説明

電子写真式印刷装置の清掃装置及び電子写真式印刷装置

【課題】トナー除去部材が摩耗することなく、トナー除去部材へのトナー融着を防止することができる電子写真式印刷装置の清掃装置及び電子写真式印刷装置を提供する。
【解決手段】回転可能なブラシ手段を用いて転写後に感光体上に残留したトナーを除去する電子写真式印刷装置の清掃装置において、ブラシ手段に付着したトナーを除去するトナー除去手段を有し、トナー除去手段は、ブラシ手段と接触する部分に大きさが限定され、かつ、当該部分に摩耗低減処理が施される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタや複写機などの電子写真式印刷装置の清掃装置及び電子写真式印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の電子写真式印刷装置(画像形成装置)の清掃装置に関連する技術例は、例えば特許文献1(特開2005−077654号公報)に開示されている。特許文献1の発明の構成について、図2〜図4を用いて以下に説明する。特許文献1の発明は、図2及び図4に示すように、転写器10を通過後の電子写真式印刷装置の感光体除電プロセスにおいて、例えばACを使用する除電部材(除電装置)30と、例えば1本の蛍光灯からなる光除電部材31を通過することにより、感光体ドラム21上に残留しているトナーと感光体ドラム21を除電した後、残留トナーを除去する清掃装置20を使い、感光体ドラム21から除去した後、再度帯電させ繰り返し使用する構成である。
【0003】
清掃装置20は、図4に示すように、例えば回転可能なレーヨン100%からなるブラシ部材32(感光体ドラム21上の残留トナーを清掃するためのもの)と、例えば接地してあるステンレスからなる丸棒状のブラシ帯電安定化部材34と、摩擦抵抗低減のためフッ素を全体に含侵させ摩擦抵抗を0.6以下としたアルミからなるトナー除去部材33(ブラシ部材32が清掃したトナーを除去するためのもの)とから構成されている。トナー除去部材33は、ネジと隙間を確保する金属部材(図示せず)により清掃装置20の背面から固定された構造である。またトナー除去部材33から離れたトナーは、図3に示すように、吸引ブロア40により吸引され、サイクロン41により概ね5ミクロン以上のトナーが除去され、トナー回収容器42に回収される。5ミクロン以下のトナーは、図3において、例えば不織紙を充填したフィルター部材43に回収される構造である。
【0004】
上述した特許文献1の発明の構成では、例えば66インチ/秒の高速で長時間印刷を行うと、トナー除去部材33に付着したトナーの放電によってトナー除去部材33にトナーが融着し、その結果、ブラシ部材32に融着トナーが付着する。そのため、ブラシ帯電安定化部材34や感光体ドラム21にもトナーが付着し、感光ドラム21にフィルミングが発生してしまう。その結果、かぶり、印刷濃淡むら、白抜け印刷などを発生する不具合があった。
【0005】
なお、上記特許文献1の構成に対して、例えば、特許文献4(特開昭59−174874号公報)に開示されている構成を適用することが考えられる。その場合、フッ素をトナー除去部材33に含侵させずに、ブラシ部材を2000RPMで回転させるようにするが、トナー除去部材33に付着したトナーの放電によるトナー除去部材33へのトナー融着は未発生にできるものの、トナー除去部材33が磨耗するという不具合が発生してしまう。また、上記特許文献1の発明の構成に対して、特許文献2(特開2006−91566号公報)および特許文献3(特開2007−212979号公報)に開示されているフッ素含有樹脂をトナー除去部材33に使用することも考えられる。しかしこの場合も、初期は上記同様の効果が得られるが、例えば1000万頁もの印刷を行うと、磨耗によりフッ素含有樹脂は消滅してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、トナー除去部材が摩耗することなく、トナー除去部材へのトナー融着を防止することができる電子写真式印刷装置の清掃装置及び電子写真式印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、本発明の電子写真式印刷装置の清掃装置は、回転可能なブラシ手段を用いて転写後に感光体上に残留したトナーを除去する電子写真式印刷装置の清掃装置において、ブラシ手段に付着したトナーを除去するトナー除去手段を有し、トナー除去手段は、ブラシ手段と接触する部分に大きさが限定され、且つ、当該部分に摩耗低減処理が施されることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の電子写真式印刷装置の清掃装置において、摩擦低減処理は、フッ素を部材に含侵させる処理であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の電子写真式印刷装置の清掃装置において、フッ素を部材に含侵させる厚さは、50ミクロン以下であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の電子写真式印刷装置の清掃装置において、ブラシ手段の帯電を安定化させるためのブラシ帯電安定化手段を有し、ブラシ帯電安定化手段は、摩擦低減処理部が施されていない部分から接地されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の電子写真式印刷装置の清掃装置において、ブラシ帯電安定化手段の接地は、トナー除去部材の背面側から実施されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の電子写真式印刷装置の清掃装置において、ブラシ帯電安定化手段の先端部分は、鋭利な形状であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の電子写真式印刷装置の清掃装置において、ブラシ手段は、導電性繊維を50%以下含有することを特徴とする。
【0014】
本発明の電子写真式印刷装置は、本発明の電子写真式印刷装置の清掃装置と、表面に静電潜像を形成するための像担持体と、像担持体に電荷を与えるための帯電器と、電荷が印加された像担持体に露光を行うための露光器と、露光により像担持体に形成されたトナー像を記録媒体上に転写するための転写器と、記録媒体へ転写されたトナー像を溶融定着させるための定着機とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、トナー除去部材が摩耗することなく、トナー除去部材へのトナー融着を防止することができる電子写真式印刷装置の清掃装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る電子写真式印刷装置の清掃装置の構成の一例を示す図である。
【図2】従来技術に係る電子写真式印刷装置の部品の位置関係の一例を示す図である。
【図3】従来技術に係る電子写真式印刷装置のトナー回収構造の一例を示す図である。
【図4】従来技術に係る電子写真式印刷装置の感光ドラムの周辺構造の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態(実施形態)について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
はじめに、本発明の一実施形態である清掃装置が内蔵される電子写真方式印刷装置(レーザビームプリンタ)の全体構成について、図2、3、4を参照しながら説明する。
【0019】
図2において、1はレーザビームプリンタであり、そのコントローラ(制御装置)22からの印刷動作開始信号に基づいて、例えば、有機物を表面に塗布した感光体ドラム21が矢印方向(時計回り)に回転を始める。感光体ドラム21は、レーザビームプリンタ1の印刷速度に相当する速度で回転し、印刷動作が終了するまで回転を続ける。感光体ドラム21が回転を開始すると、帯電器2に高電圧が印加され、感光体ドラム21表面が、例えば、均一に正帯電する。
【0020】
回転可能な偏向部材3は、レーザビームプリンタ1に電源が投入されると直ちに回転を開始し、電源が投入されている間、高精度に定速回転が維持される。ガスレーザや半導体レーザなどで構成された光源4から出力した、例えば、複数の本数を有するマルチレーザビームは、回転可能な偏向部材3で反射し、fθレンズ5を通じて感光体ドラム21上を走査しながら照射する。なお、ここでは、マルチビームレーザの本数を5本としたが、この数に限定されない。
【0021】
ドットイメージに変換された文字データや図形データがレーザビームのオン/オフ信号としてコントローラ22からレーザビームプリンタ1に送られると、感光体ドラム21の表面にレーザビームが照射される部分と照射されない部分とが形成され、いわゆる静電潜像が形成される。この静電潜像を保持した感光体ドラム21領域が現像装置6と対向する位置に到達すると、静電潜像にトナーが供給され、レーザビームの照射により感光体ドラム21上の電荷が消失した部分に、例えば−(マイナス)に帯電したトナーが静電気により吸引されて、感光体ドラム21上に未定着現像像(以下、トナー像という)が形成される。
【0022】
用紙ホッパ11に収納された記録材7(例えば、連続紙)は、用紙搬送トラクタ8によって、感光体ドラム21上に形成された印刷データのトナー像が転写位置に到達するタイミングと同期させて、感光体ドラム21と転写器10の間に向けて搬送される。
【0023】
感光体ドラム21上に形成されたトナー像は、記録紙7の背面側にトナー像と逆極性の−電圧を印加する転写器10の作用によって記録紙7上に静電的に吸引される。
【0024】
このようにして、用紙ホッパ11に装填されていた記録紙7は、用紙搬送トラクタ8、転写器10、用紙搬送トラクタ9及びバッファプレート24を経て定着装置12に搬送される。定着装置12に到達した記録紙7は、プレヒータ13で予熱された後、一対の定着ローラ(ヒータランプ25を備えた加熱ローラ14と、加圧ローラ15とからなる)によって形成されるニップ部により加熱加圧されながら挟持搬送され、トナー像が記録紙7に溶融定着される。溶融定着後、加熱ローラ14に残ったトナーは、例えばテフロン(登録商標)からなる清掃部材26で加熱ローラ14から除去清掃される。
【0025】
また、転写器10で記録紙7に吸引されなかった残留トナー(感光体ドラム21上に残留したトナー)は、清掃装置20によりクリーニングされる。すなわち、残留トナーは、回転可能なブラシ部材32(例えばレーヨンからなる)で除去されてブラシ部材32に付着した後、トナー除去部材33に接触することによりブラシ部材32から除去される。そして、トナー除去部材32により除去されたトナーは、トナー回収装置(吸引ブロア40、サイクロン41、トナー回収容器42、フィルター部材43で構成)で回収される。また、トナーが除去された感光ドラム21は、光除電部材27と例えば正電化を印加する帯電安定化部材28により電位を例えば0Vにした後に、再度帯電器2で所定の電位に帯電され、以後この工程を繰り返す。なお、図2に示す23は、印刷動作中のレーザビームプリンタ1の状態に基づく情報を表示したりする表示装置(表示画面)である。また、上記清掃装置20は、本発明の電子写真式印刷装置の清掃装置の一実施形態であり、詳細な構成については後述する。
【0026】
加熱ローラ14と加圧ローラ15によって送り出されてきた記録紙7は、用紙搬送ローラ16によってスタッカテーブル19側へ送り出されるとともに、スイングフィン17の揺動動作によってミシン目に沿って交互に折り分けられ、さらに、回転するパドル18で折りたたみ状態が整えられながら、スタッカテーブル19上に積み重ねられて行く。
【0027】
次に、図1を用いて、本実施形態の電子写真式印刷装置の清掃装置の詳細構成について説明する。
【0028】
本実施形態の清掃装置において、トナー除去部材33の大きさは、図1に示すように、ブラシ部材32と接触する部分(表面処理域)のみに限定される。また、その表面処理域のみに摩擦低減処理が施されるようにする。この摩擦低減処理は、例えば、フッ素をアルミ(トナー除去部材33を構成する材質の一例)に含侵させる処理である。よって、トナー除去部材33においてフッ素を含侵させる部位は、表面処理域に限定される。なお、含侵深さ(トナー除去部材33のフッ素処理の厚さ)が50ミクロンを越えると放電が発生し、トナー融着が起き、フィルミングが発生することが確認されたため、含侵深さは50ミクロン以下とする。また、摩擦係数は0.6以下とする。
【0029】
また、トナー除去部材33は、図1に示すように、フッ素を含侵させていない背面側の部分と清掃装置20の筐体とが金属部材35(例えばネジ)で締結される。これにより、電荷がトナー除去部材33に蓄積しないようになる。もちろん、トナー除去部材33を接地する箇所は、上記に限らず、非含侵部分(フッ素を含侵させていない部分)であればよい。
【0030】
また、本実施形態の清掃装置では、図1に示すように、トナー除去部材33の近傍に、ブラシ部材32の帯電を安定化させるブラシ帯電安定化部材34を有する。このブラシ帯電安定化部材34は、摩擦低減処理がされていない部分から接地されるようにする。また、ブラシ帯電安定化部材34の接地は、トナー除去部材33の背面側から実施することで、ネジ類で固定することができる。また、ブラシ帯電安定化部材34の形状は、従来では図4に示すように丸棒状であったが、本実施形態では、図1に示すように、ブラシ帯電安定化部材34の先端部分を、例えば、丸みのない鋭利な形状とする。これにより、ブラシ部材32から付着トナーが強制的に剥がれるようにする。また、ブラシ部材32に導電性繊維を50%以下含有させるようにする。
【0031】
以上のような構成により、本実施形態の清掃装置では、トナー除去部材は、ブラシ部材が接触する部分のみに大きさが限定され、かつ、その部分に摩耗低減処理が施されるので、トナー除去部材が摩耗することなく、トナー除去部材へのトナー融着(長時間印刷のときの、トナー除去部材に付着したトナーの放電によって起こるトナー融着)を防止することができる。また、トナー除去部材は、ブラシ部材が接触する部分のみに摩擦低減処理を施すことにより、非処理部(摩擦低減非処理部)から導通することが可能となる。
【0032】
また、トナー除去部材における摩擦低減処理として、フッ素をアルミに含侵させる処理(フッ素処理)を行うことにより、効果的に摩擦を低減することができる。
【0033】
また、トナー除去部材におけるフッ素処理の厚さを50ミクロン以下とすることにより、非処理部から導通をとることができる。
【0034】
また、ブラシ帯電安定化部材の先端部分を丸みのない形状とすることにより、ブラシ部材に付着(融着)したトナーを除去できる。よって、感光体ドラム21においてフィルミングが未発生となり、その結果、かぶり、印刷濃淡むら、白抜け印刷などの発生を防止することが可能となる。
【0035】
また、先端部分に丸みのないブラシ帯電安定化部材を接地することにより、放電を起きにくくすることができる。
【0036】
また、ブラシ帯電安定化部材を、摩擦低減処理が行われた部分以外から接地することにより、導通を確実に取れる。
【0037】
ブラシ帯電安定化部材の接地を、トナー除去部材の背面から実施することにより、ネジ類で固定することができる。
【0038】
ブラシ部材に導電性繊維を50%以下含有させることにより、ブラシ帯電安定化部材とトナー除去部材から放電が起きにくくすることができる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 レーザビームプリンタ
2 スコロトロン帯電器
3 偏向部材
4 光源
5 fθレンズ
6 現像装置
7 記録材
8、9 用紙搬送トラクタ
10 転写器
11 用紙ホッパ
12 定着装置
13 プレヒータ
14 加熱ローラ
15 加圧ローラ
16 用紙搬送ローラ
17 スイングフィン
18 パドル
19 スタッカテーブル
20 清掃装置
21 感光体ドラム
22 コントローラ
23 表示装置
24 バッファプレート
26 清掃部材
27 光除電部材
28 帯電安定化部材
30 除電装置
31 光除電部材
32 ブラシ部材(ブラシ手段の一例)
33 トナー除去部材(トナー除去手段の一例)
34 ブラシ帯電安定化部材(ブラシ帯電安定化手段の一例)
35 金属部材
40 吸引ブロア
41 サイクロン
42 トナー回収容器
【先行技術文献】
【特許文献】
【0041】
【特許文献1】特開2005−077654号公報
【特許文献2】特開2006−91566号公報
【特許文献3】特開2007−212979号公報
【特許文献4】特開昭59−174874号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能なブラシ手段を用いて転写後に感光体上に残留したトナーを除去する電子写真式印刷装置の清掃装置において、
前記ブラシ手段に付着したトナーを除去するトナー除去手段を有し、
前記トナー除去手段は、前記ブラシ手段と接触する部分に大きさが限定され、かつ、当該部分に摩耗低減処理が施されることを特徴とする請求項1記載の電子写真式印刷装置の清掃装置。
【請求項2】
前記摩擦低減処理は、前記トナー除去手段を構成する材料に、フッ素を含侵させる処理であることを特徴とする請求項1記載の電子写真式印刷装置の清掃装置。
【請求項3】
前記フッ素を含侵させる厚さは、50ミクロン以下であることを特徴とする請求項2記載の電子写真式印刷装置の清掃装置。
【請求項4】
前記ブラシ手段の帯電を安定化させるためのブラシ帯電安定化手段を有し、
前記ブラシ帯電安定化手段は、前記摩擦低減処理部以外の部分から接地されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電子写真式印刷装置の清掃装置。
【請求項5】
前記ブラシ帯電安定化手段の接地は、前記トナー除去部材の背面側から実施されることを特徴とする請求項4記載の電子写真式印刷装置の清掃装置。
【請求項6】
前記ブラシ帯電安定化手段の先端部分は、鋭利な形状であることを特徴とする請求項4又は5記載の電子写真式印刷装置の清掃装置。
【請求項7】
前記ブラシ手段は、導電性繊維を50%以下含有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の電子写真式印刷装置の清掃装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の電子写真式印刷装置の清掃装置と、表面に静電潜像を形成するための像担持体と、前記像担持体に電荷を与えるための帯電器と、電荷が印加された前記像担持体に露光を行うための露光器と、露光により前記像担持体に形成されたトナー像を記録媒体上に転写するための転写器と、前記記録媒体へ転写されたトナー像を溶融定着させるための定着機とを有することを特徴とする電子写真式印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−33863(P2011−33863A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180473(P2009−180473)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】