説明

電子写真感光体の製造装置

【課題】多くの種類の電子写真感光体を効率よく低コストで製造することができる電子写真感光体の製造装置を提供することを目的とする。また、より均一性の優れた電子写真感光体を製造することができる電子写真感光体の製造装置を提供することを目的とする。
【解決手段】原料ガス導入手段111は、円筒状電極102の少なくとも一部を構成する原料ガス供給部材112を有する。原料ガス供給部材112は、原料ガス放出孔114を設けた複数の原料ガス供給部113を有する。それぞれの原料ガス供給部113は、反応容器101の長手方向に配置されている。原料ガス導入手段111は、それぞれの原料ガス供給部113に供給する原料ガスの流量を調整することにより、反応容器101の長手方向のガス流量分布を変更可能な原料ガス流量調整手段117を有する電子写真感光体の製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真感光体の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非晶質材料で構成された半導体用の堆積膜が提案され、その中のいくつかは実用に付されている。例えば水素およびハロゲン(例えばフッ素、塩素)の少なくとも一方で補償されたアモルファスシリコン(以下、“a−Si”と略記す。)が電子写真感光体として用いられている。
この種の堆積膜を形成する際には、堆積膜の膜厚、膜特性の均一化が求められることが多い。特に、電子写真感光体は、均一性が画像特性に大きく影響を与えるため、大面積領域に均一性の高い堆積膜を形成する技術が必要となる。
【0003】
例えば、プラズマCVD法を用いて円筒状基体の上に堆積膜を成膜する電子写真感光体の製造装置においては、円筒状基体の周方向及び長手方向に均一性の高い堆積膜を得るために原料ガスの導入方法に関してさまざまな提案がなされている。
例えば、反応容器を構成する円筒状電極の内部に原料ガス経路となる複数の管状空洞部を有し、これら管状空洞部の各々が円筒状電極の底部から頭部へ軸方向に沿って伸びて配置される堆積膜の製造装置が提案されている。(特許文献1参照)
【0004】
本特許文献においては、管状空洞部から反応容器内に原料ガスを放出させることにより、反応容器内のガス流を安定化させることができ、円筒状基体全体にわたって均一性の高い膜質、膜厚を得ることが可能となったことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-323375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記のように、プラズマCVD法を用いて機能性堆積膜を形成する場合、反応容器内に均一かつ安定なプラズマが生成されることが重要となる。
プラズマCVD法による成膜方法の中でも、高周波電力としてRF帯を用いるRFプラズマCVD法は良好な特性の膜を容易に得られるため、a−Siを用いた電子写真感光体の製造などに用いられている。このRFプラズマCVD法において、前記した特許文献1に示される従来の堆積膜の製造装置により、均一性に優れた電子写真感光体を得ることが可能になった。
【0007】
しかしながら、特に近年では、市場にて要求される電子写真装置のスペックが厳しくなってきており、さらなる高画質化、高速化、高耐久性、および高機能化に向けた製品開発が急務となっている。
こうした市場の変化に伴って、a−Siを用いた電子写真感光体に関しても、従来以上に電気特性の向上と均一性に対する要求もより強くなってきていると同時に、低価格、低ランニングコストの要求も強くなってきている。
【0008】
更に、近年の電子写真装置の目覚しい普及により、市場における顧客のニーズは、用途やコピーボリューム、性能等において多種多様となってきている。
こうした多種多様な顧客のニーズに対応するには、例えば電子写真感光体の外径や長さ、堆積膜の厚さ、帯電特性等が異なるさまざまな種類の製品が必要となる。
こうした異なる電子写真感光体の製造においては、原料ガスや原料ガスの分解を司る電力、基板温度等の成膜条件パラメーターを製品ごとに変えていかなければならない。とりわけ、原料ガスの導入は重要なパラメーターで、堆積膜の製造装置における原料ガスの吹き出し方法や、吹き出し穴の配列等を製品ごとに最適化する必要がある。
【0009】
また、電子写真感光体の層構成も多様化してきた結果、層ごとに原料ガスの吹き出し方法や、吹き出し穴の配列等の最適化を行う必要もでてきている。
特許文献1に示される堆積膜の製造装置において、異なる製品を製造する場合、異なる吹き出し穴配置を有する別の反応容器に交換して製造しなければならない。そのため、多種多様な反応容器を準備する必要があり、反応容器の交換にも時間が掛かるなどの課題が発生してきている。
【0010】
また、反応容器自体の製作においても、反応容器の構造が複雑で加工コストも高く、投資コスト増となってしまう課題も有している。
さらに、反応容器の吹き出し穴の加工精度が出しにくく、電子写真感光体の特性に影響を及ぼしてしまう課題も有している。
特許文献1に示される堆積膜の製造装置において、電子写真感光体の層ごとに適切な原料ガス吹き出し分布が異なる場合は、それぞれの層で吹き出し穴配置が異なる空洞部に切り替えて堆積膜の形成を行う必要がある。しかしながら、電子写真感光体の層ごとに異なる吹き出し穴配置を有する別の空洞部を用意しなければならず、さらに反応容器のコストアップにつながってしまう。
【0011】
本発明は、上記のような従来技術に鑑みてなされたものであり、多くの種類の電子写真感光体を効率よく低コストで製造することができる電子写真感光体の製造装置を提供することを目的とする。
また、電子写真感光体の層ごとに適切なガス吹き出し分布とすることで、より均一性の優れた電子写真感光体を製造することができる電子写真感光体の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明は、
減圧可能な反応容器と、
前記反応容器の側壁の少なくとも一部を構成する円筒状電極と、
前記反応容器内に堆積膜形成用の円筒状基体を設置するための基体ホルダと、
前記反応空間内に原料ガスを導入するための原料ガス導入手段と、
前記反応空間を排気する排気手段と、
前記反応空間内に導入された原料ガスを励起させてグロー放電を発生させるための高周波エネルギーを前記円筒状電極を介して導入する高周波エネルギー導入手段と、
を有するプラズマCVD法による電子写真感光体の製造装置において、
前記原料ガス導入手段は、前記円筒状電極の少なくとも一部を構成する原料ガス供給部材を有し、前記原料ガス供給部材は原料ガス放出孔を設けた複数の原料ガス供給部を有し、それぞれの前記原料ガス供給部は前記反応容器の長手方向に配置されており、
前記原料ガス導入手段はそれぞれの前記原料ガス供給部に供給する原料ガスの流量を調整することにより、前記反応容器の長手方向のガス流量分布を変更可能な原料ガス流量調整手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の電子写真感光体の製造装置によれば、多くの種類の電子写真感光体を効率よく低コストで製造することができる。また、より均一性の優れた電子写真感光体を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の電子写真感光体の製造装置を模式的に示した図であり、(a)は縦断面図、(b)は横断面図。
【図2】本発明の別の電子写真感光体の製造装置を模式的に示した図であり、(a)は縦断面図、(b)は横断面図。
【図3】本発明に係る原料ガス導入手段を模式的に示した縦断面図。
【図4】本発明の別の電子写真感光体の製造装置を模式的に示した縦断面図。
【図5】本発明の別の電子写真感光体の製造装置を模式的に示した図であり、(a)は縦断面図、(b)は横断面図。
【図6】本発明に係る流量調整手段を模式的に示した横断面図。
【図7】(a)は電子写真感光体の層構成を示した模式図であり、(b)は電子写真感光体の別の層構成を示した模式図。
【図8】本発明の別の電子写真感光体の製造装置を模式的に示した縦断面図。
【図9】従来の堆積膜の製造装置を模式的に示した図であり、(a)は縦断面図、(b)は横断面図。
【図10】本発明の別の電子写真感光体の製造装置を模式的に示した縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明者らは、前述したような多くの種類の電子写真感光体を低コストかつ効率的に製造することに加え、優れた帯電特性と均一性を両立させた電子写真感光体を得るための検討を行うにあたり、以下の3つの課題を検討した。
(1)製品毎もしくは層毎に異なる吹き出し穴配置を有する反応容器に入れ替える作業に掛かる製造装置停止時間の削減
(2)製造装置投資コストの削減
(3)穴あけ加工の精度アップ
【0016】
(1)の具体的な課題として、反応容器本体を、異なる吹き出し穴配置を有する反応容器に付け替える作業は、反応容器自体が重量物であるために作業が大がかりになってしまうことが挙げられる。特に、真空搬送機構を設けた生産システムの場合、基体を搬送する搬送容器と堆積膜を形成する処理容器との位置決め調整作業に手間が掛かる。
このため製造装置停止時間が長くなってしまい、生産効率を低下させる要因となっている。
【0017】
(2)の具体的課題としては、製品毎もしくは層毎に異なる吹き出し穴配置を有する反応容器を製作しなければならず、反応容器の製作コストが高くなってしまうことが挙げられる。特に、特許文献1に示す反応容器は、構造が複雑であり、製作には複雑かつ高度な加工が伴い、製作コストを増大させている。
(3)の具体的課題としては、反応容器の外側から貫通穴をあけ、外側の穴を塞ぐ加工をしなければならず、加工の手番が多くなること、穴あけ加工のストロークが長くなることと反応容器の内面にバリが出ることにより、精度が出しにくくなってしまう。
【0018】
本発明者らは、上記3点の課題を同時に解決することができないか鋭意検討した結果、本発明に至ったものである。
以下、図面を用いて本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、RF(Radio Frequency)プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法によって、電子写真感光体を製造するための製造装置の一例を模式的に示した図である。
【0019】
図1(a)は縦断面図、図1(b)は横断面図である。
電子写真感光体の製造装置100は、プラズマ処理によって円筒状基体122に堆積膜を形成する装置である。
電子写真感光体の製造装置100は、減圧可能な反応容器101と、反応容器101の側壁の少なくとも一部を構成する円筒状電極102と、円筒状基体122を設置するための基体ホルダ124と、反応容器101内を減圧するための排気手段と、高周波エネルギー導入手段を有する。高周波エネルギー導入手段は、反応空間内に導入された原料ガスを励起させてグロー放電を発生させるための高周波エネルギーを、円筒状電極102を介して導入する。
【0020】
円筒状電極102は、セラミックスからなる絶縁碍子106により上壁104から絶縁されている。また、円筒状電極102は、セラミックスからなる絶縁碍子107により底壁103から絶縁されている。上壁104は上蓋105を有し、上蓋105から反応容器101の中に、円筒状基体122およびキャップ123を装着した基体ホルダ124を搬入・搬出する。
円筒状基体122は反応容器101内の長手方向に円筒状基体122の軸方向が向くように基体ホルダ124に設置されている。
【0021】
反応容器101の下部には、基体ホルダ124を回転可能に保持する回転台125が設けられている。回転台125は、回転台125を回転させるためのモータ(不図示)に接続されている。したがって、円筒状基体122は、基体ホルダ124の上に装着された状態で、回転台125と共に回転させることができる。
反応容器101には、排気手段として排気口110、排気配管108を介して排気装置128が接続され、排気速度を制御することにより、反応容器101内を各工程に適した所定の圧力に維持することができる。排気装置128には、例えばロータリーポンプや、メカニカルブースターポンプを用いることができる。
【0022】
電子写真感光体の製造装置100は、高周波エネルギー導入手段としてマッチングボックス118、及び高周波電源119とを備える。
また、電子写真感光体の製造装置100の反応容器101内には、加熱用ヒータ126が設けられている。
さらに、電子写真感光体の製造装置100は、反応容器101の中に原料ガスを導入するための原料ガス導入手段111を備える。原料ガス導入手段111は円筒状基体122の長手方向に、平行に設置された原料ガス供給部材112を有している。原料ガス供給部材112は円筒状電極102の一部として構成される。
【0023】
さらに原料ガス供給部材112は原料ガス放出孔114を有する複数の原料ガス供給部113から構成され、原料ガス供給部113は反応容器101の長手方向に配置されている。
原料ガス供給部材112とガス供給系との接続は、原料ガス供給部材112が円筒状電極102の一部となる構成であるため、絶縁性の継ぎ手部材116を介して接続され、高周波電力が反応容器101の外部に漏れない構成となっている。
【0024】
原料ガス供給部材112はそれぞれの原料ガス供給部113に供給する原料ガスの流量を調整するための原料ガス流量調整手段117を少なくとも1つ以上有している。原料ガス流量調整手段117はミキシング装置121と、原料ガス流入バルブ120からなるガス供給系に接続される構成となっている。
少なくとも1つ以上の原料ガス流量調整手段117により、それぞれの原料ガス供給部113に供給する原料ガスの流量を調整することが可能となり、反応容器101の長手方向のガス流量分布が変更可能となる。
【0025】
原料ガス供給部113は反応容器101の長手方向にいくつ配置されてもよいが、好ましくは2〜11個、さらに好ましくは3〜7個とする。
原料ガス供給部113が少なすぎると反応容器101の長手方向のガス流量分布を調整しにくくなり、原料ガス供給部113が多すぎると継ぎ手部材116や原料ガス流量調整手段117のごとき付帯設備にかかる費用の増加により投資コストが高くなってしまう。
原料ガス流量調整手段117はそれぞれの原料ガス供給部113に供給する原料ガスの流量を調整することが可能であれば、どのようなものでも構わない。
【0026】
例えば図1(a)に示すように原料ガス供給部113が反応容器101の長手方向に3つ配置された構成の場合、それぞれの原料ガス供給部113が原料ガス流量調整手段117を有する構成としてもよい。また、2つの原料ガス供給部113が原料ガス流量調整手段117を有し、他の1つの原料ガス供給部113が原料ガス流量調整手段117を持たない構成としてもよい。
【0027】
原料ガス流量調整手段117としては例えば、ニードルバルブとフローメーターの組み合わせや、スロットルバルブとフローメーターの組み合わせが挙げられる。
以上のように構成された電子写真感光体の製造装置100を用いて堆積膜を形成する手順の一例について、以下図1を用いて説明する。
【0028】
まず、円筒状基体122およびキャップ123を装着した基体ホルダ124を、反応容器101内に搬入し、回転台125に設置して、上蓋105を閉める。
円筒状基体122の材質は、使用目的に応じたものであれば良い。円筒状基体122の材質としては、例えば、銅、アルミニウム、金、銀、白金、鉛、ニッケル、コバルト、鉄、クロム、モリブデン、チタン、ステンレスが、電気伝導率が良好であるため、好適である。中でも、加工性や製造コストを考慮すると、アルミニウムが最適である。この場合、円筒状基体122を形成するアルミニウムとしては、例えばAl−Mg系合金、Al−Mn系合金のいずれかを用いることが好ましい。
【0029】
その後、排気口110、排気配管108を介して接続されている排気装置128により反応容器101の中を排気する。続いて、ミキシング装置121、原料ガス流入バルブ120及び原料ガス流量調整手段117を介して、反応容器101の中に円筒状基体122の加熱に必要な、例えばAr、Heガスを導入する。この時、少なくとも1つ以上の原料ガス流量調整手段117により、反応容器101の長手方向に配置された複数の原料ガス供給部113に供給する原料ガスの流量を所望の値に調整する。そして、反応容器101の中が所定の圧力になるように、真空計127を確認しながら真空ポンプの排気速度を調整する。この調整は、例えば、真空ポンプのメカニカルブースターポンプの回転周波数を調整することによって行うことができる。
【0030】
次に、所定の圧力になった後、加熱用ヒータ126により円筒状基体122の温度を150[℃]〜450[℃]、より好ましくは200[℃]〜350[℃]の所望の温度に制御する。
加熱用ヒータ126は、真空中で使用可能なものであればどのようなものを用いてもよい。具体的には、シース状ヒータ、板状ヒータ、セラミックヒータ、カーボンヒータの様な電気抵抗発熱体や、ハロゲンランプ、赤外線ランプの様な熱放射ランプや、液体、気体を熱媒とした熱交換手段が対象として挙げられる。
以上の手順によって堆積膜を形成する準備が完了した後、円筒状基体122の表面に堆積膜の形成を行う。
【0031】
まず、堆積膜形成用の原料ガスとして、主原料ガスと希釈ガスおよび特性改善ガスを、ミキシング装置121により混合する。次に原料ガス流入バルブ120、原料ガス流量調整手段117を介して反応容器101の中に原料ガスを導入する。この時、少なくとも1つ以上の原料ガス流量調整手段117により、反応容器101の長手方向に配置された複数の原料ガス供給部113に供給する原料ガスの流量を所望の値に調整する。また、反応容器101の中が13.3[mPa]〜1330[Pa]の所望の圧力になるように、真空計127を確認しながら真空ポンプの排気速度を調整する。
【0032】
堆積膜形成時に使用する主原料ガスとしては、シラン(SiH)、ジシラン(Si)、四フッ化ケイ素(SiF)、六フッ化二ケイ素(Si)のごときa−Si形成用の原料ガス、またはそれらの混合ガスを用いることができる。希釈ガスとしては、水素(H)またはアルゴン(Ar)、ヘリウム(He)のごとき不活性ガスを用いることができる。また、特性改善ガスとして、窒素原子を含むもの、酸素原子を含むもの、炭素原子を含むもの、またはフッ素原子を含むもの、周期表の13族又は15族に属する原子を含むドーピングガス、あるいはこれらの混合ガスを併用してもよい。
【0033】
次に、反応容器101の中の圧力が安定した後、高周波電源119を所望の電力に設定して、高周波電力を、マッチングボックス118を介して円筒状電極102に供給することで、反応容器101の中に高周波グロー放電を生起させる。供給電力は、例えば、RF帯、特に13.56[MHz]の周波数とすることができる。この放電エネルギーによって、反応容器101の中に導入された堆積膜形成用の原料ガスが励起されて活性種が生成され、すなわち分解されて、円筒状基体122の表面に所望のケイ素原子を主成分とする堆積膜が形成される。このとき、原料ガス供給部材112は円筒状電極102と同電位であるので、原料ガス供給部材112も高周波電極として機能することとなる。
【0034】
均一性の高い堆積膜を形成するために、堆積膜を形成するのと同時に、あるいは円筒状基体122を加熱する段階から、円筒状基体122を回転させることは有効な手段となる。この回転は0.5[rpm]〜20[rpm]、例えば1[rpm]の回転速度とする。こうすることで、円筒状基体122の周方向に均一性の高い堆積膜が形成される。
以上のようにして円筒状基体122の外周面の表面に堆積膜が形成される。
【0035】
堆積膜が形成された後には、堆積膜形成用の原料ガスおよび高周波電力の供給を停止し、反応容器101の中を排気する。その後、反応容器101および原料ガス導入手段111の中をパージガス、例えばAr、He、N等の不活性なガスを用いてパージ処理する。パージ処理完了後、反応容器101の中をAr、He、N等の不活性なガスを用いて、大気圧まで戻す。そして、上蓋105を開けて、円筒状基体122およびキャップ123を装着した基体ホルダ124を、反応容器101の中から取り出す。
【0036】
その後に、必要に応じて、反応容器101の中に堆積した堆積膜および粉状の副生成物をクリーニング処理する。
このような手順により、繰り返し電子写真感光体を製造することができる。本発明の電子写真感光体の製造装置100では、電子写真感光体の外径や長さ、層構成に応じて、少なくとも1つ以上の原料ガス流量調整手段117を用いる。かかる原料ガス流量調整手段117により、反応容器101の長手方向に複数配置されたそれぞれの原料ガス供給部113に供給する原料ガスの流量を適宜最適な値に変更して製造することで、より均一性の高い良好な特性の電子写真感光体を得ることができる。
【0037】
よって、前述した各製品もしくは各層の製造ごとに異なる吹き出し穴配置を有する反応容器に入れ替える作業の課題を克服し、段取り換えの作業時間を削減できることとなる。
また、反応容器自体を各製品もしくは各層の製造ごとに製作する必要が無くなるため、装置の投資コストが大幅に削減できるメリットを生み出すこととなる。
本発明における原料ガス供給部113の原料ガス放出孔114の直径は0.5mm〜2.0mmの範囲であることが好ましい。更に、各原料ガス放出孔114の精度は直径の±5%以内の精度であることが好ましい。原料ガス放出孔114の精度によっては、電子写真感光体の長手方向(軸方向)の特性ムラのみならず、円筒状基体122を回転させながら堆積膜を形成する場合においても周方向ムラに影響を及ぼす場合もある。
【0038】
原料ガス放出孔114を反応容器101に直接設けた電子写真感光体の製造装置においては、原料ガス放出孔114を加工する場合、反応容器内径の制約から反応容器101の内面から穴あけ加工することが困難となる。そのため、反応容器101の外側から貫通穴をあけ、外側の穴を塞ぐ加工をしなければならず、加工の手番が多くなること、穴あけ加工のストロークが長くなることと反応容器101の内面にバリが出ることにより、精度が出しにくくなる場合がある。
【0039】
そのため、原料ガス供給部材112は、図2に示すように原料ガス供給部213ごとに分割されており、個別に円筒状電極202から脱着可能な構成とすることが好ましい。このような構成とすることで、円筒状電極202から取り外して、原料ガス供給部213単体で機械加工を行なうことができるので、加工がしやすくなり、精度が出しやすくなる。また、取り外して機械加工を行うことによって、円筒状電極202に取り付けた際に反応容器201の内面となる側から加工することができるため、バリ等の影響をなくすことができる。これにより、均一性の優れた電子写真感光体を製造することが可能となり、より好ましい。
【0040】
図2は電子写真感光体の製造装置の一例を模式的に示した図である。図2(a)は縦断面図、図2(b)は横断面図である。
反応容器201には、反応容器201内に原料ガスを導入するための原料ガス導入手段211が設けられている。原料ガス導入手段211は、原料ガス供給部材212を有する。原料ガス供給部材212は原料ガス放出孔214を有する複数の原料ガス供給部213から構成されている。原料ガス供給部213は反応容器201の長手方向に分割されて配置されている
【0041】
また原料ガス供給部材212は円筒状電極202の一部として構成され、複数の原料ガス供給部213は個別に円筒状電極202本体から取り外すことが可能(脱着可能)な構造となっている。
原料ガス供給部材212と円筒状電極202は同電位となるように取り付けられている。これにより、原料ガス供給部材212を含めた円筒状電極202全体が電極となり、より均一性の高いプラズマが生成されることとなる。また、電極面積も広範囲と成るため、効率よく高周波を円筒状基体に印加することができる。
【0042】
原料ガス供給部材212の材質は導電性の金属であれば特に限定は無いが、加工の容易性やコスト等を考慮すれば、アルミニウムやステンレスが好ましい。
また、原料ガス供給部材212の取り付け方法としては円筒状電極202と同電位となるように取り付けられれば特に限定はない。例えば導電性のネジで固定することで、円筒状電極202と同電位になるように取り付けることができる。
【0043】
原料ガス供給部材212の形状に関しては特に制限はないが、円筒状電極202に取り付けられた際に円筒状電極202の内面と同じ面をなす原料ガス供給部材212の面と円筒状電極202の内面との段差が極力少なくなる形状が好ましい。また、円筒状電極202の内面と同じ面をなす原料ガス供給部材212の面(ガス放出孔214側の面)は円筒状電極202の内面と同じ曲率もつ曲面とすることが好ましいが、平面でも問題ない。
【0044】
さらに、円筒状電極202本体から脱着可能な原料ガス供給部材212の構成として、図3(a)に示すような背板302を設け、本体301と分解可能な構成にすることも本発明では有効である。
図3(b)は背板302を外した状態の模式図である。本体301と背板302はOリング303により気密が保持される構造になっている。図3(b)に示すように、背板302を外すことで本体301が開放状態となり、原料ガス供給部内部のガス経路が清掃しやすくなる。ガス経路には成膜中の残渣やエッチング時に取りきれない残渣等が残ってしまう場合があり、こうした残渣が電子写真感光体の画像欠陥の要因となる場合があった。図3(b)に示すように背板302を外してガス経路を直接清掃可能な構成とすることで、より画像欠陥の少ない電子写真感光体を提供することが可能になる。
【0045】
また、原料ガス導入手段の別の実施形態として、図4に示すような構成であっても同様の効果が得られる。
図4は、電子写真感光体の製造装置の一例を模式的に示した縦断面図である。
反応容器401には、反応容器401内に原料ガスを導入するための原料ガス導入手段411が設けられている。また、原料ガス導入手段411は原料ガス供給部材412を有している。
【0046】
原料ガス供給部材412は仕切り板429を有し、仕切り板429により、原料ガス供給部材412を反応容器401の長手方向に仕切ることで、複数の原料ガス供給部413を構成している。原料ガス放出孔414を有する複数の原料ガス供給部413は反応容器401の長手方向に配置されている。
また原料ガス供給部材412は円筒状電極402の一部として構成され、原料ガス供給部材412は円筒状電極402本体から取り外すことが可能(脱着可能)な構造となっている。
【0047】
次に反応容器101内を減圧するための排気手段について説明する。
排気手段は図5に示すように排気口510が反応容器501の側面に設けられた構成とすることが好ましい。
例えば、排気手段は、反応容器501の長手方向に向けて配列された複数の排気口510と、排気口510のそれぞれに接続された排気配管508と、各排気配管508に設けられた排気コンダクタンス調整手段509と、排気装置528によって構成される。排気装置528は排気配管508を介して排気口510に接続されている。
【0048】
このような構成とすることで図1に示すような排気口110が反応容器101の下部に設けられた構成に比べて、反応容器501の長手方向のガスの流れをより均一化できる。よって、より均一性の優れた電子写真感光体を製造することが可能となる。
上記のように排気口510が反応容器501の側面に設けられた構成においては、原料ガス導入手段511を図5(b)に示すように、反応容器501の周方向に複数設置し、反応容器501の周方向の原料ガスの流量を調整できる構成としてもよい。
【0049】
このような構成とすることで反応容器501の長手方向のみならず、反応容器501の周方向のガス流量分布も変更可能となり、好ましい。
反応容器501の周方向の原料ガス供給部513に接続された原料ガス流量調整手段517としては、原料ガス供給部513に供給する原料ガスの流量を調整できるものであれば、どのようなものでも構わない。
【0050】
例えば、図6に示すように反応容器601の周方向に複数設置された原料ガス導入手段611が、それぞれ原料ガス流量調整手段617としてニードルバルブ630とフローメーター631を有する構成としてもよい。
反応容器601の周方向に関しても原料ガスの流量を制御することが可能となると、電子写真感光体の層ごとに、原料ガスの軸方向と周方向の分布を同時に変更させて供給することが可能である。
さらには、意図的に周方向分布をもたせて原料ガスを供給することが可能である。
【0051】
例えば、排気口610が反応容器601の側面に設けられた構成の場合、排気口610に近いところほど堆積速度が遅いため、電子写真感光体の帯電能が低くなってしまう。
上記のように反応容器601の周方向のガス流量分布も変更可能な構成とし、排気口610に近いところに設置された原料ガス供給部材613から供給される原料ガスの流量を増やすことで、堆積速度が向上し、帯電能を改善することが可能である。
【実施例】
【0052】
以下に、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0053】
〔実施例1〕
図1に示す電子写真感光体の製造装置100を用いて、円筒状基体122の表面に表1に示す条件で、図7(a)に示す層構成の電子写真感光体を作製した。作製した電子写真感光体を感光体1とする。
円筒状基体122は、アルミニウムよりなる外径80mm、長さ358mm、肉厚3mmのものを用いた。
【0054】
図7(a)中の701は円筒状基体を示し、702は下部阻止層、703は光導電層、705は表面保護層をそれぞれ示す。
原料ガス供給部材112は、図1(a)に示すように、反応容器101の長手方向に3つの原料ガス供給部113が配置された構成とした。それぞれの原料ガス供給部113は、原料ガス流量調整手段117として、ニードルバルブとフローメーターを有する構成とした。
【0055】
また、原料ガス供給部材112は、図1(b)に示すように反応容器101の周方向に8箇所設置した。
さらに原料ガス放出孔114は、10mm間隔で均等に配置した。
反応容器101の長手方向上から順に原料ガス供給部A,B,Cとし、原料ガス供給部A,B,Cに供給する原料ガスの流量分配比は表3に示すようにした。
【0056】
上記感光体1の作製終了後、表2に示す条件で図7(b)に示す層構成の電子写真感光体を作製した。作製した電子写真感光体を感光体2とする。このとき、円筒状基体122のサイズを変更し、アルミニウムよりなる外径84mm、長さ381mm、肉厚3mmのものを使用した。
図7(b)中の701は円筒状基体を示し、702は下部阻止層、703は光導電層、704は上部阻止層、705は表面保護層をそれぞれ示す。
原料ガス供給部A,B,Cに供給する原料ガスの流量分配比は表4に示すようにした。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
【表3】

【0060】
【表4】

【0061】
〔実施例2〕
図8に示す電子写真感光体の製造装置800を用いたこと以外は実施例1と同様の構成とした。
具体的には反応容器801の長手方向に5つの原料ガス供給部813が配置された構成とした。
上記電子写真感光体の製造装置を用いて、表1に示す条件にて図7(a)に示す層構成の電子写真感光体を作製した。作製した電子写真感光体を感光体3とする。
【0062】
反応容器801の長手方向上から順に原料ガス供給部A,B,C,D,Eとし、原料ガス供給部A〜Eに供給する原料ガスの流量分配比は表5に示すようにした。
上記感光体3の作製終了後、表2に示す条件にて図7(b)に示す層構成の電子写真感光体を作製した。作製した電子写真感光体を感光体4とする。
原料ガス供給部A〜Eに供給する原料ガスの流量分配比は表6に示すようにした。
【0063】
【表5】

【0064】
【表6】

【0065】
〔比較例1〕
図9に示す電子写真感光体の製造装置900を用いて、実施例1と同様にアルミニウムよりなる外径80mm、長さ358mm、肉厚3mmの円筒状基体922の表面に表1に示す条件で、図7(a)に示す層構成の電子写真感光体を作製した。作製した電子写真感光体を感光体5とする。
このとき、反応容器901の原料ガス放出孔914の配置は感光体5に最適化したものを用いた。
【0066】
上記感光体5の作製終了後、実施例1と同様に表2に示す条件で図7(b)に示す層構成の電子写真感光体を作製した。作製した電子写真感光体を感光体6とする。
このとき、円筒状基体のサイズを変更し、アルミニウムよりなる外径84mm、長さ381mm、肉厚3mmのものを使用した。
実施例1、2及び比較例1で得られた電子写真感光体(感光体1〜6)を以下の方法で評価した。
【0067】
表1の条件にて製造した電子写真感光体(感光体1,3,5)を、キヤノン製複写機iRC5870を実験用に改造した改造機に設置し、電子写真感光体の軸方向帯電ムラ、周方向帯電ムラの電子写真特性について評価を行った。
また、表2の条件にて製造した電子写真感光体(感光体2,4,6)は、キヤノン社製iRC6800をマイナス帯電方式に改造した改造機に設置し、同様に電子写真感光体の軸方向帯電ムラ、周方向帯電ムラの電子写真特性について評価を行った。
【0068】
(軸方向帯電ムラ)
電子写真感光体を複写機に設置し、現像位置に表面電位計(TREK社製
Model344)を設置し、均一に帯電されるように調整された帯電器に電流を印加してコロナ帯電を行った。そして、電子写真感光体の中央位置の暗部表面電位が450Vになるように帯電電流を調整した。次に、この帯電電流を保ったまま電子写真感光体の軸方向に表面電位計を移動させ、軸方向の暗部表面電位を測定した。暗部表面電位は周方向の平均値とする。電子写真感光体の中央位置を0位置とし、両側2cm間隔(±2cm,±4cm,±6cm,±8cm,±10cm,±12cm,±14cm,±16cm)で合計17点の測定を行った。そして、得られた各位置の暗部表面電位の最大値と最小値の電位差を軸方向帯電ムラとする。
そして感光体5の軸方向帯電ムラを100%とした相対評価を行い、以下のようにランク付けを行った。
【0069】
【表7】

結果を表9に示す。
【0070】
(周方向帯電ムラ)
電子写真感光体を複写機に設置し、現像位置に表面電位計(TREK社製
Model344)を設置し、均一に帯電されるように調整された帯電器に電流を印加してコロナ帯電を行った。そして、電子写真感光体の中央位置の暗部表面電位が450Vになるように帯電電流を調整した。次に、この帯電電流を保ったまま電子写真感光体の軸方向に表面電位計を移動させ、周方向の暗部表面電位を測定した。電子写真感光体の中央位置を0位置とし、両側2cm間隔(±2cm,±4cm,±6cm,±8cm,±10cm,±12cm,±14cm,±16cm)で合計17点の測定を行った。各位置の周方向36点の測定を行い、得られた周方向の暗部表面電位の最大値と最小値の電位差を算出した。
各位置で算出した値の中から最大値を周方向帯電ムラとする。
そして比較例1の表1の条件にて作製した感光体5の周方向帯電ムラを100%とした相対評価を行い、以下のようにランク付けを行った。
【0071】
【表8】

結果を表9に示す。
【0072】
【表9】

【0073】
本発明の電子写真感光体の製造装置においては、原料ガス流量調整手段により、反応容器の長手方向に配置された原料ガス供給部に供給する原料ガスの流量を調整した。このように調整することで、表9に示すように、異なる種類の電子写真感光体においても特性を損なうことなく製造できることが判明した。
また、原料ガス供給部が反応容器の長手方向に3つ配置された場合(実施例1)と5つ配置された場合(実施例2)では同様の効果が得られることが判明した。
【0074】
比較例1においては、感光体5に最適化された反応容器で感光体5を製造する場合は、良好な帯電ムラの電子写真感光体が得られるが、感光体6での帯電ムラは悪化する。
異なる種類の電子写真感光体においても特性を損なうことなく製造するためには、異なる吹き出し穴配置を有する反応容器を用意し、入れ替える作業が必須となることが分かる。
【0075】
〔実施例3〕
図2に示す電子写真感光体の製造装置200を用いたこと以外は実施例1と同様の構成とした。
具体的には原料ガス供給部材212が原料ガス供給部213ごとに分割されており、個別に円筒状電極202から脱着可能な構成とした。
上記電子写真感光体の製造装置を用いて、表2に示す条件にて図7(b)に示す層構成の電子写真感光体を作製した。作製した電子写真感光体を感光体7とする。
【0076】
反応容器201の長手方向上から順に原料ガス供給部A,B,Cとし、原料ガス供給部A,B,Cに供給する原料ガスの流量分配比は表4に示すようにした。
作製した感光体7は、実施例1と同様に軸方向帯電ムラ、周方向帯電ムラの評価を行った。
結果を表10に示す。表10には比較のため、実施例1の結果も合わせて示す。
【0077】
〔実施例4〕
図4に示す電子写真感光体の製造装置400を用いたこと以外は実施例1と同様にした。
具体的には原料ガス供給部材412を円筒状電極402から脱着可能な構成とし、且つ原料ガス供給部材412が反応容器401の長手方向に複数の原料ガス供給部413に仕切るための仕切り板429を有する構成とした。
【0078】
上記電子写真感光体の製造装置を用いて、表2に示す条件にて図7(b)に示す層構成の電子写真感光体を作製した。作製した電子写真感光体を感光体8とする。
反応容器401の長手方向上から順に原料ガス供給部A,B,Cとし、原料ガス供給部A,B,Cに供給する原料ガスの流量分配比は表4に示すようにした。
作製した感光体8は、実施例1と同様に軸方向帯電ムラ、周方向帯電ムラの評価を行った。
結果を表10に示す。表10には比較のため、実施例1の結果も合わせて示す。
【0079】
【表10】

【0080】
表10に示すように、原料ガス供給部材を円筒状電極から脱着可能な構成とし、原料ガス放出孔の加工精度を向上することで、電子写真感光体の帯電ムラをより改善できることが判明した。
【0081】
〔実施例5〕
図10に示す電子写真感光体の製造装置1000を用いたこと以外は実施例1と同様にした。
具体的には反応容器1001の側面に排気口1010が設けられた構成とした。
上記電子写真感光体の製造装置を用いて、表2に示す条件にて図7(b)に示す層構成の電子写真感光体を作製した。作製した電子写真感光体を感光体9とする。
反応容器1001の長手方向上から順に原料ガス供給部A,B,Cとし、原料ガス供給部A,B,Cに供給する原料ガスの流量分配比は表4に示すようにした。
作製した感光体9は、実施例1と同様に軸方向帯電ムラ、周方向帯電ムラの評価を行った。
結果を表11に示す。表11には比較のため、実施例4の結果も合わせて示す。
【0082】
【表11】

【0083】
表11に示すように反応容器の側面に排気口を設けた構成とすることで、反応容器の長手方向のガスの流れをより均一化でき、電子写真感光体の軸方向帯電ムラを改善できることが判明した。
【0084】
〔実施例6〕
図10に示す電子写真感光体の製造装置1000を用いて、原料ガス導入手段を図6に示すように反応容器601の周方向に7箇所設置した。そして、反応容器601の周方向の原料ガス供給部613が、それぞれ原料ガス流量調整手段617としてニードルバルブ630とフローメーター631を有する構成としたこと以外は実施例1と同様の構成とした。
【0085】
原料ガス供給部613は反応容器601の排気側から時計まわりに原料ガス供給部a,b,c,d,e,f,gとする。
上記電子写真感光体の製造装置1000を用いて、表2に示す条件にて図7(b)に示す層構成の電子写真感光体を作製した。作製した電子写真感光体を感光体10する。
原料ガス供給部a〜gに供給する原料ガスの流量分配比は表13に示すようにした。
作製した感光体10は、実施例1と同様に軸方向帯電ムラ、周方向帯電ムラの評価を行った。
【0086】
また、反応容器1001の長手方向上から順に原料ガス供給部A,B,Cとし、原料ガス供給部A,B,Cに供給する原料ガスの流量分配比は表4に示すようにした。
更に別の評価として、キヤノン社製iRC6800をマイナス帯電方式に改造した改造機に設置し、帯電能について評価を行った。
【0087】
(帯電能)
電子写真感光体を複写機に設置し、現像位置に表面電位計(TREK社製
Model344)を設置し、均一に帯電されるように調整された帯電器の電流値を−1000μAの条件にして、電子写真感光体の暗部表面電位を測定した。暗部表面電位は周方向の平均値とする。電子写真感光体の中央位置を0位置とし、両側2cm間隔(±2cm,±4cm,±6cm,±8cm,±10cm,±12cm,±14cm,±16cm)で合計17点の測定を行い、得られた各位置の暗部表面電位の平均値を帯電能とする。
そして実施例5で作製した感光体9の帯電能を100%とした相対評価を行い、以下のようにランク付けを行った。
【0088】
【表12】

結果を表14に示す。表14には比較のため、実施例5の結果も合わせて示す。
【0089】
【表13】

【0090】
【表14】

【0091】
表14に示すように、反応容器の周方向の原料ガス供給部材に供給する原料ガスの流量を調整できる構成とし、排気口に近いところに設置された原料ガス供給部材から供給される原料ガスの流量を増やすことで帯電能が改善されることが判明した。
【符号の説明】
【0092】
100 電子写真感光体の製造装置
101 反応容器
102 円筒状電極
103 底壁
104 上壁
105 上蓋
106 絶縁碍子
107 絶縁碍子
108 排気配管
110 排気口
111 原料ガス導入手段
112 原料ガス供給部材
113 原料ガス供給部
114 原料ガス放出孔
116 継ぎ手部材
117 原料ガス流量調整手段
118 マッチングボックス
119 高周波電源
120 原料ガス流入バルブ
121 ミキシング装置
122 円筒状基体
123 キャップ
124 基体ホルダ
125 回転台
126 加熱用ヒータ
127 真空計
128 排気装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
減圧可能な反応容器と、
前記反応容器の側壁の少なくとも一部を構成する円筒状電極と、
前記反応容器内に堆積膜形成用の円筒状基体を設置するための基体ホルダと、
前記反応空間内に原料ガスを導入するための原料ガス導入手段と、
前記反応空間を排気する排気手段と、
前記反応空間内に導入された原料ガスを励起させてグロー放電を発生させるための高周波エネルギーを、前記円筒状電極を介して導入する高周波エネルギー導入手段と、
を有する電子写真感光体の製造装置において、
前記原料ガス導入手段は、前記円筒状電極の少なくとも一部を構成する原料ガス供給部材を有し、前記原料ガス供給部材は原料ガス放出孔を設けた複数の原料ガス供給部を有し、それぞれの前記原料ガス供給部は前記反応容器の長手方向に配置されており、
前記原料ガス導入手段はそれぞれの前記原料ガス供給部に供給する原料ガスの流量を調整することにより、前記反応容器の長手方向のガス流量分布を変更可能な原料ガス流量調整手段を有することを特徴とする電子写真感光体の製造装置。
【請求項2】
前記原料ガス供給部材は前記円筒状電極から脱着可能な構成であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真感光体の製造装置。
【請求項3】
前記原料ガス供給部材は前記原料ガス供給部ごとに分割されており、個別に脱着可能とされていることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真感光体の製造装置。
【請求項4】
前記原料ガス供給部は前記原料ガス供給部材を長手方向に複数に仕切ることにより構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電子写真感光体の製造装置。
【請求項5】
前記排気手段は前記反応容器の側壁に、前記反応容器の長手方向に向けて配列された複数の排気口と、排気配管と、前記排気配管に設けられた排気コンダクタンス調整手段とを有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電子写真感光体の製造装置。
【請求項6】
前記原料ガス導入手段は前記反応容器の周方向に複数設置され、且つ前記原料ガス供給部材に供給する原料ガスの流量を調整することにより、前記反応容器の周方向のガス流量分布を変更可能な原料ガス流量調整手段を有することを特徴する請求項5に記載の電子写真感光体の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−33115(P2013−33115A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168786(P2011−168786)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】