説明

電子写真現像剤用キャリア芯材及びキャリアの製造方法

【課題】マンガン系のフェライト組成において、高抵抗及び高磁化である電子写真現像剤用キャリア芯材及びキャリアの製造方法を提供する。
【解決手段】原料を粉砕、混合した後、仮焼成し、得られた仮焼成物を粉砕してスラリーとし、該スラリーを造粒後、得られた造粒物を本焼成する、下記一般式で示される電子写真現像剤用フェライト芯材の製造方法であって、上記仮焼成温度を上記本焼成温度よりも高温とし、かつ本焼成後に表面酸化処理を行うことを特徴とする電子写真現像剤用フェライト芯材の製造方法を採用する。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンター等に用いられる二成分系電子写真現像剤に使用される電子写真現像剤用キャリア芯材の製造方法及び該キャリア芯材の表面に樹脂を被覆して得られるキャリアの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真現像方法は、現像剤中のトナー粒子を感光体上に形成された静電潜像に付着させて現像する方法であり、この方法で使用される現像剤は、トナー粒子とキャリア粒子からなる二成分系現像剤及びトナー粒子のみを用いる一成分系現像剤に分けられる。
【0003】
こうした現像剤のうち、トナー粒子とキャリア粒子からなる二成分系現像剤を用いた現像方法としては、古くはカスケード法等が採用されていたが、現在では、マグネットロールを用いる磁気ブラシ法が主流である。
【0004】
二成分系現像剤において、キャリア粒子は、現像剤が充填されている現像ボックス内において、トナー粒子と共に攪拌されることによって、トナー粒子に所望の電荷を付与し、さらにこのように電荷を帯びたトナー粒子を感光体の表面に搬送して感光体上にトナー像を形成するための担体物質である。マグネットを保持する現像ロール上に残ったキャリア粒子は、この現像ロールから再び現像ボックス内に戻り、新たなトナー粒子と混合・攪拌され、一定期間繰り返して使用される。
【0005】
二成分系現像剤は、一成分系現像剤とは異なり、キャリア粒子はトナー粒子と混合・攪拌され、トナー粒子を帯電させ、さらに搬送する機能を有しており、現像剤を設計する際の制御性が良い。従って、二成分系現像剤は高画質が要求されるフルカラー現像装置及び画像維持の信頼性、耐久性が要求される高速印刷を行う装置等に適している。
【0006】
このようにして用いられる二成分系現像剤においては、画像濃度、カブリ、白斑、階調性、解像力等の画像特性が、初期の段階から所定の値を示し、しかもこれらの特性が耐刷期間中に変動せず、安定に維持されることが必要である。これらの特性を安定に維持するためには、二成分系現像剤中に含有されるキャリア粒子の特性が安定していることが必要になる。
【0007】
二成分系現像剤を形成するキャリア粒子として、従来は、表面を酸化皮膜で覆った鉄粉あるいは表面を樹脂で被覆した鉄粉等の鉄粉キャリアが使用されていた。このような鉄粉キャリアは、磁化が高く、導電性も高いことから、ベタ部の再現性のよい画像が得られやすいという利点がある。
【0008】
しかしながら、このような鉄粉キャリアは真比重が約7.8と重く、また磁化が高すぎることから、現像ボックス中におけるトナー粒子との攪拌・混合により、鉄粉キャリア表面へのトナー構成成分の融着、いわゆるトナースペントが発生しやすくなる。このようなトナースペントの発生により有効なキャリア表面積が減少し、トナー粒子との摩擦帯電能力が低下しやすくなる。
【0009】
また、樹脂被覆鉄粉キャリアでは、耐久時のストレスにより表面の樹脂が剥離し、高導電性で絶縁破壊電圧が低い芯材(鉄粉)が露出することにより、電荷のリークが生ずることがある。このような電荷のリークにより、感光体上に形成された静電潜像が破壊され、ベタ部にハケスジ等が発生し、均一な画像が得られにくい。これらの理由から、酸化皮膜鉄粉及び樹脂被覆鉄粉等の鉄粉キャリアは、現在では使用されなくなってきている。
【0010】
近年は、鉄粉キャリアに代わって真比重約5.0程度と軽く、また磁化も低いフェライトをキャリアとして用いたり、さらに表面に樹脂を被覆した樹脂コートフェライトキャリアが多く使用されており、現像剤寿命は飛躍的に伸びてきた。
【0011】
このようなキャリアには、トナーと共に二成分現像剤とした時にキャリア付着の問題がある。このようなキャリア付着を低減するためには、キャリアを高抵抗、高磁化に調整する必要がある。
【0012】
キャリアを高抵抗にするためには、Cu−Zn系フェライトを用いることが好ましいが、低磁化である。また、キャリアを高磁化とするには鉄粉やマグネタイトを用いることが好ましいが、低抵抗である。鉄粉やマグネタイトを表面酸化処理することで抵抗は高くなるが充分ではなく、また表面酸化処理を強くすると磁化の低下が著しい。
【0013】
また、最近、環境規制が厳しくなり、Ni、Cu、Zn等の金属の使用は避けられるようになってきており、環境規制に適応した金属の使用が求められており、キャリア芯材として用いられるフェライト組成はCu−Znフェライト、Ni−ZnフェライトからMnを用いたMnフェライト、Mn−Mg−Srフェライト等に移行している。
【0014】
フェライトキャリアの一般的な製造方法としては、フェライトキャリア原料を所定量混合した後、仮焼、粉砕し、造粒後に焼成を行うのが一般的であり、条件によっては仮焼を省略できる場合もある。
【0015】
特許文献1(特開2004−233905号公報)には、1000エルステッドにおける飽和磁化と飛散物磁化との比を特定した電子写真用キャリアが記載されている。また、特許文献1の実施例には、キャリア芯材を製造することが記載されている。この方法は、先ずMnとFeの酸化物を所定割合となるように混合し、湿式粉砕、分散した後乾燥して、仮焼成を行う。次いで得られた仮焼成物を湿式粉砕し、スラリーを得る。このスラリーにバインダー及び分散剤を加えてスプレードライヤーで造粒、分散、分級して造粒粒子を作成し、この造粒粒子を本焼成して、マンガンフェライト粒子を得る。さらに、このマンガンフェライト粒子を分級してキャリア芯材を得る。
【0016】
しかし、この特許文献1に記載されている製造方法では、仮焼成温度が充分ではなく、表面酸化処理を行っていないことから、磁化及び抵抗のいずれも満足できるものではない。
【0017】
特許文献2(特開2007−271663号公報)には、フェライト原料を粉砕、混合、ペレット化した後、900〜1200℃で仮焼成し、次いで、粉砕、スラリー化し、スラリー粒径のD50を3μm以下、D90を4.5以下とした後、1150〜1230℃、1〜24時間本焼成を行う電子写真現像剤用フェライトキャリアの製造方法が記載され、本焼成の温度と仮焼成の温度の差が250℃以下であることが望ましいとされている。
【0018】
また、特許文献2では、上記製造方法によって、高い圧縮破壊強度及び圧縮変化率を有し、キャリア破壊に起因するキャリア付着が防止され、長寿命化が図るとされている。しかし、特許文献2では、その段落〔0048〕及び実施例から、仮焼成温度よりも本焼成温度を高くし、その差を250℃以下にすることによって粒子の熱膨張及びその収縮差を低減させることを意図するものであり、このような焼成条件では、所望の高抵抗高磁化を得ることはできない。さらに、特許文献2では、その請求項2及び実施例から、マグネシウムを含有するフェライト組成に関するものであり、このような組成では、所望の高抵抗高磁化を得ることはできない。
【0019】
このようにマンガン系フェライトを用いたキャリア芯材において、高抵抗、高磁化のものは得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2004−233905号公報
【特許文献2】特開2007−271663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
従って、本発明の目的は、マンガン系のフェライト組成において、高抵抗及び高磁化である電子写真現像剤用キャリア芯材及びキャリアの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明者らは、上記のような課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のマンガンフェライト組成とし、仮焼成温度を本焼成温度よりも高温とし、かつ本焼成後に表面酸化処理を行う製造方法によって、得られるキャリア芯材及びキャリアが上記目的を達成し得ることを知見し、本発明に至った。
【0023】
すなわち、本発明は、原料を粉砕、混合した後、仮焼成し、得られた仮焼成物を粉砕してスラリーとし、該スラリーを造粒後、得られた造粒物を本焼成する、下記一般式で示される電子写真現像剤用フェライト芯材の製造方法であって、
上記仮焼成温度を上記本焼成温度よりも高温とし、かつ本焼成後に表面酸化処理を行うことを特徴とする電子写真現像剤用フェライト芯材の製造方法を提供するものである。
【0024】
【化1】

【0025】
本発明に係る上記電子写真現像剤用キャリア芯材の製造方法では、上記仮焼成温度が1200〜1400℃であり、上記本焼成温度が1000〜1200℃であることが望ましい。
【0026】
本発明に係る上記電子写真現像剤用キャリア芯材の製造方法では、上記仮焼成温度と上記本焼成温度の差が10〜400℃であることが望ましい。
【0027】
また、本発明は、上記製造方法により得られたフェライト芯材の表面に樹脂を被覆することを特徴とする電子写真現像剤用フェライトの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る製造方法によって、高抵抗及び高磁化のマンガン系フェライト組成からなる電子写真現像剤用キャリア芯材及びキャリアが得られる。そして、このキャリアをトナーと共に電子写真現像剤とすることによって、キャリア付着を大幅に低減することができ、また解像力にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
<本発明に係る電子写真現像剤用キャリア芯材の製造方法>
本発明に係る電子写真現像剤用キャリア芯材の製造方法について説明する。本発明に係る電子写真現像剤用キャリア芯材の製造方法は、下記の通りである。
【0030】
原料として、MnO、Mn、MnCO、MnO等のMn化合物とFeを用いる。Mn化合物としてはMnが一般的である。これらキャリア芯材原料を所定割合で配合し、水を加え湿式ボールミル等で粉砕、混合した後、乾燥させ、仮焼成を行う。
【0031】
Mn化合物とFeの混合割合は、得られるキャリア芯材が下記一般式となるように調整し、混合する。
【0032】
【化2】

【0033】
仮焼成は、1200〜1400℃で行われる。仮焼成温度が1200℃未満では、フェライト化が不十分で高磁化高抵抗が得られず、1400℃を超えると、後工程で粉砕する際に微細化することができず、緻密な表面姓を得られず、結果、高磁化高抵抗を得ることができない。仮焼成時の雰囲気は、特に制限が無く、大気中もしくは、還元雰囲気中あるいは、不活性雰囲気中で行うことができる。
【0034】
仮焼成後、得られた仮焼成物を湿式粉砕してスラリーとし、該スラリーを造粒後、得られた造粒物を本焼成する。
【0035】
本焼成は、非酸化性雰囲気又は弱還元性雰囲気下、1000〜1200℃で行われる。本焼成温度が1000℃未満では、フェライト化が不十分で高磁化、高抵抗が得られず、1200℃を超えると、粒子の粒成長が進みすぎるため凝集が発生し、粒子をほぐす工程において強い解砕ストレスを上げることが必要となり、結果、磁化が低下してしまうため、所望の高磁化高抵抗を得ることができない。
【0036】
ここで用いられる非酸化性雰囲気又は弱還元性雰囲気とは、酸素濃度が2容量%以下を意味することとし、好ましくは1容量%以下、より好ましくは0.2容量%以下である。雰囲気としては窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス、炭酸ガス等が使用できるが工業用途としては窒素ガスを用いることが好ましい。さらに0.2容量%以下を容易に達成し焼成を行う場合には液体窒素を気化して使うことが望ましい。
【0037】
本発明の製造方法では、仮焼成温度を本焼成温度よりも高温とする必要がある。特に仮焼成温度と本焼成温度の差が10〜400℃であることが望ましい。仮焼成温度と本焼成温度の差が10℃未満であると、仮焼成温度を本焼成温度よりも高めた効果が得られず、差が400℃を超えると、本焼成において結晶成長が進まず、所望の高抵抗高磁化が得られない。特に、50〜200℃であることが望ましい。
【0038】
このように、仮焼成温度を本焼成温度よりも高温とすることによって、仮焼成の段階でフェライト反応が進んでいるため、より高磁化が得られやすくなると共に、本焼成温度を低くすることができるため、本焼成後の解砕ストレスを低減することができ、高磁化が得られる。また、従来の焼成条件よりも粒子内部の再酸化が起きにくいため、後述する表面酸化処理を行っても極端な磁化低減を防止でき、高磁化、高抵抗を達成することができる。
【0039】
このようにして得られたフェライト粒子を表面酸化処理することにより、フェライト粒子の表面に酸化皮膜を形成する。この酸化皮膜の形成によって電気抵抗調整を行うことができる。酸化皮膜処理は、一般的なロータリー式電気炉、バッチ式電気炉等を用いる。酸化皮膜を均一に芯材粒子に形成させるためにはロータリー式電気炉、すなわち、ロータリーキルンを用いることが好ましい。ロータリーキルンを用いることにより、熱の伝達が均一となり、磁化及び抵抗の分布幅が狭く、現像剤としたときのキャリア付着の発生を防ぐことができる。
【0040】
酸化皮膜処理の温度は400〜800℃で行うことが望ましい。酸化皮膜処理の温度が400℃未満では、抵抗を十分に上げることができず、800℃を超えると、磁化が大きく低下する。
【0041】
<本発明の製造方法により得られる電子現像剤用キャリア芯材>
上述した製造方法によって電子現像剤用キャリア芯材が得られる。
【0042】
この電子現像剤用キャリア芯材は、その組成が上述したように、下記一般式を有する。
【0043】
【化3】

【0044】
本発明に係るキャリア芯材として用いられるフェライト粒子は、Mn系フェライトである。Mn系フェライトは、他のフェライトに比べて高磁化を得られやすい。
【0045】
上記一般式において、xが40モル%未満では、酸化被膜処理にて急激な再酸化が起きやすくなり、高磁化を維持したまま高抵抗を得ることができず、50モル%を超えると、非磁性な部分が多く発生し、高磁化を得ることができない。また、本発明に用いられるフェライト粒子には、不可避不純物又は随伴不純物以上にその他の金属元素を含有しない。
【0046】
上述したような非常に狭い範囲に限定されたフェライト組成に対して、上述したような製造方法及び条件を適用することによって、これまで得られなかった高磁化、高抵抗を実現することができる。
【0047】
また、この電子写真現像剤用キャリア芯材の酸化皮膜の厚さは、0.0001〜10μmであることが望ましい。このような酸化皮膜を有することにより高磁化でありながら高抵抗といった所望の抵抗が得られる。なお、酸化皮膜は芯材表面に均一で形成されていても良いし、部分的に酸化皮膜形成されていても良い。
【0048】
本発明の製造方法により得られるキャリア芯材(フェライト粒子)は、体積平均粒径が15〜45μmであることが望ましい。この体積平均粒径は次の通り測定される。
【0049】
(体積平均粒径)
レーザー回折散乱法により測定した。装置として日機装株式会社製マイクロトラック粒度分析計(Model9320−X100)を用いた。屈折率は2.42とし、25±5℃、湿度55±15%の環境下で測定を行った。ここで言う平均粒径(メジアン径)とは、体積分布モード、ふるい下表示での累積50%粒子径である。
キャリアサンプルの分散は、分散液として0.2%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を用い、超音波工業社製ウルトラソニックホモジナイザー(UH−3C)にて1分間の超音波処理とした。
【0050】
本発明の製造方法により得られるキャリア芯材(フェライト粒子)の磁化は、68Am/kg以上であることが望ましい。特に、69Am/kg以上であることが望ましい。この磁化は次の通り測定される。
【0051】
(磁化)
振動試料型磁気測定装置(型式:VSM−C7−10A(東英工業社製))を用いた。測定試料は、内径5mm、高さ2mmのセルに詰めて上記装置にセットした。測定は、印加磁場を加え、最大1KOeまで掃引した。次いで、印加磁場を減少させ、記録紙上にヒステリシスカーブを作製した。このカーブのデータより磁化を求めた。
【0052】
本発明の製造方法により得られるキャリア芯材(フェライト粒子)の2mmGap、印可電圧900Vの抵抗は、5.0×10Ω以上であることが望ましい。この抵抗は次の通り測定される。
【0053】
(電気抵抗)
電極間間隔2.0mmにて平行平板電極(10mm×40mm)を対抗させ、その間に、試料200mgを秤量して充填する。磁石(表面磁束密度:1500Gauss、電極に接する磁石の面積:10mm×30mm)を平行平板電極に付けることにより電極間に試料を保持させ、900Vの電圧を印加し、900Vの印加電圧における抵抗を絶縁抵抗計(SM−8210、東亜ディケーケー(株)製)にて測定した。なお、室温25℃、湿度55%に制御された恒温恒湿室内で測定を行った。
【0054】
この電子写真現像剤用キャリア芯材は、その表面に樹脂を被覆し、キャリアとしてトナーと共に、電子写真現像剤の用途に供される。
【0055】
ここで用いられる被覆樹脂としては、特に制限されず、例えば、フッ素樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フッ素アクリル樹脂、アクリル−スチレン樹脂、シリコーン樹脂、あるいはアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アルキッド樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等の各樹脂で変性した変性シリコーン樹脂等が挙げられる。使用中の機械的ストレスによる樹脂の脱離を考慮すると、熱硬化性樹脂が好ましく用いられる。具体的な熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂及びそれらを含有する樹脂等が挙げられる。充填方法としては、様々な方法が使用できる。その方法としては、例えば乾式法、流動床によるスプレードライ方式、ロータリードライ方式、万能攪拌機等による液浸乾燥法等が挙げられる。
【0056】
また、キャリア芯材への樹脂の被覆量は、キャリア芯材100重量部に対して、0.5〜5.0重量部が好ましい。これら被覆樹脂中には、導電性の向上や帯電制御のために、導電剤や帯電制御剤を適宜、適量含有することができる。
【0057】
導電剤としては、導電性カーボンや酸化チタン、酸化スズ等の酸化物、各種の有機系導電剤が挙げられる。
【0058】
また、帯電制御剤の例としては、トナー用に一般的に用いられる各種の帯電制御剤や、各種シランカップリング剤が挙げられる。使用できる帯電制御剤やカップリング剤の種類は特に限定されないが、ニグロシン系染料、4級アンモニウム塩、有機金属錯体、含金属モノアゾ染料等の帯電制御剤、アミノシランカップリング剤やフッ素系シランカップリング剤等が好ましい。
【0059】
本発明により得られた電子写真現像剤用キャリアとトナーによって、電子写真現像剤としたときのキャリアとトナーの混合比(トナー重量/(キャリア重量+トナー重量))、即ちトナー濃度は、3〜15重量%に設定することが好ましい。3重量%未満であると所望の画像濃度が得にくく、15重量%を超えると、トナー飛散やかぶりが発生しやすくなる。
【0060】
本発明に係る電子写真現像剤は、補給用現像剤として用いることもできる。この際のキャリアとトナーの混合比(トナー重量/(キャリア重量+トナー重量))、即ちトナー濃度は50重量%、100重量%未満に設定することが好ましい。
【0061】
以下、実施例等に基づき本発明を具体的に説明する。
【実施例1】
【0062】
MnO換算で45モル%、Fe換算で55モル%になるように各原材料(Mn、Fe)を適量配合し、水を加え、湿式ボールミルで10時間粉砕・混合し乾燥させ、大気中、1300℃、4時間仮焼成した。
【0063】
得られた仮焼成物を湿式ボールミルで24時間粉砕を行ったスラリーを造粒乾燥し、O濃度0.1容量%の雰囲気下、1150℃、6時間本焼成した後、解砕し粒度調整を行った。
【0064】
こうして得られたフェライト粒子を、500℃に保持されたロータリー式大気炉で1時間保持し、そのフェライト表面に酸化被膜処理を施し、マンガン系フェライト粒子(キャリア芯材)を得た。
【0065】
このマンガン系フェライト粒子は、平均粒径が36μmであり、印可磁場が1000エルステッドの時の磁化が69.4Am/kg、2mmGap、900Vの電気抵抗は8.4×10(Ω)であった。
【0066】
次にシリコーン樹脂(SR−2411:東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)を固形分換算で200g、アミノシランカップリング剤(SH6020:東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製)を100g、それぞれ秤量し、1000ccのトルエン溶剤に溶解させ、コーティング樹脂溶液を調製した。
【0067】
上記マンガンフェライト粒子10kgに対し、上述のコーティング樹脂溶液を流動床コーティング装置によって被覆時間が80分になるように単位時間あたりの噴霧量を調整し、コーティングを行った。その後260℃で3時間焼き付けを行ってキャリア1を得た。
【実施例2】
【0068】
仮焼成温度を1200℃とした以外は、実施例1と同様にマンガン系フェライト粒子(キャリア芯材)を得た。このキャリア芯材に実施例1と同様にしてシリコーン樹脂を被覆してキャリア2とした。
【比較例】
【0069】
[比較例1]
仮焼成温度を800℃、本焼成温度を1150℃とした以外は、実施例1と同様にマンガン系フェライト粒子(キャリア芯材)を得た。このキャリア芯材に実施例1と同様にしてシリコーン樹脂を被覆してキャリア3とした。
【0070】
[比較例2]
CuO換算で20モル%、ZnO換算で25モル%、Fe換算で55モル%となるように各原材料を適量配合し、仮焼成温度を800℃、本焼成雰囲気を大気、本焼成温度を1250℃とした以外は、実施例1と同様にCu−Zn系フェライト粒子(キャリア芯材)を得た。このキャリア芯材に実施例1と同様にしてシリコーン樹脂を被覆してキャリア4とした。
【0071】
[比較例3]
MnO換算で39モル%、MgO換算で10モル%、Fe換算で50モル%、SrO換算で1モル%となるように各原材料を適量配合し、仮焼成温度を800℃、本焼成雰囲気を大気、本焼成温度を1250℃とした以外は、実施例1と同様にMn−Mg−Sr系フェライト粒子(キャリア芯材)を得た。このキャリア芯材に実施例1と同様にしてシリコーン樹脂を被覆してキャリア5とした。
【0072】
[比較例4]
本焼成雰囲気を酸素濃度0.1容量%とした以外は、比較例5と同様にMn−Mg−Sr系フェライト粒子(キャリア芯材)を得た。このキャリア芯材に実施例1と同様にしてシリコーン樹脂を被覆してキャリア6とした。
【0073】
[比較例5]
MnO換算で20モル%、Fe換算で80モル%になるように各原材料を適量混合した以外は、実施例1と同様にマンガン系フェライト粒子(キャリア芯材)を得た。このキャリア芯材に実施例1と同様にしてシリコーン樹脂を被覆してキャリア7とした。
【0074】
実施例1〜2及び比較例1〜5のキャリア芯材の組成、仮焼成温度、本焼成雰囲気及び温度、仮焼成温度と本焼成温度の差(△)を表1に示す。また、得られたキャリア芯材の平均粒径、磁化(印可磁場1KOe)、抵抗(2mmGap、印可電圧900V)、キャリア(樹脂被覆後)の抵抗(2mmGap、印可電圧900V)を表2に示す。平均粒径、磁化及び抵抗の測定方法は上述の通りである。
【0075】
【表1】

【0076】
【表2】

【0077】
表2の結果からもわかるように、実施例1及び2のキャリアは、磁力、抵抗ともに十分に高く、またバランスがとれていることから、現像剤としたときにキャリア付着、解像度において優れていることは容易に想像できる。
【0078】
これに対して、比較例1〜5のキャリアは、磁力、抵抗ともに十分とはいえない。特に、比較例2及び3については磁力が低いことから、現像剤としたときにキャリア付着が発生する可能性が高い。また、比較例1、4及び5については、抵抗が低いことから、現像剤としたときに解像度に劣ることは、容易に想像できる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明の製造方法により得られたキャリア芯材は、特定組成のマンガンフェライトであり、高抵抗及び高磁化である。そして、キャリア芯材の表面に樹脂を被覆したキャリアは、トナーと共に電子写真現像剤とされる。この電子写真現像剤はキャリア付着を大幅に低減することができ、また解像度に優れる。
【0080】
従って、本発明によって得られたキャリア芯材及びキャリアは、二成分電子写真現像剤の用途に用いられ、特に高画質の要求されるフルカラー機並びに画像維持の信頼性及び耐久性の要求される高速機の分野に広く使用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料を粉砕、混合した後、仮焼成し、得られた仮焼成物を粉砕してスラリーとし、該スラリーを造粒後、得られた造粒物を本焼成する、下記一般式で示される電子写真現像剤用フェライト芯材の製造方法であって、
上記仮焼成温度を上記本焼成温度よりも高温とし、かつ本焼成後に表面酸化処理を行うことを特徴とする電子写真現像剤用フェライト芯材の製造方法。
【化1】

【請求項2】
上記仮焼成温度が1200〜1400℃であり、上記本焼成温度が1000〜1200℃である請求項1に記載の電子写真現像剤用フェライト芯材の製造方法。
【請求項3】
上記仮焼成温度と上記本焼成温度の差が10〜400℃である請求項1又は2に記載の電子写真現像剤用フェライト芯材の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法により得られたフェライト芯材の表面に樹脂を被覆することを特徴とする電子写真現像剤用フェライトの製造方法。