電子写真現像用キャリア、二成分系現像剤及びそれを用いた画像形成方法
【課題】 十分な画像濃度を有し、ガサツキや階調性が抑制された高品位な出力画像を得ることを可能にする電子写真現像用キャリア、二成分系現像剤、及び画像形成方法を提供する。
【解決手段】 交流インピーダンス測定により得られるインピーダンスZの周波数依存特性を、下記(1)式で表されるフィッティング関数により、フィッティングしたときのパラメータαが、103V/cmの電界下において、0.70以上0.90以下であることを特徴とする電子写真現像用キャリア。
【解決手段】 交流インピーダンス測定により得られるインピーダンスZの周波数依存特性を、下記(1)式で表されるフィッティング関数により、フィッティングしたときのパラメータαが、103V/cmの電界下において、0.70以上0.90以下であることを特徴とする電子写真現像用キャリア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二成分現像方式を用いた複写機、プリンター等に使用される電子写真現像用キャリア、該電子写真現像用キャリアとトナーとを含有する二成分系現像剤、および該二成分系現像剤を用いた画像形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、二成分系現像方式を利用した複写機、プリンターなどの画像形成装置では、OPC(有機光導電性)感光体やアモルファスシリコン感光体等の光導電体で構成される感光層を表層に持つ像担持体に対して帯電、露光の過程を経て静電潜像を形成する。次いで、この静電潜像に対して、現像器により現像領域に搬送した二成分系現像剤を用いてトナーを現像することで、感光体上にトナー像を形成する。さらに感光体上のトナー像は、直接、又は中間転写体を介して転写材に転写する。その後、転写材にトナー像を熱および圧力により定着させることによって記録画像を得る。
【0003】
二成分系現像剤は少なくともトナーと電子写真現像用キャリア(以下、キャリアという)より構成されており、トナーは現像容器内部でキャリアと共に攪拌される事で、摩擦帯電により所望の帯電量に帯電される。このとき、キャリアはトナーに対して逆極性に帯電されるため、トナーとキャリアは静電的に付着することになる。現像剤は、マグネット部材を有した現像スリーブに担持され、感光体と現像スリーブの対向する現像領域に磁気穂として搬送される。そして、現像スリーブに印加された現像バイアス電位と感光体上の静電潜像電位とで形成される電界により、トナーがキャリアから離れ、静電潜像に対してトナーが現像される。
【0004】
このとき、現像領域でトナーが受ける実効的な現像電界は、キャリアの持つ電荷やキャリアの持つ電気物性、更に他のトナー電荷など、さまざまな要因により歪められる。特にキャリアの形成する磁気穂による電界への影響は大きく、このため、キャリアの電気物性が最終的に出力される画像の品位(画像濃度、カブリ、キャリア付着、ガサツキ、階調性など)を大きく左右する。例えば、高濃度部における画像濃度は、同じ現像プロセス条件で現像を行った場合でも、キャリアの持つ電気抵抗の違いで大きく変動する。これはキャリアの電気抵抗が現像性と強い相関を持っているからである。ここで現像性とは、潜像ポテンシャルに対して現像されたトナーの電荷が潜像電位を満たす(充電する)能力であり、静電潜像を忠実に再現するトナー画像を得るためには、キャリアが良好な現像性を有している必要がある。
【0005】
トナーの有する電荷により充電できる電位差(充電電位)ΔVtが現像コントラストVconに達していない状態、すなわち、「未充電」の状態であってもVconを大きくすることで、感光体上に現像されるトナー量(トナー載り量)を大きくして、所望の画像濃度を得ることは可能である。
【0006】
ところが、このような「未充電」の状態が起こっている場合、以下のような画像欠陥が発生することがある。
【0007】
例えば、低濃度のハーフトーン画像の後に、高濃度のベタ画像(最高画像濃度レベルの画像)が連続して出力される場合、現像部(現像ニップ)内で高濃度部側の電位をトナーが満たされていないと、境界部で、低濃度部から高濃度部への回りこみ電界が残留する。この回りこみ電界は、境界部における低濃度側のトナーを高濃度側に移動させるように働くため、低濃度部から高濃度部へ変化する境界付近で、低濃度部の画像濃度が低下する画像欠陥が生じる。又、高濃度部において、エッジ部と中央部の電界強度差により、エッジにトナーが集まりやすくなり、エッジ部と中央部の画像濃度に差が生じやすくなる。
【0008】
このため、上記のような「未充電」に伴う画像欠陥を防止しつつも、十分な画像濃度の出力画像を得るためには、現像性を向上させ、感光体上に現像されるトナーのトナー電荷の充電電位ΔVtをできるだけ、現像コントラストVconまで到達させることが必要になる。
【0009】
ところが、近年のように、電子写真技術に印刷機に迫るプリントスピードの高速化や、出力画像の高画質化が求められている状況下では、従来に増して、現像における「未充電」が発生しやすい状況が生まれている。これは、プリントスピードを向上させたために、潜像が現像領域を通過する時間が短くなり、潜像に対して充分なトナー量が供給されなくなったためである。又、ガサツキ、カブリ、階調性等の画像性を向上させるためにトナー帯電量を大きくしたことにより、トナーとキャリア間の静電的付着力が大きくなり、トナーが現像しづらくなったためである。
【0010】
従来、キャリアの抵抗を調整することで現像性の向上を図る試みが行われている。例えば、キャリアの抵抗を低くすることで現像性が向上することが期待することができる。鉄粉のコア粒子にコートする被覆樹脂種や樹脂量を調整することにより、高電界印加時にキャリア抵抗をブレークダウンさせて高濃度画像部の濃度を確保できるとしている提案もある(特許文献1)。又、104V/cmの電界下において、キャリアの電気抵抗が108Ω・cm以上であると十分な画像濃度が得られなくなるため、キャリアの電気抵抗が、10Ω・cm以上108Ω・cm以下であることが望ましいとしている提案もある(特許文献2)。
【0011】
上記のように、キャリアの抵抗を低くすることで現像性が向上する理由は、現像バイアス印加時にキャリアの持っているトナーと逆極性の電荷を現像スリーブに早く逃がすことで、トナーとキャリアの静電的な付着力を低下させ、実質的にトナーの受ける電界強度を大きくすることができるからであると考えられる。
【0012】
一方で、単純にキャリアの電気抵抗を低下させると、現像スリーブに現像バイアスを印加した際に、キャリア電荷が現像スリーブ側に抜けるだけに留まらず、現像スリーブ側からトナーに付与される電荷と同極性の電荷が注入される。そして、現像バイアスと高濃度部の潜像電位によって形成される電界により、キャリアが高濃度部に現像され(キャリア付着)、出力画像としては高濃度部の画像に白い斑点が現れる場合がある。又、キャリアの抵抗が小さく、現像スリーブから、キャリアの磁気穂を介して感光体上の潜像ポテンシャルに対して電荷の注入(以下、この現象を「現像注入」と呼ぶ)が発生すると、静電潜像が乱れることで画像のガサツキの悪化したり、潜像ポテンシャルの浅い低濃度部における「階調性の跳び」が発生したりするなどの、画像品位の低下が問題となる。
【0013】
つまり、キャリアの電気抵抗のみを調整して、所望の画像濃度を確保しながら、ガサツキや階調性の良好な画像品位の優れた出力画像を得るためには、高い現像性と現像注入の防止を両立するような狭いラチチュードでの電気抵抗制御が必要とされる。
【0014】
従来提案されている、キャリアの電気抵抗を調整する手段としては、次のようなものがある。例えばキャリアのコア粒子として低抵抗フェライト粒子を用い、樹脂コートの厚さや表面のコア露出量などを調整することでキャリアの電気抵抗を制御する手法である。また、被覆樹脂にカーボンブラックや、導電性粒子などの導電性粒子を分散することにより、キャリアの電気抵抗を制御する手法などが挙げられる。
【0015】
ところが、被覆樹脂量のみの調整でキャリアの電気抵抗を制御した場合には、キャリアの電気抵抗を、現像性の良化と現像注入量の低減を両立する最適な抵抗領域に制御できたとしても、長期使用時には、現像剤の攪拌や現像剤搬送量の規制部でのストレスにより、コート剥れが発生しやすくなり、初期の電気抵抗特性を維持することが困難となる。
【0016】
又、被覆樹脂にカーボンブラックや導電性粒子を分散してキャリアの電気抵抗を制御する方法は、分散性が不安定であることによる抵抗変動や、帯電付与能の低下などが問題になる。
【0017】
上記のように、充分な画像濃度を確保しながら、同時に現像注入による画像弊害の無い高品位な画像を出力するという課題に対して、キャリアの電気抵抗を調整するという従来提案されている手法は、長期の印刷期間における安定性に対しては十分に応えているとは言えない。
【0018】
又、多孔質フェライトコア粒子の空孔に樹脂を充填してなる樹脂充填型フェライトキャリアが提案されている(特許文献3)。同文献では、樹脂層とフェライト層を交互に繰り返す立体構造がコンデンサ的な役割を持つことで帯電付与能力と、その安定性に優れているとしている。
【0019】
仮に、フェライト層−樹脂層−フェライト層、という層構造が単一のコンデンサの役割を持っていた場合、このような層構造が更に繰り返され多層構造は、単一のコンデンサの直列的な繋がりと見なせる。しかし、複数のコンデンサが単一のコンデンサに比べて大きな静電容量を持つためには、並列的な繋がりの構造を持っている必要があり、上記の樹脂充填型フェライトキャリアが樹脂層とフェライト層を交互に繰り返す立体構造を持っていることでコンデンサ的な要素が向上しているとは考えにくい。又、キャリアがただ単純に立体的層構造を複数持つことには、現像性を向上させて、十分な画像濃度を確保する効果は存在しないため、同文献で提案された多孔質フェライト粒子をコア粒子とするキャリアでは上記の課題に対して十分に応えているとは言えない。
【0020】
又、多孔質フェライトコア粒子の空隙に樹脂を充填してなる樹脂充填型フェライトキャリアが提案されている(特許文献4)。同文献によれば、「空隙率」及び「連続空隙度」を特定の範囲に調整することで、キャリアの真比重を低減させて、現像材の劣化を防止することができるとしている。これにより、画像濃度を十分に確保し、長期に渡って安定的に高画質画像を得ることが可能になるとしている。しかしながら、キャリアの有している現像性はキャリア内部の導電特性に主に起因するものであり、特に、樹脂充填型フェライトキャリアの場合、キャリアに含有されるフェライト成分の繋がりの方が重要である。そのため、同文献で提案する製造法で作製されるキャリアでは、現像性を向上させて画像濃度を十分に確保する観点では未だ十分に応えているとは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特公平07−120086号公報
【特許文献2】特開2000−10350号公報
【特許文献3】特開2007−57943号公報
【特許文献4】特開2006−337579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、上記のような種々の問題を解決し、十分な画像濃度を確保すると同時に、高品位画像を安定的に出力することが可能なキャリア、該キャリアを含有する二成分系現像剤、及び該二成分系現像剤を用いた画像形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、交流インピーダンス測定により得られるインピーダンスZの周波数依存特性を、下記(1)式で表されるフィッティング関数により、フィッティングしたときのパラメータαが、103V/cmの電界下において、0.70以上0.90以下であることを特徴とする電子写真現像用キャリアに関する。
【0024】
【数1】
【0025】
(ただし、
iは虚数単位、
ωは交流インピーダンス測定の角周波数、
Rs及びRは抵抗の次元を持つ実数パラメータ、
αは0以上1以下の値をとる無次元の実数パラメータ、
Tは(RT)1/αが時間の次元を持つ実数パラメータ、
である。)
【0026】
又、本発明の目的は、前記キャリアとトナーとを少なくとも含有する二成分系現像剤を提供することにある。
【0027】
又、本発明の目的は、静電潜像担持体を帯電手段により帯電する帯電工程、該帯電された静電潜像担持体を露光して静電潜像を形成する露光工程、現像剤担持体上に二成分系現像剤で磁気ブラシを形成し、該静電潜像担持体と該現像剤担持体との間に、磁気ブラシを接触させた状態で現像バイアスを印加して該静電潜像をトナーにより現像する工程を有する画像形成方法において、該二成分系現像剤は前記の二成分系現像剤であり、該現像バイアスは、直流電界に交番電界を重畳してなることを特徴とする画像形成方法を提供することにある。
【発明の効果】
【0028】
本発明によると、十分な画像濃度を確保すると同時に、高品位画像を安定的に出力することが可能なキャリアを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の画像形成方法の構成を説明するための模式図である。
【図2】静電潜像電位及び現像バイアス電位を表す模式図である。
【図3】交流インピーダンス測定法の構成を表す模式図である。
【図4】インピーダンス測定で得られたCole−Coleプロットをフィッティングするために用いるフィッティング回路図である。
【図5】図4に示した回路のインピーダンスのCole−Coleプロットを表すグラフ図である。
【図6】キャリア又はコア粒子のインピーダンス測定で得られるCole−Coleプロットを表す模式図である。
【図7】動的抵抗測定の構成を表す模式図である。
【図8】感光体上のトナーの載り量M/S及び平均帯電量Q/Mを測定するためのファラデーケージを表す図である。
【図9】有効階調を測定するためのγ曲線を表す模式図である。
【図10】キャリア2及びキャリア9のインピーダンスのCole−Coleプロットを表すグラフ図である。
【図11】キャリア2及びキャリア9のαの印加電界Esampleに対する依存性を表すグラフ図である。
【図12】磁性コア1及び磁性コア5のαの印加電界Esampleに対する依存性を表すグラフ図である。
【図13】キャリア2及びキャリア9の電流密度J(A/cm2)の印加電界Esdに対する依存性を表すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
一粒子のキャリア内部で導電性部分の繋がりに「ばらつき」を持たせることにより、キャリアの電気伝導特性としては、導電に関する時定数に分布を持たせることが可能になる。つまり、コア粒子内部に極端に時定数が小さい界面から極端に時定数が大きい界面までが存在することで、外部電界が印加されたときに、コア粒子内部の電気伝導が局部的に抑制され、大きな分極が形成される。本発明者らは、この時定数分布の広がりの程度と、現像性との間に強い相関が存在し、時定数分布の広がりが大きくすることによって、キャリアの電気抵抗を極端に低下させること無く、現像性を向上させることができることを見出し、本発明に至った。
【0031】
時定数分布の広がりは、交流インピーダンス測定により求まる、複素インピーダンスの周波数特性に現れる。特に、時定数が特定の分布を持っている場合、複素インピーダンスの周波数特性は経験的に下記(2)式で表される、Cole−Coleの式に従うことが知られている。又、(2)式において、αは上記時定数分布の広がりに対応したパラメータであり、時定数分布の広がりが大きい程、αの値が1に比べて小さくなることが知られている。これらの内容に関しては、Evgenij Barsoukov, J.Ross Macdonaldによって書かれた“Impedance Spectroscopy”(Wiley Interscience発行)に記載されている。
【0032】
【数2】
【0033】
(ただしiは虚数単位、ωは交流インピーダンス測定の角周波数、Rは抵抗の次元を持つ実数パラメータ、αは0以上1以下の値をとる無次元の実数パラメータ、Tは(RT)1/αが時間の次元を持つ実数パラメータ)
【0034】
このため、キャリアの交流インピーダンス測定により、複素インピーダンスの周波数特性を測定し、更に、上記Cole−Coleの式によるフィッティングからαの値を求めることで、キャリアの持つ時定数の分布の程度を知ることができる。
【0035】
上記の検討の結果、本願発明者等は、αの値が0.70以上0.90以下である場合に、キャリア内部における導電性部分の繋がりの「ばらつき」が適度となり、キャリアの電気抵抗を極端に低下させること無く、現像性を向上させることができることを見出した。
【0036】
このような電気伝導特性を有するキャリアは、多孔質フェライト粒子をコア粒子として含有するキャリアであることが好ましい。多孔質フェライトコアでは、フェライト粒子の焼成過程で成長した結晶粒子(グレイン)同士の繋がりの状態に、「ばらつき」を持たせることで、時定数の分布を広げることができる。結晶粒子同士の繋がりの状態とは、結晶粒子同士の接触部における界面の状態であり、界面の面積、焼結過程において界面に析出物質の電気抵抗、界面周辺の組成の分布等さまざまな状態を総称して、結晶粒子同士の繋がりの状態としている。また、コア粒子に充填する樹脂量や、樹脂充填後のコア粒子の被覆樹脂量を調整することにより、現像注入の発生を防止しうる電気抵抗を持たせながら、電界印加下においてキャリア内部に大きな分極を形成させることが可能となる。すなわち、キャリアの抵抗を比較的高抵抗に保ちながら、見かけ上の誘電率を大きくすることができることができる。
【0037】
一般的に誘電体が電界中に置かれると、誘電体内部に形成される分極のために、誘電体の周りの外部電界は歪められる。二成分系現像剤を用いた現像においても、現像バイアスを印加したときのキャリア周りの実電界は、見かけ上の誘電率が大きいキャリアの方が、誘電率が小さいキャリアに比べて大きく歪められる。このため、キャリアに付着したトナーの受ける実電界は強められ、トナーがキャリアから飛翔しやすくなると考えられる。
【0038】
上記の理由により、多孔質フェライトコアは、フェライト粒子の焼成過程で成長した結晶粒子(グレイン)同士の繋がりの状態に、「ばらつき」を持たせることで、キャリアの電気抵抗を極端に低下させること無く、高い現像性を有するキャリアとすることができる。
【0039】
上記の電気的特性を有するキャリアを含有する二成分系現像剤を用いた画像形成方法により、十分な画像濃度を確保しながらも、キャリアの低抵抗化に伴う現像注入を低減することが可能になり、高品位画質の出力画像を得ることができるようになる。
【0040】
以下、本発明を実施するための形態を具体的に示す。
【0041】
<本発明に係る電子写真現像用キャリア>
本発明に係る電子写真現像用キャリアのコアとしては、多孔質フェライトからなる多孔質フェライトコア粒子が好ましい。多孔質フェライトとは次式で表される焼結体である。
(M12O)u(M2O)v(M32O3)w(M4O2)x(M52O5)y(Fe2O3)z
(式中、M1は1価、M2は2価、M3は3価、M4は4価、M5は5価の金属であり、u+v+w+x+y+z=1.0とした時に、u、v、w、x及びyは、それぞれ0≦(u,v,w,x,y)≦0.8であり、zは、0.2<z<1.0である。)
また、上記式中において、M1乃至M5としては、少なくともLi、Fe、Zn、Ni、Mn、Mg、Co、Cu、Ba、Sr、Ca、Si、V、Bi、In、Ta、Zr、B、Mo、Na、Sn、Ti、Cr、Al、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luからなる群から選ばれる1種類以上の金属元素を表す。
【0042】
例えば、磁性のLi系フェライト(例えば、(Li2O)a(Fe2O3)b(0.0<a<0.4,0.6≦b<1.0、a+b=1))、Mn系フェライト(例えば、(MnO)a(Fe2O3)b(0.0<a<0.5、0.5≦b<1.0、a+b=1))、Mn−Mg系フェライト(例えば、(MnO)a(MgO)b(Fe2O3)c(0.0<a<0.5、0.0<b<0.5、0.5≦c<1.0、a+b+c=1))、Mn−Mg−Sr系フェライト(例えば、(MnO)a(MgO)b(SrO)c(Fe2O3)d(0.0<a<0.5、0.0<b<0.5、0.0<c<0.5、0.5≦d<1.0、a+b+c+d=1)、Cu−Zn系フェライト(例えば、(CuO)a(ZnO)b(Fe2O3)c(0.0<a<0.5、0.0<b<0.5、0.5≦c<1.0、a+b+c=1)がある。なお、上記フェライトは主元素を示し、それ以外の微量金属を含有するものも含んでいる。
【0043】
さらに、多孔質フェライトコア内部での結晶粒子の繋がりに「ばらつき」を持たせるために、造粒時にシリカ微粒子等を添加してもよい。
【0044】
結晶の成長速度のコントロールの容易性の観点から、Mn元素を含有する、Mn系フェライト、Mn−Mg系フェライト、Mn−Mg−Sr系フェライトが好ましい。
【0045】
以下に、多孔質フェライトコアの製造工程を詳細に説明する。
【0046】
工程1(秤量・混合工程):
フェライトの原料を、秤量し、混合する。
フェライト原料としては、例えば以下のものが挙げられる。Li、Fe、Zn、Ni、Mn、Mg、Co、Cu、Ba、Sr、Y、Ca、Si、V、Bi、In、Ta、Zr、B、Mo、Na、Sn、Ti、Cr、Al、希土類金属の金属粒子、酸化物、水酸化物、シュウ酸塩、炭酸塩。混合する装置としては、例えば以下のものが挙げられる。ボールミル、遊星ミル、ジェットミル、振動ミル。特にボールミルが混合性の観点から好ましい。
具体的には、ボールミル中に、秤量したフェライト原料、ボールを入れ、0.1時間以上20.0時間以下、粉砕・混合する。
【0047】
工程2(仮焼成工程):
粉砕・混合したフェライト原料を、大気中で焼成温度700℃以上1000℃以下の範囲で、0.5時間以上5.0時間以下仮焼成し、フェライト化する。焼成には、例えば以下の炉が用いられる。バーナー式焼成炉、ロータリー式焼成炉、電気炉。
【0048】
工程3(粉砕工程):
工程2で作製した仮焼フェライトを粉砕機で粉砕する。
粉砕機としては、所望の粒径が得られるものであれば特に限定されない。例えば以下のものが挙げられる。クラッシャーやハンマーミル、ボールミル、ビーズミル、遊星ミル、ジェットミル。
【0049】
仮焼フェライト微粉砕品の体積基準の50%粒径(D50)は、0.5μm以上5.0μm以下、体積基準の90%粒子径(D90)は2.0μm以上7.0μm以下とすることが好ましい。また、前記仮焼フェライト微粉砕品の粒度分布を示すD90/D50を、1.5以上10.0以下にすることが好ましい。粒度分布がある程度ブロードであるような粒子群とすることによって、一粒子のキャリア内部での結晶粒子の繋がりに「ばらつき」を持たせることができ、一粒子のキャリア内部での結晶粒子の繋がりに「ばらつき」を持たせるためのひとつの方法として採用される。
【0050】
フェライト微粉砕品を上記の粒径にするために、例えば、ボールミルやビーズミルでは用いるボールやビーズの素材、運転時間を制御することが好ましい。具体的には、仮焼フェライトの粒径を小さくするためには、比重の重いボールを用いたり、粉砕時間を長くしたりすればよい。また、仮焼フェライトの粒度分布を広くするためには、比重の重いボールを用い、粉砕時間を短くすることで得ることができる。また、粒径の異なる複数の仮焼フェライトを混合することでも分布の広い仮焼フェライトを得ることができる。
【0051】
ボールやビーズの素材としては、所望の粒径・分布が得られれば、特に限定されない。例えば、以下のものがあげられる。ソーダガラス(比重2.5g/cm3)、ソーダレスガラス(比重2.6g/cm3)、高比重ガラス(比重2.7g/cm3)等のガラスや、石英(比重2.2g/cm3)、チタニア(比重3.9g/cm3)、窒化ケイ素(比重3.2g/cm3)、アルミナ(比重3.6g/cm3)、ジルコニア(比重6.0g/cm3)、スチール(比重7.9g/cm3)、ステンレス(比重8.0g/cm3)。中でも、アルミナ、ジルコニア、ステンレスは、耐磨耗性に優れているために好ましい。
【0052】
ボールやビーズの粒径は、所望の粒径・分布が得られれば、特に限定されない。例えば、ボールとしては、直径5mm以上60mm以下のものが好適に用いられる。また、ビーズとしては直径0.03mm以上5mm以下のものが好適に用いられる。
【0053】
また、ボールミルやビーズミルは、乾式より湿式の方が、粉砕品がミルの中で舞い上がることがなく粉砕効率が高い。このため、乾式より湿式の方がより好ましい。
【0054】
工程4(造粒工程):
仮焼フェライトの粉砕品に対し、水、バインダーを加えフェライトスラリーを調整する。必要に応じて、細孔調整剤やシリカ微粒子等を加えてもよい。
【0055】
細孔調整剤としては、発泡剤や樹脂微粒子が挙げられる。発泡剤として、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸アンモニウム。樹脂微粒子として、例えば、ポリエステル、ポリスチレン、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体の如きスチレン共重合体;ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、変性フェノール樹脂、マレイン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂;脂肪族多価アルコール、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジアルコール類及びジフェノール類から選択されるモノマーを構造単位として有するポリエステル樹脂;ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油樹脂、ポリエステルユニットとビニル系重合体ユニットを有しているハイブリッド樹脂の微粒子。
【0056】
シリカ微粒子としては、重量平均粒径は、1μm以上10μm以下であることが好ましく、より好ましくは2μm以上5μm以下である。シリカ微粒子は、フェライトの微粉砕物100質量部に対して、5質量部以上45質量部以下添加することが好ましい。上記の量を添加することで、最終的に磁性体コアに対してシリカ微粒子が4.0質量%以上40.0質量%以下の範囲にコントロールできる。粒度分布の広いシリカ微粒子を用いることで、多孔質フェライトコア内部での結晶粒子の繋がりに「ばらつき」を持たせることもできる。シリカ微粒子の形状は、いずれも用いることができるが、好ましくは球状であることが、造粒持に均一に分散しつつ、焼結時にフェライト反応の結晶成長を適度に抑制することができる。
【0057】
バインダーとしては、例えば、水溶性であるポリビニルアルコールが好ましく用いられる。
【0058】
工程3において、湿式で粉砕した場合は、フェライトスラリー中に含まれている水も考慮し、バインダーと必要に応じて細孔調整剤、シリカ微粒子を加えることが好ましい。
【0059】
得られたフェライトスラリーを、噴霧乾燥機を用い、70℃以上200℃以下の加温雰囲気下で、乾燥・造粒する。
【0060】
噴霧乾燥機としては、所望の多孔質フェライトコア粒子の粒径が得られれば特に限定されない。例えば、スプレードライヤーが使用できる。
【0061】
一粒子の電子写真現像用キャリア内部での結晶粒子の繋がりに「ばらつき」を持たせる方法のひとつとして、組成の異なるフェライトスラリーを混合した上で、造粒する方法が挙げられる。
【0062】
工程5(本焼成工程):
次に、造粒品を800℃以上1400℃以下で1時間以上24時間以下焼成する。1000℃以上1200℃以下がより好ましい。電子写真現像用キャリア断面におけるフェライト部領域の面積比率をキャリアの全断面積に対して50面積%以上90面積%以下にするために、上記範囲内で焼成温度や焼成時間を制御することが好ましい。また、昇温時の昇温速度プロファイル、降温時の速度プロファイルをコントロールすることによって、つながりのばらつきを制御することもできる。
焼成温度を上げたり、焼成時間を長くしたりすることで、多孔質フェライトコア粒子の焼成が進み、その結果、フェライト部領域の面積比率は大きくなる。
【0063】
工程6(選別工程):
以上の様に焼成した粒子を解砕した後に、必要に応じて、分級や篩で篩分して粗大粒子や微粒子を除去してもよい。
【0064】
多孔質フェライトコア粒子は、102V/cmの電界下において、αの値が0.50以上0.80以下であることが好ましい。この場合、多孔質フェライトコア粒子の細孔に樹脂を充填したり、コア粒子の表面に樹脂を被覆したりすることによって、電子写真現像用キャリアとしてαの値を0.70以上0.90以下の範囲に調整しやすくなる。
【0065】
上記のようにして得られた多孔質フェライトコア粒子に、所望のα値や電子写真現像用キャリアとしての抵抗が得られるようにするため、多孔質フェライトコア粒子の細孔に樹脂を充填することが好ましい。また、さらに樹脂を充填したコア粒子の表面に被覆樹脂をコートするなどして、電子写真現像用キャリアとしての物性をコントロールすることができる。
【0066】
樹脂の充填量としては、電子写真現像用キャリアの断面の反射電子像において、電子写真現像用キャリアの全断面積に対して、フェライト部の面積比率が、50面積%以上90面積%以下であることが好ましい。αの値を本発明で規定する範囲としつつ、フェライト部分の面積比率を上記範囲にすることで、キャリア内部のフェライト部の導電経路が適度に制限され、特に良好な電気伝導特性が得られるようになる。また、フェライト部分の面積比率を上記範囲にすることで、動的抵抗率ρを好適な範囲にコントロールしやすくなる。
【0067】
上記多孔質フェライトコア粒子の細孔に樹脂を充填する方法は、特に限定されないが、樹脂と溶剤を混合した樹脂溶液を多孔質フェライトコア粒子の細孔へ浸透させる方法が好ましい。
【0068】
上記樹脂溶液における樹脂固形分の量は、好ましくは1質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上30質量%以下である。50質量%以下である樹脂溶液を用いると粘度が高くならず多孔質フェライトコア粒子の細孔に樹脂溶液が均一に浸透しやすくなる。また、1質量%以上であることで、溶媒の揮発速度が遅くなりすぎず、均一な充填を施すことができ、また、充填後の電子写真現像用キャリア表面として、所望のα値を得ることができるようになる。
【0069】
上記多孔質フェライトコア粒子の細孔に充填する樹脂としては特に限定されず、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のどちらを用いても構わないが、多孔質フェライトコア粒子に対する親和性が高いものであることが好ましい。親和性が高い樹脂を用いた場合には、多孔質フェライトコア粒子の細孔への樹脂の充填時に、同時に多孔質フェライトコア粒子表面も樹脂で覆うことが容易になる。
【0070】
上記熱可塑性樹脂としては、以下のものが挙げられる。ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、スチレン−アクリル樹脂;スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリフッ化ビニリデン樹脂、フルオロカーボン樹脂、パーフルオロカーボン樹脂、ポリビニルピロリドン、石油樹脂、ノボラック樹脂、飽和アルキルポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂。
【0071】
上記熱硬化性樹脂としては、以下のものが挙げられる。フェノール樹脂、変性フェノール樹脂、マレイン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、無水マレイン酸とテレフタル酸と多価アルコールとの重縮合によって得られる不飽和ポリエステル、尿素樹脂、メラミン樹脂、尿素−メラミン樹脂、キシレン樹脂、トルエン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン−グアナミン樹脂、アセトグアナミン樹脂、グリプタール樹脂、フラン樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂。
【0072】
また、これらの樹脂を変性した樹脂を用いても良い。中でもポリフッ化ビニリデン樹脂、フルオロカーボン樹脂、パーフロロカーボン樹脂又は溶剤可溶性パーフロロカーボン樹脂等の含フッ素系樹脂、アクリル変性シリコーン樹脂あるいはシリコーン樹脂は、多孔質フェライトコア粒子に対する親和性が高いため好ましい。
【0073】
上述した樹脂のなかでもシリコーン樹脂が特に好ましい。シリコーン樹脂としては、従来から知られているシリコーン樹脂を使用することができる。
【0074】
例えば、市販品として、以下のものが挙げられる。ストレートシリコーン樹脂では、信越化学社製のKR271、KR255、KR152、東レ・ダウコーニング社製のSR2400、SR2405、SR2410、SR2411。変性シリコーン樹脂では、信越化学社製のKR206(アルキッド変性)、KR5208(アクリル変性)、ES1001N(エポキシ変性)、KR305(ウレタン変性)、東レ・ダウコーニング社製のSR2115(エポキシ変性)、SR2110(アルキッド変性)。
【0075】
上記シリコーン樹脂には、荷電制御剤としてのシランカップリング剤を添加して用いてもよい。添加量は、樹脂固形分100質量部に対し、1質量部以上50質量部以下である。
【0076】
例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメトキシジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、エチレンジアミン、エチレントリアミン、スチレン−アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、イソプロピルトリ(N−アミノエチル)チタネート、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトエリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシラン。
【0077】
多孔質フェライトコア粒子の細孔に樹脂を充填させる方法としては、樹脂を溶剤に希釈し、これを多孔質フェライトコア粒子の細孔に添加する方法が採用できる。ここで用いられる溶剤は、樹脂を溶解できるものであればよい。有機溶剤に可溶な樹脂である場合は、有機溶剤として、トルエン、キシレン、セルソルブブチルアセテート、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノールが挙げられる。また、水溶性の樹脂またはエマルジョンタイプの樹脂である場合には、溶剤として水を用いればよい。多孔質フェライトコア粒子の細孔に、樹脂を充填する方法としては、浸漬法、スプレー法、ハケ塗り法、及び流動床の如き塗布方法により多孔質フェライトコア粒子を樹脂溶液に含浸させ、その後、溶剤を揮発させる方法が挙げられる。
【0078】
本発明の電子写真現像用キャリアは、所望のα値や抵抗を得ると同時に、離型性、耐汚染性、帯電付与能の調整等を考慮して、キャリアコア粒子の表面を樹脂でさらにコートしても良い。多孔質フェライトコア粒子を用いる場合には、コア粒子の細孔に樹脂を充填した後、表面を樹脂でさらにコートすれば良い。その場合、充填に使用する樹脂とコートに使用するコート材としての樹脂は同じであっても、異なっていても良く、熱可塑性の樹脂であっても熱硬化性樹脂であってもよい。
【0079】
上記コート層を形成する樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のどちらを用いてもかまわなく、上記した多孔質フェライトコア粒子の細孔に充填するのに用いることができる樹脂を同じく用いることができる。
【0080】
また、シリコーン樹脂や変性シリコーン樹脂が特に好ましく、具体的に例示される樹脂も上記したとおりである。
【0081】
上述した樹脂は、単独でも使用できるが、夫々を混合して使用してもよい。又、熱可塑性樹脂に硬化剤等を混合し硬化させて使用することもできる。より離型性の高い樹脂を用いることが好適である。
【0082】
さらに、上記コート材は、導電性を有する粒子や荷電制御性を有する粒子や材料を含有していてもよい。
【0083】
導電性を有する粒子としては、カーボンブラック、マグネタイト、グラファイト、酸化亜鉛、酸化錫が挙げられる。
【0084】
キャリアコアを被覆するコート層における導電性を有する粒子の含有量は、被覆樹脂100質量部に対して、微粒子2質量部以上80質量部以下の割合で含有されることが好ましい。
【0085】
上記荷電制御性を有する粒子としては、有機金属錯体の粒子、有機金属塩の粒子、キレート化合物の粒子、モノアゾ金属錯体の粒子、アセチルアセトン金属錯体の粒子、ヒドロキシカルボン酸金属錯体の粒子、ポリカルボン酸金属錯体の粒子、ポリオール金属錯体の粒子、ポリメチルメタクリレート樹脂の粒子、ポリスチレン樹脂の粒子、メラミン樹脂の粒子、フェノール樹脂の粒子、ナイロン樹脂の粒子、シリカの粒子、酸化チタンの粒子、アルミナの粒子など挙げられる。
【0086】
キャリアコアを被覆するコート層における荷電制御性を有する粒子の含有量は、被覆樹脂100質量部に対して、微粒子2質量部以上80質量部以下の割合で含有されることが好ましい。
【0087】
荷電制御性を有する材料としては、シリコーン樹脂に含有させることができるものとして上記したシランカップリング剤を用いることができる。
【0088】
キャリアコアを被覆するコート層における荷電制御性を有する材料の含有量は、被覆樹脂100質量部に対して、2質量部以上80質量部以下の割合で含有されることが好ましい。
【0089】
多孔質フェライトコア粒子の細孔に樹脂を充填した後、表面を樹脂でさらに被覆する方法としては、浸漬法、スプレー法、ハケ塗り法、及び流動床の如き塗布方法により被覆する方法が採用できる。中でも、浸漬法が、キャリア抵抗を所望の範囲に保ちながら、α値をコントロールする上で、より好ましい。
【0090】
コート量は、多孔質フェライトコア粒子100質量部に対し、0.1質量部以上5.0質量部以下であることが、αの値を所望の範囲にする上で好ましい。
【0091】
キャリアコア粒子の表面にコート層を設けることによって、キャリアのαは、キャリア粒子のαに比べて大きくなる傾向にある。コート層にてキャリアコア粒子表面を完全に覆ってしまうと、キャリアコア粒子内部において結晶粒子のつながりにばらつきを持たせたことの効果がキャリアとして発現されにくくなくなってしまうためである。その為、コート層を設ける場合には、そのコート厚やコート剤による表面被覆割合を慎重に調整する必要がある。本発明のキャリアがαを満たすためには、キャリアコア粒子の一部が露出するような状態で、コート層によって覆われていることが好ましい。
【0092】
また、本発明に係るキャリアは、磁気穂状態における動的電気抵抗率ρ(以下、抵抗率ρ)が、104V/cmの電界下において、1.0×106Ω・cm以上1.0×108Ω・cm以下であることが好ましい。この場合には、長期の印刷期間でのキャリアの電気抵抗変動や、機械的なSD間距離の振れなどの影響を良好に抑制することができる。
【0093】
本発明の電子写真現像用キャリアは、体積分布基準の50%粒径(D50)が20.0μm以上60.0μm以下であることが好ましい。上記特定の範囲にあることにより、トナーへの摩擦帯電付与能とキャリア付着とカブリ防止の観点から好ましい。
【0094】
尚、電子写真現像用キャリアの50%粒径(D50)は、風力分級や篩分級を行うことで調整することができる。
【0095】
<本発明に係る二成分系現像剤>
本発明の電子写真現像用キャリアは、トナーと組み合わせて二成分系現像剤として用いられる。
【0096】
二成分系現像剤は、トナーと電子写真現像用キャリアの混合比率が電子写真現像用キャリア100質量部に対してトナーを2質量部以上15質量部以下とすることが好ましく、4質量部以上10質量部以下がより好ましい。上記範囲とすることで、高画像濃度を達成しトナーの飛散を低減することができる。
【0097】
上述の如き電子写真現像用キャリアとトナーとを含有する二成分系現像剤は、トナー及び電子写真現像用キャリアを含有する補給用現像剤を現像器に補給し、且つ、少なくとも現像器内部で過剰になった電子写真現像用キャリアを現像器から排出する二成分現像方法にも適用することができ、前記補給用現像剤として使用できる。
【0098】
前記補給用現像剤として用いる場合には、現像剤の耐久性を高めるという観点から、電子写真現像用キャリア1質量部に対してトナーを2質量部以上50質量部以下の配合割合が好ましい。
【0099】
次に、二成分系現像剤において用いられるトナーに関して説明する。トナーの好ましい態様は以下のとおりである。
【0100】
まず、ポリエステルユニットを主成分とする樹脂および着色剤を含有するトナー粒子を有するトナーが挙げられる。「ポリエステルユニット」とは、ポリエステルに由来する部分を示し、また「ポリエステルユニットを主成分とする樹脂」とは、樹脂を構成する繰り返し単位の多く(好ましくは50%以上)が、エステル結合を有する繰り返し単位である樹脂を意味する。これらは後に詳細に説明される。
【0101】
ポリエステルユニットを合成する際に用いることのできる多価アルコール成分のうち二価のアルコール成分としては、以下のものが挙げられる。
【0102】
ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンの如きビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA。
【0103】
多価アルコール成分のうち三価以上のアルコール成分としては、以下のものが挙げられる。ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン。
【0104】
ポリエステルユニットを合成する際に用いることのできるカルボン酸成分としては、以下のものが挙げられる。
【0105】
二価カルボン酸成分の例としては、以下のものが挙げられる。フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸の如き芳香族ジカルボン酸類又はその無水物;琥珀酸、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸類又はその無水物、炭素数6乃至12のアルキル基で置換された琥珀酸又はその無水物、フマル酸、マレイン酸及びシトラコン酸の如き不飽和ジカルボン酸類又はその無水物。三価以上の多価カルボン酸成分の例としては、以下のものが挙げられる。1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸、およびこれらの酸無水物やエステル化合物。
【0106】
トナー粒子に含まれるポリエステルユニットを有する樹脂の好ましい例としては、以下のものが挙げられる。すなわち、下記式(1)で表される構造に代表されるビスフェノール誘導体をアルコール成分とし、2価以上のカルボン酸又はその酸無水物、又はその低級アルキルエステルからなるカルボン酸成分(例えば、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、ドデセニルコハク酸、トリメリット酸、ピロメリット酸)をカルボン酸成分として、これらを縮重合させることにより得られるポリエステル樹脂である。
【0107】
【化1】
【0108】
〔式中、Rはエチレン基及びプロピレン基から選ばれる1種以上であり、x及びyはそれぞれ1以上の整数であり、且つx+yの平均値は2乃至10である。〕
【0109】
さらに、トナー粒子に含まれるポリエステルユニットを有する樹脂の好ましい例としては、(a)ポリエステルユニットとビニル系重合体ユニットとが化学的に結合しているをハイブリッド樹脂、(b)ハイブリッド樹脂とビニル系重合体との混合物、(c)ポリエステル樹脂とビニル系重合体との混合物、(d)ハイブリッド樹脂とポリエステル樹脂との混合物、(e)ポリエステル樹脂とハイブリッド樹脂とビニル系重合体との混合物が挙げられる。
【0110】
なお、上記ビニル系重合体ユニットとは、ビニル系重合体に由来する部分を示す。ビニル系重合体ユニットまたはビニル系重合体は、後述のビニル系モノマーを重合させることで得られる。
【0111】
トナーは、溶融混錬粉砕法にて製造したものであってもよく、また、懸濁重合法、乳化重合法や溶解懸濁といった方法で製造した、所謂ケミカルトナーであっても良い。また、トナーは、種々の方法で、球形化処理、表面平滑化処理を施して用いると、転写性が良好となり好ましい。
【0112】
懸濁重合法または乳化凝集法によってトナー粒子を製造する際に用いることができるビニル系モノマーとしては、以下のものが挙げられる。スチレン系モノマー、アクリル系モノマー、メタクリル系モノマー、不飽和モノオレフィレン類のモノマー、ビニルエステル類のモノマー、ビニルエーテル類のモノマー、ビニルケトン類のモノマー、N−ビニル化合物のモノマー、その他のビニルモノマー。
【0113】
スチレン系モノマーとしては、以下のものが挙げられる。スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン。
【0114】
アクリル系モノマーとしては、以下のものが挙げられる。アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル類やアクリル酸及びアクリル酸アミド類。また、メタクリル系モノマーは、上記のアクリレートをメタクリレートに代えたものが挙げられる。
【0115】
ビニル系樹脂を製造する際に用いられる重合開始剤としては、公知のアゾ系又はジアゾ系重合開始剤、過酸化物系開始剤や過酸化物を側鎖に有する開始剤、過硫酸塩或いは過酸化水素等が挙げられる。また、三官能以上の多官能重合開始剤を用いても良い。
【0116】
本発明に用いられるトナーは、オイルレス定着を採用する電子写真プロセスに用いられることが好ましい。そのため、該トナーは離型剤を含有することが好ましい。
【0117】
離型剤としては、以下のものが挙げられる。低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックス、酸化ポリエチレンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、またはそれらのブロック共重合物、カルナバワックス、モンタン酸エステルワックス、ベヘン酸ベヘニルの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス類、脱酸カルナバワックスの如き脂肪酸エステル類を一部又は全部を脱酸化したもの。好適な離型剤としては、炭化水素系ワックス及びパラフィンワックスが挙げられる。
【0118】
本発明に用いられるトナーは、示差走査熱量測定(DSC)におけるトナーの吸熱曲線における温度30℃以上200℃以下の範囲に少なくとも1つ以上の吸熱ピークがあり、該吸熱ピーク中の最大吸熱ピークのピーク温度が50℃以上110℃以下であることが好ましい。このようなトナーを用いると、キャリアとの付着力が大きくなることなく、現像性に優れ、かつ低温定着性と耐久性が良好なトナー特性がより向上する傾向にある。
【0119】
本発明に用いられるトナーにおける離型剤の含有量は、トナー粒子中の結着樹脂100質量部に対して1質量部以上15質量部以下であることが好ましく、3質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。離型剤の含有量が1質量部以上15質量部以下であると、良好な離型性を発揮し、オイルレス定着時に優れた転写性を発揮する傾向にある。
【0120】
また、本発明に用いられるトナーは、荷電制御剤を含有していてもよい。荷電制御剤としては、有機金属錯体、金属塩、及びキレート化合物が挙げられる。有機金属錯体としては、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、ヒドロキシカルボン酸金属錯体、ポリカルボン酸金属錯体、ポリオール金属錯体が挙げられる。その他には、カルボン酸の金属塩、カルボン酸無水物、エステル類の如きカルボン酸誘導体や芳香族系化合物の縮合体も挙げられる。また、ビスフェノール類、カリックスアレーンの如きフェノール誘導体も荷電制御剤として用いることができる。本発明に用いられるトナーに含まれる荷電制御剤は、トナーの帯電立ち上がりを良好にする観点から、芳香族カルボン酸の金属化合物であることが好ましい。
【0121】
上記荷電制御剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して0.1質量部以上10.0質量部以下であることが好ましく、0.2質量部以上5.0質量部以下であることがより好ましい。トナーが、上記の範囲内で荷電制御剤を含有することで、高温高湿から低温低湿までの広範な環境においてトナーの摩擦帯電量の変化を小さくすることができる。
【0122】
本発明に用いられるトナーは着色剤を含有してもよい。着色剤としては、公知の顔料もしくは染料、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0123】
本発明に用いられるトナーにおける着色剤の含有量は、トナー粒子中の結着樹脂100質量部に対して1質量部以上15質量部以下であることが好ましく、3質量部以上12質量部以下であることがより好ましく、4質量部以上10質量部以下であることがさらに好ましい。着色剤の含有量がトナー粒子中の着色剤に対して1質量部以上15質量部以下である場合には、透明性が維持され、加えて人間の肌色に代表されるような中間色の再現性も向上する。さらにはトナーの帯電性の安定性が向上し、また低温定着性も得られる。
【0124】
上記のトナーは、無機微粒子がトナー粒子に外添されたものであることが好ましい。無機微粒子としては、酸化チタン、酸化アルミナ、およびシリカのいずれかの無機微粒子を含むことが好ましい。
【0125】
該無機微粒子の表面は、疎水化処理が施されていることが好ましい。該疎水化処理は、以下の疏水化処理剤で処理されていることが好ましい。各種チタンカップリング剤、シランカップリング剤の如きカップリング剤;脂肪酸及びその金属塩;シリコーンオイル;またはそれらの組み合わせ。
【0126】
特に、本発明に用いられるトナーは、個数分布基準の最大ピーク粒径が30nm以上の疎水性シリカ微粒子を含有することがより好ましい。個数分布基準の最大ピーク粒径が30nm以上200nm以下の疎水性シリカ微粒子を含有することが特に好ましい。
【0127】
トナーが、上記個数分布基準の最大ピーク粒径が30nm以上の疎水性シリカ微粒子を含有することで、本発明の磁性キャリアと共に用いた場合に、優れた現像性を耐久後においても維持することができる。結果として長期間にわたり、白抜けを防止することが可能となる。
【0128】
無機微粒子の疎水化の程度は特に限定されないが、例えば、疎水化処理後の無機微粒子のメタノール滴定試験によって滴定された疎水化度(メタノールウェッタビリティー;メタノールに対する濡れ性を示す指標)が40%以上95%以下の範囲であることが好ましい。
【0129】
上記疎水化度の具体的な測定方法は、下記のようにして得たメタノール滴下透過率曲線から求める。
【0130】
まず、メタノール60体積%と水40体積%とからなる含水メタノール液70mlを、直径5cm、厚さ1.75mmの円筒型ガラス容器中に入れ、気泡等を除去するために超音波分散器で5分間分散を行う。
【0131】
次いで、無機微粒子0.06gを精秤して、上記含水メタノール液が入れられた容器の中に添加し、測定用サンプル液を調製する。
【0132】
そして、測定用サンプル液を粉体濡れ性試験機「WET−100P」(レスカ社製)にセットする。この測定用サンプル液を、マグネティックスターラーを用いて、6.7s−1(400rpm)の速度で攪拌する。尚、マグネティックスターラーの回転子として、フッ素樹脂コーティングされた、長さ25mm、最大胴径8mmの紡錘型回転子を用いる。
【0133】
次に、この測定用サンプル液中に、上記装置を通して、メタノールを1.3ml/minの滴下速度で連続的に添加しながら波長780nmの光で透過率を測定し、メタノール滴下透過率曲線を作成する。そして、本発明においては、得られたメタノール滴下透過率曲線において透過率が50%になった時点でのメタノールの体積%を疎水化度とした。
【0134】
上記無機微粒子のトナー中における含有量は、0.1質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上4.0質量%以下であることがより好ましい。また無機微粒子は、複数種の微粒子の組み合わせでもよい。
【0135】
<本発明に係る画像形成方法>
図1は、本発明の一実施例に係る画像形成装置100の要部の概略断面構成を示す。
【0136】
画像形成装置100は、静電潜像担持体としての円筒型の電子写真感光体、所謂、感光体ドラム(以下、単に「感光体」という。)1を有する。感光体1の周囲には、帯電手段としての帯電器2、露光手段としての露光器3、現像手段としての現像器4、感光体1に現像されたトナー像を二次転写部N2に搬送するための中間転写体5、クリーニング手段としてのクリーナー8、前露光手段としての前露光器9などが配置されている。又、感光体1上のトナー像を中間転写体5に転写するための一次転写ローラ61、中間転写体5上のトナー像を転写材Pに転写するための二次転写ローラ62、転写材P上のトナー像を転写材Pに定着するための定着器7が配置されている。
【0137】
感光体1としては、一般的な、少なくとも有機光導電体層を有する感光体であるOPC感光体、及び、少なくともアモルファスシリコン層を有する感光体であるa−Si感光体を用いることができる。
【0138】
感光体1は、所定の周速度で回転駆動される。回転する感光体1の表面は、帯電器2により略一様に帯電される。そして、露光器3に対向する位置では、画像信号に対応して発光されるレーザーが露光器3から照射され、感光体1上に原稿画像に対応した静電像が形成される。
【0139】
感光体1に形成された静電像は、感光体1の回転により現像器4に対向する位置まで到達すると、現像器4内の非磁性トナー粒子(トナー)Tと磁性キャリア粒子(キャリア)Cとを備える二成分現像剤によりトナー像として現像される。トナー像は、二成分現像剤のうち実質的にトナーのみで形成される。
【0140】
現像器4は、二成分現像剤を収容する現像容器(現像器本体)44を有する。又、現像容器4は、現像剤担持体としての現像スリーブ41を有する。現像スリーブ41は、現像容器44に配置され、且つ、内部に磁界発生手段としてのマグネット42を内包している。
【0141】
本実施例では、現像剤担持体としての現像スリーブ41は、その表面が、感光体1と対向する対向部(即ち、現像部G)において感光体1の表面移動方向と同方向(b方向)に移動し、且つ、感光体1よりも速い移動速度で回転駆動される。そして、二成分現像剤は、現像スリーブ41の表面上に担持された後、規制部材43によって量がコントロールされ、感光体1と対向する現像部Gまで搬送される。
【0142】
キャリアCは、帯電したトナーを担持して現像部Gまで搬送する働きをする。又、トナーTは、キャリアCと混合されることにより、摩擦帯電により所定の極性の所定の帯電量に帯電される。現像スリーブ41上の二成分現像剤は、現像部Gにおいて、マグネット42の発生する磁界により穂立ちして磁気ブラシを形成する。そして、本実施例では、この磁気ブラシを感光体1の表面に接触させ、又現像スリーブ41に所定の現像バイアスを印加することにより、二成分現像剤からトナーTのみを感光体1上の静電像に転移させる。
【0143】
感光体1上に形成されたトナー像は、一次転写部N1まで搬送されると、一次転写ローラ61にトナーの正規の帯電極性と逆極性の一次転写バイアスを印加することで、中間転写体5上に静電的に転写され、その後、トナー像はc方向に搬送される。その後、二次転写部N2まで搬送されたトナー像は、二次転写ローラ62にトナーの正規の帯電極性と逆極性の二次転写バイアスを印加することで転写材P上に転写され、定着器7に搬送される。ここで加熱、加圧されることにより、その転写材P上の表面にトナーTが定着される。その後、転写材Pは、出力画像として装置外に排出される。
【0144】
尚、転写工程後に感光体1上に残留したトナーTは、クリーナー8によって除去される。その後、クリーナー8によって清掃された感光体1は、前露光器9からの光照射により電気的に初期化され、上記の画像形成動作が繰り返される。
【0145】
図2は、現像動作時における感光体1上の静電像の電位及び現像スリーブ41に印加される現像バイアスを示している。図2の横軸は時間を示し、縦軸は電位を示す。
【0146】
本例では、現像バイアスとしては、一般的な矩形波の現像バイアス(交番電界)を用いた。この現像バイアスは、交流バイアス(ピーク間電圧Vpp)に、Vdcで示される直流バイアス成分(Vdc)が重畳された現像バイアスである。この現像バイアスが、現像スリーブ41に印加され、感光体1と現像スリーブ41との間に電界が形成される。本発明者らの検討によれば、ピーク間電圧Vppが小さくなるほど、本発明のキャリアのαが現像性を向上させる効果は減少することがわかった。これは、図12に示すように本発明のキャリアは、印加する電界強度が大きくなることでαの値が減少する傾向があるためであると考えられる。つまり、現像バイアスのピーク間電圧Vppが小さくなれば、実質的にキャリアに印加される電界強度は小さくなるため、時定数分布の広がりによるキャリア内部分極の効果は小さくなると考えられる。一方、現像バイアスのピーク間電圧Vppを一定以上に大きくすると、現像注入量が増加する傾向があり、又、SD間のリークによる白斑点画像が発生するようになる。このことから、キャリア内部の時定数分布の広がりが持つ効果を確保しつつ、同時に高品位な画像を得るためには、現像スリーブに印加する現像バイアスのピーク間電圧Vppは、0.7kV以上1.8kV以下であることが好ましい。
【0147】
図2において、VDは、感光体1の帯電電位であり、本実施例では、帯電手段2により負極性に帯電されている。VLは、露光手段3により露光された画像部の領域であり、最高濃度を得るための電位となっている。即ち、VL電位部は、トナーの付着量が最も多くなる領域である。
【0148】
現像スリーブ41には、上述のように矩形波の現像バイアスが印加されている。そのため、現像スリーブ41にピーク電位のうちVp1電位が付与された時には、VL電位に対して最も大きな電位差が形成され、この電位差による電界(以下「現像電界」という。)によって、トナーが感光体1側に移動する。又、逆に、現像スリーブ41にVp2電位が付与された時には、VL電位に対し、現像電界が形成される時とは逆方向の電位差が形成され、VL電位部よりトナーが現像スリーブ41側に引き戻される電界(以下「引き戻し電界」という。)が形成されるため、トナーは、現像スリーブ41側に移動する。
【0149】
尚、本例では、静電潜像は、画像部に露光を行うことによって静電像を形成するイメージ露光方式にて形成した。又、本実施例では、感光体1は、負極性に帯電される。更に、本実施例では、トナーはキャリアとの摩擦帯電により負極性に帯電され、現像方式としては、感光体の帯電極性と同極性に帯電したトナーを用いる(感光体上の露光された画像部を現像する)反転現像方式を用いた。
【0150】
<キャリア及びコア粒子のαの測定>
交流インピーダンス測定により得られるインピーダンスZの周波数依存特性を、上記(1)式で表されるフィッティング関数によりフィッティングしたときのパラメータαの測定法について、図面に従って詳細に説明する。
【0151】
キャリア又はコア粒子のαの値は、以下の手順で測定することができる。
【0152】
(サンプルの秤量)
まず、測定するキャリア又はキャリアコア粒子を、電極面積が4.9cm2である円筒型電極(直径2.5cm)を有するサンプルホルダに封入し、電極間に100Nの押し圧をかけたときに封入したサンプルの厚みLが0.95mm以上1.05mm以下の範囲となるように、キャリア、又はコア粒子を秤量した。
【0153】
(測定回路の説明)
上記のサンプルホルダの電極間に図3に示すように配線を行い、サンプルホルダの電極間に100Nの押し圧をかけた状態において、サンプルホルダ内部に封入したキャリア、又はコア粒子の交流インピーダンス測定を行った。
【0154】
尚、本測定では、電界下におけるαを求めるために、直流電圧を印加した状態における交流インピーダンス測定を行う。このため、図3に示すように、正弦波電圧Vacに直流電圧Voを重畳した交番バイアスをサンプルホルダの電極間に印加する。更に、このときにSD間に流れる応答電流の交流成分のみを取り出し、解析することで、直流電界下におけるインピーダンスを測定した。
【0155】
インピーダンス測定装置としては、Solartron社製1260型周波数応答解析装置(FRA)及び、同社製1296型誘電率測定インターフェイスを用いた。
【0156】
上記交番バイアスに用いられる、直流電圧Voは、波形発振器から出力した直流電圧信号を、Trek社製PZD2000型高電圧電源で増幅して得た。又、正弦波電圧Vacは1296型誘電率測定インターフェイスのSAMPLE−HI端子より出力される。更に図3に示すように、測定系にコンデンサC1(66μF)及びツェナーダイオードD1(5V)を配置することで、正弦波電圧Vacに直流電圧Voを重畳することで、上記交番バイアスを得た。
【0157】
又、応答電流は、図3中の抵抗器R2(10kΩ)、コンデンサC2(33μF)、及びツェナーダイオードD2(5V)を用いた分流回路を用いることで、直流成分と交流成分に分離することができる。このとき、コンデンサC2側に流れる交流成分のみを1260型インピーダンスアナライザのINPUT−V1−LO端子および、1296型誘電率測定インターフェイスのSAMPLE−LO端子に入力し、応答電流波形の解析を行い、インピーダンスを測定した。
【0158】
尚、図3中の抵抗器R1(10kΩ)は保護抵抗であり、測定系に流れる最大電流量を制限する。
【0159】
(複素インピーダンスの測定)
本実施例では、Solartron社製インピーダンス測定ソフトウェアSMaRTを用いて、インピーダンスの自動測定を行った。SMaRTでは、所定の周波数fの正弦波電圧と正弦波電圧に対する応答電流から、周波数fに対する複素インピーダンスを測定することができる。
Z(ω)=Re[Z(ω)]+iIm[Z(ω)]
ただし、Re〔Z〕はインピーダンスの実部、Im〔Z〕はインピーダンスの虚部である。また、ωは角周波数であり、周波数fとは、ω=2πfの関係がある。
【0160】
インピーダンスの周波数特性を測定するために、上記正弦波電圧の周波数f(Hz)は、1Hzから1MHzまでの複数の周波数でインピーダンス測定を行った。又、正弦波電圧の振幅は実効値で1Vとした。
【0161】
上記のように、1Hzから1MHzの周波数範囲において複数の周波数で測定した複素インピーダンスZを複素平面状にプロットすることで、所謂Cole−Coleプロット(ナイキスト線図)を作成した。
【0162】
(等価回路によるフィッティング)
次に、交流インピーダンス測定で得られた複素インピーダンス測定データからαを求めた方法について具体的に説明する。
【0163】
作成したCole−Coleプロットは、Solartron社製解析ソフトウェアZView2のInstant Fit機能を使用し、図4に示した等価回路の複素インピーダンスと対応させてフィッティングを行い、インピーダンス測定データのフィッティングパラメータとしてαを求めた。
【0164】
ここで、図4においてRs、Rは抵抗であり、CPEはConstant Phase Element(定相要素)と呼ばれる回路素子であり、CPEの複素インピーダンスZCPEの周波数特性は下記(3)式で表される。
【0165】
【数3】
【0166】
ここで、ωはインピーダンス測定の角周波数、iは虚数単位である。又、αは0以上1以下の無次元の実数パラメータであり、特にαの値が1であるとき、下記(4)式で表されるコンデンサのインピーダンスZcと同形式となる。このとき、Tはコンデンサの静電容量Cに対応し、F(ファラド)の次元を持つ。
【0167】
【数4】
【0168】
図4の等価回路全体のインピーダンスは、下記式で表され、最終的には下記(1)式となる。
Z(ω)=Rs+(1/R+1/ZCFE)−1
=Rs+(1/R+1/((iω)αT)−1)−1
【0169】
【数5】
【0170】
尚、Rsはフィッティングの精度を向上させるためにフィッティング回路に導入した仮想的な抵抗であるため、負の値をとってもよい。
【0171】
図5は、上記式(1)において、Rs=0Ω、R=1×105Ω、T=2×10−10Fα・Ωα−1として、αをα=1.0、α=0.9、α=0.8、或いは、α=0.7に固定し、ωを変化させて、その実数部分(Re[Z])と虚数部分(Im[Z])とをプロットしたCole−Coleプロットである。Cole−Coleプロットの形状から解るように、上記(1)式におけるαはCole−Coleプロットの描く円弧の歪み対応したパラメータである。
【0172】
尚、本測定の測定系においては、図3の回路図に示したように、応答電流の交流成分の経路に着目すると、サンプルに対してコンデンサC1及びC2が直列に接続されている。このため、インピーダンス測定の周波数が比較的低周波になると、サンプルの有するインピーダンスに比べて、コンデンサC1及びC2が有するインピーダンスの割合が大きくなる場合ある。このとき、Cole−Coleプロットの形状は、図6に示すように、低周波側にある周波数領域IIにおいて円弧から大きく外れる場合がある。この場合、Cole−Coleプロットが円弧を描く、高周波側の周波数範囲Iにおいて、図4の等価回路でフィッティングを行い、αの値を求める。
【0173】
(電界下におけるα)
103V/cmの電界下におけるキャリアのα、および102V/cmの電界下におけるコア粒子のαの値は以下のように求めた。
【0174】
インピーダンスを測定する際に、サンプルに印加される平均の電界強度Esampleは、インピーダンス測定時に電極間のサンプルが分担する電圧の直流成分Vsampleと電極間距離Lを用いて、Vsample/Lで表される。Vsampleの値は、図3の回路図におけるa点(R1とC1との間の点)における電位とb点(サンプル下のR2とC2とに分岐する点))における電位の差分により測定することができる。本測定では、Tktronix社製のP6015A型高電圧プローブを用いて、a点及びb点における電位を測定し、それらの電位の差分によりサンプルホルダの電極間の分担電圧Vsampleを測定した。又、Vsampleの値は、高電圧電源から出力される直流電圧Voの電圧を変化させることで調整した。
【0175】
このようにして、複数の電界強度Eにおいてインピーダンス測定を行い、各電界強度下におけるαを求め、グラフにプロットすることで、103V/cmの電界下におけるキャリアα、及び102V/cmの電界下におけるコア粒子αの値を見積もった。
【0176】
<動的抵抗率ρの測定>
104V/cmの電界下における、磁気穂状態のキャリアの動的電気抵抗率ρは、図7に示すような構成で測定することができる。尚、下記の要領で測定する電気抵抗測定法を、以下では「動的抵抗測定法」と呼ぶ。先ず、300mm/secの周速で回転するアルミ円筒体(以下アルミドラム)に対して、キャリアのみを内包した現像器の現像スリーブを所定の間隔D(=270μm)をあけて対向させ、更に現像スリーブは540mm/secでアルミドラムと同一方向に回転させる。この状態で、現像スリーブ−アルミドラム間に形成される磁気穂状態の直流電流計測を行った。尚、現像スリーブ上のキャリア搬送量は、30mg/cm2になるように、現像器の規制部材を調整した。
【0177】
現像スリーブ−アルミドラム間(以下SD間)には、直流電圧Voを印加し、SD間に流れる直流電流を測定することで、キャリアの動的電気抵抗を測定した。直流電圧源としては、Trek社製高電圧電源PZD2000を用いた。また、SD間に流れる電流は、コンデンサと抵抗器を用いて作製したローパスフィルタを介して高周波ノイズを低減した後、Keithley社製6517A型エレクトロメータを用いて直流電流量I(A)を測定した。
【0178】
具体的な操作は、次のとおりである。まず、印加電圧Voを変化させたときに、SD間の分担電圧Vsd及び、SD間を流れる電流量Iを測定し、電界強度Esdの平方根Esd1/2に対する電流密度Jの対数log〔J/(A/cm2)〕をプロットしてグラフを作成した。ここで、電界強度Esdは、図7のe点、f点における電位を、Tktronix社製の高電圧プローブP6015Aを用いて測定し、それらの電位の差分により求まるSD間の分担電圧VsdとSD間距離Dを用いてVsd/Dにより求めた。また、電流密度Jは、測定した電流値Iと現像スリーブ上に搬送されたキャリアの磁気穂がアルミドラムに接触している面積S(12.8cm2)を用いて、I/Sにより求めた。
【0179】
ここで、Esd1/2に対するlog〔J/(A/cm2)〕をプロットした理由は、電子写真現像用キャリアにおいて一般的に印加電界Eと電流密度Jの間には、高電界下においては下記(5)式で与えられる関係が成り立つ場合が多いためである。
【0180】
【数6】
【0181】
詳細は、Yasushi Hoshinoによって執筆された“Conductivity Mechanism in Magnetic Brush Developer”(Jpn. J. Appl. Phys. 19(1980) pp. 2413−2416)に記載されている。
【0182】
上記のように作成したグラフを用い、グラフにプロットしたデータ点の最大の電界強度EsdがEsd=104V/cm以上となる場合には、内掃により、Esd=104V/cmにおけるJの値を見積もり、下記(6)式に従いρを求めた。
【0183】
【数7】
【0184】
又、グラフにプロットしたデータ点の最大の電界強度EsdがEsd=104V/cm以下となる場合には、Esd=104V/cmまで直線的に外掃して、Esd=104V/cmにおけるα、及びJの値を見積もり、(6)式に従いρを求めた。
【0185】
<磁性キャリア粒子及び多孔質磁性コア粒子の体積分布基準50%粒径(D50)、仮焼フェライト微粉砕品の体積分布基準50%粒径(D50)、体積分布基準90%粒径(D90)の測定方法>
粒度分布測定は、レーザー回折・散乱方式の粒度分布測定装置「マイクロトラックMT3300EX」(日機装社製)にて測定を行った。
【0186】
仮焼フェライト微粉砕品の体積分布基準の50%粒径(D50)、体積分布基準の90%粒径(D90)の測定では、湿式用の試料循環器「Sample Delivery Control(SDC)」(日機装社製)を装着して行った。仮焼フェライト(フェライトスラリー)を測定濃度になるように試料循環器に滴下した。流速70%、超音波出力40W、超音波時間60秒とした。
【0187】
測定条件は下記の通りである。
SetZero時間 :10秒
測定時間 :30秒
測定回数 :10回
溶媒屈性率 :1.33
粒子屈折率 :2.42
粒子形状 :非球形
測定上限 :1408μm
測定下限 :0.243μm
測定環境 :23℃/50%RH
【0188】
磁性キャリア粒子及び多孔質磁性コア粒子の体積分布基準50%粒径(D50)の測定には、乾式測定用の試料供給機「ワンショットドライ型サンプルコンディショナーTurbotrac」(日機装社製)を装着して行った。Turbotracの供給条件として、真空源として集塵機を用い、風量約33リットル/sec、圧力約17kPaとした。制御は、ソフトウェア上で自動的に行う。粒径は体積基準の累積値である50%粒径(D50)、90%粒径(D90)を求める。制御及び解析は付属ソフト(バージョン10.3.3−202D)を用いて行う。
【0189】
測定条件は下記の通りである。
SetZero時間 :10秒
測定時間 :10秒
測定回数 :1回
粒子屈折率 :1.81
粒子形状 :非球形
測定上限 :1408μm
測定下限 :0.243μm
測定環境 :約23℃/50%RH
【0190】
<トナーの重量平均粒径(D4)、4.0μm以下の粒子の個数%>
トナーの重量平均粒径(D4)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行い、算出した。
【0191】
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
【0192】
尚、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行った。
【0193】
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
【0194】
前記専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
【0195】
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、解析ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れ、この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。尚、前記専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
【0196】
トナー中の個数基準の4.0μm以下の粒子の個数%は、前記のMultisizer3の測定を行った後、データを解析することにより算出する。
【0197】
まず、前記専用ソフトでグラフ/個数%に設定して測定結果のチャートを個数%表示とする。そして、「書式/粒径/粒径統計」画面における粒径設定部分の「<」にチェックし、その下の粒径入力部に「4」を入力する。「分析/個数統計値(算術平均)」画面を表示したときの「<4μm」表示部の数値が、トナー中の4.0μm以下の粒子の個数%である。
【0198】
<樹脂又はトナーのピーク分子量(Mp)、数平均分子数(Mn)、重量平均分子数(Mw)の測定方法>
ピーク分子量(Mp)、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。
【0199】
まず、室温で24時間かけて、試料をテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。試料としては、樹脂、または、トナーを用いる。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マエショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。尚、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が約0.8質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置 :HLC8120 GPC(検出器:RI)(東ソー社製)
カラム :Shodex KF−801、802、803、804、805、806、807の7連(昭和電工社製)
溶離液 :テトラヒドロフラン(THF)
流速 :1.0ml/min
オーブン温度 :40.0℃
試料注入量 :0.10ml
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(例えば、商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500」、東ソ−社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
【0200】
<ワックスの最大吸収ピークのピーク温度、結着樹脂又はトナーのガラス転移温度Tg>
ワックスの最大吸熱ピークのピーク温度は、示差走査熱量分析装置「Q1000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。
【0201】
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
【0202】
具体的には、ワックスを約10mg精秤し、これをアルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定温度範囲30℃以上200℃以下の間で、昇温速度10℃/minで測定を行う。尚、測定においては、一度200℃まで昇温させ、続いて30℃まで降温し、その後に再度昇温を行う。この2度目の昇温過程での温度30℃以上200℃以下の範囲におけるDSC曲線の最大の吸熱ピークを、本発明のワックスの最大吸熱ピークとする。
【0203】
また、結着樹脂またはトナーのガラス転移温度(Tg)は、ワックスの最大吸熱ピークのピーク温度測定と同様に、結着樹脂またはトナーを約10mg精秤し測定する。すると、温度40℃以上100℃以下の範囲において比熱変化が得られる。このときの比熱変化前と比熱変化後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点を、結着樹脂またはトナーのガラス転移温度Tgとする。
【実施例】
【0204】
<多孔質フェライトコア粒子1の製造例>
工程1(秤量・混合工程):
Fe2O3 58.6質量%
MnCO3 34.2質量%
Mg(OH)2 5.7質量%
SrCO3 1.5質量%
となるようにフェライト原材料を秤量した。
その後、ジルコニア(直径10mm)のボールを用いた乾式ボールミルで2時間粉砕・混合した。
【0205】
工程2(仮焼成工程):
粉砕・混合した後、バーナー式焼成炉を用い大気中で950℃で2時間焼成し、仮焼フェライトを作製した。
得られたフェライトの組成は、下記の通り。
(MnO)0.39(MgO)0.13(SrO)0.01(Fe2O3)0.47
【0206】
工程3(粉砕工程):
クラッシャーで0.3mm程度に粉砕した後に、ステンレス(直径10mm)のボールを用い、仮焼フェライト100質量部に対し、水を30質量部加え、湿式ボールミルで1時間粉砕した。
そのスラリーを、ジルコニアのビーズ(直径1.0mm)を用いた湿式ビーズミルで1時間粉砕し、フェライトスラリー(仮焼フェライト微粉砕品)1Aを得た。
得られた仮焼フェライト微粉砕品は、体積分布基準の50%粒径(D50)1.7μm、体積分布基準の90%粒径(D90)6.7μm、D90/D50=3.9であった。
【0207】
工程4(秤量・混合工程):
Fe2O3 80.8質量%
MnCO3 25.8質量%
Mg(OH)2 2.5質量%
となるようにフェライト原材料を秤量した。
その後、ジルコニア(直径10mm)のボールを用いた乾式ボールミルで2時間粉砕・混合した。
【0208】
工程5(仮焼成工程):
粉砕・混合した後、バーナー式焼成炉を用い大気中で950℃で2時間焼成し、仮焼フェライトを作製した。
フェライトの組成は、下記の通り。
(MnO)0.29(MgO)0.06(Fe2O3)0.65
【0209】
工程6(粉砕工程):
クラッシャーで0.3mm程度に粉砕した後に、ジルコニア(直径10mm)のボールを用い、仮焼フェライト100質量部に対し、水を30質量部加え、湿式ボールミルで3時間粉砕した。
そのスラリーを、さらにアルミナビーズ(直径1.0mm)を用いた湿式ビーズミルで2時間粉砕し、フェライトスラリー(仮焼フェライト微粉砕品)1Bを得た。
得られた仮焼フェライト微粉砕品は、体積分布基準の50%粒径(D50)1.3μm、体積分布基準の90%粒径(D90)2.1μm、D90/D50=1.6であった。
【0210】
工程7(造粒工程):
フェライトスラリー1Aと1Bとを1:1で混合し、バインダーとして仮焼フェライト混合物100質量部に対してポリビニルアルコール2.0質量部を添加し、スプレードライヤー(製造元:大川原化工機)で、球状粒子に造粒した。なお、混合したフェライトスラリーから得た仮焼フェライト微粉砕品はD90/D50=4.2であった。
【0211】
工程8(焼成工程):
焼成雰囲気をコントロールするために、電気炉にて窒素雰囲気下(酸素濃度0.3体積%)で、4時間かけて1150℃まで昇温し、4時間そのまま1150℃を保持し焼成した。さらに、3時間かけて室温まで降温して多孔質フェライトコアを取り出した。
【0212】
工程9(選別工程):
凝集した粒子を解砕した後に、目開き250μmの篩で篩分して粗大粒子を除去し、体積分布基準の50%粒径(D50)34.5μmの多孔質フェライトコア粒子1を得た。
【0213】
<多孔質フェライトコア粒子2の製造例>
工程8(焼成工程)において、焼成雰囲気を酸素濃度0.01体積%未満に制御した以外は、多孔質フェライトコア粒子1の製造例と同様にして多孔質フェライトコア粒子2を得た。多孔質フェライトコア粒子2の体積分布基準の50%粒径(D50)は、33.5μmであった。
【0214】
<多孔質フェライトコア粒子3の製造例>
工程8(焼成工程)において、焼成雰囲気を酸素濃度1.0体積%に制御した以外は、多孔質フェライトコア粒子1の製造例と同様にして多孔質フェライトコア粒子3を得た。多孔質フェライトコア粒子3の体積分布基準の50%粒径(D50)は、35.7μmであった。
【0215】
<多孔質フェライトコア粒子4の製造例>
工程1(秤量・混合工程):
Fe2O3 67.0質量%
MnCO3 26.3質量%
Mg(OH)2 6.7質量%
となるようにフェライト原材料を秤量した。
その後、ジルコニア(直径10mm)のボールを用いた乾式ボールミルで2時間粉砕・混合した。
【0216】
工程2(仮焼成工程):
粉砕・混合した後、バーナー式焼成炉を用い大気中で950℃で2時間焼成し、仮焼フェライトを作製した。
フェライトの組成は、下記の通り。
(MnO)0.30(MgO)0.15(Fe2O3)0.55
【0217】
工程3(粉砕工程):
クラッシャーで0.3mm程度に粉砕した後に、ジルコニア(直径10mm)のボールを用い、仮焼フェライト100質量部に対し、水を30質量部加え、湿式ボールミルで2時間粉砕した。
そのスラリーを、ジルコニアのビーズ(直径1.0mm)を用いた湿式ビーズミルで2時間粉砕し、フェライトスラリー(仮焼フェライト微粉砕品)を得た。
得られた仮焼フェライト微粉砕品は、体積分布基準の50%粒径(D50)1.8μm、体積分布基準の90%粒径(D90)7.0μm、D90/D50=3.9であった。
【0218】
工程4(造粒工程):
フェライトスラリーに、バインダーとして、仮焼フェライト混合物100質量部に対してポリビニルアルコール(重量平均分子量5000)2.0質量部、重量平均粒径4μmで球形のSiO2を10質量部、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウムを1.5質量部、湿潤剤として非イオン系活性剤を0.05質量部を添加し、スプレードライヤー(製造元:大川原化工機)で、球状粒子に造粒した。
【0219】
工程5(焼成工程):
焼成雰囲気をコントロールするために、電気炉にて窒素雰囲気下(酸素濃度0.1体積%)で、4.5時間かけて1200℃まで昇温し、4時間そのまま1200℃を維持し焼成を行った。さらに、3時間かけて室温まで降温して多孔質フェライトコアを取り出した。
【0220】
工程6(選別工程):
凝集した粒子を解砕した後に、目開き250μmの篩で篩分して粗大粒子を除去し、体積分布基準の50%粒径(D50)37.5μmの多孔質フェライトコア粒子4を得た。
【0221】
<フェライトコア粒子5の製造例>
工程1:
Fe2O3 74.8質量%
CuO 11.2質量%
ZuO 14.0質量%
となるようにフェライト原材料を秤量した。その後、ジルコニア(直径10mm)のボールを用いた乾式ボールミルで2時間粉砕・混合した。
【0222】
工程2:
粉砕・混合した後、大気中で950℃で2時間焼成し、仮焼フェライトを作製した。得られたフェライトの組成は、下記の通り。
(CuO)0.18(ZnO)0.22(Fe2O3)0.60
なお、上記フェライトは主元素を示し、それ以外の微量金属を含有するものも含んでいる。
【0223】
工程3:
クラッシャーで0.5mm程度に粉砕した後に、ステンレスのボール(直径10mm)を用い、仮焼フェライト100質量部に対し水を30質量部加え、湿式ボールミルで7時間粉砕した。
得られた仮焼フェライト微粉砕品は、体積分布基準の50%粒径(D50)0.8μm、体積分布基準の90%粒径(D90)2.9μm、D90/D50=3.6であった。
【0224】
工程4:
フェライトスラリーに、バインダーとして仮焼フェライト100質量部に対しポリビニルアルコール0.5質量部を添加し、スプレードライヤー(製造元:大川原化工機)で球状粒子に造粒した。
【0225】
工程5(焼成工程):
焼成雰囲気をコントロールするために、電気炉にて窒素雰囲気下(酸素濃度0.1体積%)で、5.0時間かけて1300℃まで昇温し、4時間そのまま1300℃を維持し焼成を行った。さらに、4.0時間かけて室温まで降温してフェライトコアを取り出した。
【0226】
工程6:
凝集した粒子を解砕した後に、目開き250μmの篩で篩分して粗大粒子を除去し、体積分布基準の50%粒径(D50)48.5μmのフェライトコア粒子5を得た。
【0227】
(樹脂溶液Aの調製)
シリコーンワニス
(SR2410 東レ・ダウコーニング社製 固形分濃度20質量%) 83.3質量部
トルエン 16.7質量部
γ−アミノプロピルトリエトキシシラン 1.5質量部
以上を混合し、ボールミル(ソーダガラスボール 直径10mm)を用いて1時間混合し、樹脂溶液Aを得た。
【0228】
<多孔質フェライトコア粒子6の製造例>
工程1(秤量・混合工程):
Fe2O3 80.8質量%
MnCO3 25.8質量%
Mg(OH)2 2.5質量%
となるようにフェライト原材料を秤量した。
その後、ジルコニア(直径10mm)のボールを用いた乾式ボールミルで2時間粉砕・混合した。
【0229】
工程2(仮焼成工程):
粉砕・混合した後、バーナー式焼成炉を用い大気中で950℃で2時間焼成し、仮焼フェライトを作製した。
フェライトの組成は、下記の通り。
(MnO)0.29(MgO)0.06(Fe2O3)0.65
【0230】
工程3(粉砕工程):
クラッシャーで0.3mm程度に粉砕した後に、ジルコニア(直径10mm)のボールを用い、仮焼フェライト100質量部に対し、水を30質量部加え、湿式ボールミルで5時間粉砕した。
そのスラリーを、さらにアルミナビーズ(直径1.0mm)を用いた湿式ビーズミルで3時間粉砕し、フェライトスラリー(仮焼フェライト微粉砕品)を得た。
得られた仮焼フェライト微粉砕品は、体積分布基準の50%粒径(D50)0.9μm、体積分布基準の90%粒径(D90)1.2μm、D90/D50=1.3であった。
【0231】
工程4(造粒工程):
バインダーとして、仮焼フェライト混合物100質量部に対してポリビニルアルコール2.0質量部を添加し、スプレードライヤー(製造元:大川原化工機)で、球状粒子に造粒した。
【0232】
工程5(焼成工程):
焼成雰囲気をコントロールするために、電気炉にて窒素雰囲気下(酸素濃度0.3体積%)で、4時間かけて1150℃まで昇温し、4時間そのまま1150℃を保持し焼成した。さらに、3時間かけて室温まで降温して多孔質フェライトコアを取り出した。
【0233】
工程6(選別工程):
凝集した粒子を解砕した後に、目開き250μmの篩で篩分して粗大粒子を除去し、体積分布基準の50%粒径(D50)33.6μmの多孔質フェライトコア粒子6を得た。
【0234】
<多孔質フェライトコア粒子7の製造例>
多孔質フェライトコア粒子1の製造例において、フェライトスラリー1Aを用いずに、フェライトスラリー1Bのみを用いるようにした以外は、多孔質フェライトコア粒子1の製造例と同様にして、多孔質フェライトコア粒子7を得た。多孔質フェライトコア粒子7の体積分布基準の50%粒径(D50)は、34.7μmであった。
【0235】
<多孔質フェライトコア粒子8の製造例>
工程1(秤量・混合工程):
Fe2O3 58.6質量%
MnCO3 34.2質量%
Mg(OH)2 5.7質量%
SrCO3 1.5質量%
となるようにフェライト原材料を秤量した。
その後、ジルコニア(直径10mm)のボールを用いた乾式ボールミルで2時間粉砕・混合した。
【0236】
工程2(仮焼成工程):
粉砕・混合した後、バーナー式焼成炉を用い大気中で950℃で2時間焼成し、仮焼フェライトを作製した。
得られたフェライトの組成は、下記の通り。
(MnO)0.39(MgO)0.13(SrO)0.01(Fe2O3)0.47
【0237】
工程3(粉砕工程):
クラッシャーで0.3mm程度に粉砕した後に、ステンレス(直径10mm)のボールを用い、仮焼フェライト100質量部に対し、水を30質量部加え、湿式ボールミルで1時間粉砕した。
そのスラリーを、ジルコニアのビーズ(直径1.0mm)を用いた湿式ビーズミルで0.5時間粉砕し、フェライトスラリー(仮焼フェライト微粉砕品)2Aを得た。
得られた仮焼フェライト微粉砕品は、体積分布基準の50%粒径(D50)2.3μm、体積分布基準の90%粒径(D90)13.1μm、D90/D50=5.7であった。
【0238】
工程4(秤量・混合工程):
Fe2O3 80.8質量%
MnCO3 25.8質量%
Mg(OH)2 2.5質量%
となるようにフェライト原材料を秤量した。
その後、ジルコニア(直径10mm)のボールを用いた乾式ボールミルで2時間粉砕・混合した。
【0239】
工程5(仮焼成工程):
粉砕・混合した後、バーナー式焼成炉を用い大気中で950℃で2時間焼成し、仮焼フェライトを作製した。
フェライトの組成は、下記の通り。
(MnO)0.29(MgO)0.06(Fe2O3)0.65
【0240】
工程6(粉砕工程):
クラッシャーで0.3mm程度に粉砕した後に、ジルコニア(直径10mm)のボールを用い、仮焼フェライト100質量部に対し、水を30質量部加え、湿式ボールミルで5時間粉砕した。
そのスラリーを、さらにアルミナビーズ(直径1.0mm)を用いた湿式ビーズミルで5時間粉砕し、フェライトスラリー(仮焼フェライト微粉砕品)2Bを得た。
得られた仮焼フェライト微粉砕品は、体積分布基準の50%粒径(D50)0.6μm、体積分布基準の90%粒径(D90)0.9μm、D90/D50=1.5であった。
【0241】
工程7(造粒工程):
フェライトスラリー2Aと2Bとを2:1で混合し、バインダーとして仮焼フェライト混合物100質量部に対してポリビニルアルコール2.0質量部を添加し、スプレードライヤー(製造元:大川原化工機)で、球状粒子に造粒した。なお、混合したフェライトスラリーから得た仮焼フェライト微粉砕品はD90/D50=8.1であった。
【0242】
工程8(焼成工程):
焼成雰囲気をコントロールするために、電気炉にて窒素雰囲気下(酸素濃度0.3体積%)で、4時間かけて1150℃まで昇温し、4時間そのまま1150℃を保持し焼成した。さらに、3時間かけて室温まで降温して多孔質フェライトコアを取り出した。
【0243】
工程9(選別工程):
凝集した粒子を解砕した後に、目開き250μmの篩で篩分して粗大粒子を除去し、体積分布基準の50%粒径(D50)48.5μmの多孔質フェライトコア粒子8を得た。
【0244】
<多孔質フェライトキャリア1の製造例>
多孔質フェライトコア1 100質量部を万能撹拌混合機(ダルトン社製)に入れ、減圧下、50℃に加熱した。多孔質フェライトコア1 100質量部に対して充填樹脂成分として8.0質量部に相当する樹脂溶液Aを2時間かけて滴下し、さらに50℃で1時間撹拌を行った。その後、1時間かけて80℃まで昇温して溶剤を除去した。得られた試料をジュリアミキサー(徳寿工作所)に移し、窒素雰囲気下に180℃で2時間熱処理して、開口70μmのメッシュで分級して磁性コア1を得た(樹脂充填量8.0質量部)。
【0245】
磁性コア1の100質量部をナウタミキサ(ホソカワミクロン社製)に投入し、スクリューの回転速度100min−1、自転速度が3.5min−1の条件で撹拌しながら減圧下で80℃に調整した。樹脂溶液Aを固形分濃度が10質量%になるようにトルエンで希釈し、磁性コア1 100質量部に対して被覆樹脂成分として0.5質量部になるように樹脂溶液Aを投入した。2時間かけて溶媒除去及び塗布操作を行った。その後、180℃まで昇温し、2時間撹拌を続けた後、70℃まで降温した。得られた試料は、ジュリアミキサー(徳寿工作所社製)に移し、窒素雰囲気下、温度180℃で4時間熱処理した後、開口70μmの篩で粗大粒子を分級除去して、体積分布基準の50%粒径(D50)が35.2μmの多孔質フェライトキャリア1を得た。
【0246】
<多孔質フェライトキャリア2の製造例>
多孔質フェライトキャリア1の製造例の磁性コア1の100質量部に対して被覆樹脂成分として1.0質量部となるように樹脂溶液Aを投入して、溶媒除去及び塗布操作を行った以外は、多孔質フェライトキャリア1の製造例と同様に多孔質フェライトキャリア2を得た。多孔質フェライトキャリア2の体積分布基準の50%粒径(D50)は、35.5μmであった。
【0247】
<多孔質フェライトキャリア3の製造例>
多孔質フェライトキャリア1の製造例の磁性コア1の100質量部に対して被覆樹脂成分として2.0質量部となるように樹脂溶液Aを投入して、溶媒除去及び塗布操作を行った以外は、多孔質フェライトキャリア1の製造例と同様に多孔質フェライトキャリア3を得た。多孔質フェライトキャリア3の体積分布基準の50%粒径(D50)は、35.9μmであった。
【0248】
<多孔質フェライトキャリア4の製造例>
多孔質フェライトキャリア1の製造例において、多孔質フェライトコアとして、多孔質フェライトコア2を用いた以外は、多孔質フェライトキャリア1の製造例と同様にして多孔質フェライトキャリア4を得た。多孔質フェライトキャリア4の体積分布基準の50%粒径(D50)は、34.5μmであった。
【0249】
<多孔質フェライトキャリア5の製造例>
多孔質フェライトキャリア1の製造例において、多孔質フェライトコアとして、多孔質フェライトコア3を用いた以外は、多孔質フェライトキャリア1の製造例と同様にして多孔質フェライトキャリア5を得た。多孔質フェライトキャリア5の体積分布基準の50%粒径(D50)は、36.8μmであった。
【0250】
<多孔質フェライトキャリア6の製造例>
多孔質フェライトコア4の100質量部をナウタミキサ(ホソカワミクロン社製)に投入し、スクリューの回転速度120min−1、自転速度が3.5min−1の条件で撹拌しながら減圧下で80℃に調整した。樹脂溶液Aを固形分濃度が10質量%になるようにトルエンで希釈し、多孔質フェライトコア4の100質量部に対して被覆樹脂成分として0.5質量部になるように樹脂溶液Aを投入した。4時間かけて溶媒除去及び塗布操作を行った。続けて、多孔質フェライトコア4 100質量部に対して被覆樹脂成分として0.5質量部になるように樹脂溶液Aを投入、さらに4時間かけて溶媒除去及び塗布操作を行った。その後、180℃まで昇温し、2時間撹拌を続けた後、70℃まで降温した。得られた試料は、ジュリアミキサー(徳寿工作所社製)に移し、窒素雰囲気下、温度180℃で4時間熱処理した後、開口70μmの篩で粗大粒子を分級除去して、体積分布基準の50%粒径(D50)が38.3μmの多孔質フェライトキャリア6を得た。
【0251】
<多孔質フェライトキャリア7の製造例>
多孔質フェライトキャリア1の製造例の磁性コア1 100質量部に対して被覆樹脂成分として3.0質量部となるように樹脂溶液Aを投入し、溶媒除去及び塗布操作を行った以外は、多孔質フェライトキャリア1の製造例と同様に多孔質フェライトキャリア7を得た。多孔質フェライトキャリア7の体積分布基準の50%粒径(D50)は、37.5μmであった。
【0252】
<多孔質フェライトキャリア8の製造例>
磁性コア1 100質量部に対して、被覆樹脂成分が1.0質量%となるように、樹脂溶液Aを用いて、80℃に加熱した流動床で塗布操作及び溶媒除去を行った。塗布溶媒除去を行った後、200℃まで昇温して2時間の熱処理を行った。開口70μmの篩で分級して多孔質フェライトキャリア8を得た。多孔質フェライトキャリア8の体積分布基準の50%粒径(D50)は35.4μmであった。
【0253】
<フェライトキャリア9の製造例>
フェライトコア5 100質量部に対して、被覆樹脂成分が0.4質量%となるように、樹脂溶液Aを用いて、80℃に加熱した流動床で塗布操作及び溶媒除去を行った。塗布溶媒除去を行った後、200℃まで昇温して2時間の熱処理を行った。開口70μmの篩で分級してフェライトキャリア9を得た。フェライトキャリア9の体積分布基準の50%粒径(D50)は49.7μmであった。
【0254】
<多孔質フェライトキャリア10の製造例>
多孔質フェライトキャリア1の製造例において、多孔質フェライトコアとして、多孔質フェライトコア6を用いた以外は、多孔質フェライトキャリア1の製造例と同様にして多孔質フェライトキャリア10を得た。多孔質フェライトキャリア10の体積分布基準の50%粒径(D50)は、33.9μmであった。
【0255】
<多孔質フェライトキャリア11の製造例>
多孔質フェライトキャリア1の製造例において、多孔質フェライトコアとして、多孔質フェライトコア7を用いた以外は、多孔質フェライトキャリア1の製造例と同様にして多孔質フェライトキャリア11を得た。多孔質フェライトキャリア11の体積分布基準の50%粒径(D50)は、34.9μmであった。
【0256】
<多孔質フェライトキャリア12の製造例>
多孔質フェライトキャリア1の製造例において、多孔質フェライトコアとして、多孔質フェライトコア8を用いた以外は、多孔質フェライトキャリア1の製造例と同様にして多孔質フェライトキャリア12得た。多孔質フェライトキャリア12の体積分布基準の50%粒径(D50)は、48.9μmであった。
【0257】
<樹脂Aの製造例>
スチレン1.9mol、2−エチルヘキシルアクリレート0.21mol、フマル酸0.15mol、α−メチルスチレンの2量体0.03mol、ジクミルパーオキサイド0.05molを滴下ロートに入れた。また、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン7.0mol、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン3.0mol、テレフタル酸3.0mol、無水トリメリット酸2.0mol、フマル酸5.0mol及び酸化ジブチル錫0.2gをガラス製4リットルの4つ口フラスコに入れ、温度計、撹拌棒、コンデンサ及び窒素導入管を取りつけマントルヒーター内においた。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、140℃の温度で撹拌しつつ、先の滴下ロートよりビニル系樹脂のモノマー、架橋剤及び重合開始剤を6時間かけて滴下した。次いで200℃まで昇温し、200℃で4.0時間反応させて樹脂Aを得た。
【0258】
この樹脂AのGPCによる分子量は、重量平均分子量(Mw)64000,数平均分子量(Mn)4500、ピーク分子量(Mp)7000、ガラス転移点(Tg)59℃であった。
【0259】
<シアンマスターバッチの製造>
・樹脂A(マスターバッチ用) 60質量部
・C.I.ピグメントブルー15:3 40質量部
上記の材料をニーダーミキサーにより溶融混練し、シアンマスターバッチを作製した。
【0260】
<トナーの製造例>
・樹脂A 88.0質量部
・精製パラフィンワックス(最大吸熱ピーク:70℃) 5.0質量部
・上記シアンマスターバッチ(着色剤分40質量%) 20.0質量部
・ジ−ターシャリーブチルサリチル酸のアルミニウム化合物(負荷電制御剤) 0.3質量部
上記処方をヘンシェルミキサー(FM−75型、三井三池化工機(株)製)で混合した後、温度120℃に設定した二軸混練機(PCM−30型、池貝鉄工(株)製)にて混練した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、粗砕物を得た。得られた粗砕物を、機械式粉砕機(T−250、ターボ工業(株)製)にて微粉砕した。ホソカワミクロン社製の粒子設計装置(製品名:ファカルティ)を用いて、分級を行った。シアントナー粒子100質量部に、ヘキサメチルジシラザン20質量%で表面処理した一次平均粒子径16nmの疎水性シリカ微粒子1.0質量部を添加し、ヘンシェルミキサー(FM−75型、三井三池化工機(株)製)で混合して、トナーAを得た。このトナーAの重量平均粒径(D4)は6.1μm、4.0μm以下である粒子が個数基準で25.3%であった。
【0261】
〔実施例1〕
多孔質フェライトキャリア1の90質量部に対し、トナーAを10質量部加え、V型混合機により10分間振とうさせて、二成分系現像剤を調製した。この二成分系現像剤を用いて評価を行った。
【0262】
(画像特性の評価)
以下では作製したキャリアの画像特性の評価方法について説明する。
【0263】
本発明のキャリアは、十分な画像濃度を確保しながら、現像注入に伴う画像弊害を防止し、高品位の出力画像を提供できることが、従来のキャリアに比べて優れている。このことを確認するために、十分な画像濃度を確保することを確認するために、(1)現像性、(2)低濃度部におけるガサツキ、及び(3)低濃度部における階調性、に関して評価を行った。ここで、画像性の評価項目として低濃度部におけるガサツキと低濃度部における階調性を評価項目に選んだ理由は、現像注入によって最も静電潜像が乱されるのは、潜像ポテンシャルの浅い低濃度部であり、出力画像としてはガサツキと階調性の跳びが最も目立ちやすくなるためである。
【0264】
尚、画像形成装置として、キヤノン製imagePRESS C1改造機を用い、ブラック位置の現像器に上記現像剤を入れ、常温常湿(23℃、50%RH)環境下で画像形成を行った。又、転写材としては、OKトップコート+128(128g/cm2)を用いて形成した画像を出力した。
【0265】
(1)現像性
現像性は次のようにして評価した。感光ドラムの帯電量および、露光量を調整して、高濃度画像部電位VL(本実施例では−150V)と非画像部電位VD(本実施例では−400V)の電位差が450Vになるように帯電、露光条件を設定した。感光ドラム上の表面電位は、現像スリーブと感光ドラムの対向する現像領域の直下に配置した表面電位計(トレック社製のMODEL347)を用いて測定した。更に、現像バイアス電圧の積分平均値Vdcを、現像コントラストVcon(=|Vdc−VL|)を250V、バックコントラストVback(=|VD−Vdc|)を150Vとなるように設定した。次に、感光ドラム上に帯電および露光により、ベタ黒画像の静電潜像を形成し、作製したキャリアとトナーとからなる二成分系現像材を用いてトナーの現像を行った。その後、感光ドラム上に形成されたトナー層が中間転写体に転写される前に感光ドラムの回転を止め、感光ドラム上の単位面積あたりに現像されたトナーの電荷量Q/Sを測定して、この値を持って現像性を評価した。
【0266】
尚、Q/Sの値は、感光ドラムに現像されたトナーの平均摩擦帯電量Q/Mの値と、単位面積あたりに現像されたトナー量(トナー載り量)M/Sの値を乗じて求めることができる。
【0267】
感光体ドラム上に現像されたトナーの平均帯電量Q/Mおよびトナー載り量M/Sは以下のようにして測定した。図8に示すような、軸径の異なる金属筒を同軸になるように配置した内外2重筒と、内筒内に更にトナーを取り入れるためのフィルターを備えたファラデーケージを用いて、感光ドラム上のトナーをエア吸引する。ファラデーケージは内筒と外筒が絶縁されており、フィルター内にトナーが取り込まれるとトナーの電荷量Qによる静電誘導が生じる。この誘起された電荷量QをKEITHLEY社製のエレクトロメータ6517Aにより測定した。
【0268】
さらに、トナー吸引前後のファラデーケージの質量差から吸引したトナー質量Mを、感光ドラム上のトナーの吸引面積Sを測定することで、平均トナー帯電量Q/M、トナー載り量M/Sを求めた。
【0269】
現像性の評価基準としては、下記の評価基準を用いた。
A:Q/Sが、16.0nC/cm2以上(非常に良好)
B:Q/Sが、15.00nC/cm2以上、16.00nC/cm2未満(良好)
C:Q/Sが、14.00nC/cm2以上、15.00nC/cm2未満(並)
D:Q/Sが、14.00nC/cm2未満(劣る)
【0270】
(2)低濃度部のガサツキ
低濃度画像部におけるガサツキの評価は次に示す方法で行った。
【0271】
まず、感光ドラムの帯電電位VDおよび、現像バイアス電圧の積分平均値Vdcを調整し、バックコントラストVback(=|VD−Vdc|)が150Vの状態で、ベタ画像におけるトナー載り量M/Sが0.3mg/cm2となるように現像コントラストVconを設定した。次に、感光ドラム上に16階調のデジタル潜像を形成し、これに対して現像を行い、転写、定着を経て、16階調画像の出力画像を得た。この出力画像の粒状性GSの値を以下に説明する手法で算出し、出力画像の明度L*が75であるときの粒状性GSの値をもって、低濃度部におけるガサツキを評価した。
【0272】
(粒状性GSの算出法)
銀塩写真の粒状度測定には、一般に濃度分布Diの標準偏差であるRMS粒状度σDが用いられている。その測定条件は、ANSI PJ−2.40−1985「root mean square(rms) granularity if film」に規定されている。
【0273】
【数8】
【0274】
又、濃度変動のパワースペクトルであるウィナースペクトルを用いた粒状度の測定も提案されている。画像のウィナースペクトルと視覚の空間周波数特性(Visual Transfer Function : VTF)とカスケードした後、積分した値を粒状性(GS)とする。GSは値が大きいほど、粒状性が悪いことを示すものである。
【0275】
【数9】
【0276】
【数10】
【0277】
〔参考文献3〕R.P.Dooley,R.Shaw:“Noise Perception in Electrophotography”J.Appl.Photogr.Eng.5(4)
ガサツキの評価基準としては、下記の評価基準を用いた。
A:粒状性GSが、0.170未満(非常に良好)
B:粒状性GSが、0.170以上、0.180未満(良好)
C:粒状性GSが、0.180以上、0.190未満(並)
D:粒状性GSが、0.190以上(劣る)
【0278】
(3)低濃度画像部の階調性
低濃度画像部における階調性は、以下に示す方法で求めた有効階調で評価した。
【0279】
まず、上記の16階調の出力画像の各透過濃度Dtを測定し、図9に示すような、所謂γ曲線を作製した。図9において、Dmaxは最高濃度画像部における透過濃度の測定値であり、Dminは非画像部における透過濃度の測定値である。このγ曲線の線形性が高いほど、階調性が良好であるといえる。
【0280】
本発明者らの検討によれば、低濃度画像部の潜像ポテンシャルは、高濃度画像部の潜像ポテンシャルに比べ浅いため、現像注入によって電荷が潜像ポテンシャルに注入された場合、低濃度画像部にトナーが現像されず、図9に示すように低濃度部で濃度低下が発生するため、階調性が得られなくなる(高γ化する)。本発明者らは、γ曲線の変極点xを用いて、下記(9)式により有効階調を定義した。
【0281】
【数11】
【0282】
即ち、(9)式にて求めた有効階調の値が、1に近いほどγ曲線の立ち上がりが緩やかであり、階調性が良好であるといえる。
【0283】
尚、本試験例では、透過濃度Dtの値は、Macbeth社の透過濃度計TD904の赤フィルターモードで測定した。
【0284】
階調性の評価基準としては、下記の評価基準を用いた。
A:有効階調が0.93以上(非常に良好)
B:有効階調が0.90以上、0.93未満(良好)
C:有効階調が0.87以上、0.90未満(並)
D:有効階調が0.87未満(劣る)
【0285】
〔実施例2乃至8、比較例1乃至4〕
表1に示すフェライトキャリアとトナーAとを組み合わせて、実施例1と同様にして、それぞれ二成分系現像剤を作製した。フェライトキャリア1の90質量部に対し、トナーAを10質量部をV型混合機で10分間混合して現像剤を調製し、評価に供した。
【0286】
<評価結果>
キャリア1乃至12のα、コア粒子のα、抵抗率ρ、並びに上記画像特性評価の結果を表1に示した。
【0287】
キャリア2及びキャリア9の、インピーダンス測定で得られたCole−Coleプロット及び等価回路によるフィッティング曲線を表すグラフを図10に示した。グラフにおけるデータ点はインピーダンス測定により得られたインピーダンスデータ。実線はフィッティングの結果を表す。
【0288】
キャリア2及びキャリア9の、αの印加電界Esampleに対する依存性を表すグラフを図11に示した。
【0289】
磁性コア1及び磁性コア5の、αの印加電界Esampleに対する依存性を表すグラフを図12に示した。
【0290】
キャリア2及びキャリア9の、電流密度Jの印加電界Esdに対する依存性を表すグラフを図13に示した。
【0291】
【表1】
【0292】
表1に示した結果から明らかなように、キャリア1乃至6、11及び12は、高い現像性を確保しながら、現像注入を防止し、ガサツキ、階調性に優れた画像を得ることができるものである。
【0293】
キャリア7は、キャリア1乃至3と同一の、αの値の小さい磁性コア粒子1を含有しているが、被覆樹脂量が多い。これにより、キャリア1乃至3に比べ抵抗率ρが大きく、又、キャリアとしてのαの値が大きくなっている。
【0294】
又、キャリア8は、キャリア2と同一の磁性コア粒子1を含有し、更にキャリア2と同量の樹脂をコートしているが、コート手法がキャリア2の製造に用いた手法と異なることで、キャリア2に比べ、αの値は大きく、又、抵抗率ρの値も大きくなっている。
【0295】
これらの原因を究明するために、走査型電子顕微鏡により撮影されたキャリア粒子の表面の反射電子像を観察すると、キャリア7及び8はキャリア1乃至3に比べ、キャリア表面に露出しているコア粒子の割合が極端に少ないことがわかった。これにより、キャリア8の製造に用いたコート手法は、キャリア1乃至3の製造に用いたコート手法に比べ、キャリア表面に樹脂が均一にコートされやすい特徴があることがわかった。このことから、キャリア7及び8は電界下におけるキャリア間の電荷の移動が抑止されやすく高抵抗化していると考えられる。又、キャリアの高抵抗化により、キャリア内部に時定数分布の広がりが存在する効果も消失し、キャリアとしてのαも大きい値となっていると考えられる。
【0296】
以上の理由により、キャリア7及びキャリア8は、現像注入による画質の劣化は防止しているが、αの値が大きいために現像性が悪く、十分な画像濃度が得られていない。
【0297】
キャリア9の含有する磁性コア粒子5は、磁性コア粒子1乃至4とは異なり、フェライト内部の空隙容量が極めて少ない。このことにより、コア粒子内部においてフェライト結晶粒子同士の繋がりの「ばらつき」が減少し、コア粒子としてのαの値が大きくなっていると予想される。このため、コートした被覆樹脂量はキャリア1と同程度であるにも関わらず、キャリアとしてのαの値もキャリア1乃至6に比べ、大きい値となっている。又、抵抗率ρが小さい効果により、画像濃度は十分であったが、現像注入が発生し、ガサツキ、階調性が低下している。
【0298】
このことから、本発明においては、一粒子内部のフェライト結晶粒子間の繋がりに「ばらつき」を持たせ、時定数分布の広がりを発生させることが重要であり、キャリアのαの値が0.70以上0.90以下であるキャリアとすることが重要である。このようなキャリアを用いた場合には、十分な画像濃度を確保すると同時に、ガサツキ、階調性に優れた高品位な画像を得ることができる。
【符号の説明】
【0299】
100 画像形成装置
1 感光ドラム
2 帯電器
3 露光器
4 現像器
5 中間転写体
61 一次転写ローラ
62 二次転写ローラ
7 定着機
8 クリーナー
9 前露光器
【技術分野】
【0001】
本発明は、二成分現像方式を用いた複写機、プリンター等に使用される電子写真現像用キャリア、該電子写真現像用キャリアとトナーとを含有する二成分系現像剤、および該二成分系現像剤を用いた画像形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、二成分系現像方式を利用した複写機、プリンターなどの画像形成装置では、OPC(有機光導電性)感光体やアモルファスシリコン感光体等の光導電体で構成される感光層を表層に持つ像担持体に対して帯電、露光の過程を経て静電潜像を形成する。次いで、この静電潜像に対して、現像器により現像領域に搬送した二成分系現像剤を用いてトナーを現像することで、感光体上にトナー像を形成する。さらに感光体上のトナー像は、直接、又は中間転写体を介して転写材に転写する。その後、転写材にトナー像を熱および圧力により定着させることによって記録画像を得る。
【0003】
二成分系現像剤は少なくともトナーと電子写真現像用キャリア(以下、キャリアという)より構成されており、トナーは現像容器内部でキャリアと共に攪拌される事で、摩擦帯電により所望の帯電量に帯電される。このとき、キャリアはトナーに対して逆極性に帯電されるため、トナーとキャリアは静電的に付着することになる。現像剤は、マグネット部材を有した現像スリーブに担持され、感光体と現像スリーブの対向する現像領域に磁気穂として搬送される。そして、現像スリーブに印加された現像バイアス電位と感光体上の静電潜像電位とで形成される電界により、トナーがキャリアから離れ、静電潜像に対してトナーが現像される。
【0004】
このとき、現像領域でトナーが受ける実効的な現像電界は、キャリアの持つ電荷やキャリアの持つ電気物性、更に他のトナー電荷など、さまざまな要因により歪められる。特にキャリアの形成する磁気穂による電界への影響は大きく、このため、キャリアの電気物性が最終的に出力される画像の品位(画像濃度、カブリ、キャリア付着、ガサツキ、階調性など)を大きく左右する。例えば、高濃度部における画像濃度は、同じ現像プロセス条件で現像を行った場合でも、キャリアの持つ電気抵抗の違いで大きく変動する。これはキャリアの電気抵抗が現像性と強い相関を持っているからである。ここで現像性とは、潜像ポテンシャルに対して現像されたトナーの電荷が潜像電位を満たす(充電する)能力であり、静電潜像を忠実に再現するトナー画像を得るためには、キャリアが良好な現像性を有している必要がある。
【0005】
トナーの有する電荷により充電できる電位差(充電電位)ΔVtが現像コントラストVconに達していない状態、すなわち、「未充電」の状態であってもVconを大きくすることで、感光体上に現像されるトナー量(トナー載り量)を大きくして、所望の画像濃度を得ることは可能である。
【0006】
ところが、このような「未充電」の状態が起こっている場合、以下のような画像欠陥が発生することがある。
【0007】
例えば、低濃度のハーフトーン画像の後に、高濃度のベタ画像(最高画像濃度レベルの画像)が連続して出力される場合、現像部(現像ニップ)内で高濃度部側の電位をトナーが満たされていないと、境界部で、低濃度部から高濃度部への回りこみ電界が残留する。この回りこみ電界は、境界部における低濃度側のトナーを高濃度側に移動させるように働くため、低濃度部から高濃度部へ変化する境界付近で、低濃度部の画像濃度が低下する画像欠陥が生じる。又、高濃度部において、エッジ部と中央部の電界強度差により、エッジにトナーが集まりやすくなり、エッジ部と中央部の画像濃度に差が生じやすくなる。
【0008】
このため、上記のような「未充電」に伴う画像欠陥を防止しつつも、十分な画像濃度の出力画像を得るためには、現像性を向上させ、感光体上に現像されるトナーのトナー電荷の充電電位ΔVtをできるだけ、現像コントラストVconまで到達させることが必要になる。
【0009】
ところが、近年のように、電子写真技術に印刷機に迫るプリントスピードの高速化や、出力画像の高画質化が求められている状況下では、従来に増して、現像における「未充電」が発生しやすい状況が生まれている。これは、プリントスピードを向上させたために、潜像が現像領域を通過する時間が短くなり、潜像に対して充分なトナー量が供給されなくなったためである。又、ガサツキ、カブリ、階調性等の画像性を向上させるためにトナー帯電量を大きくしたことにより、トナーとキャリア間の静電的付着力が大きくなり、トナーが現像しづらくなったためである。
【0010】
従来、キャリアの抵抗を調整することで現像性の向上を図る試みが行われている。例えば、キャリアの抵抗を低くすることで現像性が向上することが期待することができる。鉄粉のコア粒子にコートする被覆樹脂種や樹脂量を調整することにより、高電界印加時にキャリア抵抗をブレークダウンさせて高濃度画像部の濃度を確保できるとしている提案もある(特許文献1)。又、104V/cmの電界下において、キャリアの電気抵抗が108Ω・cm以上であると十分な画像濃度が得られなくなるため、キャリアの電気抵抗が、10Ω・cm以上108Ω・cm以下であることが望ましいとしている提案もある(特許文献2)。
【0011】
上記のように、キャリアの抵抗を低くすることで現像性が向上する理由は、現像バイアス印加時にキャリアの持っているトナーと逆極性の電荷を現像スリーブに早く逃がすことで、トナーとキャリアの静電的な付着力を低下させ、実質的にトナーの受ける電界強度を大きくすることができるからであると考えられる。
【0012】
一方で、単純にキャリアの電気抵抗を低下させると、現像スリーブに現像バイアスを印加した際に、キャリア電荷が現像スリーブ側に抜けるだけに留まらず、現像スリーブ側からトナーに付与される電荷と同極性の電荷が注入される。そして、現像バイアスと高濃度部の潜像電位によって形成される電界により、キャリアが高濃度部に現像され(キャリア付着)、出力画像としては高濃度部の画像に白い斑点が現れる場合がある。又、キャリアの抵抗が小さく、現像スリーブから、キャリアの磁気穂を介して感光体上の潜像ポテンシャルに対して電荷の注入(以下、この現象を「現像注入」と呼ぶ)が発生すると、静電潜像が乱れることで画像のガサツキの悪化したり、潜像ポテンシャルの浅い低濃度部における「階調性の跳び」が発生したりするなどの、画像品位の低下が問題となる。
【0013】
つまり、キャリアの電気抵抗のみを調整して、所望の画像濃度を確保しながら、ガサツキや階調性の良好な画像品位の優れた出力画像を得るためには、高い現像性と現像注入の防止を両立するような狭いラチチュードでの電気抵抗制御が必要とされる。
【0014】
従来提案されている、キャリアの電気抵抗を調整する手段としては、次のようなものがある。例えばキャリアのコア粒子として低抵抗フェライト粒子を用い、樹脂コートの厚さや表面のコア露出量などを調整することでキャリアの電気抵抗を制御する手法である。また、被覆樹脂にカーボンブラックや、導電性粒子などの導電性粒子を分散することにより、キャリアの電気抵抗を制御する手法などが挙げられる。
【0015】
ところが、被覆樹脂量のみの調整でキャリアの電気抵抗を制御した場合には、キャリアの電気抵抗を、現像性の良化と現像注入量の低減を両立する最適な抵抗領域に制御できたとしても、長期使用時には、現像剤の攪拌や現像剤搬送量の規制部でのストレスにより、コート剥れが発生しやすくなり、初期の電気抵抗特性を維持することが困難となる。
【0016】
又、被覆樹脂にカーボンブラックや導電性粒子を分散してキャリアの電気抵抗を制御する方法は、分散性が不安定であることによる抵抗変動や、帯電付与能の低下などが問題になる。
【0017】
上記のように、充分な画像濃度を確保しながら、同時に現像注入による画像弊害の無い高品位な画像を出力するという課題に対して、キャリアの電気抵抗を調整するという従来提案されている手法は、長期の印刷期間における安定性に対しては十分に応えているとは言えない。
【0018】
又、多孔質フェライトコア粒子の空孔に樹脂を充填してなる樹脂充填型フェライトキャリアが提案されている(特許文献3)。同文献では、樹脂層とフェライト層を交互に繰り返す立体構造がコンデンサ的な役割を持つことで帯電付与能力と、その安定性に優れているとしている。
【0019】
仮に、フェライト層−樹脂層−フェライト層、という層構造が単一のコンデンサの役割を持っていた場合、このような層構造が更に繰り返され多層構造は、単一のコンデンサの直列的な繋がりと見なせる。しかし、複数のコンデンサが単一のコンデンサに比べて大きな静電容量を持つためには、並列的な繋がりの構造を持っている必要があり、上記の樹脂充填型フェライトキャリアが樹脂層とフェライト層を交互に繰り返す立体構造を持っていることでコンデンサ的な要素が向上しているとは考えにくい。又、キャリアがただ単純に立体的層構造を複数持つことには、現像性を向上させて、十分な画像濃度を確保する効果は存在しないため、同文献で提案された多孔質フェライト粒子をコア粒子とするキャリアでは上記の課題に対して十分に応えているとは言えない。
【0020】
又、多孔質フェライトコア粒子の空隙に樹脂を充填してなる樹脂充填型フェライトキャリアが提案されている(特許文献4)。同文献によれば、「空隙率」及び「連続空隙度」を特定の範囲に調整することで、キャリアの真比重を低減させて、現像材の劣化を防止することができるとしている。これにより、画像濃度を十分に確保し、長期に渡って安定的に高画質画像を得ることが可能になるとしている。しかしながら、キャリアの有している現像性はキャリア内部の導電特性に主に起因するものであり、特に、樹脂充填型フェライトキャリアの場合、キャリアに含有されるフェライト成分の繋がりの方が重要である。そのため、同文献で提案する製造法で作製されるキャリアでは、現像性を向上させて画像濃度を十分に確保する観点では未だ十分に応えているとは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特公平07−120086号公報
【特許文献2】特開2000−10350号公報
【特許文献3】特開2007−57943号公報
【特許文献4】特開2006−337579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、上記のような種々の問題を解決し、十分な画像濃度を確保すると同時に、高品位画像を安定的に出力することが可能なキャリア、該キャリアを含有する二成分系現像剤、及び該二成分系現像剤を用いた画像形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は、交流インピーダンス測定により得られるインピーダンスZの周波数依存特性を、下記(1)式で表されるフィッティング関数により、フィッティングしたときのパラメータαが、103V/cmの電界下において、0.70以上0.90以下であることを特徴とする電子写真現像用キャリアに関する。
【0024】
【数1】
【0025】
(ただし、
iは虚数単位、
ωは交流インピーダンス測定の角周波数、
Rs及びRは抵抗の次元を持つ実数パラメータ、
αは0以上1以下の値をとる無次元の実数パラメータ、
Tは(RT)1/αが時間の次元を持つ実数パラメータ、
である。)
【0026】
又、本発明の目的は、前記キャリアとトナーとを少なくとも含有する二成分系現像剤を提供することにある。
【0027】
又、本発明の目的は、静電潜像担持体を帯電手段により帯電する帯電工程、該帯電された静電潜像担持体を露光して静電潜像を形成する露光工程、現像剤担持体上に二成分系現像剤で磁気ブラシを形成し、該静電潜像担持体と該現像剤担持体との間に、磁気ブラシを接触させた状態で現像バイアスを印加して該静電潜像をトナーにより現像する工程を有する画像形成方法において、該二成分系現像剤は前記の二成分系現像剤であり、該現像バイアスは、直流電界に交番電界を重畳してなることを特徴とする画像形成方法を提供することにある。
【発明の効果】
【0028】
本発明によると、十分な画像濃度を確保すると同時に、高品位画像を安定的に出力することが可能なキャリアを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の画像形成方法の構成を説明するための模式図である。
【図2】静電潜像電位及び現像バイアス電位を表す模式図である。
【図3】交流インピーダンス測定法の構成を表す模式図である。
【図4】インピーダンス測定で得られたCole−Coleプロットをフィッティングするために用いるフィッティング回路図である。
【図5】図4に示した回路のインピーダンスのCole−Coleプロットを表すグラフ図である。
【図6】キャリア又はコア粒子のインピーダンス測定で得られるCole−Coleプロットを表す模式図である。
【図7】動的抵抗測定の構成を表す模式図である。
【図8】感光体上のトナーの載り量M/S及び平均帯電量Q/Mを測定するためのファラデーケージを表す図である。
【図9】有効階調を測定するためのγ曲線を表す模式図である。
【図10】キャリア2及びキャリア9のインピーダンスのCole−Coleプロットを表すグラフ図である。
【図11】キャリア2及びキャリア9のαの印加電界Esampleに対する依存性を表すグラフ図である。
【図12】磁性コア1及び磁性コア5のαの印加電界Esampleに対する依存性を表すグラフ図である。
【図13】キャリア2及びキャリア9の電流密度J(A/cm2)の印加電界Esdに対する依存性を表すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
一粒子のキャリア内部で導電性部分の繋がりに「ばらつき」を持たせることにより、キャリアの電気伝導特性としては、導電に関する時定数に分布を持たせることが可能になる。つまり、コア粒子内部に極端に時定数が小さい界面から極端に時定数が大きい界面までが存在することで、外部電界が印加されたときに、コア粒子内部の電気伝導が局部的に抑制され、大きな分極が形成される。本発明者らは、この時定数分布の広がりの程度と、現像性との間に強い相関が存在し、時定数分布の広がりが大きくすることによって、キャリアの電気抵抗を極端に低下させること無く、現像性を向上させることができることを見出し、本発明に至った。
【0031】
時定数分布の広がりは、交流インピーダンス測定により求まる、複素インピーダンスの周波数特性に現れる。特に、時定数が特定の分布を持っている場合、複素インピーダンスの周波数特性は経験的に下記(2)式で表される、Cole−Coleの式に従うことが知られている。又、(2)式において、αは上記時定数分布の広がりに対応したパラメータであり、時定数分布の広がりが大きい程、αの値が1に比べて小さくなることが知られている。これらの内容に関しては、Evgenij Barsoukov, J.Ross Macdonaldによって書かれた“Impedance Spectroscopy”(Wiley Interscience発行)に記載されている。
【0032】
【数2】
【0033】
(ただしiは虚数単位、ωは交流インピーダンス測定の角周波数、Rは抵抗の次元を持つ実数パラメータ、αは0以上1以下の値をとる無次元の実数パラメータ、Tは(RT)1/αが時間の次元を持つ実数パラメータ)
【0034】
このため、キャリアの交流インピーダンス測定により、複素インピーダンスの周波数特性を測定し、更に、上記Cole−Coleの式によるフィッティングからαの値を求めることで、キャリアの持つ時定数の分布の程度を知ることができる。
【0035】
上記の検討の結果、本願発明者等は、αの値が0.70以上0.90以下である場合に、キャリア内部における導電性部分の繋がりの「ばらつき」が適度となり、キャリアの電気抵抗を極端に低下させること無く、現像性を向上させることができることを見出した。
【0036】
このような電気伝導特性を有するキャリアは、多孔質フェライト粒子をコア粒子として含有するキャリアであることが好ましい。多孔質フェライトコアでは、フェライト粒子の焼成過程で成長した結晶粒子(グレイン)同士の繋がりの状態に、「ばらつき」を持たせることで、時定数の分布を広げることができる。結晶粒子同士の繋がりの状態とは、結晶粒子同士の接触部における界面の状態であり、界面の面積、焼結過程において界面に析出物質の電気抵抗、界面周辺の組成の分布等さまざまな状態を総称して、結晶粒子同士の繋がりの状態としている。また、コア粒子に充填する樹脂量や、樹脂充填後のコア粒子の被覆樹脂量を調整することにより、現像注入の発生を防止しうる電気抵抗を持たせながら、電界印加下においてキャリア内部に大きな分極を形成させることが可能となる。すなわち、キャリアの抵抗を比較的高抵抗に保ちながら、見かけ上の誘電率を大きくすることができることができる。
【0037】
一般的に誘電体が電界中に置かれると、誘電体内部に形成される分極のために、誘電体の周りの外部電界は歪められる。二成分系現像剤を用いた現像においても、現像バイアスを印加したときのキャリア周りの実電界は、見かけ上の誘電率が大きいキャリアの方が、誘電率が小さいキャリアに比べて大きく歪められる。このため、キャリアに付着したトナーの受ける実電界は強められ、トナーがキャリアから飛翔しやすくなると考えられる。
【0038】
上記の理由により、多孔質フェライトコアは、フェライト粒子の焼成過程で成長した結晶粒子(グレイン)同士の繋がりの状態に、「ばらつき」を持たせることで、キャリアの電気抵抗を極端に低下させること無く、高い現像性を有するキャリアとすることができる。
【0039】
上記の電気的特性を有するキャリアを含有する二成分系現像剤を用いた画像形成方法により、十分な画像濃度を確保しながらも、キャリアの低抵抗化に伴う現像注入を低減することが可能になり、高品位画質の出力画像を得ることができるようになる。
【0040】
以下、本発明を実施するための形態を具体的に示す。
【0041】
<本発明に係る電子写真現像用キャリア>
本発明に係る電子写真現像用キャリアのコアとしては、多孔質フェライトからなる多孔質フェライトコア粒子が好ましい。多孔質フェライトとは次式で表される焼結体である。
(M12O)u(M2O)v(M32O3)w(M4O2)x(M52O5)y(Fe2O3)z
(式中、M1は1価、M2は2価、M3は3価、M4は4価、M5は5価の金属であり、u+v+w+x+y+z=1.0とした時に、u、v、w、x及びyは、それぞれ0≦(u,v,w,x,y)≦0.8であり、zは、0.2<z<1.0である。)
また、上記式中において、M1乃至M5としては、少なくともLi、Fe、Zn、Ni、Mn、Mg、Co、Cu、Ba、Sr、Ca、Si、V、Bi、In、Ta、Zr、B、Mo、Na、Sn、Ti、Cr、Al、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luからなる群から選ばれる1種類以上の金属元素を表す。
【0042】
例えば、磁性のLi系フェライト(例えば、(Li2O)a(Fe2O3)b(0.0<a<0.4,0.6≦b<1.0、a+b=1))、Mn系フェライト(例えば、(MnO)a(Fe2O3)b(0.0<a<0.5、0.5≦b<1.0、a+b=1))、Mn−Mg系フェライト(例えば、(MnO)a(MgO)b(Fe2O3)c(0.0<a<0.5、0.0<b<0.5、0.5≦c<1.0、a+b+c=1))、Mn−Mg−Sr系フェライト(例えば、(MnO)a(MgO)b(SrO)c(Fe2O3)d(0.0<a<0.5、0.0<b<0.5、0.0<c<0.5、0.5≦d<1.0、a+b+c+d=1)、Cu−Zn系フェライト(例えば、(CuO)a(ZnO)b(Fe2O3)c(0.0<a<0.5、0.0<b<0.5、0.5≦c<1.0、a+b+c=1)がある。なお、上記フェライトは主元素を示し、それ以外の微量金属を含有するものも含んでいる。
【0043】
さらに、多孔質フェライトコア内部での結晶粒子の繋がりに「ばらつき」を持たせるために、造粒時にシリカ微粒子等を添加してもよい。
【0044】
結晶の成長速度のコントロールの容易性の観点から、Mn元素を含有する、Mn系フェライト、Mn−Mg系フェライト、Mn−Mg−Sr系フェライトが好ましい。
【0045】
以下に、多孔質フェライトコアの製造工程を詳細に説明する。
【0046】
工程1(秤量・混合工程):
フェライトの原料を、秤量し、混合する。
フェライト原料としては、例えば以下のものが挙げられる。Li、Fe、Zn、Ni、Mn、Mg、Co、Cu、Ba、Sr、Y、Ca、Si、V、Bi、In、Ta、Zr、B、Mo、Na、Sn、Ti、Cr、Al、希土類金属の金属粒子、酸化物、水酸化物、シュウ酸塩、炭酸塩。混合する装置としては、例えば以下のものが挙げられる。ボールミル、遊星ミル、ジェットミル、振動ミル。特にボールミルが混合性の観点から好ましい。
具体的には、ボールミル中に、秤量したフェライト原料、ボールを入れ、0.1時間以上20.0時間以下、粉砕・混合する。
【0047】
工程2(仮焼成工程):
粉砕・混合したフェライト原料を、大気中で焼成温度700℃以上1000℃以下の範囲で、0.5時間以上5.0時間以下仮焼成し、フェライト化する。焼成には、例えば以下の炉が用いられる。バーナー式焼成炉、ロータリー式焼成炉、電気炉。
【0048】
工程3(粉砕工程):
工程2で作製した仮焼フェライトを粉砕機で粉砕する。
粉砕機としては、所望の粒径が得られるものであれば特に限定されない。例えば以下のものが挙げられる。クラッシャーやハンマーミル、ボールミル、ビーズミル、遊星ミル、ジェットミル。
【0049】
仮焼フェライト微粉砕品の体積基準の50%粒径(D50)は、0.5μm以上5.0μm以下、体積基準の90%粒子径(D90)は2.0μm以上7.0μm以下とすることが好ましい。また、前記仮焼フェライト微粉砕品の粒度分布を示すD90/D50を、1.5以上10.0以下にすることが好ましい。粒度分布がある程度ブロードであるような粒子群とすることによって、一粒子のキャリア内部での結晶粒子の繋がりに「ばらつき」を持たせることができ、一粒子のキャリア内部での結晶粒子の繋がりに「ばらつき」を持たせるためのひとつの方法として採用される。
【0050】
フェライト微粉砕品を上記の粒径にするために、例えば、ボールミルやビーズミルでは用いるボールやビーズの素材、運転時間を制御することが好ましい。具体的には、仮焼フェライトの粒径を小さくするためには、比重の重いボールを用いたり、粉砕時間を長くしたりすればよい。また、仮焼フェライトの粒度分布を広くするためには、比重の重いボールを用い、粉砕時間を短くすることで得ることができる。また、粒径の異なる複数の仮焼フェライトを混合することでも分布の広い仮焼フェライトを得ることができる。
【0051】
ボールやビーズの素材としては、所望の粒径・分布が得られれば、特に限定されない。例えば、以下のものがあげられる。ソーダガラス(比重2.5g/cm3)、ソーダレスガラス(比重2.6g/cm3)、高比重ガラス(比重2.7g/cm3)等のガラスや、石英(比重2.2g/cm3)、チタニア(比重3.9g/cm3)、窒化ケイ素(比重3.2g/cm3)、アルミナ(比重3.6g/cm3)、ジルコニア(比重6.0g/cm3)、スチール(比重7.9g/cm3)、ステンレス(比重8.0g/cm3)。中でも、アルミナ、ジルコニア、ステンレスは、耐磨耗性に優れているために好ましい。
【0052】
ボールやビーズの粒径は、所望の粒径・分布が得られれば、特に限定されない。例えば、ボールとしては、直径5mm以上60mm以下のものが好適に用いられる。また、ビーズとしては直径0.03mm以上5mm以下のものが好適に用いられる。
【0053】
また、ボールミルやビーズミルは、乾式より湿式の方が、粉砕品がミルの中で舞い上がることがなく粉砕効率が高い。このため、乾式より湿式の方がより好ましい。
【0054】
工程4(造粒工程):
仮焼フェライトの粉砕品に対し、水、バインダーを加えフェライトスラリーを調整する。必要に応じて、細孔調整剤やシリカ微粒子等を加えてもよい。
【0055】
細孔調整剤としては、発泡剤や樹脂微粒子が挙げられる。発泡剤として、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸アンモニウム。樹脂微粒子として、例えば、ポリエステル、ポリスチレン、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体の如きスチレン共重合体;ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、変性フェノール樹脂、マレイン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂;脂肪族多価アルコール、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、芳香族ジアルコール類及びジフェノール類から選択されるモノマーを構造単位として有するポリエステル樹脂;ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油樹脂、ポリエステルユニットとビニル系重合体ユニットを有しているハイブリッド樹脂の微粒子。
【0056】
シリカ微粒子としては、重量平均粒径は、1μm以上10μm以下であることが好ましく、より好ましくは2μm以上5μm以下である。シリカ微粒子は、フェライトの微粉砕物100質量部に対して、5質量部以上45質量部以下添加することが好ましい。上記の量を添加することで、最終的に磁性体コアに対してシリカ微粒子が4.0質量%以上40.0質量%以下の範囲にコントロールできる。粒度分布の広いシリカ微粒子を用いることで、多孔質フェライトコア内部での結晶粒子の繋がりに「ばらつき」を持たせることもできる。シリカ微粒子の形状は、いずれも用いることができるが、好ましくは球状であることが、造粒持に均一に分散しつつ、焼結時にフェライト反応の結晶成長を適度に抑制することができる。
【0057】
バインダーとしては、例えば、水溶性であるポリビニルアルコールが好ましく用いられる。
【0058】
工程3において、湿式で粉砕した場合は、フェライトスラリー中に含まれている水も考慮し、バインダーと必要に応じて細孔調整剤、シリカ微粒子を加えることが好ましい。
【0059】
得られたフェライトスラリーを、噴霧乾燥機を用い、70℃以上200℃以下の加温雰囲気下で、乾燥・造粒する。
【0060】
噴霧乾燥機としては、所望の多孔質フェライトコア粒子の粒径が得られれば特に限定されない。例えば、スプレードライヤーが使用できる。
【0061】
一粒子の電子写真現像用キャリア内部での結晶粒子の繋がりに「ばらつき」を持たせる方法のひとつとして、組成の異なるフェライトスラリーを混合した上で、造粒する方法が挙げられる。
【0062】
工程5(本焼成工程):
次に、造粒品を800℃以上1400℃以下で1時間以上24時間以下焼成する。1000℃以上1200℃以下がより好ましい。電子写真現像用キャリア断面におけるフェライト部領域の面積比率をキャリアの全断面積に対して50面積%以上90面積%以下にするために、上記範囲内で焼成温度や焼成時間を制御することが好ましい。また、昇温時の昇温速度プロファイル、降温時の速度プロファイルをコントロールすることによって、つながりのばらつきを制御することもできる。
焼成温度を上げたり、焼成時間を長くしたりすることで、多孔質フェライトコア粒子の焼成が進み、その結果、フェライト部領域の面積比率は大きくなる。
【0063】
工程6(選別工程):
以上の様に焼成した粒子を解砕した後に、必要に応じて、分級や篩で篩分して粗大粒子や微粒子を除去してもよい。
【0064】
多孔質フェライトコア粒子は、102V/cmの電界下において、αの値が0.50以上0.80以下であることが好ましい。この場合、多孔質フェライトコア粒子の細孔に樹脂を充填したり、コア粒子の表面に樹脂を被覆したりすることによって、電子写真現像用キャリアとしてαの値を0.70以上0.90以下の範囲に調整しやすくなる。
【0065】
上記のようにして得られた多孔質フェライトコア粒子に、所望のα値や電子写真現像用キャリアとしての抵抗が得られるようにするため、多孔質フェライトコア粒子の細孔に樹脂を充填することが好ましい。また、さらに樹脂を充填したコア粒子の表面に被覆樹脂をコートするなどして、電子写真現像用キャリアとしての物性をコントロールすることができる。
【0066】
樹脂の充填量としては、電子写真現像用キャリアの断面の反射電子像において、電子写真現像用キャリアの全断面積に対して、フェライト部の面積比率が、50面積%以上90面積%以下であることが好ましい。αの値を本発明で規定する範囲としつつ、フェライト部分の面積比率を上記範囲にすることで、キャリア内部のフェライト部の導電経路が適度に制限され、特に良好な電気伝導特性が得られるようになる。また、フェライト部分の面積比率を上記範囲にすることで、動的抵抗率ρを好適な範囲にコントロールしやすくなる。
【0067】
上記多孔質フェライトコア粒子の細孔に樹脂を充填する方法は、特に限定されないが、樹脂と溶剤を混合した樹脂溶液を多孔質フェライトコア粒子の細孔へ浸透させる方法が好ましい。
【0068】
上記樹脂溶液における樹脂固形分の量は、好ましくは1質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上30質量%以下である。50質量%以下である樹脂溶液を用いると粘度が高くならず多孔質フェライトコア粒子の細孔に樹脂溶液が均一に浸透しやすくなる。また、1質量%以上であることで、溶媒の揮発速度が遅くなりすぎず、均一な充填を施すことができ、また、充填後の電子写真現像用キャリア表面として、所望のα値を得ることができるようになる。
【0069】
上記多孔質フェライトコア粒子の細孔に充填する樹脂としては特に限定されず、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のどちらを用いても構わないが、多孔質フェライトコア粒子に対する親和性が高いものであることが好ましい。親和性が高い樹脂を用いた場合には、多孔質フェライトコア粒子の細孔への樹脂の充填時に、同時に多孔質フェライトコア粒子表面も樹脂で覆うことが容易になる。
【0070】
上記熱可塑性樹脂としては、以下のものが挙げられる。ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、スチレン−アクリル樹脂;スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリフッ化ビニリデン樹脂、フルオロカーボン樹脂、パーフルオロカーボン樹脂、ポリビニルピロリドン、石油樹脂、ノボラック樹脂、飽和アルキルポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂。
【0071】
上記熱硬化性樹脂としては、以下のものが挙げられる。フェノール樹脂、変性フェノール樹脂、マレイン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、無水マレイン酸とテレフタル酸と多価アルコールとの重縮合によって得られる不飽和ポリエステル、尿素樹脂、メラミン樹脂、尿素−メラミン樹脂、キシレン樹脂、トルエン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン−グアナミン樹脂、アセトグアナミン樹脂、グリプタール樹脂、フラン樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂。
【0072】
また、これらの樹脂を変性した樹脂を用いても良い。中でもポリフッ化ビニリデン樹脂、フルオロカーボン樹脂、パーフロロカーボン樹脂又は溶剤可溶性パーフロロカーボン樹脂等の含フッ素系樹脂、アクリル変性シリコーン樹脂あるいはシリコーン樹脂は、多孔質フェライトコア粒子に対する親和性が高いため好ましい。
【0073】
上述した樹脂のなかでもシリコーン樹脂が特に好ましい。シリコーン樹脂としては、従来から知られているシリコーン樹脂を使用することができる。
【0074】
例えば、市販品として、以下のものが挙げられる。ストレートシリコーン樹脂では、信越化学社製のKR271、KR255、KR152、東レ・ダウコーニング社製のSR2400、SR2405、SR2410、SR2411。変性シリコーン樹脂では、信越化学社製のKR206(アルキッド変性)、KR5208(アクリル変性)、ES1001N(エポキシ変性)、KR305(ウレタン変性)、東レ・ダウコーニング社製のSR2115(エポキシ変性)、SR2110(アルキッド変性)。
【0075】
上記シリコーン樹脂には、荷電制御剤としてのシランカップリング剤を添加して用いてもよい。添加量は、樹脂固形分100質量部に対し、1質量部以上50質量部以下である。
【0076】
例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルメトキシジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、エチレンジアミン、エチレントリアミン、スチレン−アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、イソプロピルトリ(N−アミノエチル)チタネート、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトエリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシラン。
【0077】
多孔質フェライトコア粒子の細孔に樹脂を充填させる方法としては、樹脂を溶剤に希釈し、これを多孔質フェライトコア粒子の細孔に添加する方法が採用できる。ここで用いられる溶剤は、樹脂を溶解できるものであればよい。有機溶剤に可溶な樹脂である場合は、有機溶剤として、トルエン、キシレン、セルソルブブチルアセテート、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノールが挙げられる。また、水溶性の樹脂またはエマルジョンタイプの樹脂である場合には、溶剤として水を用いればよい。多孔質フェライトコア粒子の細孔に、樹脂を充填する方法としては、浸漬法、スプレー法、ハケ塗り法、及び流動床の如き塗布方法により多孔質フェライトコア粒子を樹脂溶液に含浸させ、その後、溶剤を揮発させる方法が挙げられる。
【0078】
本発明の電子写真現像用キャリアは、所望のα値や抵抗を得ると同時に、離型性、耐汚染性、帯電付与能の調整等を考慮して、キャリアコア粒子の表面を樹脂でさらにコートしても良い。多孔質フェライトコア粒子を用いる場合には、コア粒子の細孔に樹脂を充填した後、表面を樹脂でさらにコートすれば良い。その場合、充填に使用する樹脂とコートに使用するコート材としての樹脂は同じであっても、異なっていても良く、熱可塑性の樹脂であっても熱硬化性樹脂であってもよい。
【0079】
上記コート層を形成する樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のどちらを用いてもかまわなく、上記した多孔質フェライトコア粒子の細孔に充填するのに用いることができる樹脂を同じく用いることができる。
【0080】
また、シリコーン樹脂や変性シリコーン樹脂が特に好ましく、具体的に例示される樹脂も上記したとおりである。
【0081】
上述した樹脂は、単独でも使用できるが、夫々を混合して使用してもよい。又、熱可塑性樹脂に硬化剤等を混合し硬化させて使用することもできる。より離型性の高い樹脂を用いることが好適である。
【0082】
さらに、上記コート材は、導電性を有する粒子や荷電制御性を有する粒子や材料を含有していてもよい。
【0083】
導電性を有する粒子としては、カーボンブラック、マグネタイト、グラファイト、酸化亜鉛、酸化錫が挙げられる。
【0084】
キャリアコアを被覆するコート層における導電性を有する粒子の含有量は、被覆樹脂100質量部に対して、微粒子2質量部以上80質量部以下の割合で含有されることが好ましい。
【0085】
上記荷電制御性を有する粒子としては、有機金属錯体の粒子、有機金属塩の粒子、キレート化合物の粒子、モノアゾ金属錯体の粒子、アセチルアセトン金属錯体の粒子、ヒドロキシカルボン酸金属錯体の粒子、ポリカルボン酸金属錯体の粒子、ポリオール金属錯体の粒子、ポリメチルメタクリレート樹脂の粒子、ポリスチレン樹脂の粒子、メラミン樹脂の粒子、フェノール樹脂の粒子、ナイロン樹脂の粒子、シリカの粒子、酸化チタンの粒子、アルミナの粒子など挙げられる。
【0086】
キャリアコアを被覆するコート層における荷電制御性を有する粒子の含有量は、被覆樹脂100質量部に対して、微粒子2質量部以上80質量部以下の割合で含有されることが好ましい。
【0087】
荷電制御性を有する材料としては、シリコーン樹脂に含有させることができるものとして上記したシランカップリング剤を用いることができる。
【0088】
キャリアコアを被覆するコート層における荷電制御性を有する材料の含有量は、被覆樹脂100質量部に対して、2質量部以上80質量部以下の割合で含有されることが好ましい。
【0089】
多孔質フェライトコア粒子の細孔に樹脂を充填した後、表面を樹脂でさらに被覆する方法としては、浸漬法、スプレー法、ハケ塗り法、及び流動床の如き塗布方法により被覆する方法が採用できる。中でも、浸漬法が、キャリア抵抗を所望の範囲に保ちながら、α値をコントロールする上で、より好ましい。
【0090】
コート量は、多孔質フェライトコア粒子100質量部に対し、0.1質量部以上5.0質量部以下であることが、αの値を所望の範囲にする上で好ましい。
【0091】
キャリアコア粒子の表面にコート層を設けることによって、キャリアのαは、キャリア粒子のαに比べて大きくなる傾向にある。コート層にてキャリアコア粒子表面を完全に覆ってしまうと、キャリアコア粒子内部において結晶粒子のつながりにばらつきを持たせたことの効果がキャリアとして発現されにくくなくなってしまうためである。その為、コート層を設ける場合には、そのコート厚やコート剤による表面被覆割合を慎重に調整する必要がある。本発明のキャリアがαを満たすためには、キャリアコア粒子の一部が露出するような状態で、コート層によって覆われていることが好ましい。
【0092】
また、本発明に係るキャリアは、磁気穂状態における動的電気抵抗率ρ(以下、抵抗率ρ)が、104V/cmの電界下において、1.0×106Ω・cm以上1.0×108Ω・cm以下であることが好ましい。この場合には、長期の印刷期間でのキャリアの電気抵抗変動や、機械的なSD間距離の振れなどの影響を良好に抑制することができる。
【0093】
本発明の電子写真現像用キャリアは、体積分布基準の50%粒径(D50)が20.0μm以上60.0μm以下であることが好ましい。上記特定の範囲にあることにより、トナーへの摩擦帯電付与能とキャリア付着とカブリ防止の観点から好ましい。
【0094】
尚、電子写真現像用キャリアの50%粒径(D50)は、風力分級や篩分級を行うことで調整することができる。
【0095】
<本発明に係る二成分系現像剤>
本発明の電子写真現像用キャリアは、トナーと組み合わせて二成分系現像剤として用いられる。
【0096】
二成分系現像剤は、トナーと電子写真現像用キャリアの混合比率が電子写真現像用キャリア100質量部に対してトナーを2質量部以上15質量部以下とすることが好ましく、4質量部以上10質量部以下がより好ましい。上記範囲とすることで、高画像濃度を達成しトナーの飛散を低減することができる。
【0097】
上述の如き電子写真現像用キャリアとトナーとを含有する二成分系現像剤は、トナー及び電子写真現像用キャリアを含有する補給用現像剤を現像器に補給し、且つ、少なくとも現像器内部で過剰になった電子写真現像用キャリアを現像器から排出する二成分現像方法にも適用することができ、前記補給用現像剤として使用できる。
【0098】
前記補給用現像剤として用いる場合には、現像剤の耐久性を高めるという観点から、電子写真現像用キャリア1質量部に対してトナーを2質量部以上50質量部以下の配合割合が好ましい。
【0099】
次に、二成分系現像剤において用いられるトナーに関して説明する。トナーの好ましい態様は以下のとおりである。
【0100】
まず、ポリエステルユニットを主成分とする樹脂および着色剤を含有するトナー粒子を有するトナーが挙げられる。「ポリエステルユニット」とは、ポリエステルに由来する部分を示し、また「ポリエステルユニットを主成分とする樹脂」とは、樹脂を構成する繰り返し単位の多く(好ましくは50%以上)が、エステル結合を有する繰り返し単位である樹脂を意味する。これらは後に詳細に説明される。
【0101】
ポリエステルユニットを合成する際に用いることのできる多価アルコール成分のうち二価のアルコール成分としては、以下のものが挙げられる。
【0102】
ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(3.3)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2.0)−ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(6)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンの如きビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA。
【0103】
多価アルコール成分のうち三価以上のアルコール成分としては、以下のものが挙げられる。ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン。
【0104】
ポリエステルユニットを合成する際に用いることのできるカルボン酸成分としては、以下のものが挙げられる。
【0105】
二価カルボン酸成分の例としては、以下のものが挙げられる。フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸の如き芳香族ジカルボン酸類又はその無水物;琥珀酸、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸類又はその無水物、炭素数6乃至12のアルキル基で置換された琥珀酸又はその無水物、フマル酸、マレイン酸及びシトラコン酸の如き不飽和ジカルボン酸類又はその無水物。三価以上の多価カルボン酸成分の例としては、以下のものが挙げられる。1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸、およびこれらの酸無水物やエステル化合物。
【0106】
トナー粒子に含まれるポリエステルユニットを有する樹脂の好ましい例としては、以下のものが挙げられる。すなわち、下記式(1)で表される構造に代表されるビスフェノール誘導体をアルコール成分とし、2価以上のカルボン酸又はその酸無水物、又はその低級アルキルエステルからなるカルボン酸成分(例えば、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フタル酸、テレフタル酸、ドデセニルコハク酸、トリメリット酸、ピロメリット酸)をカルボン酸成分として、これらを縮重合させることにより得られるポリエステル樹脂である。
【0107】
【化1】
【0108】
〔式中、Rはエチレン基及びプロピレン基から選ばれる1種以上であり、x及びyはそれぞれ1以上の整数であり、且つx+yの平均値は2乃至10である。〕
【0109】
さらに、トナー粒子に含まれるポリエステルユニットを有する樹脂の好ましい例としては、(a)ポリエステルユニットとビニル系重合体ユニットとが化学的に結合しているをハイブリッド樹脂、(b)ハイブリッド樹脂とビニル系重合体との混合物、(c)ポリエステル樹脂とビニル系重合体との混合物、(d)ハイブリッド樹脂とポリエステル樹脂との混合物、(e)ポリエステル樹脂とハイブリッド樹脂とビニル系重合体との混合物が挙げられる。
【0110】
なお、上記ビニル系重合体ユニットとは、ビニル系重合体に由来する部分を示す。ビニル系重合体ユニットまたはビニル系重合体は、後述のビニル系モノマーを重合させることで得られる。
【0111】
トナーは、溶融混錬粉砕法にて製造したものであってもよく、また、懸濁重合法、乳化重合法や溶解懸濁といった方法で製造した、所謂ケミカルトナーであっても良い。また、トナーは、種々の方法で、球形化処理、表面平滑化処理を施して用いると、転写性が良好となり好ましい。
【0112】
懸濁重合法または乳化凝集法によってトナー粒子を製造する際に用いることができるビニル系モノマーとしては、以下のものが挙げられる。スチレン系モノマー、アクリル系モノマー、メタクリル系モノマー、不飽和モノオレフィレン類のモノマー、ビニルエステル類のモノマー、ビニルエーテル類のモノマー、ビニルケトン類のモノマー、N−ビニル化合物のモノマー、その他のビニルモノマー。
【0113】
スチレン系モノマーとしては、以下のものが挙げられる。スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン。
【0114】
アクリル系モノマーとしては、以下のものが挙げられる。アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸フェニルの如きアクリル酸エステル類やアクリル酸及びアクリル酸アミド類。また、メタクリル系モノマーは、上記のアクリレートをメタクリレートに代えたものが挙げられる。
【0115】
ビニル系樹脂を製造する際に用いられる重合開始剤としては、公知のアゾ系又はジアゾ系重合開始剤、過酸化物系開始剤や過酸化物を側鎖に有する開始剤、過硫酸塩或いは過酸化水素等が挙げられる。また、三官能以上の多官能重合開始剤を用いても良い。
【0116】
本発明に用いられるトナーは、オイルレス定着を採用する電子写真プロセスに用いられることが好ましい。そのため、該トナーは離型剤を含有することが好ましい。
【0117】
離型剤としては、以下のものが挙げられる。低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックス、酸化ポリエチレンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、またはそれらのブロック共重合物、カルナバワックス、モンタン酸エステルワックス、ベヘン酸ベヘニルの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス類、脱酸カルナバワックスの如き脂肪酸エステル類を一部又は全部を脱酸化したもの。好適な離型剤としては、炭化水素系ワックス及びパラフィンワックスが挙げられる。
【0118】
本発明に用いられるトナーは、示差走査熱量測定(DSC)におけるトナーの吸熱曲線における温度30℃以上200℃以下の範囲に少なくとも1つ以上の吸熱ピークがあり、該吸熱ピーク中の最大吸熱ピークのピーク温度が50℃以上110℃以下であることが好ましい。このようなトナーを用いると、キャリアとの付着力が大きくなることなく、現像性に優れ、かつ低温定着性と耐久性が良好なトナー特性がより向上する傾向にある。
【0119】
本発明に用いられるトナーにおける離型剤の含有量は、トナー粒子中の結着樹脂100質量部に対して1質量部以上15質量部以下であることが好ましく、3質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。離型剤の含有量が1質量部以上15質量部以下であると、良好な離型性を発揮し、オイルレス定着時に優れた転写性を発揮する傾向にある。
【0120】
また、本発明に用いられるトナーは、荷電制御剤を含有していてもよい。荷電制御剤としては、有機金属錯体、金属塩、及びキレート化合物が挙げられる。有機金属錯体としては、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、ヒドロキシカルボン酸金属錯体、ポリカルボン酸金属錯体、ポリオール金属錯体が挙げられる。その他には、カルボン酸の金属塩、カルボン酸無水物、エステル類の如きカルボン酸誘導体や芳香族系化合物の縮合体も挙げられる。また、ビスフェノール類、カリックスアレーンの如きフェノール誘導体も荷電制御剤として用いることができる。本発明に用いられるトナーに含まれる荷電制御剤は、トナーの帯電立ち上がりを良好にする観点から、芳香族カルボン酸の金属化合物であることが好ましい。
【0121】
上記荷電制御剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して0.1質量部以上10.0質量部以下であることが好ましく、0.2質量部以上5.0質量部以下であることがより好ましい。トナーが、上記の範囲内で荷電制御剤を含有することで、高温高湿から低温低湿までの広範な環境においてトナーの摩擦帯電量の変化を小さくすることができる。
【0122】
本発明に用いられるトナーは着色剤を含有してもよい。着色剤としては、公知の顔料もしくは染料、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0123】
本発明に用いられるトナーにおける着色剤の含有量は、トナー粒子中の結着樹脂100質量部に対して1質量部以上15質量部以下であることが好ましく、3質量部以上12質量部以下であることがより好ましく、4質量部以上10質量部以下であることがさらに好ましい。着色剤の含有量がトナー粒子中の着色剤に対して1質量部以上15質量部以下である場合には、透明性が維持され、加えて人間の肌色に代表されるような中間色の再現性も向上する。さらにはトナーの帯電性の安定性が向上し、また低温定着性も得られる。
【0124】
上記のトナーは、無機微粒子がトナー粒子に外添されたものであることが好ましい。無機微粒子としては、酸化チタン、酸化アルミナ、およびシリカのいずれかの無機微粒子を含むことが好ましい。
【0125】
該無機微粒子の表面は、疎水化処理が施されていることが好ましい。該疎水化処理は、以下の疏水化処理剤で処理されていることが好ましい。各種チタンカップリング剤、シランカップリング剤の如きカップリング剤;脂肪酸及びその金属塩;シリコーンオイル;またはそれらの組み合わせ。
【0126】
特に、本発明に用いられるトナーは、個数分布基準の最大ピーク粒径が30nm以上の疎水性シリカ微粒子を含有することがより好ましい。個数分布基準の最大ピーク粒径が30nm以上200nm以下の疎水性シリカ微粒子を含有することが特に好ましい。
【0127】
トナーが、上記個数分布基準の最大ピーク粒径が30nm以上の疎水性シリカ微粒子を含有することで、本発明の磁性キャリアと共に用いた場合に、優れた現像性を耐久後においても維持することができる。結果として長期間にわたり、白抜けを防止することが可能となる。
【0128】
無機微粒子の疎水化の程度は特に限定されないが、例えば、疎水化処理後の無機微粒子のメタノール滴定試験によって滴定された疎水化度(メタノールウェッタビリティー;メタノールに対する濡れ性を示す指標)が40%以上95%以下の範囲であることが好ましい。
【0129】
上記疎水化度の具体的な測定方法は、下記のようにして得たメタノール滴下透過率曲線から求める。
【0130】
まず、メタノール60体積%と水40体積%とからなる含水メタノール液70mlを、直径5cm、厚さ1.75mmの円筒型ガラス容器中に入れ、気泡等を除去するために超音波分散器で5分間分散を行う。
【0131】
次いで、無機微粒子0.06gを精秤して、上記含水メタノール液が入れられた容器の中に添加し、測定用サンプル液を調製する。
【0132】
そして、測定用サンプル液を粉体濡れ性試験機「WET−100P」(レスカ社製)にセットする。この測定用サンプル液を、マグネティックスターラーを用いて、6.7s−1(400rpm)の速度で攪拌する。尚、マグネティックスターラーの回転子として、フッ素樹脂コーティングされた、長さ25mm、最大胴径8mmの紡錘型回転子を用いる。
【0133】
次に、この測定用サンプル液中に、上記装置を通して、メタノールを1.3ml/minの滴下速度で連続的に添加しながら波長780nmの光で透過率を測定し、メタノール滴下透過率曲線を作成する。そして、本発明においては、得られたメタノール滴下透過率曲線において透過率が50%になった時点でのメタノールの体積%を疎水化度とした。
【0134】
上記無機微粒子のトナー中における含有量は、0.1質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上4.0質量%以下であることがより好ましい。また無機微粒子は、複数種の微粒子の組み合わせでもよい。
【0135】
<本発明に係る画像形成方法>
図1は、本発明の一実施例に係る画像形成装置100の要部の概略断面構成を示す。
【0136】
画像形成装置100は、静電潜像担持体としての円筒型の電子写真感光体、所謂、感光体ドラム(以下、単に「感光体」という。)1を有する。感光体1の周囲には、帯電手段としての帯電器2、露光手段としての露光器3、現像手段としての現像器4、感光体1に現像されたトナー像を二次転写部N2に搬送するための中間転写体5、クリーニング手段としてのクリーナー8、前露光手段としての前露光器9などが配置されている。又、感光体1上のトナー像を中間転写体5に転写するための一次転写ローラ61、中間転写体5上のトナー像を転写材Pに転写するための二次転写ローラ62、転写材P上のトナー像を転写材Pに定着するための定着器7が配置されている。
【0137】
感光体1としては、一般的な、少なくとも有機光導電体層を有する感光体であるOPC感光体、及び、少なくともアモルファスシリコン層を有する感光体であるa−Si感光体を用いることができる。
【0138】
感光体1は、所定の周速度で回転駆動される。回転する感光体1の表面は、帯電器2により略一様に帯電される。そして、露光器3に対向する位置では、画像信号に対応して発光されるレーザーが露光器3から照射され、感光体1上に原稿画像に対応した静電像が形成される。
【0139】
感光体1に形成された静電像は、感光体1の回転により現像器4に対向する位置まで到達すると、現像器4内の非磁性トナー粒子(トナー)Tと磁性キャリア粒子(キャリア)Cとを備える二成分現像剤によりトナー像として現像される。トナー像は、二成分現像剤のうち実質的にトナーのみで形成される。
【0140】
現像器4は、二成分現像剤を収容する現像容器(現像器本体)44を有する。又、現像容器4は、現像剤担持体としての現像スリーブ41を有する。現像スリーブ41は、現像容器44に配置され、且つ、内部に磁界発生手段としてのマグネット42を内包している。
【0141】
本実施例では、現像剤担持体としての現像スリーブ41は、その表面が、感光体1と対向する対向部(即ち、現像部G)において感光体1の表面移動方向と同方向(b方向)に移動し、且つ、感光体1よりも速い移動速度で回転駆動される。そして、二成分現像剤は、現像スリーブ41の表面上に担持された後、規制部材43によって量がコントロールされ、感光体1と対向する現像部Gまで搬送される。
【0142】
キャリアCは、帯電したトナーを担持して現像部Gまで搬送する働きをする。又、トナーTは、キャリアCと混合されることにより、摩擦帯電により所定の極性の所定の帯電量に帯電される。現像スリーブ41上の二成分現像剤は、現像部Gにおいて、マグネット42の発生する磁界により穂立ちして磁気ブラシを形成する。そして、本実施例では、この磁気ブラシを感光体1の表面に接触させ、又現像スリーブ41に所定の現像バイアスを印加することにより、二成分現像剤からトナーTのみを感光体1上の静電像に転移させる。
【0143】
感光体1上に形成されたトナー像は、一次転写部N1まで搬送されると、一次転写ローラ61にトナーの正規の帯電極性と逆極性の一次転写バイアスを印加することで、中間転写体5上に静電的に転写され、その後、トナー像はc方向に搬送される。その後、二次転写部N2まで搬送されたトナー像は、二次転写ローラ62にトナーの正規の帯電極性と逆極性の二次転写バイアスを印加することで転写材P上に転写され、定着器7に搬送される。ここで加熱、加圧されることにより、その転写材P上の表面にトナーTが定着される。その後、転写材Pは、出力画像として装置外に排出される。
【0144】
尚、転写工程後に感光体1上に残留したトナーTは、クリーナー8によって除去される。その後、クリーナー8によって清掃された感光体1は、前露光器9からの光照射により電気的に初期化され、上記の画像形成動作が繰り返される。
【0145】
図2は、現像動作時における感光体1上の静電像の電位及び現像スリーブ41に印加される現像バイアスを示している。図2の横軸は時間を示し、縦軸は電位を示す。
【0146】
本例では、現像バイアスとしては、一般的な矩形波の現像バイアス(交番電界)を用いた。この現像バイアスは、交流バイアス(ピーク間電圧Vpp)に、Vdcで示される直流バイアス成分(Vdc)が重畳された現像バイアスである。この現像バイアスが、現像スリーブ41に印加され、感光体1と現像スリーブ41との間に電界が形成される。本発明者らの検討によれば、ピーク間電圧Vppが小さくなるほど、本発明のキャリアのαが現像性を向上させる効果は減少することがわかった。これは、図12に示すように本発明のキャリアは、印加する電界強度が大きくなることでαの値が減少する傾向があるためであると考えられる。つまり、現像バイアスのピーク間電圧Vppが小さくなれば、実質的にキャリアに印加される電界強度は小さくなるため、時定数分布の広がりによるキャリア内部分極の効果は小さくなると考えられる。一方、現像バイアスのピーク間電圧Vppを一定以上に大きくすると、現像注入量が増加する傾向があり、又、SD間のリークによる白斑点画像が発生するようになる。このことから、キャリア内部の時定数分布の広がりが持つ効果を確保しつつ、同時に高品位な画像を得るためには、現像スリーブに印加する現像バイアスのピーク間電圧Vppは、0.7kV以上1.8kV以下であることが好ましい。
【0147】
図2において、VDは、感光体1の帯電電位であり、本実施例では、帯電手段2により負極性に帯電されている。VLは、露光手段3により露光された画像部の領域であり、最高濃度を得るための電位となっている。即ち、VL電位部は、トナーの付着量が最も多くなる領域である。
【0148】
現像スリーブ41には、上述のように矩形波の現像バイアスが印加されている。そのため、現像スリーブ41にピーク電位のうちVp1電位が付与された時には、VL電位に対して最も大きな電位差が形成され、この電位差による電界(以下「現像電界」という。)によって、トナーが感光体1側に移動する。又、逆に、現像スリーブ41にVp2電位が付与された時には、VL電位に対し、現像電界が形成される時とは逆方向の電位差が形成され、VL電位部よりトナーが現像スリーブ41側に引き戻される電界(以下「引き戻し電界」という。)が形成されるため、トナーは、現像スリーブ41側に移動する。
【0149】
尚、本例では、静電潜像は、画像部に露光を行うことによって静電像を形成するイメージ露光方式にて形成した。又、本実施例では、感光体1は、負極性に帯電される。更に、本実施例では、トナーはキャリアとの摩擦帯電により負極性に帯電され、現像方式としては、感光体の帯電極性と同極性に帯電したトナーを用いる(感光体上の露光された画像部を現像する)反転現像方式を用いた。
【0150】
<キャリア及びコア粒子のαの測定>
交流インピーダンス測定により得られるインピーダンスZの周波数依存特性を、上記(1)式で表されるフィッティング関数によりフィッティングしたときのパラメータαの測定法について、図面に従って詳細に説明する。
【0151】
キャリア又はコア粒子のαの値は、以下の手順で測定することができる。
【0152】
(サンプルの秤量)
まず、測定するキャリア又はキャリアコア粒子を、電極面積が4.9cm2である円筒型電極(直径2.5cm)を有するサンプルホルダに封入し、電極間に100Nの押し圧をかけたときに封入したサンプルの厚みLが0.95mm以上1.05mm以下の範囲となるように、キャリア、又はコア粒子を秤量した。
【0153】
(測定回路の説明)
上記のサンプルホルダの電極間に図3に示すように配線を行い、サンプルホルダの電極間に100Nの押し圧をかけた状態において、サンプルホルダ内部に封入したキャリア、又はコア粒子の交流インピーダンス測定を行った。
【0154】
尚、本測定では、電界下におけるαを求めるために、直流電圧を印加した状態における交流インピーダンス測定を行う。このため、図3に示すように、正弦波電圧Vacに直流電圧Voを重畳した交番バイアスをサンプルホルダの電極間に印加する。更に、このときにSD間に流れる応答電流の交流成分のみを取り出し、解析することで、直流電界下におけるインピーダンスを測定した。
【0155】
インピーダンス測定装置としては、Solartron社製1260型周波数応答解析装置(FRA)及び、同社製1296型誘電率測定インターフェイスを用いた。
【0156】
上記交番バイアスに用いられる、直流電圧Voは、波形発振器から出力した直流電圧信号を、Trek社製PZD2000型高電圧電源で増幅して得た。又、正弦波電圧Vacは1296型誘電率測定インターフェイスのSAMPLE−HI端子より出力される。更に図3に示すように、測定系にコンデンサC1(66μF)及びツェナーダイオードD1(5V)を配置することで、正弦波電圧Vacに直流電圧Voを重畳することで、上記交番バイアスを得た。
【0157】
又、応答電流は、図3中の抵抗器R2(10kΩ)、コンデンサC2(33μF)、及びツェナーダイオードD2(5V)を用いた分流回路を用いることで、直流成分と交流成分に分離することができる。このとき、コンデンサC2側に流れる交流成分のみを1260型インピーダンスアナライザのINPUT−V1−LO端子および、1296型誘電率測定インターフェイスのSAMPLE−LO端子に入力し、応答電流波形の解析を行い、インピーダンスを測定した。
【0158】
尚、図3中の抵抗器R1(10kΩ)は保護抵抗であり、測定系に流れる最大電流量を制限する。
【0159】
(複素インピーダンスの測定)
本実施例では、Solartron社製インピーダンス測定ソフトウェアSMaRTを用いて、インピーダンスの自動測定を行った。SMaRTでは、所定の周波数fの正弦波電圧と正弦波電圧に対する応答電流から、周波数fに対する複素インピーダンスを測定することができる。
Z(ω)=Re[Z(ω)]+iIm[Z(ω)]
ただし、Re〔Z〕はインピーダンスの実部、Im〔Z〕はインピーダンスの虚部である。また、ωは角周波数であり、周波数fとは、ω=2πfの関係がある。
【0160】
インピーダンスの周波数特性を測定するために、上記正弦波電圧の周波数f(Hz)は、1Hzから1MHzまでの複数の周波数でインピーダンス測定を行った。又、正弦波電圧の振幅は実効値で1Vとした。
【0161】
上記のように、1Hzから1MHzの周波数範囲において複数の周波数で測定した複素インピーダンスZを複素平面状にプロットすることで、所謂Cole−Coleプロット(ナイキスト線図)を作成した。
【0162】
(等価回路によるフィッティング)
次に、交流インピーダンス測定で得られた複素インピーダンス測定データからαを求めた方法について具体的に説明する。
【0163】
作成したCole−Coleプロットは、Solartron社製解析ソフトウェアZView2のInstant Fit機能を使用し、図4に示した等価回路の複素インピーダンスと対応させてフィッティングを行い、インピーダンス測定データのフィッティングパラメータとしてαを求めた。
【0164】
ここで、図4においてRs、Rは抵抗であり、CPEはConstant Phase Element(定相要素)と呼ばれる回路素子であり、CPEの複素インピーダンスZCPEの周波数特性は下記(3)式で表される。
【0165】
【数3】
【0166】
ここで、ωはインピーダンス測定の角周波数、iは虚数単位である。又、αは0以上1以下の無次元の実数パラメータであり、特にαの値が1であるとき、下記(4)式で表されるコンデンサのインピーダンスZcと同形式となる。このとき、Tはコンデンサの静電容量Cに対応し、F(ファラド)の次元を持つ。
【0167】
【数4】
【0168】
図4の等価回路全体のインピーダンスは、下記式で表され、最終的には下記(1)式となる。
Z(ω)=Rs+(1/R+1/ZCFE)−1
=Rs+(1/R+1/((iω)αT)−1)−1
【0169】
【数5】
【0170】
尚、Rsはフィッティングの精度を向上させるためにフィッティング回路に導入した仮想的な抵抗であるため、負の値をとってもよい。
【0171】
図5は、上記式(1)において、Rs=0Ω、R=1×105Ω、T=2×10−10Fα・Ωα−1として、αをα=1.0、α=0.9、α=0.8、或いは、α=0.7に固定し、ωを変化させて、その実数部分(Re[Z])と虚数部分(Im[Z])とをプロットしたCole−Coleプロットである。Cole−Coleプロットの形状から解るように、上記(1)式におけるαはCole−Coleプロットの描く円弧の歪み対応したパラメータである。
【0172】
尚、本測定の測定系においては、図3の回路図に示したように、応答電流の交流成分の経路に着目すると、サンプルに対してコンデンサC1及びC2が直列に接続されている。このため、インピーダンス測定の周波数が比較的低周波になると、サンプルの有するインピーダンスに比べて、コンデンサC1及びC2が有するインピーダンスの割合が大きくなる場合ある。このとき、Cole−Coleプロットの形状は、図6に示すように、低周波側にある周波数領域IIにおいて円弧から大きく外れる場合がある。この場合、Cole−Coleプロットが円弧を描く、高周波側の周波数範囲Iにおいて、図4の等価回路でフィッティングを行い、αの値を求める。
【0173】
(電界下におけるα)
103V/cmの電界下におけるキャリアのα、および102V/cmの電界下におけるコア粒子のαの値は以下のように求めた。
【0174】
インピーダンスを測定する際に、サンプルに印加される平均の電界強度Esampleは、インピーダンス測定時に電極間のサンプルが分担する電圧の直流成分Vsampleと電極間距離Lを用いて、Vsample/Lで表される。Vsampleの値は、図3の回路図におけるa点(R1とC1との間の点)における電位とb点(サンプル下のR2とC2とに分岐する点))における電位の差分により測定することができる。本測定では、Tktronix社製のP6015A型高電圧プローブを用いて、a点及びb点における電位を測定し、それらの電位の差分によりサンプルホルダの電極間の分担電圧Vsampleを測定した。又、Vsampleの値は、高電圧電源から出力される直流電圧Voの電圧を変化させることで調整した。
【0175】
このようにして、複数の電界強度Eにおいてインピーダンス測定を行い、各電界強度下におけるαを求め、グラフにプロットすることで、103V/cmの電界下におけるキャリアα、及び102V/cmの電界下におけるコア粒子αの値を見積もった。
【0176】
<動的抵抗率ρの測定>
104V/cmの電界下における、磁気穂状態のキャリアの動的電気抵抗率ρは、図7に示すような構成で測定することができる。尚、下記の要領で測定する電気抵抗測定法を、以下では「動的抵抗測定法」と呼ぶ。先ず、300mm/secの周速で回転するアルミ円筒体(以下アルミドラム)に対して、キャリアのみを内包した現像器の現像スリーブを所定の間隔D(=270μm)をあけて対向させ、更に現像スリーブは540mm/secでアルミドラムと同一方向に回転させる。この状態で、現像スリーブ−アルミドラム間に形成される磁気穂状態の直流電流計測を行った。尚、現像スリーブ上のキャリア搬送量は、30mg/cm2になるように、現像器の規制部材を調整した。
【0177】
現像スリーブ−アルミドラム間(以下SD間)には、直流電圧Voを印加し、SD間に流れる直流電流を測定することで、キャリアの動的電気抵抗を測定した。直流電圧源としては、Trek社製高電圧電源PZD2000を用いた。また、SD間に流れる電流は、コンデンサと抵抗器を用いて作製したローパスフィルタを介して高周波ノイズを低減した後、Keithley社製6517A型エレクトロメータを用いて直流電流量I(A)を測定した。
【0178】
具体的な操作は、次のとおりである。まず、印加電圧Voを変化させたときに、SD間の分担電圧Vsd及び、SD間を流れる電流量Iを測定し、電界強度Esdの平方根Esd1/2に対する電流密度Jの対数log〔J/(A/cm2)〕をプロットしてグラフを作成した。ここで、電界強度Esdは、図7のe点、f点における電位を、Tktronix社製の高電圧プローブP6015Aを用いて測定し、それらの電位の差分により求まるSD間の分担電圧VsdとSD間距離Dを用いてVsd/Dにより求めた。また、電流密度Jは、測定した電流値Iと現像スリーブ上に搬送されたキャリアの磁気穂がアルミドラムに接触している面積S(12.8cm2)を用いて、I/Sにより求めた。
【0179】
ここで、Esd1/2に対するlog〔J/(A/cm2)〕をプロットした理由は、電子写真現像用キャリアにおいて一般的に印加電界Eと電流密度Jの間には、高電界下においては下記(5)式で与えられる関係が成り立つ場合が多いためである。
【0180】
【数6】
【0181】
詳細は、Yasushi Hoshinoによって執筆された“Conductivity Mechanism in Magnetic Brush Developer”(Jpn. J. Appl. Phys. 19(1980) pp. 2413−2416)に記載されている。
【0182】
上記のように作成したグラフを用い、グラフにプロットしたデータ点の最大の電界強度EsdがEsd=104V/cm以上となる場合には、内掃により、Esd=104V/cmにおけるJの値を見積もり、下記(6)式に従いρを求めた。
【0183】
【数7】
【0184】
又、グラフにプロットしたデータ点の最大の電界強度EsdがEsd=104V/cm以下となる場合には、Esd=104V/cmまで直線的に外掃して、Esd=104V/cmにおけるα、及びJの値を見積もり、(6)式に従いρを求めた。
【0185】
<磁性キャリア粒子及び多孔質磁性コア粒子の体積分布基準50%粒径(D50)、仮焼フェライト微粉砕品の体積分布基準50%粒径(D50)、体積分布基準90%粒径(D90)の測定方法>
粒度分布測定は、レーザー回折・散乱方式の粒度分布測定装置「マイクロトラックMT3300EX」(日機装社製)にて測定を行った。
【0186】
仮焼フェライト微粉砕品の体積分布基準の50%粒径(D50)、体積分布基準の90%粒径(D90)の測定では、湿式用の試料循環器「Sample Delivery Control(SDC)」(日機装社製)を装着して行った。仮焼フェライト(フェライトスラリー)を測定濃度になるように試料循環器に滴下した。流速70%、超音波出力40W、超音波時間60秒とした。
【0187】
測定条件は下記の通りである。
SetZero時間 :10秒
測定時間 :30秒
測定回数 :10回
溶媒屈性率 :1.33
粒子屈折率 :2.42
粒子形状 :非球形
測定上限 :1408μm
測定下限 :0.243μm
測定環境 :23℃/50%RH
【0188】
磁性キャリア粒子及び多孔質磁性コア粒子の体積分布基準50%粒径(D50)の測定には、乾式測定用の試料供給機「ワンショットドライ型サンプルコンディショナーTurbotrac」(日機装社製)を装着して行った。Turbotracの供給条件として、真空源として集塵機を用い、風量約33リットル/sec、圧力約17kPaとした。制御は、ソフトウェア上で自動的に行う。粒径は体積基準の累積値である50%粒径(D50)、90%粒径(D90)を求める。制御及び解析は付属ソフト(バージョン10.3.3−202D)を用いて行う。
【0189】
測定条件は下記の通りである。
SetZero時間 :10秒
測定時間 :10秒
測定回数 :1回
粒子屈折率 :1.81
粒子形状 :非球形
測定上限 :1408μm
測定下限 :0.243μm
測定環境 :約23℃/50%RH
【0190】
<トナーの重量平均粒径(D4)、4.0μm以下の粒子の個数%>
トナーの重量平均粒径(D4)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行い、算出した。
【0191】
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
【0192】
尚、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行った。
【0193】
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
【0194】
前記専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
【0195】
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、解析ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れ、この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。尚、前記専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
【0196】
トナー中の個数基準の4.0μm以下の粒子の個数%は、前記のMultisizer3の測定を行った後、データを解析することにより算出する。
【0197】
まず、前記専用ソフトでグラフ/個数%に設定して測定結果のチャートを個数%表示とする。そして、「書式/粒径/粒径統計」画面における粒径設定部分の「<」にチェックし、その下の粒径入力部に「4」を入力する。「分析/個数統計値(算術平均)」画面を表示したときの「<4μm」表示部の数値が、トナー中の4.0μm以下の粒子の個数%である。
【0198】
<樹脂又はトナーのピーク分子量(Mp)、数平均分子数(Mn)、重量平均分子数(Mw)の測定方法>
ピーク分子量(Mp)、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。
【0199】
まず、室温で24時間かけて、試料をテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。試料としては、樹脂、または、トナーを用いる。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マエショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。尚、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が約0.8質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置 :HLC8120 GPC(検出器:RI)(東ソー社製)
カラム :Shodex KF−801、802、803、804、805、806、807の7連(昭和電工社製)
溶離液 :テトラヒドロフラン(THF)
流速 :1.0ml/min
オーブン温度 :40.0℃
試料注入量 :0.10ml
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(例えば、商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500」、東ソ−社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
【0200】
<ワックスの最大吸収ピークのピーク温度、結着樹脂又はトナーのガラス転移温度Tg>
ワックスの最大吸熱ピークのピーク温度は、示差走査熱量分析装置「Q1000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。
【0201】
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
【0202】
具体的には、ワックスを約10mg精秤し、これをアルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定温度範囲30℃以上200℃以下の間で、昇温速度10℃/minで測定を行う。尚、測定においては、一度200℃まで昇温させ、続いて30℃まで降温し、その後に再度昇温を行う。この2度目の昇温過程での温度30℃以上200℃以下の範囲におけるDSC曲線の最大の吸熱ピークを、本発明のワックスの最大吸熱ピークとする。
【0203】
また、結着樹脂またはトナーのガラス転移温度(Tg)は、ワックスの最大吸熱ピークのピーク温度測定と同様に、結着樹脂またはトナーを約10mg精秤し測定する。すると、温度40℃以上100℃以下の範囲において比熱変化が得られる。このときの比熱変化前と比熱変化後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点を、結着樹脂またはトナーのガラス転移温度Tgとする。
【実施例】
【0204】
<多孔質フェライトコア粒子1の製造例>
工程1(秤量・混合工程):
Fe2O3 58.6質量%
MnCO3 34.2質量%
Mg(OH)2 5.7質量%
SrCO3 1.5質量%
となるようにフェライト原材料を秤量した。
その後、ジルコニア(直径10mm)のボールを用いた乾式ボールミルで2時間粉砕・混合した。
【0205】
工程2(仮焼成工程):
粉砕・混合した後、バーナー式焼成炉を用い大気中で950℃で2時間焼成し、仮焼フェライトを作製した。
得られたフェライトの組成は、下記の通り。
(MnO)0.39(MgO)0.13(SrO)0.01(Fe2O3)0.47
【0206】
工程3(粉砕工程):
クラッシャーで0.3mm程度に粉砕した後に、ステンレス(直径10mm)のボールを用い、仮焼フェライト100質量部に対し、水を30質量部加え、湿式ボールミルで1時間粉砕した。
そのスラリーを、ジルコニアのビーズ(直径1.0mm)を用いた湿式ビーズミルで1時間粉砕し、フェライトスラリー(仮焼フェライト微粉砕品)1Aを得た。
得られた仮焼フェライト微粉砕品は、体積分布基準の50%粒径(D50)1.7μm、体積分布基準の90%粒径(D90)6.7μm、D90/D50=3.9であった。
【0207】
工程4(秤量・混合工程):
Fe2O3 80.8質量%
MnCO3 25.8質量%
Mg(OH)2 2.5質量%
となるようにフェライト原材料を秤量した。
その後、ジルコニア(直径10mm)のボールを用いた乾式ボールミルで2時間粉砕・混合した。
【0208】
工程5(仮焼成工程):
粉砕・混合した後、バーナー式焼成炉を用い大気中で950℃で2時間焼成し、仮焼フェライトを作製した。
フェライトの組成は、下記の通り。
(MnO)0.29(MgO)0.06(Fe2O3)0.65
【0209】
工程6(粉砕工程):
クラッシャーで0.3mm程度に粉砕した後に、ジルコニア(直径10mm)のボールを用い、仮焼フェライト100質量部に対し、水を30質量部加え、湿式ボールミルで3時間粉砕した。
そのスラリーを、さらにアルミナビーズ(直径1.0mm)を用いた湿式ビーズミルで2時間粉砕し、フェライトスラリー(仮焼フェライト微粉砕品)1Bを得た。
得られた仮焼フェライト微粉砕品は、体積分布基準の50%粒径(D50)1.3μm、体積分布基準の90%粒径(D90)2.1μm、D90/D50=1.6であった。
【0210】
工程7(造粒工程):
フェライトスラリー1Aと1Bとを1:1で混合し、バインダーとして仮焼フェライト混合物100質量部に対してポリビニルアルコール2.0質量部を添加し、スプレードライヤー(製造元:大川原化工機)で、球状粒子に造粒した。なお、混合したフェライトスラリーから得た仮焼フェライト微粉砕品はD90/D50=4.2であった。
【0211】
工程8(焼成工程):
焼成雰囲気をコントロールするために、電気炉にて窒素雰囲気下(酸素濃度0.3体積%)で、4時間かけて1150℃まで昇温し、4時間そのまま1150℃を保持し焼成した。さらに、3時間かけて室温まで降温して多孔質フェライトコアを取り出した。
【0212】
工程9(選別工程):
凝集した粒子を解砕した後に、目開き250μmの篩で篩分して粗大粒子を除去し、体積分布基準の50%粒径(D50)34.5μmの多孔質フェライトコア粒子1を得た。
【0213】
<多孔質フェライトコア粒子2の製造例>
工程8(焼成工程)において、焼成雰囲気を酸素濃度0.01体積%未満に制御した以外は、多孔質フェライトコア粒子1の製造例と同様にして多孔質フェライトコア粒子2を得た。多孔質フェライトコア粒子2の体積分布基準の50%粒径(D50)は、33.5μmであった。
【0214】
<多孔質フェライトコア粒子3の製造例>
工程8(焼成工程)において、焼成雰囲気を酸素濃度1.0体積%に制御した以外は、多孔質フェライトコア粒子1の製造例と同様にして多孔質フェライトコア粒子3を得た。多孔質フェライトコア粒子3の体積分布基準の50%粒径(D50)は、35.7μmであった。
【0215】
<多孔質フェライトコア粒子4の製造例>
工程1(秤量・混合工程):
Fe2O3 67.0質量%
MnCO3 26.3質量%
Mg(OH)2 6.7質量%
となるようにフェライト原材料を秤量した。
その後、ジルコニア(直径10mm)のボールを用いた乾式ボールミルで2時間粉砕・混合した。
【0216】
工程2(仮焼成工程):
粉砕・混合した後、バーナー式焼成炉を用い大気中で950℃で2時間焼成し、仮焼フェライトを作製した。
フェライトの組成は、下記の通り。
(MnO)0.30(MgO)0.15(Fe2O3)0.55
【0217】
工程3(粉砕工程):
クラッシャーで0.3mm程度に粉砕した後に、ジルコニア(直径10mm)のボールを用い、仮焼フェライト100質量部に対し、水を30質量部加え、湿式ボールミルで2時間粉砕した。
そのスラリーを、ジルコニアのビーズ(直径1.0mm)を用いた湿式ビーズミルで2時間粉砕し、フェライトスラリー(仮焼フェライト微粉砕品)を得た。
得られた仮焼フェライト微粉砕品は、体積分布基準の50%粒径(D50)1.8μm、体積分布基準の90%粒径(D90)7.0μm、D90/D50=3.9であった。
【0218】
工程4(造粒工程):
フェライトスラリーに、バインダーとして、仮焼フェライト混合物100質量部に対してポリビニルアルコール(重量平均分子量5000)2.0質量部、重量平均粒径4μmで球形のSiO2を10質量部、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウムを1.5質量部、湿潤剤として非イオン系活性剤を0.05質量部を添加し、スプレードライヤー(製造元:大川原化工機)で、球状粒子に造粒した。
【0219】
工程5(焼成工程):
焼成雰囲気をコントロールするために、電気炉にて窒素雰囲気下(酸素濃度0.1体積%)で、4.5時間かけて1200℃まで昇温し、4時間そのまま1200℃を維持し焼成を行った。さらに、3時間かけて室温まで降温して多孔質フェライトコアを取り出した。
【0220】
工程6(選別工程):
凝集した粒子を解砕した後に、目開き250μmの篩で篩分して粗大粒子を除去し、体積分布基準の50%粒径(D50)37.5μmの多孔質フェライトコア粒子4を得た。
【0221】
<フェライトコア粒子5の製造例>
工程1:
Fe2O3 74.8質量%
CuO 11.2質量%
ZuO 14.0質量%
となるようにフェライト原材料を秤量した。その後、ジルコニア(直径10mm)のボールを用いた乾式ボールミルで2時間粉砕・混合した。
【0222】
工程2:
粉砕・混合した後、大気中で950℃で2時間焼成し、仮焼フェライトを作製した。得られたフェライトの組成は、下記の通り。
(CuO)0.18(ZnO)0.22(Fe2O3)0.60
なお、上記フェライトは主元素を示し、それ以外の微量金属を含有するものも含んでいる。
【0223】
工程3:
クラッシャーで0.5mm程度に粉砕した後に、ステンレスのボール(直径10mm)を用い、仮焼フェライト100質量部に対し水を30質量部加え、湿式ボールミルで7時間粉砕した。
得られた仮焼フェライト微粉砕品は、体積分布基準の50%粒径(D50)0.8μm、体積分布基準の90%粒径(D90)2.9μm、D90/D50=3.6であった。
【0224】
工程4:
フェライトスラリーに、バインダーとして仮焼フェライト100質量部に対しポリビニルアルコール0.5質量部を添加し、スプレードライヤー(製造元:大川原化工機)で球状粒子に造粒した。
【0225】
工程5(焼成工程):
焼成雰囲気をコントロールするために、電気炉にて窒素雰囲気下(酸素濃度0.1体積%)で、5.0時間かけて1300℃まで昇温し、4時間そのまま1300℃を維持し焼成を行った。さらに、4.0時間かけて室温まで降温してフェライトコアを取り出した。
【0226】
工程6:
凝集した粒子を解砕した後に、目開き250μmの篩で篩分して粗大粒子を除去し、体積分布基準の50%粒径(D50)48.5μmのフェライトコア粒子5を得た。
【0227】
(樹脂溶液Aの調製)
シリコーンワニス
(SR2410 東レ・ダウコーニング社製 固形分濃度20質量%) 83.3質量部
トルエン 16.7質量部
γ−アミノプロピルトリエトキシシラン 1.5質量部
以上を混合し、ボールミル(ソーダガラスボール 直径10mm)を用いて1時間混合し、樹脂溶液Aを得た。
【0228】
<多孔質フェライトコア粒子6の製造例>
工程1(秤量・混合工程):
Fe2O3 80.8質量%
MnCO3 25.8質量%
Mg(OH)2 2.5質量%
となるようにフェライト原材料を秤量した。
その後、ジルコニア(直径10mm)のボールを用いた乾式ボールミルで2時間粉砕・混合した。
【0229】
工程2(仮焼成工程):
粉砕・混合した後、バーナー式焼成炉を用い大気中で950℃で2時間焼成し、仮焼フェライトを作製した。
フェライトの組成は、下記の通り。
(MnO)0.29(MgO)0.06(Fe2O3)0.65
【0230】
工程3(粉砕工程):
クラッシャーで0.3mm程度に粉砕した後に、ジルコニア(直径10mm)のボールを用い、仮焼フェライト100質量部に対し、水を30質量部加え、湿式ボールミルで5時間粉砕した。
そのスラリーを、さらにアルミナビーズ(直径1.0mm)を用いた湿式ビーズミルで3時間粉砕し、フェライトスラリー(仮焼フェライト微粉砕品)を得た。
得られた仮焼フェライト微粉砕品は、体積分布基準の50%粒径(D50)0.9μm、体積分布基準の90%粒径(D90)1.2μm、D90/D50=1.3であった。
【0231】
工程4(造粒工程):
バインダーとして、仮焼フェライト混合物100質量部に対してポリビニルアルコール2.0質量部を添加し、スプレードライヤー(製造元:大川原化工機)で、球状粒子に造粒した。
【0232】
工程5(焼成工程):
焼成雰囲気をコントロールするために、電気炉にて窒素雰囲気下(酸素濃度0.3体積%)で、4時間かけて1150℃まで昇温し、4時間そのまま1150℃を保持し焼成した。さらに、3時間かけて室温まで降温して多孔質フェライトコアを取り出した。
【0233】
工程6(選別工程):
凝集した粒子を解砕した後に、目開き250μmの篩で篩分して粗大粒子を除去し、体積分布基準の50%粒径(D50)33.6μmの多孔質フェライトコア粒子6を得た。
【0234】
<多孔質フェライトコア粒子7の製造例>
多孔質フェライトコア粒子1の製造例において、フェライトスラリー1Aを用いずに、フェライトスラリー1Bのみを用いるようにした以外は、多孔質フェライトコア粒子1の製造例と同様にして、多孔質フェライトコア粒子7を得た。多孔質フェライトコア粒子7の体積分布基準の50%粒径(D50)は、34.7μmであった。
【0235】
<多孔質フェライトコア粒子8の製造例>
工程1(秤量・混合工程):
Fe2O3 58.6質量%
MnCO3 34.2質量%
Mg(OH)2 5.7質量%
SrCO3 1.5質量%
となるようにフェライト原材料を秤量した。
その後、ジルコニア(直径10mm)のボールを用いた乾式ボールミルで2時間粉砕・混合した。
【0236】
工程2(仮焼成工程):
粉砕・混合した後、バーナー式焼成炉を用い大気中で950℃で2時間焼成し、仮焼フェライトを作製した。
得られたフェライトの組成は、下記の通り。
(MnO)0.39(MgO)0.13(SrO)0.01(Fe2O3)0.47
【0237】
工程3(粉砕工程):
クラッシャーで0.3mm程度に粉砕した後に、ステンレス(直径10mm)のボールを用い、仮焼フェライト100質量部に対し、水を30質量部加え、湿式ボールミルで1時間粉砕した。
そのスラリーを、ジルコニアのビーズ(直径1.0mm)を用いた湿式ビーズミルで0.5時間粉砕し、フェライトスラリー(仮焼フェライト微粉砕品)2Aを得た。
得られた仮焼フェライト微粉砕品は、体積分布基準の50%粒径(D50)2.3μm、体積分布基準の90%粒径(D90)13.1μm、D90/D50=5.7であった。
【0238】
工程4(秤量・混合工程):
Fe2O3 80.8質量%
MnCO3 25.8質量%
Mg(OH)2 2.5質量%
となるようにフェライト原材料を秤量した。
その後、ジルコニア(直径10mm)のボールを用いた乾式ボールミルで2時間粉砕・混合した。
【0239】
工程5(仮焼成工程):
粉砕・混合した後、バーナー式焼成炉を用い大気中で950℃で2時間焼成し、仮焼フェライトを作製した。
フェライトの組成は、下記の通り。
(MnO)0.29(MgO)0.06(Fe2O3)0.65
【0240】
工程6(粉砕工程):
クラッシャーで0.3mm程度に粉砕した後に、ジルコニア(直径10mm)のボールを用い、仮焼フェライト100質量部に対し、水を30質量部加え、湿式ボールミルで5時間粉砕した。
そのスラリーを、さらにアルミナビーズ(直径1.0mm)を用いた湿式ビーズミルで5時間粉砕し、フェライトスラリー(仮焼フェライト微粉砕品)2Bを得た。
得られた仮焼フェライト微粉砕品は、体積分布基準の50%粒径(D50)0.6μm、体積分布基準の90%粒径(D90)0.9μm、D90/D50=1.5であった。
【0241】
工程7(造粒工程):
フェライトスラリー2Aと2Bとを2:1で混合し、バインダーとして仮焼フェライト混合物100質量部に対してポリビニルアルコール2.0質量部を添加し、スプレードライヤー(製造元:大川原化工機)で、球状粒子に造粒した。なお、混合したフェライトスラリーから得た仮焼フェライト微粉砕品はD90/D50=8.1であった。
【0242】
工程8(焼成工程):
焼成雰囲気をコントロールするために、電気炉にて窒素雰囲気下(酸素濃度0.3体積%)で、4時間かけて1150℃まで昇温し、4時間そのまま1150℃を保持し焼成した。さらに、3時間かけて室温まで降温して多孔質フェライトコアを取り出した。
【0243】
工程9(選別工程):
凝集した粒子を解砕した後に、目開き250μmの篩で篩分して粗大粒子を除去し、体積分布基準の50%粒径(D50)48.5μmの多孔質フェライトコア粒子8を得た。
【0244】
<多孔質フェライトキャリア1の製造例>
多孔質フェライトコア1 100質量部を万能撹拌混合機(ダルトン社製)に入れ、減圧下、50℃に加熱した。多孔質フェライトコア1 100質量部に対して充填樹脂成分として8.0質量部に相当する樹脂溶液Aを2時間かけて滴下し、さらに50℃で1時間撹拌を行った。その後、1時間かけて80℃まで昇温して溶剤を除去した。得られた試料をジュリアミキサー(徳寿工作所)に移し、窒素雰囲気下に180℃で2時間熱処理して、開口70μmのメッシュで分級して磁性コア1を得た(樹脂充填量8.0質量部)。
【0245】
磁性コア1の100質量部をナウタミキサ(ホソカワミクロン社製)に投入し、スクリューの回転速度100min−1、自転速度が3.5min−1の条件で撹拌しながら減圧下で80℃に調整した。樹脂溶液Aを固形分濃度が10質量%になるようにトルエンで希釈し、磁性コア1 100質量部に対して被覆樹脂成分として0.5質量部になるように樹脂溶液Aを投入した。2時間かけて溶媒除去及び塗布操作を行った。その後、180℃まで昇温し、2時間撹拌を続けた後、70℃まで降温した。得られた試料は、ジュリアミキサー(徳寿工作所社製)に移し、窒素雰囲気下、温度180℃で4時間熱処理した後、開口70μmの篩で粗大粒子を分級除去して、体積分布基準の50%粒径(D50)が35.2μmの多孔質フェライトキャリア1を得た。
【0246】
<多孔質フェライトキャリア2の製造例>
多孔質フェライトキャリア1の製造例の磁性コア1の100質量部に対して被覆樹脂成分として1.0質量部となるように樹脂溶液Aを投入して、溶媒除去及び塗布操作を行った以外は、多孔質フェライトキャリア1の製造例と同様に多孔質フェライトキャリア2を得た。多孔質フェライトキャリア2の体積分布基準の50%粒径(D50)は、35.5μmであった。
【0247】
<多孔質フェライトキャリア3の製造例>
多孔質フェライトキャリア1の製造例の磁性コア1の100質量部に対して被覆樹脂成分として2.0質量部となるように樹脂溶液Aを投入して、溶媒除去及び塗布操作を行った以外は、多孔質フェライトキャリア1の製造例と同様に多孔質フェライトキャリア3を得た。多孔質フェライトキャリア3の体積分布基準の50%粒径(D50)は、35.9μmであった。
【0248】
<多孔質フェライトキャリア4の製造例>
多孔質フェライトキャリア1の製造例において、多孔質フェライトコアとして、多孔質フェライトコア2を用いた以外は、多孔質フェライトキャリア1の製造例と同様にして多孔質フェライトキャリア4を得た。多孔質フェライトキャリア4の体積分布基準の50%粒径(D50)は、34.5μmであった。
【0249】
<多孔質フェライトキャリア5の製造例>
多孔質フェライトキャリア1の製造例において、多孔質フェライトコアとして、多孔質フェライトコア3を用いた以外は、多孔質フェライトキャリア1の製造例と同様にして多孔質フェライトキャリア5を得た。多孔質フェライトキャリア5の体積分布基準の50%粒径(D50)は、36.8μmであった。
【0250】
<多孔質フェライトキャリア6の製造例>
多孔質フェライトコア4の100質量部をナウタミキサ(ホソカワミクロン社製)に投入し、スクリューの回転速度120min−1、自転速度が3.5min−1の条件で撹拌しながら減圧下で80℃に調整した。樹脂溶液Aを固形分濃度が10質量%になるようにトルエンで希釈し、多孔質フェライトコア4の100質量部に対して被覆樹脂成分として0.5質量部になるように樹脂溶液Aを投入した。4時間かけて溶媒除去及び塗布操作を行った。続けて、多孔質フェライトコア4 100質量部に対して被覆樹脂成分として0.5質量部になるように樹脂溶液Aを投入、さらに4時間かけて溶媒除去及び塗布操作を行った。その後、180℃まで昇温し、2時間撹拌を続けた後、70℃まで降温した。得られた試料は、ジュリアミキサー(徳寿工作所社製)に移し、窒素雰囲気下、温度180℃で4時間熱処理した後、開口70μmの篩で粗大粒子を分級除去して、体積分布基準の50%粒径(D50)が38.3μmの多孔質フェライトキャリア6を得た。
【0251】
<多孔質フェライトキャリア7の製造例>
多孔質フェライトキャリア1の製造例の磁性コア1 100質量部に対して被覆樹脂成分として3.0質量部となるように樹脂溶液Aを投入し、溶媒除去及び塗布操作を行った以外は、多孔質フェライトキャリア1の製造例と同様に多孔質フェライトキャリア7を得た。多孔質フェライトキャリア7の体積分布基準の50%粒径(D50)は、37.5μmであった。
【0252】
<多孔質フェライトキャリア8の製造例>
磁性コア1 100質量部に対して、被覆樹脂成分が1.0質量%となるように、樹脂溶液Aを用いて、80℃に加熱した流動床で塗布操作及び溶媒除去を行った。塗布溶媒除去を行った後、200℃まで昇温して2時間の熱処理を行った。開口70μmの篩で分級して多孔質フェライトキャリア8を得た。多孔質フェライトキャリア8の体積分布基準の50%粒径(D50)は35.4μmであった。
【0253】
<フェライトキャリア9の製造例>
フェライトコア5 100質量部に対して、被覆樹脂成分が0.4質量%となるように、樹脂溶液Aを用いて、80℃に加熱した流動床で塗布操作及び溶媒除去を行った。塗布溶媒除去を行った後、200℃まで昇温して2時間の熱処理を行った。開口70μmの篩で分級してフェライトキャリア9を得た。フェライトキャリア9の体積分布基準の50%粒径(D50)は49.7μmであった。
【0254】
<多孔質フェライトキャリア10の製造例>
多孔質フェライトキャリア1の製造例において、多孔質フェライトコアとして、多孔質フェライトコア6を用いた以外は、多孔質フェライトキャリア1の製造例と同様にして多孔質フェライトキャリア10を得た。多孔質フェライトキャリア10の体積分布基準の50%粒径(D50)は、33.9μmであった。
【0255】
<多孔質フェライトキャリア11の製造例>
多孔質フェライトキャリア1の製造例において、多孔質フェライトコアとして、多孔質フェライトコア7を用いた以外は、多孔質フェライトキャリア1の製造例と同様にして多孔質フェライトキャリア11を得た。多孔質フェライトキャリア11の体積分布基準の50%粒径(D50)は、34.9μmであった。
【0256】
<多孔質フェライトキャリア12の製造例>
多孔質フェライトキャリア1の製造例において、多孔質フェライトコアとして、多孔質フェライトコア8を用いた以外は、多孔質フェライトキャリア1の製造例と同様にして多孔質フェライトキャリア12得た。多孔質フェライトキャリア12の体積分布基準の50%粒径(D50)は、48.9μmであった。
【0257】
<樹脂Aの製造例>
スチレン1.9mol、2−エチルヘキシルアクリレート0.21mol、フマル酸0.15mol、α−メチルスチレンの2量体0.03mol、ジクミルパーオキサイド0.05molを滴下ロートに入れた。また、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン7.0mol、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン3.0mol、テレフタル酸3.0mol、無水トリメリット酸2.0mol、フマル酸5.0mol及び酸化ジブチル錫0.2gをガラス製4リットルの4つ口フラスコに入れ、温度計、撹拌棒、コンデンサ及び窒素導入管を取りつけマントルヒーター内においた。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、140℃の温度で撹拌しつつ、先の滴下ロートよりビニル系樹脂のモノマー、架橋剤及び重合開始剤を6時間かけて滴下した。次いで200℃まで昇温し、200℃で4.0時間反応させて樹脂Aを得た。
【0258】
この樹脂AのGPCによる分子量は、重量平均分子量(Mw)64000,数平均分子量(Mn)4500、ピーク分子量(Mp)7000、ガラス転移点(Tg)59℃であった。
【0259】
<シアンマスターバッチの製造>
・樹脂A(マスターバッチ用) 60質量部
・C.I.ピグメントブルー15:3 40質量部
上記の材料をニーダーミキサーにより溶融混練し、シアンマスターバッチを作製した。
【0260】
<トナーの製造例>
・樹脂A 88.0質量部
・精製パラフィンワックス(最大吸熱ピーク:70℃) 5.0質量部
・上記シアンマスターバッチ(着色剤分40質量%) 20.0質量部
・ジ−ターシャリーブチルサリチル酸のアルミニウム化合物(負荷電制御剤) 0.3質量部
上記処方をヘンシェルミキサー(FM−75型、三井三池化工機(株)製)で混合した後、温度120℃に設定した二軸混練機(PCM−30型、池貝鉄工(株)製)にて混練した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、粗砕物を得た。得られた粗砕物を、機械式粉砕機(T−250、ターボ工業(株)製)にて微粉砕した。ホソカワミクロン社製の粒子設計装置(製品名:ファカルティ)を用いて、分級を行った。シアントナー粒子100質量部に、ヘキサメチルジシラザン20質量%で表面処理した一次平均粒子径16nmの疎水性シリカ微粒子1.0質量部を添加し、ヘンシェルミキサー(FM−75型、三井三池化工機(株)製)で混合して、トナーAを得た。このトナーAの重量平均粒径(D4)は6.1μm、4.0μm以下である粒子が個数基準で25.3%であった。
【0261】
〔実施例1〕
多孔質フェライトキャリア1の90質量部に対し、トナーAを10質量部加え、V型混合機により10分間振とうさせて、二成分系現像剤を調製した。この二成分系現像剤を用いて評価を行った。
【0262】
(画像特性の評価)
以下では作製したキャリアの画像特性の評価方法について説明する。
【0263】
本発明のキャリアは、十分な画像濃度を確保しながら、現像注入に伴う画像弊害を防止し、高品位の出力画像を提供できることが、従来のキャリアに比べて優れている。このことを確認するために、十分な画像濃度を確保することを確認するために、(1)現像性、(2)低濃度部におけるガサツキ、及び(3)低濃度部における階調性、に関して評価を行った。ここで、画像性の評価項目として低濃度部におけるガサツキと低濃度部における階調性を評価項目に選んだ理由は、現像注入によって最も静電潜像が乱されるのは、潜像ポテンシャルの浅い低濃度部であり、出力画像としてはガサツキと階調性の跳びが最も目立ちやすくなるためである。
【0264】
尚、画像形成装置として、キヤノン製imagePRESS C1改造機を用い、ブラック位置の現像器に上記現像剤を入れ、常温常湿(23℃、50%RH)環境下で画像形成を行った。又、転写材としては、OKトップコート+128(128g/cm2)を用いて形成した画像を出力した。
【0265】
(1)現像性
現像性は次のようにして評価した。感光ドラムの帯電量および、露光量を調整して、高濃度画像部電位VL(本実施例では−150V)と非画像部電位VD(本実施例では−400V)の電位差が450Vになるように帯電、露光条件を設定した。感光ドラム上の表面電位は、現像スリーブと感光ドラムの対向する現像領域の直下に配置した表面電位計(トレック社製のMODEL347)を用いて測定した。更に、現像バイアス電圧の積分平均値Vdcを、現像コントラストVcon(=|Vdc−VL|)を250V、バックコントラストVback(=|VD−Vdc|)を150Vとなるように設定した。次に、感光ドラム上に帯電および露光により、ベタ黒画像の静電潜像を形成し、作製したキャリアとトナーとからなる二成分系現像材を用いてトナーの現像を行った。その後、感光ドラム上に形成されたトナー層が中間転写体に転写される前に感光ドラムの回転を止め、感光ドラム上の単位面積あたりに現像されたトナーの電荷量Q/Sを測定して、この値を持って現像性を評価した。
【0266】
尚、Q/Sの値は、感光ドラムに現像されたトナーの平均摩擦帯電量Q/Mの値と、単位面積あたりに現像されたトナー量(トナー載り量)M/Sの値を乗じて求めることができる。
【0267】
感光体ドラム上に現像されたトナーの平均帯電量Q/Mおよびトナー載り量M/Sは以下のようにして測定した。図8に示すような、軸径の異なる金属筒を同軸になるように配置した内外2重筒と、内筒内に更にトナーを取り入れるためのフィルターを備えたファラデーケージを用いて、感光ドラム上のトナーをエア吸引する。ファラデーケージは内筒と外筒が絶縁されており、フィルター内にトナーが取り込まれるとトナーの電荷量Qによる静電誘導が生じる。この誘起された電荷量QをKEITHLEY社製のエレクトロメータ6517Aにより測定した。
【0268】
さらに、トナー吸引前後のファラデーケージの質量差から吸引したトナー質量Mを、感光ドラム上のトナーの吸引面積Sを測定することで、平均トナー帯電量Q/M、トナー載り量M/Sを求めた。
【0269】
現像性の評価基準としては、下記の評価基準を用いた。
A:Q/Sが、16.0nC/cm2以上(非常に良好)
B:Q/Sが、15.00nC/cm2以上、16.00nC/cm2未満(良好)
C:Q/Sが、14.00nC/cm2以上、15.00nC/cm2未満(並)
D:Q/Sが、14.00nC/cm2未満(劣る)
【0270】
(2)低濃度部のガサツキ
低濃度画像部におけるガサツキの評価は次に示す方法で行った。
【0271】
まず、感光ドラムの帯電電位VDおよび、現像バイアス電圧の積分平均値Vdcを調整し、バックコントラストVback(=|VD−Vdc|)が150Vの状態で、ベタ画像におけるトナー載り量M/Sが0.3mg/cm2となるように現像コントラストVconを設定した。次に、感光ドラム上に16階調のデジタル潜像を形成し、これに対して現像を行い、転写、定着を経て、16階調画像の出力画像を得た。この出力画像の粒状性GSの値を以下に説明する手法で算出し、出力画像の明度L*が75であるときの粒状性GSの値をもって、低濃度部におけるガサツキを評価した。
【0272】
(粒状性GSの算出法)
銀塩写真の粒状度測定には、一般に濃度分布Diの標準偏差であるRMS粒状度σDが用いられている。その測定条件は、ANSI PJ−2.40−1985「root mean square(rms) granularity if film」に規定されている。
【0273】
【数8】
【0274】
又、濃度変動のパワースペクトルであるウィナースペクトルを用いた粒状度の測定も提案されている。画像のウィナースペクトルと視覚の空間周波数特性(Visual Transfer Function : VTF)とカスケードした後、積分した値を粒状性(GS)とする。GSは値が大きいほど、粒状性が悪いことを示すものである。
【0275】
【数9】
【0276】
【数10】
【0277】
〔参考文献3〕R.P.Dooley,R.Shaw:“Noise Perception in Electrophotography”J.Appl.Photogr.Eng.5(4)
ガサツキの評価基準としては、下記の評価基準を用いた。
A:粒状性GSが、0.170未満(非常に良好)
B:粒状性GSが、0.170以上、0.180未満(良好)
C:粒状性GSが、0.180以上、0.190未満(並)
D:粒状性GSが、0.190以上(劣る)
【0278】
(3)低濃度画像部の階調性
低濃度画像部における階調性は、以下に示す方法で求めた有効階調で評価した。
【0279】
まず、上記の16階調の出力画像の各透過濃度Dtを測定し、図9に示すような、所謂γ曲線を作製した。図9において、Dmaxは最高濃度画像部における透過濃度の測定値であり、Dminは非画像部における透過濃度の測定値である。このγ曲線の線形性が高いほど、階調性が良好であるといえる。
【0280】
本発明者らの検討によれば、低濃度画像部の潜像ポテンシャルは、高濃度画像部の潜像ポテンシャルに比べ浅いため、現像注入によって電荷が潜像ポテンシャルに注入された場合、低濃度画像部にトナーが現像されず、図9に示すように低濃度部で濃度低下が発生するため、階調性が得られなくなる(高γ化する)。本発明者らは、γ曲線の変極点xを用いて、下記(9)式により有効階調を定義した。
【0281】
【数11】
【0282】
即ち、(9)式にて求めた有効階調の値が、1に近いほどγ曲線の立ち上がりが緩やかであり、階調性が良好であるといえる。
【0283】
尚、本試験例では、透過濃度Dtの値は、Macbeth社の透過濃度計TD904の赤フィルターモードで測定した。
【0284】
階調性の評価基準としては、下記の評価基準を用いた。
A:有効階調が0.93以上(非常に良好)
B:有効階調が0.90以上、0.93未満(良好)
C:有効階調が0.87以上、0.90未満(並)
D:有効階調が0.87未満(劣る)
【0285】
〔実施例2乃至8、比較例1乃至4〕
表1に示すフェライトキャリアとトナーAとを組み合わせて、実施例1と同様にして、それぞれ二成分系現像剤を作製した。フェライトキャリア1の90質量部に対し、トナーAを10質量部をV型混合機で10分間混合して現像剤を調製し、評価に供した。
【0286】
<評価結果>
キャリア1乃至12のα、コア粒子のα、抵抗率ρ、並びに上記画像特性評価の結果を表1に示した。
【0287】
キャリア2及びキャリア9の、インピーダンス測定で得られたCole−Coleプロット及び等価回路によるフィッティング曲線を表すグラフを図10に示した。グラフにおけるデータ点はインピーダンス測定により得られたインピーダンスデータ。実線はフィッティングの結果を表す。
【0288】
キャリア2及びキャリア9の、αの印加電界Esampleに対する依存性を表すグラフを図11に示した。
【0289】
磁性コア1及び磁性コア5の、αの印加電界Esampleに対する依存性を表すグラフを図12に示した。
【0290】
キャリア2及びキャリア9の、電流密度Jの印加電界Esdに対する依存性を表すグラフを図13に示した。
【0291】
【表1】
【0292】
表1に示した結果から明らかなように、キャリア1乃至6、11及び12は、高い現像性を確保しながら、現像注入を防止し、ガサツキ、階調性に優れた画像を得ることができるものである。
【0293】
キャリア7は、キャリア1乃至3と同一の、αの値の小さい磁性コア粒子1を含有しているが、被覆樹脂量が多い。これにより、キャリア1乃至3に比べ抵抗率ρが大きく、又、キャリアとしてのαの値が大きくなっている。
【0294】
又、キャリア8は、キャリア2と同一の磁性コア粒子1を含有し、更にキャリア2と同量の樹脂をコートしているが、コート手法がキャリア2の製造に用いた手法と異なることで、キャリア2に比べ、αの値は大きく、又、抵抗率ρの値も大きくなっている。
【0295】
これらの原因を究明するために、走査型電子顕微鏡により撮影されたキャリア粒子の表面の反射電子像を観察すると、キャリア7及び8はキャリア1乃至3に比べ、キャリア表面に露出しているコア粒子の割合が極端に少ないことがわかった。これにより、キャリア8の製造に用いたコート手法は、キャリア1乃至3の製造に用いたコート手法に比べ、キャリア表面に樹脂が均一にコートされやすい特徴があることがわかった。このことから、キャリア7及び8は電界下におけるキャリア間の電荷の移動が抑止されやすく高抵抗化していると考えられる。又、キャリアの高抵抗化により、キャリア内部に時定数分布の広がりが存在する効果も消失し、キャリアとしてのαも大きい値となっていると考えられる。
【0296】
以上の理由により、キャリア7及びキャリア8は、現像注入による画質の劣化は防止しているが、αの値が大きいために現像性が悪く、十分な画像濃度が得られていない。
【0297】
キャリア9の含有する磁性コア粒子5は、磁性コア粒子1乃至4とは異なり、フェライト内部の空隙容量が極めて少ない。このことにより、コア粒子内部においてフェライト結晶粒子同士の繋がりの「ばらつき」が減少し、コア粒子としてのαの値が大きくなっていると予想される。このため、コートした被覆樹脂量はキャリア1と同程度であるにも関わらず、キャリアとしてのαの値もキャリア1乃至6に比べ、大きい値となっている。又、抵抗率ρが小さい効果により、画像濃度は十分であったが、現像注入が発生し、ガサツキ、階調性が低下している。
【0298】
このことから、本発明においては、一粒子内部のフェライト結晶粒子間の繋がりに「ばらつき」を持たせ、時定数分布の広がりを発生させることが重要であり、キャリアのαの値が0.70以上0.90以下であるキャリアとすることが重要である。このようなキャリアを用いた場合には、十分な画像濃度を確保すると同時に、ガサツキ、階調性に優れた高品位な画像を得ることができる。
【符号の説明】
【0299】
100 画像形成装置
1 感光ドラム
2 帯電器
3 露光器
4 現像器
5 中間転写体
61 一次転写ローラ
62 二次転写ローラ
7 定着機
8 クリーナー
9 前露光器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流インピーダンス測定により得られるインピーダンスZの周波数依存特性を、下記(1)式で表されるフィッティング関数により、フィッティングしたときのパラメータαが、103V/cmの電界下において、0.70以上0.90以下であることを特徴とする電子写真現像用キャリア。
【数1】
(ただし、
iは虚数単位、
ωは交流インピーダンス測定の角周波数、
Rs及びRは抵抗の次元を持つ実数パラメータ、
αは0以上1以下の値をとる無次元の実数パラメータ、
Tは(RT)1/αが時間の次元を持つ実数パラメータ、
である。)
【請求項2】
該電子写真現像用キャリアは、磁気穂状態における動的電気抵抗率ρが、104V/cmの電界下において、1.0×106Ω・cm以上1.0×108Ω・cm以下であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真現像用キャリア。
【請求項3】
該電子写真現像用キャリアは、多孔質フェライトからなるコア粒子と樹脂とを少なくとも含有し、走査型電子顕微鏡により撮影された該電子写真現像用キャリアの断面の反射電子像において、該電子写真現像用キャリアの全断面積に対して、フェライト部の面積比率が、50面積%以上90面積%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子写真現像用キャリア。
【請求項4】
該コア粒子の、交流インピーダンス測定により得られるインピーダンスZの周波数依存特性を、(1)式のフィッティング関数により、フィッティングしたときのパラメータαが、102V/cmの電界下において、0.50以上0.80以下であることを特徴とする請求項3に記載の電子写真現像用キャリア。
【請求項5】
電子写真現像用キャリアとトナーとを少なくとも含有する二成分系現像剤であって、
該電子写真現像用キャリアが、請求項1乃至4のいずれかに記載の電子写真現像用キャリアであることを特徴とする二成分系現像剤。
【請求項6】
静電潜像担持体を帯電手段により帯電する帯電工程、該帯電された静電潜像担持体を露光して静電潜像を形成する露光工程、現像剤担持体上に二成分系現像剤で磁気ブラシを形成し、該静電潜像担持体と該現像剤担持体との間に、磁気ブラシを接触させた状態で現像バイアスを印加して該静電潜像をトナーにより現像する工程を有する画像形成方法であって、
該二成分系現像剤は、請求項5に記載の二成分系現像剤であり、
該現像バイアスは、直流電界に交番電界を重畳してなることを特徴とする画像形成方法。
【請求項7】
該交番電界のピーク間電圧が0.7kV以上1.8kV以下であることを特徴とする請求項6に記載の画像形成方法。
【請求項1】
交流インピーダンス測定により得られるインピーダンスZの周波数依存特性を、下記(1)式で表されるフィッティング関数により、フィッティングしたときのパラメータαが、103V/cmの電界下において、0.70以上0.90以下であることを特徴とする電子写真現像用キャリア。
【数1】
(ただし、
iは虚数単位、
ωは交流インピーダンス測定の角周波数、
Rs及びRは抵抗の次元を持つ実数パラメータ、
αは0以上1以下の値をとる無次元の実数パラメータ、
Tは(RT)1/αが時間の次元を持つ実数パラメータ、
である。)
【請求項2】
該電子写真現像用キャリアは、磁気穂状態における動的電気抵抗率ρが、104V/cmの電界下において、1.0×106Ω・cm以上1.0×108Ω・cm以下であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真現像用キャリア。
【請求項3】
該電子写真現像用キャリアは、多孔質フェライトからなるコア粒子と樹脂とを少なくとも含有し、走査型電子顕微鏡により撮影された該電子写真現像用キャリアの断面の反射電子像において、該電子写真現像用キャリアの全断面積に対して、フェライト部の面積比率が、50面積%以上90面積%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子写真現像用キャリア。
【請求項4】
該コア粒子の、交流インピーダンス測定により得られるインピーダンスZの周波数依存特性を、(1)式のフィッティング関数により、フィッティングしたときのパラメータαが、102V/cmの電界下において、0.50以上0.80以下であることを特徴とする請求項3に記載の電子写真現像用キャリア。
【請求項5】
電子写真現像用キャリアとトナーとを少なくとも含有する二成分系現像剤であって、
該電子写真現像用キャリアが、請求項1乃至4のいずれかに記載の電子写真現像用キャリアであることを特徴とする二成分系現像剤。
【請求項6】
静電潜像担持体を帯電手段により帯電する帯電工程、該帯電された静電潜像担持体を露光して静電潜像を形成する露光工程、現像剤担持体上に二成分系現像剤で磁気ブラシを形成し、該静電潜像担持体と該現像剤担持体との間に、磁気ブラシを接触させた状態で現像バイアスを印加して該静電潜像をトナーにより現像する工程を有する画像形成方法であって、
該二成分系現像剤は、請求項5に記載の二成分系現像剤であり、
該現像バイアスは、直流電界に交番電界を重畳してなることを特徴とする画像形成方法。
【請求項7】
該交番電界のピーク間電圧が0.7kV以上1.8kV以下であることを特徴とする請求項6に記載の画像形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−170106(P2010−170106A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278963(P2009−278963)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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