増加する。反面、スイッチの数を抑えれば、術者にとって電子内視鏡の取り扱いが簡易になる。よって、スイッチは、術者のニーズと利便性に鑑み、適切な数に設定される。本実施形態では、静止画像を表示されるフリーズスイッチ37aと、画像を記録する記録スイッチ37bとの二つの操作スイッチを例示する。また、操作部37は、操作部37での操作の対象となるプロセッサを特定する特定スイッチ37cを有する。
【0036】
以下、操作部37での各プロセッサ110、120に対する操作について詳述する。図2は、操作部37の操作に対応するシステムコントローラ11での処理について説明するためのフローチャートである。
【0037】
電子内視鏡システム100の電源がオンされ、システム全体が駆動すると、システムコントローラ11は、操作部37から送信される信号に対する受信待機状態に入る(S1:NO)。操作部37に配設されたいずれかのスイッチが操作され、該操作に対応する信号が送信されると、システムコントローラ11は、S1の処理において、信号を受信したと判断し(S1:YES)、S3の処理に移る。
【0038】
S3において、システムコントローラ11は、受信した信号が特定信号であるか否かを判断する。ここで、特定信号とは、特定スイッチ37cが操作された時に操作部37から送信される、操作部37による操作の対象となるプロセッサを特定するための信号である。特定信号は、他の各スイッチ37a、37bが操作された時に操作部37から送信される各種操作に関する指示信号とは異なる。
【0039】
S3において、システムコントローラ11は、受信した信号が特定信号であると判断した場合には(S3:YES)、S5の処理に移る。S5において、システムコントローラ11は、操作の対象として特定されるプロセッサ、つまり上記指示信号に対応する処理を実行するプロセッサを切り替える(S5)。具体的にはシステムコントローラ11は、特定信号を受信するたびに、特定されるプロセッサを、第一プロセッサ110→第二プロセッサ120→両方のプロセッサ→第一プロセッサ110…の順で切り替える。なお、本実施形態では、電子内視鏡システム100の電源がオンされ、システム全体が駆動した直後の初期段階では、第一プロセッサ110のみが特定されている。
【0040】
切り替え処理が完了すると、システムコントローラ11は、次いでいずれのプロセッサが現在操作対象として特定されているかを報知する処理(S7)に移る。本実施形態では、報知処理として、各モニタ150A、150Bに特定されていることを表示する処理が行われる。このS7における表示処理については、後述する。表示処理が完了すると、システムコントローラ11は、S1、S3の処理に戻る。
【0041】
S3において、受信した信号が特定信号ではないつまり指示信号であると判断すると(S3:NO)、システムコントローラ11は、第一プロセッサ110が現在操作対象として特定されているか否かを判断する(S9)。S9において、第一プロセッサ110が操作対象として特定されていると判断すると(S9:YES)、システムコントローラ11は、受信した指示信号に対応する処理を画像処理部16および関連部位に実行させる(S11)。
【0042】
例えば、第一プロセッサ110が操作対象として特定されている場合に、操作部37のフリーズスイッチ37aが操作されると、システムコントローラ11は、画像処理部16に静止画生成処理を実行させる。静止画生成処理は、画像メモリ62に格納される画像データの更新を中断することによりなされる。これにより、第一モニタ150Aには、術者がフリーズスイッチ37aを操作したタイミングでの静止画像が表示される。
【0043】
また、第一プロセッサ110が操作対象として特定されている場合に、操作部37の記録スイッチ37bが操作されると、システムコントローラ11は、画像処理部16(より詳しくは後段画像信号処理部63を制御し、映像信号を第一モニタ150Aのみならず、第一記録装置170Aにも出力させる。これにより、第一記録装置170Aによる体腔内の映像の記録が実行される。
【0044】
S11の処理が完了する、あるいはS9において第一プロセッサ110が操作対象として特定されていないと判断すると(S9:NO)、システムコントローラ11は、次いで第二プロセッサ120が現在操作対象として特定されているか否かを判断する(S13)。
【0045】
S13において、第二プロセッサ120が操作対象として特定されていると判断すると(S13:YES)、システムコントローラ11は、操作部37から送信された指示信号をそのまま第二プロセッサ120のシステムコントローラ21に転送する処理を実行する(S15)。
【0046】
詳しくは、第一プロセッサ110の信号出力部17と、第二プロセッサ120の信号入力部27とは、通信ケーブル140によって互いに接続されている。従って、システムコントローラ11から出力された指示信号は、通信ケーブル140を介して、システムコントローラ21に転送される。システムコントローラ21は、転送された該指示信号に対応する制御を行う。なお、システムコントローラ21が実行する制御処理は、上述したシステムコントローラ11の処理に類するため、上記を参照し、ここでの説明は省略する。
【0047】
S15の転送処理が完了する、あるいはS13において第二プロセッサ120が操作対象として特定されていないと判断すると(S13:NO)、システムコントローラ11は、再びS1からの処理に戻る。
【0048】
以上のような構成において、システムコントローラ11がS7で行う表示処理およびその効果について説明を加える。電子内視鏡システム100の電源がオンされた初期段階では、操作対象として特定されるプロセッサは第一プロセッサ110のみである。そのため、システムコントローラ11は、画像処理部16に予め設定されたキャラクタ情報を生成される画像に重畳して出力させる。キャラクタ情報としては、例えば、「Stand by OK」等の文字情報であっても良いし、特定されていることを表すアイコンであってもよい。
【0049】
S5において、操作対象として特定されるプロセッサが変更されると、システムコントローラ11は、該変更に応じた表示処理を実行する。具体的には、第一プロセッサ110が特定外となると、システムコントローラ11は、画像処理部16が実行中のキャラクタ情報を重畳する処理を中止させる。第二プロセッサ120が操作対象として特定されると、システムコントローラ11は、上記指示信号の転送と同様に、通信ケーブル140を介して特定信号を転送する。特定信号を受信した第二プロセッサ120のシステムコントローラ21は、画像処理部26に予め設定されたキャラクタ情報を生成される画像に重畳して出力させる。第二プロセッサ120が特定外となると、システムコントローラ11は、再度特定信号をシステムコントローラ21に転送する。操作対象として特定された状態において、再度特定信号を受信すると、システムコントローラ21は、画像処理部26が実行中のキャラクタ情報を重畳する処理を中止させる。
【0050】
以上の表示処理によって、術者は、現在操作対象となるプロセッサを正確に認識することができる。
【0051】
以上のように構成することにより、配設される操作系統数を減らすことができる。従って、電子内視鏡130の把持部130a周りを簡素化、小型化することができる。また、第二プロセッサ120に接続されるユニバーサルコード130dの細径化、軽量化を図ることもできる。これにより、術者が簡易かつ確実に複数のプロセッサを操作することができる。さらには、ユニバーサルコードの細径化が実現することにより、当該ユニバーサルコードとプロセッサとの接続が簡易になされるという利点も得られる。なお、通常、各プロセッサは所定位置に固定されたいわゆる据え置き状態にある。従って、通信ケーブル140による各プロセッサ間の接続は、固定された二つの機器を接続することを意味する。よって、取り付け位置の調整等の手間がかかることなく容易に両プロセッサの接続を行なうことがでできる。
【0052】
以上が本発明の実施形態である。なお、本発明に係る電子内視鏡システムは上記で説明した構成に限定されるものではなく、例えば以下に説明するような変形を行うことも可能である。
【0053】
まず、上記実施形態では、電子内視鏡システムを構成するプロセッサは2台として説明したが、3台以上であってもよい。プロセッサを3台以上使用する場合には、各プロセッサは、上記第一プロセッサに相当する親機に上記第二プロセッサに相当する子機を複数台接続する並列接続タイプであってもよい。並列接続タイプの場合、親機が、受信した特定信号に応じて各子機に指示信号を転送する。また、上記実施形態の構成における第二プロセッサにさらに第三プロセッサを接続する、つまり直列接続タイプであってもよい。直列接続タイプの場合、特定信号を受信した第一プロセッサから第二、第三…といった下位に位置するプロセッサに指示信号を順次転送していく。なお、撮像、観察される画像は通常画像と超音波画像の組み合わせに限定されるものではない。
【0054】
また、上記実施形態では、システムコントローラ11は、図2中S9、S13に示すように、操作に関する処理を行う際、各プロセッサが操作対象として特定されているかを、プロセッサごとに判断している。しかし、本発明に係る電子内視鏡システムは、このような構成に限定されるものではない。例えば、図2中S5に示す処理において、パラメータを変更することにより特定対象を切り替える。そして、システムコントローラ11は、該パラメータの値に応じて、適切な処理を実行するように構成しても良い。
【0055】
また、上記実施形態では、信号出力部17と信号入力部27を接続する手段として通信ケーブル140を提示した。ここで、通信ケーブル140の代替として赤外線等の無線通信を使用することも可能である。
【0056】
上記実施形態では、特定信号を出力するための特定スイッチ37cを他のスイッチから独立した存在として配設している。本発明に係る電子内視鏡システムは、このような構成に限定されるものではなく、特定スイッチ37cが持つ機能を他の操作スイッチに兼用させても良い。その際、兼用されたスイッチに対する操作の違い(例えば、長押しか否か)に応じて、指示信号と特定信号のいずれを出力するか区別するように構成すればよい。
【0057】
また、上記実施形態では、操作部37等の操作手段が第一プロセッサ110にのみ接続されており、各撮像部34、35はそれぞれ対応するプロセッサと直接接続されている旨説明した。しかし、本発明に係る電子内視鏡システムはこのような構成に限定されるものではない。例えば、いずれの撮像部34、35も第一プロセッサ110にのみ接続されているような構成であっても良い。この場合、第二プロセッサ120へは、指示信号、第二画像信号ともに第一プロセッサ110、通信ケーブル140を経由することにより伝送される。このような構成であれば、電子内視鏡130と第二プロセッサ120を接続するユニバーサルコード130dをより一層細径化または第一プロセッサ110のみにユニバーサルコードを接続するだけの構成も可能であり、電子内視鏡の操作性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施形態の電子内視鏡システムの概略構成を示す図である。
【図2】操作部の操作に対応するシステムコントローラでの処理について説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0059】
11、21 システムコントローラ
16、26 画像処理部
37 操作部
100 電子内視鏡システム
110、120 プロセッサ
130 電子内視鏡
140 通信ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一の電子内視鏡と、少なくとも第一と第二プロセッサとを有する電子内視鏡システムであって、
前記第一のプロセッサと前記第二のプロセッサを接続する接続手段を有し、
各プロセッサの操作に関する指示信号および前記操作の対象となるプロセッサを特定する特定信号を出力する操作手段を有し、
少なくとも前記操作手段は、前記第一プロセッサにのみ接続されており、
前記第一プロセッサは、前記操作手段から出力される特定信号に基づき、前記指示信号に応じた第一プロセッサ内部の処理、または前記指示信号の前記第二プロセッサへの転送処理の少なくとも一方を実行し、
前記第二プロセッサは、前記第一プロセッサから前記接続手段を介して転送される指示信号に応じて第二プロセッサ内部の処理を実行することを特徴とする電子内視鏡システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電子内視鏡システムにおいて、
前記電子内視鏡は、各々異なる画像信号を生成する少なくとも第一撮像手段および第二撮像手段を有し、
前記第一プロセッサは、前記第一撮像手段と接続され該第一撮像手段から出力される第一画像信号に画像処理を施す第一画像処理部と、第一制御部と、を有し、
前記第二プロセッサは、前記第二撮像手段と接続され該第二撮像手段から出力される第二画像信号に画像処理を施す第二画像処理部と、第二制御部と、を有し、
前記第一制御部は、前記操作手段から出力される特定信号に基づき、前記指示信号に応じて前記第一画像処理部での画像処理、または前記指示信号の前記第二制御部への転送処理の少なくとも一方を制御し、
前記第二制御部は、前記第一制御部から転送される指示信号に応じて前記第二画像処理部での画像処理を制御することを特徴とする電子内視鏡システム。
【請求項3】
請求項1に記載の電子内視鏡システムにおいて、
前記電子内視鏡は、各々異なる画像信号を生成する少なくとも第一撮像手段および第二撮像手段を有し、
前記第一プロセッサは、前記第一撮像手段および第二撮像手段と接続されており、該第一撮像手段から出力される第一画像信号に画像処理を施す第一画像処理部と、第一制御部と、を有し、
前記第二プロセッサは、第一プロセッサおよび接続手段を介して第二撮像手段と接続されており、該第二撮像手段から出力される第二画像信号に画像処理を施す第二画像処理部と、第二制御部と、を有し、
前記第一制御部は、常時前記第二画像信号の前記第二プロセッサへの転送処理を実行すると共に、前記操作手段から出力される特定信号に基づき、指示信号に応じて第一画像処理部での画像処理、または指示信号の第二制御部への転送処理の少なくとも一方を制御し、
前記第二制御部は、前記第一制御部から転送される指示信号に応じて第二画像処理部での画像処理を制御することを特徴とする電子内視鏡システム。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の電子内視鏡システムにおいて、
前記第一制御部は、前記特定信号によって該第一プロセッサが特定されている場合には前記第一画像処理部に前記指示信号に応じた画像処理を実行させ、前記特定信号によって前記第二プロセッサが特定されている場合には、該第二制御部に前記指示信号を転送することを特徴とする電子内視鏡システム。
【請求項5】
請求項4に記載の電子内視鏡システムにおいて、
前記第一制御部は、前記特定信号によって第一プロセッサおよび第二プロセッサが特定されている場合には前記画像処理部に前記指示信号に応じた画像処理を実行させると同時に前記第二制御部に前記指示信号を転送することを特徴とする電子内視鏡システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の電子内視鏡システムにおいて、
前記第一プロセッサおよび前記第二プロセッサは、自身が特定されていることを外部に報知する報知手段を有することを特徴とする電子内視鏡システム。
【請求項7】
請求項6に記載の電子内視鏡システムにおいて、
前記報知手段は、各プロセッサがそれぞれ画像処理を施した画像信号に、各プロセッサが前記特定されている旨の情報を重畳させることを特徴とする電子内視鏡システム。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の電子内視鏡システムにおいて、
前記操作手段は、前記特定信号のみが出力される操作部位を有することを特徴とする電子内視鏡システム。
【請求項9】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の電子内視鏡システムにおいて、
前記操作手段は、同一の操作部位に対して異なる操作がなされることにより、前記特定信号と前記指示信号が別個に出力されることを特徴とする電子内視鏡システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate