説明

電子写真感光体、及び画像形成装置

【課題】光感度の優れた電子写真感光体を提供すること。
【解決手段】導電性基体と感光層とを備え、前記感光層が、例えば、5−(フェニルチオあるいはフェニルイミノ)−1,8−ナフタレンジカルボン酸イミドに、酢酸パラジウムのピバリン酸溶液を添加し、大気下で加熱攪拌させる事による環化反応を進行させ、5,6−位で複素5員環を形成させた、特定のナフトイミド誘導体を含有することを特徴とする電子写真感光体を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、及び前記電子写真感光体を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置に備えられる電子写真感光体としては、セレン等の無機材料からなる感光層を備える無機感光体以外に、結着樹脂、電荷発生剤、及び電荷輸送剤等の有機材料を感光体材料の主成分として含む感光層を備える有機感光体が好ましく用いられる。このような有機感光体は、無機感光体と比較して、製造が容易であるとともに、感光層を構成する感光体材料の選択肢が多様で構造設計の自由度が高いことが知られている。
【0003】
また、電子写真感光体は、高画質な画像を形成させるためには、光感度等が優れていることが求められる。そして、このような光感度に優れた電子写真感光体を得るためには、感光層に含有される、正孔輸送剤や電子輸送剤等の電荷輸送剤に様々な条件が求められる。例えば、電荷輸送能が高いこと、感光層を形成する際に用いられる塗布液の溶媒、例えば、テトラヒドロフラン等に対して溶解性が高いこと、及び感光層に含有される結着樹脂との相溶性が高いこと等が求められる。
【0004】
また、電子写真感光体の感光層を形成するために用いられる感光体材料としては、例えば、特許文献1及び特許文献2に記載の組成物が挙げられる。
【0005】
特許文献1には、光導電体(電荷発生剤)と、所定の構造を有する1,4,5,8−ナフタレンビスジカルボキシイミド誘導体増感性化合物とを含有する光導電性組成物が記載されている。特許文献1によれば、この1,4,5,8−ナフタレンビスジカルボキシイミド誘導体増感性化合物が電子輸送剤として用いられることが開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、電子輸送剤として、所定の構造を有する環状ビスジカルボキシイミドを含有する組成物が記載されている。特許文献2によれば、電子輸送能が優れていること等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4442193号明細書
【特許文献2】米国特許第5468583号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の組成物を、感光体材料として用いて電子写真感光体を製造しても、光感度が充分に高いものではなかった。
【0009】
本発明は、光感度の優れた電子写真感光体を提供することを目的とする。また、前記電子写真感光体を備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鋭意検討した結果、特許文献1及び特許文献2に記載の組成物を感光体材料として用いて製造した電子写真感光体の光感度が充分に高いものではない理由を、以下のように推察した。
【0011】
特許文献1及び特許文献2に記載の組成物に含有されている電子輸送剤の、感光層を形成する際に用いられる塗布液の溶媒、例えば、テトラヒドロフラン等に対して溶解性が充分に高いものではないことによると考えられる。よって、形成された感光層中で電子輸送剤が充分に均一に分散されていないことにより、光感度が充分に高まらないと考えられる。
【0012】
一方、電子輸送剤の電子輸送能を高めるためには、一般的に、π電子共役平面を広げるように分子設計をして、電子輸送剤の電子受容性を高めることが考えられる。
【0013】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の組成物に含有されている電子輸送剤より、π電子共役平面を広げるように分子設計をすると、得られた化合物は、感光層を形成する際に用いられる塗布液の溶媒に対して溶解性がより低下し、光感度がより低下してしまうと考えられる。
【0014】
これに対して、感光層を形成する際に用いられる塗布液の溶媒に対して溶解性を高めるために、π電子共役平面を狭める分子設計をすると、得られた化合物は、電子輸送能が低下し、光感度が低下する結果になると考えられる。
【0015】
本発明者は、かかる事情に鑑み、鋭意検討することによって、下記化合物を感光層に含有させることにより、光感度を向上させることができることを見出した。
【0016】
本発明の一態様に係る電子写真感光体は、導電性基体と感光層とを備え、前記感光層が、下記式(1)で表されるナフトイミド誘導体を含有することを特徴とする。
【0017】
【化1】

【0018】
ここで、式(1)中、Xは、酸素原子又はイミノ基を示し、R及びRは、同一又は異なって、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜10のアルキル基で置換された炭素数6〜12のアリール基、炭素数6〜12のアラルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、又はシアノ基を示し、置換基数nは、0〜3を示す。なお、置換基数nが1より大きい場合、各Rは、同一であっても異なっていてもよい。
【0019】
このような構成によれば、光感度の優れた電子写真感光体を提供することができる。
【0020】
このことは、以下のことによると考えられる。
【0021】
まず、上記式(1)で表されるナフトイミド誘導体は、特許文献1及び特許文献2に記載されている電子輸送剤より対称性が低いと考えられる。一般的に、対称性を下げると、π電子共役平面が狭くなると考えられるが、上記式(1)のように分子設計することによって、対称性を低下させても、π電子共役平面を広いまま維持できると考えられる。よって、上記式(1)で表されるナフトイミド誘導体は、優れた電子輸送能を有すると考えられる。
【0022】
また、上記式(1)で表されるナフトイミド誘導体は、特許文献1及び特許文献2に記載されている電子輸送剤より対称性が低下しているので、感光層を形成する際に用いられる塗布液の溶媒に対して溶解性を高めることができると考えられる。このことから、形成された感光層中で、上記式(1)で表されるナフトイミド誘導体が均一に分散されていると考えられる。よって、上記式(1)で表されるナフトイミド誘導体の優れた電子輸送能を充分に発揮することができると考えられる。
【0023】
以上のことから、電子写真感光体の光感度が優れたものになると考えられる。
【0024】
また、前記電子写真感光体において、前記感光層が、少なくとも電荷発生剤、正孔輸送剤、電子輸送剤、及び結着樹脂が同一層に含有される層であって、前記電子輸送剤が、前記ナフトイミド誘導体を含有することが好ましい。
【0025】
このような構成によれば、光感度の優れ、さらに、感光層の構成が簡単で製造が容易になり、皮膜欠陥の発生も抑制された電子写真感光体を提供することができる。このことは、具体的には、以下のことである。
【0026】
まず、このような構成の電子写真感光体は、いわゆる単層型感光体と呼ばれるものである。そして、このような単層型感光体は、前記感光層として、少なくとも電荷発生剤、正孔輸送剤、電子輸送剤、及び結着樹脂が同一層に含有される層を形成すればよく、感光層の構成が簡単で製造が容易であると考えられる。より具体的には、感光層が、電荷発生剤及び結着樹脂を含有する電荷発生層と、正孔輸送剤等の電荷輸送剤及び結着樹脂を含有する電荷輸送層との少なくとも2つの層を積層したものである、いわゆる積層型感光体を製造するには、少なくとも2つの層を形成しなければならず、単層型感光体のほうが、容易に製造できる。
【0027】
また、積層型感光体は、前記電荷発生層及び前記電荷輸送層のそれぞれが、単層型感光体の感光層より薄い場合が多く、また、前記電荷発生層及び前記電荷輸送層のうちの外層を構成する方の層が損傷しやすい。比較的薄く、損傷しやすい外層を構成する層が損傷するだけで、電子写真感光体の性能が著しく低下する。これに対して、単層型感光体は、積層型感光体の前記電荷発生層や前記電荷輸送層より厚い場合が多いので、感光層が完全に損傷することが少ないと考えられる。よって、単層型感光体は、皮膜欠陥の発生を抑制できると考えられる。
【0028】
また、本発明の他の一態様に係る画像形成装置は、像担持体と、前記像担持体の表面を帯電するための帯電装置と、帯電された像担持体の表面を露光して、前記像担持体の表面に静電潜像を形成するための露光装置と、前記静電潜像をトナー像として現像するための現像装置と、前記トナー像を前記像担持体から被転写体へ転写するための転写装置とを備え、前記像担持体が、前記電子写真感光体であることを特徴とする。
【0029】
このような構成によれば、高画質な画像を形成することができる画像形成装置を提供することができる。このことは、画像形成装置に備える像担持体として、光感度に優れた電子写真感光体を適用することによると考えられる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、光感度の優れた電子写真感光体を提供することができる。また、前記電子写真感光体を備えた画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態に係る電子写真感光体の一例である単層型感光体の構造を示す概略断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る電子写真感光体の他の一例である積層型感光体の構造を示す概略断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る電子写真感光体を備えた画像形成装置の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係る実施形態について説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0033】
本発明の実施形態に係る電子写真感光体(単に、「感光体」とも称する。)は、導電性基体と感光層とを備え、前記感光層が、下記式(1)で表されるナフトイミド誘導体を含有する電子写真感光体である。
【0034】
【化2】

【0035】
ここで、式(1)中、Xは、酸素原子又はイミノ基を示し、R及びRは、同一又は異なって、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜10のアルキル基で置換された炭素数6〜12のアリール基、炭素数6〜12のアラルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、又はシアノ基を示し、置換基数nは、0〜3を示す。なお、置換基数nが1より大きい場合、各Rは、同一であっても異なっていてもよい。
【0036】
このような電子写真感光体は、光感度の優れた電子写真感光体である。よって、このような電子写真感光体を備えた画像形成装置は、高画質な画像を形成することができる。
【0037】
このことは、以下のことによると考えられる。
【0038】
まず、上記式(1)で表されるナフトイミド誘導体は、特許文献1及び特許文献2に記載されている電子輸送剤より対称性が低いと考えられる。一般的に、対称性を下げると、π電子共役平面が狭くなると考えられるが、上記式(1)のように分子設計することによって、対称性を低下させても、π電子共役平面を広いまま維持できると考えられる。よって、上記式(1)で表されるナフトイミド誘導体は、優れた電子輸送能を有すると考えられる。
【0039】
また、上記式(1)で表されるナフトイミド誘導体は、特許文献1及び特許文献2に記載されている電子輸送剤より対称性が低下しているので、感光層を形成する際に用いられる塗布液の溶媒に対して溶解性を高めることができると考えられる。このことから、形成された感光層中で、上記式(1)で表されるナフトイミド誘導体が均一に分散されていると考えられる。よって、上記式(1)で表されるナフトイミド誘導体の優れた電子輸送能を充分に発揮することができると考えられる。
【0040】
以上のことから、本実施形態に係る電子写真感光体は、光感度が優れたものになると考えられる。
【0041】
なお、上記式(1)で表されるナフトイミド誘導体については、後述する。
【0042】
また、前記感光体は、上記構成を満たしていれば、すなわち、上記式(1)で表されるナフトイミド誘導体が感光層に含有された電子写真感光体であれば、その他は特に限定されない。具体的には、例えば、図1に示すような、前記感光層が、電荷発生剤、正孔輸送剤や電子輸送剤等の電荷輸送剤、及び結着樹脂が同一層に含有される層である感光体、いわゆる単層型感光体であってもよい。また、図2に示すような、前記感光層が、電荷発生剤及び結着樹脂を含有する電荷発生層と、正孔輸送剤等の電荷輸送剤及び結着樹脂を含有する電荷輸送層との少なくとも2つの層を積層したものである感光体、いわゆる積層型感光体であってもよい。なお、図1は、本発明の実施形態に係る電子写真感光体の一例である単層型感光体の構造を示す概略断面図である。また、図2は、本発明の実施形態に係る電子写真感光体の他の一例である積層型感光体の構造を示す概略断面図である。
【0043】
まず、前記単層型感光体10は、図1に示すように、導電性基体12と、前記導電性基体12上に、感光層14として、電荷発生剤、電荷輸送剤、及び結着樹脂が同一層に含有される層とが備えられたものである。そして、前記単層型感光体10は、前記導電性基体12と、前記感光層14とを備えていれば、特に限定されない。具体的には、例えば、図1(a)に示すように、前記導電性基体12上に前記感光層14を直接備えていてもよいし、図1(b)に示すように、前記導電性基体12と前記感光層14との間に中間層16を備えていてもよい。また、図1(a)や図1(b)に示すように、前記感光層14が最外層となって露出していてもよいし、図1(c)に示すように、前記感光層14上に保護層18を備えていてもよい。
【0044】
次に、前記積層型感光体20は、図2に示すように、導電性基体22と、前記導電性基体22上に、感光層として、電荷発生剤及び結着樹脂を含有する電荷発生層24と、電荷輸送剤及び結着樹脂を含有する電荷輸送層22との少なくとも2つの層を積層した層とが備えられたものである。そして、前記積層型感光体20は、前記導電性基体22と、前記電荷輸送層22及び前記電荷発生層24を積層した感光層とを備えていれば、特に限定されない。具体的には、前記積層型感光体20は、図2(a)に示すように、前記導電性基体22上に、前記電荷発生層24及び前記電荷輸送層22の順で積層したものであってもよいし、図2(b)に示すように、前記導電性基体22上に、前記電荷輸送層22及び前記電荷発生層24の順で積層したものであってもよい。また、図2(a)や図2(b)に示すように、前記導電性基体22上に前記感光層を直接備えていてもよいし、図2(c)や図2(e)に示すように、前記導電性基体22と前記感光層との間に中間層16を備えていてもよい。また、図2(d)や図2(f)に示すように、前記電荷輸送層22と前記電荷発生層24との間に中間層16を備えていてもよい。また、前記感光層が最外層となって露出していてもよいし、前記感光層上に保護層を備えていてもよい。
【0045】
また、前記感光体は、上記構成を満たしていれば、すなわち、前記感光層に、前記ナフトイミド誘導体が含有された感光体であれば、光感度に優れた感光体が得られる。そして、感光体の構造としては、上述したような、単層型感光体、及び積層型感光体が挙げられる。この中でも、単層型感光体が好ましい。すなわち、前記感光層が、少なくとも電荷発生剤、正孔輸送剤、電子輸送剤、及び結着樹脂が同一層に含有される層であって、前記電子輸送剤が、前記ナフトイミド誘導体を含有することが好ましい。
【0046】
そうすることによって、光感度の優れるだけではなく、感光層の構成が簡単で製造が容易になり、皮膜欠陥の発生をも抑制することができる。このことは、具体的には、以下のことである。
【0047】
まず、このような単層型感光体は、前記感光層として、少なくとも電荷発生剤、正孔輸送剤、電子輸送剤、及び結着樹脂が同一層に含有される層を形成すればよく、感光層の構成が簡単で製造が容易であると考えられる。より具体的には、感光層が、電荷発生剤及び結着樹脂を含有する電荷発生層と、電荷輸送剤及び結着樹脂を含有する電荷輸送層との少なくとも2つの層を積層したものである、いわゆる積層型感光体を製造するには、少なくとも2つの層を形成しなければならず、単層型感光体のほうが、容易に製造できる。
【0048】
また、積層型感光体は、前記電荷発生層及び前記電荷輸送層のそれぞれが、単層型感光体の感光層より薄い場合が多く、また、前記電荷発生層及び前記電荷輸送層のうちの外層を構成する方の層が損傷しやすい。比較的薄く、損傷しやすい外層を構成する層が損傷するだけで、電子写真感光体の性能が著しく低下する。これに対して、単層型感光体は、積層型感光体の前記電荷発生層や前記電荷輸送層より厚い場合が多いので、感光層が完全に損傷することが少ないと考えられる。よって、単層型感光体は、皮膜欠陥の発生を抑制できると考えられる。
【0049】
[導電性基体]
前記導電性基体は、電子写真感光体の導電性基体として用いることができるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、導電性を有する材料で少なくとも表面部が構成されるもの等が挙げられる。すなわち、具体的には、例えば、導電性を有する材料からなるものであってもよいし、プラスチック材料等の表面を、導電性を有する材料で被覆されたものであってもよい。また、導電性を有する材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドニウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼、真鍮等が挙げられる。また、導電性を有する材料としては、前記導電性を有する材料を1種で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて、例えば、合金等として用いてもよい。また、前記導電性基体としては、上記の中でも、アルミニウム又はアルミニウム合金からなることが好ましい。そうすることによって、より好適な画像を形成することができる感光体を提供することができる。このことは、感光層から導電性基体への電荷の移動が良好であることによると考えられる。
【0050】
また、前記導電性基体の形状は、特に限定されない。具体的には、例えば、シート状であっても、ドラム状であってもよい。すなわち、適用する画像形成装置の構造に合わせて、シート状であっても、ドラム状であってもよく、特に限定されない。
【0051】
[感光層]
前記感光層としては、上記式(1)で表されるナフトイミド誘導体を含有すれば、特に限定されない。すなわち、前記感光層には、前記ナフトイミド誘導体が含有されていれば、それ以外の感光層に含有される成分、例えば、電荷発生剤、正孔輸送剤や電子輸送剤等の電荷輸送剤、及び結着樹脂等は限定されない。なお、前記ナフトイミド誘導体は、電荷輸送剤の1つである電子輸送剤として作用すると考えられる。また、感光層の層構造としては、特に限定されず、具体的には、例えば、上述したような、図1及び図2に示す感光層の構造が挙げられる。
【0052】
(ナフトイミド誘導体)
本実施形態で用いられるナフトイミド誘導体は、上記式(1)で表されるナフトイミド誘導体であれば、特に限定されない。
【0053】
上記式(1)中、各置換基は、以下に示すものである。
【0054】
Xは、酸素原子又はイミノ基を示す。この中でも、酸素原子であることが好ましい。Xが酸素原子であれば、得られた感光体の光感度がより良好となる。このことは、前記ナフトイミド誘導体の、感光層を形成する際に用いられる塗布液の溶媒に対する溶解性が高いことによると考えられる。
【0055】
また、R及びRは、上述したように、同一であっても、異なっていてもよい。また、Rの置換基数nが1より大きい場合、各Rも、同一であっても異なっていてもよい。また、その際でも、R及びRは、同一であっても、異なっていてもよい。すなわち、R及びRは、それぞれ独立している。
【0056】
また、R及びRは、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜10のアルキル基で置換された炭素数6〜12のアリール基、炭素数6〜12のアラルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、又はシアノ基を示す。この中でも、Rは、炭素数6〜12のアリール基、及び炭素数1〜10のアルキル基で置換された炭素数6〜12のアリール基が好ましく、ジメチルフェニル基(キシリル基)等の炭素数1〜10のアルキル基で置換された炭素数6〜12のアリール基がより好ましい。また、Rは、炭素数1〜6のアルコキシ基、及びシアノ基が好ましく、シアノ基がより好ましい。
【0057】
また、Rの置換基数nは、0〜3を示す。この中でも、置換基数nは、0及び1が好ましい。
【0058】
また、ここでの炭素数1〜6のアルキル基とは、炭素数1〜6のアルキル基であれば、特に限定されず、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、及びヘキシル基等が挙げられる。
【0059】
また、ここでの炭素数6〜12のアリール基とは、炭素数6〜12のアリール基であれば、特に限定されない。具体的には、フェニル基、ナフチル基、及びビフェニリル基等が挙げられる。
【0060】
また、ここでの炭素数1〜10のアルキル基で置換された炭素数6〜12のアリール基とは、前記アリール基が炭素数1〜10のアルキル基で置換されたものであれば、特に限定されない。また、炭素数1〜10のアルキル基も、炭素数1〜10のアルキル基であれば、特に限定されず、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。炭素数1〜10のアルキル基で置換された炭素数6〜12のアリール基の具体例としては、例えば、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、o−クメニル基、m−クメニル基、p−クメニル基、2,3−キシリル基、及び2,6−キシリル基等が挙げられる。
【0061】
また、ここでの炭素数6〜12のアラルキル基とは、炭素数6〜12のアラルキル基であれば、特に限定されない。具体的には、ベンジル基、α−メチルベンジル基、フェネチル基、スチリル基、シンナミル基、3−フェニルプロピル基、4−フェニルブチル基、5−フェニルペンチル基、及び6−フェニルヘキシル基等が挙げられる。
【0062】
また、ここでの炭素数3〜10のシクロアルキル基は、炭素数3〜10のシクロアルキル基であれば、特に限定されない。具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
【0063】
また、ここでの炭素数1〜6のアルコキシ基は、炭素数1〜6のアルコキシ基であれば、特に限定されない。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、及びヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0064】
また、前記ナフトイミド誘導体の含有量としては、特に限定されない。具体的には、例えば、前記感光層に含有される結着樹脂100質量部に対して、5〜100質量部であることが好ましく、10〜80質量部であることがより好ましい。前記ナフトイミド誘導体の含有量が少なすぎると、光感度を向上させるという効果を充分に発揮できない傾向がある。また、前記ナフトイミド誘導体の含有量が多すぎると、前記ナフトイミド誘導体が、前記感光層に含有される結着樹脂中に均一に分散することができず、微小な結晶化を起こしたり、また、前記ナフトイミド誘導体が、電荷発生剤や正孔輸送剤に接触しすぎることにより、かえって光感度を低下させる傾向がある。さらに、膜強度の低下やガラス転移点の低下を引き起こす傾向もある。
【0065】
(ナフトイミド誘導体の合成方法)
前記ナフトイミド誘導体の合成方法としては、上記式(1)で表されるナフトイミド誘導体を合成することができれば、特に限定されない。具体的には、例えば、下記式(2)に示すように合成することができる。
【0066】
【化3】

【0067】
より具体的には、上記式(A)で表される化合物に、酢酸パラジウムのピバリン酸溶液を添加し、大気下で加熱攪拌させることにより、上記式(2)の反応を進行させる。その後、その反応溶液に水を投入し、析出してきた固体をろ別する。そして、その固体をカラムクロマトグラフィーで精製する。そうすることによって、上記式(1)で表されるナフトイミド誘導体を得ることができる。
【0068】
その際、酢酸パラジウムのピバリン酸溶液の、酢酸パラジウム濃度としては、前記反応を進行させることができれば、特に限定されない。具体的には、酢酸パラジウムのピバリン酸溶液に対する、酢酸パラジウムの濃度としては、例えば、5モル/L程度が挙げられる。
【0069】
そして、その酢酸パラジウムのピバリン酸溶液の添加量としては、前記反応を進行させることができれば、特に限定されない。具体的には、例えば、上記式(A)で表される化合物1ミリモルに対する、酢酸パラジウムのピバリン酸溶液の添加量として、100ml程度が挙げられる。
【0070】
また、上記反応時における加熱条件としては、前記反応を進行させることができれば、特に限定されない。具体的には、例えば、液温が120℃程度となるような加熱条件が挙げられる。また、攪拌時間としては、前記反応を進行させることができれば、特に限定されない。具体的には、例えば、5時間程度が挙げられる。
【0071】
(電荷発生剤)
前記電荷発生剤としては、電子写真感光体の電荷発生剤として用いることができるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、X型無金属フタロシアニン(x−H2Pc)、Y型オキソチタニルフタロシアニン(Y−TiOPc)、ペリレン顔料、ビスアゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、トリスアゾ顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、セレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム、アモルファスシリコン等の無機光導電材料の粉末、ピリリウム塩、アンサンスロン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料、キナクリドン系顔料等が挙げられる。
【0072】
また、前記電荷発生剤は、所望の領域に吸収波長を有するように、前記各電荷発生剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。さらに、前記各電荷発生剤のうち、特に半導体レーザ等の光源を使用したレーザビームプリンタやファクシミリ等のデジタル光学系の画像形成装置には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体が必要となるため、例えば、X型無金属フタロシアニン(x−H2Pc)等の無金属フタロシアニンやY型オキソチタニルフタロシアニン(Y−TiOPc)等のオキソチタニルフタロシアニン等のフタロシアニン系顔料が好適に用いられる。なお、上記フタロシアニン系顔料の結晶形については特に限定されず、種々のものが使用される。
【0073】
また、350〜550nmの短波長レーザ光源を用いた画像形成装置の場合には、前記電荷発生剤として、アンサンスロン系顔料、ペリレン系顔料が使用される。
【0074】
(電荷輸送剤)
前記電荷輸送剤としては、電子写真感光体の感光層に含まれる電荷輸送剤として用いることができるものであれば、特に限定されない。また、電荷輸送剤としては、一般的に、正孔輸送剤と電子輸送剤とが挙げられる。
【0075】
前記正孔輸送剤としては、電子写真感光体の感光層に含まれる正孔輸送剤として用いることができるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、ベンジジン誘導体、2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール等のオキサジアゾール系化合物、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセン等のスチリル系化合物、ポリビニルカルバゾール等のカルバゾール系化合物、有機ポリシラン化合物、1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン等のピラゾリン系化合物、ヒドラゾン系化合物、トリフェニルアミン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、トリアゾール系化合物等の含窒素環式化合物、縮合多環式化合物等が挙げられる。この中でも、トリフェニルアミン系化合物やベンジジン誘導体が好ましく、ベンジジン誘導体がより好ましい。また、前記正孔輸送剤としては、前記例示した各正孔輸送剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0076】
また、前記電子輸送剤としては、電子写真感光体の感光層に含まれる電子輸送剤として用いることができるものであれば、特に限定されない。本実施形態に係る感光体は、感光層に、上記式(1)で表されるナフトイミド誘導体が含有される。そして、このナフトイミド誘導体が電子輸送剤として作用しうる。すなわち、本実施形態に係る感光体は、前記電子輸送剤として、上記式(1)で表されるナフトイミド誘導体を含有したものが挙げられる。そして、前記感光体としては、前記電子輸送剤として、上記式(1)で表されるナフトイミド誘導体のみを含有する感光体であってもよい。
【0077】
また、前記電子輸送剤としては、前記ナフトイミド誘導体以外に、他の電子輸送剤を含有してもよい。その他の電子輸送剤としては、具体的には、例えば、キノン誘導体、ナフトキノン誘導体、アントラキノン誘導体、マロノニトリル誘導体、チオピラン誘導体、トリニトロチオキサントン誘導体、3,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン誘導体、ジニトロアントラセン誘導体、ジニトロアクリジン誘導体、ニトロアントアラキノン誘導体、ジニトロアントラキノン誘導体、テトラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアントラセン、ジニトロアクリジン、ニトロアントラキノン、ジニトロアントラキノン、無水コハク酸、無水マレイン酸、ジブロモ無水マレイン酸等が挙げられる。また、前記電子輸送剤としては、前記例示した各電子輸送剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0078】
(結着樹脂)
前記結着樹脂としては、電子写真感光体の感光層に含まれる結着樹脂として用いることができるものであれば、特に限定されない。具体的には、例えば、スチレン系樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、アクリル共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂や、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、その他架橋性の熱硬化性樹脂、さらにエポキシアクリレート樹脂、ウレタン−アクリレート共重合樹脂等の光硬化性樹脂等が挙げられる。この中でも、ポリカーボネート樹脂が好ましい。また、前記結着樹脂としては、前記例示した各結着樹脂を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0079】
(添加剤)
前記感光体には、電子写真特性に悪影響を与えない範囲で、前記電荷発生剤、前記電荷輸送剤、及び結着樹脂以外の各種添加剤を含有してもよい。前記添加剤としては、具体的には、例えば、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、1重項クエンチャー、紫外線吸収剤等の劣化防止剤、軟化剤、可塑剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナー、界面活性剤、及びレベリング剤等が挙げられる。また、感光層の感度を向上させるために、例えばテルフェニル、ハロナフトキノン類、アセナフチレン等の公知の増感剤を電荷発生剤と併用してもよい。
【0080】
[電子写真感光体の製造方法]
次に、電子写真感光体の製造方法について説明する。
【0081】
まず、前記単層型感光体の製造方法について説明する。
【0082】
前記単層型感光体は、前記電荷発生剤、前記電荷輸送剤(正孔輸送剤、電子輸送剤)、前記結着樹脂、及び必要に応じて各種添加剤等を溶剤に溶解又は分散させた塗布液を、塗布等によって、前記導電性基体上に塗布し、乾燥することによって、製造することができる。前記塗布方法としては、特に限定されないが、例えば、ディップコート法等が挙げられる。
【0083】
前記単層型感光体において、前記電荷発生剤、前記電荷輸送剤、及び前記結着樹脂の各含有量は、適宜選定され、特に限定されない。具体的には、例えば、前記電荷発生剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、0.1〜50質量部であることが好ましく、0.5〜30質量部であることがより好ましい。また、前記電子輸送剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、5〜100質量部であることが好ましく、10〜80質量部であることがより好ましい。また、前記正孔輸送剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、5〜500質量部であることが好ましく、25〜200質量部であることがより好ましい。さらに、正孔輸送剤と電子輸送剤との総量、すなわち、前記電荷輸送剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、20〜500質量部であることが好ましく、30〜200質量部であることがより好ましい。
【0084】
また、前記単層型感光体の感光層の厚さは、感光層として充分に作用することができれば、特に限定されない。具体的には、例えば、5〜100μmであることが好ましく、10〜50μmであることが好ましい。
【0085】
次に、前記積層型感光体の製造方法について説明する。
【0086】
前記積層型感光体は、以下のような方法等によって、製造することができる。
【0087】
具体的には、例えば、まず、前記電荷発生剤、結着樹脂、及び必要に応じて各種添加剤等を溶剤に溶解又は分散させた電荷発生層形成用塗布液と、前記電荷輸送剤、結着樹脂、及び必要に応じて各種添加剤等を溶剤に溶解又は分散させた電荷輸送層形成用塗布液とを調製する。そして、前記電荷発生層形成用塗布液及び前記電荷輸送層形成用塗布液のいずれか一方の塗布液を、塗布等によって、前記導電性基体上に塗布し、乾燥することによって、前記電荷発生層及び前記電荷輸送層のいずれか一方を形成させる。その後、他方の塗布液を、前記電荷発生層又は前記電荷輸送層が形成された導電性基体上に塗布し、乾燥することによって、他方の層を形成させる。そうすることによって、前記積層型感光体を製造することができる。前記塗布方法としては、特に限定されないが、例えば、ディップコート法等が挙げられる。
【0088】
前記積層型感光体において、前記電荷発生剤、前記電荷輸送剤、及び前記結着樹脂の各含有量は、適宜選定され、特に限定されない。具体的には、例えば、前記電荷発生剤の含有量は、前記電荷発生層を構成する結着樹脂100質量部に対して、5〜1000質量部であることが好ましく、30〜500質量部であることがより好ましい。
【0089】
また、前記電荷輸送剤の含有量は、前記電荷輸送層を構成する結着樹脂100質量部に対して、10〜500質量部であることが好ましく、25〜100質量部であることがより好ましい。
【0090】
また、前記電荷発生層及び前記電荷輸送層の各層の厚さは、それぞれの層として充分に作用することができれば、特に限定されない。前記電荷発生層の厚さは、具体的には、例えば、0.01〜5μmであることが好ましく、0.1〜3μmであることがより好ましい。また、前記電荷輸送層の厚さは、具体的には、例えば、2〜100μmであることが好ましく、5〜50μmであることがより好ましい。
【0091】
また、前記塗布液に含有される溶剤としては、前記各成分を溶解又は分散させることができれば、特に限定されない。具体的には、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類、n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等の脂肪族系炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸メチル等のエステル類、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらの溶剤は、前記例示した溶剤を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0092】
前記電子写真感光体は、電子写真方式の画像形成装置の像担持体として用いることができる。また、この画像形成装置としては、電子写真方式のものであれば、特に限定されない。前記電子写真感光体は、具体的には、例えば、例えば、後述の画像形成装置の像担持体として用いることができる。
【0093】
[画像形成装置]
前記電子写真感光体を備えるための画像形成装置としては、電子写真方式の画像形成装置であれば、特に限定されない。具体的には、例えば、像担持体と、前記像担持体の表面を帯電するための帯電装置と、帯電された像担持体の表面を露光して、前記像担持体の表面に静電潜像を形成するための露光装置と、前記静電潜像をトナー像として現像するための現像装置と、前記トナー像を前記像担持体から被転写体へ転写するための転写装置とを備え、前記像担持体が、前記電子写真感光体である画像形成装置が挙げられる。
【0094】
また、後述するような、複数色のトナーを用いるタンデム方式のカラー画像形成装置が好ましい。より具体的には、例えば、後述するような、複数色のトナーを用いるタンデム方式のカラー画像形成装置が挙げられる。ここでは、タンデム方式のカラー画像形成装置について説明する。
【0095】
なお、本実施形態に係る電子写真感光体を備えた画像形成装置は、各表面上にそれぞれ異なった各色のトナーによるトナー像を形成させるために、所定方向に並設された、複数の像担持体と、各像担持体に対向して配置され、表面にトナーを担持して搬送し、搬送されたトナーを、前記各像担持体の表面にそれぞれ供給する、現像ローラを備えた複数の現像装置とを備え、前記像担持体として、前記電子写真感光体を用いる。
【0096】
図3は、本発明の実施形態に係る電子写真感光体を備えた画像形成装置の構成を示す概略図である。ここでは、前記画像形成装置1としては、カラープリンタ1を例に挙げて説明する。
【0097】
このカラープリンタ1は、図3に示すように、箱型の機器本体1aを有している。この機器本体1a内には、用紙Pを給紙する給紙部2と、この給紙部2から給紙された用紙Pを搬送しながら当該用紙Pに画像データ等に基づくトナー像を転写する画像形成部3と、この画像形成部3で用紙P上に転写された未定着トナー像を用紙Pに定着する定着処理を施す定着部4とが設けられている。さらに、前記機器本体1aの上面には、前記定着部4で定着処理の施された用紙Pが排紙される排紙部5が設けられている。
【0098】
前記給紙部2は、給紙カセット121、ピックアップローラ122、給紙ローラ123,124,125、及びレジストローラ126を備えている。給紙カセット121は、機器本体1aから挿脱可能に設けられ、各サイズの用紙Pを貯留する。ピックアップローラ122は、給紙カセット121の図3に示す左上方位置に設けられ、給紙カセット121に貯留されている用紙Pを1枚ずつ取り出す。給紙ローラ123,124,125は、ピックアップローラ122によって取り出された用紙Pを用紙搬送路に送り出す。レジストローラ126は、給紙ローラ123,124,125によって用紙搬送路に送り出された用紙Pを一時待機させた後、所定のタイミングで画像形成部3に供給する。
【0099】
また、給紙部2は、機器本体1aの図3に示す左側面に取り付けられる不図示の手差しトレイとピックアップローラ127とをさらに備えている。このピックアップローラ127は、手差しトレイに載置された用紙Pを取り出す。ピックアップローラ127によって取り出された用紙Pは、給紙ローラ123,125によって用紙搬送路に送り出され、レジストローラ126によって、所定のタイミングで画像形成部3に供給される。
【0100】
前記画像形成部3は、画像形成ユニット7と、この画像形成ユニット7によってその表面(接触面)にコンピュータ等から電送された画像データに基づくトナー像が1次転写される中間転写ベルト31と、この中間転写ベルト31上のトナー像を給紙カセット121から送り込まれた用紙Pに2次転写させるための2次転写ローラ32とを備えている。
【0101】
前記画像形成ユニット7は、上流側(図3では右側)から下流側に向けて順次配設されたブラック用ユニット7Kと、イエロー用ユニット7Yと、シアン用ユニット7Cと、マゼンタ用ユニット7Mとを備えている。各ユニット7K,7Y,7C及び7Mは、それぞれの中央位置に像担持体としての感光体ドラム37が矢符(時計回り)方向に回転可能に配置されている。そして、各感光体ドラム37の周囲には、帯電器39、露光装置38、現像装置71、不図示のクリーニング装置及び除電手段としての除電器等が、回転方向上流側から順に各々配置されている。なお、前記感光体ドラム37としては、前記電子写真感光体を用いる。また、本実施形態に係る電子写真感光体は、除電手段としての除電器を取り除いた画像形成装置(プリンタ)にも適用可能である。
【0102】
帯電器39は、矢符方向に回転されている感光体ドラム37の周面を均一に帯電させる。帯電器39としては、例えば、非接触型放電方式のコロトロン型およびスコロトロン型の帯電器、接触方式の帯電ローラおよび帯電ブラシ等が挙げられる。露光装置38は、いわゆるレーザ走査ユニットであり、帯電器39によって均一に帯電された感光体ドラム37の周面に、上位装置であるパーソナルコンピュータ(PC)から入力された画像データに基づくレーザ光を照射し、感光体ドラム37上に画像データに基づく静電潜像を形成する。現像装置71は、静電潜像が形成された感光体ドラム37の周面にトナーを供給することで、画像データに基づくトナー像を形成させる。そして、このトナー像が中間転写ベルト31に1次転写される。クリーニング装置は、中間転写ベルト31へのトナー像の1次転写が終了した後、感光体ドラム37の周面に残留しているトナーを清掃する。除電器は、1次転写が終了した後、感光体ドラム37の周面を除電する。クリーニング装置及び除電器によって清浄化処理された感光体ドラム37の周面は、新たな帯電処理のために帯電器へ向かい、新たな帯電処理が行われる。
【0103】
中間転写ベルト31は、無端状のベルト状回転体であって、表面(接触面)側が各感光体ドラム37の周面にそれぞれ当接するように駆動ローラ33、従動ローラ34、バックアップローラ35、及び1次転写ローラ36等の複数のローラに架け渡されている。また、中間転写ベルト31は、各感光体ドラム37と対向配置された1次転写ローラ36によって感光体ドラム37に押圧された状態で、前記複数のローラによって無端回転するように構成されている。駆動ローラ33は、ステッピングモータ等の駆動源によって回転駆動し、中間転写ベルト31を無端回転させるための駆動力を与える。従動ローラ34、バックアップローラ35、及び1次転写ローラ36は、回転自在に設けられ、駆動ローラ33による中間転写ベルト31の無端回転に伴って従動回転する。これらのローラ34,35,36は、駆動ローラ33の主動回転に応じて中間転写ベルト31を介して従動回転するとともに、中間転写ベルト31を支持する。
【0104】
1次転写ローラ36は、1次転写バイアス(トナーの帯電極性とは逆極性)を中間転写ベルト31に印加する。そうすることによって、各感光体ドラム37上に形成されたトナー像は、各感光体ドラム37と1次転写ローラ36との間で、駆動ローラ33の駆動により矢符(反時計回り)方向に周回する中間転写ベルト31に重ね塗り状態で順次転写(1次転写)される。
【0105】
2次転写ローラ32は、トナー像と逆極性の2次転写バイアスを用紙Pに印加する。そうすることによって、中間転写ベルト31上に1次転写されたトナー像は、2次転写ローラ32とバックアップローラ35との間で用紙Pに転写され、これによって、用紙Pにカラーの転写画像(未定着トナー像)が転写される。
【0106】
前記定着部4は、画像形成部3で用紙Pに転写された転写画像に定着処理を施すものであり、通電発熱体により加熱される加熱ローラ41と、この加熱ローラ41に対向配置され、周面が加熱ローラ41の周面に押圧当接される加圧ローラ42とを備えている。
【0107】
そして、前記画像形成部3で2次転写ローラ32により用紙Pに転写された転写画像は、当該用紙Pが加熱ローラ41と加圧ローラ42との間を通過する際の加熱による定着処理で用紙Pに定着される。そして、定着処理の施された用紙Pは、排紙部5へ排紙されるようになっている。また、本実施形態のカラープリンタ1では、定着部4と排紙部5との間の適所に搬送ローラ6が配設されている。
【0108】
排紙部5は、カラープリンタ1の機器本体1aの頂部が凹没されることによって形成され、この凹没した凹部の底部に排紙された用紙Pを受ける排紙トレイ51が形成されている。
【0109】
前記画像形成装置1は、以上のような画像形成動作によって、用紙P上に画像形成を行う。そして、上記のようなタンデム方式の画像形成装置では、前記像担持体として、前記電子写真感光体が備えられているので、高画質な画像を形成することができる。
【実施例】
【0110】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
【0111】
[ナフトイミド誘導体の合成]
まず、各実施例で用いるナフトイミド誘導体の合成について説明する。
【0112】
(合成例1)
下記式(3)中の、式(1−1)で表されるナフトイミド誘導体の合成を、下記式(3)に示すように合成した。
【0113】
【化4】

【0114】
具体的には、まず、酢酸パラジウム(分子量224)112mg(0.5ミリモル)を、ピバリン酸に溶解させて、100mLの溶液にした。すなわち、酢酸パラジウムの濃度が5モル/Lの酢酸パラジウムのピバリン酸溶液を調製した。
【0115】
次に、上記式(A−1)で表される化合物(分子量393)3.93g(10ミリモル)に、上記酢酸パラジウムのピバリン酸溶液100mLを添加し、大気下で、液温を120℃になるように加熱させ、5時間攪拌させた。そうすることにより、上記式(2)の反応を進行させた。その後、その反応溶液に水を投入し、析出してきた固体をろ別する。そして、その固体をカラムクロマトグラフィーで精製する。そうすることによって、上記式(1−1)で表されるナフトイミド誘導体3.13g(約8ミリモル)を得た。収率は、約80%であった。
【0116】
(合成例2)
下記式(4)中の、式(1−2)で表されるナフトイミド誘導体の合成を、下記式(4)に示すように合成した。
【0117】
【化5】

【0118】
具体的には、上記式(A−1)で表される化合物(分子量393)3.93g(10ミリモル)の代わりに、上記式(A−2)で表される化合物(分子量418)4.18g(10ミリモル)を用いること以外、合成例1と同様にした。そうすることによって、上記式(1−2)で表されるナフトイミド誘導体2.91g(約7ミリモル)を得た。収率は、約70%であった。
【0119】
(合成例3)
下記式(5)中の、式(1−3)で表されるナフトイミド誘導体の合成を、下記式(5)に示すように合成した。
【0120】
【化6】

【0121】
具体的には、上記式(A−1)で表される化合物(分子量393)3.93g(10ミリモル)の代わりに、上記式(A−3)で表される化合物(分子量422)4.22g(10ミリモル)を用いること以外、合成例1と同様にした。そうすることによって、上記式(1−3)で表されるナフトイミド誘導体3.15g(約7.5ミリモル)を得た。収率は、約75%であった。
【0122】
[実施例1]
(感光体の製造)
電荷発生剤として、下記式(6−1)で表されるX型無金属フタロシアニン(x−H2Pc)を5質量部と、正孔輸送剤として、下記式(7)で表されるベンジジン誘導体を50質量部と、電子輸送剤として、上記式(1−1)で表されるナフトイミド誘導体を30質量部と、結着樹脂として、ビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量50,000)を100質量部とを、テトラヒドロフラン800質量部の中に添加した。そして、ボールミルを用いて、50時間、混合・分散させた。そうすることによって、感光層用の塗布液が得られた。
【0123】
【化7】

【0124】
【化8】

【0125】
[実施例2]
電荷発生剤として、前記X型無金属フタロシアニン(x−H2Pc)の代わりに、下記式(6−2)で表されるY型オキソチタニルフタロシアニン(Y−TiOPc)を用いたこと以外、実施例1と同様である。
【0126】
【化9】

【0127】
[実施例3]
電子輸送剤として、上記式(1−1)で表されるナフトイミド誘導体の代わりに、上記式(1−2)で表されるナフトイミド誘導体を用いたこと以外、実施例1と同様である。
【0128】
[実施例4]
電子輸送剤として、上記式(1−1)で表されるナフトイミド誘導体の代わりに、上記式(1−2)で表されるナフトイミド誘導体を用いたこと以外、実施例2と同様である。
【0129】
[実施例5]
電子輸送剤として、上記式(1−1)で表されるナフトイミド誘導体の代わりに、上記式(1−3)で表されるナフトイミド誘導体を用いたこと以外、実施例1と同様である。
【0130】
[実施例6]
電子輸送剤として、上記式(1−1)で表されるナフトイミド誘導体の代わりに、上記式(1−3)で表されるナフトイミド誘導体を用いたこと以外、実施例2と同様である。
【0131】
[比較例1]
電子輸送剤として、上記式(1−1)で表されるナフトイミド誘導体の代わりに、下記式(8)で表される化合物を用いたこと以外、実施例1と同様である。
【0132】
【化10】

【0133】
[比較例2]
電子輸送剤として、上記式(1−1)で表されるナフトイミド誘導体の代わりに、上記式(8)で表される化合物を用いたこと以外、実施例2と同様である。
【0134】
[評価]
実施例1〜6及び比較例1,2に係る電子写真感光体を、以下の方法により評価した。
【0135】
(光感度評価)
ジェンテック(GENTEC)社製のドラム感度試験機を用いて、各感光体の光感度を測定した。
【0136】
具体的には、感光体の周面電位が700Vとなるように、感光体の周面に電圧を印加して帯電させた。その後、帯電させた感光体に対して、露光光を80ミリ秒間照射することによって、露光した。その際、露光光として、ハロゲンランプから照射される白色光から、バンドパスフィルタを用いて取り出した光であって、波長780nm、半値幅20nm、光強度16μW/cmの単色光を用いた。そして、露光開始から330ミリ秒経過した時点での、感光体の表面電位を残留電位Vr(単位:V)として測定した。この残留電位Vrが小さいほど、光感度が良好であることを示す。
【0137】
この結果を、感光層の各材料とともに、表1に示す。
【0138】
【表1】

【0139】
表1からわかるように、導電性基体と感光層とを備え、前記感光層が、上記式(1)で表されるナフトイミド誘導体を含有する電子写真感光体(実施例1〜6)は、上記式(1)で表されるナフトイミド誘導体以外の化合物を電子輸送剤として含有する場合(比較例1,2)と比較して、光感度が良好であることがわかった。
【0140】
比較例1,2に係る感光体は、感光層を形成させる際に用いる塗布液に、電子輸送剤が充分に溶解しなかった。このことが、光感度を充分に高めることができなかった原因であると考えられる。すなわち、形成された感光層の中での、電子輸送剤の分散性が不充分であり、電子輸送剤の電子輸送能を充分に発揮できないことによると考えられる。
【0141】
さらに、実施例1〜4に係る感光体は、実施例5,6に係る感光体と比較しても、光感度がより良好であることがわかった。このことは、式(1−1)及び式(1−2)で表されるナフトイミド誘導体が、式(1−3)で表されるナフトイミド誘導体より、塗布液の溶媒に対する溶解性が高いことによると考えられる。すなわち、形成された感光層の中での、電子輸送剤の分散性が充分に高く、電子輸送剤の電子輸送能を充分に発揮できることによると考えられる。
【符号の説明】
【0142】
10 単層型電子写真感光体
12 導電性基体
14 感光層
16 中間層
18 保護層
20 積層型電子写真感光体
22 電荷輸送層
24 電荷発生層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基体と感光層とを備え、
前記感光層が、下記式(1)で表されるナフトイミド誘導体を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【化1】


(式(1)中、Xは、酸素原子又はイミノ基を示し、R及びRは、同一又は異なって、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜10のアルキル基で置換された炭素数6〜12のアリール基、炭素数6〜12のアラルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、又はシアノ基を示し、置換基数nは、0〜3を示す。なお、置換基数nが1より大きい場合、各Rは、同一であっても異なっていてもよい。)
【請求項2】
前記感光層が、少なくとも電荷発生剤、正孔輸送剤、電子輸送剤、及び結着樹脂が同一層に含有される層であって、
前記電子輸送剤が、前記ナフトイミド誘導体を含有する請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
像担持体と、
前記像担持体の表面を帯電するための帯電装置と、
帯電された像担持体の表面を露光して、前記像担持体の表面に静電潜像を形成するための露光装置と、
前記静電潜像をトナー像として現像するための現像装置と、
前記トナー像を前記像担持体から被転写体へ転写するための転写装置とを備え、
前記像担持体が、請求項1又は請求項2に記載の電子写真感光体であることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−118118(P2012−118118A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265265(P2010−265265)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリュ−ションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】