説明

電子写真感光体用支持体の製造方法

【課題】本発明の目的は、外形精度に優れた、電子写真感光体用支持体とその製造方法、該電子写真感光体用支持体を用いた電子写真感光体、および該電子写真感光体を搭載した画像形成装置を提供する。
【解決手段】少なくとも押出加工を経て成形されたアルミニウム合金製素管に、切削加工を施し製造される外径70mm以上の円筒状の電子写真感光体用支持体の製造方法において、該アルミニウム合金製素管を、切削加工前に200℃〜550℃で加熱処理することを特徴とする、電子写真感光体用支持体の製造方法、該製造方法により製造された、電子写真感光体用支持体、および該支持体上に感光層を形成してなる電子写真感光体を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真感光体用支持体の製造方法、該製造方法を用いて製造された電子写真感光体用支持体、および該電子写真感光体用支持体を使用した電子写真感光体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ、印刷機などの画像形成装置に使用される電子写真感光体は、アルミニウム合金製の円筒状の支持体上に、感光層を形成することにより製造されている。
画像は、電子写真感光体表面に潜像として形成された後、当該潜像をトナーインク等により現像することにより形成されるため、電子写真感光体表面の面積および形状は、画像形成効率と密接な関係がある。
【0003】
近年の画像形成装置の小型化の要求により、シート状の電子写真感光体や、径が50mm以下の小径の円筒状電子写真感光体が用いられるようになったが、画像形成装置内における現像槽の配置自由度を高める要求や(例えば、特許文献1参照)、電子写真感光体の寿命を長くする要求、電子写真感光体の軸方向の長さを短くするために画像を形成する紙を長手方向に送った場合でも高品質な画像を高速に形成する要求、などがあるため、比較的大径の円筒状電子写真感光体も依然として用いられており、例えば、外径が70mmを超えるような比較的大径の円筒状電子写真感光体も利用されている。
【特許文献1】特開2004−29822公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
円筒状の電子写真感光体では、高品質な画像を形成するためには、より高精度の外形を有する必要があるが、70mm以上の大径の円筒状電子写真感光体を製造するために用いる電子写真感光体用支持体では、その加工の際に加わる力による残留応力などの影響により、高精度の円筒形状とすることが困難で、例えば JIS B 0021 に規定される円筒度や真円度が充分に高くないため、そのような支持体を使用した電子写真感光体を用いて画像を形成すると、画像の濃度ムラ、ドットズレなどの欠陥を起こしやすく、特にフルカラー画像の場合には色ムラや色ズレなどの画像欠陥が発生しやすかった。
【0005】
本発明の目的は、外径70mm以上の円筒状の電子写真感光体用支持体において、真円度や円筒度に代表される形状精度に優れた、電子写真感光体用支持体とその製造方法、該電子写真感光体用支持体を用いた電子写真感光体、および該電子写真感光体を搭載した画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、係る問題点を解決すべく鋭意検討を行ったところ、電子写真感光体用支持体を製造する工程において、切削加工を施す前に特定の加熱処理を行うことにより、飛躍的に外形精度に優れた電子写真感光体用支持体を製造することが可能となることを見出して本発明に到達した。
すなわち、本発明の第一の要旨は、少なくとも押出加工を経て成形されたアルミニウム合金製素管に、切削加工を施し製造される外径70mm以上の円筒状の電子写真感光体用支持体の製造方法において、該アルミニウム合金製素管を、切削加工前に190℃〜550℃で加熱処理することを特徴とする、電子写真感光体用支持体の製造方法にある(請求項1)。
【0007】
また、本発明の第二の要旨は、前記アルミニウム合金製素管が、マンガンを0.5重量%以上2.0重量%以下含有することを特徴とする、請求項1に記載の電子写真感光体用支持体の製造方法にあり(請求項2)、本発明の第三の要旨は、前記加熱処理の継続時間が、2時間以上6時間以下であることを特徴とする、電子写真感光体用支持体の製造方法にあり(請求項3)、本発明の第四の要旨は、前記アルミニウム合金製素管が、引き抜き加工を経て成形されることを特徴とする、電子写真感光体用支持体の製造方法に(請求項4)、本発明の第五の要旨は、前記アルミニウム合金製素管の仮想軸に垂直な面による断面積と、引き抜き加工前の菅の仮想軸に垂直な面による断面積の差が、引き抜き加工前の菅の仮想軸に垂直な面による断面積に対して20%以上であることを特徴とする、電子写真感光体用支持体の製造方法にある(請求項5)。
【0008】
そして、本発明の第六の要旨は、本発明の製造方法により製造された電子写真感光体用支持体にあり(請求項6)、本発明の第七の要旨は、本発明の電子写真感光体用支持体の上に感光層を形成した電子写真感光体にあり(請求項7)、本発明の第八の要旨は、本発明の電子写真感光体を搭載した画像形成装置にある(請求項8)。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、外形精度に優れた大径の電子写真感光体用支持体を提供することが可能となり、当該支持体を用いた高品質な外形精度を有する電子写真感光体を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態につき詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は本発明の実施形態の代表例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変形して実施することができる。
本発明に係る電子写真感光体用支持体は、少なくとも押出加工を経て成形されたアルミニウム合金製素管に、切削加工を施し製造され、その外径は70mm以上である。そして、該アルミニウム合金製素管を、切削加工前に190℃〜550℃で加熱処理することを特徴とする。また、本発明の電子写真感光体は、前記製造方法により製造された電子写真感光体用支持体上に、あるいは電子写真感光体用支持体に陽極酸化被膜または下引き層を形成した上に、感光層が設けられたものである。また、本発明の画像形成装置は前記電子写真感光体が使用されたものである。
【0011】
<材料>
本発明で用いられる支持体は、アルミニウム合金を材料として使用するものであるが、電子写真感光体用支持体として通常使用可能であるアルミニウム合金であれば、どのような材料も使用することができる。また、アルミニウム合金としては、例えばJIS H 4080(1988) で規定される、1000番系のいわゆる純アルミニウム系材料も用いることができる。なかでも、引抜加工や、しごき加工などを施しても傷、破れ、割れ、などの欠陥を発生しにくい上に強度も高いという利点があることから、マンガンを0.5重量%以上2.0重量%以下含有することが好ましい。機械的強度を高めるため、より好ましくはマンガンを0.75重量%以上、特には1.0重量%以上含有するものが好適に用いられ、加工性、耐食性を低下させないため、より好ましくは1.75重量%以下、特には1.5重量%以下含有するものが好適に用いられる。
【0012】
<素管>
本発明で用いられるアルミニウム合金製素管は、押出加工を経て成形されたものであるが、この押出加工には従前知られる如何なる方法も適用することが可能であり、例えば、間接押出法、直接押出法等が挙げられる。直接押出法としては具体的には例えば、熱間でポートホールダイスからアルミニウム合金を押し出して形成する方法が挙げられる。該素管は、押出加工後により円筒状に加工された後、切削加工を経て電子写真感光体用支持体となるが、電子写真感光体用支持体とするにあたって、所定の肉厚、長さ、外径寸法の円筒とするため、引抜加工、切断加工、端部加工等による処理加工等を施すことが好ましい。これら各工程は、従来慣用の技術に従って行うことができる。
【0013】
引抜加工は、内径側にプラグ、外径側にダイと呼ばれる金型を設置し、内径、外径を同時に引き伸ばす形で行われるが、この内側と外側の加工率のバランスが悪いと、残留応力の原因となる。また、切断加工は、素管を所定の長さにそろえるために行われる。押出加工と切削加工だけでは、薄肉で高精度の素管が得られない場合があるため、切削加工前に引抜加工を行うことが特に好ましい。引抜加工は、通常、常温で行われるので、押出加工よりも高精度に加工することができ、加工硬化により機械的強度を高めることもできる。
【0014】
押出加工を経て成型された管を引抜加工した場合の加工程度は、押出管の断面積と引抜管の断面積との差を、押出管の断面積で除した際の百分率として、加工率という。本発明における加工率に特に制限は無いが、加工上の効率の点で45%以下が好ましく、より好ましくは40%以下であって、特には35%以下が好ましい。電子写真感光体用支持体は、外径70mmを越えるような比較的大きな径の場合は、小さな径の支持体に対して、より強度が高く、変形しにくいことが好ましい。引抜管の外径精度を高めたり、引抜管の強度を高めたり、引抜管の引張り伸びを小さくするために、加工率は20%以上が好ましく、より好ましくは22%以上であって、特には25%以上である事が好ましい。
【0015】
<加熱処理>
本発明の製造方法においては、アルミニウム合金製素管を、切削加工前に190℃以上550℃以下の温度で加熱処理する。加熱処理による効果の理由は定かでは無いが、切削加工を施すまでに該素管に加えられ蓄積された残留応力が、切削加工中に一部開放される事により切削加工途中の管を変形させて生じる外形精度低下の影響を防止するものと考えられる。加熱処理の温度は高いほうが効率が良いため、好ましくは210℃以上、より好ましくは230℃以上で処理し、あまり高温になるとアルミニウム合金が軟化して重力の影響を受ける虞があったり、加える熱エネルギーコストが上昇して生産効率が低下したりするため、好ましくは500℃以下、より好ましくは400℃以下で処理する。
加熱処理の時間に特に制限は無いが、生産効率を勘案すれば、2時間以上6時間以下であることが好ましく、特には3時間以上5時間以下であることが好ましい。
【0016】
<支持体の形状>
電子写真感光体を画像形成装置に組み込んだ場合、画像形成のために組み込む必要のある現像機構を単純化できる、現像機構の位置決め精度が高まるなどの理由により、より大きな口径の電子写真感光体が要求される場合がある。このような電子写真感光体に用いられる電子写真感光体用支持体は、より大きな口径の円筒状であるがために、変形しやすく、且つそれを防止する本発明の効果が顕著に現れるため、本発明の製造方法は、通常外径70mm以上、好ましくは外径80mm以上、より好ましくは外径100mm以上、特に好ましくは外径110mm以上の円筒状の電子写真感光体用支持体の製造に適用することが好ましい。
【0017】
端部加工とは、支持体内側を切削してフランジを装着すべき段部(インロー部)を作る加工(インロー加工)あるいは端部の面取り加工等を示す。インロー加工では、装着するフランジの外径及び高さに合わせて、削減すべき肉厚及び奥行きが定められ、インロー部が形成される。このための機械として、両端加工機が用いられ、支持体の外側又は内側をコレットチャックで把持し、支持体または刃物を回転して加工する方法が採られている。また、端部の面取り加工は作業性の向上或いはフランジの取り付けを容易にする等のため、電子写真感光体用支持体の端部を処理する加工である。
【0018】
電子写真感光体用支持体の外面切削加工は、流体軸受けまたは固体軸受けを用い、振動を極力防止した精密旋盤が用いられる。更には、支持体内部に制振材等を設置して、振動を防止することも出来る。これは切削によって形成される円筒状の電子写真感光体用支持体の表面状態が電子写真感光体の形状特性に直接影響するためである。切削加工は、通常、粗切削及び仕上げ切削の2段階で行われる。仕上げ切削により切削表面の状態が決定されるため、精密な切削が要求される。天然ダイヤモンドの単結晶または焼結体のバイトを用い、通常切り込み20〜30μmで行われる。粗切削には、特に仕上げ切削ほどの制限はなく、上述の仕上げ切削が可能な状態を作り出せばよいが、仕上げ切削での切り込み量の変動を小さくしてより高精度な支持体を得るため、最大振れや真円度がより高いほうが好ましい。
【0019】
また、前記の各工程に加えて、前記インロー加工前の支持体の外表面に粗切削加工を施すこともできる。引き抜き加工に供する押し出し素管の断面形状が不均一な場合、または、引き抜き加工における外面と内面の加工率バランスが悪い場合には、引き抜き加工に加えた力は、全部が変形に寄与するわけではなく、一部残留応力として、支持体中に蓄積される。このような支持体をインロー加工に供すると、インロー加工によって残留応力が解放され、インロー加工部の寸法精度が悪くなる。従って、インロー加工の前に予備加工を行うことで、残留応力を除去することができる。
【0020】
電子写真感光体用支持体は、電子写真感光体の外形に直接影響し、且つ電子写真感光体の外形は形成する画像の品質に直接影響するため、より形状精度の高いものが好ましい。円筒体としての形状精度を総合的に判断するには、通常円筒度が用いられる。本発明における円筒度は、以下のようにして定められる。電子写真感光体用支持体を、軸方向を上下にして水平面に置き、両端から25mmの位置での水平断面を基準として、その間に等間隔で3つの水平断面を決め、以上5つの水平断面の最小自乗中心を求めて、中心間を結ぶ直線を仮想軸芯とする。各水平断面における仮想軸芯からの支持体表面位置までの距離を、任意の点を開始点とする等間隔で40点測定し、5つの水平断面の中(合計200点)から、最大値と最小値を求め、その差を円筒度とする。したがって、円筒度の数値が小さいほうが外形精度がよい支持体となる。通常、この円筒度の測定には、精密な垂線から電子写真感光体用支持体表面までの距離を非接触で測定して自動計算する測定器を用いることができ、例えば、株式会社ミツトヨ製の非接触型万能ロール径測定器RA801等により測定する事ができる。
【0021】
<電子写真感光体>
本発明の電子写真感光体は、本発明の製造法により製造された電子写真感光体用支持体の上に感光層を形成して得られる。係る支持体には、陽極酸化被膜または下引き層、あるいはこれらを併用した層を形成してもよい。
陽極酸化被膜は、支持体表面に陽極酸化処理により形成される。陽極酸化処理を施す前に、酸、アルカリ、有機溶剤、界面活性剤、エマルジョン、電解などの各種脱脂洗浄方法により脱脂処理されることが好ましい。陽極酸化被膜は通常の方法、例えば、クロム酸、硫酸、シュウ酸、ホウ酸、スルファミン酸などの酸性浴中で、陽極酸化処理することにより形成されるが、硫酸中での陽極酸化処理が最も良好な結果を与える。硫酸中での陽極酸化処理の場合、硫酸濃度は100〜300g/l、溶存アルミニウム濃度は2〜15g/l、液温は15〜30℃、電解電圧は10〜20V、電流密度は0.5〜2A/dm2の範囲内に設定されるのが好ましいが、これに限られるものではない。このようにして形成された陽極酸化被膜の膜厚としては、通常は20μm以下であり、好ましくは10μm以下、更に好ましくは7μm以下である。
【0022】
下引き層としては、樹脂、樹脂に金属酸化物等の粒子(通常は無機粒子)を分散したものなどが用いられる。下引き層に用いる金属酸化物粒子の例としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の1種の金属元素を含む金属酸化物粒子、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複数の金属元素を含む金属酸化物粒子が挙げられる。これらは一種類の粒子を単独で用いても良いし、複数の種類の粒子を混合して用いても良い。
【0023】
これらの金属酸化物粒子の中で、酸化チタン及び酸化アルミニウムが好ましく、特に酸化チタンが好ましい。酸化チタン粒子は、その表面に、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化珪素等の無機物、又は、ステアリン酸、ポリオール、シリコーン等の有機物による処理を施されていても良い。なお、酸化チタン粒子の結晶型としては、ルチル、アナターゼ、ブルッカイト、アモルファスのいずれも用いることができる。複数の結晶状態のものが含まれていても良い。
【0024】
また、金属酸化物粒子の粒径としては、種々のものが利用できるが、中でも特性及び液の安定性の面から、平均一次粒径として、通常1nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは50nm以下が望ましい。
下引き層は、金属酸化物粒子をバインダー樹脂に分散した形で形成するのが望ましい。下引き層に用いられるバインダー樹脂としては、例えば、フェノキシ、エポキシ、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸、セルロース類、ゼラチン、デンプン、ポリウレタン、ポリイミド、ポリアミド等が挙げられる。中でも、支持体との接着性に優れ、感光層の塗布液に用いられる溶媒に対する溶解性が小さいく、良好な分散性と塗布性とを示すことから、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等が好ましい。なお、下引き層のバインダー樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。さらに、バインダー樹脂は、バインダー樹脂のみで用いるほか、硬化剤とともに硬化した形で使用することもできる。
【0025】
また、バインダー樹脂に対する粒子の使用比率は任意に選べるが、通常10重量%から500重量%の範囲で使用することが、分散液の安定性、塗布性の面で好ましい。
さらに、下引き層の膜厚は、任意に選ぶことができるが、感光体特性及び塗布性から、通常、0.1μmから25μm、好ましくは0.1から10μm、より好ましくは0.2〜5μmである。また下引き層には、公知の酸化防止剤等を含有させても良い。
【0026】
電子写真感光体の感光層は、導電性の支持体上に設けられ、下引き層を有する場合は下引き層上に(即ち、下引き層を介して導電性の支持体上に)設けられる。
感光層の型式としては、通常は、電荷発生物質と電荷輸送物質とが同一層に存在し、バインダー樹脂中に分散又は溶解された型(単層型、又は、分散型)の感光層;電荷発生物質がバインダー樹脂中に分散又は溶解された電荷発生層、及び、電荷輸送物質がバインダー樹脂中に分散又は溶解された電荷輸送層の二つに機能分離された複層構造を有する型(積層型、又は、機能分離型)の感光層が挙げられる。単層型の感光層を有する感光体は、いわゆる単層型感光体であり、積層型の感光層を有する感光体は、いわゆる積層型感光体(又は、機能分離型感光体)であるが、感光層としては、何れの構成のものを用いてもよい。また、感光層上に、帯電性の改善や、耐摩耗性改善を目的としてオーバーコート層(保護層)を設けてもよい。
【0027】
さらに、積層型感光層としては、支持体側から電荷発生層、電荷輸送層をこの順に積層して設ける順積層型感光層と、逆に電荷輸送層、電荷発生層の順に積層して設ける逆積層型感光層とがあり、いずれを採用することも可能である。中でも、最もバランスの取れた光導電性を発揮できる順積層型感光層が好ましい。
感光層が単層構造の場合には、感光材料が結着材料に分散してなる公知のものが使用される。例えば、色素増感されたZnO感光層、CdS感光層、電荷発生物質を電荷移動物質に分散させた感光層が挙げられる。感光層が積層構造の場合には、支持体、好ましくは陽極酸化被膜または下引き層の上に電荷発生層、電荷移動層の順で各層が設けられる。
【0028】
積層型感光層の電荷発生層は、電荷発生物質自体を蒸着などの方法により層形成しても構わないが、電荷発生物質と結着樹脂とを含む層であっても良い。電荷発生物質としては、電子写真感光体に用いられる物質であれば特に限定されるものではなく、具体的にはセレン及びその合金、ヒ素−セレン、硫化カドミウム、酸化亜鉛、その他の無機光導電体、フタロシアニン、アゾ、キナクリドン、多環キノン、ペリレン、インジゴ、ベンズイミダゾールなどの有機顔料を使用することができる。特に銅、塩化インジウム、塩化カリウム、スズ、オキシチタニウム、亜鉛、バナジウムなどの金属、またはその酸化物や塩化物の配位したフタロシアニン類、無金属フタロシアニン類、または、モノアゾ、ビスアゾ、トリスアゾ、ポリアゾ類などのアゾ顔料が好ましい。これらのうち特にアゾ顔料又はフタロシアニン類がより好ましく、特定結晶系を有するオキシチタニウムフタロシアニンが特に好ましい。これは、オキシチタニウムフタロシアニンが通常の顔料より熱による結晶変換が起きやすいためである。
【0029】
このようなオキシチタニウムフタロシアニンは、CuKα線によるX線回折においてブラッグ角(2θ±0.2)27.3゜に最大回折ピークを示すものがあげられる。この結晶型オキシチタニウムフタロシアニンは、一般にはY型あるいはD型と呼ばれているものであり、例えば特開昭62−67094号公報の第2図(同公報ではII型と称されている)、特開平2−8256号公報の第1図、特開昭64−82045号公報の第1図、電子写真学会誌第92巻(1990年発行)第3号第250〜258頁(同刊行物ではY型と称されている)に示されたものである。この結晶型オキシチタニウムフタロシアニンは、27.3°に最大回折ピークを示すことが特徴であるが、これ以外に通常7.4゜、9.7゜、24.2゜にピークを示す。
【0030】
回折ピークの強度は、結晶性、試料の配向性および測定法により変化する場合もあるが、粉末結晶のX線回折を行う場合に通常用いられるブラッグ−ブレンターノの集中法による測定では、上記の結晶型オキシチタニウムフタロシアニンは27.3°に最大回折ピークを有する。また、薄膜光学系(一般に薄膜法或いは平行法とも呼ばれる)により測定された場合には、試料の状態によっては27.3°が最大回折ピークとならない場合があるが、これは結晶粉末が特定の方向に配向しているためと考えられる。
【0031】
分散媒としては、電子写真感光体の製造工程で用いられるものであれば特に限定されるものではなく種々の溶媒を用いてよい。例えば、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類を単独あるいは2種以上混合して使用することができる。
【0032】
用いる分散媒の量は分散が充分行え、且つ分散液中に有効量の電荷発生物質が含まれる限りいかなる量でもよく、通常は分散時の分散液中の電荷発生物質の濃度にして3〜20wt%、より好ましくは4〜20wt%程度が好ましい。
結着樹脂としては、電子写真感光体に使用されるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエステルカーボネート、ポリスルホン、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル等のビニル重合体、及びその共重合体、フェノキシ、エポキシ、シリコーン樹脂等またこれらの部分的架橋硬化物等を単独あるいは2種以上用いることができる。
【0033】
結着樹脂と電荷発生物質との混合方法としては例えば、電荷発生物質を分散処理工程に結着樹脂を粉末のまま或いはそのポリマー溶液を加え同時に分散する方法、分散処理工程で得られた分散液を結着樹脂のポリマー溶液中に混合する方法、或いは逆に分散液中にポリマー溶液を混合する方法等のいずれかの方法を用いてもかまわない。
次にここで得られた分散液は、塗布をするのに適した液物性にするために、種々の溶剤を用いて希釈してもかまわない。このような溶剤としては、例えば前記分散媒として例示した溶媒を使用することができる。電荷発生物質と結着樹脂との割合は特に制限はないが一般には樹脂100重量部に対して電荷発生物質が5〜500重量部の範囲より使用される。また必要に応じて電荷輸送物質を含むことができる。電荷輸送物質としては例えば、2,4,7−トリニトロフルオレノン、テトラシアノキシジメタンなどの電子求引性物質、セルバゾール、インドール、イミダゾール、オキサゾール、ピラゾール、オキサジアゾール、ピラゾリン、チアジアゾールなどの複素環化合物、アニリン誘導体、ヒドラゾン化合物、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、或いはこれらの化合物からなる基を主鎖もしくは側鎖に有する重合体などの電子供与性物質が挙げられる。電荷輸送物質と結着樹脂との割合は結着樹脂100重量に対して電荷輸送物質が5〜500重量部の範囲により使用される。
【0034】
この様にして調製された分散液を用いて、支持体上に電荷発生層を形成させ、その上に電荷輸送層を積層させて感光層を形成する、或いは支持体上に電荷輸送層を形成しその上に前記分散液を用いて電荷発生層を形成し感光層を形成する、或いは支持体上に前記分散液を用いて電荷発生層を形成させ感光層とする、のいずれかの構造で感光層を形成することが出来る。電荷発生層の膜厚は電荷輸送層と積層させて感光層を形成する場合0.1μm〜10μmの範囲が好適であり電荷輸送層の膜厚は10〜40μmが好適である。電荷発生層のみの単層構造で感光層を形成する場合の電荷発生層の膜厚は5〜40μmの範囲が好適である。
【0035】
積層型感光層の電荷輸送層は、電荷輸送物質、バインダー樹脂、及び、必要に応じて使用されるその他の成分を含有する。このような電荷輸送層は、具体的には、例えば電荷輸送物質等とバインダー樹脂とを溶剤に溶解又は分散して塗布液を作製し、これを順積層型感光層の場合には電荷発生層上に、また、逆積層型感光層の場合には支持体上に(下引き層を設ける場合は下引き層上に)塗布、乾燥して得ることができる。
【0036】
電荷輸送物質としては特に限定されず、任意の物質を用いることが可能である。電荷輸送物質の例としては、2,4,7−トリニトロフルオレノン等の芳香族ニトロ化合物、テトラシアノキノジメタン等のシアノ化合物、ジフェノキノン等のキノン化合物等の電子吸引性物質、カルバゾール誘導体、インドール誘導体、イミダゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ベンゾフラン誘導体等の複素環化合物、アニリン誘導体、ヒドラゾン誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体及びこれらの化合物の複数種が結合したもの、あるいはこれらの化合物からなる基を主鎖又は側鎖に有する重合体等の電子供与性物質等が挙げられる。これらの中でも、カルバゾール誘導体、ヒドラゾン誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体、及びこれらの化合物の複数種が結合したものが好ましい。これらの電荷輸送物質は、何れか1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
【0037】
また、電荷輸送層に用いるバインダー樹脂としては、電子写真感光体の電荷輸送層に用いることが可能であることが知られているバインダー樹脂であれば、どのような樹脂でも使用することが可能である。なお、複数の樹脂を併用しても良い。さらに、電荷輸送層は、単一の層から成っていても良いし、構成成分あるいは組成比の異なる複数の層を重ねたものでも良い。感光層には、必要に応じて電子写真感光体に用いられる酸化防止剤、増感剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。電荷輸送層の膜厚は特に制限されないが、長寿命、画像安定性の観点、更には高解像度の観点から、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、また、通常50μm以下、好ましくは45μm以下、更には30μm以下の範囲とする。
【0038】
本発明において、前記の各層を形成するための塗布操作は、従来公知の塗布方法に従う。例えば、ディッピング法、スプレーコーティング法、スピンナーコーティング法、ブレードコーティング法等を採用して行うことができる。
【0039】
<画像形成装置>
本発明の電子写真感光体を用いた画像形成装置(本発明の画像形成装置)の実施の形態について、説明するが、実施の形態は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意に変形して実施することができる。
本発明の電子写真感光体を用いた画像形成装置としては、プリンター、複写機、ファクシミリ等が挙げられる。この画像形成装置には、帯電装置、現像装置、定着装置、電子写真感光体、光学ユニット、露光装置、ホッパー、スタッカー、記録媒体(用紙)を搬送する搬送路が設けられている。
ホッパーは、記録媒体(用紙)を搬送路に提供するものである。スタッカーは、記録済みの媒体(印刷済み用紙)を積み重ねて保存するものである。搬送路は、記録媒体(用紙)を搬送するものである。定着装置は、電子写真感光体から記録媒体(用紙)に転写された画像を定着するものである。
【0040】
現像装置は、電子写真感光体に形成された静電潜像に現像剤を与えて現像を行うものである。電子写真感光体は、得ようとする画像に応じた静電潜像を作成後、現像装置で現像された画像を記録媒体(用紙)に転写するものである。露光装置は、各画像データ(情報)により変調されたレーザー光で電子写真感光体上を走査して静電潜像を形成するものである。
【0041】
更に、装置の要部構成を示す図1を用いて詳細に説明する。
図1に示すように、画像形成装置は、電子写真感光体1、帯電装置(帯電手段)2、露光装置(露光手段;像露光手段)3及び現像装置(現像手段)4を備えて構成され、更に、必要に応じて転写装置(転写手段)5、クリーニング装置(クリーニング手段)6及び定着装置(定着手段)7が設けられる。
【0042】
電子写真感光体1は、上述した電子写真感光体であれば特に制限はないが、図1ではその一例として、円筒状の支持体の表面に上述した感光層を形成したドラム状の感光体を示している。この電子写真感光体1の外周面に沿って、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5及びクリーニング装置6がそれぞれ配置されている。
帯電装置2は、電子写真感光体1を帯電させるもので、電子写真感光体1の表面を所定電位に均一帯電させる。図1では帯電装置2の一例としてローラ型の帯電装置(帯電ローラ)を示しているが、他にもコロトロンやスコロトロン等のコロナ帯電装置、帯電ブラシ等の接触型帯電装置などがよく用いられる。
【0043】
なお、電子写真感光体1及び帯電装置2は、多くの場合、この両方を備えたカートリッジ(以下適宜、感光体カートリッジという)として、画像形成装置の本体から取り外し可能に設計されている。そして、例えば電子写真感光体1や帯電装置2が劣化した場合に、この感光体カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい感光体カートリッジを画像形成装置本体に装着することができるようになっている。また、後述するトナーについても、多くの場合、トナーカートリッジ中に蓄えられて、画像形成装置本体から取り外し可能に設計され、使用しているトナーカートリッジ中のトナーが無くなった場合に、このトナーカートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しいトナーカートリッジを装着することができるようになっている。更に、電子写真感光体1、帯電装置2、トナーが全て備えられたカートリッジを用いることもある。
【0044】
露光装置3は、電子写真感光体1に対し露光(像露光)を行って電子写真感光体1の感光面に静電潜像を形成することができるものであれば、その種類に特に制限はない。具体例としては、ハロゲンランプ、蛍光灯、半導体レーザーやHe−Neレーザー等のレーザー、LED(発光ダイオード)などが挙げられる。また、感光体内部露光方式によって露光を行うようにしてもよい。露光を行う際の光は任意であるが、例えば、波長が700nm〜850nmの単色光、波長600nm〜700nmのやや短波長寄りの単色光、波長300nm〜500nmの短波長の単色光などで露光を行えばよい。
【0045】
特に、電荷発生物質としてフタロシアニン化合物を使用する電子写真感光体の場合には、波長700nm〜850nmの単色光を用いることが好ましく、アゾ化合物を用いる電子写真感光体の場合には、白色光又は波長700nm以下の単色光を用いることが好ましい。
現像装置4は、その種類に特に制限はなく、カスケード現像、一成分導電トナー現像、二成分磁気ブラシ現像などの乾式現像方式や、湿式現像方式などの任意の装置を用いることができる。図1では、現像装置4は、現像槽41、アジテータ42、供給ローラ43、現像ローラ44、及び、規制部材45からなり、現像槽41の内部にトナーTを貯留している構成となっている。また、必要に応じ、トナーTを補給する補給装置(図示せず)を現像装置4に付帯させてもよい。この補給装置は、ボトル、カートリッジなどの容器からトナーTを補給することが可能に構成される。
【0046】
供給ローラ43は、導電性スポンジ等から形成される。現像ローラ44は、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケルなどの金属ロール、又はこうした金属ロールにシリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂などを被覆した樹脂ロールなどからなる。この現像ローラ44の表面には、必要に応じて、平滑加工や粗面加工を加えてもよい。
現像ローラ44は、電子写真感光体1と供給ローラ43との間に配置され、電子写真感光体1及び供給ローラ43に各々当接している。供給ローラ43及び現像ローラ44は、回転駆動機構(図示せず)によって回転される。供給ローラ43は、貯留されているトナーTを担持して、現像ローラ44に供給する。現像ローラ44は、供給ローラ43によって供給されるトナーTを担持して、電子写真感光体1の表面に接触させる。
【0047】
規制部材45は、シリコーン樹脂やウレタン樹脂などの樹脂ブレード、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、真鍮、リン青銅などの金属ブレード、又はこうした金属ブレードに樹脂を被覆したブレード等により形成されている。この規制部材45は、現像ローラ44に当接し、ばね等によって現像ローラ44側に所定の力で押圧(一般的なブレード線圧は5〜500g重/cm)される。必要に応じて、この規制部材45に、トナーTとの摩擦帯電によりトナーTに帯電を付与する機能を具備させてもよい。
【0048】
アジテータ42は、回転駆動機構によってそれぞれ回転されており、トナーTを攪拌するとともに、トナーTを供給ローラ43側に搬送する。アジテータ42は、羽根形状、大きさ等を違えて複数設けてもよい。
トナーTの種類は任意であり、粉状トナーのほか、懸濁重合法や乳化重合法などを用いた重合トナー等を用いることができる。特に、重合トナーを用いる場合には径が4〜8μm程度の小粒径のものが好ましく、また、トナーの粒子の形状も球形に近いものからポテト上の球形から外れたものまで様々に使用することができる。重合トナーは、帯電均一性、転写性に優れ、高画質化に好適に用いられる。
【0049】
転写装置5は、その種類に特に制限はなく、コロナ転写、ローラ転写、ベルト転写などの静電転写法、圧力転写法、粘着転写法など、任意の方式を用いた装置を使用することができる。ここでは、転写装置5が電子写真感光体1に対向して配置された転写チャージャー,転写ローラ,転写ベルト等から構成されるものとする。この転写装置5は、トナーTの帯電電位とは逆極性で所定電圧値(転写電圧)を印加し、電子写真感光体1に形成されたトナー像を記録紙(用紙,媒体,被転写体)Pに転写するものである。
【0050】
クリーニング装置6について特に制限はなく、ブラシクリーナー、磁気ブラシクリーナー、静電ブラシクリーナー、磁気ローラクリーナー、ブレードクリーナーなど、任意のクリーニング装置を用いることができる。クリーニング装置6は、感光体1に付着している残留トナーをクリーニング部材で掻き落とし、残留トナーを回収するものである。但し、感光体表面に残留するトナーが少ないか、殆ど無い場合には、クリーニング装置6は無くても構わない。
【0051】
定着装置7は、上部定着部材(加圧ローラ)71及び下部定着部材(定着ローラ)72から構成され、定着部材71又は72の内部には加熱装置73が備えられている。なお、図1では、上部定着部材71の内部に加熱装置73が備えられた例を示す。上部及び下部の各定着部材71,72は、ステンレス、アルミニウムなどの金属素管にシリコンゴムを被覆した定着ロール、更にテフロン(登録商標)樹脂で被覆した定着ロール、定着シートなどが公知の熱定着部材を使用することができる。更に、各定着部材71,72は、離型性を向上させる為にシリコーンオイル等の離型剤を供給する構成としてもよく、バネ等により互いに強制的に圧力を加える構成としてもよい。
【0052】
記録紙P上に転写されたトナーは、所定温度に加熱された上部定着部材71と下部定着部材72との間を通過する際、トナーが溶融状態まで熱加熱され、通過後冷却されて記録紙P上にトナーが定着される。
なお、定着装置についてもその種類に特に限定はなく、ここで用いたものをはじめ、熱ローラ定着、フラッシュ定着、オーブン定着、圧力定着など、任意の方式による定着装置を設けることができる。
【0053】
以上のように構成された電子写真装置では、次のようにして画像の記録が行なわれる。即ち、まず感光体1の表面(感光面)が、帯電装置2によって所定の電位(例えば−600V)に帯電される。この際、直流電圧により帯電させても良く、直流電圧に交流電圧を重畳させて帯電させてもよい。
続いて、帯電された感光体1の感光面を、記録すべき画像に応じて露光装置3により露光し、感光面に静電潜像を形成する。そして、その感光体1の感光面に形成された静電潜像の現像を、現像装置4で行なう。
【0054】
現像装置4は、供給ローラ43により供給されるトナーTを、規制部材(現像ブレード)45により薄層化するとともに、所定の極性(ここでは感光体1の帯電電位と同極性であり、負極性)に摩擦帯電させ、現像ローラ44に担持しながら搬送して、感光体1の表面に接触させる。
現像ローラ44に担持された帯電トナーTが感光体1の表面に接触すると、静電潜像に対応するトナー像が感光体1の感光面に形成される。そしてこのトナー像は、転写装置5によって記録紙Pに転写される。この後、転写されずに感光体1の感光面に残留しているトナーが、クリーニング装置6で除去される。
【0055】
トナー像の記録紙P上への転写後、定着装置7を通過させてトナー像を記録紙P上へ熱定着することで、最終的な画像が得られる。
なお、画像形成装置は、上述した構成に加え、例えば除電工程を行うことができる構成としても良い。除電工程は、電子写真感光体に露光を行うことで電子写真感光体の除電を行う工程であり、除電装置としては、蛍光灯、LED等が使用される。また除電工程で用いる光は、強度としては露光光の3倍以上の露光エネルギーを有する光である場合が多い。
【0056】
また、画像形成装置は更に変形して構成してもよく、例えば、前露光工程、補助帯電工程などの工程を行うことができる構成としたり、オフセット印刷を行う構成としたり、複数種のトナーを搭載するフルカラー画像形成装置としてもよい。フルカラー画像形成装置としては、一つの電子写真感光体を用いて各色の画像を形成し、それらを重ね合わせて画像形成を行なう単一感光体方式の構成であってもよいし、各色毎に専用の、複数の電子写真感光体を搭載する、フルカラータンデム方式に代表されるような複数感光体方式の構成としてもよい。
【0057】
フルカラー画像形成を行う場合には、上述した画像形成プロセスを各色毎に行いカラー画像を得る。フルカラー画像形成を行う場合には、電子写真感光体上に付着したトナー等の現像剤を、一旦一つの中間転写ベルトに転写し、中間転写ベルト状で各色のトナーを合わせ、カラー可視像とした後、転写手段を用いて記録媒体(用紙)にカラー画像を形成するものであってもよい。
【0058】
本発明の電子写真感光体は、外径70mm以上の円筒状支持体上に感光層を形成してなるものであり、その外形の大きさから、電子写真感光体周辺の空間が広く、種々の装置を配設する自由度が高くなる利点がある。したがって、一つの電子写真感光体を用いて画像形成を行なう単一感光体方式のフルカラー画像形成装置とするのが好ましい。
なお、感光体1は、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5、クリーニング装置6、及び定着装置7のうち1つ又は2つ以上と組み合わせて、一体型のカートリッジ(電子写真感光体カートリッジ)として構成し、この電子写真感光体カートリッジを複写機やレーザービームプリンター等の電子写真装置本体に対して着脱可能な構成にしてもよい。例えば、帯電装置2、露光装置3、現像装置4及び転写装置5の内、少なくとも1つを感光体1と共に一体に支持してカートリッジとすることが出来る。この場合も、上記実施形態で説明したカートリッジと同様に、例えば電子写真感光体1やその他の部材が劣化した場合に、この電子写真感光体カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい電子写真感光体カートリッジを画像形成装置本体に装着することにより、画像形成装置の保守・管理が容易となる。
【実施例】
【0059】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例)
・素管
JIS呼称3003合金からなる、ポートホール法により押出成形された、外径129.8mm、肉厚3.92mmの押出管を引き抜き加工し、外径121mm、長さ268mm、肉厚3mmの素管を作製した。押出管の仮想軸に垂直な面による断面積は、1550mm 素管の仮想軸に垂直な面による断面積は、1112mm となるので、この素管の仮想軸に垂直な面による断面積と、引き抜き加工前の菅の仮想軸に垂直な面による断面積の差は、引き抜き加工前の菅の仮想軸に垂直な面による断面積に対して28.3%となる。
【0060】
・熱処理
上記引き抜き加工を施した素管を250℃に設定した電気炉に入れ、4時間加熱処理を行った。熱処理後、加熱を停止して炉を自然冷却し、炉内温度が30℃以下になった後に、加熱処理後の管を取り出した。
【0061】
・切削
切削加工に切削油(日石三菱(株)製、メタルワークED、蒸留終点温度:249℃)を使用し、天然ダイヤモンドの焼結体の平バイトを用い、切り込み量を30μm、切削送り速度を200μm/rev.にて表面切削加工を行い、更に端部加工を施して、外径120mm、長さ266mm、肉厚2.5mmの電子写真感光体用支持体を作製した。
【0062】
・支持体の円筒度
得られた支持体の円筒度を、株式会社ミツトヨ製の非接触型万能ロール径測定器RA801により測定したところ、16μmであった。
【0063】
(実施例2)
押出管として肉厚3.71mm(押出管の仮想軸に垂直な面による断面積は、1467mm、断面積の差は24.8%)の管を用いた以外は、実施例1と同様にして支持体を作製した。得られた支持体の円筒度を、実施例1の場合と同様にして測定したところ、15μmであった。
【0064】
(実施例3)
押出管として肉厚3.42mm(押出管の仮想軸に垂直な面による断面積は、1356mm、断面積の差は18.0%)の管を用いた以外は、実施例1と同様にして支持体を作製した。得られた支持体の円筒度を、実施例1の場合と同様にして測定したところ、14μmであった。
【0065】
(比較例1)
熱処理の際の炉の温度を180℃に設定して、2.5時間加熱処理を行った以外は、実施例1と同様にして支持体を作製した。得られた支持体の円筒度を、実施例1の場合と同様にして測定したところ、38μmであった。
【0066】
(比較例2)
熱処理の際の炉の温度を180℃に設定して、2.5時間加熱処理を行った以外は、実施例2と同様にして支持体を作製した。得られた支持体の円筒度を、実施例1の場合と同様にして測定したところ、32μmであった。
【0067】
(比較例3)
熱処理の際の炉の温度を180℃に設定して、2.5時間加熱処理を行った以外は、実施例3と同様にして支持体を作製した。得られた支持体の円筒度を、実施例1の場合と同様にして測定したところ、29μmであった。
【0068】
実施例1〜3および比較例1〜3で作製した支持体の円筒度を、表1にまとめて示す。
【0069】
【表1】

【0070】
(実施例4)
熱処理の際の炉の温度を360℃に設定して、2時間加熱処理を行った以外は、実施例1と同様にして支持体を作製した。得られた支持体の円筒度を、実施例1の場合と同様にして測定したところ、15μmであった。
【0071】
(比較例4)
熱処理の際の炉の温度を180℃に設定して、5時間加熱処理を行った以外は、実施例1と同様にして支持体を作製した。得られた支持体の円筒度を、実施例1の場合と同様にして測定したところ、29μmであった。
実施例1,4、および比較例1,4で作製した支持体の円筒度を、表2にまとめて示す。
【0072】
【表2】

【0073】
(実施例5)
・下引き層用塗布液
下引き層用塗布液は、次のようにして製造した。即ち、平均一次粒子径40nmのルチル型酸化チタン(石原産業社製「TTO55N」)と、該酸化チタンに対して3重量%のメチルジメトキシシラン(東芝シリコーン社製「TSL8117」)とを、高速流動式混合混練機((株)カワタ社製「SMG300」)に投入し、回転周速34.5m/秒で高速混合して得られた表面処理酸化チタンを、メタノール/1−プロパノールの重量比が7/3の混合溶媒中でボールミルにより分散させることにより、疎水化処理酸化チタンの分散スラリーとした。該分散スラリーと、メタノール/1−プロパノール/トルエンの混合溶媒、及び、特開平4−31870号公報の実施例に記載された、ε−カプロラクタム[下記式(A)で表わされる化合物]/ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン[下記式(B)で表わされる化合物]/ヘキサメチレンジアミン[下記式(C)で表わされる化合物]/デカメチレンジカルボン酸[下記式(D)で表わされる化合物]/オクタデカメチレンジカルボン酸[下記式(E)で表わされる化合物]の組成モル比率が、60%/15%/5%/15%/5%からなる共重合ポリアミドのペレットとを加熱しながら撹拌、混合してポリアミドペレットを溶解させた後、超音波分散処理を行なうことにより、メタノール/1−プロパノール/トルエンの重量比が7/1/2で、疎水性処理酸化チタン/共重合ポリアミドを重量比3/1で含有する、固形分濃度18.0%の下引き層用塗布液とした。
【0074】
【化1】

【0075】
・電荷発生層用塗布液
CuKα特性X線によるX線回折において、ブラッグ角(2θ±0.2)9.3゜,10.6゜,13.2゜,20.8゜,23.3゜,26.3゜に強い回折ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニン10重量部と、4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノン150重量部とを混合し、サンドグラインドミルで4時間粉砕して微粒化分散処理を行った。続いてこの微粒化分散処理液に、ポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名デンカブチラール#6000C)の5重量%1,2−ジメトキシエタン溶液を100重量部混合し、更に、適量の1,2−ジメトキシエタンを混合して、固形分濃度3.5重量%の電荷発生物質分散液Aを製造した。
【0076】
次に、CuKα特性X線によるX線回折において、ブラッグ角(2θ±0.2)9.6°,27.2゜に強い回折ピークを示すオキシチタニウムフタロシアニン10重量部と、1,2−ジメトキシエタン140重量部とを混合し、サンドグラインドミルで2時間粉砕して微粒化分散処理を行なった。続いてこの微粒化分散処理液と、10重量部のポリビニルブチラール(電気化学工業(株)製、商品名「デンカブチラール」#6000C)、487重量部の1,2−ジメトキシエタン、85重量部の4−メトキシ−4−メチル−2−ペンタノンを混合して、固形分濃度3.5重量%の電荷発生物質分散液Bを製造した。
得られた電荷発生物質分散液Aと、電荷発生物質分散液Bとを、重量比1:4で混合した後に、超音波分散処理を施し電荷発生層用塗布液を製造した。
【0077】
・電荷輸送層塗布液
下記式(1)で表される化合物57重量部、下記式(2)で表される化合物3重量部、下記式(3)で表される化合物1.5重量部、下記式(4)で表される化合物8重量部、下記式(5)で表される化合物1重量部、シリコーンオイル0.03重量部、および下記式(6)で表されるポリカーボネート樹脂(粘度平均分子量30,200)100重量部を、テトラヒドロフランとトルエンの混合溶媒(テトラヒドロフラン80重量%、トルエン20重量%)640重量部に混合し、電荷輸送層形成用塗布液を製造した。
【0078】
【化2】

【0079】
【化3】

【0080】
【化4】

【0081】
【化5】

【0082】
【化6】

【0083】
【化7】

【0084】
実施例1で作製した電子写真感光体用支持体の上に、前記下引き層用塗布液を、乾燥後の膜厚が1.25μmとなるように浸漬塗布して下引き層を形成し、該下引き層上に、前記電荷発生層用塗布液を、乾燥後の膜厚が0.4μmとなるように浸漬塗布して電荷発生層を形成した。更に、該電荷発生層上に、前記電荷輸送層用塗布液を、乾燥後の膜厚が21μmになるように浸漬塗布して、積層型の電子写真感光体Aを作製した。
【0085】
(比較例5)
電子写真感光体用支持体として、比較例1で作製した電子写真感光体用支持体を用いた以外は、実施例5と同様にして、電子写真感光体Bを製造した。
【0086】
(比較例6)
電子写真感光体用支持体として、比較例4で作製した電子写真感光体用支持体を用いた以外は、実施例5と同様にして、電子写真感光体Cを製造した。
得られた電子写真感光体A,B、Cを、三星電子(株)製のフルカラー画像形成装置CLP−500に搭載し、フルカラー画像を形成し、形成した画像の色ズレ程度を目視により評価した。結果を下記表3に示す。
【0087】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0088】
プリンター、ファクシミリ、複写機等の電子写真装置に適用可能で、高感度、低残留電位で高性能な電子写真感光体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の画像形成装置の一実施態様の要部構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0090】
1 感光体(電子写真感光体)
2 帯電装置(帯電ローラ;帯電部)
3 露光装置(露光部)
4 現像装置(現像部)
5 転写装置
6 クリーニング装置(クリーニング部)
7 定着装置
41 現像槽
42 アジテータ
43 供給ローラ
44 現像ローラ
45 規制部材
71 上部定着部材(加圧ローラ)
72 下部定着部材(定着ローラ)
73 加熱装置
T トナー
P 記録紙(用紙、媒体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも押出加工を経て成形されたアルミニウム合金製素管に、切削加工を施し製造される外径70mm以上の円筒状の電子写真感光体用支持体の製造方法において、該アルミニウム合金製素管を、切削加工前に190℃〜550℃で加熱処理することを特徴とする、電子写真感光体用支持体の製造方法。
【請求項2】
前記アルミニウム合金製素管が、マンガンを0.5重量%以上2.0重量%以下含有することを特徴とする、請求項1に記載の電子写真感光体用支持体の製造方法。
【請求項3】
前記加熱処理の継続時間が、2時間以上6時間以下であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の電子写真感光体用支持体の製造方法。
【請求項4】
前記アルミニウム合金製素管が、引き抜き加工を経て成形されることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の電子写真感光体用支持体の製造方法。
【請求項5】
前記アルミニウム合金製素管の仮想軸に垂直な面による断面積と、引き抜き加工前の菅の仮想軸に垂直な面による断面積の差が、引き抜き加工前の菅の仮想軸に垂直な面による断面積に対して20%以上であることを特徴とする、請求項4に記載の電子写真感光体用支持体の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の製造方法により製造された、電子写真感光体用支持体。
【請求項7】
請求項6に記載の電子写真感光体用支持体上に、感光層を形成してなる電子写真感光体。
【請求項8】
請求項7に記載の電子写真感光体を搭載した画像形成装置。

【図1】
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