説明

電子写真感光体、それを用いた画像形成方法、画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジ

【課題】画像濃度の面内のムラが小さく、高画質な画像出力が可能となる感光体と更に、商業印刷分野に求められる高画質、高速、大量印刷時の安定性に対応可能なプロセスカートリッジの提供。
【解決手段】導電性支持体上に少なくとも電荷発生層、第一の電荷輸送層、第二の電荷輸送層が順次積層され、第一の電荷輸送層は主に低分子電荷輸送物質をバインダー樹脂中に含有させた分子分散膜で形成され、第二の電荷輸送層は少なくともラジカル重合性電荷輸送性化合物と3官能以上のラジカル重合性モノマーと光重合開始剤とを混合した組成物に紫外線を照射してラジカル硬化反応させた架橋膜で形成されている電子写真感光体において、該架橋膜が2,5-ジアリール-1,3,4-オキサジアゾール誘導体を含有することを特徴とする電子写真感光体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商業印刷分野においてオンデマンド印刷可能な電子写真方式を採用する画像形成方法、画像形成装置、それらに用いられる電子写真感光体、画像形成装置用プロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オンデマンド印刷が容易なことからオフィス分野で広く普及していた電子写真方式の画像形成装置が商業印刷分野へ普及を始めている。商業印刷分野では、高速印刷、大量印刷、高画質、用紙対応性、印刷物の低コスト化がこれまで以上に求められている。
【0003】
高速印刷、大量印刷、印刷物の低コスト化を達成するためには、電子写真の中心デバイスである電子写真感光体が丈夫で長持ちする必要がある。感光体にはアモルファスシリコンを代表とする無機感光体と有機電荷発生材料及び有機電荷輸送材料からなる有機感光体が用いられているが、(I)光吸収波長域の広さ及び吸収量の大きさ等の光学特性、(II)高感度、安定な帯電特性等の電気的特性、(III)材料の選択範囲の広さ、(IV)製造の容易さ、(V)低コスト、(VI)無毒性等から有機感光体が有利と考えられている。一方、有機感光体は、傷や摩耗に弱く、傷は画像欠陥に摩耗は感度の劣化や帯電性の劣化や電荷リークを引き起こし、画像濃度低下や地肌汚れ等の異常画像の原因となる。
【0004】
この有機感光体の耐傷性、耐摩耗性を向上させる手段として、従来の有機感光体上に機械的に丈夫な保護層を形成した感光体が提案されている。例えば、特許文献1には、同一分子内に二つ以上の連鎖重合性官能基を有する正孔輸送性化合物を硬化した化合物を含有する感光層が提案されている。この感光層は架橋結合密度を高められるため、高い硬度を有するが、嵩高い正孔輸送性化合物が二つ以上の連鎖重合性官能基を有するため、硬化物中歪みが生じ硬化反応が不均一になり、外部応力に対する復元力が局部的に低下し、長期間の繰り返し使用にあたりキャリア付着などの応力によりクラックや傷が発生しやすいものである。
【0005】
また、電荷輸送性構造を化学結合させた架橋表面層を有する感光体の耐傷性を向上させた感光体が提案されている。例えば、特許文献2,3,4には、ラジカル重合性電荷輸送性化合物と3官能以上のラジカル重合性モノマーと光重合開始剤とを混合した組成物に紫外線を照射してラジカル硬化反応させた架橋膜を保護層とする感光体が提案されている。この感光体は、優れた耐傷性、耐摩耗性を有しており、環境安定性にも優れている為、ドラムヒーターを使用せずに安定した画像出力が可能である。
【0006】
また、特許文献5には、前記ラジカル重合性電荷輸送性化合物と3官能以上のラジカル重合性モノマーと光重合開始剤とを混合した組成物に紫外線を照射してラジカル硬化反応させた架橋膜を保護層とする感光体の電荷輸送性化合物が、紫外線照射による電気特性低下を防止するために、前記架橋膜中に紫外線吸収剤を含有させ、感光体製造中の感光材料の劣化を防止することが提案されている。
【0007】
上記の感光体は、優れた耐傷性、耐摩耗性を有し、感光体全体としては電気特性も良好なものであり、多量に印刷する商業印刷に適したものであるが、近頃の商業印刷分野では、従来以上に高画質が求められるようになり、感光材料の劣化を防止するのみでは、その要求に充分応えることができなかった。
【0008】
そこで、上記前記ラジカル重合性電荷輸送性化合物と3官能以上のラジカル重合性モノマーと光重合開始剤とを混合した組成物に紫外線を照射してラジカル硬化反応させた架橋膜を保護層とする感光体の耐傷性、耐摩耗性を低下させることなく、従来よりも高画質な画像を形成できる感光体の開発が望まれていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、ラジカル重合性電荷輸送性化合物と3官能以上のラジカル重合性モノマーと光重合開始剤とを混合した組成物に紫外線を照射してラジカル硬化反応させた架橋膜を保護層とする感光体の耐傷性、耐摩耗性を低下させることなく、かつ従来よりも高画質な画像を形成できる商業印刷分野に最適な電子写真感光体、画像形成方法、画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の課題は、導電性支持体上に少なくとも電荷発生層、第一の電荷輸送層、第二の電荷輸送層が順次積層され、第一の電荷輸送層は主に電荷輸送物質をバインダー樹脂中に含有させた分子分散膜で形成され、第二の電荷輸送層は少なくともラジカル重合性電荷輸送性化合物と3官能以上のラジカル重合性モノマーと光重合開始剤とを混合した組成物に紫外線を照射してラジカル硬化反応させた架橋膜で形成されている電子写真感光体の前記架橋膜に特定の2,5-ジアリール-1,3,4-オキサジアゾール誘導体を含有させることで解決される。
すなわち、上記課題は、本発明の(1)〜(7)により解決される。
(1)導電性支持体上に少なくとも電荷発生層、第一の電荷輸送層、第二の電荷輸送層が順次積層され、第一の電荷輸送層は主に低分子電荷輸送物質をバインダー樹脂中に含有させた分子分散膜で形成され、第二の電荷輸送層は少なくともラジカル重合性電荷輸送性化合物と3官能以上のラジカル重合性モノマーと光重合開始剤とを混合した組成物に紫外線を照射してラジカル硬化反応させた架橋膜で形成されている電子写真感光体において、該架橋膜が下記一般式(1)及び/又は一般式(2)で表される2,5-ジアリール-1,3,4-オキサジアゾール誘導体を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【0011】
【化1】

(式中、iは、1〜4の整数を表し、Ar1は、i=1のときナフチル基又はビフェニリル基を表し、iが2〜4のときアリール基を表し、該複数のアリール基は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Ar2は、i=1のときナフチル基又はビフェニリル基を表しiが2〜4のときiに対応するベンゼン環の2〜4価基を表す)
【0012】
【化2】

(式中、j及びkは、1〜2の整数を表し、Ar3とAr6はアリール基を表す。Ar4は、ベンゼン環の2乃至4価基表し、Ar5はkに対応するベンゼン環の2価基又は3価基を表す。Xは、2価の炭化水素基を表し、置換基を介して隣接するAr4と環構造を形成してもよい。
(2)前記Ar1〜Arはそれぞれ、置換基を有さないものであることを特徴とする前記(1)に記載の電子写真感光体。
(3)前記Ar1、Ar、またはArが表すアリール基は、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基であることを特徴とする前記(1)または第(2)に記載の電子写真感光体。
(4)前記2,5-ジアリール-1,3,4-オキサジアゾール誘導体は、長波長側光吸収端が380nm以下であることを特徴とする前記(1)乃至(3)のいずれか1に記載の電子写真感光体。
(5)前記(1)乃至(4)のいずれか1に記載の電子写真感光体を用いて、少なくとも帯電、画像露光、現像、転写を繰り返し行なうことを特徴とする画像形成方法。
(6)前記(1)乃至(4)のいずれか1に記載の電子写真感光体を有することを特徴とする画像形成装置。
(7)前記(1)乃至(4)のいずれかに記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段および除電手段よりなる群から選ばれた少なくとも一つの手段を有するものであって、画像形成装置本体に着脱可能としたことを特徴とする画像形成装置用プロセスカートリッジ。
【発明の効果】
【0013】
ラジカル重合性電荷輸送性化合物と3官能以上のラジカル重合性モノマーと光重合開始剤とを混合した組成物に紫外線を照射してラジカル硬化反応させた架橋膜を保護層とする感光体の耐傷性、耐摩耗性を低下させることなく、かつ従来よりも高画質な画像を形成できる商業印刷分野に最適な電子写真感光体、画像形成方法、画像形成装置及び画像形成装置用プロセスカートリッジを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の電子写真感光体の断面図の一例である。
【図2】本発明の画像形成装置の一例を示す概略図である。
【図3】本発明の画像形成装置用プロセスカートリッジの一例を示す概略図である。
【図4】微小表面硬度計による弾性変位率の測定法を示す概略図である
【図5】荷重に対する塑性変位と弾性変位の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、ラジカル重合性電荷輸送性化合物と3官能以上のラジカル重合性モノマーと光重合開始剤とを混合した組成物に紫外線を照射してラジカル硬化反応させた架橋膜を有する感光体の面内各箇所での光減衰電位にバラツキが生じることを防止し、前記架橋膜の形成時に特定の2,5-ジアリール-1,3,4-オキサジアゾール誘導体を添加することで電子写真感光体の面内均一性を改善し、商業印刷に要求される高画質な画像形成を可能にしたものである。
【0016】
商業印刷に要求される高画質な画像を形成できる感光体には、同じ光書き込みを行った場合にどの場所でも同じ電位になるような面内の電位均一性が要求され、第二の電荷輸送層(架橋表面層)の膜厚や均質性も影響し、それらのムラを抑えることが必要である。
【0017】
下層の構成材料等の架橋表面層への溶出等を防止し均一な塗布膜を形成しても、架橋硬化時の紫外線照射装置のランプ境界領域や装置内の光反射により、感光体表面への紫外線照射ムラが生じ、架橋層の膜厚や均質性に影響を及ぼす。光照射ムラは、架橋保護層の架橋密度ムラにつながると予想され、光照射量を増大させ、全体を完全架橋に近づけることでの架橋密度ムラ回避を試みたが、明瞭な効果はなく、光照射ムラがラジカル重合性電荷輸送性化合物の分解物生成量ムラにつながっていることが推測された。
【0018】
そこでこの光分解を防止し、且つ、紫外線硬化を阻害しない添加剤の検討を鋭意検討したところ、2,5-ジアリール-1,3,4-オキサジアゾール誘導体の添加が有効であることを見出した。そのメカニズムの詳細は不明であるが、光吸収し1重項励起状態となったラジカル重合性電荷輸送性化合物と特定の2,5-ジアリール-1,3,4-オキサジアゾール誘導体とが分子間励起子会合体(Exciplex)を形成し、そこから失活することで、ラジカル重合性電荷輸送性化合物の光分解を抑制できるためと推測される。
但し、オキサジアゾール環が分子内に1個しかない場合は、隣接する芳香族基の共役がある程度大きい必要があり、ベンゼン環一つではExciplexを形成し難い。ナフチル基、ビフェニリル基程度に共役を大きくすることでExciplexを形成しやすくなり、良好な特性を示すようになる。分子内に2個以上のオキサジアゾール環を有する化合物の場合、例え非共役の連結基Xで結合されていても、この制限はない。分子内のオキサジアゾール環が非共役の連結基を隔てて存在し隣接する芳香環がベンゼン環一つの場合の還元電位は、分子内にオキサジアゾール環が一つの化合物とほとんど変わりがないが、近接した所に電子受容性の高いオキサジアゾール基が複数存在することで電荷輸送性化合物の失活過程に有利に働いているものと予想される。
【0019】
さらに、ラジカル重合性電荷輸送性化合物の酸化電位に比べて2,5-ジアリール-1,3,4-オキサジアゾール誘導体の酸化電位は大きく、したがって第二の電荷輸送層中にあってもホールトラップにはならず、電荷輸送能を低減させることがないこと、さらに2,5-ジアリール-1,3,4-オキサジアゾール誘導体は吸収波長が短いものが多く、紫外線硬化に必要な波長域の吸収が少なく架橋反応を阻害しないこと、さらに、ラジカル重合性電荷輸送性化合物の励起軌道ポテンシャルレベルに比べて2,5-ジアリール-1,3,4-オキサジアゾール誘導体のレベルが低く、励起子会合体(Exciplex)を形成しやすいこと、という条件を全て満たす材料群のため、感光体としての基本的な電気特性や機械的特性を損なうことなく、紫外線照射時のラジカル重合性電荷輸送性化合物の光分解を抑制できていると推測される。
【0020】
第二の電荷輸送層中の分解生成物が減少したことで、面内の紫外線照射ムラが有ってもその影響が少なくなり、感光体面内の電位安定性が向上したと考えられる。
このような電子写真感光体を用いることで画像濃度均一性に優れた高画質な画像出力が可能になる。
【0021】
以下、本発明をその層構造に従い説明する。
図1は、本発明の電子写真感光体を表わす断面図であり、導電性支持体(31)上に、電荷発生機能を有する電荷発生層(35 )と、電荷輸送機能を有する第一の電荷輸送層(37 )とさらに電荷輸送機能を有する第二の電荷輸送層(39 )が積層された積層構造の感光体である。この4層は必須構成であり、さらに、導電性支持体(31)と電荷発生層(35)の間に1層又は複数層の下引き層が挿入されていても良い。また、電荷発生層(35)と第一の電荷輸送層(37)と第二の電荷輸送層(39)を合わせた層構成部分を感光層(33)と称する。
【0022】
<導電性支持体>
導電性支持体(31)としては、従来公知のものが使用される。
アルミニウム、ニッケル等の体積抵抗10 10 Ω・cm 以下の導電性を示すもので有れば良く、アルミドラム、アルミ蒸着フィルム、ニッケルベルト等が好ましく使用される。
商業印刷分野での高画質の為には、感光体の寸法精度が厳しく求められるために、引き抜き工法などで製造されたアルミドラムを切削、研磨加工して表面の平滑性や寸法精度を上げたものが好ましい。また、ニッケルベルトとしては、特開昭52 −36016 号公報に開示されたエンドレスニッケルベルトを用いることができる。
【0023】
<電荷発生層>
電荷発生層(35 )は、従来の有機電子写真感光体に用いられてきた電荷発生層がそのまま使用できる。すなわち、電荷発生機能を有する電荷発生物質を主成分とする層で、必要に応じてバインダー樹脂を併用することもできる。好ましい電荷発生物質としては、例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料やアゾ顔料であり、金属フタロシアニンとしては、チタニルフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン等が使用される。これらの電荷発生物質は、単独または2 種以上の混合物として用いることができる。
【0024】
必要に応じて用いられるバインダー樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N −ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミドなどが挙げられる。これらのバインダー樹脂は、単独または2 種以上の混合物として用いることができる。
【0025】
電荷発生層(35 )の形成は、例えば、上述の電荷発生物質を必要ならばバインダー樹脂と共に、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アニソール、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル等により分散し、分散液を適度に希釈して塗布することにより、形成できる。また、必要に応じて、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のレベリング剤を添加することができる。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行なうことができる。以上のようにして設けられる電荷発生層の膜厚は、0 .01 〜5 μm 程度が適当であり、好ましくは0 .05 〜2 μm である。
【0026】
<第一の電荷輸送層>
第一の電荷輸送層には、電荷輸送物質をバインダー樹脂中に分散した従来公知の電荷輸送層がそのまま使用できる。
電荷輸送物質としては、正孔輸送物質が好ましく、従来公知の材料がそのまま使用できる。例えば、オキサゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9 −スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等が挙げられる。これらは、単独または混合して使用することができる。
【0027】
バインダー樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N −ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性または熱硬化性樹脂が挙げられる。電荷輸送物質の量はバインダー樹脂100 重量部に対し、20 〜300 重量部、好ましくは40 〜150 重量部が適当である。第一の電荷輸送層の塗工に用いられる溶媒としては前記電荷発生層と同様なものが使用できるが、電荷輸送物質及びバインダー樹脂を良好に溶解するものが適している。これらの溶剤は単独で使用しても2 種以上混合して使用しても良い。また、形成には電荷発生層(35 )と同様な塗工法が可能である。
【0028】
また、必要により可塑剤、レベリング剤を添加することもできる。電荷輸送層に併用できる可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は、バインダー樹脂100重量部に対して0 〜30 重量部程度が適当である。電荷輸送層に併用できるレベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用され、その使用量は、結着樹脂100 重量部に対して0 〜1 重量部程度が適当である。第一の電荷輸送層の膜厚は、5 〜40 μm 程度が適当であり、好ましくは10 〜30μm 程度が適当である。このようにして形成された第一の電荷輸送層上に、第二の電荷輸送層が形成される。
【0029】
<第二の電荷輸送層>
本発明の特徴は、第二の電荷輸送層が少なくともラジカル重合性電荷輸送性化合物と3官能以上のラジカル重合性モノマーと光重合開始剤とを混合した組成物に紫外線を照射してラジカル硬化反応させた架橋膜で形成されており、該架橋膜中に2,5-ジアリール-1,3,4-オキサジアゾール誘導体が含有されていることである。
【0030】
本発明に必須の材料である特定の2,5-ジアリール-1,3,4-オキサジアゾール誘導体は、下記一般式(1)または一般式(2)で表される。
【0031】
【化3】


(式中、iは、1〜4の整数を表し、Ar1は、i=1のときナフチル基又はビフェニリル基を表し、iが2〜4のときアリール基を表し、該複数のアリール基は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Ar2は、i=1のときナフチル基又はビフェニリル基を表しiが2〜4のときiに対応するベンゼン環の2〜4価基を表す。)
【0032】
【化4】


(式中、j及びkは、1〜2の整数を表し、Ar3とAr6はアリール基を表す。Ar4は、ベンゼン環の2乃至4価基表し、Ar5はkに対応するベンゼン環の2価基又は3価基を表す。Xは、2価の炭化水素基を表し、置換基を介して隣接するAr4と環構造を形成してもよい。
【0033】
本発明におけるAr〜Arは特に制限されず、置換基を有しても有さなくてもよい。ArArArには、溶解性等の物性調整のため、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基、塩素原子、ジフェニルアミノ基、ハロゲン原子等の非塩基性置換基を導入してもよい。塩基性が強いアミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基等の置換基を有するとホールが捕獲され、残留電位の上昇を引き起こし、電子写真感光体の基本特性を劣化させる。
【0034】
また、オキサジアゾールとしては、ある程度還元電位が小さいことが励起子会合体を形成させるのに有利であり、その為には、オキサジアゾール環の数が多い方が有利である。
ArArArが、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基であるものを使用できるが、オキサジアゾール環が一個となる一般式(1)でi=1の場合は、Ar1とAr2がフェニル基では還元電位的に不十分になるため、ナフチル基又はビフェニリル基であることが好ましい。
【0035】
また、これら2,5-ジアリール-1,3,4-オキサジアゾール誘導体の光吸収が紫外線照射時の硬化反応をできるだけ阻害しないことが望ましく、その為には長波長側の吸収端が380nm以下のものを選択するのがより好ましい。
【0036】
これらを全て満足する材料群としては、一般式(1)、一般式(2)において以下の構造が適用できる。
以下に具体例を例示するがこれらに限定されるわけではない。
【0037】
【化5】

【0038】
【化6】

【0039】
【化7】

【0040】
【化8】

【0041】
【化9】

【0042】
【化10】

【0043】
【化11】

【0044】
【化12】

【0045】
【化13】

【0046】
【化14】

【0047】
これら2,5-ジアリール-1,3,4-オキサジアゾール誘導体は、第二電荷輸送層中に0.1〜10重量%の割合で添加される。少なすぎる場合は、面内電位変動量を低減する効果が見られなくなり、多すぎると感光体の感度特性が悪くなる。
【0048】
ここで、ラジカル重合性電荷輸送性化合物、3官能以上のラジカル重合性モノマー、光重合開始剤、塗工溶媒、塗工方法、乾燥方法、紫外線照射条件等は、従来公知の材料および方法が適用できる。例えば、特開2005-266513号公報、特開2004-302452号公報や特許第4145820号公報に記載されるラジカル重合性官能基を有する電荷輸送性化合物、電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマー、光重合開始剤が本発明のラジカル重合性電荷輸送性化合物、3官能以上のラジカル重合性モノマー、光重合開始剤に対応して使用でき、それら先願資料に記載の塗工溶媒、塗工方法、乾燥方法、紫外線照射条件が適用できる。
【0049】
すなわち、本発明に用いられるラジカル重合性官能基を有する電荷輸送性化合物とは、例えばトリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾールなどの正孔輸送性構造、例えば縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環などの電子輸送構造を有しており、且つラジカル重合性官能基を有する化合物を指す。このラジカル重合性官能基としては、特にアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が有用である。1分子中のラジカル重合性官能基の数は、1個以上複数個でも良いが、架橋表面層の内部応力を抑え平滑な表面性を得やすいため、また良好な電気特性を持続させるためには、ラジカル重合性官能基が1個である方が好ましい。電荷輸送性化合物が2個以上ラジカル重合性官能基を有する場合、嵩高い正孔輸送性化合物が複数の結合で架橋結合中に固定されるためによる大きな歪みからその余裕度が低下する場合があり、電荷輸送性構造や官能基数から凹凸やクラック、膜剥が起こる場合がある。また、この大きな歪みは電荷輸送時の中間体構造(カチオンラジカル)が安定して保てず、電荷のトラップによる感度の低下、残留電位の上昇が起こりやすくなる。ラジカル重合性官能基を有する電荷輸送性化合物の電荷輸送性構造としてはトリアリールアミン構造が高移動度性から好適である。
【0050】
本発明に用いられるラジカル重合性官能基を有する電荷輸送性化合物は、架橋表面層の電荷輸送性能を付与するために重要で、この成分は架橋表面層全量に対し20〜80重量%、好ましくは30〜70重量%になるように塗工液成分の含有量を調整する。この成分が20重量%未満では架橋表面層の電荷輸送性能が充分に保てず、繰り返しの使用で感度低下、残留電位上昇などの電気特性の劣化が現れる。また、80重量%を超えると電荷輸送構造を有しない3官能モノマーの含有量が低下し、架橋結合密度の低下を招き高い耐摩耗性が発揮されない。使用されるプロセスによって要求される電気特性や耐摩耗性が異なるため一概には言えないが、両特性のバランスを考慮すると30〜70重量%の範囲が最も好ましい。
【0051】
本発明に用いられる電荷輸送性を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーとは、例えばトリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾールなどの正孔輸送性構造、例えば縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環などの電子輸送構造を有しておらず、且つラジカル重合性官能基を3個以上有するモノマーを指す。このラジカル重合性官能基とは、炭素−炭素2重結合を有し、ラジカル重合可能な基であれば何れでもよい。
例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンアルキレン変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシ変性(以後EO変性)トリアクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシ変性(以後PO変性)トリアクリレート、トリメチロールプロパンカプロラクトン変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンアルキレン変性トリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、グリセロールトリアクリレート、グリセロールエピクロロヒドリン変性(以後ECH変性)トリアクリレート、グリセロールEO変性トリアクリレート、グリセロールPO変性トリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、ジペンタエリスリトールカプロラクトン変性ヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキル化ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、リン酸EO変性トリアクリレート、2,2,5,5,−テトラヒドロキシメチルシクロペンタノンテトラアクリレートなどが挙げられ、これらは、単独又は2種類以上を併用しても差し支えない。
【0052】
前記電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーとしては、架橋表面層中に緻密な架橋結合を形成するために、該モノマー中の官能基数に対する分子量の割合(分子量/官能基数)は250以下が望ましい。また、この割合が250より大きい場合、架橋表面層は柔らかく耐摩耗性が幾分低下するため、上記モノマー中、EO、PO、カプロラクトン等の変性基を有するモノマーにおいては、極端に長い変性基を有するものを単独で使用することは好ましくはない。また、表面層に用いられる電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーの成分割合は、架橋表面層全量に対し20〜80重量%、好ましくは30〜70重量%になるように、塗工液固形分中の含有量を調整する。モノマー成分が20重量%未満では架橋表面層の3次元架橋結合密度が少なく、従来の熱可塑性バインダー樹脂を用いた場合に比べ飛躍的な耐摩耗性向上が達成されない。また、80重量%を超えると電荷輸送性化合物の含有量が低下し、電気的特性の劣化が生じる。使用されるプロセスによって要求される耐摩耗性や電気特性が異なるため一概には言えないが、両特性のバランスを考慮すると30〜70重量%の範囲が最も好ましい。
【0053】
本発明に用いられる光重合開始剤としては、光により容易にラジカルを発生させる重合開始剤であれば特に限定されないが、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルフォリノ(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、などのアセトフェノン系またはケタール系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、などのベンゾインエーテル系光重合開始剤、ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルフェニールエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、1,4−ベンゾイルベンゼン、などのベンゾフェノン系光重合開始剤、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、などのチオキサントン系光重合開始剤、その他の光重合開始剤としては、エチルアントラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10−フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物、が挙げられる。これらの重合開始剤は一種又は二種以上を混合して用いてもよい。その含有量は塗工液固形分中のラジカル重合性を有する総含有物100重量部に対し、0.5〜40重量部、好ましくは0.5〜10重量部である。
【0054】
本発明の架橋表面層は、塗工時の粘度調整、架橋表面層の応力緩和、低表面エネルギー化や摩擦係数低減などの機能付与の目的で1官能及び2官能のラジカル重合性モノマー及びラジカル重合性オリゴマーを併用することができる。これらのラジカル重合性モノマー、オリゴマーとしては、公知のものが利用できる。
【0055】
本発明の架橋表面層は、少なくとも電荷輸送構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーとラジカル重合性官能基を有する電荷輸送性化合物、一般式(1)及び/又は一般式(2)で表される2,5-ジアリール-1,3,4-オキサジアゾール誘導体及び光重合開始剤を含有する塗工液を塗布、光硬化することにより形成される。かかる塗工液はラジカル重合性モノマーが液体である場合、これに他の成分を溶解して塗布することも可能であるが、必要に応じて溶媒により希釈して塗布される。このとき用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系、テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピルエーテルなどのエーテル系、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン系、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテートなどのセロソルブ系などが挙げられる。これらの溶媒は単独または2種以上を混合して用いてもよい。溶媒による希釈率は組成物の溶解性、塗工法、目的とする膜厚により変わり、任意である。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行なうことができる。
【0056】
本発明においては、かかる塗工液を塗布後、光エネルギー照射することで硬化反応を進行させ、架橋表面層を形成するものである。このとき用いられる光のエネルギーとしては主に紫外光に発光波長をもつ高圧水銀灯やメタルハライドランプなどのUV照射光源が利用できる。照射光量は50mW/cm以上、1000mW/cm以下が好ましく、50mW/cm未満では硬化反応に時間を要する。1000mW/cmより強いと反応の進行が不均一となり、架橋表面層の凹凸や電気特性の劣化が激しくなる。
【0057】
<下引き層>
本発明の感光体においては、導電性支持体(31 )と感光層(33)との間に下引き層を設けることができる。下引き層は一般には樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。また、下引き層にはモアレ防止、残留電位の低減等のために酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物の微粉末顔料を加えてもよい。これらの下引き層は、前述の感光層の如く適当な溶媒及び塗工法を用いて形成することができる。更に本発明の下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。この他、本発明の下引き層には、Al を陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物やSiO 、SnO 、TiO 、ITO 、CeO 等の無機物を真空薄膜作成法にて設けたものも良好に使用できる。このほかにも公知のものを用いることができる。下引き層の膜厚は1 〜15 μm が適当である。
【0058】
<各層への酸化防止剤の添加について>
本発明においては、耐環境性の改善のため、とりわけ、感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で、第一の電荷輸送層、第二の電荷輸送層、電荷発生層、下引き層等の各層に酸化防止剤を添加することができる。添加する酸化防止剤は、従来公知の材料を使用することができ、下記のものが挙げられる。
【0059】
(フェノール系化合物)
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアッシド]クリコ−ルエステル、トコフェロール類など。
【0060】
(パラフェニレンジアミン類)
N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミンなど。
【0061】
(ハイドロキノン類)
2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなど。
【0062】
(有機硫黄化合物類)
ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネートなど。
【0063】
(有機燐化合物類)
トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィンなど。
【0064】
これら化合物は、ゴム、プラスチック、油脂類などの酸化防止剤として知られており、市販品を容易に入手できる。
本発明における酸化防止剤の添加量は、添加する層の総重量に対して0.01〜10重量%である。
【0065】
<画像形成方法及び装置について>
次に図面に基づいて本発明の画像形成方法ならびに画像形成装置を詳しく説明する。本発明の画像形成方法ならびに画像形成装置とは、耐摩耗性及び耐傷性が非常に高く、且つクラックや膜剥がれが生じにくい架橋型電荷輸送層を表面に有する積層型感光体を用い、例えば少なくとも感光体に帯電、画像露光、現像の過程を経た後、画像保持体(転写紙)へのトナー画像の転写、定着及び感光体表面のクリーニングというプロセスよりなる画像形成方法ならびに画像形成装置である。場合により、静電潜像を直接転写体に転写し現像する画像形成方法等では、感光体に配した上記プロセスを必ずしも有するものではない。
【0066】
図2 は、画像形成装置の一例を示す概略図である。感光体を平均的に帯電させる手段として、帯電チャージャ(3 )が用いられる。この帯電手段としては、コロトロンデバイス、スコロトロンデバイス、固体放電素子、針電極デバイス、ローラー帯電デバイス、導電性ブラシデバイス等が用いられ、公知の方式が使用可能である。特に本発明の構成は、接触帯電方式又は非接触近接配置帯電方式のような、感光体組成物の分解の原因となる帯電手段からの近接放電が生じるような帯電手段を用いた場合に特に有効である。ここで言う接触帯電方式とは、感光体に帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電ブレード等が直接接触する帯電方式である。一方の近接帯電方式とは、例えば帯電ローラーが感光体表面と帯電手段との間に200 μm 以下の空隙を有するように非接触状態で近接配置したタイプのものである。この空隙は、大きすぎた場合には帯電が不安定になりやすく、また、小さすぎた場合には、感光体に残留したトナーが存在する場合に、帯電部材表面が汚染されてしまう可能性がある。したがって、空隙は10 〜200 μm 、好ましくは10 〜100 μm の範囲が適当である。
【0067】
次に、均一に帯電された感光体(1 )上に静電潜像を形成するために画像露光部(5 )が用いられる。この光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED )、半導体レーザー(LD )、エレクトロルミネッセンス(EL )などの発光物全般を用いることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
【0068】
次に、感光体(1 )上に形成された静電潜像を可視化するために現像ユニット(6 )が用いられる。現像方式としては、乾式トナーを用いた一成分現像法、二成分現像法、湿式トナーを用いた湿式現像法がある。感光体に正(負)帯電を施し、画像露光を行なうと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。
【0069】
次に、感光体上で可視化されたトナー像を転写体(9 )上に転写するために転写チャージャ(10 )が用いられる。また、転写をより良好に行なうために転写前チャージャ(7 )を用いてもよい。これらの転写手段としては、転写チャージャ、バイアスローラーを用いる静電転写方式、粘着転写法、圧力転写法等の機械転写方式、磁気転写方式が利用可能である。静電転写方式としては、前記帯電手段が利用可能である。
【0070】
次に、転写体(9 )を感光体(1 )より分離する手段として分離チャージャ(11 )、分離爪(12 )が用いられる。その他分離手段としては、静電吸着誘導分離、側端ベルト分離、先端グリップ搬送、曲率分離等が用いられる。分離チャージャ(11 )としては、前記帯電手段と同様の方式が利用可能である。次に、転写後感光体上に残されたトナーをクリーニングするためにファーブラシ(14 )、クリーニングブレード(15 )が用いられる。
また、クリーニングをより効率的に行なうためにクリーニング前チャージャ(13 )を用いてもよい。その他クリーニング手段としては、ウェブ方式、マグネットブラシ方式等があるが、それぞれ単独又は複数の方式を一緒に用いてもよい。次に、必要に応じて感光体上の潜像を取り除く目的で除電手段が用いられる。除電手段としては除電ランプ(2 )、除電チャージャが用いられ、それぞれ前記露光光源、帯電手段が利用できる。その他、感光体に近接していない原稿読み取り、給紙、定着、排紙等のプロセスは公知のものが使用できる。
【0071】
本発明は、このような画像形成手段に本発明に係る電子写真感光体を用いる画像形成方法及び画像形成装置である。この画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンタ内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形態でそれら装置内に組み込まれ、着脱自在としたものであってもよい。プロセスカートリッジの一例を図3 に示す。
【0072】
画像形成装置用プロセスカートリッジとは、感光体(101 )を内蔵し、他に帯電手段(102 )、現像手段(104 )、転写手段(106 )、クリーニング手段(107 )、除電手段(図示せず)の少なくとも一つを具備し、画像形成装置本体に着脱可能とした装置(部品)である。図3 に例示される装置による画像形成プロセスについて示すと、感光体(101 )は、矢印方向に回転しながら、帯電手段(102 )による帯電、露光手段(103 )による露光により、その表面に露光像に対応する静電潜像が形成され、この静電潜像は、現像手段(104 )でトナー現像され、該トナー現像は転写手段(106 )により、転写体(105 )に転写され、プリントアウトされる。次いで、像転写後の感光体表面は、クリーニング手段(107 )によりクリーニングされ、さらに除電手段(図示せず)により除電されて、再び以上の操作を繰り返すものである。
【0073】
本発明は、耐摩耗性及び耐傷性が非常に高く、且つクラックや膜剥がれが生じにくい架橋型電荷輸送層を表面に有する積層型感光体と帯電、現像、転写、クリーニング、除電手段の少なくとも一つを一体化した画像形成装置用プロセスカートリッジを提供するものである。
以上の説明から明らかなように、本発明の電子写真感光体は電子写真複写機に利用するのみならず、レーザービームプリンター、CRT プリンター、LED プリンター、液晶プリンター及びレーザー製版等の電子写真応用分野にも広く用いることができるものである。
【実施例】
【0074】
本発明の測定方法の詳細について記述する。
<2,5-ジアリール-1,3,4-オキサジアゾール誘導体の長波長側吸収端の測定>
サンプル濃度5×10−5mol/lのDMF溶液を作製し、分光吸収スペクトル装置により光路長10mmの石英セルを使用して吸収スペクトルを測定する。得られた最も長波長側の吸収ピークの最大吸光度を求め、その大きさが1/10になる長波長側のスペクトル地点を長波長側吸収端とし、その波長を読む。
【0075】
<微小表面硬度計による弾性変位率の測定>
本発明の弾性変位率τeは、ダイヤモンド圧子を用いた微小表面硬度計の負荷−除荷試験により測定される。図4に示すように、圧子がサンプルに接触した点(a)から一定負荷速度で圧子を押し込み(負荷過程)、設定荷重に達したときの最大変位(b)で一定時間静止し、更に一定除荷速度で圧子を引き上げ(除荷過程)、最終的に圧子に荷重がかからなくなった点を塑性変位(c)とする。このとき、得られる押し込み深さと荷重の曲線が図5のように記録され、最大変位(b)と塑性変位(c)弾性変位率τeは以下の式で算出される。
【0076】
【数1】

かかる弾性変位率測定は、一定温湿度下で行われ、本発明で弾性変位率とは、温度22℃、相対湿度55%の環境条件下で行なわれた上記試験の測定値を示す。
【0077】
本発明では、ダイナミック微小表面硬度計DUH−201(島津製作所製)、三角すい圧子(115゜)を用いているが、これと同等の性能を有するいかなる装置で測定された値でもよい。弾性変位率τeの標準偏差はサンプル上の任意の10箇所について弾性変位率τeを測定し、この10個の値より算出した。測定においては本発明の架橋表面層を有する感光体をアルミニウムシリンダー上に作製し、これを適宜切断して用いた。弾性変位率τeは基板のバネ特性の影響を受けるため、基板としては剛直な金属版、スライドガラスなどが適当である。更に、架橋表面層の下層(例えば、電荷輸送層、電荷発生層など)の硬度や弾性の要素も影響するため、これらの影響を減らすように最大変位が架橋表面層膜厚の1/10になるように規定加重を調整した。架橋表面層のみを単独で基板上に作製すると、下層成分の混入、下層との接着性が変わり、必ずしも感光体の表面架橋層を正確に再現できないため、好ましくない。
【0078】
次に、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中において使用する「部」は、すべて重量部を表わす。
【実施例1】
【0079】
φ60mm の表面研磨したアルミニウムシリンダー上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、第一の電荷輸送層用塗工液を順次、浸積塗布、乾燥することにより、3.5 μm の下引き層、0 .2 μm の電荷発生層、20 μm の第一の電荷輸送層を形成した。この第一の電荷輸送層上に下記組成の第二の電荷輸送層用塗工液をスプレー塗工し、20 分自然乾燥した後、メタルハライドランプ:160W /cm 、照射距離:120mm 、照射強度:500mW /cm 、照射時間:180 秒の条件で光照射を行ない塗布膜を硬化させた。更に130 ℃で30 分乾燥を加え4 .0 μm の第二の電荷輸送層を設け、本発明の電子写真感光体を作製した。
【0080】
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂6 部
(ベッコゾール1307 −60 −EL 、大日本インキ化学工業製)
メラミン樹脂 4 部
(スーパーベッカミン G −821 −60 、大日本インキ化学工業製)
酸化チタン 50 部
メチルエチルケトン50 部
【0081】
〔電荷発生層用塗工液〕
チタニルフタロシアニン 1.5 部
ポリビニルブチラール(XYHL 、UCC 製)0 .5 部
シクロヘキサノン 200 部
メチルエチルケトン80 部
【0082】
〔第一の電荷輸送層用塗工液〕
ビスフェノールZ ポリカーボネート10 部
(パンライトTS −2050 、帝人化成製)
下記構造式(I)の低分子電荷輸送物質(D −1 ) 10 部
(構造式I)
【0083】
【化15】


テトラヒドロフラン100 部
1%シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液 0 .2 部
(KF50 −100CS 、信越化学工業製)
BHT 0.2部
【0084】
〔第二の電荷輸送層用塗工液〕
下記非電荷輸送性多官能ラジカル重合性モノマー 10 部
トリメチロールプロパントリアクリレート(KAYARAD TMPTA 、日本化薬製)
分子量:296 、官能基数:3 官能、分子量/官能基数=99
下記ラジカル重合性電荷輸送物質(D−2) 10 部
(構造式II)
【0085】
【化16】

光重合開始剤 1 部
1 −ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(イルガキュア184 、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
2,5-ジアリール-1,3,4-オキサジアゾール誘導体 1 部
前記具体例No.1の化合物
(この化合物の長波長側吸収端は、369nmであった。)
テトラヒドロフラン 100 部
【実施例2】
【0086】
実施例1において2,5-ジアリール-1,3,4-オキサジアゾール誘導体を前記具体例2の化合物に変える他は同様にして電子写真感光体を作製した。
この時、前記具体例2の化合物の長波長側吸収端は336nmであった。
【実施例3】
【0087】
実施例1において2,5-ジアリール-1,3,4-オキサジアゾール誘導体を前記具体例3の化合物に変える他は同様にして電子写真感光体を作製した。
この時、前記具体例3の化合物の長波長側吸収端は357nmであった。
【実施例4】
【0088】
実施例1において2,5-ジアリール-1,3,4-オキサジアゾール誘導体を前記具体例4の化合物に変える他は同様にして電子写真感光体を作製した。
この時、前記具体例4の化合物の長波長側吸収端は330nmであった。
【実施例5】
【0089】
実施例1において2,5-ジアリール-1,3,4-オキサジアゾール誘導体を前記具体例5の化合物に変える他は同様にして電子写真感光体を作製した。
この時、前記具体例5の化合物の長波長側吸収端は343nmであった。
【実施例6】
【0090】
実施例1において2,5-ジアリール-1,3,4-オキサジアゾール誘導体を前記具体例6の化合物に変える他は同様にして電子写真感光体を作製した。
この時、前記具体例6の化合物の長波長側吸収端は364nmであった。
【実施例7】
【0091】
実施例1において2,5-ジアリール-1,3,4-オキサジアゾール誘導体を前記具体例7の化合物に変える他は同様にして電子写真感光体を作製した。
この時、前記具体例7の化合物の長波長側吸収端は361nmであった。
【実施例8】
【0092】
実施例1において2,5-ジアリール-1,3,4-オキサジアゾール誘導体を前記具体例8の化合物に変える他は同様にして電子写真感光体を作製した。
この時、前記具体例8の化合物の長波長側吸収端は347nmであった。
【実施例9】
【0093】
実施例1において2,5-ジアリール-1,3,4-オキサジアゾール誘導体を前記具体例9の化合物に変える他は同様にして電子写真感光体を作製した。
この時、前記具体例9の化合物の長波長側吸収端は347nmであった。
【実施例10】
【0094】
実施例1において2,5-ジアリール-1,3,4-オキサジアゾール誘導体を前記具体例10の化合物に変える他は同様にして電子写真感光体を作製した。
この時、前記具体例10の化合物の長波長側吸収端は334nmであった。
【実施例11】
【0095】
実施例1において2,5-ジアリール-1,3,4-オキサジアゾール誘導体を下記構造IIIの化合物に変える他は同様にして電子写真感光体を作製した。
この時、下記(構造式III)の化合物の長波長側吸収端は428nmであった。
(構造式III)
【0096】
【化17】

【実施例12】
【0097】
実施例1において2,5-ジアリール-1,3,4-オキサジアゾール誘導体を下記構造IVの化合物に変える他は同様にして電子写真感光体を作製した。
この時、下記(構造式IV)の化合物の長波長側吸収端は402nmであった。
(構造式IV)
【0098】
【化18】

【0099】
<比較例1>
実施例1において2,5-ジアリール-1,3,4-オキサジアゾール誘導体を用いない他は同様にして電子写真感光体を作製した。
【0100】
<比較例2>
実施例1において2,5-ジアリール-1,3,4-オキサジアゾール誘導体を下記構造Vの化合物に変える他は同様にして電子写真感光体を作製した。
この時、下記(構造式V)の化合物の長波長側吸収端は388nmであった。
(構造式V)
【0101】
【化19】

【0102】
<比較例3>
実施例1において2,5-ジアリール-1,3,4-オキサジアゾール誘導体を下記構造の化合物に変える他は同様にして電子写真感光体を作製した。この時、この化合物の長波長吸収端は345nmであった。
【0103】
【化20】

【0104】
以上の実施例1〜12及び比較例1〜3で得られた電子写真感光体をスコロトロン帯電器により-800Vに帯電させ、780nmの半導体レーザーにより、光量0.30uj/cm2、照射時間89msで全面書き込みを行った後、感光体の長手方向と周方向の電位を測定し、その中の最大電位と最小電位の測定を行った。また、微小表面硬度計にて感光体長手方向の任意な10箇所の平均値として弾性変位率τeを測定した。それらの結果を、表1に示す。
【0105】
【表1】

【0106】
以上のように、一般式(1)又は一般式(2)で表される2,5-ジアリール-1,3,4-オキサジアゾール誘導体の添加により、硬度をほとんど落とすことなく感光体面内の最大電位と最小電位の差が小さくなっていることがわかる。一方、ジメチルアミノ基を置換基に有する2,5-ジアリール-1,3,4-オキサジアゾール誘導体を添加した場合は比較例2が示すように残留電位が大きくなり光照射後の電位が高くなると共に、面内電位差を小さくできていないことがわかる。
【0107】
感光体の機械的耐久性を示す弾性変位率τeを見ると、いずれも高耐久の目安となる35%以上を満たしており、2,5-ジアリール-1,3,4-オキサジアゾール誘導体無添加の場合と比べてほとんど変わりがなく、耐久性への副作用が少ないことがわかる。
但し、2,5-ジアリール-1,3,4-オキサジアゾール誘導体の長波長側吸収端が380nmを超える実施例11及び実施例12及び比較例2の場合は、長波長側吸収端が380nm以下の実施例1〜10に比べてやや弾性変位率が小さくなっており、紫外線照射による架橋反応時に一部の光が2,5-ジアリール-1,3,4-オキサジアゾール誘導体に吸収されることで架橋反応が僅かに阻害されているためと推測される。従って、2,5-ジアリール-1,3,4-オキサジアゾール誘導体としては長波長側吸収端が380nm以下のものを使用するのがより好ましいことがわかる。
【0108】
これらにより、特定の2,5-ジアリール-1,3,4-オキサジアゾール誘導体を第二の電荷輸送層に添加することで、特にその長波長側吸収端が380nm以下の物を使用することで、機械的耐久性は従来の高耐久電子写真感光体と変わりなく、より高画質な画像出力が可能になっていることが明らかである。
【実施例13】
【0109】
実施例1において、φ60mm の表面研磨したアルミニウムシリンダーをφ100mmの表面切削加工したアルミニウムシリンダーに代えた他は同様にして電子写真感光体を作製した。
この電子写真感光体をリコー製オンデマンドプリンティングRICOH Pro C9000にセットし、1200×1200dpiの解像度でリコーフルカラーPPC用紙タイプ6000のA4用紙を用い、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各中間調帯模様のテストパターンの連続500枚の画像出力を毎分90枚の印刷速度で行った。1〜5枚目及び495〜500枚目の画像を並べ、画像濃度の面内ムラをそれぞれ目視でランク評価した。
ランク5:ムラが見られない
ランク4:ほとんどムラが見られない
ランク3:一部の画像で僅かなムラが見られる
ランク2:画像全てに僅かなムラが見られる
ランク1:画像全てにムラが明瞭に見られる
その結果を表−2に記す。
【0110】
<比較例4、5>
実施例13において、第二の電荷輸送層に2,5-ジアリール-1,3,4-オキサジアゾール誘導体を用いない他は同様にして作製した電子写真感光体、及び比較例3で作製した電子写真感光体をを用いる他は同様にして画像濃度の面内ムラを評価した。その結果を、表2に合わせて記す。
【0111】
【表2】

【0112】
以上のように、本発明の電子写真感光体は、従来品と比べて画像濃度の面内のムラが小さく、高画質な画像出力が可能になっている。また、この特性が大量高速画像出力の後にも持続されており、商業印刷分野に求められる高画質、高速、大量印刷時の安定性に対応できる画像出力方法、画像出力装置を提供できる。
【実施例14】
【0113】
実施例1で作製した電子写真感光体をリコー製デジタルフルカラー複合機MP C7500 SPのプロセスカートリッジに着装し、本体に取り付けて600×600dpiの解像度でリコーマイリサイクルペーパーGPのA4用紙を用い、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各中間調帯模様のテストパターンの連続100枚の画像出力を毎分60枚の印刷速度で行った。1〜5枚目及び95〜100枚目の画像を並べ、画像濃度の面内ムラをそれぞれ目視で実施例14と同様にランク評価した。その結果を表−3に示す。
【0114】
<比較例6,7>
比較例1及び比較例3で作製した電子写真感光体を用いる他は実施例14と同様にして画像濃度の面内ムラを評価した。その結果を表3に合わせて示す。
【0115】
【表3】

【0116】
以上のように、本発明の電子写真感光体を用いた画像形成装置用プロセスカートリッジを用いた場合でも、従来品と比べて画像濃度の面内のムラが小さく、高画質な画像出力が可能になっている。また、この特性が大量高速画像出力の後にも持続されており、商業印刷分野に求められる高画質、高速、大量印刷時の安定性に対応できる画像形成装置用プロセスカートリッジを提供できる。
【符号の説明】
【0117】
1 感光体
2 除電ランプ
3 帯電チャージャ
5 画像露光部
6 現像ユニット
7 転写前チャージャ
8 レジストローラ
9 転写紙
10 転写チャージャ
11 分離チャージャ
12 分離爪
13 クリーニング前チャージャ
14 ファーブラシ
15 クリーニングブレード
31 導電性支持体
33 感光層
35 電荷発生層
37 第一の電荷輸送層
39 第二の電荷輸送層
101 感光ドラム
102 帯電装置
103 露光
104 現像装置
105 転写体
106 転写装置
107 クリーニングブレード
【先行技術文献】
【特許文献】
【0118】
【特許文献1】特開2000−66425号公報
【特許文献2】特開2006−113321号公報
【特許文献3】特許第4145820号公報
【特許文献4】特開2004−302451号公報
【特許文献5】特開2004−302452号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体上に少なくとも電荷発生層、第一の電荷輸送層、第二の電荷輸送層が順次積層され、第一の電荷輸送層は主に低分子電荷輸送物質をバインダー樹脂中に含有させた分子分散膜で形成され、第二の電荷輸送層は少なくともラジカル重合性電荷輸送性化合物と3官能以上のラジカル重合性モノマーと光重合開始剤とを混合した組成物に紫外線を照射してラジカル硬化反応させた架橋膜で形成されている電子写真感光体において、該架橋膜が下記一般式(1)及び/又は一般式(2)で表される2,5-ジアリール-1,3,4-オキサジアゾール誘導体を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【化1】

(式中、iは、1〜4の整数を表し、Ar1は、i=1のときナフチル基又はビフェニリル基を表し、iが2〜4のときアリール基を表し、該複数のアリール基は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。Ar2は、i=1のときナフチル基又はビフェニリル基を表しiが2〜4のときiに対応するベンゼン環の2〜4価基を表す。)
【化2】

(式中、j及びkは、1〜2の整数を表し、Ar3とAr6はアリール基を表す。Ar4は、ベンゼン環の2乃至4価基表し、Ar5はkに対応するベンゼン環の2価基又は3価基を表す。Xは、2価の炭化水素基を表し、置換基を介して隣接するAr4と環構造を形成してもよい。
【請求項2】
前記Ar1〜Arはそれぞれ、置換基を有さないものであることを特徴とする前記(1)に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記Ar1、Ar、またはArが表すアリール基は、フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基であることを特徴とする前記(1)または第(2)に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記2,5-ジアリール-1,3,4-オキサジアゾール誘導体は、長波長側光吸収端が380nm以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1に記載の電子写真感光体を用いて、少なくとも帯電、画像露光、現像、転写を繰り返し行なうことを特徴とする画像形成方法。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1に記載の電子写真感光体を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれかに記載の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、転写手段、クリーニング手段および除電手段よりなる群から選ばれた少なくとも一つの手段を有するものであって、画像形成装置本体に着脱可能としたことを特徴とする画像形成装置用プロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−64720(P2011−64720A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212696(P2009−212696)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】