説明

電子写真捺染方法

【課題】画像濃度が高く、高解像の画像が得られる捺染用電子写真液体トナー及びその捺染方法を提供することであり、特に、転写性が良好で、高解像の画像が得られる捺染用電子写真液体現像剤及びその捺染方法を提供することであり、また、捺染の作業性を大幅に効率化し、オンデマンド性を持たせた、ムダのない捺染方法を提供すること。
【解決手段】体積抵抗10〜1016Ω・cmの担体液中に、着色剤、樹脂を分散させた液体トナーを電子写真方式により、捺染布に直接捺染する捺染方法において、揮発分量が0.1〜200mg/mである転写布を用いることを特徴とする電子写真捺染方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式による捺染用液体トナー及び捺染方法に関する。
【背景技術】
【0002】
捺染法は、糸、編織物、二次製品等色々な形態の繊維品に適用され、版形式及び機械操作によって凹版を用いるローラ捺染、孔版によるスクリーン、型紙捺染が主流である。スクリーン捺染には手工捺染、半自動スクリーン捺染機、自動走行スクリーン捺染機による捺染、フラット型及びロータリー式自動スクリーン捺染機による捺染などがある。しかし、ローラ捺染は、金属ローラに図柄を彫刻する工程が煩雑でローラの取り扱い等も大変であり、スクリーン捺染は、スクリーンの製造に時間がかかり、捺染作業に手間がかかる等の問題があった。また、ロータリー式スクリーン捺染もスクリーンの製作、ローラの彫刻等に時間がかかる等の問題があった。このように従来からの捺染法はその製作工程が煩雑で、出来上がりまで長期間費やされるため、簡便な捺染法が望まれていた。
【0003】
近年、従来の彫刻製版工程を省略し、短期間で製作が可能なインクジェットを用いた捺染方法(特許文献1,2)が提案されている。しかし、インクジェットによる捺染方式は、濃度を上げることができない、捺染していくうちに濃度が変化してしまう等の欠点があった。
【0004】
これらの問題を解決するため、電子写真方式を用いた捺染方法が最近開発(特許文献3,4)されている。この方法は、感光体上に静電潜像を形成し、トナーを付着させ、これを布類に転写し、熱によりトナーを定着させるものである。しかし、この特許文献3,4の電子写真方式による捺染方法は乾式トナーを用いたものであり、トナー層厚が厚いため、肌触りが良くない、樹脂により物理的に繊維に付着させているため、摩擦堅牢度、耐洗濯特性が劣る等の問題があった。
【0005】
液体トナーを用いた電子写真方式による捺染法は、特許文献5,6記載のもの等が考案されている。これは、昇華染料を用いた液体トナーで、イオン流により現像し、図柄を転写物に印刷し、これを布類に重ね合せ昇華熱転写するものである。この方法は、肌触り等も自然で、簡便な方法であるが、カラーの場合、2色目に重ねた濃度が出にくい、耐洗濯性に劣る等の欠点があった。また、布の裏面までトナーが染込まず、両面捺染する必要があった。加えて作業が煩雑で、布に転写後、不要になった紙(転写物)がムダになるなどの問題があった。
【0006】
液体トナーを用いて電子写真により直接捺染する方法はこれらの問題点はないものの、布の表面性や材質などにより転写性が不十分であった。このため、特許文献7,8で転写時の溶媒量最適化や布の平滑化処理方法が考案されているが、更に転写性向上が必要であった。
【0007】
【特許文献1】特開平10−195776号公報
【特許文献2】特許第2995135号公報
【特許文献3】特開平5−027474号公報
【特許文献4】特開平5−033275号公報
【特許文献5】特開平9−73198号公報
【特許文献6】特開平10−239916号公報
【特許文献7】特開2005−195636号公報
【特許文献8】特開2006−47483号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、画像濃度が高く、高解像の画像が得られる捺染用電子写真液体トナー及びその捺染方法を提供することである。
特に、転写性が良好で、高解像の画像が得られる捺染用電子写真液体現像剤及びその捺染方法を提供することである。
また、捺染の作業性を大幅に効率化し、オンデマンド性を持たせた、ムダのない捺染方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、本発明の(1)「体積抵抗10〜1016Ω・cmの担体液中に、着色剤、樹脂を分散させた液体トナーを電子写真方式により、捺染布に直接捺染する捺染方法において、揮発分量が0.1〜200mg/mである転写布を用いることを特徴とする電子写真捺染方法」、
(2)「体積抵抗10〜1016Ω・cmの担体液中に、着色剤、樹脂を分散させた液体トナーを、電子写真方式により、捺染布に直接捺染する捺染方法において、転写前に転写布を加熱して、揮発分量を0.1〜200mg/mにする段階を有することを特徴とする電子写真捺染方法」、
(3)「体積抵抗10〜1016Ω・cmの担体液中に、着色剤、樹脂を分散させた液体トナーを電子写真方式により、捺染布に直接捺染する捺染方法において、70〜160℃の熱源により転写前に転写布を加熱して、揮発分量を0.1〜200mg/mにする段階を有するすることを特徴とする電子写真捺染方法」、
(4)「液体トナーの着色剤が染料であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(3)項の何れかに記載の電子写真捺染方法」、
(5)「前記染料の純度が80〜100%であることを特徴とする前記第(4)項に記載の電子写真捺染方法」、
(6)「前記樹脂の少なくとも一部にアルカリ可溶性樹脂又は水溶性樹脂を含有することを特徴とする前記第(4)項または第(5)項に記載の電子写真捺染方法」、
(7)「前記アルカリ可溶性又は水溶性樹脂の酸価が0〜2000mg/KOHであることを特徴とする前記第(6)項に記載の電子写真捺染方法」、
(8)「前記着色剤がフミン酸、フミン酸塩又はフミン酸誘導体の存在下に水溶性樹脂を用いて混練又はフラッシング処理されていることを特徴とする前記第(1)項乃至第(7)項の何れかに記載の電子写真捺染方法」、
(9)「前記液体トナーのトナー粒子の平均粒径が0.1〜5μmであることを特徴とする前記第(4)項乃至第(8)項の何れかに記載の電子写真捺染方法」、
(10)「感光体上の潜像を現像した後、転写バイアス及び転写ローラによる圧力により、転写させることを特徴とする前記第(1)項乃至第(9)項の何れかに記載の電子写真捺染方法」、
(11)「感光体上の潜像を現像した後、中間転写体にトナー像を1次転写後、画像を2次転写させることを特徴とする前記第(1)項乃至第(10)項の何れかに記載の電子写真捺染方法」、
(12)「前記2次転写前に中間転写体に溶媒を吹きかける工程を含むことを特徴とする前記第(11)項に記載の電子写真捺染方法」、
(13)「感光体の線速に対してトナーを現像するための現像ローラの線速が1.2倍〜6倍、過剰溶剤を除去するスクイズローラの線速が1.2〜4倍であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(12)項の何れかに記載の電子写真捺染方法」、
(14)「タンデム型に感光体を配置し、エンドレスベルト上に貼りつけた布に画像を転写しフルカラー捺染することを特徴とする前記第(1)項乃至第(13)項の何れかに記載の電子写真捺染方法」により達成される。
【発明の効果】
【0010】
以下の詳細かつ具体的な説明から明らかなように、本発明により転写性、画像濃度が高く、風合が良好で、解像性の優れた電子写真捺染トナー、及び該トナーを用いた電子写真捺染方法を提供できる。また、捺染の作業性を大幅に効率化し、オンデマンド性を持たせた、ムダのない電子写真捺染方法を提供できるという極めて優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
上記のように、本発明は、体積抵抗10Ω・cm以上の高抵抗低誘電率の担体液中に、着色剤を分散させた液体トナーを電子写真方式により、捺染布に直接捺染する捺染用電子写真装置において、揮発分量が0.1〜200mg/mの転写布を用いることを特徴とする電子写真捺染方法に係わる。揮発分は主に水分と思われるが200mg/mよりも多いと転写性が低下する。転写性低下は水分による布抵抗低下が要因と思われる。
揮発分量は低いほど転写性は良好で、0.1〜50mg/mにすれば更に好ましい。
本発明の布揮発分量は以下により求めた値である。
【0012】
【数1】

【0013】
布揮発分量を本発明の水準にするにはどのような方法を用いてもかまわないが、転写前に布を加熱する工程を付加することが最も簡便である。
加熱温度、加熱時間は装置のスピードによって異なるが、10〜20m/minの装置では70℃〜160℃で3〜10秒程度が良好である。70℃よりも低いと加熱効果が少なく揮発分量が本発明の水準にならない場合があり転写性への寄与は低下する。160℃よりも高いと転写までに布温度が十分下がらず、転写時に感光体と接触するときの温度が高くなり現像部の温度を上昇させ現像液を劣化させたり、トナー固着が発生する。ここで、加熱−転写までの間の時間は装置のスピードにもより異なるが、通常、3〜20秒程度である。
布搬送部が長く加熱時間を1分以上十分とれる場合は加熱温度は70℃よりも低くても問題ない。また加熱部から転写部まで十分距離があったり、印捺スピードが遅く、転写時に布温度が50℃以下にできる場合は、加熱温度は160℃よりも高くてもかまわない。この場合、加熱時間は3秒以下に短くすることは可能である。
また、巻き取られている布部全体を加熱する方法も有効である。この場合は、長時間の加熱が可能なため60℃程度でもかまわない。
転写布の加熱は電子写真で通常用いられる定着ローラのように加熱ローラと加圧ローラで挟み込む方法(図5)やベルトを用いる方法(図6)、ドライヤーのように熱風を吹きかける方法(図7)などがある。ローラやベルトを用いる場合は布と接触するため耐久性の高い部材を用いる必要がある。
【0014】
本発明に使用できる着色材としては、酸性染料、反応染料、直接染料、分散染料、カチオン染料、有機顔料、無機顔料等が用いられる。例えば、直接染料では、ダイレクトファストイエローR、ダイレクトファーストイエローGC、ダイレクトファーストオレンジ、ダイレクトスカイブルー5B、ダイレクトスプラレッド3B、コプランチングリーンG、ダイレクトファストブラックD等、酸性染料では、アシッドブリリアントスカーレト3R、アシッドバイオレット5B、アリザリンダイレクトブルーA2G、アシッドサイアニン6B、アシッドサイアニングリーンG、アシッドファーストブラックVLGなど、カチオン染料では、カチオンイエロー3G、カチオンゴールデンイエローGL、カチオンオレンジR、カチオンブリリアントレッド4G、カチオンブルー5G等、分散染料では、ディスパースファーストイエロオオーG、ディスパースブルーFFR、ディスパースブルーグリーンB、ディスパースイエロー5G、ディスパースレッドFB等、反応性染料では、リアクティブオレンジ2R、リアクティブレッド3B、リアクティブブルー3G、リアクティブブリリアントブルーR、リアクティブブラックB等が挙げられる。また、無機顔料では、プリンテックスV、スペシャルブラック15、スペシャルブラック4、三菱#44、#30、MR−11、リーガル400、660、ブラックパール900、1100等のカーボンブラック、有機顔料では、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、スカイブルー、ローダミンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、メチルバイオレットレーキ、ピーコックブルーレーキ、ナフトールグリーンB、ナフトールグリーンY、ナフトールイエローS、ナフトールレッド、リソールファーストイエロー2G、パーマネントレッド4R、ブリリアントファーストスカーレット、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、リソールレッド、レーキレッドC、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、パーマネントレッドF5R等が挙げられる。
顔料、染料どちらも用いることができるが、染料を着色剤にしたほうが、風合、染着性、洗濯堅牢度に優れる。
染料を使用する場合は、捺染布の材質により、染料を選択した方が染色性、洗濯堅牢度は良く、例えばポリエステル繊維では、分散染料、セルロース繊維では、反応性染料、直接染料、アクリル繊維ではカチオン染料、ポリアミド繊維や羊毛繊維では酸性染料が好ましい。
また、反応性染料や酸性染料などで官能基の極性を抑えたいときに、樹脂で包んで帯電性能を安定化させる場合も有効である。
しかし、樹脂の含有量を多くしてしまうと裏面への染込みや繊維の風合が、悪くなるので、着色剤に対して4倍以下の量に抑えることが望ましい。
【0015】
市販の粉体染料は、染料純度50%程度で、食塩、芒硝が多量に入っている場合が多く、液の抵抗、帯電性に悪影響を与えるため、精製するか、初めから塩類含有量の少ない染料を用いたほうが、良好である。純度80%以上が望ましい。
【0016】
本発明の液体現像剤に使用される担体液としては、高抵抗で低誘電率のものが良く(本発明における担体液の好ましい誘電率は1.0〜8.0、更に好ましくは1.5〜4.0である)、イソパラフィン系炭化水素、シリコーン系オイル等が良好である。イソパラフィン系炭化水素は、アイソパーC、アイソパーE、アイソパーG、アイソパーH、アイソパーL、アイソパーM、アイソパーV(エクソン化学)などがあり、シリコーン系オイルとしては、KF96 1〜10000cst(信越シリコーン)、SH200、SH344(東レシリコーン)、TSF451(東芝シリコーン)などがある。
中でも沸点が130℃以上の飽和炭化水素は、トナーの臭気、安全性の点で良好である。これらの溶媒は、後工程の加熱、スチーミングの段階で蒸発させることができる。
また本発明に併用することが好ましい分散用樹脂としては
【0017】
【化1】

(RはHまたはCHを、nは6〜20の整数を表わす。)
であらわされるビニルモノマーAと
【0018】
【化2】

(RはHまたはCH、R2はCが1〜4のアルキル基)
で表わされるビニルモノマー及びビニルピリジン、ビニルピロリドン、エチレングリコールジメタクリレート、スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエンより選ばれるモノマーBの各一種づつもしくは、数種の共重合体、グラフト共重合体が挙げられる。
【0019】
また樹脂の一部には、アルカリ可溶性樹脂、水溶性樹脂が含まれる。これらを含有させると、発色、水洗工程でトナー中の樹脂が溶解し、布から脱離するため、風合の良好な捺染布が得られる。
発色水洗工程では、100℃前後でスチーミング後、0.1〜2%程度のアルカリで処理する場合があり、アルカリ可溶性樹脂、水溶性樹脂を含有させないと、樹脂分が残り、風合を劣化させる原因となるが、アルカリ可溶性樹脂、水溶性樹脂を含有させることにより、発色水洗工程で樹脂が離脱し、風合の良好な捺染が得られる。
アルカリ可溶性樹脂又は水溶性樹脂は、水溶性メラミン樹脂、水溶性ロジン変性樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、水溶性アクリル樹脂、水溶性エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ソーダ、コラーゲン、ゼラチン、デンプン、キトサン等がある。
商品としては、クラレ社製ポバール(PVA)、イソバン(イソブチレン/マレイン酸樹脂)、ハリマ化成製ネオトール、ハリディプ(アルキッド樹脂、アクリル樹脂)、日本合成化学社製エコアティ(PVA)、ナガセケムテックス社製デコナール(エポキシ樹脂)、日本純薬社製ジュリアー(アクリル樹脂)、カブセン(ポリエステル樹脂)などが挙げられる。
【0020】
酸価は0〜2000mg/KOHであることが望ましく、2000mg/KOHより高いと現像特性が低下する。
【0021】
特に、アルカリ可溶性樹脂又は水溶性樹脂、着色剤をフラッシング処理を行った場合は画像面で優れた現像剤が得られる。
フラッシング処理とは、色素を水に溶かした含水液に、更に樹脂分散媒を加え、フラッシャーと呼ばれるニーダー中で良く混合し、顔料のまわりに存在する水を後から添加される樹脂分散媒によって置換する処理をいう。
この操作により取出される水を排出し、樹脂溶液中に顔料が分散された状態とし乾燥させて、溶剤を除去し、得られた塊を粉砕することにより着色剤の粉末が得られる。
フラッシングする際の着色剤と樹脂の割合は、樹脂100重量部に対して着色剤10〜60重量部が適当である。フラッシング処理には、フミン酸、フミン酸塩(Na塩、NH4塩など)またはフミン酸誘導体の存在下に行うのが特に有利である。これら添加されるフミン酸類の量は、着色剤含水液の0.1〜30重量%程度が適当である。
【0022】
液体トナーの平均粒径は0.1〜3μmが望ましく、0.1μm以下では、十分な濃度が得られない場合やニジミが発生しやすくなる場合があり、3μm以上では、色彩、解像性が悪くなる場合がある。
【0023】
感光体に現像後、転写ローラで0.1〜3Kg/cmの圧力をかけ転写した場合、平滑性の悪い転写紙や捺染の場合は転写性が向上し、高濃度の画像を形成できる。
また、中間転写体を用いて転写する場合も、更に高い圧力がかけられるため転写性が向上する。しかし、中間転写体を用いない場合よりも転写時の溶媒量が少なくなるため、捺染の場合は、2次転写前に中間転写体上に脂肪族炭化水素やシリコーンオイル等の溶媒を
吹き付け転写に必要な溶媒量を確保することが望ましい。
吹き付け量は0.20〜0.70mg/cm程度が良好である。
また、捺染の場合、濃度を向上のためには現像付着量を上げたり、あるいは、現像後リバースローラの溶剤スクイズ量を少なくすることにより、感光体上の現像液量を多くして布への溶剤染込み量を増やすと効果がある。
【0024】
図1は、本発明の画像形成方法の一例である。帯電電圧付与部材により、感光体に電荷を与え、露光により非画像部の電荷を消去する。感光体はセレン感光体、有機感光体、アモルファスシリコン感光体が使用できる。感光体の表面電位は、400v〜1600vの範囲が良好である。感光体の電荷の残っている潜像に現像ローラから供給される液体現像剤により現像し、スクイズローラ(即ち、リバースローラ)で余剰の現像液を除去し、転写電圧付与部剤によりトナーの電荷と逆電荷の電圧をかけ捺染布に転写させる。
現像ローラは感光体と順方向に回転し、リバースローラは逆方向に回転させ、感光体に対する線速は現像ローラが1.2倍〜6倍、スクイズローラの線速は1.2倍〜4倍が効果的である。
ローラと感光体のギャップは50〜250μm、リバースローラ(別名スクイズローラ)のギャップは30〜150μmが良好である。転写電圧は500〜4000vの範囲が良好である。
布に転写されずに感光体に残ったトナーをクリーニングブレード、クリーニングローラで除去後、感光体を除電する。
また、画像部の電荷を消去し非画像部の電荷を残す現像方式でも同様に画像形成できる。
【0025】
図2は図1の転写電圧付与部材をチャージャー方式からローラ方式にした例である。チャージャー方式に比べ転写時の圧力を付与できるため、表面性の荒れた凹凸の大きい布の場合でも転写性が良好である。転写圧は0.1〜3Kg/cmが良好である。
【0026】
図3は図2の装置に中間転写部材を追加した例である。図2の装置よりもさらに高い転写圧力を付与できるため、表面性の荒れた凹凸の大きい布の場合でも転写性が良好である。転写圧は0.1〜5Kg/cmが良好である。ただ、中間転写部材への一次転写時にトナー中の溶媒成分が少なくなり、中間転写部材から布への二次転写に必要な溶媒量が少なくなる場合があるため、二次転写前に中間転写部材に溶媒を吹きかける工程を追加すると効果的である。
【0027】
図4は感光体をタンデムに配置し、布搬送ベルト上に布を貼りつけてフルカラー捺染を行う装置の一例である。
【0028】
着色剤、樹脂、担体液をボールミル、キティーミル、ディスクミル、ピンミルなどの分散機に投入、分散、混練を行い濃縮トナーを調製し、これを本発明の担持液中に分散させることにより現像液を得ることができる。
【実施例】
【0029】
以下実施例、比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。また、実施例、比較例における「部」は全て重量部であり、共重合体のモノマー混合比は重量比である。
[アクリル系樹脂の合成]
また、後述の実施例でも用いられ、本発明に好ましいアクリル系樹脂は、具体的には例えば以下のように合成できる。
攪拌機、温度計、冷却管、滴下ロートを備えた3LのフラスコにアイソパーH500gを仕込み、90℃に加熱し、攪拌しながらラウリルメタアクリレート(三菱レイヨン社製アクリエステルL)100g、グリシジルメタアクリレート(アクリエステルG)20g、メタクリル酸(三菱レイヨン社製)15g、アズビスイソブチロニトリル1gよりなるモノマー溶液を2時間かけて滴下する。その後、95℃に保ち5時間重合を行う。その後、メチルメタクリレート(三菱レイヨン社製アクリエステルM)30g、アズビスイソブチロニトリル0.2gよりなるモノマー溶液を2時間かけて滴下し、85℃に保ち1時間重合を行う。
合成されたアクリル樹脂の重合率は95%以上、分子量Mnは約8000〜約50000、Mwは約10000〜約80000が好ましい。
【0030】
(実施例1)
分散染料(SumikaronRed E-FBL)(住友化学社製)(純度50%) 60部
ラウリルメタアクリレート/メチルメタアクリルレート/メタクリル酸/グリ
シジルメタアクリレート(80/10/5/5)共重合体の
アイソパーH20%溶液 120部
ポリオレフィン樹脂(エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂)(エバフレックス)
(三井・デュポン) 60部
水溶性樹脂 ポバール(PVA)(クラレ) 60部
アイソパーH 180部
荷電制御剤(ナフテン酸ジルコニウム) 3部
をボールミルに入れて24時間分散後、さらにアイソパーHを300部加え、1時間分散し、これを濃縮トナーとした。
この濃縮トナー100gとアイソパーH1Lを混合した現像剤により図2の装置で電子写真捺染を行った。布加熱は図7のドライヤータイプで150℃、8秒で行った。なお、上記「ラウリルメタアクリレート/メチルメタアクリルレート/メタクリル酸/グリシジルメタアクリレート(80/10/5/5)共重合体」自体は、従来公知(例えば特開2002−251039号公報参照)のものである。
【0031】
(実施例2)
反応染料(CibacronTurquoiseBlueFGF-P )(精製処理純度82%)
(チバケミカル社製) 35部
ポリオレフィン樹脂(エチレン・メタクリル酸共重合樹脂)(ニュクレル)
(三井・デュポン) 40部
水溶性樹脂 カブセン(水溶性ポリエステル)(ナガセケムテックス) 70部
を混練粉砕

上記混練粉砕物 90部
ラウリルメタアクリレート/メチルメタアクリルレート/メタクリル酸/グリシジルメ
タアクリレート(80/10/5/5)共重合体のアイソパーH20%溶液 120部
アイソパーH 200部
荷電制御剤(ナフテン酸ジルコニウム) 2部
をボールミルに入れて24時間分散後、さらにアイソパーHを350部加え、1時間分散し、これを濃縮トナーとした。
この濃縮トナー100gとアイソパーH1Lを混合した現像剤により図2の装置で電子写真捺染を行った。布加熱は図6のベルトタイプで160℃、3秒で行った。
【0032】
(実施例3)
分散染料 (有本化学FS Red1339)(純度95%) 50部
ポリオレフィン樹脂(エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂)(エバフレックス)
(三井・デュポン) 20部
水溶性樹脂 ハリディブ(水溶性アルキド樹脂)(ハリマ化成) 80部
ニトロフミン酸 3部
をニーダ混練、フラッシング処理

上記フラッシング混練物 70部
ラウリルメタアクリレート/メチルメタアクリルレート/メタクリル酸/グリシジルメ
タアクリレート(80/10/5/5)共重合体のアイソパーH20%溶液 100部
アイソパーH 250部
荷電制御剤 5部
をボールミルに入れて24時間分散後、さらにアイソパーHを250部加え、1時間分散し、これを濃縮トナーとした。
この濃縮トナー100gとアイソパーH1Lを混合した現像剤により図2の装置で電子写真捺染を行った。布加熱は図7のドライヤータイプで巻き取り布部全体を1時間、70℃に加熱して行った。
【0033】
(実施例4)
実施例1の分散染料 (SumikaronRed E-FBL純度50%)を純度90%に精製して用いた以外は、実施例1と同一にして濃縮トナーを作成した。
この濃縮トナー100gとアイソパーH1Lを混合した現像剤により図2の装置で電子写真捺染を行った。布加熱は図5のローラタイプを4本タンデムに並べ行った(加熱温度は140℃、加熱時間は6秒)。
【0034】
(実施例5)
実施例2の分散媒をアイソパーHからシリコーンオイル(KF-96 2cst)に変えた以外は全て実施例2と同様にして濃縮トナーを作成した。
この濃縮トナー100gとシリコーンオイル(KF-96 2cst)を混合した現像剤により図2の装置で電子写真捺染を行った。布加熱は図7のドライヤータイプで巻き取り布部全体を90℃に20分加熱して行った。
【0035】
(実施例6)
反応染料(RemazolBlackB)(純度97%に精製処理したもの) 40部
ポリオレフィン樹脂(エチレン・メタクリル酸共重合樹脂)(ニュクレル)
(三井・デュポン) 5部
水溶性樹脂 カブセン(水溶性ポリエステル)(ナガセケムテックス) 95部
を混練粉砕

上記混練粉砕物 90部
ラウリルメタアクリレート/メチルメタアクリルレート/メタクリル酸/グリシジルメ
タアクリレート(80/10/5/5)共重合体のアイソパーH20%溶液 120部
アイソパーH 200部
荷電制御剤(ナフテン酸ジルコニウム) 2部
をボールミルに入れて24時間分散後、さらにアイソパーHを350部加え、1時間分散し、これを濃縮トナーとした。
この濃縮トナー100gとアイソパーMを混合した現像剤により図2の装置で電子写真捺染を行った。布加熱は図7のドライヤータイプで巻き取り布部全体を90℃に10分加熱して行った。
【0036】
(実施例7)
分散染料(有本化学FS Blue1538)(純度97%) 40部
ポリオレフィン樹脂(エチレン・メタクリル酸共重合樹脂アイオノマー)
(ハイミラン)(三井・デュポン) 95部
水溶性樹脂 カブセン(水溶性ポリエステル)(ナガセケムテックス) 5部
を混練粉砕

上記混練粉砕物 90部
ラウリルメタアクリレート/メチルメタアクリルレート/メタクリル酸/グリシジルメ
タアクリレート(80/10/5/5)共重合体のアイソパーH20%溶液 120部
アイソパーH 200部
荷電制御剤(ナフテン酸ジルコニウム) 2部
をボールミルに入れて24時間分散後、さらにアイソパーHを350部加え、1時間分散し、これを濃縮トナーとした。
この濃縮トナー100gとエクソールD30を混合した現像剤により図2の装置で電子写真捺染を行った。布加熱は図7のドライヤータイプで巻き取り布部全体を100℃に5分加熱して行った。
【0037】
(実施例8)
図1のチャージ転写装置を用いた以外は実施例3と同一で行った。
【0038】
(実施例9)
図3の中間転写装置を用いた以外は実施例3と同一で行った。
【0039】
(実施例10)
図3の中間転写装置を用い更に2次転写前にアイソパーHを0.3mg/cm以上吹きかけた以外は実施例3と同一で行った。
【0040】
(比較例1〜10)
転写布の過熱を行わない以外は実施例1〜10と同様にして捺染を行った。
【0041】
ポリエステル布を用いた実施例1、3、4、5、7、8、9、10及び比較例1、3、4、5、7、8、9、10は捺染布に180℃で30分蒸熱処理を行い、炭酸ナトリウム2g/L、ハイドロサルファイト2g/Lの80℃温水で20分処理を行い捺染サンプルを作成した。
綿布を用いた、実施例3、6及び比較例3、6は捺染布に炭酸水素ナトリウム2重量%水溶液を塗布した後、100℃で15分間蒸熱処理を行い、1時間放置後水洗し、アニオン系界面活性剤2g/Lにより80℃で5分処理を行い、捺染サンプルを作成した。
【0042】
以上の結果より明らかなとおり、本画像形成方法、現像剤により、転写率が高く、布濃度が高く、高解像な捺染布が得られた。
【0043】
【表1】


*濃度はX-Riteにより測定
*風合は風合段階見本布による
5:布のみと同程度の柔らかさ、4:柔らかい、3:中程度、2:やや硬い、1:硬い
*平均粒径は島津製作所SA-CP3による
*解像性は、段階見本による 5:最良、1:最悪
*転写率はテープ剥離法による濃度から算出
【0044】
【数2】

【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の画像形成方法の一例を示した図である。
【図2】図1の転写電圧付与部材をチャージャー方式からローラ方式にした例を示した図である。
【図3】図2の装置に中間転写部材を追加した例を示した図である。
【図4】感光体をタンデムに配置し、布搬送ベルト上に布を貼りつけてフルカラー捺染を行う装置の一例を示した図である。
【図5】転写布の加熱を電子写真で通常用いられる定着ローラのように加熱ローラと加圧ローラで挟み込む方法を示した図である。
【図6】転写布の加熱をベルトを用いる方法を示した図である。
【図7】転写布の加熱をドライヤーのように熱風を吹きかける方法を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体積抵抗10〜1016Ω・cmの担体液中に、着色剤、樹脂を分散させた液体トナーを電子写真方式により、捺染布に直接捺染する捺染方法において、揮発分量が0.1〜200mg/mである転写布を用いることを特徴とする電子写真捺染方法。
【請求項2】
体積抵抗10〜1016Ω・cmの担体液中に、着色剤、樹脂を分散させた液体トナーを、電子写真方式により、捺染布に直接捺染する捺染方法において、転写前に転写布を加熱して、揮発分量を0.1〜200mg/mにする段階を有することを特徴とする電子写真捺染方法。
【請求項3】
体積抵抗10〜1016Ω・cmの担体液中に、着色剤、樹脂を分散させた液体トナーを電子写真方式により、捺染布に直接捺染する捺染方法において、70〜160℃の熱源により転写前に転写布を加熱して、揮発分量を0.1〜200mg/mにする段階を有するすることを特徴とする電子写真捺染方法。
【請求項4】
液体トナーの着色剤が染料であることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の電子写真捺染方法。
【請求項5】
前記染料の純度が80〜100%であることを特徴とする請求項4に記載の電子写真捺染方法。
【請求項6】
前記樹脂の少なくとも一部にアルカリ可溶性樹脂又は水溶性樹脂を含有することを特徴とする請求項4または5に記載の電子写真捺染方法。
【請求項7】
前記アルカリ可溶性又は水溶性樹脂の酸価が0〜2000mg/KOHであることを特徴とする請求項6に記載の電子写真捺染方法。
【請求項8】
前記着色剤がフミン酸、フミン酸塩又はフミン酸誘導体の存在下に水溶性樹脂を用いて混練又はフラッシング処理されていることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の電子写真捺染方法。
【請求項9】
前記液体トナーのトナー粒子の平均粒径が0.1〜5μmであることを特徴とする請求項4乃至8の何れかに記載の電子写真捺染方法。
【請求項10】
感光体上の潜像を現像した後、転写バイアス及び転写ローラによる圧力により、転写させることを特徴とする請求項1乃至9の何れかに記載の電子写真捺染方法。
【請求項11】
感光体上の潜像を現像した後、中間転写体にトナー像を1次転写後、画像を2次転写させることを特徴とする請求項1乃至10の何れかに記載の電子写真捺染方法。
【請求項12】
前記2次転写前に中間転写体に溶媒を吹きかける工程を含むことを特徴とする請求項11に記載の電子写真捺染方法。
【請求項13】
感光体の線速に対してトナーを現像するための現像ローラの線速が1.2倍〜6倍、過剰溶剤を除去するスクイズローラの線速が1.2〜4倍であることを特徴とする請求項1乃至12の何れかに記載の電子写真捺染方法。
【請求項14】
タンデム型に感光体を配置し、エンドレスベルト上に貼りつけた布に画像を転写しフルカラー捺染することを特徴とする請求項1乃至13の何れかに記載の電子写真捺染方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−122831(P2008−122831A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−308857(P2006−308857)
【出願日】平成18年11月15日(2006.11.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】