説明

電子写真感光体、電子写真カートリッジ及び画像形成装置

【課題】支持体外径が小さい電子写真感光体を使用した場合に、クリーニング特性に優れ、且つ、支持体との接着性に問題が起こらない電子写真感光体を提供することにある。
【解決手段】 少なくとも導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体において、該導電性支持体が外径25mm以下の円筒形状であり、且つ、該感光層が特定の繰り返し構造を含む共重合ポリカーボネート樹脂を含有することを特徴とする電子写真感光体、及び該電子写真感光体を搭載した画像形成装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンター等に用いられる電子写真感光体に関する。詳しくは、導電性支持体と感光層の接着性に優れ、クリーニング特性が良好で、かつ、画像形成装置の小型化を可能とする電子写真感光体、及びそれを搭載した画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真技術は、即時性、高品質の画像が得られることなどから、複写機、各種プリンターなどの分野で広く使われている。
電子写真技術の中核となる感光体については、無公害で成膜が容易、製造が容易である等の利点を有する有機系の光導電物質を使用した感光体が使用されている。
有機系の光導電材料を用いた感光体としては、光導電性微粉末をバインダー樹脂中に分散させたいわゆる分散型感光体、電荷発生層および電荷輸送層を積層した積層型感光体が知られている。積層型感光体は、それぞれ効率の高い電荷発生物質、および電荷輸送物質を組み合わせることにより高感度な感光体が得られること、材料選択範囲が広く安全性の高い感光体が得られること、また感光層を塗布により容易に形成可能で生産性が高く、コスト面でも有利なことから感光体の主流であり、鋭意開発され実用化されている。
【0003】
また、近年、電子写真プリンターやMFPがSOHOユース、家庭用ユースにも使用されるようになり、省スペース、小型化の要求が従来以上に高まり、プリンターの小型化の流れが加速している。電子写真感光体の外径が小さくなると、クリーニングブレードによるクリーニングが難しく、クリーニング不良やフィルミング等の不具合が発生しやすく、特に、支持体外径25mm以下の場合にはこの傾向が顕著であるため、感光層の表面特性を制御することが重要な因子となっている。
【0004】
表面保護層などの機能層を持たない一般的な感光体の場合、クリーニングブレードと接するのは感光層である。
感光層のバインダー樹脂としては、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等のビニル重合体、およびその共重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、フェノキシ、エポキシ、シリコーン樹脂等の熱可塑性樹脂や種々の熱硬化性樹脂が用いられている。数あるバインダー樹脂のなかではポリカーボネート樹脂が比較的優れた性能を有しており、これまで種々のポリカーボネート樹脂が開発され実用に供されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭50−98332号公報
【特許文献2】特開昭59−71057号公報
【特許文献3】特開昭59−184251号公報
【特許文献4】特開平5−21478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来から、画像形成装置を小型化するために、外径の小さな電子写真感光体を使用するという手法は存在したが、外径が小さいということは塗布された感光層が乾燥される際の熱収縮に大きな曲率が掛かるということを意味し、感光層と支持体との接着性という観点からは不利な方向であった。
よって、クリーニング特性に優れた感光層用のバインダー樹脂であっても、接着性の問題で実使用に至らない場合があった。
【0007】
即ち、本発明の目的は、支持体外径が小さい電子写真感光体を使用した場合に、クリーニング特性に優れ、且つ、支持体との接着性に問題が起こらない電子写真感光体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意検討の結果、感光層に特定の構造を有するポリカーボネート樹脂を含有する感光体を、支持体外径が25mm以下の電子写真感光体に適用した場合に、クリーニング特性に優れ、且つ、支持体との接着性に問題が起こらないことを見出し、本発明の完成に至った。
すなわち本発明の要旨は、少なくとも導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体
において、該導電性支持体が外径25mm以下の円筒形状であり、且つ、該感光層が下記一般式(1)で表される繰り返し構造を含む共重合ポリカーボネート樹脂を含有することを特徴とする電子写真感光体、及び該電子写真感光体を搭載した画像形成装置に存する。
【0009】
【化1】

【0010】
(式(1)中、R、R、R及びRは水素原子または炭素数4以下のアルキル基を表し、Zは結合する炭素原子を含めて炭素数5〜8の環状飽和脂肪族アルキル基を形成し、且つ該環状飽和脂肪族アルキル基は、1〜3個のメチル基を置換基として有する。)
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、支持体外径が25mm以下の電子写真感光体を使用した場合であっても、クリーニング特性に優れ、且つ、支持体との接着性に問題が起こらない電子写真感光体を得ることができ、小型化された画像形成装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の画像形成装置の一実施態様の要部構成を示す概略図である。
【図2】本発明の実施例および比較例で用いたオキシチタニウムフタロシアニンの粉末X線回折スペクトルを示すX線回折図である。
【図3】本発明の実施例および比較例で用いたオキシチタニウムフタロシアニンの粉末X線回折スペクトルを示すX線回折図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本発明の電子写真感光体の感光層は、特定構造を有するポリカーボネート樹脂を感光体の導電性支持体上に設けられる感光層のバインダー樹脂として用いる。
【0014】
本発明の感光層の具体的な構成としては、導電性支持体上に電荷発生物質を主成分とする電荷発生層、電荷輸送物質およびバインダー樹脂を主成分とした電荷輸送層を積層した積層型感光体、導電性支持体上に、電荷輸送物質およびバインダー樹脂を含有する層中に電荷発生物質を分散させた感光層を有する分散型(単層型)感光体等が挙げられる。本発明における、バインダー樹脂は、好ましくは積層型感光層の電荷輸送層に用いられる。
【0015】
<ポリカーボネート樹脂>
本発明の電子写真感光体の感光層は、下記一般式(1)で表される繰り返し構造を含む共重合ポリカーボネート樹脂を含有する。
【0016】
【化2】

【0017】
一般式(1)中、R、R、R及びRは水素原子または炭素数4以下のアルキル基を表し、Zは結合する炭素原子を含めて炭素数5〜8の環状飽和脂肪族アルキル基を形成し、且つ該環状飽和脂肪族アルキル基は、1〜3個のメチル基を置換基として有する。
また、前記一般式(1)で表される繰り返し構造の共重合成分としては、下記構造式(2)で表される繰り返し構造が好ましい。さらには、前記一般式(1)が下記構造式(3)で表されることが好ましい。
【0018】
【化3】

【0019】
また、一般式(1)は下記一般式(4)で表される共重合体であることが特に好ましい。m,nは、m<nとなることが好ましく、さらには2m≦nとなることが好ましい。
【0020】
【化4】

【0021】
上記一般式(1)で表される繰り返し構造を含むポリカーボネート樹脂において、それぞれ、粘度平均分子量は、感光層を塗布形成するのに適するよう、通常10,000以上、好ましくは15,000以上、さらに好ましくは20,000以上であり、通常300,000以下、好ましくは200,000以下、より好ましくは100,000以下である。粘度平均分子量が10,000未満であると樹脂の機械的強度が低下し実用的でなく、300,000以上であると、感光層を適当な膜厚に塗布形成する事が困難である。
【0022】
上述した本発明の樹脂は電子写真感光体に用いられ、該感光体の導電性支持体上に設けられる感光層中のバインダー樹脂として用いられる。
<その他の樹脂>
本発明は、一般式(1)で表される繰り返し構造を含むポリカーボネート樹脂に他の樹脂を併用して用いても良い。
【0023】
この併用する樹脂はとしては、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル等のビニル重合体、およびその共重合体、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエステルポリカーボネート、ポリスルホン、フェノキシ、エポキシ、シリコーン樹脂等の熱可塑性樹脂や種々の熱硬化性樹脂などが挙げられる。これら樹脂のなかでもポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。併用する樹脂の混合割合は、特に限定されないが、本発明の効果を十分に得るためには、本発明の式(1)のポリカーボネート樹脂の割合を超えない範囲で併用することが好ましく、特には他の樹脂を併用しないことが好ましい。
【0024】
<導電性支持体>
本発明に用いられる導電性支持体は、円筒形を成し、外径が25mm以下であることを特徴とする。また、外径は、本願の優れた効果の発揮の観点から、好ましくは、22mm以下であり、より好ましくは20mm以下である。
導電性支持体の材料としては、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料や金属、カーボン、酸化錫などの導電性粉体を添加して導電性を付与した樹脂材料やアルミニウム、ニッケル、ITO(インジウム−スズ酸化物)等の導電性材料をその表面に蒸着又は塗布した樹脂、ガラス、紙などが主として使用される。形態としては、円筒形を成していればその形状を問わず、ドラム状、シート状、ベルト状などのものが用いられる。金属材料の導電性基体の上に、導電性・表面性などの制御のためや欠陥被覆のため、適当な抵抗値を持つ導電性材料を塗布したものでも良い。
【0025】
導電性支持体としてアルミニウム合金等の金属材料を用いた場合、陽極酸化処理、化成皮膜処理等を施してから用いても良い。陽極酸化処理を施した場合、公知の方法により封孔処理を施すのが望ましい。
支持体表面は、平滑であっても良いし、特別な切削方法を用いたり、研磨処理を施したりすることにより、粗面化されていても良い。また、導電性支持体を構成する材料に適当な粒径の粒子を混合することによって、粗面化されたものでも良い。
【0026】
<下引き層>
導電性支持体と感光層との間には、接着性・ブロッキング性等の改善のため、下引き層を設けても良い。
下引き層としては、樹脂、樹脂に金属酸化物等の粒子を分散したものなどが用いられる。下引き層に用いる金属酸化物粒子の例としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の1種の金属元素を含む金属酸化物粒子、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複数の金属元素を含む金属酸化物粒子が挙げられる。一種類の粒子のみを用いても良いし複数の種類の粒子を混合して用いても良い。これらの金属酸化物粒子の中で、酸化チタンおよび酸化アルミニウムが好ましく、特に酸化チタンが好ましい。酸化チタン粒子は、その表面に、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化珪素等の無機物、又はステアリン酸、ポリオール、シリコーン等の有機物による処理を施されていても良い。酸化チタン粒子の結晶型としては、ルチル、アナターゼ、ブルッカイト、アモルファスのいずれも用いることができる。複数の結晶状態のものが含まれていても良い。
【0027】
また、金属酸化物粒子の粒径としては、種々のものが利用できるが、中でも特性および液の安定性の面から、平均一次粒径として10nm以上100nm以下が好ましく、特に好ましくは、10nm以上50nm以下である。
下引き層は、金属酸化物粒子をバインダー樹脂に分散した形で形成するのが望ましい。下引き層に用いられるバインダー樹脂としては、フェノキシ、エポキシ、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸、セルロース類、ゼラチン、デンプン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド等が単独あるいは硬化剤とともに硬化した形で使用できるが、中でも、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等は良好な分散性、塗布性を示し好ましい。
【0028】
バインダー樹脂に対する無機粒子の添加比は任意に選べるが、10wt%から500wt%の範囲で使用することが、分散液の安定性、塗布性の面で好ましい。
下引き層の膜厚は、任意に選ぶことができるが、感光体特性および塗布性から0.1μmから25μmが好ましい。また下引き層には、公知の酸化防止剤等を添加しても良い。
<電荷発生層>
本発明の電子写真感光体が積層型感光体である場合、その電荷発生層に使用される電荷発生材料としては例えばセレニウム及びその合金、硫化カドミウム、その他無機系光導電材料、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾール顔料などの有機顔料等各種光導電材料が使用でき、特に有機顔料、更にフタロシアニン顔料、アゾ顔料が好ましい。これらの微粒子をたとえばポリエステル樹脂、ポリビニルアセテート、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルプロピオナール、ポリビニルブチラール、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、セルロースエステル、セルロースエーテルなどの各種バインダー樹脂で結着した形で使用される。この場合の使用比率はバインダー樹脂100重量部に対して30から500重量部の範囲より使用され、その膜厚は通常0.1μmから1μm、好ましくは0.15μmから0.6μmが好適である。
【0029】
電荷発生物質としてフタロシアニン化合物を用いる場合、具体的には、無金属フタロシアニン、銅、インジウム、ガリウム、錫、チタン、亜鉛、バナジウム、シリコン、ゲルマニウム等の金属、またはその酸化物、ハロゲン化物等の配位したフタロシアニン類が使用される。3価以上の金属原子への配位子の例としては、上に示した酸素原子、塩素原子の他、水酸基、アルコキシ基などがあげられる。特に感度の高いX型、τ型無金属フタロシアニン、A型、B型、D型等のチタニルフタロシアニン、バナジルフタロシアニン、クロ
ロインジウムフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン等が好適である。なお、ここで挙げたチタニルフタロシアニンの結晶型のうち、A型、B型についてはW.HellerらによってそれぞれI相、II相として示されており(Zeit. Kristallogr.159(1982)173)、A型は安定型として知られているものである
。D型は、CuKα線を用いた粉末X線回折において、回折角2θ±0.2゜が27.3゜に明瞭なピークを示すことを特徴とする結晶型である。フタロシアニン化合物は単一の化合物のもののみを用いても良いし、いくつかの混合状態でも良い。ここでのフタロシアニン化合物ないしは結晶状態に置ける混合状態として、それぞれの構成要素を後から混合して用いても良いし、合成、顔料化、結晶化等のフタロシアニン化合物の製造・処理工程において混合状態を生じせしめたものでも良い。このような処理としては、酸ペースト処理・磨砕処理・溶剤処理等が知られている。
【0030】
<電荷輸送層>
本発明の実施の形態が積層型感光体の場合、電荷輸送層は、本発明におけるポリカーボネート樹脂を含むバインダー樹脂とともに、電荷輸送物質、必要に応じて使用されるその他の成分とを含有する。このような電荷輸送層は、具体的には、例えば電荷輸送物質等とバインダー樹脂とを溶剤に溶解又は分散して塗布液を作製し、これを順積層型感光層の場合には電荷発生層上に、また、逆積層型感光層の場合には導電性支持体上に(下引き層を設ける場合は下引き層上に)塗布、乾燥して得ることができる。
【0031】
電荷輸送物質としては特に限定されず、任意の物質を用いることが可能である。公知の電荷輸送物質の例としては、2,4,7−トリニトロフルオレノン等の芳香族ニトロ化合物、テトラシアノキノジメタン等のシアノ化合物、ジフェノキノン等のキノン化合物等の電子吸引性物質、カルバゾール誘導体、インドール誘導体、イミダゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ベンゾフラン誘導体等の複素環化合物、アニリン誘導体、ヒドラゾン誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体及びこれらの化合物の複数種が結合したもの、あるいはこれらの化合物からなる基を主鎖又は側鎖に有する重合体等の電子供与性物質等が挙げられる。これらの中でも、カルバゾール誘導体、ヒドラゾン誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体、及びこれらの化合物の複数種が結合したものが好ましい。これらの電荷輸送物質は、何れか1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせで併用しても良い。
【0032】
これらの電荷輸送材料が、本発明のポリカーボネート樹脂を含むバインダー樹脂に結着した形で電荷輸送層が形成される。電荷輸送層は、単一の層から成っていても良いし、構成成分あるいは組成比の異なる複数の層を重ねたものでも良い。
バインダー樹脂と電荷輸送物質との割合は、バインダー樹脂100重量部に対して電荷輸送物質を20重量部以上の比率で使用する。中でも、残留電位低減の観点から30重量部以上が好ましく、更には、繰り返し使用した際の安定性や電荷移動度の観点から40重量部以上がより好ましい。一方、感光層の熱安定性の観点から、電荷輸送物質を通常は150重量部以下の比率で使用する。中でも、電荷輸送材料とバインダー樹脂との相溶性の観点から110重量部以下が好ましく、耐刷性の観点から80重量部以下がより好ましく、耐傷性の観点から70重量部以下が最も好ましい。
【0033】
電荷輸送層の膜厚は特に制限されないが、長寿命、画像安定性の観点、更には高解像度の観点から、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、また、通常50μm以下、好ましくは45μm以下、更には30μm以下の範囲とする。
なお、電荷輸送層には成膜性、可撓性、塗布性、耐汚染性、耐ガス性、耐光性等を向上させるために周知の可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、電子吸引性化合物、染料、顔料、レベリング剤などの添加物を含有させても良い。酸化防止剤の例としては、ヒンダード
フェノール化合物、ヒンダードアミン化合物などが挙げられる。また染料、顔料の例としては、各種の色素化合物、アゾ化合物などが挙げられる。
【0034】
<分散型(単層型)感光層>
分散型感光層の場合には、上記のような配合比の電荷輸送媒体中に、前出の電荷発生物質が分散される。
その場合の電荷発生物質の粒子径は充分小さいことが必要であり、好ましくは1μm以下より好ましくは0.5μm以下で使用される。感光層内に分散される電荷発生物質の量は少なすぎると充分な感度が得られず、多すぎると帯電性の低下、感度の低下などの弊害があり、例えば好ましくは0.5〜50重量%の範囲で、より好ましくは1〜20重量%の範囲で使用される。
【0035】
感光層の膜厚は通常5〜50μm、より好ましくは10〜45μmで使用される。またこの場合にも成膜性、可とう性、機械的強度等を改良するための公知の可塑剤、残留電位を抑制するための添加剤、分散安定性向上のための分散補助剤、塗布性を改善するためのレベリング剤、界面活性剤、例えばシリコ−ンオイル、フッ素系オイルその他の添加剤が添加されていても良い。
【0036】
感光層の上に、感光層の損耗を防止したり、帯電器等から発生する放電生成物等による感光層の劣化を防止・軽減したりする目的で保護層を設けても良い。
また、感光体表面の摩擦抵抗や、摩耗を軽減する目的で、表面の層にはフッ素系樹脂、シリコーン樹脂等を含んでいても良い。また、これらの樹脂からなる粒子や無機化合物の粒子を含んでいても良い。
【0037】
<電子写真感光体の調製方法>
本実施の形態が適用される電子写真感光体の調製方法は特に限定されないが、通常、これらの感光体を構成する各層は、電子写真感光体の感光層形成方法として公知な、浸漬塗布法、スプレー塗布法、ノズル塗布法、バーコート法、ロールコート法、ブレード塗布法等により支持体上に塗布して形成される。これらの中でも生産性の高さから浸漬塗布方法が好ましい。
【0038】
各層の形成方法としては、層に含有させる物質を溶剤に溶解または分散させて得られた塗布液を順次塗布するなどの公知の方法が適用できる。
<画像形成装置>
次に、本発明に用いられる画像形成装置について、装置の要部構成を示す図1を用いて説明する。但し、実施の形態は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意に変形して実施することができる。
【0039】
図1に示すように、画像形成装置は、電子写真感光体1、帯電装置2、露光装置3、現像装置4及び転写装置5を備えて構成され、更に、必要に応じてクリーニング装置6及び定着装置7が設けられる。
電子写真感光体1は、上述した本発明に係る電子写真感光体であれば特に制限はないが、図1ではその一例として、円筒状の導電性支持体の表面に上述した感光層を形成したドラム状の感光体を示している。この電子写真感光体1の外周面に沿って、帯電装置2,露光装置3,現像装置4,転写装置5及びクリーニング装置6がそれぞれ配置されている。
【0040】
帯電装置2は、電子写真感光体1を帯電させるもので、電子写真感光体1の表面を所定電位に均一帯電させる。図1では帯電装置2の一例としてローラ型の帯電装置(帯電ローラ)を示しているが、他にもコロトロンやスコロトロン等のコロナ帯電装置、帯電ブラシ等の接触型帯電装置などがよく用いられる。
なお、電子写真感光体1及び帯電装置2は、多くの場合、この両方を備えたカートリッジ(以下適宜、感光体カートリッジという)として、画像形成装置の本体から取り外し可能に設計されており、本発明においてもそのような形態で用いることが望ましい。そして、例えば電子写真感光体1や帯電装置2が劣化した場合に、この感光体カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい感光体カートリッジを画像形成装置本体に装着することができるようになっている。また、後述するトナーについても、多くの場合、トナーカートリッジ中に蓄えられて、画像形成装置本体から取り外し可能に設計され、使用しているトナーカートリッジ中のトナーが無くなった場合に、このトナーカートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しいトナーカートリッジを装着することができるようになっている。更に、電子写真感光体1,帯電装置2,トナーが全て備えられたカートリッジを用いることもある。なお、後述するように、この画像形成装置ではトナーとして上述した本発明のトナーを使用している。
【0041】
露光装置3は、電子写真感光体1に露光を行なって電子写真感光体1の感光面に静電潜像を形成することができるものであれば、その種類に特に制限はない。具体例としては、ハロゲンランプ、蛍光灯、半導体レーザーやHe−Neレーザー等のレーザー、LEDなどが挙げられる。また、感光体内部露光方式によって露光を行なうようにしてもよい。露光を行なう際の光は任意であるが、例えば波長が780nmの単色光、波長600nm〜700nmのやや短波長寄りの単色光、波長380nm〜600nmの短波長の単色光などで露光を行なえばよい。
【0042】
現像装置4は、その種類に特に制限はなく、カスケード現像、一成分導電トナー現像、二成分磁気ブラシ現像などの乾式現像方式や、湿式現像方式などの任意の装置を用いることができる。図2では、現像装置4は、現像槽41、アジテータ42、供給ローラ43、現像ローラ44、及び、規制部材45からなり、現像槽41の内部にトナーTを貯留している構成となっている。また、必要に応じ、トナーTを補給する補給装置(図示せず)を現像装置4に付帯させてもよい。この補給装置は、ボトル、カートリッジなどの容器からトナーTを補給することが可能に構成される。
【0043】
供給ローラ43は、導電性スポンジ等から形成される。現像ローラ44は、鉄,ステンレス鋼,アルミニウム,ニッケルなどの金属ロール、またはこうした金属ロールにシリコーン樹脂,ウレタン樹脂,フッ素樹脂などを被覆した樹脂ロールなどからなる。この現像ローラ44の表面には、必要に応じて、平滑加工や粗面加工を加えてもよい。
現像ローラ44は、電子写真感光体1と供給ローラ43との間に配置され、電子写真感光体1及び供給ローラ43に各々当接している。供給ローラ43及び現像ローラ44は、回転駆動機構(図示せず)によって回転される。供給ローラ43は、貯留されているトナーTを担持して、現像ローラ44に供給する。現像ローラ44は、供給ローラ43によって供給されるトナーTを担持して、電子写真感光体1の表面に接触させる。
【0044】
規制部材45は、シリコーン樹脂やウレタン樹脂などの樹脂ブレード、ステンレス鋼,アルミニウム,銅,真鍮,リン青銅などの金属ブレード、またはこうした金属ブレードに樹脂を被覆したブレード等により形成されている。この規制部材45は、現像ローラ44に当接し、ばね等によって現像ローラ44側に所定の力で押圧(一般的なブレード線圧は0.05〜5N/cm)される。必要に応じて、この規制部材45に、トナーTとの摩擦帯電によりトナーTに帯電を付与する機能を具備させてもよい。
【0045】
アジテータ42は、回転駆動機構によってそれぞれ回転されており、トナーTを攪拌するとともに、トナーTを供給ローラ43側に搬送する。アジテータ42は、羽根形状、大きさ等を違えて複数設けてもよい。
転写装置5は、その種類に特に制限はなく、コロナ転写、ローラ転写、ベルト転写など
の静電転写法、圧力転写法、粘着転写法など、任意の方式を用いた装置を使用することができる。ここでは、転写装置5が電子写真感光体1に対向して配置された転写チャージャー,転写ローラ,転写ベルト等から構成されるものとする。この転写装置5は、トナーTの帯電電位とは逆極性で所定電圧値(転写電圧)を印加し、電子写真感光体1に形成されたトナー像を転写材(用紙,媒体)Pに転写するものである。
【0046】
クリーニング装置6について特に制限はなく、ブラシクリーナー、磁気ブラシクリーナー、静電ブラシクリーナー、磁気ローラクリーナー、ブレードクリーナーなど、任意のクリーニング装置を用いることができるが、実効性の観点からブレードクリーナーが好ましい。クリーニング装置6は、感光体1に付着している残留トナーをクリーニング部材で掻き落とし、残留トナーを回収するものである。
【0047】
定着装置7は、上部定着部材(定着ローラ)71及び下部定着部材(定着ローラ)72から構成され、定着部材71または72の内部には加熱装置73がそなえられている。なお、図1では、上部定着部材71の内部に加熱装置73がそなえられた例を示す。上部及び下部の各定着部材71,72は、ステンレス,アルミニウムなどの金属素管にシリコンゴムを被覆した定着ロール、更にフッ素樹脂で被覆した定着ロール、定着シートなどの公知の熱定着部材を使用することができる。更に、各定着部材71,72は、離型性を向上させる為にシリコーンオイル等の離型剤を供給する構成としてもよく、バネ等により互いに強制的に圧力を加える構成としてもよい。
【0048】
記録紙P上に転写されたトナーは、所定温度に加熱された上部定着部材71と下部定着部材72との間を通過する際、トナーが溶融状態まで熱加熱され、通過後冷却されて記録紙P上にトナーが定着される。
なお、定着装置についてもその種類に特に限定はなく、ここで用いたものをはじめ、熱ローラ定着、フラッシュ定着、オーブン定着、圧力定着など、任意の方式による定着装置を設けることができる。
【0049】
以上のように構成された画像形成装置では、次のようにして画像の記録が行なわれる。即ち、まず感光体1の表面(感光面)が、帯電装置2によって所定の電位(例えば−600V)に帯電される。この際、直流電圧により帯電させても良く、直流電圧に交流電圧を重畳させて帯電させてもよい。
続いて、帯電された感光体1の感光面を、記録すべき画像に応じて露光装置3により露光し、感光面に静電潜像を形成する。そして、その感光体1の感光面に形成された静電潜像の現像を、現像装置4で行なう。
【0050】
現像装置4は、供給ローラ43により供給されるトナーTを、規制部材(現像ブレード)45により薄層化するとともに、所定の極性(ここでは感光体1の帯電電位と同極性であり、負極性)に摩擦帯電させ、現像ローラ44に担持しながら搬送して、感光体1の表面に接触させる。
現像ローラ44に担持された帯電トナーTが感光体1の表面に接触すると、静電潜像に対応するトナー像が感光体1の感光面に形成される。そしてこのトナー像は、転写装置5によって記録紙Pに転写される。この後、転写されずに感光体1の感光面に残留しているトナーが、クリーニング装置6で除去される。
【0051】
トナー像の記録紙P上への転写後、定着装置7を通過させてトナー像を記録紙P上へ熱定着することで、最終的な画像が得られる。
本実施形態の画像形成装置は、本発明の感光体を用いているため、小型化させることが可能であるとともに、クリーニング不良も発生せず、形成される画像の高画質を実現することが可能である。
【0052】
なお、画像形成装置は、上述した構成に加え、例えば除電工程を行なうことができる構成としても良い。除電工程は、電子写真感光体に露光を行なうことで電子写真感光体の除電を行なう工程であり、除電装置としては、蛍光灯、LED等が使用される。また除電工程で用いる光は、強度としては露光光の3倍以上の露光エネルギーを有する光である場合が多い。
【0053】
また、画像形成装置は更に変形して構成してもよく、例えば、補助帯電工程などの工程を行なうことができる構成としたり、オフセット印刷を行なう構成としたり、更には複数種のトナーを用いたフルカラータンデム方式の構成としてもよい。
【実施例】
【0054】
以下、実施例に基づき本実施の形態をさらに具体的に説明する。なお、以下の実施例は本発明を詳細に説明するために示すものであり、本発明はその趣旨に反しない限り、以下に示した実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例、比較例中の「部」の記載は、特に指定しない限り「重量部」を示す。ここで、粘度平均分子量の測定について説明する。
【0055】
ポリカーボネート樹脂をジクロロメタンに溶解し濃度Cが6.00g/Lの溶液を調製する。溶媒(ジクロロメタン)の流下時間t0が136.16秒のウベローデ型毛細管粘
度計を用いて、20.0℃に設定した恒温水槽中で試料溶液の流下時間tを測定する。以下の式に従って粘度平均分子量Mvを算出する。
a=0.438×ηsp+1 ηsp=t/t0−1
b=100×ηsp/C C=6.00(g/L)
η=b/a
Mv=3207×η1.205
<感光体ドラムの製造>
実施例1
平均一次粒子径40nmのルチル型酸化チタン(石原産業社製「TTO55N」)と該酸化チタンに対して3重量%のメチルジメトキシシランをボールミルにて混合して得られたスラリーを乾燥後、更にメタノールで洗浄、乾燥して得られた疎水性処理酸化チタンを、メタノール/1−プロパノールの混合溶媒中でボールミルにより分散させることにより、疎水化処理酸化チタンの分散スラリーとなし、該分散スラリーと、メタノール/1−プロパノール/トルエン(重量比7/1/2)の混合溶媒、及び、ε−カプロラクタム/ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン/ヘキサメチレンジアミン/デカメチレンジカルボン酸/オクタデカメチレンジカルボン酸(組成モル%75/9.5/3/9.5/3)からなる共重合ポリアミドのペレットとを加熱しながら撹拌、混合してポリアミドペレットを溶解させた後、超音波分散処理を行うことにより、疎水性処理酸化チタン/共重合ポリアミドを重量比3/1で含有する固形分濃度18.0%の分散液とした。
【0056】
このようにして得られた下引き層形成用塗布液を、外径20mm、長さ246mm、肉厚0.80mmのアルミニウム製シリンダー上に浸漬塗布し、乾燥後の膜厚が2.0μmとなるように下引き層を得た。
次に、電荷発生層形成用塗布液を以下のように作製した。電荷発生物質として、図2のX線回折スペクトルで示されるオキシチタニウムフタロシアニン20部と1,2−ジメトキシエタン280部を混合し、サンドグラインドミルで1時間粉砕して微粒化分散処理を行なった。続いて、この微細化処理液に、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名「デンカブチラール」#6000C)10部を、1,2−ジメトキシエタンの255部と4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノンの85部の混合液に溶解させて得られたバインダー液、及び、230部の1,2−ジメトキシエタンを混合して電荷発生層形
成用塗布液Aを調製した。
【0057】
また、電荷発生物質として、図3のX線回折スペクトルで示されるオキシチタニウムフタロシアニン20部と1,2−ジメトキシエタン280部を混合し、サンドグラインドミルで4時間粉砕して微粒化分散処理を行なった。続いて、この微細化処理液に、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名「デンカブチラール」#6000C)10部を、1,2−ジメトキシエタンの255部と4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノンの85部の混合液に溶解させて得られたバインダー液、及び、230部の1,2−ジメトキシエタンを混合して電荷発生層形成用塗布液Bを調製した。
【0058】
電荷発生層形成用塗布液Aと電荷発生層形成用塗布液Bを1:1の割合で混合し、電荷発生層形成用塗布液を作製した。
この電荷発生層塗布形成用分散液に、先に下引き層を形成したシリンダーを浸漬塗布し、その乾燥後の膜厚が約0.4μmとなるように電荷発生層を形成した。
次に、特開2002−80432中に示された以下構造を主成分とする異性体からなる電荷輸送物質50部、繰り返し単位(1−1)からなる本発明に係るポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量22,000)100部、酸化防止剤として3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン8部、トリベンジルアミン0.1部、レベリング剤としてシリコーンオイル0.05部をテトラヒドロフランとトルエンの混合溶媒(テトラヒドロフラン80重量%、トルエン20重量%)640部に混合し、電荷輸送層形成用塗布液を調製した。
【0059】
このポリカーボネート樹脂は商品名「APEC」としてバイエル社から市販されている樹脂であり、更に精製はせず入手したままの状態で使用した。
【0060】
【化5】

【0061】
この電荷輸送層形成用塗布液に先に電荷発生層を形成したシリンダーを浸漬塗布して、乾燥後の膜厚17μmの電荷輸送層を形成した。このようにして得られた感光体ドラムを感光体A1とする。
実施例2
実施例1の電荷輸送層形成用塗布液に用いた、繰り返し単位(1−1)からなるポリカーボネート樹脂を下記構造の繰り返し単位(1−2)からなるポリカーボネート樹脂(粘
度平均分子量22,000)とした以外は、感光体1と同様の方法で感光体ドラムを作製した。このようにして得られた感光体ドラムを感光体B1とする。
【0062】
【化6】

【0063】
比較例1
実施例1で電荷輸送層形成用塗布液に用いた樹脂を、下記構造の繰り返し単位(ビスフェノールZ)で表される樹脂(粘度平均分子量20,000)とした他は同様の方法で感光体ドラムを作製した。このようにして得られた感光体ドラムを感光体C1とする。
【0064】
【化7】

【0065】
比較例2
実施例1で電荷輸送層形成用塗布液に用いた樹脂を、下記構造式(3)で表される樹脂(粘度平均分子量20,000)とした他は同様の方法で感光体ドラムを作製した。このようにして得られた感光体ドラムを感光体D1とする。
【0066】
【化8】

【0067】
比較例3
実施例1の電荷輸送層形成用塗布液に用いた樹脂を、下記構造の繰り返し単位(ビスフェノールA)からなるポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量30,000)にした以外は、実施例1と同様にして感光体ドラムを作製しようとしたが、この樹脂はテトラヒドロフラン/トルエンの混合溶剤に完全には溶解しなかった。そのため、溶剤を1,4−ジオキサン100%とし、感光体ドラムE1を作製した。
【0068】
【化9】

【0069】
比較例4
実施例1の電荷輸送層形成用塗布液に用いた樹脂を、比較例2で示した構造の繰り返し単位(3)のみからなるポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量20,000)33部と、比較例3で示した繰り返し単位(ビスフェノールA)からなるポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量30,000)67部の混合にした以外は、実施例1と同様にして感光体ドラムを作製しようとしたが、この樹脂はテトラヒドロフラン/トルエンの混合溶剤に完全には溶解しなかった。そのため、溶剤を1,4−ジオキサン100%とし、感光体ドラムF1を作製した。
【0070】
製造した感光体ドラムA1〜F1について、以下の電気特性試験、密着性試験、及び画像特性試験を実施した。これらの結果を表−1にまとめた。
<電気特性試験>
日本画像学会測定標準に従って製造された電子写真特性評価装置(続電子写真技術の基礎と応用、日本画像学会編、コロナ社、404〜405頁記載)を使用し、上記感光体ドラムを一定回転数120rpmで回転させ、帯電、露光、電位測定、除電のサイクルによる電気特性評価試験を行なった。その際、感光体の初期表面電位が−700Vになるように帯電させ、ハロゲンランプの光を干渉フィルターで780nmの単色光としたものを2.0μJ/cmで露光したときの100ms後の表面電位(以下、VLと呼ぶことがある)を測定した。測定環境は、温度25℃、相対湿度50%で行なった。VLの値は小さいほど良好である。
【0071】
<密着性試験>
感光体ドラム上にて、NTカッターを用いて、1mm間隔で11本、周方向及び軸方向の両方に切り込みを入れ、10×10の100マスを作製した。その上からセロテープ(登録商標)(ニチバン製)を貼り付け、斜め45゜に引き上げることで、感光層の密着性を試験した。支持体上に残存した感光層のマス数を評価し、残存したマス数が多いほど良好である。
【0072】
<画像特性試験>
感光体ドラムにフランジを装着し、Samsung社製モノクロプリンターML−1630(ブレードクリーニング方式採用)にセットし、1000枚の連続印字を行い、その後、ハーフトーン画像を出力した。1000枚の印字によってクリーニングがうまくいかなかった場合、トナーすり抜けによる画像汚れが発生する。
【0073】
【表1】

【0074】
実施例3
実施例1で用いたアルミニウム製シリンダーを外径24mm、長さ248mm、肉厚0.75mmのものを用いた他は同様の方法で感光体ドラムを作製した。このようにして得られた感光体ドラムを感光体A2とする。
実施例4
実施例2で用いたアルミニウム製シリンダーを外径24mm、長さ248mm、肉厚0.75mmのものを用いた他は同様の方法で感光体ドラムを作製した。このようにして得られた感光体ドラムを感光体B2とする。
【0075】
比較例5
比較例1で用いたアルミニウム製シリンダーを外径24mm、長さ248mm、肉厚0.75mmのものを用いた他は同様の方法で感光体ドラムを作製した。このようにして得られた感光体ドラムを感光体C2とする。
比較例6
比較例2で用いたアルミニウム製シリンダーを外径24mm、長さ248mm、肉厚0.75mmのものを用いた他は同様の方法で感光体ドラムを作製した。このようにして得られた感光体ドラムを感光体D2とする。
【0076】
比較例7
比較例3で用いたアルミニウム製シリンダーを外径24mm、長さ248mm、肉厚0.75mmのものを用いた他は同様の方法で感光体ドラムを作製した。このようにして得られた感光体ドラムを感光体E2とする。
比較例8
比較例4で用いたアルミニウム製シリンダーを外径24mm、長さ248mm、肉厚0.75mmのものを用いた他は同様の方法で感光体ドラムを作製した。このようにして得られた感光体ドラムを感光体F2とする。
【0077】
製造した感光体ドラムA2〜F2について、以下の電気特性試験、密着性試験、及び画像特性試験を実施した。これらの結果を表−2にまとめた。
<電気特性試験>
実施例1,2及び比較例1〜4と同様の手法で実施した。
<密着性試験>
実施例1,2及び比較例1〜4と同様の手法で実施した。
【0078】
<画像特性試験>
使用したプリンターをSamsung社製モノクロプリンターML−1610(ブレードクリーニング方式採用)とした以外は、実施例1,2及び比較例1〜4と同様の手法で実施した。
【0079】
【表2】

【0080】
参考例9
実施例1で用いたアルミニウム製シリンダーを外径30mm、長さ248mm、肉厚0.75mmのものを用いた他は同様の方法で感光体ドラムを作製した。このようにして得られた感光体ドラムを感光体A3とする。
参考例10
実施例2で用いたアルミニウム製シリンダーを外径30mm、長さ248mm、肉厚0.75mmのものを用いた他は同様の方法で感光体ドラムを作製した。このようにして得られた感光体ドラムを感光体B3とする。
【0081】
参考例11
比較例1で用いたアルミニウム製シリンダーを外径30mm、長さ248mm、肉厚0.75mmのものを用いた他は同様の方法で感光体ドラムを作製した。このようにして得られた感光体ドラムを感光体C3とする。
参考例12
比較例2で用いたアルミニウム製シリンダーを外径30mm、長さ248mm、肉厚0.75mmのものを用いた他は同様の方法で感光体ドラムを作製した。このようにして得られた感光体ドラムを感光体D3とする。
【0082】
参考例13
比較例3で用いたアルミニウム製シリンダーを外径30mm、長さ248mm、肉厚0.75mmのものを用いた他は同様の方法で感光体ドラムを作製した。このようにして得られた感光体ドラムを感光体E3とする。
参考例14
比較例4で用いたアルミニウム製シリンダーを外径30mm、長さ248mm、肉厚0.75mmのものを用いた他は同様の方法で感光体ドラムを作製した。このようにして得られた感光体ドラムを感光体F3とする。
【0083】
製造した感光体ドラムA2〜F2について、以下の電気特性試験、密着性試験、及び画像特性試験を実施した。これらの結果を表−3にまとめた。
<電気特性試験>
実施例1,2及び比較例1〜4と同様の手法で実施した。
<密着性試験>
実施例1,2及び比較例1〜4と同様の手法で実施した。
【0084】
<画像特性試験>
使用したプリンターをSamsung社製モノクロプリンターML−6040(ブレードクリーニング方式採用)とした以外は、実施例1,2及び比較例1〜4と同様の手法で実施した。
【0085】
【表3】

【0086】
表−3からわかるように、外径30mmの感光体ドラムを使用する場合、感光層に用いる樹脂の構造によって、支持体との密着性にはほとんど影響を受けず、クリーニング不良による画像汚れを改良するための樹脂選択の幅が広い。
ところが、表−1での外径20mmの結果、及び表−2での外径24mmでの結果でわかるように、外径が小さくなるほどその密着性が厳しくなり、選択できる樹脂が限られてくる。
【0087】
従来、過去には、プリンターの小型化は注目されていなかったため、外径30mmの感光体が主流であったが、昨今、オフィス等の省スペース化が重要となり、外径を25mm以下とすることが重要となってきた。この新しい課題に対しては十分な知見がなく、良好な電気特性、クリーニング性を維持したまま密着性を改良できる樹脂は見つかっておらず、本発明により初めて、クリーニング特性と密着性の両立が可能となった。
【符号の説明】
【0088】
1 感光体
2 帯電装置(帯電ローラ)
3 露光装置
4 現像装置
5 転写装置
6 クリーニング装置
7 定着装置
41 現像槽
42 アジテータ
43 供給ローラ
44 現像ローラ
45 規制部材
71 上部定着部材(加圧ローラ)
72 下部定着部材(定着ローラ)
73 加熱装置
T トナー
P 記録紙(用紙、媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性支持体上に感光層を有する電子写真感光体において、該導電性支持体が外径25mm以下の円筒形状であり、且つ、該感光層が下記一般式(1)で表される繰り返し構造を含む共重合ポリカーボネート樹脂を含有することを特徴とする電子写真感光体。
【化1】

(式(1)中、R、R、R及びRは水素原子または炭素数4以下のアルキル基を表し、Zは、結合する炭素原子を含めて炭素数5〜8の環状飽和脂肪族アルキル基を形成し、且つ該環状飽和脂肪族アルキル基は、1〜3個のメチル基を置換基として有する。)
【請求項2】
該ポリカーボネート樹脂が、上記一般式(1)と下記構造式(2)との共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体。
【化2】

【請求項3】
該ポリカーボネート樹脂中に於いて、前記構造式(2)の占めるモル比率が前記一般式(1)の占めるモル比率よりも大きいことを特徴とする、請求項2に記載の電子写真感光体。
【請求項4】
該ポリカーボネート樹脂中に於いて、前記構造式(2)の占めるモル比率が前記一般式(1)の占めるモル比率の2倍以上であることを特徴とする、請求項3に記載の電子写真感光体。
【請求項5】
前記一般式(1)が下記構造式(3)で表されることを特徴とする、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の電子写真感光体。
【化3】

【請求項6】
該導電性支持体の外径が22mm以下であることを特徴とする、請求項1乃至5のいず
れか一項に記載の電子写真感光体。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電させる帯電手段と、帯電した該電子写真感光体に対する露光により静電潜像を形成する露光手段と、前記静電潜像をトナーで現像する現像手段と、前記トナーを被転写体に転写する転写手段、前記被転写体に転写された前記トナーを定着させる定着手段とを備えることを特徴とする、画像形成装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の電子写真感光体と、該電子写真感光体を帯電させる帯電手段、帯電した該電子写真感光体に対し像露光により静電潜像を形成する像露光手段、前記静電潜像をトナーで現像する現像手段、前記トナーを被転写体に転写する転写手段、及び、前記電子写真感光体に付着した前記トナーを回収するクリーニング手段から選ばれる少なくとも一つの手段を備えることを特徴とする、電子写真カートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−22312(P2012−22312A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133177(P2011−133177)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】