説明

電子写真用キャリア、電子写真用現像剤、現像剤カートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成装置および電子写真用キャリアの製造方法

【課題】ワックスおよび結晶性樹脂から選択される少なくとも一種を主組成物として含有するドメイン部並びに樹脂を主組成物として含有するマトリックス部を含んで構成されるドメイン−マトリックス構造を有しない場合に比べ、トナーから遊離し移行した外添剤をドメイン部に局所的に偏在させることができる電子写真用キャリアを提供する。
【解決手段】芯材と、該芯材を覆い、ワックスおよび結晶性樹脂から選択される少なくとも一種を主組成物として含有するドメイン部、並びに樹脂を主組成物として含有するマトリックス部を含んで構成されるドメイン−マトリックス構造を有する被覆層と、を備える電子写真用キャリア。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真用キャリア、電子写真用現像剤、現像剤カートリッジ、プロセスカートリッジ画像形成装置および電子写真用キャリアの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成に用いられる、トナーとキャリアとを有する二成分現像剤において、従来から前記トナーに種々の外添剤(例えば、流動性補助剤や添加剤等)を添加した態様が知られている。
例えば、トナーに大粒径の粒子を用いること試されている(例えば、特許文献1乃至3参照)。また、芯材に樹脂層を被覆してなるキャリアにおいて、該キャリアの表面の60%以上が前記樹脂層で被覆され、且つ該樹脂層が少なくともワックスを含有したキャリアが開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−28276号公報
【特許文献2】特開平9−319134号公報
【特許文献3】特開平10−312089号公報
【特許文献4】特開2004−170714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ワックスおよび結晶性樹脂から選択される少なくとも一種を主組成物として含有するドメイン部並びに樹脂を主組成物として含有するマトリックス部を含んで構成されるドメイン−マトリックス構造を有しない場合に比べ、トナーから遊離し移行した外添剤をドメイン部に局所的に偏在させることができる電子写真用キャリアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、以下の本発明によって達成される。
即ち、請求項1に係る発明は、
芯材と、
該芯材を覆い、ワックスおよび結晶性樹脂から選択される少なくとも一種を主組成物として含有するドメイン部、並びに樹脂を主組成物として含有するマトリックス部を含んで構成されるドメイン−マトリックス構造を有する被覆層と、
を備える電子写真用キャリアである。
【0006】
請求項2に係る発明は、
前記ドメイン部に含有される主組成物に対する針入度が1×10−1mm以上30×10−1mm以下である請求項1に記載の電子写真用キャリアである。
【0007】
請求項3に係る発明は、
前記ドメイン部の長軸径が1μm以上10μm以下である請求項1または請求項2に記載の電子写真用キャリアである。
【0008】
請求項4に係る発明は、
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の電子写真用キャリアと、
外添剤が表面に付着したトナーと、
を含む電子写真用現像剤である。
【0009】
請求項5に係る発明は、
請求項4に記載の電子写真用現像剤を収容する現像剤カートリッジである。
【0010】
請求項6に係る発明は、
請求項4に記載の電子写真用現像剤を収容し、且つ前記電子写真用現像剤を保持して搬送する現像剤保持体を備えるプロセスカートリッジである。
【0011】
請求項7に係る発明は、
像保持体と、
前記像保持体表面を帯電する帯電装置と、
帯電された前記像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成装置と、
前記静電潜像を請求項4に記載の電子写真用現像剤におけるトナーによってトナー像として現像する現像装置と、
前記像保持体表面に形成された前記トナー像を被転写体表面に転写する転写装置と、
を有する画像形成装置である。
【0012】
請求項8に係る発明は、
マトリックス部を構成する材料を溶媒に添加して攪拌混合する第1攪拌工程、および、更に重量平均分子量が300以上1000以下である主組成物を含むドメイン部を構成する材料を前記溶媒中に添加し、前記第1攪拌工程に比べ1/2以下の攪拌速度および1/2以下の攪拌時間にて攪拌混合する第2攪拌工程、によって被覆層形成用溶液を調製する被覆層形成用溶液調製工程と、
前記被覆層形成用溶液によって芯材の表面に被覆層を形成する被覆層形成工程と、
を有する電子写真用キャリアの製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、ワックスおよび結晶性樹脂から選択される少なくとも一種を主組成物として含有するドメイン部並びに樹脂を主組成物として含有するマトリックス部を含んで構成されるドメイン−マトリックス構造を有しない場合に比べ、トナーから遊離し移行した外添剤をドメイン部に局所的に偏在させることができる電子写真用キャリアが提供される。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、ドメイン部に含有される主組成物に対する針入度が1×10−1mm未満または30×10−1mmを超える場合に比べ、トナーから遊離し移行した外添剤をドメイン部に局所的に偏在させることができる電子写真用キャリアが提供される。
【0015】
請求項3に係る発明によれば、ドメイン部の長軸径が1μm未満または10μmを超える場合に比べ、トナーから遊離し移行した外添剤をドメイン部に局所的に偏在させることができる電子写真用キャリアが提供される。
【0016】
請求項4に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、トナーから遊離し移行した外添剤をドメイン部に局所的に偏在させることができる電子写真用現像剤が提供される。
【0017】
請求項5に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、形成される画像の濃度の低下を抑制し得る現像剤カートリッジが提供される。
【0018】
請求項6に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、形成される画像の濃度の低下を抑制し得るプロセスカートリッジが提供される。
【0019】
請求項7に係る発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、画像の濃度の低下を抑制し得る画像形成装置が提供される。
【0020】
請求項8に係る発明によれば、ドメイン部の主組成物の重量平均分子量が300未満または1000を超える場合、第2攪拌工程の攪拌速度が第1攪拌工程に比べ1/2を超える場合、並びに第2攪拌工程の攪拌時間が第1攪拌工程に比べ1/2を超える場合に比べ、トナーから遊離し移行した外添剤をドメイン部に局所的に偏在させることができる電子写真用キャリアを容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本実施形態のプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本実施形態に係る電子写真用キャリア(以下単に「キャリア」と称す場合がある)は、芯材と、該芯材を覆い、ワックスおよび結晶性樹脂から選択される少なくとも一種を主組成物として含有するドメイン部、並びに樹脂を主組成物として含有するマトリックス部を含んで構成されるドメイン−マトリックス構造を有する被覆層と、を備えることを特徴とする。
尚、上記「主組成物」とは、80質量%以上を占める物質であることを意味する。
【0023】
(ドメイン部およびマトリックス部の柔らかさ(針入度))
画像形成に用いられるトナーとキャリアとを有する二成分現像剤において、従来から前記トナーに種々の外添剤(例えば、流動性補助剤や転写助剤等の大径粒子)を添加した態様が知られている。トナーに外添される前記外添剤は、キャリアとトナーとを混合して現像剤を調製する際の攪拌によるストレスや、現像器内での混合によるストレスによって、トナーから遊離しやすく、遊離した前記外添剤はその一部がキャリアの表面へ移行することがあった。キャリアの表面へ移行した前記外添剤が、複数のキャリアとキャリアとの接触部に介在した場合、キャリアのマクロな抵抗が上昇し、その結果形成される画像の濃度が低下することがあった。特に球形度の高いキャリアに対しては、その表面に遊離した前記外添剤が万遍なく付着し、マクロな抵抗の上昇が顕著となる。
【0024】
これに対し、本実施形態に係るキャリアは、ワックスおよび結晶性樹脂から選択される少なくとも一種を主組成物として含有するドメイン部と、樹脂を主組成物として含有するマトリックス部とを含んで構成されるドメイン−マトリックス構造(いわゆる海島構造)を有する被覆層を備えている。従って、前記ドメイン部に含有されるワックスまたは結晶性樹脂の主組成物は、前記マトリックス部に含有される樹脂よりも柔らかいため、前記ドメイン部(海島構造における島部分)が前記マトリックス部(海部分)よりも柔らかい構造になるものと推察される。具体的には、前記ドメイン部に含有される主組成物に対する針入度が、前記マトリックス部に含有される主組成物に対する針入度よりも低いことが望ましい。
【0025】
トナーから遊離してキャリアへ移行した前記外添剤は、キャリアに対して攪拌等が施される際に、該キャリアの表面で、より柔らかい部分である前記ドメイン部に捕捉され、そのため遊離した前記外添剤はキャリアの表面において前記ドメイン部に局所的に偏在することとなる。これにより、複数のキャリアとキャリアとの接触部における外添剤の介在が低減され、キャリアのマクロな抵抗の上昇が抑制され、結果として形成される画像の濃度の低下が抑制されるものと推察される。
【0026】
・針入度
尚、前記ドメイン部に含有される主組成物に対する針入度は1×10−1mm以上30×10−1mm以下であることが望ましく、更には5×10−1mm以上30×10−1mm以下であることがより望ましく、5×10−1mm以上25×10−1mm以下であることが特に望ましい。前記ドメイン部に含有される主組成物に対する針入度が30×10−1mm以下であることにより、ドメイン部において効率的に遊離した外添剤が補足されキャリアのマクロな抵抗の上昇が抑制される。
一方、前記マトリックス部に含有される主組成物(樹脂)に対する針入度は0×10−1mmであることが望ましい。
【0027】
ここで、前記針入度の測定方法について説明する。本明細書に記載の針入度の値は以下の方法により測定されたものである。針入度の試験方法は、JIS K−2235(1991年)の規定に従って行われ、標準条件(温度25℃、荷重100g、貫入時間5秒)で規定の針が材料中に垂直に貫入したときの深さを1/10mm単位で表す。
【0028】
(ドメイン部の長軸径等)
本実施形態におけるキャリアの前記ドメイン部は、その長軸径が1μm以上10μm以下であることが望ましく、更には3μm以上10μm以下であることがより望ましく、3μm以上8μm以下であることがより望ましい。長軸径が1μm以上であることにより、遊離した前記外添剤のドメイン部での補足が効果的に行われるものと推察される。一方10μm以下であることにより、前記外添剤の付着量自体が低減され、結果として形成される画像の濃度の低下が抑制されるものと推察される。
【0029】
また、本実施形態におけるキャリアの被覆層の表面積に対する、前記ドメイン部の表面積の比は、10面積%以上45面積%以下であることが望ましい。
【0030】
ここで、前記ドメイン部の長軸径、および前記表面積の比の測定方法について説明する。本明細書に記載の値は以下の方法により測定されたものである。ドメイン部の長軸径は、ランダムに選定した100個のドメイン部の画像を走査型電子顕微鏡を用いて撮影し、画像解析にて算出する。また、表面積の比はキャリア100個をランダムに観察し、画像解析にてドメイン部とマトリックス部を算出し、表面積の比を求める。
【0031】
ついで、本実施形態に係るキャリアを構成する成分について説明する。
【0032】
<電子写真用キャリア>
(キャリアの組成)
本実施形態に係るキャリアは、芯材と、前記芯材を被覆する被覆層と、を有する。
・芯材
本実施形態で用いられる芯材としては、特に制限はなく、鉄、鋼、ニッケル、コバルト等の磁性金属、または、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物、磁性粒子とバインダー樹脂とを含む磁性粒子分散型の芯材等が挙げられる。
【0033】
また、前記フェライトの例としては、下記式(1)で示される構造のものが望ましく挙げられる。
【0034】
(MO)(Fe・・・(1)
【0035】
式(1)中、MはCu、Zn、Fe、Mg、Mn、Ca、Li、Ti、Ni、Sn、Sr、Al、Ba、CoおよびMoからなる群より選択される少なくとも1種を示す。また、X、Yはmol比を示し、かつ条件X+Y=100の条件を満たす。
【0036】
本実施形態において、磁性粒子分散型の芯材は、磁性粒子がバインダー樹脂中に分散されてなる。
上記磁性粒子としては、従来公知のいずれのものを使用してもよいが、特に望ましくはフェライトやマグネタイト、マグヘマタイトが選ばれる。特に、強磁性の磁性粒子としては、マグネタイト、マグヘマタイトが選択され、他の磁性粒子として、例えば鉄粉が知られている。
【0037】
磁性粒子として、具体的には、例えばマグネタイト、γ−酸化鉄、Mn−Zn系フェライト、Ni−Zn系フェライト、Mn−Mg系フェライト、Li系フェライト、Cu−Zn系フェライトなどの鉄系酸化物が挙げられる。中でもマグネタイトがより望ましく用いられる。
【0038】
磁性粒子の粒径は、0.01μm以上1μm以下であることが望ましく、0.05μm以上0.7μm以下であることがより望ましく、0.1μm以上0.6μm以下であることが更に望ましい。
また、磁性粒子の芯材中における含有量としては、40質量%以上95質量%以下であることが望ましく、50質量%以上95質量%以下であることがより望ましく、60質量%以上90質量%以下であることが更に望ましい。
【0039】
本実施形態において磁性粒子分散型の芯材を構成するバインダー樹脂としては、架橋されたスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系共重合樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられるが、フェノール系樹脂が特に望ましい。
【0040】
また、本実施形態において磁性粒子分散型の芯材は、目的に応じて、更にその他の成分を含有していてもよい。
その他の成分としては、例えば、帯電制御剤、フッ素含有粒子などが挙げられる。
【0041】
・被覆層
本実施形態に係るキャリアは、芯材を被覆する被覆層を有する。前述の通り該被覆層は、ワックスおよび結晶性樹脂から選択される少なくとも一種を主組成物として含有するドメイン部、並びに樹脂を主組成物として含有するマトリックス部を含んで構成されるドメイン−マトリックス構造を有する。
【0042】
(1)マトリックス部
被覆層のマトリックス部を構成する樹脂としては、マトリックス樹脂として使用されるものであれば特に制限はなく、目的に応じて選択される。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテルおよびポリビニルケトン等のポリビニル系樹脂およびポリビニリデン系樹脂;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体;スチレン−アクリル酸共重合体;オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコーン樹脂またはその変性品;ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン等のフッ素系樹脂;シリコーン樹脂;ポリエステル;ポリウレタン;ポリカーボネート;フェノール樹脂;尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂等のアミノ樹脂;エポキシ樹脂、等のそれ自体公知の樹脂が挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0043】
(2)ドメイン部
被覆層のドメイン部を構成する主組成物は、ワックスおよび結晶性樹脂から選択される少なくとも一種であり、これらの中でもワックスが特に望ましい。
【0044】
ワックスとしては、特に制限はなく目的に応じて選択され、例えば、低分子量ポリオレフィンワックス、カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタルワックス、フィッシャー・トロプシュワックス、固体酸エステルワックス等が挙げられ、これらの中でも特に、パラフィンワックス、フィッシャー・トロプシュワックスが望ましい。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0045】
結晶性樹脂としては、結晶性を有する樹脂であれば公知の樹脂が特に制限なく用いられ、具体的には結晶性ポリエステル樹脂、結晶性ビニル系樹脂等が挙げられ、これらの中でも特に、結晶性ポリエステル樹脂が望ましい。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
尚、上記結晶性樹脂における結晶性とは、熱吸収曲線がJIS K7121の融解温度の定義に従い、低温側のベースラインを高温側に延長した直線と融解ピーク(吸熱ピーク)の低温側の曲線に勾配が最大になる点で引いた接線の交点(融解開始温度)と高温側のベースラインを低温側に延長した直線と融解ピーク(吸熱ピーク)の高温側の曲線に勾配が最大になる点で引いた接線の交点(融解終了温度)の温度差が50℃以内であって、その曲線の形態が同じくJIS K7121で示される階段状形状を示さない場合を結晶性を有すると判断する。
【0047】
上記の構成とすることにより、ドメイン部がマトリックス部よりも柔らかく構成される。尚、ドメイン部とマトリックス部との柔らかさをより好適な範囲とするため、特にドメイン部に含有される主組成物とマトリックス部に含有される主組成物とを選択して組合わせることが望ましい。即ち、前記ドメイン部に含有される主組成物に対する針入度が、前記マトリックス部に含有される主組成物に対する針入度よりも低くなるよう組合わせることが望ましい。
また、前記ドメイン部に含有される主組成物に対する針入度は、前述の通り、1×10−1mm以上30×10−1mm以下であることが望ましい。
【0048】
(キャリアの製造方法)
本実施形態に係るキャリアの製造方法は、上記構成のキャリアを形成し得る方法であれば特に限定されるものではない。以下に本実施形態に係るキャリアの製造方法の一例について説明する。
樹脂被覆キャリアは、例えば、被覆用の樹脂を溶解させた溶液を、攪拌装置(例えばサンドミル等)を用いて攪拌・分散した樹脂被覆層形成用溶液を、キャリア芯材の表面に噴霧するスプレー法、上記樹脂被覆層形成用溶液とキャリア芯材とをニーダーコータ中で混合し、次いで溶剤を除去するニーダーコータ法などにより製造される。
尚、上記樹脂被覆層形成用溶液の調製は、まずマトリックス部を構成する材料を溶媒に添加して攪拌混合する第1攪拌工程と、その後更にドメイン部を構成する材料を前記溶媒中に追加で添加して攪拌混合する第2攪拌工程とによって得られる。
【0049】
ここで、前述の通り本実施形態に係るキャリアは、ドメイン部およびマトリックス部を含んで構成され、且つ該ドメイン部は長軸径が1μm以上10μm以下であることが望ましい。上記樹脂被覆キャリアの製造方法において、ドメイン部の長軸径の大きさは、
・ドメイン部を構成する主組成物(ワックスまたは結晶性樹脂)の重量平均分子量
(300以上1000以下が望ましく、300以上500以下がより望ましい)
・樹脂被覆層形成用溶液を調製する際のドメイン部を構成する材料の投入タイミング
・ドメイン部を構成する材料を投入した後の攪拌速度
(第1攪拌工程における攪拌速度に比べ
1/2以下が望ましく、1/3以下がより望ましい)
・ドメイン部を構成する材料を投入した後の攪拌時間
(第1攪拌工程における攪拌時間に比べ
1/2以下が望ましく、1/3以下がより望ましい)
・ニーダーコータ法等において樹脂被覆層形成用溶液とキャリア芯材とを混合する際における攪拌速度
等を制御することによって調整される。
【0050】
<電子写真用現像剤>
本実施形態に係る電子写真用現像剤は、本実施形態に係るキャリアとトナーとを含む二成分現像剤として構成される。
以下、本実施形態に係る電子写真用現像剤に用いられるトナーについて説明する。
【0051】
(トナーの組成)
本実施形態に用いられるトナーには、公知の結着樹脂や各種の着色剤等を使用してもよい。本実施形態に用いられるトナーとしては、結着樹脂がポリエステル樹脂であることが望ましく、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物をアルコール側の成分として含むポリエステル樹脂が望ましい。また、前記ポリエステル樹脂は、単独で用いても、ポリエステルのほかにスチレンアクリル、ポリエーテルポリオール、ウレタン、等の樹脂を必要に応じて併用してもよい。
【0052】
また、本実施形態に用いられるトナーにおける結着樹脂としては、ポリエステル樹脂のほかに、ポリオレフィン樹脂、スチレンとアクリル酸またはメタクリル酸との共重合体、ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、変性ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂、ポリエーテルポリオール樹脂等などを単独で用いてもよいしまたは併用してもよい。
【0053】
本実施形態に用いられるトナーにおける着色剤としては、シアンの着色剤として、例えば、C.I.ピグメントブルー1、同2、同3、同4、同5、同6、同7、同10、同11、同12、同13、同14、同15、同15:1、同15:2、同15:3、同15:4、同15:6、同16、同17、同23、同60、同65、同73、同83、同180、C.I.バットシアン1、同3、同20等や、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルーの部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC等のシアン顔料、C.I.ソルベントシアン79、162等のシアン染料などが用いられる。
【0054】
また、マゼンタの着色剤として、例えば、C.I.ピグメントレッド1、同2、同3、同4、同5、同6、同7、同8、同9、同10、同11、同12、同13、同14、同15、同16、同17、同18、同19、同21、同22、同23、同30、同31、同32、同37、同38、同39、同40、同41、同48、同49、同50、同51、同52、同53、同54、同55、同57、同58、同60、同63、同64、同68、同81、同83、同87、同88、同89、同90、同112、同114、同122、同123、同163、同184、同202、同206、同207、同209、ピグメントバイオレット19等のマゼンタ顔料や、C.I.ソルベントレッド1、同3、同8、同23、同24、同25、同27、同30、同49、同81、同82、同83、同84、同100、同109、同121、C.I.ディスパースレッド9、C.I.ベーシックレッド1、同2、同9、同12、同13、同14、同15、同17、同18、同22、同23、同24、同27、同29、同32、同34、同35、同36、同37、同38、同39、同40等のマゼンタ染料、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ロータミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3Bなどが用いられる。
【0055】
また、イエローの着色剤として、例えば、C.I.ピグメントイエロー2、同3、同15、同16、同17、同97、同180、同185、同139等のイエロー顔料などが用いられる。
【0056】
さらに、ブラックトナーの場合には、その着色剤として、例えば、カーボンブラック、活性炭、チタンブラック、磁性粉、Mn含有の非磁性粉などが用いられる。
【0057】
更に、本実施形態に用いられるトナーは、帯電制御剤を含有してもよく、ニグロシン、4級アンモニウム塩、有機金属錯体、キレート錯体等を用いてもよい。
【0058】
更に、本実施形態に用いられるトナーは、離型剤を含有してもよく、該離型剤としては、エステルワックス、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリエチレンとポリプロピレンの共重合物、ポリグリセリンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、カルナバワックス、サゾールワックス、モンタン酸エステルワックス、脱酸カルナバワックス、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、ブランジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸などの不飽和脂肪酸類、ステアリンアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、あるいは更に長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルアルコール類などの飽和アルコール類;ソルビトールなどの多価アルコール類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドなどの飽和脂肪酸ビスアミド類、エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミドなどの、不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N′ジステアリルイソフタル酸アミドなどの芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸などのビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドなどの脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加などによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物などが挙げられる。
【0059】
トナーの製造方法としては特に限定されず、粉砕法、重合法等、公知のいかなるトナー製造方法を用いてもかまわない。
【0060】
(トナーの外添剤)
また、トナーに外添する外添剤としては、シリカ、酸化チタン、酸化セリウム、チタン酸バリウム、フッ素粒子、アクリル粒子等が用いられる。これらは1種を単独で用いても、併用して用いてもよい。該シリカとしては、TG820(キャボット社製)、HVK2150(クラリアント社製)等の市販品を使用してもよい。
尚、上記外添剤としては、その体積平均粒子径が20nm以上1μm以下のものが好適に用いられる。
【0061】
本実施形態に係るキャリアとトナーとの混合比(質量比)は、トナー:キャリア=1:100乃至30:100の範囲が望ましく、3:100乃至15:100の範囲がより望ましい。
【0062】
<画像形成装置>
次に、本実施形態に係る電子写真用現像剤を用いた本実施形態に係る画像形成装置について説明する。
本実施形態に係る画像形成装置は、像保持体と、前記像保持体表面を帯電する帯電装置と、帯電された前記像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成装置と、前記静電潜像を前述の本実施形態に係る電子写真用現像剤におけるトナーによって、トナー像として現像する現像装置と、前記像保持体表面に形成された前記トナー像を被転写体表面に転写する転写装置と、を有することを特徴とする。本実施形態に係る画像形成装置は、必要に応じて前記潜像保持体をクリーニング部材で摺擦し転写残留成分をクリーニングするクリーニング装置等のその他の装置を備えていてもよい。
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。なお、図に示す主用部を説明し、その他はその説明を省略する。
【0063】
なお、この画像形成装置において、例えば前記現像装置を含む部分が、画像形成装置本体に対して脱着自在なカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよく、該プロセスカートリッジとしては、現像剤保持体を少なくとも備え、本実施形態に係る電子写真用現像剤を収容する本実施形態に係るプロセスカートリッジが好適に用いられる。
【0064】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置の一例である4連タンデム方式のカラー画像形成装置を示す概略構成図である。図1に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づくイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K(画像形成装置)を備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに予め定めた距離離間して並設されている。なお、これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置本体に対して脱着自在なプロセスカートリッジであってもよい。
【0065】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの図面における上方には、各ユニットを通して中間転写体としての中間転写ベルト20が延設されている。中間転写ベルト20は、図における左から右方向に互いに離間して配置された駆動ローラ22および中間転写ベルト20内面に接する支持ローラ24に巻回されて設けられ、第1ユニット10Yから第4ユニット10Kに向う方向に走行されるようになっている。尚、支持ローラ24は、図示しないバネ等により駆動ローラ22から離れる方向に付勢されており、両者に巻回された中間転写ベルト20に予め定めた張力が与えられている。また、中間転写ベルト20の像保持体側面には、駆動ローラ22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
また、各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(現像装置)4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収容されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーが供給される。
【0066】
上述した第1乃至第4ユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1ユニット10Yについて代表して説明する。尚、第1ユニット10Yと同等の部分に、イエロー(Y)の代わりに、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)を付した参照符号を付すことにより、第2乃至第4ユニット10M、10C、10Kの説明を省略する。
【0067】
第1ユニット10Yは、潜像保持体として機能する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を予め定めた電位に帯電させる帯電ローラ2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yよって露光して静電潜像を形成する露光装置3、静電潜像に帯電したトナーを供給して静電潜像を現像する現像装置(現像装置)4Y、現像したトナー像を中間転写ベルト20上に転写する1次転写ローラ5Y(1次転写装置)、および1次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置(クリーニング装置)6Yが順に配設されている。
尚、1次転写ローラ5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。更に、各1次転写ローラ5Y、5M、5C、5Kには、1次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各1次転写ローラに印加する転写バイアスを可変する。
【0068】
以下、第1ユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。まず、動作に先立って、帯電ローラ2Yによって感光体1Yの表面が−600V乃至−800Vの電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(20℃における体積抵抗率:1×10−6Ωcm以下)の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂程度の抵抗)であるが、レーザ光線3Yが照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3を介してレーザ光線3Yを出力する。レーザ光線3Yは、感光体1Yの表面の感光層に照射され、それにより、イエロー印字パターンの静電潜像が感光体1Yの表面に形成される。
【0069】
静電潜像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
このようにして感光体1Y上に形成された静電潜像は、感光体1Yの走行に従って予め定めた現像位置まで回転される。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電潜像が、現像装置4Yによって可視像(トナー像)化される。
【0070】
現像装置4Y内には、イエロートナーが収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で攪拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体)上に保持されている。そして感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。イエローのトナー像が形成された感光体1Yは、引続き予め定めた速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー像が予め定めた1次転写位置へ搬送される。
【0071】
感光体1Y上のイエロートナー像が1次転写へ搬送されると、1次転写ローラ5Yに予め定めた1次転写バイアスが印加され、感光体1Yから1次転写ローラ5Yに向う静電気力がトナー像に作用され、感光体1Y上のトナー像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と逆極性の(+)極性であり、例えば第1ユニット10Yでは制御部に(図示せず)よって+10μA程度に制御されている。
一方、感光体1Y上に残留したトナーはクリーニング装置6Yで除去されて回収される。
【0072】
また、第2ユニット10M以降の1次転写ローラ5M、5C、5Kに印加される1次転写バイアスも、第1ユニットに準じて制御されている。
こうして、第1ユニット10Yにてイエロートナー像の転写された中間転写ベルト20は、第2乃至第4ユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー像が重ねられて多重転写される。
【0073】
第1乃至第4ユニットを通して4色のトナー像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と中間転写ベルト20内面に接する支持ローラ24と中間転写ベルト20の像保持面側に配置された2次転写ローラ(2次転写装置)26とから構成された2次転写部へと至る。一方、記録紙(被転写体)Pが供給機構を介して2次転写ローラ26と中間転写ベルト20とが圧接されている隙間に予め定めたタイミングで給紙され、予め定めた2次転写バイアスが支持ローラ24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と同極性の(−)極性であり、中間転写ベルト20から記録紙Pに向う静電気力がトナー像に作用され、中間転写ベルト20上のトナー像が記録紙P上に転写される。尚、この際の2次転写バイアスは2次転写部の抵抗を検出する抵抗検出装置(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0074】
この後、記録紙Pは定着装置(定着装置)28へと送り込まれトナー像が加熱され、色重ねしたトナー像が溶融されて、記録紙P上へ定着される。カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
なお、上記例示した画像形成装置は、中間転写ベルト20を介してトナー像を記録紙Pに転写する構成となっているが、この構成に限定されるものではなく、感光体から直接トナー像が記録紙に転写される構造であってもよい。
【0075】
<プロセスカートリッジ>
図2は、本実施形態に係る電子写真用現像剤を収容するプロセスカートリッジの好適な一例を示す概略構成図である。プロセスカートリッジ200は、感光体107とともに、帯電ローラ108、現像装置111、感光体クリーニング装置(クリーニング装置)113、露光のための開口部118、および、除電露光のための開口部117を取り付けレール116を用いて組み合わせ、そして一体化したものである。なお、図2において符号300は被転写体を表す。
そして、このプロセスカートリッジ200は、転写装置112と、定着装置115と、図示しない他の構成部分とから構成される画像形成装置本体に対して着脱自在としたものであり、画像形成装置本体とともに画像形成装置を構成するものである。
【0076】
図2で示すプロセスカートリッジでは、帯電ローラ108、現像装置111、クリーニング装置(クリーニング装置)113、露光のための開口部118、および、除電露光のための開口部117を備えているが、これら装置は選択的に組み合わせてよい。本実施形態に係るプロセスカートリッジでは、感光体107のほかには、帯電ローラ108、現像装置111、感光体クリーニング装置(クリーニング装置)113、露光のための開口部118、および、除電露光のための開口部117から構成される群から選択される少なくとも1種を備えるものであってもよい。
【実施例】
【0077】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例により限定されるものではない。尚、以下において「部」および「%」は、特に示さない限り「質量基準」である。
【0078】
[実施例1]
<キャリアの作製>
(1)芯材の形成
以下の方法により、芯材を形成した。
ヘンシェルミキサに、体積平均粒径0.40μmの球状マグネタイト粒子粉末500部を投入し、十分に攪拌した後、チタネート系カップリング剤5.0部を添加し、100℃まで昇温し、30分間混合攪拌することにより、チタネート系カップリング剤被覆された球状マグネタイト粒子を得た。
続いて、1Lの四つ口フラスコに、フェノール6.25部、35%ホルマリン9.25部、上記マグネタイト粒子500部と25%アンモニア水6.25部、水425部を入れ、混合攪拌した。次に、攪拌しながら60分間で85℃まで昇温し、同温度にて120分間反応させた後、25℃まで冷却し、500mlの水を添加した後、上澄み液を除去、沈殿物を水洗した。これを減圧下、150℃以上180℃以下で乾燥し、体積平均粒径35μmの芯材粒子を得た。
【0079】
(2)被覆層の形成
以下の方法により、芯材の表面にドメイン−マトリックス構造を有する被覆層を形成した。まず、トルエン100部、スチレン−メタクリレート共重合体(成分比25:75、重要平均分子量Mw12万、針入度0)15部、カーボンブラック(R330:キャボット製)0.70部、ガラスビーズ(φ1mm)100部を、関西ペイント社製サンドミルに投入し、1200rpmで30min攪拌した(第1攪拌工程)。
その後、パラフィンワックス(針入度20、分子量:500)4.5部を投入し、200rpmで1min攪拌し(第2攪拌工程)、被覆層形成用溶液を得た。
【0080】
前記芯材粒子500部と前記被覆層形成用溶液100部とを、真空脱気装置を付け加えた卓上型ニーダー(Irie Shokai Co.Ltd社製、PNV−1H)に入れ、温度60℃を保って羽回転数20rmpで10分間攪拌した後、減圧してトルエンを留去した後、75μmの篩を用いて分粒することによりキャリア1を得た。
尚、ドメイン部の長軸径を前述の方法により測定した。結果を表1に示す。
【0081】
<トナーの作製>
スチレン−ブチルアクリレート共重合体(重量平均分子量Mw=150,000、共重合比80:20)100部、カーボンブラック(モーガルL:キャボット社製)5部、およびカルナウバワックス6部の混合物をエクストルーダで混練し、ジェットミルで粉砕後、温風による球形化処理をクリプトロン(川崎重工製)にて実施し、風力式分級機で分級して粒子径6.2μmのトナー粒子を得た。このトナー粒子100部に対してコロイダルシリカ(日本アエロジル社製R972)1.2部および粒径0.6μmのコロイダルリシカ0.3部を添加し、ヘンシェルミキサーで混合して外添トナー粒子を得た。
【0082】
<像現像剤の作製>
前記キャリア92部と上記トナー8部とをV型ブレンダーで20分間攪拌し現像剤を作製した。
【0083】
[実施例2]
実施例1において、パラフィンワックス(針入度20)投入後の第2攪拌工程における攪拌速度を500rpmに変更した以外は実施例1に記載の方法によりキャリアを作製し、且つ現像剤を作製した。ドメイン部に含有される主組成物の針入度および重量平均分子量、マトリックス部に含有される主組成物の針入度、並びにドメイン部の長軸径の測定結果を表1に示す。
【0084】
[実施例3]
実施例1において、パラフィンワックス(針入度20)投入後の第2攪拌工程における攪拌速度を100rpmに変更した以外は実施例1に記載の方法によりキャリアを作製し、且つ現像剤を作製した。ドメイン部に含有される主組成物の針入度および重量平均分子量、マトリックス部に含有される主組成物の針入度、並びにドメイン部の長軸径の測定結果を表1に示す。
【0085】
[実施例4]
実施例1において、針入度5のフィッシャー・トロプシュワックスに変更した以外は実施例1に記載の方法によりキャリアを作製し、且つ現像剤を作製した。ドメイン部に含有される主組成物の針入度および重量平均分子量、マトリックス部に含有される主組成物の針入度、並びにドメイン部の長軸径の測定結果を表1に示す。
【0086】
[実施例5]
実施例1において、針入度30のパラフィンワックスに変更した以外は実施例1に記載の方法によりキャリアを作製し、且つ現像剤を作製した。ドメイン部に含有される主組成物の針入度および重量平均分子量、マトリックス部に含有される主組成物の針入度、並びにドメイン部の長軸径の測定結果を表1に示す。
【0087】
[実施例6]
実施例1において、針入度0.5のカルナバワックスに変更した以外は実施例1に記載の方法によりキャリアを作製し、且つ現像剤を作製した。ドメイン部に含有される主組成物の針入度および重量平均分子量、マトリックス部に含有される主組成物の針入度、並びにドメイン部の長軸径の測定結果を表1に示す。
【0088】
[実施例7]
実施例1において、パラフィンワックス(針入度20)投入後の第2攪拌工程における攪拌速度を50rpmに変更した以外は実施例1に記載の方法によりキャリアを作製し、且つ現像剤を作製した。ドメイン部に含有される主組成物の針入度および重量平均分子量、マトリックス部に含有される主組成物の針入度、並びにドメイン部の長軸径の測定結果を表1に示す。
【0089】
[実施例8]
実施例1において、パラフィンワックス(針入度20)投入後の第2攪拌工程における攪拌速度を800rpmに変更した以外は実施例1に記載の方法によりキャリアを作製し、且つ現像剤を作製した。ドメイン部に含有される主組成物の針入度および重量平均分子量、マトリックス部に含有される主組成物の針入度、並びにドメイン部の長軸径の測定結果を表1に示す。
【0090】
[実施例9]
実施例1において、針入度35のパラフィンワックスに変更した以外は実施例1に記載の方法によりキャリアを作製し、且つ現像剤を作製した。ドメイン部に含有される主組成物の針入度および重量平均分子量、マトリックス部に含有される主組成物の針入度、並びにドメイン部の長軸径の測定結果を表1に示す。
【0091】
[比較例1]
実施例1において、針入度0のスチレンメタクリレート共重合体(非晶性、重量平均分子量2万)に変更した以外は実施例1に記載の方法によりキャリアを作製し、且つ現像剤を作製した。ドメイン部に含有される主組成物の針入度および重量平均分子量、マトリックス部に含有される主組成物の針入度、並びにドメイン部の長軸径の測定結果を表1に示す。
【0092】
<評価試験>
−外添剤の偏在の観察−
以下の方法により、トナーから遊離しキャリア表面に移行した外添剤がキャリア表面において偏在しているか否かを、走査型電子顕微鏡を用いて観察し、目視にて判断した。
尚、評価基準は以下のとおりである。
◎:キャリア表面に移行した外添剤の内、9割以上がドメイン部に偏在している。
○:キャリア表面に移行した外添剤の内、8割以上がドメイン部に偏在している。
△:キャリア表面に移行した外添剤の内、7割以上がドメイン部に偏在している。
×:キャリア表面に移行した外添剤の内、7割未満しかドメイン部に偏在していない。
【0093】
−画像濃度−
得られた現像剤を富士ゼロックス社製DocuCentreColor400CP改造機にセットし、現像プロセススピード200mm/secにて5000枚画像形成し、20枚目と5000枚目の画像濃度を画像濃度計(X−Rite404A:X−Rite社製)を用いて測定し、画像濃度の測定結果から、以下の評価基準に即して評価した。
◎:20枚目に対して5000枚目の画像濃度が97%以上
○:20枚目に対して5000枚目の画像濃度が91%以上97%未満
△:20枚目に対して5000枚目の画像濃度が88%以上91%未満
×:20枚目に対して5000枚目の画像濃度が88%未満
【0094】
【表1】



【0095】
【表2】



【0096】
【表3】



【符号の説明】
【0097】
1Y、1M、1C、1K、107 感光体(潜像保持体)
2Y、2M、2C、2K、108 帯電ローラ
3Y、3M、3C、3K レーザ光線
3 露光装置
4Y、4M、4C、4K、111 現像装置(現像手段)
5Y、5M、5C、5K 1次転写ローラ
6Y、6M、6C、6K、113 感光体クリーニング装置(クリーニング手段)
8Y、8M、8C、8K トナーカートリッジ
10Y、10M、10C、10K 画像形成ユニット
20 中間転写ベルト
22 駆動ローラ
24 支持ローラ
26 2次転写ローラ(転写手段)
28、115 定着装置(定着手段)
30 中間転写体クリーニング装置
112 転写装置
116 取り付けレール
117 除電露光のための開口部
118 露光のための開口部
200 プロセスカートリッジ
P、300 記録紙(被転写体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材と、
該芯材を覆い、ワックスおよび結晶性樹脂から選択される少なくとも一種を主組成物として含有するドメイン部、並びに樹脂を主組成物として含有するマトリックス部を含んで構成されるドメイン−マトリックス構造を有する被覆層と、
を備える電子写真用キャリア。
【請求項2】
前記ドメイン部に含有される主組成物に対する針入度が1×10−1mm以上30×10−1mm以下である請求項1に記載の電子写真用キャリア。
【請求項3】
前記ドメイン部の長軸径が1μm以上10μm以下である請求項1または請求項2に記載の電子写真用キャリア。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の電子写真用キャリアと、
外添剤が表面に付着したトナーと、
を含む電子写真用現像剤。
【請求項5】
請求項4に記載の電子写真用現像剤を収容する現像剤カートリッジ。
【請求項6】
請求項4に記載の電子写真用現像剤を収容し、且つ前記電子写真用現像剤を保持して搬送する現像剤保持体を備えるプロセスカートリッジ。
【請求項7】
像保持体と、
前記像保持体表面を帯電する帯電装置と、
帯電された前記像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成装置と、
前記静電潜像を請求項4に記載の電子写真用現像剤におけるトナーによってトナー像として現像する現像装置と、
前記像保持体表面に形成された前記トナー像を被転写体表面に転写する転写装置と、
を有する画像形成装置。
【請求項8】
マトリックス部を構成する材料を溶媒に添加して攪拌混合する第1攪拌工程、および、更に重量平均分子量が300以上1000以下である主組成物を含むドメイン部を構成する材料を前記溶媒中に添加し、前記第1攪拌工程に比べ1/2以下の攪拌速度および1/2以下の攪拌時間にて攪拌混合する第2攪拌工程、によって被覆層形成用溶液を調製する被覆層形成用溶液調製工程と、
前記被覆層形成用溶液によって芯材の表面に被覆層を形成する被覆層形成工程と、
を有する電子写真用キャリアの製造方法。

【図1】
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【図2】
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