説明

電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリア芯材、フェライトキャリア及び該フェライトキャリアを用いた電子写真現像剤

【課題】樹脂充填型キャリアの利点を保持しつつ、高い帯電能力が長期に亘って維持でき、高品位な画質が得られ、画像欠陥を低減できる電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリア芯材、フェライトキャリア及び該フェライトキャリアを用いた電子写真現像剤を提供する。
【解決手段】多孔質フェライト粒子からなり、該多孔質フェライト粒子の組成が下記式(1)で表され、下記式(1)中の(MgO)及び/又は(Fe)の一部がSrOで置換されている電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリア芯材、該フェライトキャリア芯材の空隙に樹脂を充填してなるフェライトキャリア、並びに該フェライトキャリアを用いた電子写真現像剤を採用する。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンター等に用いられる二成分系電子写真現像剤に使用される樹脂充填型フェライトキャリア芯材及びフェライトキャリアに関し、詳しくは、樹脂充填型キャリアの利点を保持しつつ、高い帯電能力が長期に亘って維持でき、高品位な画質が得られ、画像欠陥を低減できる電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリア芯材、フェライトキャリア及び該フェライトキャリアを用いた電子写真現像剤に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真現像方法は、現像剤中のトナー粒子を感光体上に形成された静電潜像に付着させて現像する方法であり、この方法で使用される現像剤は、トナー粒子とキャリア粒子からなる二成分系現像剤及びトナー粒子のみを用いる一成分系現像剤に分けられる。
【0003】
こうした現像剤のうち、トナー粒子とキャリア粒子からなる二成分系現像剤を用いた現像方法としては、古くはカスケード法等が採用されていたが、現在では、マグネットロールを用いる磁気ブラシ法が主流である。
【0004】
二成分系現像剤において、キャリア粒子は、現像剤が充填されている現像ボックス内において、トナー粒子と共に攪拌されることによって、トナー粒子に所望の電荷を付与し、さらにこのように電荷を帯びたトナー粒子を感光体の表面に搬送して感光体上にトナー像を形成するための担体物質である。マグネットを保持する現像ロール上に残ったキャリア粒子は、この現像ロールから再び現像ボックス内に戻り、新たなトナー粒子と混合・攪拌され、一定期間繰り返して使用される。
【0005】
二成分系現像剤は、一成分系現像剤とは異なり、キャリア粒子はトナー粒子と混合・攪拌され、トナー粒子を帯電させ、さらに搬送する機能を有しており、現像剤を設計する際の制御性が良い。従って、二成分系現像剤は高画質が要求されるフルカラー現像装置及び画像維持の信頼性、耐久性が要求される高速印刷を行う装置等に適している。
【0006】
このようにして用いられる二成分系現像剤においては、画像濃度、カブリ、白斑、階調性、解像力等の画像特性が、初期の段階から所定の値を示し、しかもこれらの特性が耐刷期間中に変動せず、安定に維持されることが必要である。これらの特性を安定に維持するためには、二成分系現像剤中に含有されるキャリア粒子の特性が安定していることが必要になる。
【0007】
二成分系現像剤を形成するキャリア粒子として、従来は、表面を酸化被膜で覆った鉄粉あるいは表面を樹脂で被覆した鉄粉等の鉄粉キャリアが使用されていた。このような鉄粉キャリアは、磁化が高く、導電性も高いことから、ベタ部の再現性のよい画像が得られやすいという利点がある。
【0008】
しかしながら、このような鉄粉キャリアは真比重が約7.8と重く、また磁化が高すぎることから、現像ボックス中におけるトナー粒子との攪拌・混合により、鉄粉キャリア表面へのトナー構成成分の融着、いわゆるトナースペントが発生しやすくなる。このようなトナースペントの発生により有効なキャリア表面積が減少し、トナー粒子との摩擦帯電能力が低下しやすくなる。
【0009】
また、樹脂被覆鉄粉キャリアでは、耐久時のストレスにより表面の樹脂が剥離し、高導電性で絶縁破壊電圧が低い芯材(鉄粉)が露出することにより、電荷のリークが生ずることがある。このような電荷のリークにより、感光体上に形成された静電潜像が破壊され、ベタ部にハケスジ等が発生し、均一な画像が得られにくい。これらの理由から、酸化被膜鉄粉及び樹脂被覆鉄粉等の鉄粉キャリアは、現在では使用されなくなってきている。
【0010】
近年は、鉄粉キャリアに代わって真比重約5.0程度と軽く、また磁化も低いフェライトをキャリアとして用いたり、さらに表面に樹脂を被覆した樹脂コートフェライトキャリアが多く使用されており、現像剤寿命は飛躍的に伸びてきた。
【0011】
最近、オフィスのネットワーク化が進み、単機能の複写機から複合機への時代に進化し、サービス体制も、契約したサービスマンが定期的にメンテナンスを行って現像剤等を交換するようなシステムから、メンテナンスフリーシステムの時代へシフトしてきており、市場からは、現像剤の更なる長寿命化に対する要求が一層高まってきている。
【0012】
このような中で、キャリア粒子の軽量化を図り、現像剤寿命を伸ばすことを目的として、微細な磁性微粒子を樹脂中に分散させた磁性粉分散型キャリアが多く提案されている。
【0013】
このような磁性粉分散型キャリアは、真比重は軽く長寿命化に対しては有利であるが、高抵抗になりやすく画像濃度を容易に得ることが難しく、また帯電量制御が容易でない。また、分散する磁性粉の量で磁化制御を行うため、真比重(寿命の指標)と他物性(画像特性制御)の合わせ込みが困難である。さらに、樹脂で磁性粉を固めているため、硬度が低く割れたり、磁性粉が脱離したり、熱により溶融、変形したりする。
【0014】
磁性粉分散型キャリアに代わるものとして多孔性キャリア芯材の空隙に樹脂を充填した樹脂充填型キャリアが提案されている。樹脂充填型キャリアは、組成、焼結(焼成)条件をコントロールすることにより結晶成長を抑え、非常にポーラスな芯材粒子を形成させ、そこに任意の樹脂を充填させるため、樹脂を充填することにより、真比重が軽くなり長寿命が達成できる。また、充填する樹脂の選択により、帯電量等の制御が容易にできる。磁性粉分散型キャリアに比べ、強度があり、熱や衝撃による割れ、変形、溶融がないという利点も有する。
【0015】
しかし、Mnを含有したフェライトは、電気抵抗が低いため、樹脂を充填しても絶縁破壊電圧を十分に高めることができず、白斑等の画像欠陥の原因となる。また、所望とする樹脂量が充填できるような多孔質性にする場合、フェライトの焼成温度を低めに設定し、焼結を完全に進ませない状態で多孔質性(細孔)を形成する必要がある。このような低温で焼成する場合、該フェライトにMnを含有させると、磁化の低い粒子が発生しやすく、また粒子間で多孔質性(細孔の状態)が異なるといった不具合が生じやすい。
【0016】
さらに、Cu、Zn、Ni及びMn等の重金属は、近年の環境負荷の低減や労働安全衛生等の観点から、できる限り使用しないことが望まれている。
【0017】
そこで、Mgを含有するキャリア芯材を用いたキャリアが提案されている。すなわち、特許文献1(特開2007−218955号公報)には、Mg及び/又はMnを主成分とし、MgO及び/又はMnOの量が0〜50(モル比)である磁性相とSiO、Al、Al(OH)の1種類以上を含んでなる非磁性を有し、細孔容積が0.03〜0.15ml/gであるキャリア芯材に樹脂を被覆してなるキャリア粒子が開示され、実施例においてはFe:Mg(OH)=80:20となるように配合して得られたキャリア芯材を用いたキャリアが開示されている。
【0018】
この特許文献1において開示されているMgO及び/又はMnOの含有範囲は、非常に広範囲であり、この範囲全域で、所望とする細孔容積と磁気特性の両方を満足することはできない。特に、Mnを含まない場合及びMgの量が少ないときは、細孔容積を高めるために焼成温度を低くして焼成すると、高い細孔容積が得られるものの、同時に磁化が低下してしまう。また、所望の細孔容積を得られる焼成温度領域において、焼成温度に対する磁化の変動が大きく、生産安定性、磁化の発現再現性を著しく悪くするものである。
【0019】
特許文献2(特開2006−317620号公報)には、MgO源としてMg(OH)含有物質を用い、MgOを5〜35mol%含有するフェライト粒子を芯材にもつ電子写真現像用キャリア粉が開示されている。このような組成範囲でフェライトを製造した場合には、特許文献2に記載のように樹脂剥離強度を得るための「ディンプル」を表面に形成することは可能であるが、芯材に積極的に細孔を形成させ、該細孔に充填(含浸)させ、軽量化を図った樹脂充填型キャリアを得ることはできない。特に、式(MgO)(Fe100−Xにおいて、Xが25mol%未満の場合、細孔容積を高めるために焼成温度を低くして焼成すると、細孔容積は得られるものの、同時に磁化が低下してしまう。また、所望の細孔容積を得られる焼成温度領域において、焼成温度に対する磁化の変動が大きく、生産安定性、磁化の発現再現性を著しく悪くするものである。
【0020】
特許文献3(特開2008−107841号公報)には、構成成分が鉄・酸素・マグネシウムで、マグネシウムを0.5〜10重量%含有するコア材が樹脂被覆されている電子写真用キャリアが開示されている。上記マグネシウム含有フェライトをフェライトの一般式で記載すると、(MgO)(Fe100−Xにおいて、Xが2.3〜33.8mol%であること意味している。この特許文献3は、段落[0010]に記載があるように、粒子の空隙量が増大させることを目的としておらず、ある程度高い焼成温度で焼成したフェライトコアに樹脂被覆を行う樹脂被覆キャリアに関するもので、積極的に粒子を多孔質性にして、得られた細孔に樹脂を充填して得られる樹脂充填型キャリアとは全く異なるものである。従って、特許文献3に記載されているような広範囲にわたるMgの含有量の全領域で、所望される細孔容積と磁気特性を安定的に得ることはできないものであった。
【0021】
特許文献4(特開2008−96977号公報)には、少なくともマグネシウム元素を含有するフェライトよりなるコア粒子の表面に樹脂を被覆してなるキャリアであって、コア粒子表面の最大グレイン径が2〜5μmであることを特徴とするキャリアが開示されている。また、特許文献4にはマンガン元素を含有するものが好ましいとされ、その段落[0058]には、Mg(OH)の割合が10〜40モル%が好ましいとの記載がある。このような芯材は、グレイン径が比較的小さく、特定の範囲のグレイン径にすることでコア粒子表面が均一な粗さとなり、結果として樹脂を均一に被覆しやすくなると記載されている。また、グレイン径が2μm未満とすることはコア粒子の作成において困難である旨の開示がある。特許文献4に記載のフェライトは、実質的にはMnを含有するものであり、芯材の電気抵抗が低くなりやすい、磁化及び多孔質性(細孔の形成状態)について粒子間でばらつきが発生しやすい等の課題があった。また、重金属を用いていることから、近年の環境規制、環境負荷低減等に対して有効なものではなかった。さらに、Mg(OH)の割合が10〜40モル%という広範囲にわたっているため、所望される細孔容積と磁気特性を安定的に得ることはできないものであった。
【0022】
一方、特許文献5(特開2006−337579号公報)及び特許文献6(特開2007−57943号公報)には、芯材に形成した空隙(細孔)に樹脂を充填した樹脂充填型キャリアが開示されている。また、芯材として各種の元素を用いることができる旨が記載されている。これらの特許文献に記載の樹脂充填型キャリアは、確かに軽量化が図られる等の効果で、長期に渡って高品位な画質を得やすいという利点があるが、実質的にはMnを含有するものであり、キャリア芯材の電気抵抗が低くなりやすい、磁化及び多孔質性(細孔の形成状態)について粒子間でばらつきが発生しやすい等の課題があった。さらに、重金属を用いていることから、近年の環境規制、環境負荷低減等に対して有効なものではなかった。
【0023】
特許文献7(特開2008−175883号公報)には、Mn含有量を極力低減したキャリア芯材を用いた電子写真現像剤用キャリアが開示されている。しかし、特許文献7に記載のキャリアはLiを主成分とするものであり、Liが存在することによって、吸湿性が高まり、帯電特性や電気抵抗特性が、使用環境(温湿度)によって大きく変動するという課題があった。特に、樹脂充填型キャリアとして用いる場合、キャリア芯材の多孔質性によって比表面積が増大するため、近年の温湿度依存性の低減に対する高い要求を満足するものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】特開2007−218955号公報
【特許文献2】特開2006−317620号公報
【特許文献3】特開2008−107841号公報
【特許文献4】特開2008−96977号公報
【特許文献5】特開2006−337579号公報
【特許文献6】特開2007−57943号公報
【特許文献7】特開2008−175883号公報
【0025】
このように、上記した樹脂充填型キャリアの利点を保持しつつ、高い帯電能力が長期に亘って維持でき、高品位な画質が得られ、画像欠陥を低減できる電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリアが求められていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
従って、本発明の目的は、樹脂充填型キャリアの利点を保持しつつ、高い帯電能力が長期に亘って維持でき、高品位な画質が得られ、画像欠陥を低減できる電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリア芯材、フェライトキャリア及び該フェライトキャリアを用いた電子写真現像剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明者らは、上述のような課題を解決すべく鋭意検討した結果、キャリア芯材として、Mnを実質的に含有せず、Mg、Fe及びOを主成分とし、一部をSrで置換した多孔質フェライト粒子を用いることによって上記課題が解決されることを知見して本発明に至った。
【0028】
すなわち、本発明は、多孔質フェライト粒子からなり、該多孔質フェライト粒子の組成が下記式(1)で表され、下記式(1)中の(MgO)及び/又は(Fe)の一部がSrOで置換されていることを特徴とする電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリア芯材を提供するものである。
【0029】
【化1】

【0030】
本発明に係る上記電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリア芯材において、上記SrOの置換量が、上記多孔質フェライト粒子の0.1〜2.5モル%であることが望ましい。
【0031】
本発明に係る上記電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリア芯材において、上記多孔質フェライト粒子の細孔容積が40〜160mm/g、ピーク細孔径が0.3〜2.0μm、細孔径分布において下記式(2)で表される細孔径のばらつきdvが1.5以下であることが望ましい。
【0032】
【数1】

【0033】
本発明に係る上記電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリア芯材において、上記多孔質フェライト粒子は、飽和磁化が55〜80Am/kgであることが望ましい。
【0034】
本発明に係る上記電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリア芯材において、上記多孔質フェライト粒子は、還元性雰囲気下で焼成された後、さらに還元性雰囲気下もしくは不活性雰囲気下で焼成されて得られたものであることが望ましい。
【0035】
本発明に係る上記電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリア芯材において、上記多孔質フェライト粒子の最終焼成工程の前の飽和磁化が55〜80Am/kgであり、最終焼成工程後の飽和磁化との比(最終焼成工程前の飽和磁化/最終焼成工程後の飽和磁化)が、0.75〜1.25であることが望ましい。
【0036】
本発明に係る上記電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリア芯材において、上記多孔質フェライト粒子の最終焼成工程の前の細孔容積が150mm/g以上であり、最終焼成工程後の細孔容積との比(最終焼成工程前の細孔容積/最終焼成工程後の細孔容積)が、1.2〜6.0であることが望ましい。
【0037】
また、本発明は、上記フェライト粒子からなるフェライトキャリア芯材の細孔に樹脂を充填してなることを特徴とする電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリアを提供するものである。
【0038】
本発明に係る上記電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリアにおいて、上記樹脂がシリコーン系樹脂であることが望ましい。
【0039】
本発明に係る上記電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリアにおいて、上記多孔質フェライト粒子に充填する樹脂の量が、上記多孔質フェライト粒子100重量部に対して6〜20重量部であることが望ましい。
【0040】
本発明に係る上記電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリアは、表面に樹脂が被覆されていることが望ましい。
【0041】
本発明に係る上記電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリアは、体積平均粒径が20〜70μm、飽和磁化が53〜78Am/kg、粒子密度が3.5〜4.3g/cm、見掛け密度が1.0〜2.2g/cm、24μm未満の粒子が5体積%以下であることが望ましい。
【0042】
また、本発明は、上記樹脂充填型フェライトキャリアとトナーとからなる電子写真現像剤を提供するものである。
【0043】
本発明に係る上記電子写真現像剤は、補給用現像剤としても用いられる。
る。
【発明の効果】
【0044】
本発明に係る電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリア芯材及びその空隙に樹脂を充填したフェライトキャリアは、低比重で軽量化が図れるため、耐久性に優れ長寿命化が達成でき、しかも磁性粉分散型キャリアに比して高強度であり、かつ熱や衝撃による割れ、変形、溶融がない。また、帯電能力が高く、長期間撹拌しても帯電能力を維持でき、しかも磁気ブラシが柔らかく高品位な画質が得られる。さらに、Mnを含有しないため、キャリア芯材の電気抵抗が低すぎず、高画質が得られ、白斑等の画像欠陥を低減できると共に、磁化及び多孔質性(細孔の形成状態)について、粒子間でばらつきが少なく、キャリア付着等の画像欠陥を低減できる。さらには、Cu、Zn、Ni及びMn等の重金属を含まないため、現在の環境規制に適合できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、実施例1〜5及び比較例1〜5の多孔質フェライト粒子の本焼成温度と飽和磁化の関係を示すグラフである。
【図2】図2は、実施例1〜5及び比較例1〜5の多孔質フェライト粒子の本焼成温度と細孔容積の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
<本発明に係る電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリア芯材、フェライトキャリア>
【0047】
本発明に係る電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリア芯材は、多孔質フェライト粒子からなり、Mg、Fe及びOを主成分とする。Mg、Fe及びOを主成分とすることによって、帯電能が高く、長期間撹拌しても帯電能力を維持できる。また、各重金属やMnを実質的に用いないので、キャリア芯材の電気抵抗が低すぎず、現在の環境規制に適合できる。
【0048】
Mgを含むフェライトは、焼成温度を上げても多孔質性を維持しやすいため、樹脂充填型キャリアのキャリア芯材に好適である。また、Mg及びFeを主成分としたフェライトは、特定の焼成温度幅で、飽和磁化が変動せず、細孔容積のみが制御でき、その結果、所望の比重を持つ樹脂充填型キャリアが得られ、製造ばらつきが小さい。
【0049】
この多孔質フェライト粒子の組成は下記式(1)で表され、下記式(1)中の(MgO)及び/又は(Fe)の一部がSrOで置換されている。
【0050】
【化2】

【0051】
上記式(1)中、xは10モル%以上25モル%未満、望ましくは12〜23モル%、特に望ましくは13〜22モル%である。また、yは75モル%超90モル%以下、望ましくは77〜88モル%、最も望ましくは78〜87モル%である。多孔質フェライト粒子がこの組成において、1050〜1200℃の範囲で焼成した際に発現する飽和磁化が、温度によらずほぼ一定の値となるため、製造ばらつきが小さい。また、焼成温度によって、細孔容積を容易に可変できるため、所望の細孔容積を得ることが容易で、その結果、所望の比重を持つ樹脂充填型キャリアが得られる。多孔質フェライト粒子の組成において、上記xが10モル%未満及び上記yが90モル%超では、低温での焼成において細孔容積を大きくすることはできるが、磁化を高めることが困難であり、高温での焼成においては磁化を高めることは可能であるが、細孔容積が小さくなってしまう。上記xが25モル%以上及び上記yが75モル%以下では、上記の焼成温度領域において所望とする細孔容積を得ることはできるが、磁化が低くなってしまう。
【0052】
上記式(1)中の(MgO)及び/又は(Fe)の一部はSrOで置換されている。多孔質フェライト粒子中にSrOを含有させることによって、磁化の粒子間ばらつきを低減できる。また、多孔質性を得るために焼成温度を低めて焼成した場合、磁化の低下を抑制する効果がある。さらに、適量のSrOを含有させることにより、低温で焼成しても磁化を低下させずに所望の細孔容積を得ることができる。SrOの置換量は、多孔質フェライト粒子の0.1〜2.5モル%が望ましく、0.1〜1.5モル%が最も望ましい。SrOの置換量が0.1モル%未満では、上記したSrOの置換効果が得られず、2.5モル%を超えると、残留磁化、保磁力が大きくなってしまうため、磁気ブラシから離れても磁気力による凝集が発生し、トナーとの混合性が著しく悪くなるため好ましくない。
【0053】
本発明に用いられる多孔質フェライト粒子は、不可避不純物又は随伴不純物以上にCu、Zn、Ni及びMnを含有しない。Mnを含有しないことにより、キャリア芯材の電気抵抗が低すぎない。これによって白斑等の画像欠陥を低減できる。また、磁化及び多孔質性(細孔の形成状態)について、粒子間でばらつきが少なく、キャリア付着等の画像欠陥を低減できる。さらに、Cu、Zn、Ni及びMn等の重金属を含まないため、現在の環境規制に適合する。これらの含有量は、上記各元素の総量として2.0重量%以下に抑制されることが望ましく、さらに望ましくは1.5重量%以下、最も望ましくは1.0重量%以下である。
【0054】
多孔質フェライト粒子の50V及び100Vにおける電気抵抗は、いずれも10Ω以上であることが好ましく、10Ω以上であることがより望ましく、10〜10Ωが最も望ましい。
【0055】
〔多孔質フェライト粒子の電気抵抗〕
この多孔質フェライト粒子の電気抵抗の測定は、次のようにして行われる。
電極間間隔6.5mmにて非磁性の平行平板電極(10mm×40mm)を対抗させ、その間に、試料200mgを秤量して充填する。磁石(表面磁束密度:1500Gauss、電極に接する磁石の面積:10mm×30mm)を平行平板電極に付けることにより電極間に試料を保持させ、50V及び100Vの電圧を順に印加し、それぞれの印加電圧における抵抗を絶縁抵抗計(SM−8210、東亜ディケーケー(株)製)にて測定した。なお、室温25℃、湿度55%に制御された恒温恒湿室内で測定を行った。
【0056】
この多孔質フェライト粒子の細孔容積は、望ましく40〜160mm/g、さらに望ましくは40〜100mm/g、最も望ましくは50〜80mm/gである。多孔質フェライト粒子の細孔容積が40mm/g未満であると、十分な量の樹脂を充填することができないため軽量化が図れない。また、多孔質フェライト粒子の細孔容積が160mm/gを超えると、樹脂を充填してもキャリアの強度を保つことができない。
【0057】
多孔質フェライト粒子のピーク細孔径は、望ましくは0.3〜2.0μm、さらに望ましくは0.3〜1.8μm、最も好ましくは0.3〜1.5μmである。多孔質フェライト粒子のピーク細孔径が0.3μm以上であると、芯材表面の凹凸の大きさが適度な大きさとなるため、トナーの接触面積が増加し、トナーとの摩擦帯電が効率よく行われるため、低比重でありながら、帯電の立ち上がり特性が良好化する。多孔質フェライト粒子のピーク細孔径が0.3μm未満では、このような効果が得られず、充填後のキャリア表面は平滑となるため、低比重であるキャリアにとっては、トナーとの十分なストレスが与えられず、帯電の立ち上がりが悪化する。また、多孔質フェライト粒子のピーク細孔径が2.0μmを超えると、粒子の表面積に対して、樹脂が存在する面積が大きくなるため、樹脂を充填する際に、粒子間の凝集が発生し易く、樹脂を充填したあとのキャリア粒子中に、凝集粒子や異形粒子が多く存在する。このため、耐刷におけるストレスで凝集粒子が解れ、帯電変動を引き起こす原因となる。更に、ピーク細孔径が2.0μmを超える様な多孔質フェライト粒子を用いたキャリア芯材は、キャリア芯材表面の凹凸が大きいことを表し、このことは、粒子そのものの形状が悪いということであり、また強度的にも劣るため、耐刷におけるストレスにより、キャリア粒子自体の割れが生じ、帯電変動を引き起こす原因となる。
【0058】
このように、細孔容積とピーク細孔径が上記範囲にあることで、上記した各不具合がなく、適度に軽量化された樹脂充填型キャリアを得ることができる。
【0059】
〔多孔質フェライト粒子の細孔径及び細孔容積〕
この多孔質フェライト粒子の細孔径及び細孔容積の測定は、次のようにして行われる。すなわち、水銀ポロシメーターPascal140とPascal240(ThermoFisher Scientific社製)を用いて測定した。ディラトメータはCD3P(粉体用)を使用し、サンプルは複数の穴を開けた市販のゼラチン製カプセルに入れて、ディラトメータ内に入れた。Pascal140で脱気後、水銀を充填し低圧領域(0〜400Kpa)を測定し、1st Runとした。次に再び脱気と低圧領域(0〜400Kpa)の測定を行い、2nd Runとした。2nd Runの後、ディラトメータと水銀とカプセルとサンプルを合わせた重量を測定した。次にPascal240で高圧領域(0.1Mpa〜200Mpa)を測定した。測定後、圧力から換算される細孔径が3μm以下のデータ(圧力、水銀圧入量)から、多孔質フェライト粒子の細孔容積、細孔径分布及びピーク細孔径を求めた。また、細孔径を求める際には装置付属の制御・解析兼用ソフトウェア PASCAL 140/240/440を用い、水銀の表面張力を480dyn/cm、接触角を141.3°として計算した。ピーク細孔径は、同ソフトウェア上においてdV/dlogdを計算し、most freq.の値を採用した。dV/dlogdの計算では、Number of point to average を6、Smooth Dumping factor を0.95とした。
【0060】
多孔質フェライト粒子の細孔径分布において、細孔径のばらつきdvが1.5以下であることが望ましく、より望ましくは0.9以下、最も望ましくは0.8未満である。ここで、高圧領域における全水銀圧入量を100%とし、圧入量が84%に達した時の水銀への印加圧力から計算した細孔径をd84、圧入量が16%に達した時の水銀への印加圧力から計算した細孔径をd16とした。また、dv値は下記式(2)により計算した。
【0061】
【数2】

【0062】
多孔質フェライト粒子の細孔径のばらつきdvが1.5を超えると、粒子間の凹凸と芯材形状のばらつきが大きくなることを意味している。従って、dv値が所望の範囲を超えると、粒子の形状や、充填による凝集について、粒子間ばらつきが発生しやすいため、結果的に帯電の立ち上がりが悪くなったり、帯電変動が大きくなったりする原因となる。
【0063】
本発明に係る多孔質フェライト粒子の飽和磁化は、55〜80Am/kgが望ましく、さらに望ましくは60〜75Am/kg、最も望ましくは63〜73Am/kgである。
【0064】
一般的にオフィスで用いられるコピー機やプリンターにおいて、比較的現像速度が遅い装置に用いられる場合、飽和磁化が40〜50Am/kgのキャリアでも使用できる場合がある。また比較的磁化の低いキャリアを使用することで磁気ブラシの穂を柔らかくし、高画質化を図ることがある。しかし、高速機やフルカラー機のように高現像能力が求められる場合や、装置自体の小型化を図るために現像機を小型化する場合には、マグネットローラーの回転速度を上げなければならない。このような場合、飽和磁化が53Am/kg未満であると、キャリア付着の原因となるため望ましくない。また、飽和磁化が78Am/kgを超えると、キャリア付着は抑制できるが磁気ブラシの穂が硬くなるために、良好な画質を得ることが難しい。
【0065】
このような電子写真用キャリアにおいて、本発明のような樹脂充填型フェライトキャリアを適用する場合、樹脂を充填させることによって低比重化が図られ、耐久性が向上するという利点があるが、同時に樹脂を充填する前のフェライト芯材に比べて、樹脂を充填した後の磁化が低くなる。この点を考慮すると、上述のような磁化を、樹脂を充填した後に実現するためには、本発明にかかる多孔質フェライト粒子の飽和磁化は、上述のような範囲が望ましい。
【0066】
上述のような範囲の多孔質フェライト粒子を用いると、樹脂を充填した後のキャリアの飽和磁化が、53〜78Am/kg、望ましくは57〜72Am/kg、最も望ましくは60〜70Am/kgの範囲となる。
【0067】
〔磁気特性〕
ここで、磁化の測定は、積分型B−HトレーサーBHU−60型(株式会社理研電子製)を使用して測定した。電磁石間に磁場測定用Hコイル及び磁化測定用4πIコイルを入れる。この場合、試料は4πIコイルに入れる。電磁石の電流を変化させ磁場Hを変化させたHコイル及び4πIコイルの出力をそれぞれ積分し、H出力をX軸に、4πIコイルの出力をY軸に、ヒステリシスループを記録紙に描く。ここで測定条件としては、試料充填量:約1g、試料充填セル:内径7mmφ±0.02mm、高さ10mm±0.1mm、4πIコイル:巻数30回にて測定した。
【0068】
多孔質フェライト粒子は、還元性雰囲気下で焼成(中間焼成)された後、さらに還元性雰囲気下もしくは不活性雰囲気下で焼成(本焼成)されて得られたものであることが望ましい。
【0069】
多孔質フェライト粒子は、還元性雰囲気下で焼成(中間焼成)することによって磁化を発現させる。その後、還元性雰囲気もしくは不活性雰囲気下で焼成する(本焼成)ことによって、発現した磁化を、極端に低下させることなく、一定の範囲で維持したまま結晶成長が進み、所望とする多孔質性(細孔容積、細孔径)を得ることができる。
【0070】
中間焼成を酸化性雰囲気で行うと高い磁化が発現しないため好ましくない。また、本焼成雰囲気を酸化性雰囲気で行うと、結晶成長は進むが、同時に磁化が低下してしまうため好ましくない。
【0071】
上記多孔質フェライト粒子の本焼成工程の前の飽和磁化が55〜80Am/kgであり、本焼成工程後の飽和磁化との比(本焼成工程前の飽和磁化/本焼成工程後の飽和磁化)が、0.75〜1.25であることが望ましく、さらに望ましくは0.85〜1.15、最も好ましくは0.90〜1.10である。
【0072】
この比が、0.75未満であると本焼成時の磁化の低下が大きすぎることを意味しており、本焼成時に粒子間での磁化のばらつきを発生している可能性が高く、上述したようなキャリア付着等の原因となるため好ましくない。また、1.25を超えると、磁化は高くなるが、結晶成長が進みすぎる可能性があり、所望とする多孔質性をえることが困難となる。
【0073】
上記多孔質フェライト粒子の本焼成工程の前の細孔容積150mm/g以上であることが望ましく、さらに望ましくは150〜350mm/gである。また、本焼成工程後の細孔容積との比(本焼成工程前の細孔容積/本焼成工程後の細孔容積)が、1.2〜6.0であることが望ましく、さらに望ましくは1.2〜5.5、最も好ましくは1.3〜5.0である。
【0074】
上記多孔質フェライト粒子の本焼成工程前の細孔容積が150mm/g未満であると、本焼成後の細孔容積が小さくなりすぎるため好ましくない。
また、本焼成工程後の細孔容積との比が、1.2未満であると、本焼成前から結晶成長が十分に進んでいないことを意味し、所望とする多孔質性、特にピーク細孔径が小さくなりすぎるため、樹脂を充填しにくくなるため好ましくない。また、6.0を超えると、結晶成長が過度に進んでいることを意味し、所望とする多孔質性を得られにくいことに加え、多孔質性の粒子間ばらつきが発生している可能性が高く、樹脂を充填した後の粒子密度や磁化についても粒子間バラツキが発生し、帯電特性の劣化やキャリア付着の原因となるので好ましくない。
【0075】
本発明に係る電子写真現像剤用樹脂充填型キャリアは、多孔質フェライト粒子(キャリア芯材)に樹脂を充填する。樹脂の充填量は、多孔質フェライト粒子100重量部に対して6〜20重量部が望ましく、より望ましくは7〜15重量部であり、最も望ましくは7〜12重量部である。樹脂の充填量が6重量部未満であると、十分な軽量化が図れない。また、樹脂の充填量が20重量部を超えると、充填時に凝集粒子が発生しやすくなり、帯電変動の原因となる。
【0076】
充填する樹脂は、特に制限されず、組み合わせるトナー、使用される環境等によって適宜選択できる。例えば、フッ素樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フッ素アクリル樹脂、アクリル−スチレン樹脂、シリコーン樹脂、あるいはアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アルキッド樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等の各樹脂で変性した変性シリコーン樹脂等が挙げられる。使用中の機械的ストレスによる樹脂の脱離を考慮すると、熱硬化性樹脂が好ましく用いられる。具体的な熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂及びそれらを含有する樹脂が挙げられる。
【0077】
これらの樹脂の中でもシリコーン樹脂が望ましく、シリコーン樹脂としては、メチル系シリコーン樹脂、フェニル系シリコーン樹脂、メチルフェニル系シリコーン樹脂が挙げられるが、メチルフェニル系シリコーン樹脂が最も好ましく使用される。
【0078】
キャリアの電気抵抗や帯電量、帯電速度をコントロールすることを目的に、充填樹脂中に導電性剤を添加することができる。導電性剤はそれ自身の持つ電気抵抗が低いことから、添加量が多すぎると急激な電荷リークを引き起こしやすい。従って、添加量としては、充填樹脂の固形分に対し0.25〜20.0重量%であり、好ましくは0.5〜15.0重量%、特に好ましくは1.0〜10.0重量%である。導電性剤としては、導電性カーボンや酸化チタン、酸化スズ等の酸化物、各種の有機系導電剤が挙げられる。
【0079】
また、充填樹脂中には、帯電制御剤を含有させることができる。帯電制御剤の例としては、トナー用に一般的に用いられる各種の帯電制御剤や、各種シランカップリング剤が挙げられる。これは多量の樹脂を充填した場合、帯電付与能力が低下することがあるが、各種の帯電制御剤やシランカップリング剤を添加することにより、コントロールできるためである。使用できる帯電制御剤やカップリング剤の種類は特に限定されないが、ニグロシン系染料、4級アンモニウム塩、有機金属錯体、含金属モノアゾ染料等の帯電制御剤、アミノシランカップリング剤やフッ素系シランカップリング剤等が好ましい。
【0080】
本発明に係る電子写真現像剤用樹脂充填型キャリアは、被覆樹脂により表面被覆することが望ましい。キャリア特性、特に帯電特性を初めとする電気特性はキャリア表面に存在する材料や性状に影響されることが多い。従って、適当な樹脂を表面被覆することによって、所望とするキャリア特性を、精度良く調整することができる。
【0081】
被覆樹脂は特に制限されない。例えば、フッ素樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、フッ素アクリル樹脂、アクリル−スチレン樹脂、シリコーン樹脂、あるいはアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、アルキッド樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等の各樹脂で変性した変性シリコーン樹脂等が挙げられる。使用中の機械的ストレスによる樹脂の脱離を考慮すると、熱硬化性樹脂が好ましく用いられる。具体的な熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキッド樹脂及びそれらを含有する樹脂等が挙げられる。樹脂の被覆量は、充填型キャリア(樹脂被覆前)100重量部に対して、0.5〜5.0重量部が好ましい。
【0082】
これら被覆樹脂中にも上記と同様な目的で導電性剤や帯電制御剤を含有することができる。導電性剤や帯電制御剤の種類や添加量は、上記充填樹脂の場合と同様である。
【0083】
本発明に係る電子写真現像剤用樹脂充填型キャリアの体積平均粒径は、20〜70μmであることが望ましく、さらに望ましくは30〜70μm、最も好ましくは30〜60μmである。この範囲でキャリア付着が防止され、また良好な画質が得られる。体積平均粒径が20μm未満であると、キャリア付着の原因となるため好ましくない。また、体積平均粒径が70μmを超えると、帯電付与能力の低下による画質劣化の原因となるため好ましくない。
【0084】
〔体積平均粒径(マイクロトラック)〕
この体積平均粒径は、次のようにして測定される。すなわち、日機装株式会社製マイクロトラック粒度分析計(Model9320−X100)を用いて測定される。分散媒には水を用いた。試料10gと水80mlを100mlのビーカーに入れ、分散剤(ヘキサメタリン酸ナトリウム)を2〜3滴添加する。次いで超音波ホモジナイザー(SMT.Co.LTD.製UH−150型)を用い、出力レベル4に設定し、20秒間分散を行った。その後、ビーカー表面にできた泡を取り除き、試料を装置へ投入した。後述する24μm未満の粒子の体積%も同様に測定して算出した。
【0085】
本発明に係る電子写真現像剤用樹脂充填型キャリアの粒子密度は3.5〜4.3g/cmであることが望ましく、さらに望ましくは3.7〜4.1g/cmである。粒子密度が3.5g/cm未満であると、キャリアが軽量過ぎるために帯電付与能力が低下し易い。また、粒子密度が4.3g/cmを超えると、キャリアの軽量化が十分でなく、耐久性に劣る。
【0086】
〔粒子密度〕
粒子密度は、次のようにして測定した。すなわち、JIS R9301−2−1に準拠して、ピクノメーターを用いて測定した。ここで、溶媒としてメタノールを用い、温度25℃にて測定を行った。
【0087】
本発明に係る電子写真現像剤用樹脂充填型キャリアの見掛密度は、1.0〜2.2g/cmであることが望ましく、さらに望ましくは1.0〜2.0g/cm、最も望ましくは1.3〜1.8g/cmである。見掛密度が1.0g/cm未満であると、キャリアが軽量過ぎるために帯電付与能力が低下し易い。見掛密度が2.2g/cmを超えると、キャリアの軽量化が十分でなく、耐久性に劣る。
【0088】
〔見掛け密度〕
この見掛け密度の測定は、JIS−Z2504(金属粉の見掛け密度試験法)に従って測定される。
【0089】
本発明に係る電子写真現像剤用樹脂充填型キャリアの24μm未満の粒子が5体積%以下であることが望ましく、4体積%以下であることがさらに望ましく、3体積%以下であることが最も望ましい。24μm未満の粒子が5体積%を超えると、キャリア付着が発生しやすく好ましくない。この測定方法は、上述した体積平均粒径の測定方法で述べた通りである。
【0090】
<本発明に係る電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリア芯材及びフェライトキャリアの製造方法>
本発明に係る電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリア芯材及びフェライトキャリアの製造方法について説明する。
【0091】
本発明に係る電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリア芯材(多孔質フェライト粒子)を製造するには、まず、原材料を適量秤量した後、ボ−ルミル又は振動ミル等で0.5時間以上、好ましくは1〜20時間粉砕混合する。原料は特に制限されないが、上述した元素を含有する組成となるように選択することが望ましい。
【0092】
このようにして得られた粉砕物を加圧成型機等を用いてペレット化した後、600〜1200℃の温度で仮焼成する。加圧成型機を使用せずに、粉砕した後、水を加えてスラリー化し、スプレードライヤーを用いて粒状化しても良い。仮焼成後さらにボ−ルミル又は振動ミル等で粉砕した後、水及び必要に応じ分散剤、バインダー等を添加し、粘度調整後、スプレードライヤーにて粒状化し、造粒を行う。仮焼後に粉砕する際は、水を加えて湿式ボールミルや湿式振動ミル等で粉砕しても良い。
【0093】
仮焼成は必ずしも行わなくてもよい。一般的な電子写真用キャリアに用いられている多孔質でないフェライト粒子の場合、仮焼成をしないと、表面から連続しないで内部に独立した空孔が発生しやすく、磁化や粒子密度の粒子間ばらつきを発生させやすいため好ましくない。
【0094】
しかし、本発明のような多孔質フェライト粒子の場合、多孔質性を得るために低温で焼成し、積極的に細孔を形成させることが特徴であるため、上述のような不具合は生じにくい。
【0095】
上記のボールミルや振動ミル等の粉砕機は特に限定されないが、原料を効果的かつ均一に分散させるためには、使用するメディアに1mm以下の粒径を持つ微粒なビーズを使用することが好ましい。また使用するビーズの径、組成、粉砕時間を調整することによって、粉砕度合いをコントロールすることができる。
【0096】
その後、得られた造粒物を、400〜800℃程度の温度で加熱し、添加した分散剤やバインダーといった有機成分の除去を行う。分散剤やバインダーが残ったまま本焼成を行うと、有機成分の分解、酸化によって本焼成装置内の酸素濃度が変動しやすく、磁気特性に大きく影響を与えるため、安定して生産することが困難である。また、これらの有機成分は、多孔質性の制御、つまりフェライトの結晶成長を変動させる原因となる。
【0097】
本発明の多孔質フェライト粒子は、上記の有機成分の除去工程と、後述する本焼成の間に中間焼成を行うことが望ましい。
本発明に係る多孔質フェライト粒子のフェライト組成において、多孔質性を維持しながら高い磁化を維持するためには、中間焼成において主として磁化を高め、本焼成において主として多孔質性を調整する。このように、各焼成工程において発現させる特性をある程度明確に分けることで、所望とする多孔質フェライト粒子を得ることができる。
【0098】
具体的には、上述の有機成分の除去工程を経た粒子を、ロータリー式電気炉やバッチ式電気炉又は連続式電気炉等を使用し、不活性雰囲気もしくは還元性雰囲気中で1〜10時間保持する。特に、還元性雰囲気を用いることが望ましく、不活性雰囲気に比べて、より磁化を高めることが可能となる。
【0099】
不活性雰囲気の場合は窒素ガスを用いる。還元性雰囲気の場合はCOガス、水素ガス等を導入することで、適当な雰囲気を得ることができる。また、カーボンブラックや炭素を含有する有機化合物を、粒子と混合し、中間焼成を行うことによって、炭素の酸化を利用して炉内を還元性雰囲気にすることができる。
【0100】
ここで用いられるカーボンブラックの種類は、特に限定されるものではなく、ファーネスブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が使用できる。また、炭素(C)を含有する有機化合物としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸メチル、ポリエステル等が使用でき、特に限定されるものではないが、これらの中でもポリビニルアルコールが特に好ましい。
【0101】
但し、還元性雰囲気を作り出すための上述のような材料は、中間焼成温度で、分解・酸化することが必要である。分解温度が高すぎたり、中間焼成温度が低すぎたりする場合、十分な還元性雰囲気を得ることができず、磁化を高めることができない。
【0102】
中間焼成温度は条件によって異なる。水素ガスを用いる場合、中間焼成温度は比較的低温でも良く、250〜800℃で焼成する。カーボンブラックや炭素を含有する有機化合物を混合して中間焼成する場合、600〜1100℃程度の温度が必要である。しかし、あまり高い温度で焼成すると、磁化は高くなるが、同時に結晶成長が進むため所望とする多孔質性が得にくくなる。また、低温すぎる場合は、上述のように所望とする還元性雰囲気が得られない。従って、望ましくは650〜1050℃、さらに望ましくは700〜1000℃の範囲で焼成する。
【0103】
添加するカーボンブラックや有機化合物の量は、炉内を十分な還元性雰囲気にできる量添加することが望ましい。添加量が少なすぎると、フェライト化(スピネル化)が十分進まないため磁化の発現が十分でない。添加量が多すぎると、中間焼成後に炭素や有機成分の残存量が多く、本焼成工程において行う多孔質性の制御が困難となるため好ましくない。
【0104】
カーボンブラックや有機化合物の添加量は、使用する材料の種類やフェライトの組成(各金属化合物の配合比)によってことなるが、本発明のような組成においてポリビニルアルコールを用いる場合は、造粒物1000重量部に対して、10〜50重量部が好ましく、さらに好ましくは15〜40重量部の範囲で使用する。
【0105】
この中間焼成工程は、上述の有機成分の除去工程と同時に行うこともできる。造粒工程で用いたバインダーや分散剤は有機化合物であり、これらの分解・酸化によって還元性雰囲気を作り出すことが可能である。この場合、所望とする還元性雰囲気を得るために必要なバインダーや分散剤の量をあらかじめ計算し、造粒工程で添加する。
【0106】
但し、本造粒工程で過度な分散剤やバインダーを添加すると、得られる造粒物の形状が悪化したり、凝集体を多く形成したりする原因となることがある。従って、還元性雰囲気を得るために添加しなければならない量が多すぎる場合は、これら有機成分の除去工程と中間焼成工程を分けて行うことが望ましい。
【0107】
中間焼成が終了した段階で磁化は発現しているが、所望とする多孔質性は得られていない。したがって、中間焼成工程で得られた磁化を極端に低下させることなく、一定の範囲で維持したまま、結晶成長を進めて、所望とする多孔質性を得るために本焼成を行う必要がある。具体的には酸素濃度の制御された雰囲気下で、800〜1500℃の温度で、1〜24時間保持し、本焼成を行う。本発明のフェライト組成において、適度な多孔質性と磁化を得るためには、900〜1300℃、望ましくは950〜1250℃、最も望ましくは1000〜1200℃で焼成される。
【0108】
本焼成温度が中間焼成温度よりも低い場合、結晶成長が進まないため、細孔容積は高いが、細孔径が小さすぎるため、樹脂を充填するには好ましくない。本焼成温度が高すぎる場合、結晶成長が進みすぎるため、多孔質性が失われてしまう。
【0109】
本焼成温度は、少なくとも中間焼成温度(有機成分除去工程と同時に行う場合はその温度)と同じ温度、好ましくは50℃以上、さらに好ましくは100℃以上高いことが好ましい。
【0110】
その際、ロータリー式電気炉やバッチ式電気炉または連続式電気炉等を使用し、焼成時の雰囲気も、窒素等の不活性ガスや水素や一酸化炭素等の還元性ガスを打ち込んで、酸素濃度の制御を行っても良い。
【0111】
このようにして得られた焼成物を、粉砕し、分級する。分級方法としては、既存の風力分級、メッシュ濾過法、沈降法等を用いて所望の粒径に粒度調整する。
【0112】
その後、必要に応じて、表面を低温加熱することで酸化皮膜処理を施し、電気抵抗調整を行うことができる。酸化被膜処理は、一般的なロータリー式電気炉、バッチ式電気炉等を用い、例えば300〜700℃で熱処理を行うことができる。この処理によって形成された酸化被膜の厚さは、0.1nm〜5μmであることが好ましい。0.1nm未満であると、酸化被膜層の効果が小さく、5μmを超えると、磁化が低下したり、高抵抗になりすぎたりするため、所望の特性を得にくくなり好ましくない。また、必要に応じて、酸化被膜処理の前に還元を行っても良い。このようにして、細孔容積及びピーク細孔径が特定範囲にある多孔質フェライト粒子を調製する。
【0113】
上記のような、多孔質フェライト粒子(フェライトキャリア芯材)の細孔容積、ピーク細孔径及び細孔径のバラツキをコントロールする方法としては、配合する原料種、原料の粉砕度合い、仮焼の有無、仮焼温度、仮焼時間、スプレードライヤーによる造粒時のバインダー量、焼成方法、焼成温度、焼成時間、焼成雰囲気(窒素ガス、水素ガス、一酸化炭素ガス等による還元、酸素による酸化等)、様々な方法で行うことができる。これらのコントロール方法は特に限定されるものではないが、その一例を以下に示す。
【0114】
すなわち、配合する原料種として、水酸化物や炭酸塩を用いた方が、酸化物を用いた場合に比べて細孔容積は大きくなりやすく、また、仮焼成を行わないか、または仮焼性温度が低い方、もしくは本焼成温度が低く、焼成時間が短い方が、細孔容積は大きくなりやすい。
【0115】
さらに、本焼成における昇温速度や冷却速度を変えることによって、細孔容積や細孔径の分布を変えることができ、昇温速度が速いと細孔容積が大きくなりやすく、冷却速度が遅いと結晶成長が均一化するためか、細孔径の分布が狭くなりやすい。
【0116】
ピーク細孔径については、使用する原料、特に仮焼後の原料の粉砕度合を強くし、粉砕の一次粒子径が細かい方が小さくなりやすい。また、本焼成時に窒素等の不活性ガスを用いるよりは、水素や一酸化炭素等の還元性ガスを導入することで、ピーク細孔径を小さくすることが可能となる。
【0117】
さらに、細孔径のばらつきについては、使用する原料、特に仮焼後の原料の粉砕度合を強くし、粉砕粒径の分布をシャープにすることで、細孔径のばらつきを低減することができる。
【0118】
中間焼成工程によっても細孔容積や細孔径を調整することが可能である。中間焼成時に添加するカーボンブラックや有機化合物の量が多すぎると、本焼成工程で結晶成長が過度に進むため、細孔容積が小さくなる。また、中間焼成温度が低く、本焼成温度との差が大きいと、細孔径が大きくなる傾向にある。
【0119】
これらのコントロール方法を、単独もしくは組み合わせて使用することにより、所望の細孔容積、ピーク細孔径及び細孔径のばらつきをもった多孔質フェライト粒子を得ることができる。
【0120】
本発明に係る電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリアは、キャリア芯材(多孔質フェライト粒子)に樹脂を充填することにより得られる。充填方法としては、様々な方法が使用できる。その方法としては、例えば乾式法、流動床によるスプレードライ方式、ロータリードライ方式、万能攪拌機等による液浸乾燥法等が挙げられる。ここで用いられる樹脂としては、上述した通りである。
【0121】
上記樹脂を充填する工程において、減圧下で多孔質フェライト粒子と充填樹脂を混合撹拌しながら、多孔質フェライト粒子の空孔に樹脂を充填することが好ましい。このように減圧下で樹脂を充填することによって、空孔部分に効率良く樹脂を充填することができる。減圧の程度としては、1.3〜93kPa(約10〜700mmHg)が好ましい。93kPa(約700mmHg)を超えると減圧する効果がなく、1.3kPa(約10mmHg)未満では、充填工程中に樹脂溶液が沸騰しやすくなるため、効率良い充填ができなくなる。
【0122】
上記樹脂を充填する工程を複数回に分けて行うことができるが、1回の充填工程で樹脂を充填することは可能である。あえて複数回に分ける必要はない。しかし、樹脂の種類によっては、一度に多量の樹脂を充填しようとした場合、粒子の凝集が発生する場合がある。凝集が発生するとキャリアとして現像機内で使用した場合、現像器の撹拌ストレスによって凝集が解れることがある。凝集していた粒子の界面は、帯電特性が大きく異なるため、経時で帯電変動が発生し、好ましくない。このような場合には、複数回に分けて充填することによって、凝集を防ぎつつ、過不足なく充填が行える。
【0123】
樹脂を充填させた後、必要に応じて各種の方式によって加熱し、充填した樹脂を芯材に密着させる。加熱方式としては、外部加熱方式又は内部加熱方式のいずれでもよく、例えば固定式又は流動式電気炉、ロータリー式電気炉、バーナー炉でもよく、もしくはマイクロウェーブによる焼き付けでもよい。温度は、充填する樹脂によって異なるが、融点又はガラス転移点以上の温度は必要であり、熱硬化性樹脂又は縮合架橋型樹脂等では、充分硬化が進む温度まで上げることにより、衝撃に対して強い樹脂充填型キャリアを得ることができる。
【0124】
上述のように、多孔質フェライト粒子に樹脂を充填した後、樹脂により表面を被覆することが望ましい。キャリア特性、特に帯電特性を初めとする電気特性はキャリア表面に存在する材料や性状に影響されることが多い。従って、適当な樹脂を表面被覆することによって、所望とするキャリア特性を、精度良く調整することができる。被覆する方法としては、公知の方法、例えば刷毛塗り法、乾式法、流動床によるスプレードライ方式、ロータリードライ方式、万能攪拌機による液浸乾燥法等により被覆することができる。組み合わせるトナーや現像剤が用いられる装置の構成を考慮して、被覆率を向上させる必要がある場合は、流動床による方法が好ましい。樹脂被覆後、焼き付けする場合には、外部加熱方式又は内部加熱方式のいずれでもよく、例えば固定式又は流動式電気炉、ロータリー式電気炉、バーナー炉でもよく、もしくはマイクロウェーブによる焼き付けでもよい。UV硬化樹脂を用いる場合は、UV加熱器を用いる。焼き付けの温度は使用する樹脂により異なるが、融点又はガラス転移点以上の温度は必要であり、熱硬化性樹脂又は縮合架橋型樹脂等では、充分硬化が進む温度まで上げる必要がある。
【0125】
<本発明に係る電子写真現像剤>
次に、本発明に係る電子写真現像剤について説明する。
本発明に係る電子写真現像剤は、上記した電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリアとトナーとからなるものである。
【0126】
本発明の電子写真現像剤を構成するトナー粒子には、粉砕法によって製造される粉砕トナー粒子と、重合法により製造される重合トナー粒子とがある。本発明ではいずれの方法により得られたトナー粒子を使用することができる。
【0127】
粉砕トナー粒子は、例えば、結着樹脂、荷電制御剤、着色剤をヘンシェルミキサー等の混合機で充分に混合し、次いで、二軸押出機等で溶融混練し、冷却後、粉砕、分級し、外添剤を添加後、ミキサー等で混合することにより得ることができる。
【0128】
粉砕トナー粒子を構成する結着樹脂としては特に限定されるものではないが、ポリスチレン、クロロポリスチレン、スチレン−クロロスチレン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、更にはロジン変性マレイン酸樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂等を挙げることができる。これらは単独又は混合して用いられる。
【0129】
荷電制御剤としては、任意のものを用いることができる。例えば正荷電性トナー用としては、ニグロシン系染料及び4級アンモニウム塩等を挙げることができ、また、負荷電性トナー用としては、含金属モノアゾ染料等を挙げることができる。
【0130】
着色剤(色剤)としては、従来より知られている染料、顔料が使用可能である。例えば、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントレッド、クロムイエロー、フタロシアニングリーン等を使用することができる。その他、トナーの流動性、耐凝集性向上のためのシリカ粉体、チタニア等のような外添剤をトナー粒子に応じて加えることができる。
【0131】
重合トナー粒子は、懸濁重合法、乳化重合法、乳化凝集法、エステル伸長重合法、相転乳化法といった公知の方法で製造されるトナー粒子である。このような重合法トナー粒子は、例えば、界面活性剤を用いて着色剤を水中に分散させた着色分散液と、重合性単量体、界面活性剤及び重合開始剤を水性媒体中で混合攪拌し、重合性単量体を水性媒体中に乳化分散させて、攪拌、混合しながら重合させた後、塩析剤を加えて重合体粒子を塩析させる。塩析によって得られた粒子を、濾過、洗浄、乾燥させることにより、重合トナー粒子を得ることができる。その後、必要により乾燥されたトナー粒子に外添剤を添加する。
【0132】
更に、この重合トナー粒子を製造するに際しては、重合性単量体、界面活性剤、重合開始剤、着色剤以外に、定着性改良剤、帯電制御剤を配合することができ、これらにより得られた重合トナー粒子の諸特性を制御、改善することができる。また、水性媒体への重合性単量体の分散性を改善するとともに、得られる重合体の分子量を調整するために連鎖移動剤を用いることができる。
【0133】
上記重合トナー粒子の製造に使用される重合性単量体に特に限定はないが、例えば、スチレン及びその誘導体、エチレン、プロピレン等のエチレン不飽和モノオレフィン類、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル類、酢酸ビニル等のビニルエステル類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ジメチルアミノエステル及びメタクリル酸ジエチルアミノエステル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類等を挙げることができる。
【0134】
上記重合トナー粒子の調製の際に使用される着色剤(色材)としては、従来から知られている染料、顔料が使用可能である。例えば、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、パーマネントレッド、クロムイエロー及びフタロシアニングリーン等を使用することができる。また、これらの着色剤はシランカップリング剤やチタンカップリング剤等を用いてその表面が改質されていてもよい。
【0135】
上記重合トナー粒子の製造に使用される界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両イオン性界面活性剤及びノニオン系界面活性剤を使用することができる。
【0136】
ここで、アニオン系界面活性剤としては、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油等の脂肪酸塩、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸エステル、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等を挙げることができる。また、ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン、脂肪酸エステル、オキシエチレン−オキシプロピレンブロックポリマー等を挙げることができる。更に、カチオン系界面活性剤としては、ラウリルアミンアセテート等のアルキルアミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩等を挙げることができる。また、両イオン性界面活性剤としては、アミノカルボン酸塩、アルキルアミノ酸等を挙げることができる。
【0137】
上記のような界面活性剤は、重合性単量体に対して、通常は0.01〜10重量%の範囲内の量で使用することができる。このような界面活性剤の使用量は、単量体の分散安定性に影響を与えるとともに、得られた重合トナー粒子の環境依存性にも影響を及ぼすことから、単量体の分散安定性が確保され、かつ重合トナー粒子の環境依存性に過度の影響を及ぼしにくい上記範囲内の量で使用することが好ましい。
【0138】
重合トナー粒子の製造には、通常は重合開始剤を使用する。重合開始剤には、水溶性重合開始剤と油溶性重合開始剤とがあり、本発明ではいずれをも使用することができる。本発明で使用することができる水溶性重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、水溶性パーオキサイド化合物を挙げることができ、また、油溶性重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系化合物、油溶性パーオキサイド化合物を挙げることができる。
【0139】
また、本発明において連鎖移動剤を使用する場合には、この連鎖移動剤としては、例えば、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類、四臭化炭素等を挙げることができる。
【0140】
更に、本発明で使用する重合トナー粒子が、定着性改善剤を含む場合、この定着性改良剤としては、カルナバワックス等の天然ワックス、ポリプロピレン、ポリエチレン等のオレフィン系ワックス等を使用することができる。
【0141】
また、本発明で使用する重合トナー粒子が、帯電制御剤を含有する場合、使用する帯電制御剤に特に制限はなく、ニグロシン系染料、4級アンモニウム塩、有機金属錯体、含金属モノアゾ染料等を使用することができる。
【0142】
また、重合トナー粒子の流動性向上等のために使用される外添剤としては、シリカ、酸化チタン、チタン酸バリウム、フッ素樹脂微粒子、アクリル樹脂微粒子等を挙げることができ、これらは単独であるいは組み合わせて使用することができる。
【0143】
更に、水性媒体から重合粒子を分離するために使用される塩析剤としては、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム等の金属塩を挙げることができる。
【0144】
上記のようにして製造されたトナー粒子の平均粒径は、2〜15μm、好ましくは3〜10μmの範囲内にあり、重合トナー粒子の方が粉砕トナー粒子よりも、粒子の均一性が高い。トナー粒子が2μmよりも小さくなると、帯電能力が低下しカブリやトナー飛散を引き起こしやすく、15μmを超えると、画質が劣化する原因となる。
【0145】
上記のように製造されたキャリアとトナーとを混合し、電子写真現像剤を得ることができる。キャリアとトナーの混合比(トナー重量/(キャリア重量+トナー重量))、即ちトナー濃度は、3〜15重量%に設定することが好ましい。3重量%未満であると所望の画像濃度が得にくく、15重量%を超えると、トナー飛散やかぶりが発生しやすくなる。
【0146】
本発明に係る電子写真現像剤は、補給用現像剤として用いることもできる。この際のキャリアとトナーの混合比(トナー重量/(キャリア重量+トナー重量))、即ちトナー濃度は50〜95重量%に設定することが好ましい。
【0147】
上記のように調製された本発明に係る電子写真現像剤は、有機光導電体層を有する潜像保持体に形成されている静電潜像を、バイアス電界を付与しながら、トナー及びキャリアを有する二成分現像剤の磁気ブラシによって反転現像する現像方式を用いたデジタル方式のコピー機、プリンター、FAX、印刷機等に使用することができる。また、磁気ブラシから静電潜像側に現像バイアスを印加する際に、DCバイアスにACバイアスを重畳する方法である交番電界を用いるフルカラー機等にも適用可能である。
以下、実施例等に基づき本発明を具体的に説明する。
【実施例1】
【0148】
Fe:930重量部、Mg(OH):60重量部、SrCO:5重量部をそれぞれ秤量し、乾式のメディアミル(振動ミル、1/8インチ径のステンレスビーズ)で5時間粉砕し、得られた粉砕物をローラーコンパクターにて、約1mm角のペレットにした。このペレットを目開き3mmの振動篩にて粗粉を除去し、次いで目開き0.5mmの振動篩にて微粉を除去した後、ロータリー式電気炉で、800℃、大気中で3時間加熱し、仮焼成を行った。次いで、乾式のメディアミル(振動ミル、1/8インチ径のステンレスビーズ)を用いて平均粒径が5μm以下になるまで粉砕した。その後、水を加え、固形分を約50重量%に調整した後、湿式のメディアミル(縦型ビーズミル、1/16インチ径のステンレスビーズ)を用いて1時間粉砕した。このスラリーの粒径(粉砕の一次粒子径)をマイクロトラックにて測定した結果、D50は1.8μmであった。このスラリーに分散剤を適量添加し、適度な細孔容積を得るために、バインダーとしてPVA(10%溶液)を固形分に対して0.4重量%添加し、次いでスプレードライヤーにより造粒、乾燥し、得られた粒子(造粒物)の粒度調整を行い、その後、ロータリー式電気炉で、大気中、650℃で2時間加熱し、分散剤やバインダーといった有機成分の除去を行った。
【0149】
得られた粒子1000重量部に対して、ポリビニールアルコール(粉体)を25重量部(2.5重量%)加えて、横回転式混合ミルを用いて十分に混合した。この混合物をロータリー炉で、還元性雰囲気中、950℃で約2時間焼成(中間焼成)を行った。
【0150】
その後、トンネル式電気炉にて、焼成温度1100℃、窒素ガス雰囲気下にて、5時間保持した。この時、昇温速度を150℃/時、冷却速度を110℃/時とした。その後、解砕し、さらに分級して粒度調整を行い、磁力選鉱により低磁力品を分別除去し、多孔質フェライト粒子(フェライトキャリア芯材)を得た。
【0151】
上記配合は、フェライト組成(MgO)x(Fe)yにおいて、およそx=15モル%、y=85モル%であり、その一部がSrO0.5モル%で置換されているものである。
【実施例2】
【0152】
本焼成温度を1050℃とした以外は、実施例1と同様にして多孔質フェライト粒子(フェライトキャリア芯材)を得た。
【実施例3】
【0153】
仮焼成温度を700℃とし、本焼成温度を1000℃とした以外は、実施例1と同様にして多孔質フェライト粒子(フェライトキャリア芯材)を得た。
【実施例4】
【0154】
本焼成温度を1150℃とした以外は、実施例4と同様にして多孔質フェライト粒子(フェライトキャリア芯材)を得た。
【実施例5】
【0155】
本焼成温度を1100℃とした以外は、実施例4と同様にして多孔質フェライト粒子(フェライトキャリア芯材)を得た。
【実施例6】
【0156】
フェライト組成(MgO)x(Fe)yにおいて、およそx=20モル%、y=80モル%であり、その一部がSrO0.5モル%で置換されるように、Fe:907重量部、Mg(OH):83重量部、SrCO:5重量部それぞれ配合し、中間焼成の際に添加するポリビニールアルコール(粉体)の量を2.0重量%、本焼成温度を1100℃とした以外は、実施例1と同様にして多孔質フェライト粒子(フェライトキャリア芯材)を得た。
【実施例7】
【0157】
本焼成温度を1050℃とした以外は、実施例7と同様にして多孔質フェライト粒子(フェライトキャリア芯材)を得た。
【実施例8】
【0158】
フェライト組成(MgO)x(Fe)yにおいて、およそx=13モル%、y=87モル%であり、その一部がSrO0.5モル%で置換されるように、Fe:939重量部、Mg(OH):51重量部、SrCO:5重量部それぞれ配合した以外は、実施例2と同様にして多孔質フェライト粒子(フェライトキャリア芯材)を得た。
【実施例9】
【0159】
フェライト組成(MgO)x(Fe)yにおいて、およそx=23モル%、y=77モル%であり、その一部がSrO0.5モル%で置換されるように、Fe:892重量部、Mg(OH):97重量部、SrCO:5重量部それぞれ配合した以外は、実施例2と同様にして多孔質フェライト粒子(フェライトキャリア芯材)を得た。
【実施例10】
【0160】
SrO置換量を0.1モル%にした以外は、実施例2と同様にして多孔質フェライト粒子(フェライトキャリア芯材)を得た。
【実施例11】
【0161】
SrO置換量を2.5モル%にした以外は、実施例2と同様にして多孔質フェライト粒子(フェライトキャリア芯材)を得た。
【0162】
[比較例1]
フェライト組成(MgO)x(Fe)yにおいて、およそx=30モル%、y=70モル%であり、その一部がSrO0.5モル%で置換されるように、Fe:855重量部、Mg(OH):134重量部、SrCO:6重量部それぞれ配合し、中間焼成の際に添加するポリビニールアルコール(粉体)の量を1.5重量%、本焼成温度を1210℃とした以外は、実施例1と同様にして多孔質フェライト粒子(フェライトキャリア芯材)を得た。
【0163】
[比較例2]
本焼成温度を1150℃とした以外は、比較例1と同様にして多孔質フェライト粒子(フェライトキャリア芯材)を得た。
【0164】
[比較例3]
仮焼成及び有機成分除去工程を行わず、また、中間焼成において添加剤を用いずに、1050℃、大気雰囲気下で焼成を行った以外は、比較例1と同様にして多孔質フェライト粒子(フェライトキャリア芯材)を得た。
【0165】
[比較例4]
本焼成を1180℃とした以外は、比較例3と同様にして多孔質フェライト粒子(フェライトキャリア芯材)を得た。
【0166】
[比較例5]
本焼成を1150℃とした以外は、比較例3と同様にして多孔質フェライト粒子(フェライトキャリア芯材)を得た。
【0167】
[参考例]
実施例1において、Mg(OH)の代わりにMnCOを用い、(MnO)x(Fe)yにおいて、およそx=20モル%、y=80モル%になるように原料を秤量した。ここで、SrOによる置換は行わなかった。
【0168】
上記のように原料を配合し後、乾式のメディアミル(振動ミル、1/8インチ径のステンレスビーズ)で5時間粉砕し、得られた粉砕物をローラーコンパクターにて、約1mm角のペレットにした。このペレットを目開き3mmの振動篩にて粗粉を除去し、次いで目開き0.5mmの振動篩にて微粉を除去した後、ロータリー式電気炉で、900℃、大気中にて3時間加熱し、仮焼成を行った。
【0169】
その後、乾式のメディアミル(振動ミル、1/8インチ径のステンレスビーズ)を用いて平均粒径が5μm以下になるまで粉砕し、次いで水を加え、固形分を約50重量%に調整した後、湿式のメディアミル(縦型ビーズミル、1/16インチ径のステンレスビーズ)を用いて1時間粉砕した。このスラリーに分散剤を適量添加し、適度な細孔容積を得るために、バインダーとしてPVA(10%溶液)を固形分に対して0.4重量%添加し、次いでスプレードライヤーにより造粒、乾燥し、得られた粒子(造粒物)の粒度調整を行い、その後、ロータリー式電気炉で、700℃で2時間加熱し、分散剤やバインダーといった有機成分の除去を行った。
【0170】
上述のようにして得られた造粒物を、ロータリー式電気炉にて、温度900℃、1時間保持し、焼成を行った。その際、炉内に水素ガスを投入し、炉内を還元性雰囲気下にした。
【0171】
その後、トンネル式電気炉にて、焼成温度1100℃、窒素ガス雰囲気下にて、5時間保持した。その後、解砕し、さらに分級して粒度調整を行い、磁力選鉱により低磁力品を分別除去し、多孔質フェライト粒子(フェライトキャリア芯材)を得た。
【実施例12】
【0172】
フェライトキャリア芯材として実施例2で得られた多孔質フェライト粒子を用いた。
この多孔質フェライトの空隙に充填する樹脂として、フェニル/メチルのモル比が0.63、微分分子量曲線において630と2400にピークを持ち、数平均分子量が1704、重量平均分子量が5510、Z平均分子量が16190、数平均分子量/重量平均分子量比が3.234であるメチルフェニルシリコーンを準備した。このシリコーン樹脂溶液45重量部(樹脂溶液濃度20重量%のため固形分としては9重量部、希釈溶媒:トルエン)にアミノシランカップリング剤(γ―アミノプロピルトリメトキシシラン)を、樹脂固形分に対して10重量%添加し樹脂溶液を得た。実施例2で得られた多孔質フェライト粒子100重量部と、樹脂溶液を60℃、6.7kPa(約50mmHg)の減圧下で混合撹拌し、トルエンを揮発させながら、樹脂を多孔質フェライト粒子の空隙に浸透、充填させた。
【0173】
容器内を常圧に戻し、トルエンが充分揮発したことを確認した後、撹拌機の内部を目視観察したところ、湿った感じもなく非常に流動性が良い状態であった、常圧下で撹拌を続けながら2℃/分の昇温速度で、撹拌機の熱媒温度を220℃まで上げた。この温度で60分間加熱撹拌を行い、樹脂を硬化させた。
【0174】
その後、室温まで冷却し、樹脂が充填、硬化されたフェライト粒子を取り出し、150Mの目開きの振動篩にて粒子の凝集を解し、磁力選鉱機を用いて、非磁性物を取り除いた。その後、再度振動篩にて粗大粒子を取り除き樹脂が充填された樹脂充填型フェライト粒子(樹脂充填型フェライトキャリア)を得た
【0175】
固形分が20重量%のシリコーン樹脂(製品名:SR−2411、東レダウコーニング社製)を準備した。上記シリコーン樹脂50重量部(固形分換算で10重量部)及びアミノシランカップリング剤(γ―アミノプロピルトリメトキシシラン)を、樹脂固形分に対して10重量%、トルエン50重量部に混合して樹脂溶液を調製した。
【0176】
得られた樹脂が充填されたフェライト粒子1000重量部を万能混合撹拌器に投入し、上記樹脂溶液を添加して、液浸乾燥法により樹脂被覆を行った。
【0177】
その後、温度を200℃まで上げ、2時間撹拌を行い、樹脂を硬化させた。樹脂が被覆、硬化されたフェライト粒子を取り出し、150Mの目開きの振動篩にて粒子の凝集を解し、磁力選鉱機を用いて、非磁性物を取り除いた。その後、再度振動篩にて粗大粒子を取り除き、表面が樹脂で被覆された樹脂充填型フェライトキャリアを得た。
【実施例13】
【0178】
フェライトキャリア芯材として実施例3で得られた多孔質フェライト粒子を用いた。樹脂充填量を多孔質フェライト粒子100重量部に対して樹脂固形分を13重量部とした以外は、実施例12と同様に樹脂を充填し、さらに実施例12と同様にして樹脂を被覆し、表面が樹脂で被覆された樹脂充填型フェライトキャリアを得た。
【0179】
[比較例6]
フェライトキャリア芯材として比較例3で得られた多孔質フェライト粒子を用いた。樹脂充填量を多孔質フェライト粒子100重量部に対して樹脂固形分を4重量部とした以外は、実施例12と同様に樹脂を充填し、さらに実施例12と同様にして樹脂を被覆し、表面が樹脂で被覆された樹脂充填型フェライトキャリアを得た。
【0180】
実施例1〜11、比較例1〜5及び参考例の多孔質フェライト粒子(フェライトキャリア芯材)の基本組成、SrO置換量、仮焼成条件(温度、雰囲気)、有機成分除去工程条件(温度、雰囲気)、中間焼成条件(温度、添加剤、添加量、雰囲気)及び本焼成条件(温度、雰囲気)を表1に示す。また、実施例1〜11、比較例1〜5及び参考例の多孔質フェライト粒子の本焼成前の特性(飽和磁化、細孔容積及びピーク細孔径)と本焼成後の特性(磁化、飽和磁化、残留磁化、保磁力、細孔容積、ピーク細孔径、dv値、50Vと100Vの電気抵抗、体積平均粒径及び見掛密度)を表2に示す。これら多孔質フェライト粒子の特性の測定方法は、上述の通りである。さらに、飽和磁化比(本焼成前/本焼成後)、細孔容積比(本焼成前/本焼成後)及びピーク細孔径比(本焼成前/本焼成後)を表3に示す。
【0181】
実施例1〜5及び比較例1〜5の多孔質フェライト粒子について、本焼成温度と飽和磁化の関係を図1に、本焼成温度と細孔容積の関係を図2に示す。
【0182】
実施例12〜13及び比較例6のフェライトキャリアについて、使用した多孔質フェライト粒子、樹脂充填量、樹脂被覆量及びキャリア特性(飽和磁化、体積平均粒径、24μm未満の粒子、見掛密度、粒子密度、初期及び攪拌後の帯電量、帯電量変動)、並びに判定(軽量化、磁気特性、帯電特性)を表4に示す。これらフェライトキャリアの帯電量は下記によって測定した。その他の特性の測定方法は、上述の通りである。
【0183】
(帯電量)
帯電量は、キャリアとトナーとの混合物を、吸引式帯電量測定装置(Epping q/m−meter、PES−Laboratoriumu社製)により測定し求めた。トナーはフルカラープリンターに使用されている市販の負極性トナー(シアントナー、富士ゼロックス株式会社製DocuPrintC3530用;平均粒径約5.8μm)を用い、トナー濃度を5重量%に調整した。調整した現像剤を50ccのガラス瓶に入れ、100rpmの回転数で撹拌した。帯電量は、初期と60分攪拌後の値を測定した。
【0184】
また、判定は、軽量化、磁気特性、帯電特性A及び帯電特性Bについて判定した。軽量化は粒子密度、磁気特性は飽和磁化に基づいて判定した。また、帯電特性Aは帯電量初期値、帯電特性Bは帯電量変動に基づいて判定した。判定の基準は、◎:優、○:良、△:可、×:不可の4段階で行った。具体的には、以下の通りである。
【0185】
[軽量化(粒子密度)]
◎:3.70g/cm〜4.10g/cm
○:3.50g/cm〜3.70g/cm未満もしくは4.10g/cm超〜4.30g/cm
△:3.30g/cm〜3.50g/cm未満もしくは4.30g/cm超〜4.50g/cm
×:3.30g/cm未満もしくは4.50g/cm
[磁気特性(飽和磁化):]
◎:60Am/kg〜70Am/kg
○:57Am/kg〜60Am/kg未満もしくは70Am/kg超〜72Am/kg
△:53Am/kg〜57Am/kg未満もしくは72Am/kg超〜78Am/kg
×:53Am/kg未満もしくは78Am/kg超
[帯電特性A(初期値)]
◎:55.0μC/g以上
○:40.0μC/g〜55.0μC/g未満
△:30.0μC/g〜40.0μC/g未満
×:30.0μC/g未満
[帯電特性B(帯電量変動)]
◎:3.0以下
○:3.0超〜5.0
△:5.0超〜7.0
×:7.0超
【0186】
【表1】

【0187】
【表2】

【0188】
【表3】

【0189】
【表4】

【0190】
表1〜表3から明らかなように、本発明に係る実施例1〜11の多孔質フェライト粒子は、磁気特性である飽和磁化が55Am/kg以上の高いレベルにあり、かつ所望とする細孔容積を持っている。一方、比較例1〜5のフェライト粒子は、飽和磁化が低く、細孔容積も相対的に小さく、樹脂を充填して低比重化を図るのが困難である。
【0191】
特に、実施例1〜3、実施例4〜5、比較例1〜2及び比較例3〜5は、それぞれ焼成温度のみを変更したものであるが、本焼成温度と飽和磁化、本焼成温度と細孔容積の関係をそれぞれ示した図1及び図2からも明らかなように、本発明に係る多孔質フェライト粒子は、一定の温度範囲で、細孔容積が温度によって変化しているのにもかかわらず、磁化が一定の範囲で安定していることがわかる。一方で、比較例3〜5のフェライト粒子は、本焼成温度を下げることで細孔容積を大きくなる傾向にあるが、同時に磁化が低下してしまうことがわかる。比較例1〜2のフェライト粒子は、ある一定の本焼成温度領域で磁化が安定しているように見えるが、本発明のフェライト粒子に比べて、飽和磁化の絶対値が低い。
【0192】
また、参考例として挙げたMgの代わりにMnを用いたフェライト粒子は、磁化を高くすることはできているが、抵抗が非常に低く、100V印加時で抵抗が測定下限界以下となっている。近年の高画質化、高速化を狙った現像システムでは、現像ギャップが狭く、現像バイアスを高くするため、現像剤にかかる電界強度が非常に高い。そのため、この参考例に挙げたようなフェライト粒子をフェライトキャリア芯材として用いると、容易に絶縁破壊がおき、致命的な画像欠陥を引き起こすと考えられる。
また、この参考例において得られたフェライト粒子の細孔容積は実施例に比べて小さく、細孔径が極端に小さいため、樹脂を充填することが困難であり、所望とする樹脂充填型フェライトキャリアを得ることはできない。
【0193】
表4から明らかなように、本発明に係る多孔質フェライト粒子を用いた実施例12〜13の樹脂充填型フェライトキャリアは、所望とする低い粒子密度を持っているため耐久性に優れている。また、帯電能力(帯電量初期値)が高く、撹拌後も高い帯電量を維持できており、磁化も所望とする範囲を維持している。
【0194】
一方、比較例3の多孔質フェライト粒子を用いた比較例6のフェライトキャリアは、磁化が低く、キャリア付着が発生する懸念がある。また、粒子密度が高く、撹拌ストレスが高いためか、帯電量の変動が大きく、耐久性に劣るものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0195】
本発明に係る電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリア芯材及びフェライトキャリアは、樹脂充填型であるため、低比重で軽量化が図れるため、耐久性に優れ長寿命化が達成でき、しかも磁性粉分散型キャリアに比して高強度であり、かつ熱や衝撃による割れ、変形、溶融がない。また、高い帯電能力が長期に亘って維持でき、高品位な画質が得られ、画像欠陥を低減できる。また、重金属を用いていないので現在の環境規制に適合できる。
【0196】
従って、本発明に係る電子写真現像剤用樹脂充填型キャリアは、高画質の要求されるフルカラー機並びに画像維持の信頼性及び耐久性の要求される高速機等の分野に広く使用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質フェライト粒子からなり、該多孔質フェライト粒子の組成が下記式(1)で表され、下記式(1)中の(MgO)及び/又は(Fe)の一部がSrOで置換されていることを特徴とする電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリア芯材。
【化1】

【請求項2】
上記SrOの置換量が、多孔質フェライト粒子の0.1〜2.5モル%である請求項1記載の電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリア芯材。
【請求項3】
上記多孔質フェライト粒子の細孔容積が40〜160mm/g、ピーク細孔径が0.3〜2.0μm、細孔径分布において下記式(2)で表される細孔径のばらつきdvが1.5以下である請求項1又は請求項2のいずれかに記載の電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリア芯材。
【数1】

【請求項4】
上記多孔質フェライト粒子の飽和磁化が、55〜80Am/kgである請求項1〜請求項3のいずれかに記載の電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリア芯材。
【請求項5】
上記多孔質フェライト粒子は、還元性雰囲気下で焼成された後、さらに還元性雰囲気下もしくは不活性雰囲気下で焼成されて得られたものである請求項1〜請求項4のいずれかに記載の電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリア芯材。
【請求項6】
上記多孔質フェライト粒子の本焼成工程の前の飽和磁化が55〜80Am/kgであり、本焼成工程後の飽和磁化との比(本焼成工程前の飽和磁化/本焼成工程後の飽和磁化)が、0.75〜1.25である請求項1〜請求項5のいずれかに記載の電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリア芯材。
【請求項7】
上記多孔質フェライト粒子の本焼成工程の前の細孔容積が150mm/g以上であり、本焼成工程後の細孔容積との比(本焼成工程前の細孔容積/本焼成工程後の細孔容積)が、1.2〜6.0である請求項1〜請求項6のいずれかに記載の電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリア芯材。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のフェライト粒子からなるフェライトキャリア芯材の細孔に樹脂を充填してなることを特徴とする電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリア。
【請求項9】
上記樹脂がシリコーン系樹脂である請求項8に記載の電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリア。
【請求項10】
上記多孔質フェライト粒子に充填する樹脂の量が、上記多孔質フェライト粒子100重量部に対して、6〜20重量部である請求項8又は請求項9に記載の電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリア。
【請求項11】
表面に樹脂が被覆されている請求項8〜請求項10のいずれかに記載の電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリア。
【請求項12】
体積平均粒径が20〜70μm、飽和磁化が53〜78Am/kg、粒子密度が3.5〜4.3g/cm、見掛け密度が1.0〜2.2g/cm、24μm未満の粒子が5体積%以下である請求項8〜請求項11のいずれかに記載の電子写真現像剤用樹脂充填型フェライトキャリア。
【請求項13】
請求項8〜請求項12のいずれかに記載の樹脂充填型フェライトキャリアとトナーとからなる電子写真現像剤。
【請求項14】
補給用現像剤として用いられる請求項13に記載の電子写真現像剤。

【図1】
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【図2】
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