電子写真感光体、現像装置及び画像形成装置
【課題】電荷輸送層のバインダ樹脂にふっ素原子を直接結合させることによって、感光層のリーク耐性を向上させることができ、厚膜化による残留電位の上昇並びに薄膜化による電気特性及びリーク耐性の悪化が生じることがなく、安定した画質を得ることができ、コストが低くなるようにする。
【解決手段】導電性支持体61上に感光層60を積層した電子写真感光体であって、前記感光層60の最上層の電荷輸送層64中のバインダ樹脂は、次の式(1)に示されるR1〜R10の少なくとも1つの場所に、ふっ素原子を含む。
【数1】
【解決手段】導電性支持体61上に感光層60を積層した電子写真感光体であって、前記感光層60の最上層の電荷輸送層64中のバインダ樹脂は、次の式(1)に示されるR1〜R10の少なくとも1つの場所に、ふっ素原子を含む。
【数1】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、現像装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真技術は、高品質の画像を即時に得ることができるので、複写機の分野に留まらず、各種プリンタの分野でも広く採用されている。電子写真技術の中核となるのは感光体であるが、特に、無公害であり、かつ、成膜や製造が容易である有機系の光導電材料を使用した感光体、すなわち、有機系感光体が現在では一般的である。
【0003】
さらに、有機系感光体の中でも、電荷発生層及び電荷輸送層を積層して形成された感光層を有する機能分離型の感光体が広く普及している。機能分離型の感光体は、効率の高い電荷発生物質及び電荷輸送物質をそれぞれ組み合わせることによって、高感度な感光体が得られること、材料の選択範囲が広く安全性の高い感光体が得られること、及び、塗布の生産性が高くコスト面でも比較的有利なことから、感光体の主流となっている。
【0004】
機能分離型の感光体における静電潜像形成のメカニズムを説明する。まず、感光体を帯電した後に光を照射すると、光は電荷輸送層を通過し、電荷発生層中の電荷発生物質によって吸収され、これにより、電荷が発生する。すると、発生した電荷は、電荷発生層と電荷輸送層との界面で電荷輸送層に注入され、さらに、電界によって電荷輸送層中を最表面に向かって移動し、感光体の表面電荷を中和することにより静電潜像を形成する(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
近年の電子写真装置においては、コロトロンに代わり、オゾン発生が少ない接触帯電方式の帯電装置が用いられるようになってきている。しかし、接触帯電方式の帯電装置を用いた場合、感光体に、接触帯電時に加わる局所的な高電場によって電気的なピンホールが生じ、該ピンホール上に絶縁破壊が生じて、これが画質欠陥となって現れることがある。
【0006】
このようなピンホールは、感光層の塗膜欠陥によって発生する場合もあるが、それ以外にも、電子写真装置内で発生した導電性の異物が感光体に接触したり、感光体中に貫入したりして、接触帯電方式の帯電装置と感光体の基体との間に導電路を形成しやすくなったために発生することもある。
【0007】
顕著な場合には、電子写真装置内の他の部材から混入したカーボンファイバ、キャリア粉等の異物や電子写真装置内に混入したゴミが感光体に突き刺さり、接触帯電方式の帯電装置からのリーク点を形成する場合もある。
【0008】
もっとも、このような問題については、感光体の下引層を厚膜化することで基体の欠陥を隠蔽(ぺい)し、かつ、電気特性上の安定を得るために、導電性微粉末を含有する層を基体上に塗布形成する方法が採用されている。すなわち、アルミニウムの基体上に導電粉分散型の導電層を形成し、さらに、その上層に下引層を形成する方法である。この場合、導電層で基体隠蔽を行うとともに抵抗調整を行い、ブロッキング機能を下引層に持たせるようになっている。
【0009】
また、下引層を厚膜化せず、下引層中に適当な粉体抵抗を有する金属酸化物微粒子を分散させることによって、リーク耐性を向上させる方法も採用されている。
【特許文献1】特開2005−331567号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記従来の感光体においては、感光層のリークを抑制するために下引層を厚膜化すると、繰り返しの使用によって残留電位が上昇するという問題があった。また、下引層に金属酸化物微粒子を分散させる方法では、金属酸化物微粒子の粉体抵抗値の制御が難しく、粉体抵抗値が低いとリーク耐性が不十分となり、粉体抵抗値が高いと残留電位が上昇するという問題があった。このように、下引層のみの改良で残留電位、電気特性の安定性及びリーク耐性の問題を解決することは不可能である。
【0011】
本発明は、前記従来の問題点を解決して、電荷輸送層のバインダ樹脂にふっ素原子を直接結合させることによって、感光層のリーク耐性を向上させることができ、厚膜化による残留電位の上昇並びに薄膜化による電気特性及びリーク耐性の悪化が生じることがなく、安定した画質を得ることができ、コストの低い電子写真感光体、現像装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そのために、本発明の電子写真感光体においては、導電性支持体上に感光層を積層した電子写真感光体であって、前記感光層の最上層の電荷輸送層中のバインダ樹脂は、次の式(1)に示されるR1〜R10の少なくとも1つの場所に、ふっ素原子を含む。
【0013】
【数1】
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電子写真感光体においては、電荷輸送層のバインダ樹脂にふっ素原子を直接結合させる。これにより、感光層のリーク耐性を向上させることができ、厚膜化による残留電位の上昇並びに薄膜化による電気特性及びリーク耐性の悪化が生じることがなく、安定した画質を得ることができ、コストを低下させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図2は本発明の第1の実施の形態における画像形成装置の概略構成図である。
【0017】
図において、10は本実施の形態における画像形成装置であり、例えば、プリンタ、ファクシミリ機、複写機、各種の機能を併せ持つ複合機等であるが、いかなる種類のものであってもよい。また、前記画像形成装置10は、各色の画像を形成する画像形成カートリッジ20を多段式に配設してカラー印刷を行うカラープリンタであってもよいが、ここでは、説明の都合上、単一の画像形成カートリッジ20によって単色(例えば、黒色)の印刷を行うモノクロプリンタである場合について説明する。
【0018】
この場合、前記画像形成カートリッジ20は、画像形成装置10内に着脱可能に取り付けられ、現像装置として機能する。そして、前記画像形成カートリッジ20は、一体的に形成されたカートリッジケース21、並びに、該カートリッジケース21に配設された電子写真感光体としてのドラム型の感光体ドラム11、該感光体ドラム11の表面を帯電する帯電装置としての帯電ローラ12、前記感光体ドラム11の表面を現像する現像部13及び前記感光体ドラム11の表面をクリーニングするクリーニング部14を備える。
【0019】
前記帯電ローラ12は、感光体ドラム11に接し、回転可能に配設されている。
【0020】
また、前記現像部13は、現像剤担持体としての現像ローラ15、トナー層形成部材としての現像ブレード16、現像剤供給部材としてのトナー供給ローラ17及び攪拌(かくはん)部材18を備え、上部には着脱可能なトナーカートリッジ22が装着されている。そして、前記現像部13は、感光体ドラム11の表面に現像剤としてのトナーを供給することによって、静電潜像担持体としての感光体ドラム11の表面に形成された静電潜像を現像する。
【0021】
ここで、前記現像ローラ15は、導電性シャフトの周囲に形成された半導電性弾性体を備え、感光体ドラム11に当接して回転する。また、前記トナー供給ローラ17も導電性シャフトの周囲に形成された半導電性弾性体を備える。前記現像ブレード16は、現像ローラ15表面のトナーを薄層化するとともに帯電させる。なお、本実施の形態における画像形成装置10は、非磁性一成分接触現像方式を採用するものであり、トナーは非磁性一成分トナーである。
【0022】
前記クリーニング部14は、クリーニングブレード23及びスパイラルスクリュ24を備え、前記クリーニングブレード23によって感光体ドラム11の表面に残留したトナーを掻(か)き落とし、掻き落とされたトナーを前記スパイラルスクリュ24によって図示されないトナーボックスに搬送するようになっている。
【0023】
また、前記感光体ドラム11の下方には、該感光体ドラム11上のトナーを被転写媒体としての用紙31に転写する転写装置としての転写ローラ25が配設されている。
【0024】
前記画像形成装置10内において、画像形成カートリッジ20の下方には、用紙31が通過する用紙搬送路35aが配設されている。また、該用紙搬送路35aに用紙31を供給する用紙搬送部35bは、ホッパステージ32を備え、該ホッパステージ32上に用紙31が積載されている。そして、ホッパステージ32の下方にはばね33が配設され、該ばね33の発揮する上方への付勢力によって、最上位に位置する用紙31は、上方に配設された給送ローラ34に押圧される。該給送ローラ34が回転することによって、ホッパステージ32上に積載された用紙31は、1枚ずつ用紙搬送路35aに繰り出される。
【0025】
該用紙搬送路35aには搬送ローラ36a及び36bが配設され、用紙搬送路35aに繰り出された用紙31は、前記搬送ローラ36a及び36bによって、感光体ドラム11と転写ローラ25との間に搬送される。
【0026】
また、前記用紙搬送路35aの下流側には、定着器40が配設されている。該定着器40は、用紙31を加熱する加熱ローラ40aと用紙31を加圧する加圧ローラ40bとを備え、トナー像を用紙31上に定着させる。さらに、前記定着器40の下流側には排出ローラ37a及び37bが配設され、トナー像が定着された用紙31は、前記排出ローラ37a及び37bによって画像形成装置10の外へ排出される。
【0027】
さらに、該画像形成装置10は、その上部に、支点39を中心に回転可能に取り付けられたカバー38を有する。該カバー38の下部には支持部材26が配設され、該支持部材26には、ばね27を介して露光装置としてのLED(Light Emitting Diode)ヘッド28が配設されている。該LEDヘッド28は、複数のLED素子から成るLEDアレイ、該LEDアレイを駆動するドライバICが搭載された基板、LED素子が発光した光を集光するロッドレンズアレイ等を備える。そして、画像形成装置10の図示されない制御部は、図示されない上位装置等から送信されてきた画像データに基づいて前記LEDヘッド28を駆動し、LED素子を選択的に発光させ、感光体ドラム11上に静電潜像を形成する。なお、前記カバー38を閉じた状態で、LEDヘッド28は、ばね27によって感光体ドラム11側に付勢されている。
【0028】
次に、前記感光体ドラム11を駆動する機構について説明する。
【0029】
図3は本発明の第1の実施の形態における感光体ドラムの全体構造を示す断面図、図4は本発明の第1の実施の形態におけるギヤを示す斜視図である。
【0030】
図3に示されるように、感光体ドラム11の内部には導電体である金属製のシャフト30が配設されている。また、前記感光体ドラム11の内部の一端部には、フランジ41が圧入されて非導電性の接着剤で固定されている。前記フランジ41の材料としては、ポリアミド、ポリカーボネイト、ABS(アルキルベンゼンスルホン酸)樹脂、ポリアセタール等の合成樹脂であって、金属粉、カーボンブラック、グラファイト等の導電性粉末を配合することによって導電化された合成樹脂が用いられる。そして、前記フランジ41はシャフト30に対して回転可能に取り付けられている。
【0031】
また、前記フランジ41の反対側においても、感光体ドラム11の内部に支持部材42が配設されている。該支持部材42は、シャフト30に対して回転可能に取り付けられ、感光体ドラム11の内側に固着されている。そして、前記支持部材42の外側にはギヤ43が接着剤によって固定されている。前記ギヤ43は、感光体ドラム11を回転させるもので、図に示されるように、駆動ギヤ44と噛(か)み合っている。該駆動ギヤ44は、装置フレーム51bに固定支持された固定軸45に回転可能に取り付けられている。そして、駆動ギヤ44が、画像形成装置10の図示されない駆動源によって駆動されると、ギヤ43を介して感光体ドラム11が回転する。
【0032】
前記シャフト30及び感光体ドラム11は、画像形成カートリッジ20のカートリッジケース21に取り付けられている。該カートリッジケース21には軸受穴52a及び52bが形成され、シャフト30の両端部は、前記軸受穴52a及び52bを貫通している。図における左側のカートリッジケース21とフランジ41との間には、導電性の金属から成るカラー46が配設されている。該カラー46は、シャフト30に対して回転可能であるとともに、該シャフト30の軸方向に移動可能である。そして、前記カラー46は、フランジ41及びカートリッジケース21に接触している。
【0033】
前記シャフト30及び感光体ドラム11を備えるカートリッジケース21は、装置フレーム51a及び51bに装着される。該装置フレーム51a及び51bには、それぞれ、長穴47a及び47bが形成されており、該長穴47a及び47bにシャフト30の両端部が係止されることによって、カートリッジケース21が装着される。このとき、前記シャフト30の一端部30aは装置フレーム51aから突出している。
【0034】
また、前記装置フレーム51aの外側には、導電性のばね部材48aがピン48bによって取り付けられている。前記ばね部材48aは図示されないアース用部材に接続されており、内側方向に付勢力を発揮する。装置フレーム51a及び51bに画像形成カートリッジ20が装着されていないとき、ばね部材48aは図に示される位置よりやや内側に位置しているが、前記ばね部材48aの上端部は外側に傾斜しているため、上方から画像形成カートリッジ20を装着することができる。また、装置フレーム51a及び51bに画像形成カートリッジ20が装着された状態では、シャフト30の一端部30aとばね部材48aとは圧接している。
【0035】
図4に示されるように、ギヤ43及び駆動ギヤ44は、はすば歯車から成り、歯の捩(ねじ)り角が互いに逆方向に設定されている。このようなはすば歯車構造によって、前記ギヤ43は図3における左方向に付勢され、これにより、シャフト30の一端部30aとばね部材48aとの接触が良好になる。
【0036】
次に、前記構成の画像形成装置10の動作について説明する。
【0037】
上位装置から画像形成装置10に対して印刷開始の指示が出され、上位装置から画像形成装置10に画像データが送信されると、画像形成装置10の制御部は、給送ローラ34を駆動し、用紙31を用紙搬送路35aに繰り出す。そして、該用紙搬送路35aに繰り出された用紙31は、前記搬送ローラ36a及び36bによって、感光体ドラム11と転写ローラ25との間に搬送される。
【0038】
また、前記制御部は、送信された画像データに基づいてLEDヘッド28を駆動し、該LEDヘッド28のLED素子を選択的に発光させ、あらかじめ帯電ローラ12によって帯電されている感光体ドラム11の表面を露光する。これにより、感光体ドラム11の表面に画像データに対応した静電潜像が形成される。そして、感光体ドラム11は、図2における矢印で示される方向に回転しているので、静電潜像が現像部13に対応する位置に到達すると、現像ローラ15上のトナーが静電気力によって静電潜像に付着する。これにより、感光体ドラム11上にトナー像が形成される。そして、感光体ドラム11は、図2における矢印で示される方向に回転しているので、前記トナー像は、転写ローラ25との接触位置に移動する。
【0039】
この場合、用紙31が感光体ドラム11と転写ローラ25との間に到達するタイミングに合わせて、感光体ドラム11上のトナー像が転写ローラ25との接触位置に到達し、転写ローラ25によってトナー像が用紙31上に転写される。そして、トナー像が転写された用紙31は、定着器40に搬送され、該定着器40の加熱ローラ40aと加圧ローラ40bとの間を通過することによって、トナー像が用紙31に定着される。なお、トナー像が定着された用紙31は、排出ローラ37a及び37bによって画像形成装置10の外へ排出される。
【0040】
次に、前記感光体ドラム11の表面近傍の層構造について説明する。
【0041】
図1は本発明の第1の実施の形態における感光体ドラムの表面近傍の層構造を示す断面図である。
【0042】
図には、感光体ドラム11の表面近傍の断面が示されており、61は、感光体ドラム11のドラム状、すなわち、円筒状の導電性支持体であり、該導電性支持体61上に感光層60が形成されている。前記導電性支持体61は、アルミニウム、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料、又は、表面にアルミニウム、銅、パラジウム、酸化錫(すず)、酸化インジウム等の導電層を設けたポリエステルフィルム、紙等の絶縁性材料から成る。
【0043】
なお、前記導電性支持体61と感光層60との間に、図に示される例のように、下引層62を形成してもよい。該下引層62は、例えば、アルミニウム陽極酸化被膜、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム等の無機層、又は、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、セルロース類、ゼラチン、デンプン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド等の有機層から成る。
【0044】
図に示される例において、感光層60は、下引層62を挟んで導電性支持体61上に形成され、電荷発生物質を主成分とする電荷発生層63と、該電荷発生層63上に形成され、電荷輸送物質及びバインダ樹脂を主成分とする電荷輸送層64とを有する。すなわち、図に示される例において、感光層60は、導電性支持体61上に電荷発生層63と電荷輸送層64とを順に積層した積層型感光層である。なお、前記感光層60は、電荷発生層63と電荷輸送層64とを逆に積層したもの、すなわち、導電性支持体61上に電荷輸送層64を積層し、該電荷輸送層64上に電荷発生層63を積層した逆二層型感光層であってもよい。また、前記感光層60は、電荷輸送層64中に電荷発生物質を分散させた分散型感光層であってもよい。
【0045】
前記感光層60が積層型感光層又は逆二層型感光層である場合、電荷発生層63に使用される電荷発生物質としては、セレン及びその合金、セレン化ヒ素化合物、硫化カドミニウム、酸化亜鉛、その他の無機光導電物質、フタロシアニン、アゾ色素、キナクリドン、多環キノン、ピリリウム塩、チアピリリウム塩、インジゴ、チオインジゴ、アントアントロン、ピラントロン、シアニン等の各種有機顔料、染料を使用することができる。中でも、無金属フタロシアニン、銅塩化インジウム、塩化ガリウム、錫、オキシチタニウム、亜鉛、バナジウム等の金属又はその酸化物、塩化物の配位したフタロシアニン類、モノアゾ、ビスアゾ、トリスアゾ、ポリアゾ類等のアゾ顔料を使用することが好ましい。
【0046】
前記電荷発生層63は、これらの電荷発生物質の微粒子を、例えば、ポリエステル樹脂、ポリビニルアセテート、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリエステル、ポリカーボネイト、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルプロピオナール、ポリビニルブチラール、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、セルロースエステル、セルロースエーテル等の各種バインダ樹脂で結着した形の分散層であってもよい。この場合の電荷発生物質の使用比率は、バインダ樹脂100重量部に対して30〜500重量部の範囲であり、その膜厚は通常0.1〜2〔μm〕が適している。
【0047】
前記電荷発生層63は、必要に応じて塗布性を改善するためのレベリング剤、酸化防止剤、増感剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。また、前記電荷発生層63は、前記電荷発生物質の蒸着膜であってもよい。
【0048】
また、電荷輸送層64に使用される電荷輸送物質としては、例えば、カルバゾール、インドール、イミダゾール、オキサゾール、ビラゾール、オキサジアゾール、ピラゾリン、チアジアゾール等の複素環化合物、アニリン誘導体、ヒドラゾン化合物、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、又は、これらの化合物から成る基を主鎖若しくは側鎖に有する重合体等の電子供与性物質である。
【0049】
前記電荷輸送層64に使用されるバインダ樹脂は、ポリカーボネイトであり、次の式(1)に示される構造を有する。
【0050】
【数1】
【0051】
なお、該(1)に示されるR1〜R10は、各々独立して、水素原子、アルキル基及びアリール基を示す。
【0052】
前記バインダ樹脂は、前記式(1)に示されるR1〜R10の中の一部の水素原子がふっ素原子と置換しており、分子量の1〔重量%〕以上のふっ素原子を含んでいる。
【0053】
なお、前記バインダ樹脂には、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等のビニル重合体、ポリエステル、ポリエステルカーボネイト、ポリスルホン、ポリイミド、フェノキシ、エポキシ、シリコーン樹脂及びこれらの共重合体若しくは部分的架橋硬化物等を単独又は混合物として使用してもよいが、1〔重量%〕以上のふっ素原子を含むことが必要である。
【0054】
前記バインダ樹脂であるポリカーボネイトにふっ素原子を結合させる方法としては、ビスフェノールAと炭酸エステル形成化合物とからポリカーボネイトを製造する際に用いられている公知の方法、例えば、ビスフェノールAとホスゲンとの直接反応(ホスゲン法)、ビスフェノールAとビスアリールカーボネイトとのエステル交換反応(エステル交換法)等の方法を採用することができる。水素原子をふっ素原子に適宜置換したビスフェノールAを用いることによって、ふっ素原子が結合したポリカーボネイトを製造することができる。また、ふっ素原子の置換方法は公知の方法で行われる。
【0055】
なお、ホスゲン法の場合、通常、酸結合剤及び溶媒の存在下において、ビスフェノールAとホスゲンとを反応させる。酸結合剤としては、例えば、ピリジンや、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物などが水溶液として用いられる。また、溶媒としては、例えば、塩化メチレン、クロロホルム等が用いられる。さらに、縮重合反応を促進するために、トリエチルアミンのような第三級アミン、又は、第四級アンモニウム塩などの触媒が用いられる。
【0056】
また、重合度調節には、フェノール、p−t−ブチルフェノール、p−クミルフェノール、長鎖アルキル置換フェノール等の一官能基化合物を分子量調節剤として加えることが好ましい。また、必要に応じ、亜硫酸ナトリウム、ハイドロサルファイト等の酸化防止剤や、フロログルシン、イサチンビスフェノール等の分岐化剤を小量添加してもよい。
【0057】
反応温度は、通常、0〜150〔℃〕の範囲、好ましくは、5〜40〔℃〕の範囲とするのが適当である。また、反応時間は、反応温度によって左右されるが、通常、0.5分〜10時間、好ましくは、1分〜2時間である。さらに、反応中は、反応系のpHを10以上に保持することが望ましい。
【0058】
一方、エステル交換法の場合、ビスフェノールAとビスアリールカーボネイトとを混合し、減圧下で高温において反応させる。反応は、通常、150〜350〔℃〕の範囲、好ましくは、200〜300〔℃〕の範囲の温度で行われる。また、減圧度は、好ましくは、最終で1〔mmHg〕以下にして、エステル交換反応によって副生した前記ビスアリールカーボネイトから由来するフェノール類を系外へ留去させる。反応時間は、反応温度や減圧度などによって左右されるが、通常、1〜10時間程度である。反応は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。また、必要に応じ、分子量調節剤、酸化防止剤、分岐化剤等を添加して反応を行ってもよい。
【0059】
また、前記電荷輸送層64は、必要に応じて、酸化防止剤、増感剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。前記電荷輸送層64の膜厚は、通常、5〜30〔μm〕である。
【0060】
また、前記感光層60が分散型感光層である場合には、前述したバインダ樹脂と電荷輸送物質との組み合わせで、前述した配合比の電荷輸送媒体中に、前述した電荷発生物質が分散される。この場合、電荷発生物質の粒子径が十分に小さいことが必要であり、例えば、1〔μm〕以下である。
【0061】
前記感光層60内に分散される電荷発生物質の量は、少なすぎると十分な感度を得ることができず、多すぎると帯電性の低下、感度の低下等の弊害があるので、0.5〜50〔重量%〕の範囲が好ましい。前記感光層60の膜厚は、5〜30〔μm〕であることが好ましい。また、成膜性、可撓(とう)性、機械的強度等を改良するための公知の可塑剤、残留電位を抑制するための添加剤、分散安定性向上のための分散補助剤、塗布性を改善するためのレベリング剤、界面活性剤、例えば、シリコーンオイル、その他の添加剤が添加されていてもよい。
【0062】
なお、各層の形成方法としては、層に含有させる物質を溶剤に溶解又は分散させて得られた塗布液を順次塗布する等の公知の方法を適用することができる。
【0063】
次に、本実施の形態における実験例について説明する。
【0064】
図5は本発明の第1の実施の形態におけるキズ開口径と画像上白点との関係を示す図、図6は本発明の第1の実施の形態における荷重とキズ開口径との関係を示す第1の図、図7は本発明の第1の実施の形態における荷重とキズ開口径との関係を示す第2の図、図8は本発明の第1の実施の形態における測定した感光層上のキズ開口径と画像上の白点径の寸法を示す図である。
【0065】
まず、リーク耐性の評価方法について説明する。
【0066】
本実験例においては、感光層60として積層型感光層を使用する。電荷発生層63に使用された電荷発生物質は、ビスアゾ化合物であり、バインダ樹脂であるポリビニルブチラールによって結着され、分散層を形成している。なお、電荷発生層63の膜厚は、0.5〔μm〕である。
【0067】
また、電荷輸送層64に使用された電荷輸送物質はビドラゾン化合物である。電荷輸送層64の初期膜厚は、18〔μm〕である。電荷輸送層64に使用されたバインダ樹脂は、前記式(1)に示される構造を有するポリカーボネイトである。評価サンプルは、ふっ素原子の含有量が1〔重量%〕のサンプル、及び、ふっ素原子を含有しないサンプルの2種類である。
【0068】
次に、実験方法について説明する。
【0069】
まず、感光層60の表面に、先端径0.05〔mm〕の絹糸針を用いて、50、100、150、200及び250〔g〕の荷重をかける。次に、前記感光層60を有する感光体ドラム11を用い、画像形成装置10としては株式会社沖データ製のMICROLINE5900を使用して、100〔%〕濃度パターン及び白紙パターンの印刷を行った。前記感光層60の表面に針先から荷重をかけた際、100〔%〕濃度パターンには白点、白紙パターンには黒点が発生した場合に、リークが発生したと判断した。さらに、前記感光体ドラム11の表面をレーザ顕微鏡で観察し、感光層60の表面に形成されたキズの開口径を測定した。
【0070】
本実験例の結果は、図5〜8に示されている。
【0071】
図8には、評価結果が示されている。図8では、画像上白点の径が100〔μm〕以上の場合にはリークが発生したと判断して「×」と表記し、100〔μm〕未満の場合には画像上白点が目視では確認することができないレベルにあることから「○」と表記した。
【0072】
図5及び8から、本実験例においては、キズ開口径が50〔μm〕以上になるとリークが発生したことを確認することができる。また、図6及び8から、キズ開口径が50〔μm〕以上となる荷重を見ると、電荷輸送層64のバインダ樹脂にふっ素原子が含まれていない場合には荷重150〔g〕でリークが発生しているのに対し、ふっ素原子が含まれている場合は荷重200〔g〕までリークが発生していないことが分かる。
【0073】
また、図7には、バインダ樹脂に含まれるふっ素原子の量を0.5及び2〔g〕にした場合の荷重とキズ開口径との関係を図6に重ね合わせたものが示されている。図7から、ふっ素原子の含有量が0.5〔g〕では、あまり効果が見られないことが分かる。
【0074】
このことから、バインダ樹脂として使用されたポリカーボネイトに1〔重量%〕以上のふっ素原子を直接結合させることによって、感光層60のリーク耐性が向上することが確認された。
【0075】
このように、本実施の形態においては、電子写真感光体としての感光体ドラム11の感光層60における電荷輸送層64のバインダ樹脂であるポリカーボネイトに1〔重量%〕以上のふっ素原子を直接結合させることによって、感光層60のリーク耐性を向上させることが可能になる。
【0076】
電子写真感光体におけるリーク耐性について考えた場合、下引層62の膜厚調整や感光層60表面の硬度あるいはすべり性の調整のように、従来では、いくつものパラメータを制御する必要があった。また、感光層60表面のバインダ樹脂にふっ素系樹脂を添加する場合においても、ふっ素系樹脂の分散手法が難しく、効果的にリーク耐性を向上させることが困難であった。
【0077】
本発明の発明者は、感光層60表面のバインダ樹脂を改良することでリーク耐性が向上することを見い出した。これまでは、電子写真感光体においてリーク対策を行う場合に、下引層62や電荷輸送層64の材料を色々代えてサンプルを作製し、評価する必要があった。しかし、本実施の形態のように、電荷輸送層64中のバインダ樹脂のみを代えればよいことが分かり、電子写真感光体の開発コストの削減を期待することができる。
【0078】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0079】
図9は本発明の第2の実施の形態における感光体ドラムの表面近傍の層構造を示す断面図である。
【0080】
本実施の形態においても、前記第1の実施の形態と同様に、導電性支持体61と感光層60との間に下引層62が形成される。そして、前記感光層60においては、下引層62を挟んで導電性支持体61上に形成された電荷発生層63の上に、電荷輸送層下層64aが形成され、該電荷輸送層下層64aの上に電荷輸送層上層64bが形成されている。すなわち、本実施の形態における電荷輸送層64は、順に積層された電荷輸送層下層64a及び電荷輸送層上層64bから成る。
【0081】
前記電荷輸送層下層64aに使用されるバインダ樹脂は、ポリカーボネイトであり、前記第1の実施の形態における電荷輸送層64に使用されるバインダ樹脂としてのポリカーボネイトとほぼ同様の構造を備えるものであるが、ふっ素原子を含有する必要はない。
【0082】
一方、前記電荷輸送層上層64bに使用されるバインダ樹脂は、ポリカーボネイトであり、前記第1の実施の形態における電荷輸送層64に使用されるバインダ樹脂としてのポリカーボネイトと同様に、前記式(1)に示される構造を備え、ふっ素原子を含有する。
【0083】
なお、電荷輸送層64の膜厚は18〔μm〕とした。この場合、感光体ドラム11としての実使用上の膜減りを考慮し、電荷輸送層上層64bの膜厚を8〔μm〕とし、電荷輸送層下層64aの膜厚を10〔μm〕とした。
【0084】
本実施の形態における画像形成装置10のその他の点の構造については、前記第1の実施の形態と同様なので、説明を省略する。
【0085】
次に、本実施の形態における実験例について説明する。
【0086】
図10は本発明の第2の実施の形態におけるキズ開口径と画像上白点との関係を示す図、図11は本発明の第2の実施の形態における荷重とキズ開口径との関係を示す図、図12は本発明の第2の実施の形態における測定した感光層上のキズ開口径と画像上の白点径の寸法を示す図である。
【0087】
本実施の形態においても、前記第1の実施の形態と同様の荷重試験を行った。本実施の形態における実験例の結果は、図10〜12に示されている。
【0088】
図12には、評価結果が示されている。図12では、前記第1の実施の形態における図8と同様に、画像上白点の径が100〔μm〕以上の場合にはリークが発生したと判断して「×」と表記し、100〔μm〕未満の場合には画像上白点が目視では確認することができないレベルにあることから「○」と表記した。
【0089】
図10及び12から、本実験例においては、キズ開口径が50〔μm〕以上になるとリークが発生したことを確認することができる。また、図11及び12から、キズ開口径が50〔μm〕以上となる荷重を見ると、電荷輸送層64のバインダ樹脂にふっ素原子が含まれていない場合には荷重150〔g〕でリークが発生しているのに対し、ふっ素原子が含まれている場合は荷重200〔g〕までリークが発生していないことが分かる。
【0090】
このことから、電荷輸送層64が2層構造を有し、電荷輸送層上層64bのみにふっ素原子が結合したバインダ樹脂を含有する場合においても、前記電荷輸送層上層64bの膜厚を所定値以上に形成すれば、バインダ樹脂であるポリカーボネイトに1〔重量%〕以上のふっ素原子を直接結合させることによって、感光層60のリーク耐性が向上することが確認された。
【0091】
このように、本実施の形態においては、電荷輸送層64のバインダ樹脂全体にふっ素原子が含まれるのではなく、電荷輸送層上層64bにのみふっ素原子が含まれている。電荷輸送層64を2層構造にしたことによって、上層である電荷輸送層上層64bを優れたリーク耐性を備える構造とし、下層である電荷輸送層下層64aを電気特性に優れた材料から成るものとすることが可能となった。
【0092】
なお、前記第1及び第2の実施の形態では、電子写真感光体を使用する画像形成装置10がプリンタである例について説明したが、本発明は、複写機、ファクシミリ機等のように、電子写真感光体を用いるすべての画像形成装置10に適用することが可能である。
【0093】
また、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の第1の実施の形態における感光体ドラムの表面近傍の層構造を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における画像形成装置の概略構成図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における感光体ドラムの全体構造を示す断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態におけるギヤを示す斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態におけるキズ開口径と画像上白点との関係を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態における荷重とキズ開口径との関係を示す第1の図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態における荷重とキズ開口径との関係を示す第2の図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態における測定した感光層上のキズ開口径と画像上の白点径の寸法を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態における感光体ドラムの表面近傍の層構造を示す断面図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態におけるキズ開口径と画像上白点との関係を示す図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態における荷重とキズ開口径との関係を示す図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態における測定した感光層上のキズ開口径と画像上の白点径の寸法を示す図である。
【符号の説明】
【0095】
10 画像形成装置
11 感光体ドラム
12 帯電ローラ
20 画像形成カートリッジ
25 転写ローラ
28 LEDヘッド
31 用紙
60 感光層
61 導電性支持体
64 電荷輸送層
64a 電荷輸送層下層
64b 電荷輸送層上層
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体、現像装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真技術は、高品質の画像を即時に得ることができるので、複写機の分野に留まらず、各種プリンタの分野でも広く採用されている。電子写真技術の中核となるのは感光体であるが、特に、無公害であり、かつ、成膜や製造が容易である有機系の光導電材料を使用した感光体、すなわち、有機系感光体が現在では一般的である。
【0003】
さらに、有機系感光体の中でも、電荷発生層及び電荷輸送層を積層して形成された感光層を有する機能分離型の感光体が広く普及している。機能分離型の感光体は、効率の高い電荷発生物質及び電荷輸送物質をそれぞれ組み合わせることによって、高感度な感光体が得られること、材料の選択範囲が広く安全性の高い感光体が得られること、及び、塗布の生産性が高くコスト面でも比較的有利なことから、感光体の主流となっている。
【0004】
機能分離型の感光体における静電潜像形成のメカニズムを説明する。まず、感光体を帯電した後に光を照射すると、光は電荷輸送層を通過し、電荷発生層中の電荷発生物質によって吸収され、これにより、電荷が発生する。すると、発生した電荷は、電荷発生層と電荷輸送層との界面で電荷輸送層に注入され、さらに、電界によって電荷輸送層中を最表面に向かって移動し、感光体の表面電荷を中和することにより静電潜像を形成する(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
近年の電子写真装置においては、コロトロンに代わり、オゾン発生が少ない接触帯電方式の帯電装置が用いられるようになってきている。しかし、接触帯電方式の帯電装置を用いた場合、感光体に、接触帯電時に加わる局所的な高電場によって電気的なピンホールが生じ、該ピンホール上に絶縁破壊が生じて、これが画質欠陥となって現れることがある。
【0006】
このようなピンホールは、感光層の塗膜欠陥によって発生する場合もあるが、それ以外にも、電子写真装置内で発生した導電性の異物が感光体に接触したり、感光体中に貫入したりして、接触帯電方式の帯電装置と感光体の基体との間に導電路を形成しやすくなったために発生することもある。
【0007】
顕著な場合には、電子写真装置内の他の部材から混入したカーボンファイバ、キャリア粉等の異物や電子写真装置内に混入したゴミが感光体に突き刺さり、接触帯電方式の帯電装置からのリーク点を形成する場合もある。
【0008】
もっとも、このような問題については、感光体の下引層を厚膜化することで基体の欠陥を隠蔽(ぺい)し、かつ、電気特性上の安定を得るために、導電性微粉末を含有する層を基体上に塗布形成する方法が採用されている。すなわち、アルミニウムの基体上に導電粉分散型の導電層を形成し、さらに、その上層に下引層を形成する方法である。この場合、導電層で基体隠蔽を行うとともに抵抗調整を行い、ブロッキング機能を下引層に持たせるようになっている。
【0009】
また、下引層を厚膜化せず、下引層中に適当な粉体抵抗を有する金属酸化物微粒子を分散させることによって、リーク耐性を向上させる方法も採用されている。
【特許文献1】特開2005−331567号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記従来の感光体においては、感光層のリークを抑制するために下引層を厚膜化すると、繰り返しの使用によって残留電位が上昇するという問題があった。また、下引層に金属酸化物微粒子を分散させる方法では、金属酸化物微粒子の粉体抵抗値の制御が難しく、粉体抵抗値が低いとリーク耐性が不十分となり、粉体抵抗値が高いと残留電位が上昇するという問題があった。このように、下引層のみの改良で残留電位、電気特性の安定性及びリーク耐性の問題を解決することは不可能である。
【0011】
本発明は、前記従来の問題点を解決して、電荷輸送層のバインダ樹脂にふっ素原子を直接結合させることによって、感光層のリーク耐性を向上させることができ、厚膜化による残留電位の上昇並びに薄膜化による電気特性及びリーク耐性の悪化が生じることがなく、安定した画質を得ることができ、コストの低い電子写真感光体、現像装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そのために、本発明の電子写真感光体においては、導電性支持体上に感光層を積層した電子写真感光体であって、前記感光層の最上層の電荷輸送層中のバインダ樹脂は、次の式(1)に示されるR1〜R10の少なくとも1つの場所に、ふっ素原子を含む。
【0013】
【数1】
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電子写真感光体においては、電荷輸送層のバインダ樹脂にふっ素原子を直接結合させる。これにより、感光層のリーク耐性を向上させることができ、厚膜化による残留電位の上昇並びに薄膜化による電気特性及びリーク耐性の悪化が生じることがなく、安定した画質を得ることができ、コストを低下させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図2は本発明の第1の実施の形態における画像形成装置の概略構成図である。
【0017】
図において、10は本実施の形態における画像形成装置であり、例えば、プリンタ、ファクシミリ機、複写機、各種の機能を併せ持つ複合機等であるが、いかなる種類のものであってもよい。また、前記画像形成装置10は、各色の画像を形成する画像形成カートリッジ20を多段式に配設してカラー印刷を行うカラープリンタであってもよいが、ここでは、説明の都合上、単一の画像形成カートリッジ20によって単色(例えば、黒色)の印刷を行うモノクロプリンタである場合について説明する。
【0018】
この場合、前記画像形成カートリッジ20は、画像形成装置10内に着脱可能に取り付けられ、現像装置として機能する。そして、前記画像形成カートリッジ20は、一体的に形成されたカートリッジケース21、並びに、該カートリッジケース21に配設された電子写真感光体としてのドラム型の感光体ドラム11、該感光体ドラム11の表面を帯電する帯電装置としての帯電ローラ12、前記感光体ドラム11の表面を現像する現像部13及び前記感光体ドラム11の表面をクリーニングするクリーニング部14を備える。
【0019】
前記帯電ローラ12は、感光体ドラム11に接し、回転可能に配設されている。
【0020】
また、前記現像部13は、現像剤担持体としての現像ローラ15、トナー層形成部材としての現像ブレード16、現像剤供給部材としてのトナー供給ローラ17及び攪拌(かくはん)部材18を備え、上部には着脱可能なトナーカートリッジ22が装着されている。そして、前記現像部13は、感光体ドラム11の表面に現像剤としてのトナーを供給することによって、静電潜像担持体としての感光体ドラム11の表面に形成された静電潜像を現像する。
【0021】
ここで、前記現像ローラ15は、導電性シャフトの周囲に形成された半導電性弾性体を備え、感光体ドラム11に当接して回転する。また、前記トナー供給ローラ17も導電性シャフトの周囲に形成された半導電性弾性体を備える。前記現像ブレード16は、現像ローラ15表面のトナーを薄層化するとともに帯電させる。なお、本実施の形態における画像形成装置10は、非磁性一成分接触現像方式を採用するものであり、トナーは非磁性一成分トナーである。
【0022】
前記クリーニング部14は、クリーニングブレード23及びスパイラルスクリュ24を備え、前記クリーニングブレード23によって感光体ドラム11の表面に残留したトナーを掻(か)き落とし、掻き落とされたトナーを前記スパイラルスクリュ24によって図示されないトナーボックスに搬送するようになっている。
【0023】
また、前記感光体ドラム11の下方には、該感光体ドラム11上のトナーを被転写媒体としての用紙31に転写する転写装置としての転写ローラ25が配設されている。
【0024】
前記画像形成装置10内において、画像形成カートリッジ20の下方には、用紙31が通過する用紙搬送路35aが配設されている。また、該用紙搬送路35aに用紙31を供給する用紙搬送部35bは、ホッパステージ32を備え、該ホッパステージ32上に用紙31が積載されている。そして、ホッパステージ32の下方にはばね33が配設され、該ばね33の発揮する上方への付勢力によって、最上位に位置する用紙31は、上方に配設された給送ローラ34に押圧される。該給送ローラ34が回転することによって、ホッパステージ32上に積載された用紙31は、1枚ずつ用紙搬送路35aに繰り出される。
【0025】
該用紙搬送路35aには搬送ローラ36a及び36bが配設され、用紙搬送路35aに繰り出された用紙31は、前記搬送ローラ36a及び36bによって、感光体ドラム11と転写ローラ25との間に搬送される。
【0026】
また、前記用紙搬送路35aの下流側には、定着器40が配設されている。該定着器40は、用紙31を加熱する加熱ローラ40aと用紙31を加圧する加圧ローラ40bとを備え、トナー像を用紙31上に定着させる。さらに、前記定着器40の下流側には排出ローラ37a及び37bが配設され、トナー像が定着された用紙31は、前記排出ローラ37a及び37bによって画像形成装置10の外へ排出される。
【0027】
さらに、該画像形成装置10は、その上部に、支点39を中心に回転可能に取り付けられたカバー38を有する。該カバー38の下部には支持部材26が配設され、該支持部材26には、ばね27を介して露光装置としてのLED(Light Emitting Diode)ヘッド28が配設されている。該LEDヘッド28は、複数のLED素子から成るLEDアレイ、該LEDアレイを駆動するドライバICが搭載された基板、LED素子が発光した光を集光するロッドレンズアレイ等を備える。そして、画像形成装置10の図示されない制御部は、図示されない上位装置等から送信されてきた画像データに基づいて前記LEDヘッド28を駆動し、LED素子を選択的に発光させ、感光体ドラム11上に静電潜像を形成する。なお、前記カバー38を閉じた状態で、LEDヘッド28は、ばね27によって感光体ドラム11側に付勢されている。
【0028】
次に、前記感光体ドラム11を駆動する機構について説明する。
【0029】
図3は本発明の第1の実施の形態における感光体ドラムの全体構造を示す断面図、図4は本発明の第1の実施の形態におけるギヤを示す斜視図である。
【0030】
図3に示されるように、感光体ドラム11の内部には導電体である金属製のシャフト30が配設されている。また、前記感光体ドラム11の内部の一端部には、フランジ41が圧入されて非導電性の接着剤で固定されている。前記フランジ41の材料としては、ポリアミド、ポリカーボネイト、ABS(アルキルベンゼンスルホン酸)樹脂、ポリアセタール等の合成樹脂であって、金属粉、カーボンブラック、グラファイト等の導電性粉末を配合することによって導電化された合成樹脂が用いられる。そして、前記フランジ41はシャフト30に対して回転可能に取り付けられている。
【0031】
また、前記フランジ41の反対側においても、感光体ドラム11の内部に支持部材42が配設されている。該支持部材42は、シャフト30に対して回転可能に取り付けられ、感光体ドラム11の内側に固着されている。そして、前記支持部材42の外側にはギヤ43が接着剤によって固定されている。前記ギヤ43は、感光体ドラム11を回転させるもので、図に示されるように、駆動ギヤ44と噛(か)み合っている。該駆動ギヤ44は、装置フレーム51bに固定支持された固定軸45に回転可能に取り付けられている。そして、駆動ギヤ44が、画像形成装置10の図示されない駆動源によって駆動されると、ギヤ43を介して感光体ドラム11が回転する。
【0032】
前記シャフト30及び感光体ドラム11は、画像形成カートリッジ20のカートリッジケース21に取り付けられている。該カートリッジケース21には軸受穴52a及び52bが形成され、シャフト30の両端部は、前記軸受穴52a及び52bを貫通している。図における左側のカートリッジケース21とフランジ41との間には、導電性の金属から成るカラー46が配設されている。該カラー46は、シャフト30に対して回転可能であるとともに、該シャフト30の軸方向に移動可能である。そして、前記カラー46は、フランジ41及びカートリッジケース21に接触している。
【0033】
前記シャフト30及び感光体ドラム11を備えるカートリッジケース21は、装置フレーム51a及び51bに装着される。該装置フレーム51a及び51bには、それぞれ、長穴47a及び47bが形成されており、該長穴47a及び47bにシャフト30の両端部が係止されることによって、カートリッジケース21が装着される。このとき、前記シャフト30の一端部30aは装置フレーム51aから突出している。
【0034】
また、前記装置フレーム51aの外側には、導電性のばね部材48aがピン48bによって取り付けられている。前記ばね部材48aは図示されないアース用部材に接続されており、内側方向に付勢力を発揮する。装置フレーム51a及び51bに画像形成カートリッジ20が装着されていないとき、ばね部材48aは図に示される位置よりやや内側に位置しているが、前記ばね部材48aの上端部は外側に傾斜しているため、上方から画像形成カートリッジ20を装着することができる。また、装置フレーム51a及び51bに画像形成カートリッジ20が装着された状態では、シャフト30の一端部30aとばね部材48aとは圧接している。
【0035】
図4に示されるように、ギヤ43及び駆動ギヤ44は、はすば歯車から成り、歯の捩(ねじ)り角が互いに逆方向に設定されている。このようなはすば歯車構造によって、前記ギヤ43は図3における左方向に付勢され、これにより、シャフト30の一端部30aとばね部材48aとの接触が良好になる。
【0036】
次に、前記構成の画像形成装置10の動作について説明する。
【0037】
上位装置から画像形成装置10に対して印刷開始の指示が出され、上位装置から画像形成装置10に画像データが送信されると、画像形成装置10の制御部は、給送ローラ34を駆動し、用紙31を用紙搬送路35aに繰り出す。そして、該用紙搬送路35aに繰り出された用紙31は、前記搬送ローラ36a及び36bによって、感光体ドラム11と転写ローラ25との間に搬送される。
【0038】
また、前記制御部は、送信された画像データに基づいてLEDヘッド28を駆動し、該LEDヘッド28のLED素子を選択的に発光させ、あらかじめ帯電ローラ12によって帯電されている感光体ドラム11の表面を露光する。これにより、感光体ドラム11の表面に画像データに対応した静電潜像が形成される。そして、感光体ドラム11は、図2における矢印で示される方向に回転しているので、静電潜像が現像部13に対応する位置に到達すると、現像ローラ15上のトナーが静電気力によって静電潜像に付着する。これにより、感光体ドラム11上にトナー像が形成される。そして、感光体ドラム11は、図2における矢印で示される方向に回転しているので、前記トナー像は、転写ローラ25との接触位置に移動する。
【0039】
この場合、用紙31が感光体ドラム11と転写ローラ25との間に到達するタイミングに合わせて、感光体ドラム11上のトナー像が転写ローラ25との接触位置に到達し、転写ローラ25によってトナー像が用紙31上に転写される。そして、トナー像が転写された用紙31は、定着器40に搬送され、該定着器40の加熱ローラ40aと加圧ローラ40bとの間を通過することによって、トナー像が用紙31に定着される。なお、トナー像が定着された用紙31は、排出ローラ37a及び37bによって画像形成装置10の外へ排出される。
【0040】
次に、前記感光体ドラム11の表面近傍の層構造について説明する。
【0041】
図1は本発明の第1の実施の形態における感光体ドラムの表面近傍の層構造を示す断面図である。
【0042】
図には、感光体ドラム11の表面近傍の断面が示されており、61は、感光体ドラム11のドラム状、すなわち、円筒状の導電性支持体であり、該導電性支持体61上に感光層60が形成されている。前記導電性支持体61は、アルミニウム、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料、又は、表面にアルミニウム、銅、パラジウム、酸化錫(すず)、酸化インジウム等の導電層を設けたポリエステルフィルム、紙等の絶縁性材料から成る。
【0043】
なお、前記導電性支持体61と感光層60との間に、図に示される例のように、下引層62を形成してもよい。該下引層62は、例えば、アルミニウム陽極酸化被膜、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム等の無機層、又は、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、セルロース類、ゼラチン、デンプン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド等の有機層から成る。
【0044】
図に示される例において、感光層60は、下引層62を挟んで導電性支持体61上に形成され、電荷発生物質を主成分とする電荷発生層63と、該電荷発生層63上に形成され、電荷輸送物質及びバインダ樹脂を主成分とする電荷輸送層64とを有する。すなわち、図に示される例において、感光層60は、導電性支持体61上に電荷発生層63と電荷輸送層64とを順に積層した積層型感光層である。なお、前記感光層60は、電荷発生層63と電荷輸送層64とを逆に積層したもの、すなわち、導電性支持体61上に電荷輸送層64を積層し、該電荷輸送層64上に電荷発生層63を積層した逆二層型感光層であってもよい。また、前記感光層60は、電荷輸送層64中に電荷発生物質を分散させた分散型感光層であってもよい。
【0045】
前記感光層60が積層型感光層又は逆二層型感光層である場合、電荷発生層63に使用される電荷発生物質としては、セレン及びその合金、セレン化ヒ素化合物、硫化カドミニウム、酸化亜鉛、その他の無機光導電物質、フタロシアニン、アゾ色素、キナクリドン、多環キノン、ピリリウム塩、チアピリリウム塩、インジゴ、チオインジゴ、アントアントロン、ピラントロン、シアニン等の各種有機顔料、染料を使用することができる。中でも、無金属フタロシアニン、銅塩化インジウム、塩化ガリウム、錫、オキシチタニウム、亜鉛、バナジウム等の金属又はその酸化物、塩化物の配位したフタロシアニン類、モノアゾ、ビスアゾ、トリスアゾ、ポリアゾ類等のアゾ顔料を使用することが好ましい。
【0046】
前記電荷発生層63は、これらの電荷発生物質の微粒子を、例えば、ポリエステル樹脂、ポリビニルアセテート、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリエステル、ポリカーボネイト、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルプロピオナール、ポリビニルブチラール、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、セルロースエステル、セルロースエーテル等の各種バインダ樹脂で結着した形の分散層であってもよい。この場合の電荷発生物質の使用比率は、バインダ樹脂100重量部に対して30〜500重量部の範囲であり、その膜厚は通常0.1〜2〔μm〕が適している。
【0047】
前記電荷発生層63は、必要に応じて塗布性を改善するためのレベリング剤、酸化防止剤、増感剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。また、前記電荷発生層63は、前記電荷発生物質の蒸着膜であってもよい。
【0048】
また、電荷輸送層64に使用される電荷輸送物質としては、例えば、カルバゾール、インドール、イミダゾール、オキサゾール、ビラゾール、オキサジアゾール、ピラゾリン、チアジアゾール等の複素環化合物、アニリン誘導体、ヒドラゾン化合物、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、又は、これらの化合物から成る基を主鎖若しくは側鎖に有する重合体等の電子供与性物質である。
【0049】
前記電荷輸送層64に使用されるバインダ樹脂は、ポリカーボネイトであり、次の式(1)に示される構造を有する。
【0050】
【数1】
【0051】
なお、該(1)に示されるR1〜R10は、各々独立して、水素原子、アルキル基及びアリール基を示す。
【0052】
前記バインダ樹脂は、前記式(1)に示されるR1〜R10の中の一部の水素原子がふっ素原子と置換しており、分子量の1〔重量%〕以上のふっ素原子を含んでいる。
【0053】
なお、前記バインダ樹脂には、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等のビニル重合体、ポリエステル、ポリエステルカーボネイト、ポリスルホン、ポリイミド、フェノキシ、エポキシ、シリコーン樹脂及びこれらの共重合体若しくは部分的架橋硬化物等を単独又は混合物として使用してもよいが、1〔重量%〕以上のふっ素原子を含むことが必要である。
【0054】
前記バインダ樹脂であるポリカーボネイトにふっ素原子を結合させる方法としては、ビスフェノールAと炭酸エステル形成化合物とからポリカーボネイトを製造する際に用いられている公知の方法、例えば、ビスフェノールAとホスゲンとの直接反応(ホスゲン法)、ビスフェノールAとビスアリールカーボネイトとのエステル交換反応(エステル交換法)等の方法を採用することができる。水素原子をふっ素原子に適宜置換したビスフェノールAを用いることによって、ふっ素原子が結合したポリカーボネイトを製造することができる。また、ふっ素原子の置換方法は公知の方法で行われる。
【0055】
なお、ホスゲン法の場合、通常、酸結合剤及び溶媒の存在下において、ビスフェノールAとホスゲンとを反応させる。酸結合剤としては、例えば、ピリジンや、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物などが水溶液として用いられる。また、溶媒としては、例えば、塩化メチレン、クロロホルム等が用いられる。さらに、縮重合反応を促進するために、トリエチルアミンのような第三級アミン、又は、第四級アンモニウム塩などの触媒が用いられる。
【0056】
また、重合度調節には、フェノール、p−t−ブチルフェノール、p−クミルフェノール、長鎖アルキル置換フェノール等の一官能基化合物を分子量調節剤として加えることが好ましい。また、必要に応じ、亜硫酸ナトリウム、ハイドロサルファイト等の酸化防止剤や、フロログルシン、イサチンビスフェノール等の分岐化剤を小量添加してもよい。
【0057】
反応温度は、通常、0〜150〔℃〕の範囲、好ましくは、5〜40〔℃〕の範囲とするのが適当である。また、反応時間は、反応温度によって左右されるが、通常、0.5分〜10時間、好ましくは、1分〜2時間である。さらに、反応中は、反応系のpHを10以上に保持することが望ましい。
【0058】
一方、エステル交換法の場合、ビスフェノールAとビスアリールカーボネイトとを混合し、減圧下で高温において反応させる。反応は、通常、150〜350〔℃〕の範囲、好ましくは、200〜300〔℃〕の範囲の温度で行われる。また、減圧度は、好ましくは、最終で1〔mmHg〕以下にして、エステル交換反応によって副生した前記ビスアリールカーボネイトから由来するフェノール類を系外へ留去させる。反応時間は、反応温度や減圧度などによって左右されるが、通常、1〜10時間程度である。反応は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。また、必要に応じ、分子量調節剤、酸化防止剤、分岐化剤等を添加して反応を行ってもよい。
【0059】
また、前記電荷輸送層64は、必要に応じて、酸化防止剤、増感剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。前記電荷輸送層64の膜厚は、通常、5〜30〔μm〕である。
【0060】
また、前記感光層60が分散型感光層である場合には、前述したバインダ樹脂と電荷輸送物質との組み合わせで、前述した配合比の電荷輸送媒体中に、前述した電荷発生物質が分散される。この場合、電荷発生物質の粒子径が十分に小さいことが必要であり、例えば、1〔μm〕以下である。
【0061】
前記感光層60内に分散される電荷発生物質の量は、少なすぎると十分な感度を得ることができず、多すぎると帯電性の低下、感度の低下等の弊害があるので、0.5〜50〔重量%〕の範囲が好ましい。前記感光層60の膜厚は、5〜30〔μm〕であることが好ましい。また、成膜性、可撓(とう)性、機械的強度等を改良するための公知の可塑剤、残留電位を抑制するための添加剤、分散安定性向上のための分散補助剤、塗布性を改善するためのレベリング剤、界面活性剤、例えば、シリコーンオイル、その他の添加剤が添加されていてもよい。
【0062】
なお、各層の形成方法としては、層に含有させる物質を溶剤に溶解又は分散させて得られた塗布液を順次塗布する等の公知の方法を適用することができる。
【0063】
次に、本実施の形態における実験例について説明する。
【0064】
図5は本発明の第1の実施の形態におけるキズ開口径と画像上白点との関係を示す図、図6は本発明の第1の実施の形態における荷重とキズ開口径との関係を示す第1の図、図7は本発明の第1の実施の形態における荷重とキズ開口径との関係を示す第2の図、図8は本発明の第1の実施の形態における測定した感光層上のキズ開口径と画像上の白点径の寸法を示す図である。
【0065】
まず、リーク耐性の評価方法について説明する。
【0066】
本実験例においては、感光層60として積層型感光層を使用する。電荷発生層63に使用された電荷発生物質は、ビスアゾ化合物であり、バインダ樹脂であるポリビニルブチラールによって結着され、分散層を形成している。なお、電荷発生層63の膜厚は、0.5〔μm〕である。
【0067】
また、電荷輸送層64に使用された電荷輸送物質はビドラゾン化合物である。電荷輸送層64の初期膜厚は、18〔μm〕である。電荷輸送層64に使用されたバインダ樹脂は、前記式(1)に示される構造を有するポリカーボネイトである。評価サンプルは、ふっ素原子の含有量が1〔重量%〕のサンプル、及び、ふっ素原子を含有しないサンプルの2種類である。
【0068】
次に、実験方法について説明する。
【0069】
まず、感光層60の表面に、先端径0.05〔mm〕の絹糸針を用いて、50、100、150、200及び250〔g〕の荷重をかける。次に、前記感光層60を有する感光体ドラム11を用い、画像形成装置10としては株式会社沖データ製のMICROLINE5900を使用して、100〔%〕濃度パターン及び白紙パターンの印刷を行った。前記感光層60の表面に針先から荷重をかけた際、100〔%〕濃度パターンには白点、白紙パターンには黒点が発生した場合に、リークが発生したと判断した。さらに、前記感光体ドラム11の表面をレーザ顕微鏡で観察し、感光層60の表面に形成されたキズの開口径を測定した。
【0070】
本実験例の結果は、図5〜8に示されている。
【0071】
図8には、評価結果が示されている。図8では、画像上白点の径が100〔μm〕以上の場合にはリークが発生したと判断して「×」と表記し、100〔μm〕未満の場合には画像上白点が目視では確認することができないレベルにあることから「○」と表記した。
【0072】
図5及び8から、本実験例においては、キズ開口径が50〔μm〕以上になるとリークが発生したことを確認することができる。また、図6及び8から、キズ開口径が50〔μm〕以上となる荷重を見ると、電荷輸送層64のバインダ樹脂にふっ素原子が含まれていない場合には荷重150〔g〕でリークが発生しているのに対し、ふっ素原子が含まれている場合は荷重200〔g〕までリークが発生していないことが分かる。
【0073】
また、図7には、バインダ樹脂に含まれるふっ素原子の量を0.5及び2〔g〕にした場合の荷重とキズ開口径との関係を図6に重ね合わせたものが示されている。図7から、ふっ素原子の含有量が0.5〔g〕では、あまり効果が見られないことが分かる。
【0074】
このことから、バインダ樹脂として使用されたポリカーボネイトに1〔重量%〕以上のふっ素原子を直接結合させることによって、感光層60のリーク耐性が向上することが確認された。
【0075】
このように、本実施の形態においては、電子写真感光体としての感光体ドラム11の感光層60における電荷輸送層64のバインダ樹脂であるポリカーボネイトに1〔重量%〕以上のふっ素原子を直接結合させることによって、感光層60のリーク耐性を向上させることが可能になる。
【0076】
電子写真感光体におけるリーク耐性について考えた場合、下引層62の膜厚調整や感光層60表面の硬度あるいはすべり性の調整のように、従来では、いくつものパラメータを制御する必要があった。また、感光層60表面のバインダ樹脂にふっ素系樹脂を添加する場合においても、ふっ素系樹脂の分散手法が難しく、効果的にリーク耐性を向上させることが困難であった。
【0077】
本発明の発明者は、感光層60表面のバインダ樹脂を改良することでリーク耐性が向上することを見い出した。これまでは、電子写真感光体においてリーク対策を行う場合に、下引層62や電荷輸送層64の材料を色々代えてサンプルを作製し、評価する必要があった。しかし、本実施の形態のように、電荷輸送層64中のバインダ樹脂のみを代えればよいことが分かり、電子写真感光体の開発コストの削減を期待することができる。
【0078】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略する。また、前記第1の実施の形態と同じ動作及び同じ効果についても、その説明を省略する。
【0079】
図9は本発明の第2の実施の形態における感光体ドラムの表面近傍の層構造を示す断面図である。
【0080】
本実施の形態においても、前記第1の実施の形態と同様に、導電性支持体61と感光層60との間に下引層62が形成される。そして、前記感光層60においては、下引層62を挟んで導電性支持体61上に形成された電荷発生層63の上に、電荷輸送層下層64aが形成され、該電荷輸送層下層64aの上に電荷輸送層上層64bが形成されている。すなわち、本実施の形態における電荷輸送層64は、順に積層された電荷輸送層下層64a及び電荷輸送層上層64bから成る。
【0081】
前記電荷輸送層下層64aに使用されるバインダ樹脂は、ポリカーボネイトであり、前記第1の実施の形態における電荷輸送層64に使用されるバインダ樹脂としてのポリカーボネイトとほぼ同様の構造を備えるものであるが、ふっ素原子を含有する必要はない。
【0082】
一方、前記電荷輸送層上層64bに使用されるバインダ樹脂は、ポリカーボネイトであり、前記第1の実施の形態における電荷輸送層64に使用されるバインダ樹脂としてのポリカーボネイトと同様に、前記式(1)に示される構造を備え、ふっ素原子を含有する。
【0083】
なお、電荷輸送層64の膜厚は18〔μm〕とした。この場合、感光体ドラム11としての実使用上の膜減りを考慮し、電荷輸送層上層64bの膜厚を8〔μm〕とし、電荷輸送層下層64aの膜厚を10〔μm〕とした。
【0084】
本実施の形態における画像形成装置10のその他の点の構造については、前記第1の実施の形態と同様なので、説明を省略する。
【0085】
次に、本実施の形態における実験例について説明する。
【0086】
図10は本発明の第2の実施の形態におけるキズ開口径と画像上白点との関係を示す図、図11は本発明の第2の実施の形態における荷重とキズ開口径との関係を示す図、図12は本発明の第2の実施の形態における測定した感光層上のキズ開口径と画像上の白点径の寸法を示す図である。
【0087】
本実施の形態においても、前記第1の実施の形態と同様の荷重試験を行った。本実施の形態における実験例の結果は、図10〜12に示されている。
【0088】
図12には、評価結果が示されている。図12では、前記第1の実施の形態における図8と同様に、画像上白点の径が100〔μm〕以上の場合にはリークが発生したと判断して「×」と表記し、100〔μm〕未満の場合には画像上白点が目視では確認することができないレベルにあることから「○」と表記した。
【0089】
図10及び12から、本実験例においては、キズ開口径が50〔μm〕以上になるとリークが発生したことを確認することができる。また、図11及び12から、キズ開口径が50〔μm〕以上となる荷重を見ると、電荷輸送層64のバインダ樹脂にふっ素原子が含まれていない場合には荷重150〔g〕でリークが発生しているのに対し、ふっ素原子が含まれている場合は荷重200〔g〕までリークが発生していないことが分かる。
【0090】
このことから、電荷輸送層64が2層構造を有し、電荷輸送層上層64bのみにふっ素原子が結合したバインダ樹脂を含有する場合においても、前記電荷輸送層上層64bの膜厚を所定値以上に形成すれば、バインダ樹脂であるポリカーボネイトに1〔重量%〕以上のふっ素原子を直接結合させることによって、感光層60のリーク耐性が向上することが確認された。
【0091】
このように、本実施の形態においては、電荷輸送層64のバインダ樹脂全体にふっ素原子が含まれるのではなく、電荷輸送層上層64bにのみふっ素原子が含まれている。電荷輸送層64を2層構造にしたことによって、上層である電荷輸送層上層64bを優れたリーク耐性を備える構造とし、下層である電荷輸送層下層64aを電気特性に優れた材料から成るものとすることが可能となった。
【0092】
なお、前記第1及び第2の実施の形態では、電子写真感光体を使用する画像形成装置10がプリンタである例について説明したが、本発明は、複写機、ファクシミリ機等のように、電子写真感光体を用いるすべての画像形成装置10に適用することが可能である。
【0093】
また、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の第1の実施の形態における感光体ドラムの表面近傍の層構造を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態における画像形成装置の概略構成図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における感光体ドラムの全体構造を示す断面図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態におけるギヤを示す斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態におけるキズ開口径と画像上白点との関係を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態における荷重とキズ開口径との関係を示す第1の図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態における荷重とキズ開口径との関係を示す第2の図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態における測定した感光層上のキズ開口径と画像上の白点径の寸法を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態における感光体ドラムの表面近傍の層構造を示す断面図である。
【図10】本発明の第2の実施の形態におけるキズ開口径と画像上白点との関係を示す図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態における荷重とキズ開口径との関係を示す図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態における測定した感光層上のキズ開口径と画像上の白点径の寸法を示す図である。
【符号の説明】
【0095】
10 画像形成装置
11 感光体ドラム
12 帯電ローラ
20 画像形成カートリッジ
25 転写ローラ
28 LEDヘッド
31 用紙
60 感光層
61 導電性支持体
64 電荷輸送層
64a 電荷輸送層下層
64b 電荷輸送層上層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)導電性支持体上に感光層を積層した電子写真感光体であって、
(b)前記感光層の最上層の電荷輸送層中のバインダ樹脂は、次の式(1)に示されるR1〜R10の少なくとも1つの場所に、ふっ素原子を含むことを特徴とする電子写真感光体。
【数1】
【請求項2】
前記バインダ樹脂は、前記式(1)に示されるR1〜R10の場所の各々に、独立に水素原子、アルキル基及びアリール基が結合する請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記感光層の最上層の電荷輸送層は2層構造を備え、
前記電荷輸送層の上層は前記バインダ樹脂を含有し、
前記電荷輸送層の下層は前記バインダ樹脂のふっ素原子が水素原子に置換されているバインダ樹脂を含有する請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記感光層は、その表面に先端径0.05〔mm〕の絹糸針に150〔g〕の荷重をかけた場合に、その表面に形成されるキズ開口径が50〔μm〕以下となり、感光層のリークが原因となる画像不良が発生しない請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像することを特徴とする現像装置。
【請求項6】
(a)請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
(b)該電子写真感光体の表面を帯電させる帯電装置と、
(c)帯電した前記電子写真感光体の表面を露光して静電潜像を形成する露光装置と、
(d)前記静電潜像を現像する現像装置と、
(e)該現像装置によって現像された像を被転写媒体に転写する転写装置とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
(a)導電性支持体上に感光層を積層した電子写真感光体であって、
(b)前記感光層の最上層の電荷輸送層中のバインダ樹脂は、次の式(1)に示されるR1〜R10の少なくとも1つの場所に、ふっ素原子を含むことを特徴とする電子写真感光体。
【数1】
【請求項2】
前記バインダ樹脂は、前記式(1)に示されるR1〜R10の場所の各々に、独立に水素原子、アルキル基及びアリール基が結合する請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項3】
前記感光層の最上層の電荷輸送層は2層構造を備え、
前記電荷輸送層の上層は前記バインダ樹脂を含有し、
前記電荷輸送層の下層は前記バインダ樹脂のふっ素原子が水素原子に置換されているバインダ樹脂を含有する請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
前記感光層は、その表面に先端径0.05〔mm〕の絹糸針に150〔g〕の荷重をかけた場合に、その表面に形成されるキズ開口径が50〔μm〕以下となり、感光層のリークが原因となる画像不良が発生しない請求項1に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子写真感光体の表面に形成された静電潜像を現像することを特徴とする現像装置。
【請求項6】
(a)請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子写真感光体と、
(b)該電子写真感光体の表面を帯電させる帯電装置と、
(c)帯電した前記電子写真感光体の表面を露光して静電潜像を形成する露光装置と、
(d)前記静電潜像を現像する現像装置と、
(e)該現像装置によって現像された像を被転写媒体に転写する転写装置とを有することを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−49036(P2010−49036A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−213438(P2008−213438)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】
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