説明

電子写真感光体の製造方法、該感光体及びこれを使用した画像形成装置

【課題】支持体上に、感光層を有する電子写真感光体を超臨界流体もしくは亜臨界流体に接触させて感光層を剥離した後、支持体上に感光層を形成することにより、メカ的な剥離エネルギー、有機溶媒の使用量を低減した感光層剥離方法を提供する。また、感光層を剥離後、支持体を超臨界流体もしくは亜臨界流体で洗浄することにより感光層剥離時の剥離跡に起因する異常画像の発生を低減する。
【解決手段】支持体上に感光層を有する電子写真感光体を超臨界流体もしくは亜臨界流体に接触させて該感光層を剥離した後、該支持体上に感光層を形成することを特徴とする電子写真感光体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真感光体の製造方法、該感光体及びこれを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開平2−209729号公報)には、半導体基板を液化ガス、又は超臨界ガスと接触させ半導体装置の製造工程にて発生した異物を除去することが記載されているが、
これは、液化ガス、又は超臨界ガスにより半導体基板を洗浄するものであり、電子写真用感光体の基体洗浄の記載はない。
【0003】
また、特許文献2(特開2004−4408号公報)には、円筒状金属基体上に熱硬化性樹脂を含有する下引き層を有する感光層の外周面に加熱されたNメチルピロリドン溶剤またはNメチルピロリドンと2−ブトキシエタノールの混合溶剤からなる洗浄液を感光体面を流下するように供給しながら接触部材を圧接させて感光層を除去洗浄することにより円筒状金属基体の表面性を変化なく再生し、基体表面性に影響のない感光層を再形成することが記載されているが、
加熱されたNメチルピロリドン溶剤またはNメチルピロリドンと2−ブトキシエタノールの混合溶剤からなる洗浄液を感光体面に流下することにより感光層が剥離した基体表面性が部分的に熱酸化を受ける。そのため、感光層の再塗布後異常画像を発生させてしまう場合がある。又、接触部材により円筒状金属基体表面に不規則な傷ができて、感光層の再塗布時の塗膜欠陥、異常画像に繋がる場合がある。
【0004】
また、特許文献3(特開平7−134435号公報)には、感光体の表面層に超臨界流体により精製されたフッ素系樹脂粒子またはフッ素系クシ型グラフト重合樹脂を含有することにより、摩擦による表面の摩耗や傷に対して耐久性を有し、そして高温高湿及び低温低湿下においても安定した高品位の画像を提供することが記載されているが、
感光体の表面層に超臨界流体により精製されたフッ素系樹脂粒子またはフッ素系クシ型グラフト重合樹脂を含有することのみ記載されており、感光層の剥離、洗浄については記載はない。
【0005】
また、特許文献4(特開2001−121094号公報)には、超臨界状態の二酸化炭素を基体に接触させて基体に付着した水分、有機物およびその他の不純物を超臨界状態の二酸化炭素に溶解させることにより電子写真感光体用導電性基体を洗浄し、画像欠陥の原因となるハジキやシミなどの塗布欠陥を生じることを防止することが記載されているが、これは、感光体面に付着した切削油ミスト、空気中のダストや切粉などを含む有機物や水分などを除去して、画像欠陥の原因となるハジキやシミなどの塗布欠陥を生じることを防止するものであって、繰り返し使用した感光層自体の剥離を目途とするものではない。
【0006】
また、特許文献5(特願2006−224710号明細書)には、導電性支持体上に、少なくとも感光層を有する電子写真感光体の製造方法において、該導電性支持体上に、該感光層を形成させた後に、該感光層を超臨界流体もしくは亜臨界流体に接触させ、洗浄処理を行うことを特徴とする電子写真感光体の製造方法が記載されている。感光体の製造における最終段階で感光層等に含まれる不純物等の除去、及び感光層等の塗布工程により残存してしまう有機溶媒の除去を目的としているが、感光層にダメージを与えずに不純物、残留有機溶媒のみを除去するためには超臨界流体、亜臨界流体をマイルドに接触させる必要が有り、処理時間が長くなってしまう欠点がある。
【0007】
【特許文献1】特開平2−209729号公報
【特許文献2】特開2004−4408号公報
【特許文献3】特開平7−134435号公報
【特許文献4】特開2001−121094号公報
【特許文献5】特願2006−224710号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明は上記の課題を解決することを目的とする。すなわち、本発明は、支持体上に、感光層を有する電子写真感光体を超臨界流体もしくは亜臨界流体に接触させて感光層を剥離した後、支持体上に感光層を形成することにより、メカ的な剥離エネルギー、有機溶媒の使用量を低減した感光層剥離方法を提供することである。
【0009】
また、感光層を剥離後、支持体を超臨界流体もしくは亜臨界流体で洗浄することにより感光層剥離時の剥離跡に起因する異常画像の発生を低減することを目的とする。
【0010】
また、超臨界流体及び亜臨界流体のいずれかもしくは両方が、二酸化炭素であることにより環境に配慮した剥離方法を提供することである。
【0011】
また、超臨界流体及び亜臨界流体のいずれかもしくは両方が、二酸化炭素との混合物であることにより感光層の剥離、支持体の洗浄効果を高めることが可能となる。
【0012】
また、混合物が、一酸化炭素、窒素、アンモニア、メタノール、エタノール、エタン、プロパンから選択される少なくとも一種であることにより洗浄効果をさらに高めることである。
【0013】
また、感光層がアルミニウム支持体と感光層との間にメトキシメチル化ナイロンからなる樹脂層、および無機顔料と熱硬化性樹脂からなる下引き層をアルミニウム支持体側から順次設けたことによりアルミニウム支持体中の鉄、銅に起因する黒ポチ、白ポチ等の画像欠陥の発生を防止することである。
【0014】
また、アルミニウム支持体が全フレ量60μ以下である円筒状アルミニウムからなることによりハイライト画像濃度ムラのない均一な画像を形成する画像形成装置を提供することである。
【0015】
また、電子写真感光体、帯電手段、画像露光手段、現像手段及び転写手段を少なくとも有することにより中間調、ライン画像の再現性、ベタ部濃度を満足する画像形成装置を提供することである。
【0016】
また、感光体ドラム、帯電手段、現像手段、クリーニング手段が一体に支持しされ装置本体に着脱自在できるプロセスカートリッジであることにより小型でメンテナンス性に優れた画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題は、以下の本発明により解決される。
(1)「支持体上に感光層を有する電子写真感光体を超臨界流体もしくは亜臨界流体に接触させて該感光層を剥離した後、該支持体上に感光層を形成することを特徴とする電子写真感光体の製造方法」、
(2)「前記感光層を剥離後、該支持体を超臨界流体もしくは亜臨界流体で洗浄することを特徴とする前記第(1)項に記載の電子写真感光体の製造方法」、
(3)「前記超臨界流体及び亜臨界流体のいずれかもしくは両方が、二酸化炭素であることを特徴とする前記第(1)項または第(2)項に記載の電子写真感光体の製造方法」、
(4)「前記超臨界流体及び亜臨界流体のいずれかもしくは両方が、二酸化炭素と他流体との混合物であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(3)項のいずれかに記載の電子写真感光体の製造方法」、
(5)「前記他流体が、一酸化炭素、窒素、アンモニア、メタノール、エタノール、エタン、プロパンから選択される少なくとも一種であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(4)項のいずれかに記載の電子写真感光体の製造方法」、
(6)「前記電子写真感光体は、アルミニウム支持体を有し、該アルミニウム支持体と前記感光層との間にメトキシメチル化ナイロンからなる樹脂層、および無機顔料と熱硬化性樹脂からなる下引き層が該アルミニウム支持体側から順次設けられたものであることを特徴とする前記第(1)項乃至第(5)項のいずれかに記載の電子写真感光体の製造方法」、
(7)「前記アルミニウム支持体が全フレ量60μ以下である円筒状アルミニウムからなるものであることを特徴とする前記第(6)項に記載の電子写真感光体の製造方法」、
(8)「前記第(1)項乃至第(6)項のいずれかに記載の電子写真感光体の製造方法により得られた電子写真感光体であって、アルミニウム支持体と前記感光層との間に、メトキシメチル化ナイロンからなる樹脂層、および無機顔料と熱硬化性樹脂からなる下引き層が、アルミニウム支持体側から順次設けられたものであることを特徴とする電子写真感光体」、
(9)「前記アルミニウム支持体は、全フレ量60μ以下である円筒状アルミニウムからなるものであることを特徴とする前記第(8)項に記載の電子写真感光体」、
(10)「前記第(8)項又は第(9)項に記載の電子写真感光体を有することを特徴とする画像形成装置」、
(11)「前記電子写真感光体と、帯電手段、画像露光手段、現像手段及び転写手段を少なくとも有することを特徴とする前記第(10)項に記載の画像形成装置」
(12)「感光体ドラムと、帯電手段、現像手段、クリーニング手段のうちの少なくともいずれか1つの手段とが一体に支持され、前記第(7)項又は第(8)項に記載の画像形成装置本体に着脱自在できるものであることを特徴とするプロセスカートリッジ」。
【発明の効果】
【0018】
以下の詳細かつ具体的な説明から明らかなように、本発明によれば、支持体上に、感光層を有する電子写真感光体を超臨界流体もしくは亜臨界流体に接触させて感光層を剥離した後、支持体上に感光層を形成することにより、メカ的な剥離エネルギー、有機溶媒の使用量を低減した感光層剥離方法が提供されるという極めて優れた効果を奏する。
また、感光層を剥離後、支持体を超臨界流体もしくは亜臨界流体で洗浄することにより感光層剥離時の剥離跡に起因する異常画像の発生が低減されるという極めて優れた効果を奏する。
また、超臨界流体及び亜臨界流体のいずれかもしくは両方が、二酸化炭素であることにより、環境に配慮した剥離方法が提供されるという極めて優れた効果を奏する。
また、超臨界流体及び亜臨界流体のいずれかもしくは両方が、二酸化炭素との混合物であることにより、感光層の剥離、支持体の洗浄効果を高めることが可能となるという極めて優れた効果を奏する。
また、混合物が、一酸化炭素、窒素、アンモニア、メタノール、エタノール、エタン、プロパンから選択される少なくとも一種であることにより、洗浄効果がさらに高められるという極めて優れた効果を奏する。
また、感光層がアルミニウム支持体と感光層との間にメトキシメチル化ナイロンからなる樹脂層、および無機顔料と熱硬化性樹脂からなる下引き層をアルミニウム支持体側から順次設けたことにより、アルミニウム支持体中の鉄、銅に起因する黒ポチ、白ポチ等の画像欠陥の発生が防止されるこという極めて優れた効果を奏する。
また、アルミニウム支持体が全フレ量60μ以下である円筒状アルミニウムからなることにより、ハイライト画像濃度ムラのない均一な画像を形成する画像形成装置が提供されるという極めて優れた効果を奏する。
また、このような電子写真感光体、帯電手段、画像露光手段、現像手段及び転写手段を少なくとも有することにより中間調、ライン画像の再現性、ベタ部濃度を満足する画像形成装置が提供されるという極めて優れた効果を奏する。
また、前記感光体ドラム、帯電手段、現像手段、クリーニング手段が一体に支持しされ装置本体に着脱自在できるプロセスカートリッジであることにより、小型でメンテナンス性に優れた画像形成装置が提供されるという極めて優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、
1.支持体上に、感光層を有する電子写真感光体を超臨界流体もしくは亜臨界流体に接触させて感光層を剥離した後、支持体上に感光層を形成すること、
2.感光層を剥離後、支持体を超臨界流体もしくは亜臨界流体で洗浄すること、
3.超臨界流体及び亜臨界流体のいずれかもしくは両方が、二酸化炭素であること
4.超臨界流体及び亜臨界流体のいずれかもしくは両方が、二酸化炭素との混合物であること、
5.混合物が、一酸化炭素、窒素、アンモニア、メタノール、エタノール、エタン、プロパンから選択される少なくとも一種であること、
6.感光層がアルミニウム支持体と感光層との間にメトキシメチル化ナイロンからなる樹脂層、および無機顔料と熱硬化性樹脂からなる下引き層をアルミニウム支持体側から順次設けたこと、
7.アルミニウム支持体が全フレ量60μ以下である円筒状アルミニウムからなること、
8.電子写真感光体、帯電手段、画像露光手段、現像手段及び転写手段を少なくとも有すること、
9.感光体ドラム、帯電手段、現像手段、クリーニング手段が一体に支持しされ装置本体に着脱自在できるプロセスカートリッジであること、
を包含する。
【0020】
図1は本発明の感光層を超臨界流体又は亜臨界流体に接触させて感光層を支持体から剥離した後、支持体を洗浄する装置の概略を示したものである。剥離用流体タンク(11)内の臨界流体もしくは亜臨界流体はバルブ(10),三方弁(9)を開けて加圧ポンプ(8)により槽(5)に送られる。加熱器(7)は超臨界流体もしくは亜臨界流体を適温まで加熱する。円筒状アルミドラムからなる支持体上に、感光層を有する電子写真感光体(1)は槽(5)内に設置したドラム支持台(2)に取り付けられている。ドラム支持台(2)は保持台(4)とボールベアリングを介して回転出来るよう構成されている。感光層を剥離するための流体は噴出孔(6)から電子写真感光体(1)に吹き付けられる。吹きつけの圧力、方向を適宜選択することにより電子写真感光体(1)は回転しながら流体に浸積し、感光層が剥離される。剥離した感光層は保持台(4)の孔から槽(5)の下部に集められる。感光層の剥離が終了後、バルブ(12)、三方弁(14)を開け、フィルター(13)で濾過された剥離用流体は超剥用流体タンク(11)に戻される。
バルブ(12)を閉めた後、バルブ(16)を開け、三方弁(9)を洗浄用流体タンク側にして洗浄用流体を加圧ポンプ(8)により槽(5)に送り感光層剥離後の支持体を洗浄する。加熱器(7)は流体を適温まで加熱する。
【0021】
本発明で用いる超臨界流体としては、気体と液体とが共存できる限界(臨界点)を超えた温度・圧力領域において非凝縮性高密度流体として存在し、圧縮しても凝縮を起こさず、臨界温度以上、かつ、臨界圧力以上の状態にある流体である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、臨界温度が低いものが好ましい。また、前記亜臨界流体としては、前記臨界点近傍で温度・圧力が臨界点よりも低い領域において高圧液体として存在するものを意味し、亜臨界流体である限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。これらの流体の一例としては、一酸化炭素、二酸化炭素、アンモニア、窒素、メタノール、エタノール、エタン、プロパン、2,3−ジメチルブタン、ベンゼン、クロロトリフロロメタン、ジメチルエーテルなどが好適に挙げられる。これらの超臨界流体及び亜臨界流体は単独でも2種類以上混合して併用することも出来る。また、超臨界流体及び亜臨界流体に有機溶媒(エントレーナー)を混合することもできる。エントレーナーとしてはヘキサン、シクロヘキサン、トルエン等の炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒など、特に制限はなく、洗浄効果を高める上で有効となる。これらの中でも、臨界温度が常温に近く、取扱い性に優れる点で、二酸化炭素が特に好ましい。
臨界温度が30〜40℃と常温に近い超臨界流体、例えば超臨界二酸化炭素や超臨界一酸化炭素は、20〜200℃の温度、及び5〜70MPaの圧力で使用するのが望ましく、30〜100℃、7〜60MPaがより好ましい。20℃未満の温度や5MPa未満の圧力では、二酸化炭素や亜酸化窒素は超臨界状態になりにくい。150℃を超える温度では、感光体の構成材料を溶解出来る。また、70MPaを超える圧力では流体ポンプ等を具備する装置の運転に支障を生ずる恐れがあるため好ましくない。ちなみに、二酸化炭素の臨界温度は31℃、臨界圧力は7.53MPaで、一酸化炭素の臨界温度は37℃、臨界圧力は7.26MPaである。本発明における超臨界流体もしくは亜臨界流体の使用は、感光層の剥離、洗浄が主目的である。ここで、本発明において、「剥離」工程と「洗浄」工程では、感光層に与えるエネルギー差が異なる。具体的には剥離の場合、より高温高圧の超臨界流体が好ましく、洗浄の場合はそれよりもわずかに温度、圧力が低くても差し支えない。
【0022】
図2は、本発明における電子写真感光体の構成例を示す概略断面図である。
図2に示すように本発明の電子写真感光体は、導電性基体であるアルミニウム支持体(21)上に樹脂層(22)、下引き層(23)、電荷発生層(24)、電荷輸送層(25)を順次積層した構成からなる。図2の層構成において、さらに必要に応じて電荷輸送層(25)上に保護層を設けることもできる。
【0023】
アルミニウム支持体(21)としては、JIS 3003、JIS 5052等の材質からなるアルミニウムが用いられる。アルミニウム支持体の表面粗さ(Rz)は、加工性、支持体の反射によるモアレ等を考慮すると0.2〜1.5μmが好ましい。これらのアルミニウムには鉄、銅を0.1wt%以上含有させ、機械的強度を向上させて支持体の薄膜軽量化を達成しているが、アルミニウム中に鉄や銅などの金属不純物が存在すると粒界腐食を起しやすいという難点がある。そして、粒界腐食部ではアルミニウム支持体から感光層側へ電荷の注入が起りやすくなり、感光体の繰り返し使用によって、黒ポチ、微小な粒状地汚れ等が発生するという問題がある。このような問題に対して樹脂層(22)は有効である。樹脂層(22)に用いるメトキシメチル化ナイロンは、アルミニウム支持体から感光層側へ電荷の注入を防ぐと共に、感光体の帯電電位を安定化させるために設けられている。
用いられるメトキシメチル化ナイロンとしては限定するものではないが、例えば、6−ナイロンをホルムアルデヒドおよびメタノールと反応させてメトキシメチル化させることにより得られるものであり、反応触媒としてリン酸、リン酸ナトリウム等が用いられ、さらに中和処理にアンモニア等が用いられる。反応後、水洗、乾燥を行ったものを使用するが、樹脂中には、塩素イオン、硝酸イオン、アンモニウムイオン等が残留しており、その量は陰イオンで100〜300ppm、陽イオンで約100ppmである。この残留イオンがメトキシメチル化ナイロンの環境依存性を少なくしている。メトキシメチル化度は、10〜40%、重合度は100〜500が好ましい。
【0024】
本発明においては、図2のような構成とすることによって黒ポチ、白ポチ、微小な粒状地汚れ等の画像欠陥の発生を防止することが可能になる。
樹脂層(22)の膜厚は、0.5〜1.5μmが好ましい。ここで、アルミニウム支持体の表面粗さ(Rz)、および(Rz)とメトキシメチル化ナイロンからなる樹脂層の膜厚(d)の比(Rz/d)が0.3〜2であることが好ましく、このように制御することによってアルミニウム支持体と樹脂層との接着性を向上させ、また樹脂層を支持体の表面に均一に塗布することができ、繰り返し使用時における塗膜欠陥に起因する黒ポチ、白ポチ等の画像欠陥の発生を防止することができる。
樹脂層(22)に用いるメトキシメチル化ナイロンは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソブタノール等のアルコール系溶媒に溶解して塗布される。さらに、溶媒中に水を0.5〜30wt%添加することにより、樹脂層を形成するための塗布液を安定化させることができる。
【0025】
下引き層(23)は、アルミニウム支持体側からの電荷注入防止、接着性の向上、モアレなどの防止、上層(図2では電荷発生層(24))の塗工性改良、残留電位の低減などの目的から設けられる。
下引き層(23)は、熱硬化性樹脂と、酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物、あるいは金属硫化物、金属窒化物などの無機顔料からなる微粉末を単独もしくは二種類以上を適宜選択し、ボールミル、サンドミル、アトライター等により分散調製した塗工液を用いて形成することができる。
無機顔料としては、特に高純度の酸化チタンが好ましい。無機顔料を分散する溶媒としては、樹脂の溶解性、無機顔料の分散性から、ケトン系溶媒、特にシクロヘキサノン、シクロヘキサノール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが好ましい。これらの溶媒を用いることにより無機顔料を一次粒径迄分散して凝集物のない均一な塗工液を製造することが可能となる。
下引き層(23)に用いられる樹脂としては、下引き層上に設けられる感光層(26)が溶剤を用いて塗布形成されることを考慮すると、一般の有機溶剤に対して耐溶解性の高い樹脂、例えば、活性水素(−OH基、−NH基、−NH基等の水素)を複数個含有する化合物とイソシアネート基を複数個含有する化合物および/またはエポキシ基を複数個含有する化合物とを熱重合させた熱硬化性樹脂が例示される。
ここで、活性水素を複数個含有する化合物としては、例えば、ポリビニルブチラール、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ヒドロキシエチルメタアクリレート基等の活性水素を含有するアクリル系樹脂等が挙げられる。イソシアネート基を複数個含有する化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等とこれらのプレポリマー等が挙げられ、エポキシ基を複数有する化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂等が挙げられる。特に、アルキッド樹脂とアミノ樹脂、例えば、アルキッド樹脂(例えば、オイルフリーアルキド樹脂)とメラミン樹脂(例えば、ブチル化メラミン樹脂)等を熱重合させた熱硬化性樹脂が好ましい。
アルミニウム支持体に設けられた樹脂層上への下引き層(23)の形成は、塗工液を用いてロールコート法、浸漬塗工法、スプレーコート法、ノズルコート法、ブレード塗工法等により行うことができる。塗工液を塗布した後、形成された塗布膜は乾燥あるいは加熱により硬化される。下引き層(23)の膜厚さは、0.1〜20μm、好ましくは0.2〜10μmとするのが適当である。
下引き層(23)に用いる無機顔料(P)と熱硬化性樹脂(R)の比(P/R)を4/1〜9/1(重量比率)に制御することにより、繰り返し使用時における帯電低下を防止することが可能になる。特に、熱硬化性樹脂としてアルキッド樹脂とメラミン樹脂を組成分に用いることが好ましい。ここで、P/Rが4/1未満では繰り返し使用時の帯電低下を防止する効果が少ない。一方、P/Rが1〜9/1を越えると繰り返し使用時における微小な粒状地汚れ発生防止に対する効果が少ない。
また、下引き層を無機顔料と熱硬化性樹脂をケトン系溶媒中に分散した塗工液により塗布形成し、その塗布膜の乾燥条件を適宜調節し、下引き層中の残留溶媒を10〜1000ppmとすることにより、塗膜欠陥、繰り返し使用時における微小な粒状地汚れの発生を防止することができ、さらに長期間保管時の感光体露光後電位を安定化させることが可能となる。
【0026】
次に、電荷発生層(24)は、電荷発生物質を主成分とする層であり、必要に応じて結着樹脂(バインダー樹脂)を用いることができる。電荷発生物質としては、無機系材料あるいは有機系材料を用いることができるが環境面からは有機系材料が好ましい。
具体的には、無金属フタロシアニン、金属フタロシアニンなどのフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系または多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタンおよびトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノンおよびナフトキノン系顔料、シアニンおよびアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾ−ル系顔料などが挙げられる。これらの電荷発生物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。例えば、上記各種アゾ顔料に、その他の各種顔料を1種以上含有してもよい。
電荷発生層(24)に必要に応じて用いられるバインダー樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミドなどが挙げられる。これらのバインダー樹脂は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
必要に応じて上記電荷発生層(24)に用いられるバインダー樹脂に電荷輸送物質を添加してもよい。また、電荷発生層のバインダー樹脂として上述のバインダー樹脂の他に、高分子電荷輸送物質が良好に用いられる。
この場合、電荷発生層(24)の電荷発生材料と樹脂との比率を重量比で1/1〜3/1とすることが好ましく、このように調製することによって感光層と下引層との接着性を向上し、露光後電位を安定化させることができる。
【0027】
電荷発生層(24)を形成する方法として、主に溶液分散系からのキャスティング法を用いることができる。キャスティング法によって電荷発生層を設けるには、上述した無機系もしくは有機系電荷発生物質を必要ならばバインダー樹脂と共にテトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジクロロエタン、ブタノン等の溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミル等により分散し、調製した分散液を適度に希釈して塗布することにより形成することができる。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコートなどにより行なうことができる。
以上のようにして設けられる電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.05〜2μmである。
【0028】
次に、電荷輸送層(25)は、帯電電荷を保持させ、かつ露光により電荷発生層(24)で発生分離した電荷を移動させて保持していた帯電電荷と結合させることを目的とする層である。さらに、電荷輸送層(25)は、帯電電荷を保持させる目的達成のために電気抵抗が高いことが要求され、また保持している帯電電荷において高い表面電位を得ることを達成するためには、誘電率が小さくかつ電荷移動性が良いことが要求される。
上記要件を満足させるための電荷輸送層(25)は、電荷輸送物質とバインダー樹脂をテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、ジオキソラン、トルエン、ジメトキシメタンなどの環状エーテル系溶剤に溶解して調製した塗工液を電荷発生層(24)上に塗布して形成される。環状エーテル系溶剤を用いることにより、感光層と支持体あるいは下引層との接着性を向上させることができる。電荷輸送層中の残留環状エーテル系溶剤量は、20〜5000ppmが好ましい。20ppm未満では、支持体あるいは下引き層との接着性が低下し、5000ppmを越えると感光体露光後電位が上昇するという不具合が発生してしまう。
塗工液には、必要により電荷輸送物質およびバインダー樹脂以外に、可塑剤、酸化防止剤、レベリング剤等を適量添加することもできる。なお、ジクロロメタン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、トリクロロエタン、トリクロロメタンなどの塩素系溶媒は対環境性の面から敬遠されている。
【0029】
電荷輸送層(25)に用いられる電荷輸送物質としては、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。
電子輸送物質としては、例えば、クロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイドなどの電子受容性物質が挙げられる。これらの電子輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。また、ハイドロキノン系以外のモノフェノール系化合物、高分子フェノール系化合物、パラフェニレンジアミン類、有機硫黄化合物類、有機燐化合物類等の酸化防止剤も併用して使用してもよい。
上記パラフェニレンジアミン類としては、例えば、N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−tーブチル−p−フェニレンジアミンなどが挙げられる。有機硫黄化合物類としては、例えば、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネートなどが挙げられる。有機燐化合物類としては、例えば,トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィンなどが挙げられる。
【0030】
正孔輸送物質としては、以下に示すような電子供与性物質が挙げられ、良好に用いられる。例えば、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、9−(p−ジエチルアミノスチリルアントラセン)、1,1−ビス−(4−ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、α−フェニルスチルベン誘導体、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナジン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チオフェン誘導体などが挙げられる。これらの正孔輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。電荷輸送層の膜厚は、5〜100μm程度が適当である。
電荷輸送層に併用できるバインダー樹脂として、ポリカーボネート(ビスフェノールAタイプ、ビスフェノールZタイプ)、ポリエステル、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ポリスチレン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニリデン、アルキッド樹脂、シリコン樹脂、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、フェノキシ樹脂などが用いられる。これらのバインダーは、単独または2種以上の混合物として用いることができる。電荷輸送層の膜厚は、5〜100μm程度が適当である。
また、必要により用いられる可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ビスベンジルベンゼン誘導体など一般に可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量はバインダー樹脂100重量部に対して0〜30重量部程度が適当である。
【0031】
さらに、酸化防止剤としては以下に例示するものが使用される。
〔モノフェノール系化合物〕:2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3−t−ブチル−4−ヒドロキシニソールなど。
〔ビスフェノール系化合物〕:2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)など。
〔高分子フェノール系化合物〕:1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、トコフェノール類など。
〔パラフェニレンジアミン類〕:N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミンなど。
〔ハイドロキノン類〕:2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなど。
〔有機硫黄化合物類〕:ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネートなど。
〔有機燐化合物類〕:トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィンなど。
【0032】
電荷輸送層中にレベリング剤を添加してもかまわない。レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、測鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマー、あるいはオリゴマーが使用され、その使用量は、バインダー樹脂100重量部に対して、0〜1重量部が適当である。
また、電荷輸送層上に保護層を設けてもよい。保護層は、結着樹脂中に金属、または金属酸化物の微粒子を分散して形成された層からなるものである。
保護層の結着樹脂としては、可視、赤外光に対して透明で電気絶縁性、機械的強度、接着性に優れたもの望ましい。結着樹脂としては、例えば、ABS樹脂、ACS樹脂、オレフィン−ビニルモノマー共重合体、塩素化ポリエーテル、アリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリレート、ポリアリルスルホン、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリメチルベンテン、ポリプロピレン、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、ポリスチレン、AS樹脂、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エポキシ樹脂等の樹脂が挙げられる。
一方、金属酸化物としては酸化チタン、酸化錫、チタン酸カリウム、TiO、TiN、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化アンチモン等が挙げられる。
保護層には、その他、耐摩耗性を向上する目的でポリテトラフルオロエチレンのような弗素樹脂、シリコーン樹脂、およびこれらの樹脂に無機材料を分散したものなどを添加することができる。保護層の形成法としては通常の塗布法が採用される。なお、保護層の厚さは0.1〜10μm程度が適当である。
【0033】
次に、本発明における画像形成装置について図を参照して説明する。図3は、本発明における電子写真装置の一例を模式的に示す概略構成図である。
図3において、符号(31)は本発明の電子写真感光体(感光体ドラム)であり、感光体ドラムの周りに、帯電手段(接触帯電装置)(32)、現像手段(34)、転写手段(接触転写手段)(36)、クリーニング手段(37)を配設した装置構成となっている。 この装置構成の場合、まず接触帯電装置(32)により、感光体ドラム(31)が帯電する。感光体ドラムが帯電された後、レーザー光によるイメージ露光(33)を受け、露光された部分で電荷が発生し、感光体ドラム表面に静電潜像が形成される。感光体ドラム(31)表面に静電潜像を形成した後、現像手段(34)を介して現像剤と接触し、トナー像を形成する。感光体ドラム(31)表面に形成されたトナー像は、接触転写手段(36)により紙などの転写部材(35)へ転写され、定着手段(39)を通過してハードコピーとなる。感光体ドラム(31)上の残留トナーはクリーニングブレードからなるクリーニング手段(37)により除去され、残留電荷は除電手段(38)で除かれて、次の電子写真サイクルに移る。
【0034】
接触転写手段(36)は、半導電性発泡ポリウレタン等の材質で構成され、トナー像を効率良く転写部材(35)に転写できるように工夫されている。接触転写手段(36)の長手方向両端には感光体ドラム(31)との接触圧を一定にするため樹脂製のコロ(図示せず)が設けられている。なお、このコロは、感光体ドラム(31)の長手方向両端部で感光層と接触する場合がある。特に、電荷輸送層端部がコロと接触する場合、下引き層と電荷輸送層の間に設けられた電荷発生層の樹脂種、または電荷発生層が樹脂を含まない場合、電荷輸送層端部が感光体ドラム(31)の繰り返し使用によって剥離してしまう。
上記構成により、小型で、しかも中間調、ライン画像の再現性、ベタ部濃度などの要求を満足する画像形成装置を提供することが可能となる。
また、感光体ドラム(31)に用いるアルミニウム支持体の全フレ量は中間調、ベタ部濃度の左右バラツキに影響する。アルミニウム支持体の全フレ量は60μ以下が好ましく、それ以上では中間調の濃度バラツキに影響してしまう。
【0035】
また、本発明の画像形成装置は、帯電手段、現像手段、クリーニング手段等が、一体構成となっているプロセスカートリッジを構成している。すなわち、本発明の電子写真感光体と、帯電手段、現像手段、クリーニング手段を一体に支持し、画像形成装置本体に着脱自在とした構成とすることにより、ユニットの小型化、取り付け、取り外しなどを簡便とすることが可能となる。
【実施例】
【0036】
以下に実施例を示す。「部」は重量部を意味する。
(感光体製造例1)
φ30mm、長さ340mm、厚さ0.75mm、表面粗さ(Rz)1.1μmのJIS 3003系のアルミニウム製(Fe:0.7wt%、Cu:0.2wt%含有、全フレ:50μ)支持体、すなわちアルミドラム上に、以下の手順で、樹脂層、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層を順次形成して実施例1の電子写真感光体を作製した。
【0037】
[樹脂層の形成]
まず、アルミドラム上に、下記組成により調製した樹脂溶液を用いて浸漬塗布し、130℃で10分間乾燥して、膜厚0.75μmの樹脂層を形成した。
<樹脂溶液の組成>
メトキシメチル化ナイロン(FR−101:(株)鉛市製) 10.9部
メタノール 104.4部
ブタノール 28.9部
イオン交換水 14.9部
なお、メトキシメチル化ナイロン(FR−101)中のイオン量は、イオンクロマトグラフによる分析の結果、塩素イオン、硝酸イオン、アンモニウムイオンが、それぞれ150ppm、50ppm、90ppmであった。
【0038】
[下引き層の形成]
続いて、下記組成からなる混合物をボールミルポットに採り、φ10mmのアルミナボールを使用して120時間ボールミリングし、下引き層用のミリング液を調製した。
<下引き層用ミリング液の組成>
酸化チタン(CR−60:石原産業製) 60部
アルキッド樹脂(ベッコライトM6401−50:
大日本インキ化学工業製;固形分50wt%) 18.5部
メラミン樹脂(スーパーベッカミンL−121−60:
大日本インキ化学工業製;固形分60wt%) 10.3部
メチルエチルケトン(関東化学製) 21部
シクロヘキサノン(関東化学製) 9部
調製したミリング液をアルミドラムに形成した樹脂層上に浸漬塗布し、130℃で20分間乾燥して、膜厚3.5μmの下引き層を形成した。ミリング液中の酸化チタンの平均粒径は遠心式粒度分布測定機(CAPA700:堀場製作所製)により測定したところ0.39μmであった。
【0039】
[電荷発生層の形成]
次に、下記化学式(I)で表される電荷発生物質2部、固形分濃度2wt%のポリビニルブチーラール樹脂(BX−1:積水化学製)/ メチルエチルケトン溶液60部からなる混合物をボールミルポットに採り、φ2mmのYTZボールを使用して24時間ボールミリングを施し、電荷発生層用塗布液を調製した。この塗布液を上記形成した下引き層上に浸漬塗布し、95℃で20分間乾燥し、厚さ0.1μmの電荷発生層を形成した。
【0040】
【化1】

【0041】
[電荷輸送層の形成]
次いで、下記組成により電荷輸送層用塗工液を調製し、この塗工液を用いて上記形成した電荷発生層上に浸漬塗布し、135℃で25分間乾燥し、厚さ31μmの電荷輸送層を形成した。
<電荷輸送層用塗工液の組成>
電荷輸送物質(下記化学式(II):リコー製) 7部
ポリカーボネート樹脂(TS−2050:帝人化成製) 10部
シリコーンオイル(KF−50:信越化学製) 0.002部
テトラヒドロフラン(関東化学製) 77.4部
【0042】
【化2】

【0043】
(剥離用感光体)
このようにして作製した電子写真感光体を反転現像方式のデジタル複写機(リコー社製イマジオ250)に取り付け、5万枚印字して剥離用感光体を準備した。
【0044】
(実施例1)
剥離用感光体を図1の槽に入れて超臨界流体として二酸化炭素を選択し、下記の条件にて、超臨界流体を噴出口から感光体に吹き付け感光体を回転させながら超臨界流体中に浸積し、感光層を剥離した。このとき、超臨界流体は槽の中で対流していた。また、感光体が超臨界流体中に浸積してから剥離終了時迄超臨界流体は70℃、8MPaの条件を30分間維持した。剥離終了後、フィルターで濾過された剥離用超臨界流体は超剥用流体タンクに戻した。続いて洗浄用流体タンクから洗浄用超臨界流体(二酸化炭素)を加圧ポンプにより槽に送り感光層剥離後のアルミドラムを5分間洗浄した。洗浄時の条件は40℃、7MPaとした。
【0045】
[超臨界流体による処理条件]
(1)噴出口からの超臨界二酸化炭素流体の噴出条件
噴出圧:吹き付け開始時の8Mpaから徐々に低下して、感光体ドラム全体が超臨界流体中に浸積した時点で0Mpaとなる。噴出量は1〜10L/分
(2)ろ過処理のためのフィルターの開口度:5〜30μ
(3)洗浄の際の超臨界二酸化炭素流体の流動条件
流動速度:0.05〜2m/秒、流動量: 1〜10L/分(=噴出量)
【0046】
洗浄終了後、常温、0.1MPa(1気圧)まで戻し、アルミドラムを取り出した。
このアルミドラムに(感光体製造例1)と全く同様にして感光層を設けた。
【0047】
(実施例2)
実施例1において剥離用超臨界流体を二酸化炭素/メタノール=8/2に変えた以外は実施例1と全く同様にして感光層を設けた。
【0048】
(実施例3)
実施例1において剥離用超臨界流体を二酸化炭素/メタノール=7/3に変えた以外は実施例1と全く同様にして感光層を設けた。
【0049】
(実施例4)
実施例1において洗浄用超臨界流体を二酸化炭素/メタノール=9/1に変えた以外は実施例1と全く同様にして感光層を設けた。
【0050】
(比較例1)
感光体製造例1で用いたアルミドラムを全振れ100μのものに変えた以外は感光体製造例1と全く同様にして作成した感光体を用いてデジタル複写機(リコー社製イマジオ250)で5万枚印字して剥離用感光体を準備した。この感光体を特開2004−4408の装置を用いてN-メチルピロリドンで感光層を剥離(常温、常圧下でのブラシ剥離)した後、アルミドラムをイオン交換水で洗浄した。洗浄後のアルミドラム表面には下引層の剥離残と思われる微小な異物が観察された。このアルミドラム上に実施例1と全く同様にして感光層を設けた。
【0051】
(比較例2)
比較例1においてN−メチルピロリドンで感光層を剥離した後、洗剤サンウォッシュMF−10(ライオン製)10wt%水溶液で2分洗浄後、さらにイオン交換水で洗浄した。このアルミドラム上に実施例1と全く同様にして感光層を設けた。
【0052】
微小塗膜欠陥は塗工後の感光層表面を目視観察して表1の条件で判定した。
このようにして作成した感光体を剥離用感光体と同様に反転現像方式のデジタル複写機(リコー社製イマジオ250)に取り付け、5万枚印字し、黒ポチ、左右濃度ムラを評価した。
なお、黒ポチの評価は、カラーイメージプロセッサーSPICCA(日本アビオニクス社製)を用いて黒ポチの大きさと個数を測定し、φ0.05mm以上の黒ポチの個数(1cm当たり)により判定した。黒ポチ評価の判定基準を下記表1に示す。表1、及び表2の判定において、◎、○、△の場合には実用上特に問題のないことを示し、×の場合には実用に適さないことを示す。また、左右濃度ムラは、オレンジ色のシャートをコピーしてその濃度ムラを目視で評価した。又、反転現像方式のデジタル複写機(リコー社製イマジオ250)の現像ローラをはずして電位計のプローブを取り付けたユニットを用い、初期、5万枚印字後の帯電電位、露光後電位を測定した。
結果を表2に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の感光層を超臨界流体又は亜臨界流体に接触させて感光層を支持体から剥離した後、支持体を洗浄する装置の概略を示した図である。
【図2】本発明における電子写真感光体の構成例を示す概略断面図である。
【図3】本発明における電子写真装置の一例を模式的に示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0056】
1 感光体ドラム
2 ドラム支持台
3 ボールベアリング
4 保持台
5 槽
6 噴出孔
7 加熱器
8 加圧ポンプ
9 三方弁
10 バルブ
11 剥離用流体タンク
12 バルブ
13 フィルター
14 三方弁
15 洗浄用流体タンク
16 バルブ
21 導電性基体(アルミニウム支持体)
22 樹脂層
23 中間層(下引き層)
24 電荷発生層
25 電荷輸送層
26 感光層
31 電子写真感光体(感光体ドラム)
32 帯電手段(接触帯電装置)
33 イメージ露光
34 現像手段
35 転写部材
36 転写手段(接触転写手段)
37 クリーニング手段
38 除電手段
39 定着手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に感光層を有する電子写真感光体を超臨界流体もしくは亜臨界流体に接触させて該感光層を剥離した後、該支持体上に感光層を形成することを特徴とする電子写真感光体の製造方法。
【請求項2】
前記感光層を剥離後、該支持体を超臨界流体もしくは亜臨界流体で洗浄することを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体の製造方法。
【請求項3】
前記超臨界流体及び亜臨界流体のいずれかもしくは両方が、二酸化炭素であることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真感光体の製造方法。
【請求項4】
前記超臨界流体及び亜臨界流体のいずれかもしくは両方が、二酸化炭素と他流体との混合物であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の電子写真感光体の製造方法。
【請求項5】
前記他流体が、一酸化炭素、窒素、アンモニア、メタノール、エタノール、エタン、プロパンから選択される少なくとも一種であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の電子写真感光体の製造方法。
【請求項6】
前記電子写真感光体は、アルミニウム支持体を有し、該アルミニウム支持体と前記感光層との間にメトキシメチル化ナイロンからなる樹脂層、および無機顔料と熱硬化性樹脂からなる下引き層が該アルミニウム支持体側から順次設けられたものであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の電子写真感光体の製造方法。
【請求項7】
前記アルミニウム支持体が全フレ量60μ以下である円筒状アルミニウムからなるものであることを特徴とする請求項6に記載の電子写真感光体の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至6のいずれかに記載の電子写真感光体の製造方法により得られた電子写真感光体であって、アルミニウム支持体と前記感光層との間に、メトキシメチル化ナイロンからなる樹脂層、および無機顔料と熱硬化性樹脂からなる下引き層が、アルミニウム支持体側から順次設けられたものであることを特徴とする電子写真感光体。
【請求項9】
前記アルミニウム支持体は、全フレ量60μ以下である円筒状アルミニウムからなるものであることを特徴とする請求項8に記載の電子写真感光体。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の電子写真感光体を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
前記電子写真感光体と、帯電手段、画像露光手段、現像手段及び転写手段を少なくとも有することを特徴とする請求項10に記載の画像形成装置。
【請求項12】
感光体ドラムと、帯電手段、現像手段、クリーニング手段のうちの少なくともいずれか1つの手段とが一体に支持され、請求項7又は8に記載の画像形成装置本体に着脱自在できるものであることを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−158371(P2008−158371A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−348848(P2006−348848)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】