説明

電子写真感光体の劣化判定装置及びそれを備えた画像形成装置

【課題】出力画像の品質が低下する前に電子写真感光体の寿命(交換時期)を判定することができる劣化判定装置及びこれを備えた画像形成装置を提供すること。
【解決手段】所定波長を有する青色光を受光し励起して蛍光を発光する電荷輸送物質を含有する層14を外周部に有する電子写真感光体1の劣化判定装置2であって、判定対象の感光体1の電荷輸送物質を励起させて蛍光を生じさせる前記所定波長を有する青色光Leを電荷輸送物質含有層14に照射する光照射部2Aと、電荷輸送物質が発する蛍光Lfを受光して蛍光強度を測定する蛍光検出部2Bと、蛍光検出部2Bによって測定した前記蛍光強度と、感光体1の電荷輸送物質含有層14が未使用状態のときに予め測定した初期蛍光強度とを比較することにより、電荷輸送物質含有層14の劣化度を判定する評価部2Cとを備えたことを特徴とする電子写真感光体の劣化判定装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体の劣化判定装置及びそれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真技術を用いて画像を形成する電子写真方式の画像形成装置(「電子写真装置」ともいう)は、複写機、プリンター、ファクシミリ装置などに多用されている。この画像形成装置に搭載される電子写真感光体としては、有機光導電性物質を用いたいわゆる有機感光体(OPC感光体)が実用化されてきている。以下、「電子写真感光体」を「感光体」と略称する場合がある。
【0003】
画像形成の際、一般にコロナ放電で発生するイオンを感光体表面に散布することにより、感光体表面を帯電させる。このとき、コロナ放電時に空気中の酸素や窒素から必然的にオゾンやNOxが生成する。また、画像形成装置の設置環境でNOxが発生している場合があり、例えば、小規模な個人商店や事務所などで冬期に石油またはガスストーブを使用している例が挙げられる。
このような場合、画像形成装置は、自らが発生するオゾンやNOx及び設置環境で発生するNOxを含む雰囲気に曝されることとなる。
【0004】
OPC感光体は生産性が高く安価であるが、オゾンといった酸化性ガスやNOxといった酸性ガスによって、帯電電位の低下や、感度変動及び残留電位増加等の電子写真特性の劣化が起り易い。さらに、反転現像を用いた画像形成装置では画像濃度の低下を引き起こす。これらの原因としては 酸化性ガス及び酸性ガスによって電荷輸送物質が加水分解されアルデヒド類を生じる化学反応が進行することが要因であると考えられている。
【0005】
このような不具合を回避するために、OPC感光体に酸化防止剤を添加することが知られている。例えば、電荷輸送層に2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)等の酸化防止剤を添加する方法(例えば、特許文献1参照)、感光層にヒンダードアミン類等の酸化防止剤を添加する方法(例えば、特許文献2参照)が知られている。しかしながら、酸化防止剤は電荷トラップとして作用するため、多量に添加すると、電気特性の悪化を招くという新たな問題が生じる。
【0006】
一方、感光体寿命を判定する方法として、画像形成装置内に表面電位計を設置し、感光体の表面電位の変化から感光体寿命を判定する方法が提案されている(例えば、特許文献3及び4参照)。さらに、画像形成装置内に温度計も設置し、表面電位の温度依存性を考慮して感光体寿命を判定する方法も提案されている(例えば、特許文献5参照)。
一般に電子写真感光体に用いられる電荷輸送物質は、蛍光色素と化学構造的に類似しており、紫外光によって励起すると蛍光を発することが知られている。例えば、当分野で広く用いられるアミン系化合物の場合、430nm付近あるいは530nm付近にピークを有する蛍光が観測されることが知られている(例えば、特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭61−156052号公報
【特許文献2】特開昭63−018355号公報
【特許文献3】特開平9−190120号公報
【特許文献4】特開2006−139272号公報
【特許文献5】特開2010−128012号公報
【特許文献6】特開2010−271650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記のように提案されている従来の方法においては、表面電位計で感光体劣化による電位変化を検知し、感光体の寿命がきたと判断した場合には感光体の交換を促すことになる。
しかしながら、表面電位の変化と出力される画像の劣化とはほぼ対応するため、表面電位によって感光体が劣化していると判断できた時には、既に画像上問題がある状態になってしまっている。よって、画像に問題が生じてから感光体を交換するという対応では、ユーザーの業務に支障をきたしてしまう。
【0009】
本発明は、前記課題に鑑みなされたものであり、出力画像の品質が低下する前に電子写真感光体の寿命(交換時期)を判定することができる劣化判定装置及びこれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、蛍光色素と化学構造的に類似した電子写真感光体の電荷輸送物質が発する蛍光の強度から、電荷輸送物質が分解し消失した程度を推定でき、さらには感光体の寿命を判定できることを見出し、本発明を完成させるに到った。
【0011】
かくして、本発明によれば、所定波長を有する青色光を受光し励起して蛍光を発光する電荷輸送物質を含有する層を外周部に有する電子写真感光体の劣化判定装置であって、
判定対象の前記電子写真感光体の前記電荷輸送物質を励起させて蛍光を生じさせる前記所定波長を有する青色光を前記電荷輸送物質含有層に照射する光照射部と、
前記電荷輸送物質が発する蛍光を受光して蛍光強度を測定する蛍光検出部と、
前記蛍光検出部によって測定した前記蛍光強度と、前記電子写真感光体の前記電荷輸送物質含有層が未使用状態のときに予め測定した初期蛍光強度とを比較することにより、前記電荷輸送物質含有層の劣化度を判定する評価部とを備えた電子写真感光体の劣化判定装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の劣化判定装置によれば、電子写真感光体の電荷輸送物質含有層中の電荷輸送物質が有する蛍光特性を利用するため、電位特性の変化よりも前に感光体劣化の兆候を検知することができる。この結果、形成画像の問題が発生する前に電子写真感光体を交換することができるため、ユーザーの業務に支障をきたすことを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の劣化判定装置を備えた画像形成装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】本発明の劣化判定装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【図3】図1の劣化判定装置を備えた画像形成装置のブロック図である。
【図4】図1の画像形成装置に備えられた電子写真感光体の積層構造を示す一部拡大断面図である。
【図5】化合物(1)の吸収スペクトルを分光光度計で測定した結果を示すグラフである。
【図6】化合物(1)に450nmの励起光を照射して発生させた蛍光の蛍光スペクトルを分光光度計で測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の電子写真感光体の劣化判定装置は、前記のように、光照射部と、蛍光検出部と、評価部とを備え、電子写真感光体の電荷輸送物質含有層中の電荷輸送物質が有する蛍光特性を利用して電子写真感光体の劣化を判定することができる。具体的には、電荷輸送物質は分解すると蛍光を発しなくなるため、電荷輸送物質含有層の蛍光強度の変化を観測することで、電荷輸送物質含有層の劣化度を判定することができる。
【0015】
前記光照射部は、判定対象の前記電子写真感光体の前記電荷輸送物質を励起させて蛍光を生じさせる所定波長を有する青色光を前記電荷輸送物質含有層に照射する機能を有する。
前記蛍光検出部は、前記電荷輸送物質が発する蛍光を受光して蛍光強度を測定する機能を有する。
前記評価部は、前記蛍光検出部によって測定した前記蛍光強度と、前記電子写真感光体の前記電荷輸送物質含有層が未使用状態のときに予め測定した初期蛍光強度とを比較することにより、前記電荷輸送物質含有層の劣化度を判定する機能を有する。
【0016】
本発明の劣化判定装置を備えることができる電子写真方式の画像形成装置としては、特に限定されず、例えば、電子写真方式の複写機、プリンタ、ファクシミリ、又はこれらの複合機が含まれる。
【0017】
この電子写真感光体の劣化判定装置は、次の(1)〜(4)のように構成されてもよく、これらが適宜組み合わされてもよい。
(1)前記評価部は、前記初期蛍光強度を基準値Dとし、かつ前記蛍光強度を測定値Dmとした場合に、Dm<Db×α(αは1より小さい係数)と判断すると警告信号を出力するよう構成されている。
このようにすれば、この劣化判定装置を備えた画像形成装置のユーザーに対して、形成画像の品質が低下する前に、電子写真感光体の交換時期を積極的に知らせることが可能となる。
【0018】
(2)前記光照射部が青色発光ダイオードであり、前記蛍光検出部がシリコンフォトダイオードである。
このようにすれば、大規模な分析装置は不要であるため、低コストにて劣化判定装置を作製することができる。また、光照射部は、ランプを用いず、青色発光ダイオードを用いて構成されるため、落下や衝撃に強い劣化判定装置を得ることができる。
【0019】
(3)前記蛍光検出部が受光面にフィルターを有していてもよい。
このようにすれば、光照射部からの直接光及び反射光は、フィルターにて確実にカットされて蛍光検出部への入射を阻止される。その結果、蛍光検出部は、電荷輸送物質が励起して発した蛍光のみを受光することができる。
よって、構成(3)によれば、高精度な劣化判定を行うことができると共に、高精度な劣化判定を行うための光照射部及び蛍光検出部の配置が容易となる。
なお、光照射部の発光波長と蛍光検出部の感度波長がある程度異なれば、例えば、50nm以上の差があれば、光照射部からの直接光及び反射光が蛍光と混合して蛍光検出部に入射しても、蛍光検出部による蛍光のみの検知が可能である。そのため、本発明において、フィルターは必須要件ではない。
また、蛍光検出部のシリコンフォトダイオードの感度は可視光全域であり、紫外光領域での感度は低いため、フィルターなしに直接受光しても蛍光の検知が可能であるが、紫外光LEDの長波長成分や画像露光に用いる赤外光の短波長成分による誤動作を防ぐためバンドパスフィルターを設けることが好ましい。
【0020】
(4)前記光照射部は発光波長420〜500nmの青色光を照射可能に構成され、前記蛍光検出部は波長520〜580nmの光を検知可能に構成されている。
このようにすれば、電荷輸送物質が発する蛍光の蛍光波長が蛍光検出部の特性に合致するため、判定ミスを抑制し、より高精度な劣化判定を行うことができる。
【0021】
また、本発明の別の観点によれば、静電潜像が形成される表面を有する電子写真感光体と、前記劣化判定装置と、前記感光体の表面を帯電させる帯電部と、前記感光体の表面に静電潜像を形成する露光部と、前記感光体の表面の静電潜像にトナーを供給してトナー像を形成する現像部と、前記感光体の表面のトナー像を記録媒体に転写する転写部と、前記感光体の表面を清浄化するクリーニング部と、トナー像を記録媒体に定着させる定着部とを備えた画像形成装置が提供される。
この画像形成装置によれば、電子写真感光体の劣化による形成画像の不良を未然に防止できる。
【0022】
この画像形成装置は、次の(A)〜(C)のように構成されてもよい。
【0023】
(A)前記劣化判定装置の前記評価部は、前記初期蛍光強度を基準値Dとし、かつ前記蛍光強度を測定値Dmとした場合に、Dm<Db×α(αは1より小さい係数)と判断すると警告信号を出力するよう構成され、
前記画像形成装置は、前記警告信号が入力される制御部と、該制御部と電気的に接続された表示部及び駆動部とをさらに備え、
前記制御部は、前記警告信号に基づいて、前記電子写真感光体の交換を促す表示を表示させるよう前記表示部を制御する機能を有する。
このようにすれば、障害が発生する前に、電子写真感光体の交換すべき時期をユーザーが知ることができるため、業務の中断がない画像形成装置を実現できる。
【0024】
(B)前記制御部は、前記警告信号に基づいて、画像形成動作を開始させない停止維持信号を出力するよう構成されている。
このようにすれば、不良画像を出力して用紙を無駄に消費することを回避できる。
【0025】
(C)前記電子写真感光体は、下記一般式(I):
【化1】

(式中、
Ar1及びAr2は、互いに同一または異なって、置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよい複素環基を表し、
Ar3は、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアルキル基を表し、
Ar4及びAr5は、互いに同一または異なって、水素原子、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアルキル基を表し、ただし、Ar4及びAr5が共に水素原子ではなく、Ar4及びAr5は、原子または原子団を介して互いに結合して環構造を形成してもよく、
aは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいジアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子または水素原子を表し、
mは1〜6の整数であり、mが2以上のとき、複数のaは、互いに同一または異なって、互いに結合して環構造を形成してもよく、
11は、水素原子、ハロゲン原子または置換基を有してもよいアルキル基を表し、
12、R13及びR14は、互いに同一または異なって、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基または置換基を有してもよいアラルキル基を表し、
nは0〜3の整数であり、nが2または3のとき、複数のR12は、互いに同一または異なり、複数のR13は、互いに同一または異なり、ただし、nが0のとき、Ar3は置換基を有してもよい複素環基を表す)
で示される電荷輸送物質を含有する電荷輸送物質含有層を有する。
【0026】
前記一般式(I)で示される電荷輸送物質は、高い電荷移動度を有している。そのため、この電荷輸送物質の層(電荷輸送物質含有層)を有する電子写真感光体を備えた画像形成装置は、高速画像形成を行うことができる。換言すると、高速画像形成が可能な画像形成装置の電子写真感光体の劣化判定に好適となる。
この一般式(I)で示される化合物は、例えば、特開2004−151666号公報に記載の製造方法により製造できる。
なお、前記一般式(I)で示される電荷輸送物質はエナミン系化合物であり、オゾンといった酸化性ガスまたはNOxといった酸性ガスの雰囲気下では、加水分解により、窒素原子とR11との間のC炭素原子と前記窒素原子との結合が切れると推定される。
【0027】
以下、本発明の電子写真感光体の劣化判定装置及びそれを備えた画像形成装置の具体的な実施形態について詳説する。
【0028】
図1は本発明の劣化判定装置を備えた画像形成装置の一実施形態を示す概略構成図であり、図2は本発明の劣化判定装置の一実施形態を示す概略構成図であり、図3は図1の劣化判定装置を備えた画像形成装置のブロック図であり、図4は図1の画像形成装置に備えられた電子写真感光体の積層構造を示す一部拡大断面図である。
【0029】
図1と図3に示すように、この画像形成装置(レーザープリンタ)100は、電子写真感光体1(以下、「感光体1」と略称する場合がある)と、帯電部(帯電器)32と、露光部(半導体レーザー)31と、現像部(現像器)33と、転写部(転写帯電器)34と、クリーニング部(クリーナ)36と、除電部(除電器)30と、搬送ベルト(図示せず)と、定着部(定着器)35と、制御部41と、表示部42と、駆動部43とを備え、さらに、本発明の劣化判定装置2を備えている。
また、感光体1は、導電性基体11上に、中間層12、電荷発生物質13aを含有する電荷発生層13及び電荷輸送物質14aを含有する電荷輸送層(電荷輸送物質含有層)14がこの順序で積層されてなる。
以下、図1〜図4を参照しながら劣化判定装置2、感光体1及び画像形成装置100を具体的に説明する。
【0030】
<劣化判定装置>
劣化判定装置2は、光照射部2Aと、蛍光検出部2Bと、評価部2Cとを備えている。
光照射部2Aは、感光体1の電荷輸送物質13aを励起させて蛍光を発光させることができる波長の青色光(励起光)を照射する。
電荷輸送物質は、特定波長の青色光によって励起されると共に、固有の蛍光波長の蛍光を発する。つまり、電荷輸送物質の種類が異なれば、励起光の波長(励起波長)及び蛍光波長も異なる。そのため、光照射部2Aは、判定対象の感光体1に用いられている電荷輸送物質13aを励起させて蛍光Lfを発光させることができる波長の青色光Leを照射するものである必要がある。
【0031】
さらに、励起光Leの励起波長は、次の理由により、420〜500nmであることが好ましい。
励起波長が420nm未満であると、励起光Leによって感光体1の電荷輸送層14、電荷発生層13等の膜が劣化して感光体1の感度が低下するおそれがある。また、使用する電荷輸送物質13aの種類にもよるが、励起波長が500nmを越えると、電荷輸送物質13aの蛍光波長と励起波長の差が20nm未満に小さくなる場合が生じ、その結果、蛍光検出部2Bが励起光Leを検知し易くなるため、蛍光検出部2Bによる蛍光強度の測定を高精度に行い難くなる。
よって、光照射部2Aとしては、420〜500nmの励起光Leを照射するものを用いることが好ましい。これに伴い、電荷輸送物質13aとしては、420〜500nmの励起光Leによって蛍光Lfを発するものを用いることが好ましい。
420〜500nmの励起光Leを照射可能な光照射部2Aとしては、例えば、発光ダイオードや半導体レーザといった発光素子を用いることができる。具体的に、発光ダイオードとしては青色発光ダイオードを用いることができ、半導体レーザとしては青色半導体レーザを用いることができる。
【0032】
前記のように、電荷輸送物質13aとしては、420〜500nmの励起光Leによって蛍光Lfを発するものを用いることが好ましく、さらに、蛍光検出部2Bによる高精度な検知を行う観点から、500nmの励起波長よりも20nm以上、好ましくは50nm以上の差を有する蛍光波長(ピーク波長)の蛍光Lfを発するものがより好ましい。つまり、520nm以上の蛍光波長の蛍光Lf、好ましくは550nm以上の蛍光波長の蛍光Lfを発する電荷輸送物質13aを用いることが好ましい。例えば、本発明においては、520〜580nmの蛍光波長を有する電荷輸送物質13aを用いることができる。
【0033】
これに伴い、蛍光検出部2Bは、520nm以上の蛍光波長を検出できるもの(検出波長520nm以上)を用いることが好ましい。蛍光検出部2Bの検出波長の上限は、特に限定されず、用いる電荷輸送物質13aの蛍光波長の上限(例えば、580nm)とすることができる。なお、蛍光検出部2Bの検出波長の上限は、580nmを越えてもよいが、画像露光波長が赤色光である場合、画像書き込み光による誤動作を防止する観点から、580nmとするのがよい。
蛍光検出部2Bとしては、例えば、フォトダイオードといった受光素子を用いることができる。さらに、蛍光検出部2Bは、所定波長を含む特定の波長領域の光のみを検出するために、受光面にフィルター(例えば干渉フィルター)を有してもよい。青色発光ダイオードまたは青色半導体レーザを光照射部2Aとして用いる場合、フィルターとしては多層膜カラーフィルターを用いる。
【0034】
光照射部2Aと蛍光検出部2Bは、二点鎖線で示す筐体3によって一体化されると共に、例えば、除電部30と帯電部32との間の感光体1の外周面近傍に配置されている。この位置は、トナーが除去され、かつ除電されているため、感光体1の外周面部分の劣化判定を正確に行えると共に、運転中の画像形成に影響を与えないため、筐体3を固定する位置として好ましい。なお、後述する評価部2Cは、筐体3によって光照射部2A及び蛍光検出部2Bと一体化されてもよいが、別の位置に設けられてもよい。
また、例えば、光照射部2Aと蛍光検出部2Bは、感光体1の回転軸線44と平行な方向に並んで配置される。
さらに好ましくは、光照射部2Aと蛍光検出部2Bは、感光体1の画像形成域外の一方の端部に設けることである。
【0035】
評価部2Cは、図示しない信号入力部、記憶部、演算部及び信号出力部を備える。なお、評価部2Cは、前記筐体3内に配置されてもよいし、あるいは画像形成装置100の装置本体内の適当な箇所に配置されてもよい。
信号入力部は、蛍光検出部2Bから信号線を介して蛍光強度信号が入力されると共に、その蛍光強度信号を測定値Dmに変換する機能を有する。
記憶部は、判定対象の感光体1が未使用状態のときの電荷輸送層14の電荷輸送物質14aの初期蛍光強度(基準値Db)を記憶する機能を有する。なお、基準値Dbの記憶部への入力は、例えば、この劣化判定装置を用いて未使用の電荷輸送層14の電荷輸送物質14aの初期蛍光強度を測定する際、基準値Dbを信号入力部から記憶部へ転送することにより行うことができる。
【0036】
演算部は、信号入力部からの測定値Dm及び記憶部からの基準値Dbが入力されると共に、例えば、測定値Dmが所定値(Db×α)を下回ると判断した場合に警告信号を信号出力部へ出力する機能を有する。
ここで、前記所定値(Db×α)は、警告信号を出力すべきか否かを判断する値であり、この値を下回ると警告信号を出力すべきと判断される。また、警告信号を出力すべき時期は、感光体1によって形成画像に問題が生じる前であって、所定枚数(例えば、1000枚)の印刷を開始すると形成画像に問題が生じ始める時期とされる。なお、所定値(Db×α)中のαは、所定値を算出するための1より小さい係数であり、事前の実験により求めることができる。
信号出力部は、演算部からの警告信号を画像形成装置100の後述する表示部及び制御部へ出力する機能を有する。
【0037】
<電子写真感光体>
前記のように、感光体1は、導電性基体11上に、中間層12、電荷発生物質13aを含有する電荷発生層13、及び電荷輸送物質14aを含有する電荷輸送層14がこの順序で積層されてなる。この場合、電荷発生層13及び電荷輸送層14から2層構造の感光層が構成されている。
しかしながら、本実施形態における感光体1は例示であり、本発明において感光体1はこの構成に限定されるものではない。例えば、中間層は任意の構成要素であるため省略することができる。また、感光体1の最表面に保護層が設けられていてもよい。
以下、本実施形態で例示した感光体1を構成する各構成要素について説明する。
【0038】
[導電性基体]
導電性基体11の構成材料は、電子写真感光体の電極としての機能と支持部材としての機能を有し、当該分野で用いられる材料であれば特に限定されない。
具体的には、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、亜鉛、ステンレス鋼、チタンなどの金属材料;金属箔、金属蒸着層、あるいは導電性高分子、酸化スズ、酸化インジウムなどの導電性化合物の蒸着層又は塗布層が、支持体の表面に積層されてなる積層材料などを用いることができる。なお、前記支持体の材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリスチレンなどの高分子材料、硬質紙又はガラスなどが挙げられる。
導電性基体11の構成材料として、特に好ましくは、JIS3003系、JIS5000系及びJIS6000系などのアルミニウム合金が用いられる。
【0039】
導電性基体の形状は、円筒状又は円柱状が好ましい。
導電性基体11の表面には、必要に応じて、画質に影響のない範囲内で、陽極酸化皮膜処理、薬品若しくは熱水などによる表面処理、着色処理、又は表面を粗面化するなどの乱反射処理を施してもよい。
乱反射処理は、レーザを露光光源として用いる場合に特に有効である。すなわち、レーザを露光光源として用いる電子写真プロセスでは、レーザ光の波長が揃っているので、感光体表面で反射されるレーザ光と感光体内部で反射されるレーザ光とが干渉を起こす。この結果、前記干渉による干渉縞が画像上に現れて画像欠陥となることがある。導電性基体の表面に乱反射処理を施すことにより、波長の揃ったレーザ光の干渉による画像欠陥を防止することができる。
【0040】
[中間層]
本実施形態のように、感光体1は、導電性基体11と電荷発生層13との間に中間層12を有していることが好ましい。
中間層(「下引き層」ともいう)12は、導電性基体11から感光層(電荷発生層13及び電荷輸送層14)への電荷の注入を防止する機能を有する。そのため、感光体1の帯電性の低下を防ぐことができ、露光によって消去されるべき部分以外の表面電荷の減少を抑え、画像にかぶりなどの欠陥が発生することを防止できる。特に、反転現像プロセスによる画像形成では、白地部分にトナーからなる微小な黒点が形成されることによる画像かぶりの発生が防止される。
中間層12は、例えば、樹脂材料を適当な溶剤に溶解させて中間層形成用塗布液を調製し、この塗布液を導電性基体11の表面に塗布し、乾燥により有機溶剤を除去することによって形成できる。
【0041】
前記樹脂材料としては、後述の電荷発生層13に含まれるものと同様のバインダ樹脂に加えて、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、エチルセルロースなどの天然高分子材料などが挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用できる。これらの樹脂の中でも、ポリアミド樹脂が好ましく、特にアルコール可溶性ナイロン樹脂が特に好ましい。
アルコール可溶性ナイロン樹脂としては、例えば6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン、11−ナイロン、2−ナイロン及び12−ナイロンなどを共重合させた、いわゆる共重合ナイロン、ならびにN−アルコキシメチル変性ナイロン及びN−アルコキシエチル変性ナイロンのようにナイロンを化学的に変性させた樹脂などが挙げられる。
【0042】
樹脂材料を溶解又は分散させる溶剤としては、例えば、水、メタノール、エタノール、ブタノールなどのアルコール類、メチルカルビトール、ブチルカルビトールなどのグライム類、ジクロロエタン、クロロホルム、トリクロロエタンなどの塩素系溶剤、アセトン、ジオキソラン、これらの溶剤を2種以上混合した混合溶剤などが挙げられる。これらの溶剤の中でも、環境汚染を考慮すると、非ハロゲン系有機溶剤が好適に用いられる。
中間層12の塗布方法としては、スプレー法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法、インクジェット塗布法及び浸漬塗布法などを挙げることができる。
【0043】
また、中間層形成用塗布液は、金属酸化物粒子を含んでいてもよい。
金属酸化物粒子は、中間層12の体積抵抗値を容易に調節でき、各種環境下において感光体1の電気特性を維持できる。
また、金属酸化物粒子は中間層12の導電性基体11でのレーザ光の反射を抑制して干渉縞状の不良画像(モアレ)の発生を防止する。
金属酸化物粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化スズなどが挙げられる。
中間層形成用塗布液におけるバインダ樹脂と金属酸化物粒子との合計重量Cと溶剤の重量Dとの比率(C/D)は、1/99〜40/60が好ましく、2/98〜30/70が特に好ましい。
また、バインダ樹脂の重量Eと金属酸化物粒子の重量Fとの比率E/Fは、90/10〜1/99が好ましく、70/30〜5/95が特に好ましい。
【0044】
中間層12の膜厚は特に限定されないが、0.01〜20μmが好ましくは、0.05〜10μmが特に好ましい。
中間層12の膜厚が20μmを超える場合には、均一な膜厚の中間層12を形成し難く、そのため中間層12上に均一な膜厚の電荷発生層13を形成し難くなり、感光体1の感度が低下するおそれがある。一方、中間層12の膜厚が0.01μm未満の場合には、下引き層として実質的に機能しなくなり、導電性基体11の欠陥を被覆して均一な中間層表面が得られないおそれがある。すなわち、導電性基体11からの感光層への電荷の注入を防止することができなくなり、感光体1の帯電性の低下が生じる。
なお、導電性基体11の構成材料がアルミニウムの場合には、アルマイトを含む層(アルマイト層)を形成し、その層を中間層12として機能させることができる。
【0045】
[電荷発生層]
電荷発生層13は、光を吸収することによって電荷を発生する電荷発生物質13を主成分として含有する。
電荷発生物質13aとしては、例えば、モノアゾ系顔料、ビスアゾ系顔料及びトリスアゾ系顔料などのアゾ系顔料;インジゴ及びチオインジゴなどのインジゴ系顔料;ペリレンイミド及びペリレン酸無水物などのペリレン系顔料;アントラキノン及びピレンキノンなどの多環キノン系顔料;オキソチタニウムフタロシアニン化合物といった金属フタロシアニン及び無金属フタロシアニンなどのフタロシアニン化合物;スクアリリウム色素、ピリリウム塩類、チオピリリウム塩類、トリフェニルメタン系色素などの有機光導電性材料;セレン及び非晶質シリコンなどの無機光導電性材料などが挙げられる。
これらの電荷発生物質は、1種が単独で使用されてもよく、あるいは2種以上が組合わされて使用されてもよい。
これらの電荷発生物質の中でも、下記一般式(A)で示されるオキソチタニウムフタロシアニン化合物を用いることが好ましい。
【0046】
【化2】

【0047】
前記一般式(A)において、X1,X2,X3及びX4は、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、アルキル基又はアルコキシ基を示し、r,s,y及びzは、それぞれ0〜4の整数を示す。
オキソチタニルフタロシアニンは、現在一般的に用いられているレーザ光及びLED光の発振波長域(近赤外光)で高い電荷発生効率と電荷注入効率とを有する電荷発生物質である。そのため、オキソチタニルフタロシアニンは、光を吸収することによって多量の電荷を発生させるとともに、発生した電荷をその内部に蓄積することなく電荷輸送物質に効率よく注入する。
【0048】
前記一般式(A)で示されるオキソチタニウムフタロシアニン化合物は、例えば、Moser及びThomasによるPhthalocyanine Compounds、Reinhold Publishing Corp.、New York、1963に記載されている方法などの従来公知の製造方法に従って製造することができる。
例えば、前記一般式(A)で示されるオキソチタニウムフタロシアニン化合物のうち、X1,X2,X3及びX4が共に水素原子であるオキソチタニウムフタロシアニンは、フタロニトリルと四塩化チタンとを、加熱融解するか、又はα−クロロナフタレンなどの適当な溶媒中で加熱反応させることによってジクロロチタニウムフタロシアニンを合成し、次いで、塩基又は水で加水分解することによって製造することができる。また、イソインドリンとテトラブトキシチタンなどのチタニウムテトラアルコキシドとを、N−メチルピロリドンなどの適当な溶媒中で加熱反応させることによっても、オキソチタニウムフタロシアニンを製造することができる。
【0049】
電荷発生層13には、結着性を向上させるために、バインダ樹脂が含有されてもよい。バインダ樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂及びポリビニルホルマール樹脂などの樹脂、並びにこれらの樹脂を構成する繰返し単位のうちの2つ以上を含む共重合体樹脂などが挙げられる。
【0050】
共重合体樹脂の具体例としては、例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体樹脂及びアクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂などの絶縁性樹脂などを挙げることができる。
バインダ樹脂は上記のものに限定されず、この分野において一般に用いられる樹脂をバインダ樹脂として使用することもできる。バインダ樹脂は、1種が単独で使用されてもよく、あるいは2種以上が併用されてもよい。
【0051】
電荷発生層13における電荷発生物質の割合は、10重量%〜99重量%であることが好ましい。電荷発生物質の割合が10重量%未満であると、感光体1の感度が低下するおそれがある。また、電荷発生物質の割合が99重量%を超えると、バインダ樹脂の含有量が低すぎて、電荷発生層13の膜強度が低下する可能性がある。さらに、電荷発生層13における電荷発生物質の分散性が低下して電荷発生物質の粗大粒子が増大し、消去されるべき部分以外の表面電荷が露光によって減少する。その結果、画像欠陥、特に白地にトナーが付着し微小な黒点が形成され、画像のかぶりが多くなるおそれもある。
【0052】
電荷発生層13の形成方法としては、前記電荷発生物質13aを導電性基体11上に真空蒸着する真空蒸着法、溶剤中に電荷発生物質13aを含む電荷発生層用塗布液を導電性基体11の表面に塗布する塗布法などが挙げられる。これらの中でも簡便な塗布法が好適に用いられる。
電荷発生層用塗布液は、例えば、適当な溶剤中に電荷発生物質13a及び必要に応じて前述のバインダ樹脂を加え、従来公知の方法で分散させることによって調製することができる。
【0053】
電荷発生層用塗布液に使用される溶剤としては、例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサンなどのエーテル類、1,2−ジメトキシエタンといったエチレングリコールのアルキルエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどの非プロトン性極性溶剤などが挙げられる。これらの溶剤は、1種が単独で使用されてもよく、または2種以上が混合されて混合溶剤として使用されてもよい。環境汚染を考慮すると、非ハロゲン溶剤を用いることが好ましい。
【0054】
電荷発生物質13aは、溶剤中に分散される前に、予め粉砕機によって粉砕処理されてもよい。粉砕処理に用いられる粉砕機としては、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライタ、振動ミル及び超音波分散機などが挙げられる。
電荷発生物質13aを溶剤中に分散させる際に用いられる分散機としては、例えば、ペイントシェーカ、ボールミル及びサンドミルなどを挙げることができる。このときの分散条件としては、用いる容器及び分散機を構成する部材の摩耗などによる不純物の混入が起こらないように適当な条件を選択する。
電荷発生層用塗布液の塗布方法としては、例えば、スプレー法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法、インクジェット塗布法及び浸漬塗布法などが挙げられる。
【0055】
電荷発生層13の層厚は、0.05〜5μmであることが好ましく、より好ましくは0.1〜1μmである。電荷発生層13の層厚が0.05μm未満であると、光吸収の効率が低下し、感光体1の感度が低下するおそれがある。一方、電荷発生層13の層厚が5μmを超えると、電荷発生層13内部での電荷移動が感光層表面の電荷を消去する過程の律速段階となり、感光体1の感度が低下するおそれがある。
【0056】
[電荷輸送層]
本発明において、電荷輸送物質14aとしては、前記のように、例えば、420〜500nmの波長領域内の青色光を吸収することにより蛍光を生じる電荷輸送物質を用いることができ、520〜580nmにピーク波長を有する蛍光を生じる電荷輸送物質が好ましい。
具体的に、電荷輸送物質14aとしては、例えば、エナミン系化合物、スチリル系化合物、ヒドラゾン系化合物、トリアリールアミン誘導体、トリアリールメタン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、スチルベン誘導体及びベンジジン誘導体などのような種々の公知の電荷輸送物質が挙げられる。
これらの中でも、前記一般式(I)で示される化合物が好ましい。
【0057】
特に、下記一般式(II):
【化3】

(式中、
Ar4及びAr5は、互いに同一または異なって、水素原子、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアルキル基を表し、ただし、Ar4及びAr5が共に水素原子ではなく、Ar4及びAr5は、原子または原子団を介して互いに結合して環構造を形成してもよく、
aは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいジアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子または水素原子を表し、
mは1〜6の整数であり、mが2以上のとき、複数のaは、同一または異なって、互いに結合して環構造を形成してもよく、
b、cおよびdは、同一または異なって、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいジアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアリールチオ基、ハロゲン原子または水素原子であり、
i、kおよびjは、同一または異なって、1〜5の整数であり、iが2以上のとき、複数のbは、同一または異なって、互いに結合して環構造を形成してもよく、kが2以上のとき、複数のcは、同一または異なって、互いに結合して環構造を形成してもよく、jが2以上のとき、複数のdは、同一または異なって、互いに結合して環構造を形成してもよい。)
で示される化合物が好ましい。
【0058】
一般式(II)で表される化合物のうち、図5は下記の化合物(1)の吸収スペクトルを分光光度計(MCPD−3700:大塚電子(株)製)で測定した結果を示すグラフであり、図6は化合物(1)に450nmの励起光を照射して発生させた蛍光の蛍光スペクトルを分光光度計で測定した結果を図5の吸収スペクトルと共に示すグラフである。化合物(1)において、吸収スペクトルの最大ピーク波長は530nmであり、蛍光波長の最大ピーク波長も530nmである。なお、図6には励起光のピーク波長(450nm)も示されている。
また、一般式(II)で表される化合物としては、下記の化合物(2)も含まれる。この化合物(2)も、化合物(1)と同様に、励起光を照射して発生させた蛍光の蛍光スペクトルを測定したところ、蛍光波長の最大ピーク波長は532nmであった。
【0059】
【化4】

【0060】
【化5】

【0061】
前記化合物(1)〜(2)は、例えば、特開2004-141666号公報に記載の方法により得ることができる。
【0062】
電荷輸送層14に用いられるバインダ樹脂としては、電荷輸送物質14aとの相溶性に優れるものが好ましい。そのようなバインダ樹脂の具体例としては、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などのビニル重合体樹脂及びこれらの共重合体樹脂、並びにポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂及びフェノール樹脂などが挙げられる。また、これらの樹脂を部分的に架橋した熱硬化性樹脂も挙げられる。これらの樹脂は、1種が単独で使用されてもよく、または2種以上が混合されて使用されてもよい。
前記の樹脂の中でも、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂及びポリフェニレンオキサイドは、体積抵抗率が1013Ω・cm以上であり、電気絶縁性に優れており、さらに皮膜性及び電位特性などにも優れているため、好適に用いられる。
【0063】
電荷輸送層14において、電荷輸送物質14aの重量(A)に対するバインダ樹脂の重量(B)の重量比(A/B)は、例えば、10/12〜10/30とすることが好ましい。
重量比A/Bが10/30を超えると、バインダ樹脂の比率が高くなり過ぎるため、電荷輸送層14を浸漬塗布法によって形成する場合には、塗布液の粘度が増大して塗布速度が低下し、生産性が著しく悪くなるおそれがある。また、塗布液の粘度の増大を抑えるために塗布液中の溶剤の量を多くすると、ブラッシング現象が発生し、形成された電荷輸送層14に白濁が発生する可能性がある。一方、重量比A/Bが10/12を下回ると、バインダ樹脂の比率が低くなり過ぎるため、電荷輸送層14の耐摩耗性が低下して表層の摩耗量が増加し、感光体1の帯電性が低下するおそれがある。
【0064】
電荷輸送層14には、成膜性、可撓性及び表面平滑性を向上させるために、可塑剤、レベリング剤などの添加剤を必要に応じて添加してもよい。
可塑剤としては、例えば、フタル酸エステルのような二塩基酸エステル、脂肪酸エステル、リン酸エステル、塩素化パラフィン及びエポキシ型可塑剤などを挙げることができる。
レベリング剤としては、例えば、シリコーン系レベリング剤を挙げることができる。
また、電荷輸送層14には、機械的強度の増加や電気的特性の向上を図るために、無機化合物と有機化合物の微粒子を必要に応じて添加してもよい。
そのような無機化合物の具体的な例としては、酸化チタンといった金属酸化物微粒子が挙げられる。また、有機化合物の微粒子の具体的な例としては、四フッ化エチレン重合体微粒子といったフッ素原子含有ポリマーの微粒子が挙げられる。
【0065】
電荷輸送層14は、電荷輸送物質及びバインダ樹脂、必要に応じて添加剤を溶剤中に溶解又は分散させて電荷輸送層用塗布液を調製し、この塗布液を電荷発生層13の表面に塗布し、次いで乾燥して有機溶剤を除去することによって形成できる。
電荷輸送層用塗布液に用いられる溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン及びモノクロルベンゼンなどの芳香族炭化水素、ジクロロメタン及びジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素、THF、ジオキサン及びジメトキシメチルエーテルなどのエーテル類、並びにN,N−ジメチルホルムアミドといった非プロトン性極性溶剤などが挙げられる。溶剤は、1種を単独で使用してもよく、または2種以上が混合して使用してもよい。また、前記溶剤に、アルコール類、アセトニトリル又はメチルエチルケトンなどの溶剤を必要に応じて加えて使用することもできる。これらの溶剤の中でも、環境汚染を考慮すると、非ハロゲン系有機溶剤が好適に用いられる。
【0066】
電荷輸送層14は、スプレー法、バーコート法、ロールコート法、ブレード法、リング法、インクジェット塗布法又は浸漬塗布法などの公知の塗布法を用いて、電荷輸送層用塗布液を電荷発生層13上に塗布することで形成できる。
電荷輸送層14の膜厚は、5〜50μmであることが好ましく、より好ましくは10〜40μmである。
電荷輸送層14の膜厚が5μm未満であると、感光体1の表面の帯電保持能が低下するおそれがある。一方、電荷輸送層14の膜厚が50μmを超えると、感光体1の解像度が低下するおそれがある。
【0067】
<画像形成装置の構成>
図1と図3に示すように、画像形成装置100において、感光体1は、図示しない装置本体に回転自在に支持されると共に、駆動部43によって回転軸線44回りに矢印41の方向に回転駆動される。駆動部43は、例えば、モータとギアとを含んで構成され、その駆動力を感光体1の芯体としての導電性基体11に伝えることによって、感光体1を所定の周速度で回転させる。
帯電部32、露光部31、現像部33、転写部34、クリーニング部36、除電部30及び劣化判定装置2は、この順序で、感光体1の外周面に沿って、矢印41で示される感光体1の回転方向上流側から下流側に向って配置されている。
帯電部32は、感光体1の外周面を均一に所定の電位に帯電させる帯電器である。
【0068】
露光部31は、近赤外半導体レーザを光源として備え、光源から出力されるレーザービームの光を、帯電部32と現像部33の間の感光体1の表面(外周面)に照射することによって、帯電された感光体1の表面に画像情報に応じた露光を行う。光源の光は、主走査方向である感光体1の回転軸線44の延びる方向に繰返し走査されることにより、感光体1の表面に静電潜像が順次形成される。すなわち、帯電部32によって均一に帯電された感光体1の帯電量がレーザービームの照射及び非照射によって差異が生じて静電潜像が形成される。
露光部31としては、赤外半導体レーザを用いてもよい。
【0069】
現像部33は、露光によって感光体1の表面に形成される静電潜像を現像剤(トナー)によって現像する現像器であり、感光体1を臨む位置に配置されている。現像部33は、感光体1の外周面にトナーを供給する現像ローラ33aと、現像ローラ33aを感光体1の回転軸線44と平行な回転軸線まわりに回転可能に支持すると共にその内部空間にトナーを含む現像剤を収容するケーシング33bとを備える。
【0070】
転写部34は、現像によって感光体1の外周面に形成される可視像としてのトナー像を記録媒体としての転写紙39上に転写させる転写帯電器である。つまり、転写帯電器34は、例えば、転写紙39にトナーと逆極性の電荷を与えることによってトナー像を転写紙39上に転写させる非接触式の転写手段である。なお、転写紙39は、図示しない搬送手段によって矢印42の方向へ搬送されて感光体1と転写部34の間に供給される。
【0071】
クリーニング部36は、転写部34による転写動作後における感光体1の外周面に残留するトナーを除去し回収するクリーナであり、感光体1の外周面に残留するトナーを剥離させるクリーニングブレード36aと、クリーニングブレード36aによって剥離されたトナーを収容する回収用ケーシング36bとを備える。
除電部30は、感光体1の外周面に除電光(例えば、波長が600nm〜850nm)を照射して除電する除電ランプである。前記波長領域の光を除電光として用いることにより、除電光の照射による感光体1の劣化を抑えることができる。
【0072】
定着部35は、感光体1と転写部34との間を通過した転写紙39上の転写画像を定着させる定着器である。定着部35は、図示しない加熱手段を有する加熱ローラ35aと、加熱ローラ35aに対向して配置され、転写紙39を加熱ローラ35a側に押し付ける加圧ローラ35bとを備える。
なお、図1において、符号37は、転写紙39を感光体1から分離する分離手段を示し、符号38は、画像形成装置100の各構成部を収容するハウジング(ケーシング)を示している。
【0073】
表示部42は、画像形成装置の状態を表示する表示パネル(例えば、液晶パネル)と、表示パネルに表示するための各種表示内容が記憶されたメモリ等を備えている。ここで、各種表示内容とは、画像形成装置100の状態を説明する内容であり、それらの表示内容のうち、感光体1の交換を促す表示内容が含まれている。
制御部41は、画像形成装置100の各構成部を制御するよう構成されている。具体的には、制御部41は、表示部42および駆動部43と信号線にて電気的に接続されており、画像形成装置100の状態に応じた表示内容を表示部42に表示させるよう制御すると共に、所定のタイミングで駆動部43の駆動と停止を制御するよう構成されている。
【0074】
<画像形成装置の動作>
この画像形成装置100による画像形成動作は、次のようにして行われる。
まず、感光体1が駆動部34によって矢印41方向に回転駆動されると、帯電部32によって感光体1の表面が正の所定電位に均一に帯電される。
次いで、露光部31から感光体1の表面に向かって画像情報に応じた光が照射される。この露光によって、感光体1における光が照射された部分の表面電荷が除去され、光が照射された部分の表面電位と光が照射されなかった部分の表面電位とに差異が生じ、静電潜像が形成される。
【0075】
次に、露光部31による光の結像点よりも感光体1の回転方向下流側に配置された現像部33から、静電潜像を有する感光体1の表面にトナーが供給され、それによって静電潜像が現像されてトナー像が形成される。
感光体1に対する露光と同期して、感光体1と転写部34との間に転写紙39が供給される。転写部34によって、転写紙39にトナーと逆極性の電荷が与えられることにより、感光体1の表面に形成されたトナー像が転写紙39上に転写される。
【0076】
トナー像が転写された転写紙39は、搬送手段によって定着部35に搬送され、定着部35の加熱ローラ35aと加圧ローラ35bとの間の当接部を通過する。この際、転写紙39は加熱及び加圧され、これによりトナー像が転写紙39に定着されて堅牢な画像となる。このようにして画像が形成された転写紙39は、搬送手段によって画像形成装置100の外部へ排紙される。
【0077】
一方、転写部34によってトナー像を転写紙39へ転写した後、感光体1の表面上に残留するトナーは、クリーニング部36によって感光体1の表面から剥離されて回収される。
トナーが除去された感光体1の表面の電荷は、除電部(除電ランプ)30からの光によって除去され、それによって感光体1の表面上の静電潜像が消失する。
その後、感光体1はさらに回転駆動され、再度帯電から始まる一連の動作が繰返されて連続的に画像が形成される。
【0078】
<劣化判定装置の動作>
次に、図1〜図4を参照しながら、本発明の電子写真感光体の劣化判定装置の動作について説明する。
この劣化判定装置2による感光体1の劣化判定は、感光体1が静止した状態(駆動部43の停止状態)で行われてもよいし、感光体1が回転している状態(駆動部43の駆動状態)で行われてもよい。
感光体1が回転している状態で劣化判定を行う場合、光照射部2Aから照射される励起光Leによって発光した電荷輸送物質14aの蛍光の検出を行う際、蛍光の検出のタイミングが感光体1の回転と同期するように制御されることが好ましい。
つまり、感光体1における画像域内に検出領域が存在する場合には、感光体1の回転開始時から画像形成動作開始時までの間または画像形成動作終了時から感光体1の回転停止時までの間に判定を行う。
なお、感光体1における画像域外に検出領域を設ければ、特に画像形成のタイミングに蛍光検出を同期させる必要はない。
【0079】
また、劣化判定装置2による感光体1の劣化判定は、例えば、画像形成装置100による累積印刷枚数あるいは累積運転時間等を管理して定期的に行われる。この場合、例えば、累積印刷枚数が8000枚、8500枚、8600枚、8650枚のとき、あるいは累積運転時間が1000時間、1100時間、1150時間、1175時間のときに劣化判定を行うというように、劣化判定を複数回に分けて、かつ画像形成装置100の累積使用量が増えるにつれて劣化判定の間隔を短くしていくようにしてもよい。
【0080】
駆動部43の停止時または駆動時において、劣化判定装置2によって感光体1の劣化判定が行われる際、光照射部2Aから照射された励起光Leが電荷輸送層14に入射して電荷輸送物質14aが励起する。そして、それによって発生した蛍光Lfが電荷輸送層14から外部に放射し、その蛍光Lfが蛍光検出部2Bにて検出され、蛍光強度に応じた蛍光強度信号が蛍光検出部2Bから評価部2Cの前記信号入力部へ送られる。
信号入力部に入力された蛍光強度信号は、測定値Dmに変換されて前記演算部へ入力される。一方、前記記憶部から演算部へ基準値Dbが入力される。その後、演算部において、測定値Dm<所定値(Db×α)の式を満たすか否かが判定され、この式を満たすと判定されると、警告信号が演算部から信号出力部を介して画像形成装置100の制御部41に入力される。
なお、前記式を満たさないと判定された場合は、制御部41に警告信号が入力されない。
【0081】
制御部41に警告信号が入力されると、前記の感光体の交換を促す表示内容を表示させる指令信号が制御部41から表示部42に送信される。これにより、例えば、「感光体を交換してください」という文字が表示部42の表示パネルに表示される。したがって、画像形成装置100のユーザーは、この表示を見ることによって、形成画像に問題が生じる前に感光体1の交換時期を認識し、サービスマンへ感光体1の交換を依頼することができる。また、例えば、感光体1の交換が終了したことを検出するまで警告信号が制御部41に入力され続け、サービスマンが画像形成装置100の内部に設けられたリセットボタンを押すことによって送信がストップする。
【0082】
さらに、制御部41に警告信号が入力されると、駆動部43を停止させる指令信号が性呼ぶ41から駆動部43へ送信されてもよい。この場合、感光体1が回転した印刷中に駆動部43を停止させると、ユーザーの業務に支障がでる。したがって、感光体1が停止しているときに停止状態を維持させるよう、制御部41にて駆動部43を制御することが好ましい。あるいは、例えば、表示部42にタッチパネルを採用し、タッチパネルに表示された「感光体を交換してください」という文字の横に「OK」と表示させ、ユーザーが「OK」の表示部分を指でタッチすることにより感光体1の停止状態が解除されるようにしてもよい。
【実施例】
【0083】
<電子写真感光体の作製>
〔実施例1〕
図4に示した積層構造の感光体1を次のようにして作製した。
まず、酸化チタン(石原産業株式会社製:TTO55A)7重量部と、共重合ナイロン樹脂(東レ株式会社製:アミランCM8000)13重量部とを、メタノール159重量部及び1,3−ジオキソラン106重量部を含有する混合溶媒に加え、ペイントシェーカで8時間分散処理し、中間層用塗布液を調製した。得られた中間層用塗布液を塗工槽に満たし、この塗工槽に、直径40mm、長さ340mmの円筒状のアルミニウム製基体11を浸漬した。その後、基体11を引き上げて自然乾燥することにより、基体11の外周面に層厚1μmの中間層12を形成した。
【0084】
次いで、テトラヒドロフラン(THF)98重量部に、バインダ樹脂18としてポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業株式会社製:エスレックBX−1)1重量部を溶解させ、さらに、電荷発生物質13aとしてチタニルフタロシアニン(化合物(B))1重量部を加えた後、ペイントシェーカで2時間分散させて、電荷発生層用塗布液を調製した。得られた電荷発生層用塗布液で満たされた塗工槽に、中間層12が積層された基体11を浸漬し、中間層12上に電荷発生用塗布液を塗布した後、基体11を引き上げて自然乾燥することにより、層厚0.3μmの電荷発生層13を形成した。
【0085】
【化6】

【0086】
続いて、電荷輸送物質14aとしてエナミン系化合物である前記化合物(1)10重量部と、バインダ樹脂17であるビスフェノールZ型ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製:ユーピロンZ−200)18重量部とを、THF160重量部に溶解させ、電荷輸送層用塗布液を調製した。得られた電荷輸送層用塗布液で満たされた塗工槽に、中間層12及び電荷発生層13が積層された基体11を浸漬した。その後、基体11を引き上げて自然乾燥することにより、基体11の外周面に層厚25μmの電荷輸送層14を形成して、感光体1を得た。
【0087】
〔実施例2〕
電荷輸送層14の形成に際して、電荷輸送物質14aとして、前記化合物(1)に代えて、エナミン系化合物である前記化合物(2)を用いた以外は、実施例1と同様の手順で、感光体1を得た。
【0088】
<実施例1および2の感光体の劣化判定>
市販の複写機(シャープ株式会社製のAR−C160)を改造し、ドラムマーキングセンサーの代わりに、本発明の劣化判定装置を搭載した。具体的には、実施例1および2に用いる改造機が次のように作製された。
【0089】
光照射部と蛍光検出部を組み合わせたユニットとして、青色発光ダイオードとシリコンフォトダイオードを組み合わせた反射型フォトセンサ(ローム社製RPR−220PC30N)を用いた。
このフォトセンサにおいて、青色発光ダイオードの励起光は約470nmをピークとする発光スペクトルを有すると共に、シリコンフォトダイオードは約470nm〜近赤外光領域に亘って感度を有する。また、実施例1と2のシリコンフォトダイオードには、その受光面に紫外線カットフィルターを設けた。
実施例1および2に用いる改造機のフォトセンサによれば、青色発光ダイオードからの直接光および反射光はカットされ、前記化合物1の図6に示す蛍光(最大ピーク波長:530nm)および前記化合物2の蛍光(最大ピーク波長:532nm)を検出することができる。
【0090】
また、フォトセンサの出力をモニタし、蛍光強度が前記所定値(Db×α)を下回る場合(測定値Dm<所定値(Db×α)の場合)に、表示パネルに感光体1の交換を促す表示を行うように、前記複写機を改造した。また、短時間で評価結果が確認できるように、劣化判定時に感光体1周辺の排気ファンを止めて、オゾンガス、NOx等が装置内で高濃度な状態で滞留するように、前記複写機を改造した。
【0091】
この改造機に実施例1で作製した感光体1を搭載し、感光体1の劣化判定を次のように行った。
まず、初期状態において、警告表示がなされていないことを確認した後、プリント出力を開始した。そして、サイズA4のテストチャートを連続出力したところ、8000枚出力時点で電子写真感光体の交換を促す警告が表示されたが、画像での濃度ムラ等はなかった。その後、感光体1を交換せずに継続して出力したところ、10000枚を超えるとハーフトーンが一部白く抜ける画像欠陥が発生した。
前記改造機に実施例2で作製した感光体1を搭載し、実施例1と同様に感光体1の劣化判定を行ったところ、実施例1と同様の結果が得られた。
【0092】
このように、本発明の劣化判定装置によれば、警告表示の時点で感光体1を交換すれば、画像上の問題で中断することなく、良好な画像特性を維持しながら業務の効率を向上させることができることを確認できた。
【符号の説明】
【0093】
1 電子写真感光体
2 劣化判定装置
2A 光照射部
2B 蛍光検出部
2C 評価部
3 筐体
11 導電性基体
12 中間層
13 電荷発生層
13a 電荷発生物質
14 電荷輸送層(電荷輸送物質含有層)
14a 電荷輸送物質
30 除電部
31 露光部
32 帯電部
33 現像部
34 転写部
35 定着部
36 クリーニング部
41 制御部
42 表示部
43 駆動部
Le 励起光(青色光)
Lf 蛍光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定波長を有する青色光を受光し励起して蛍光を発光する電荷輸送物質を含有する層を外周部に有する電子写真感光体の劣化判定装置であって、
判定対象の前記電子写真感光体の前記電荷輸送物質を励起させて蛍光を生じさせる前記所定波長を有する青色光を前記電荷輸送物質含有層に照射する光照射部と、
前記電荷輸送物質が発する蛍光を受光して蛍光強度を測定する蛍光検出部と、
前記蛍光検出部によって測定した前記蛍光強度と、前記電子写真感光体の前記電荷輸送物質含有層が未使用状態のときに予め測定した初期蛍光強度とを比較することにより、前記電荷輸送物質含有層の劣化度を判定する評価部とを備えたことを特徴とする電子写真感光体の劣化判定装置。
【請求項2】
前記評価部は、前記初期蛍光強度を基準値Dとし、かつ前記蛍光強度を測定値Dmとした場合に、Dm<Db×α(αは1より小さい係数)と判断すると警告信号を出力するよう構成された請求項1に記載の電子写真感光体の劣化判定装置。
【請求項3】
前記光照射部が青色発光ダイオードであり、前記蛍光検出部がシリコンフォトダイオードである請求項1または2に記載の劣化判定装置。
【請求項4】
前記蛍光検出部が受光面にフィルターを有している請求項1〜3のいずれか1つに記載の劣化判定装置。
【請求項5】
前記光照射部は発光波長420〜500nmの青色光を照射可能に構成され、前記蛍光検出部は波長520〜580nmの光を検知可能に構成されている請求項1〜4のいずれか1つに記載の劣化判定装置。
【請求項6】
静電潜像が形成される表面を有する電子写真感光体と、請求項1、3〜5のいずれか1つに記載の劣化判定装置と、前記感光体の表面を帯電させる帯電部と、前記感光体の表面に静電潜像を形成する露光部と、前記感光体の表面の静電潜像にトナーを供給してトナー像を形成する現像部と、前記感光体の表面のトナー像を記録媒体に転写する転写部と、前記感光体の表面を清浄化するクリーニング部と、トナー像を記録媒体に定着させる定着部とを備えた画像形成装置。
【請求項7】
前記劣化判定装置の前記評価部は、前記初期蛍光強度を基準値Dとし、かつ前記蛍光強度を測定値Dmとした場合に、Dm<Db×α(αは1より小さい係数)と判断すると警告信号を出力するよう構成され、
前記画像形成装置は、前記警告信号が入力される制御部と、該制御部と電気的に接続された表示部及び駆動部とをさらに備え、
前記制御部は、前記警告信号に基づいて、前記電子写真感光体の交換を促す表示を表示させるよう前記表示部を制御する機能を有する請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記警告信号が入力されている間、停止状態を維持させるよう前記駆動部を制御する機能を有する請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記電子写真感光体は、下記一般式(I):
【化1】

(式中、
Ar1及びAr2は、互いに同一または異なって、置換基を有してもよいアリール基または置換基を有してもよい複素環基を表し、
Ar3は、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアルキル基を表し、
Ar4及びAr5は、互いに同一または異なって、水素原子、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基、置換基を有してもよいアラルキル基または置換基を有してもよいアルキル基を表し、ただし、Ar4及びAr5が共に水素原子ではなく、Ar4及びAr5は、原子または原子団を介して互いに結合して環構造を形成してもよく、
aは、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいジアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子または水素原子を表し、
mは1〜6の整数であり、mが2以上のとき、複数のaは、互いに同一または異なって、互いに結合して環構造を形成してもよく、
11は、水素原子、ハロゲン原子または置換基を有してもよいアルキル基を表し、
12、R13及びR14は、互いに同一または異なって、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよい複素環基または置換基を有してもよいアラルキル基を表し、
nは0〜3の整数であり、nが2または3のとき、複数のR12は、互いに同一または異なり、複数のR13は、互いに同一または異なり、ただし、nが0のとき、Ar3は置換基を有してもよい複素環基を表す)
で示される電荷輸送物質を含有する電荷輸送物質含有層を有する請求項6〜8のいずれか1つに記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−220830(P2012−220830A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88249(P2011−88249)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】