説明

電子写真用シアントナー及びその製造方法

【課題】本発明の目的は、シアントナーの問題を解決することであり、更に詳しくは、彩度が向上し、色再現性が改善される電子写真用シアントナーを提供することであり、併せて、耐光性、耐オゾン性等の耐久性を有し、色再現性が良好な電子写真用シアントナーを提供することにある。
【解決手段】X線回折スペクトルにおいて、Cu−Kα線に対するブラッグ角2θ=8.0°以上10.0°未満における最大回折スペクトルの絶対強度(Aとする)、およびCu−Kα線に対するブラッグ角2θ=10.0°以上12.0°未満における最大回折スペクトルの絶対強度(Bとする)の強度比率T(T=A/B)が1.0以上3.0以下である特定構造を有する化合物の顔料を含有することを特徴とする電子写真用シアントナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成装置等に用いられる電子写真用トナー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式のカラー画像形成装置が広く普及するに従い、その用途も多種多様に広がり、その画像品質への要求も厳しくなってきている。一般の写真、カタログ、地図の如き画像の複写では、微細な部分に至るまで、極めて精細且つ忠実に再現することが求められている。
【0003】
しかしながら、イエロー、マゼンタ、シアンそれぞれのカラートナーが形成する画像における色再現領域は、コンピューターディスプレイ画面上の色再現領域を完全にカバーできていないのが現状であり、色再現範囲を拡張することが望まれている。
【0004】
また、オフィス用途に多く用いられる電子写真方式の画像形成装置においては、耐光性、耐オゾン性等の耐久性も併せて求められるため、特にシアン着色剤の選択幅が限定されてきた。
【0005】
色再現性と耐久性を両立するシアン着色剤としては、C.Iピグメントブルー15.3に代表される銅フタロシアニン系顔料が汎用的に用いられてきている。しかしながら、銅フタロシアニン系顔料を用いた着色剤は、耐久性に優れている一方で、凝集二次粒子を形成しやすく、着色力が低下する傾向がある。それに伴い、フルカラー画像形成用のシアン色としては、色再現性が十分でなく、特に高明度(淡い・明るい色)の色再現性の改善が求められている。
【0006】
上記問題点の改善のため、様々な技術情報が開示されている。
【0007】
例えば、銅フタロシアニンとニッケルフタロシアニンを無機塩類と有機溶剤の存在下で湿式粉砕してなるシアン顔料を用いたトナーが開示されており、銅フタロシアニンを単独で湿式粉砕したときに比べ顔料の粒子径が小さく、着色力の高い顔料が得られている(特許文献1)。
【0008】
また、中心金属原子に置換基を有するフタロシアニン化合物を含有するシアン着色剤が開示されている(特許文献2,3)。該フタロシアニン化合物は銅フタロシアニン系顔料に比べ、結晶性が低いため、分散性が良く、色濁りのない良好な色調が得られる。
【0009】
しかしながら、本発明者の検討では、前記のようなフタロシアニン顔料を含有するトナーを用いても、尚、シアン色の色再現性の改善効果が不十分であり、シアントナーが関与するライトブルーやライトグリーンの彩度が、尚、不十分で、色再現性の改善が十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−151162号公報
【特許文献2】特開2008−176311号公報
【特許文献3】特開2009−128750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、前記したようなシアントナーの問題を解決することであり、更に詳しくは、彩度が向上し、色再現性が改善される電子写真用シアントナーを提供することであり、併せて、耐光性、耐オゾン性等の耐久性を有し、色再現性が良好な電子写真用シアントナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題について鋭意、検討を重ねた結果、上記課題を解決するには、シアントナーに含有される顔料の結晶構造が、トナー画像の彩度の向上に関連していることを見いだし、本願発明を達成した。
【0013】
即ち、本願発明の目的は下記の構造を有するシアントナーを用いることにより達成される。
【0014】
1.X線回折スペクトルにおいて、Cu−Kα線に対するブラッグ角2θ=8.0°以上10.0°未満における最大回折スペクトルの絶対強度(Aとする)、およびCu−Kα線に対するブラッグ角2θ=10.0°以上12.0°未満における最大回折スペクトルの絶対強度(Bとする)の強度比率T(T=A/B)が1.0以上3.0以下である下記一般式(1)で表される化合物の顔料を含有することを特徴とする電子写真用シアントナー。
【0015】
【化1】

【0016】
(式中、MはSiもしくはGeを表す。Z、Zはアルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アリールオキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基または−OSiRaRbRc(ただし、Ra、RbおよびRcは各々独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基を示す)で表される基のいずれかを表す。Z、Zは互いに同一でも相違してもよい。R〜Rは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルスルホニル基、アルキルスルファモイル基または−SiRaRbRc(ただし、Ra、RbおよびRcは各々独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基を示す)のいずれかで表される基を表す。R〜Rは互いに同一でも相違してもよい。)
2.上記強度比率Tが2.0以上3.0以下であることを特徴とする前記1に記載の電子写真用シアントナー。
【0017】
3.顔料を樹脂中に含有させる電子写真用シアントナーの製造方法において、該顔料が、下記一般式(1)で表される化合物の顔料であり、該顔料にソルベントソルトミリング処理又は再沈法の処理を施して、該顔料の結晶構造を、X線回折スペクトルにおいて、Cu−Kα線に対するブラッグ角2θ=8.0°以上10.0°未満における最大回折スペクトルの絶対強度(Aとする)、およびCu−Kα線に対するブラッグ角2θ=10.0°以上12.0°未満における最大回折スペクトルの絶対強度(Bとする)の強度比率T(T=A/B)が1.0以上3.0以下に結晶変換させることを特徴とする電子写真用シアントナーの製造方法。
【0018】
【化2】

【0019】
(式中、MはSiもしくはGeを表す。Z、Zはアルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アリールオキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基または−OSiRaRbRc(ただし、Ra、RbおよびRcは各々独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基を示す)で表される基のいずれかを表す。Z、Zは互いに同一でも相違してもよい。R〜Rは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルスルホニル基、アルキルスルファモイル基または−SiRaRbRc(ただし、Ra、RbおよびRcは各々独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基を示す)のいずれかで表される基を表す。R〜Rは互いに同一でも相違してもよい。)
【発明の効果】
【0020】
本発明らによれば、分散性が良好なシアン着色剤分散液及び、耐光性、耐オゾン性等の耐久性を有し、色再現性が良好な電子写真用シアントナーが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】顔料1のX線回折スペクトルを示す図である。
【図2】顔料19のXRDスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明者は上記の課題に鑑み、鋭意検討を行った結果、一般式(1)の化合物の結晶型に着目することにより、分散性が良好なシアン着色剤分散液及び、耐光性、耐オゾン性等の耐久性を有し、色再現性が良好な電子写真用シアントナーを見出すに至った。
【0023】
以下に本発明について詳細に説明する。
【0024】
本願発明の電子写真用シアントナーは、X線回折スペクトルにおいて、Cu−Kα線に対するブラッグ角2θ=8.0°以上10.0°未満における最大回折スペクトルの絶対強度(Aとする)、およびCu−Kα線に対するブラッグ角2θ=10.0°以上12.0°未満における最大回折スペクトルの絶対強度(Bとする)の強度比率T(T=A/B)が1.0以上3.0以下である前記一般式(1)で表される化合物の顔料を含有することを特徴とする。
【0025】
ここで、X線回折スペクトルにおけるピークは、回折X線の角度と強度が、被検試料の結晶化度、結晶構造(結晶型)、結晶の配向性など、結晶の配向状態を反映することが知られている。本発明者らは種々検討の結果、一般式(1)で表される化合物には、Cu−Kα線に対するブラッグ角2θ=8.0°以上10.0°未満に最大回折スペクトルを有する結晶型とCu−Kα線に対するブラッグ角2θ=10.0°以上12.0°未満に最大回折スペクトルを有する結晶型が混在していることを見出した。さらに理由は不明であるが、結晶型の混在度合いを示す指標である強度比率Tが本発明の範囲内にあることが本発明の課題の解決において、非常に重要である事を見出した。本発明においては、特定のピークの強度比率Tが本発明の範囲内にあれば、結晶化度、配向性は問わない。強度比率Tは1.0以上3.0以下であり、好ましくは2.0以上3.0以下である。
【0026】
上記の理由を考察すると、Cu−Kα線に対するブラッグ角2θ=10.0°以上12.0°未満に最大回折スペクトルを有する結晶型に対して、Cu−Kα線に対するブラッグ角2θ=8.0°以上10.0°未満に最大回折スペクトルを有する結晶型の方が粒子間の結合力が小さいため、分散液中等で、粒子間の凝集が発生しにくいためと考えられるが、このことで全てが説明できるものではない。
【0027】
以下に前記一般式(1)の化合物について詳細に説明する。
【0028】
一般式(1)における中心金属原子Mの具体例としては、例えばSi、Geなどを例示することができ、特にSiが好ましい。
【0029】
一般式(1)におけるZ、Zの具体例としては、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アリールオキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基または−OSiRaRbRc(ただし、Ra、RbおよびRcは各々独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基を示す)で表される基を示し、これらの基はさらに置換基を有していてもよい。Z、Zは、互いに同一でも相違してもよい。
【0030】
、Zは、中心金属原子Mからフタロシアニン環に対して垂直方向に位置する。なお、ここでいう垂直方向とは、フタロシアニン環に対して同一平面上にないという意味であり、置換基が当該平面に正確に90°に位置することは必須ではない。
【0031】
一般式(1)におけるR〜Rは、水素原子または置換基を表す。置換基の具体例としては、アルキル基、アリール基、アルキルスルホニル基、アルキルスルファモイル基、−SiRaRbRc(ただし、Ra、RbおよびRcは各々独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基を示す)などを例示することがでる。
【0032】
本発明に用いられる一般式(1)で表される化合物は、例えば白井−小林共著、(株)アイピーシー発行「フタロシアニン−化学と機能−」(P.1〜62)、C.C.Leznoff−A.B.P.Lever共著、VCH発行‘Phthalocyanines−Properties and Applications’(P.1〜54)等に記載、引用もしくはこれらに類似の方法を組み合わせて合成することができる。
【0033】
例えば、フタロニトリル誘導体と金属誘導体を反応させることにより製造することができる。あるいは、フタロニトリル誘導体の代わりに、イソインドールジイミン誘導体、フタル酸無水物誘導体、フタルイミド誘導体等を用いても目的物を得ることができる。
【0034】
金属誘導体としては、一般式(1)中の中心金属原子Mを含む誘導体ならば特に限定されない。具体的には、ハロゲン化物、カルボン酸誘導体、アルコール誘導体、硫酸塩、硝酸塩等が挙げられる。合成における金属誘導体とフタロニトリル誘導体等の使用量は、モル比で、1:2〜1:6の範囲とするのが好ましい。
【0035】
合成反応は、適当な溶媒の存在下で行われることが好ましい。このときの溶媒としては、沸点が110℃以上の有機溶媒が好ましく用いられる。例えば、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ニトロベンゼン、キノリン、クロロナフタレン、n−アミルアルコール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、1−オクタノール、2−エチルヘキサノール、ベンジルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エトキシエタノール、プロポキシエタノール、ブトキシエタノール、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、スルフォラン等が挙げられるがこれらに限定されない。合成に使用する溶媒の量はフタロニトリル誘導体等の1〜100質量倍、好ましくは5〜20質量倍とすることができる。
【0036】
更に必要に応じては、尿素あるいはモリブデン酸アンモニウムを添加してもよい。添加量は中間体であるフタロニトリル誘導体等1モルに対して、0.1〜10倍モル、好ましくは0.5〜2倍モルとすることができる。
【0037】
反応温度は、80〜300℃、好ましくは110〜230℃である。80℃未満では反応が極端に遅くなる場合があり、また、300℃を超えると目的物の分解が起る場合がある。反応時間は、2〜20時間、好ましくは5〜15時間とすることができる。2時間未満では、未反応原料が多く存在し、20時間を超えると目的物の分解が起る場合がある。
【0038】
一般式(1)で表される化合物は、その合成時において不可避的に置換基Rn(一般式(1)においては、R〜R)の置換位置異性体を含む場合があるが、これら置換位置異性体は互いに区別することなく同一化合物として見なす。
【0039】
以下に、一般式(1)で表される化合物の具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
【0040】
【化3】

【0041】
【化4】

【0042】
【化5】

【0043】
【化6】

【0044】
しかしながら、上記の方法で一般式(1)の化合物を合成した場合、通常、該化合物の顔料の強度比率Tが本発明の範囲内に入らず、本発明の目的を達成することができないため、結晶変換処理が必要となる。
【0045】
〈結晶変換処理〉
結晶変換処理としては、従来公知の技術を用いることができ、特に制限はない。例えばソルベントミリング、ソルベントソルトミリング、再沈法、乾式ジェットミルなどが挙げられるが、特にソルベントソルトミリングが望ましい。
【0046】
ソルベントソルトミリング法とは、粗顔料と無機塩と有機溶剤とを混練摩砕することを意味する。具体的には、粗顔料と、無機塩と、それを溶解しない有機溶剤とを混練機に仕込み、その中で混練摩砕を行う。この際の混練機としては、例えばニーダー、アトミックス、ミックスマーラー等が使用できる。
【0047】
上記無機塩としては、水溶性無機塩が好適に使用でき、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩を用いることが好ましい。また、平均粒子径0.5〜50μmの無機塩を用いることがより好ましい。この様な無機塩は、通常の無機塩を微粉砕することにより容易に得られる。
【0048】
当該無機塩の使用量は、粗顔料1質量部に対して1〜20質量部とするのが好ましく、5〜15質量部とするのがより好ましい。
【0049】
有機溶剤としては、結晶成長を抑制し得る有機溶剤としての水溶性有機溶剤が好適に使用でき、例えばジエチレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングルコール、液体ポリプロピレングリコール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、2−(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングルコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール等を用いることができる。
【0050】
当該水溶性有機溶剤の使用量は、特に限定されるものではないが、粗顔料1質量部に対して0.01〜5質量部が好ましい。
【0051】
強度化率Tを本発明の範囲内にするためには、ソルベントソルトミリング時の温度が非常に重要となる。
【0052】
ソルベントソルトミリング時の温度は、80〜150℃が好ましく、110〜140℃がより好ましい。80℃未満では、結晶変換を促進することができず、強度化率Tを本発明の範囲内にすることはできない。ソルベントソルトミリングの時間は、2時間〜20時間が好ましく、8〜15時間がより好ましい。
【0053】
こうして、微細顔料、無機塩、有機溶剤を主成分として含む混合物が得られるが、この混合物から有機溶剤と無機塩を除去し、必要に応じて顔料を主体とする固形物を洗浄、濾過、乾燥、粉砕等をすることにより、顔料を得ることが出来る。洗浄としては、水洗、湯洗のいずれも採用できる。洗浄回数は、1〜5回の範囲で繰り返すことも出来る。水溶性無機塩及び水溶性有機溶剤を用いた前記混合物の場合は、水洗することで容易に有機溶剤と無機塩を除去することが出来る。
【0054】
上記した濾別、洗浄後の乾燥としては、例えば、乾燥機に設置した加熱源による80〜120℃の加熱等により、顔料の脱水及び/又は脱溶剤をする回分式あるいは連続式の乾燥等が挙げられ、乾燥機としては一般に箱型乾燥機、バンド乾燥機、スプレードライヤー等がある。また、乾燥後の粉砕は、比表面積を大きくしたり一次粒子の平均粒子径を小さくするための操作ではなく、例えば箱型乾燥機、バンド乾燥機を用いた乾燥の場合のように顔料がランプ状等のとなった際に顔料を解して粉末化するために行うものであり、例えば、乳鉢、ハンマーミル、ディスクミル、ピンミル、ジェットミル等による粉砕等が挙げられる。
【0055】
再沈法とは、粗顔料を良溶媒に溶解した粗顔料溶液と、前記良溶媒に対しては相溶性を有し、粗顔料に対しては貧溶媒となる溶媒とを混合することにより、微細顔料を析出生成させる方法である。なお、上記貧溶媒と良溶媒の組み合わせは粗顔料の溶解度に十分な差があることが必要であり、材料に合わせて好ましいものを選択する必要があるが、この工程を可能にする組み合わせであればいかなる選択も可能である。
【0056】
良溶媒としては、例えば、水性溶媒(例えば、水、または塩酸、水酸化ナトリウム水溶液)、アルコール化合物溶媒、アミド化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、芳香族化合物溶媒、二硫化炭素溶媒、脂肪族化合物溶媒、ニトリル化合物溶媒、スルホキシド化合物溶媒、ハロゲン化合物溶媒、エステル化合物溶媒、イオン性液体、これらの混合溶媒などが挙げられ、水性溶媒、アルコール化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、スルホキシド化合物溶媒、エステル化合物溶媒、アミド化合物溶媒、またはこれらの混合物が好ましい。
【0057】
貧溶媒としては、例えば、水性溶媒(例えば、水、または塩酸、水酸化ナトリウム水溶液)、アルコール化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、芳香族化合物溶媒、二硫化炭素溶媒、脂肪族化合物溶媒、ニトリル化合物溶媒、ハロゲン化合物溶媒、エステル化合物溶媒、イオン性液体、これらの混合溶媒などが挙げられ、水性溶媒、アルコール化合物溶媒、ケトン化合物溶媒、エーテル化合物溶媒、エステル化合物溶媒、またはこれらの混合物が好ましい。
【0058】
微細顔料を析出生成させる際の貧溶媒の条件に特に制限はなく、常圧から亜臨界、超臨界条件の範囲を選択できる。常圧での温度は−30〜100℃が好ましく、−10〜60℃がより好ましく、0〜30℃が特に好ましい。粗顔料溶液の粘度は0.5〜80.0mPa・sであることが好ましく1.0〜50.0mPa・sであることがより好ましい。
【0059】
粗顔料溶液と貧溶媒とを混合する際、両者のどちらを添加して混合してもよいが、粗顔料溶液を貧溶媒に噴流して混合することが好ましく、その際に貧溶媒が撹拌された状態であることが好ましい。撹拌速度は100〜10000rpmが好ましく150〜8000rpmがより好ましく、200〜6000rpmが特に好ましい。添加にはポンプ等を用いることもできるし、用いなくてもよい。また、液中添加でも液外添加でもよいが、液中添加がより好ましい。本発明では供給管を介して、ポンプで液中に連続供給することが好ましい。供給管の内径は0.1〜200mmが好ましく0.2〜100mmがより好ましい。供給管から液中に供給される速度としては1〜10000ml/minが好ましく、5〜5000ml/minがより好ましい。
【0060】
良溶媒と貧溶媒の混合比は体積比で1/50〜2/3が好ましく、1/40〜1/2がより好ましく、1/20〜3/8が特に好ましい。
【0061】
良溶媒に対する粗顔料の濃度は特に制限されないが、良溶媒1000mlに対して粗顔料が10〜40000mgの範囲であることが好ましく、より好ましくは20〜30000mgの範囲であり、特に好ましくは50〜25000mgの範囲である。
【0062】
また、微細顔料を生成させる際の調製スケールは、特に限定されないが、貧溶媒の混合量が10〜2000Lの調製スケールであることが好ましく、50〜1000Lの調製スケールであることがより好ましい。
【0063】
〈顔料粒子の一次粒径〉
また、分散性向上のためには、一次粒径が小さいことが好ましい。本発明において規定した顔料の一次粒径D(nm)は、下記のようにして求めた値である。顔料分散体を純水により適宜希釈した後、透過型電子顕微鏡や走査型電子顕微鏡を用いて観察した顔料の粒子を形成する最小単位の粒子径について、必要に応じて画像処理を行い、100点以上を測定した一次粒径の平均値である。より詳細には、ひとつの一次粒子について短軸径B(nm)及び長軸径L(nm)をそれぞれ測定し、(B+L)/2の値を該一次粒子の一次粒径とし、このような方法によって求められた100点以上の平均値を一次粒径とした。なお、上述の通り、ひとつの一次粒子で形成される顔料粒子の場合は、その粒子径が一次粒径となる。後述する実施例においては、走査型電子顕微鏡として、日立超高性能分析走査電子顕微鏡SU−70(日立ハイテクノロジーズ製)を用いて観察を行い、一次粒径Dの測定を行った。分散性を向上させるためには、一次粒径Dは10〜200nmであることが好ましい。特に好ましくは、10〜100nmである。
【0064】
〈着色剤分散液〉
上記着色剤分散液とは、顔料又は染料(これら着色剤や染料を、以後着色剤ともいう)を水溶媒中に分散した混合物を表す。
【0065】
着色剤分散液中の顔料の含有量は、5〜70%が好ましい。より好ましくは10〜60%である。含有量が高いほど、生産性が向上し好ましいが、高すぎると粘度が高まり、十分な分散が行えなくなる。
【0066】
また、分散時には必要に応じて、界面活性剤を添加することができる。市販のアニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、金属アルコキシドなどを好ましく用いることができる。着色剤分散液中の界面活性剤の量は、0〜20%が好ましい。
【0067】
着色剤分散液の製造方法に特に制限はなく、一般的な湿式分散機を用いればよい。湿式分散機としては、例えば、ボールミル、振動ミル、遊星ボールミル、ビーズミル、湿式ジェットミルなどが挙げられ、特にビーズミルが好ましい。
【0068】
ビーズミルとは、容器の中へビーズを充填しておき、アジテータディスクもしくはピンを回転させることによりビーズに動きを与えるとともに、ここに原料を送り込み、ビーズで摺りつぶすことにより粉砕、分散を行うものである。ビーズミルは従来公知のものを使用できるが、例えば、アジテータミル LMZ(商品名、アシザワ(株)製)、SUPER APEX MILL(商品名、コトブキ技研工業(株)製)を好適に使用することができる。使用するビーズとしては、金属、ガラス、セラミック等を好適に使用することが出来る。特にセラミックの使用が好ましい。使用するビーズのビーズ径は、好ましくは0.05〜1mmであり、さらに好ましくは0.1〜0.5mmである。粒子径が大きすぎると分散効率の低下やスラリー中の粒子を破壊し、粘度上昇を招く可能性があり、小さすぎると衝撃力がなくなり分散効率が低下してしまう可能性がある。
【0069】
湿式ジェットミルとは、任意の方法で高速流を発生させ、液体同士または流体と流路壁との衝突を起こさせると共に、高速流によって生じる乱流・剪断及びキャビテーション効果などを有効に活用し、被処理物質を微粒化して乳化・分散を促進する機能を備えた装置を総称するもので、この様な湿式ジェットミルとしては高圧ホモジナイザーがあり、具体的には、プランジャーポンプやロータリーポンプ等によって被処理液をノズルから噴射させ、固定板に高速で衝突させる方式と、噴射される被処理液同士を正面から衝突させる方式がある。そして被処理液が流路内を高速で通過し或いは衝突しながら通過する際に乱流・剪断を受け、被処理流体中に含まれる分散質は破砕されると共に、衝突直後に減圧解放されるときにキャビテーション効果が生じ、急激な放圧による衝撃を受けて分散質内部からの破砕が起こり、被処理液中の分散質は著しく微粒化される。
【0070】
この様な湿式ジェットミルとしては、「高圧ホモジナイザー」として市販されているバルププレートによる高速噴射を利用したタイプ(APVゴーリン社製、ラニー社製、ソアビ社製、日本精機社製など)、スリット状に形成した流路内で高速衝突させるタイプ(「マイクロフルイダイザー」マイクロフルイディクス社製)、90°位相させて連通せしめた夫々一文字の流路内で高速衝突を起こさせるタイプ(「ナノマイザー」ナノマイザー社製)、同一ノズル内で流体同士の衝突回数を複数回発生させるタイプ(「ナノメーカー」エスジー・エンジニアリング社製)、偏平流路素子内で流体同士を衝突させるタイプ(「アクア」アクアテック社製)、或いは、対向するオリフィスから非球面構造の部屋へ噴出させて衝突させるタイプ(「アルティマイザー」スギノマシン社製)などが挙げられる。
【0071】
着色剤分散液の分散性評価は、上記分散機を用いて、一定時間内に分散処理を行った際の粒子径分布の50%累積値D50(nm)により行える。このようなD50は、例えば、動的光散乱方式の粒度分布測定装置を用いて測定することができる。勿論、本発明はこれに限られるものではない。後述する実施例においては、動的光散乱方式の粒度分布測定装置として、ナノトラックUPA150EX(日機装製)を用いてD50の測定を行った。
【0072】
(シアン着色剤分散液)
シアン着色剤分散液は、一般式(1)で表される化合物の顔料を含有することを特徴とする。
【0073】
色調調整等の目的で、従来公知の顔料、染料を更に併用してもよい。以下に限定されるものではないが、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0074】
(イエロー着色剤分散液)
イエロートナーを構成するイエロー着色剤分散液としては、従来公知の顔料、染料を用いることができ、所望に応じて単独または複数を選択併用する事が可能である。
【0075】
以下に具体例を挙げるが、限定されるものではない。顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー156、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185、等が挙げられる。染料としては、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162等が挙げられる。
【0076】
(マゼンタ着色剤分散液)
マゼンタトナーを構成するマゼンタ着色剤分散液としては、従来公知の顔料、染料を用いることができ、所望に応じて単独または複数を選択併用する事が可能である。
【0077】
以下に具体例を挙げるが、限定されるものではない。顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222等が挙げられる。染料としては、C.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122等が挙げられる。その他、フェノール、ナフトール類、ピラゾロン、ピラゾロトリアゾールなどの環状メチレン化合物、開鎖メチレン化合物などのカプラーから誘導されるアゾメチン色素、インドアニリン色素なども好ましく用いられる。
【0078】
(ブラック着色剤分散液)
ブラックトナーを構成するブラック着色剤分散液としては、従来公知の顔料、染料を用いることができる。
【0079】
以下に具体例を挙げるが、限定されるものではない。顔料としては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラック、更にマグネタイト、フェライト等の磁性粉も用いられる。
【0080】
これらの無機顔料は所望に応じて単独または複数を選択併用する事が可能である。また顔料の添加量はブラックトナー全体に対して2〜20質量%であり、好ましくは3〜15質量%が選択される。
【0081】
磁性トナーとして使用する際には、前述のマグネタイトを添加することができる。この場合には所定の磁気特性を付与する観点から、トナー中に20〜60質量%添加することが好ましい。
【0082】
(表面改質剤)
本発明に係るトナーを構成する着色剤(顔料や染料をいう)は、表面改質されていてもよい。表面改質剤としては、従来公知のものを使用することができ、具体的にはシランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤等を好ましく用いることができる。シランカップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等のアルコキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン等のシロキサン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。チタンカップリング剤としては、例えば、味の素社製の「プレンアクト」と称する商品名で市販されているTTS、9S、38S、41B、46B、55、138S、238S等、日本曹達社製の市販品A−1、B−1、TOT、TST、TAA、TAT、TLA、TOG、TBSTA、A−10、TBT、B−2、B−4、B−7、B−10、TBSTA−400、TTS、TOA−30、TSDMA、TTAB、TTOP等が挙げられる。アルミニウムカップリング剤としては、例えば、味の素社製の「プレンアクトAL−M」等が挙げられる。
【0083】
これらの表面改質剤の添加量は、着色剤に対して0.01〜20質量%であることが好ましく、更に好ましくは0.1〜5質量%とされる。
【0084】
着色剤粒子の表面改質法としては、着色剤粒子の分散液中に表面改質剤を添加し、この系を加熱して反応させる方法を挙げることができる。
【0085】
表面改質された着色剤粒子は、濾過により採取され、同一の溶媒による洗浄処理と濾過処理が繰り返された後、乾燥処理される。
【0086】
(シラノール化合物)
本発明で用いられるトナー中にはシラノール化合物を含有していることが好ましい。
【0087】
シラノール化合物の例としては特開2009−265227号の[化12]、[化13]で挙げられる化合物が好ましい。
【0088】
本発明のシラノール化合物電子写真用トナーにおける使用量、添加方法、定量方法についても同様である。
【0089】
本発明に係る有機シラノール化合物は、当該分野の知識を有するものが、公知の方法に従って容易に合成し得ることができ、また市販品として入手することもできる。例えば特開昭63−22759号公報、同63−316789号、同63−5093号、特開平3−157388号、同平6−256355号、同平8−143581号、同2002−20390号などが参考文献として挙げられる。
【0090】
上記のシラノール化合物の含有量は、特に限定はないが静電荷像現像用トナーに対し、好ましくは100〜500ppmであり、更に好ましくは100〜350ppmである。本発明に係る有機シラノール化合物の含有量が100ppm以上とすることにより、本発明の目的効果を発揮することができ、また500ppm以下とすることにより、静電荷像現像用トナーが柔らかくなりすぎず、トナー保存性の劣化や定着率の低下、あるいは臭気が問題にならないので好ましい。
【0091】
上記のシラノール化合物の製造工程における添加量は、トナーに対して100〜350ppmであることが好ましく、添加量をこの範囲とすることにより、トナー中の離型剤(ワックス)の分散性向上に効果を発揮することができ、かつ減圧乾燥後のトナー中での有機シラノール化合物の残留量を、本発明で規定する範囲に設定することができるが、これに限定されない。
【0092】
上記のシラノール化合物の静電荷像現像用トナーへの添加方法としては例えば下記の重合性単量体を水系媒体中で重合して樹脂を製造する工程を含む重合法トナーの場合には、シラノール化合物を前記着色剤分散液の調製時に添加する方法が好ましいが、その他に樹脂粒子調製時に重合性単量体に添加する方法も挙げられる。重合法トナーの製法が、下記の多段重合法である場合には、離型剤の添加と同時に添加する方法も挙げられる。
【0093】
本発明において、有機シラノール化合物の定量方法は、ヘッドスペース方式のガスクロマトグラフにより、内部標準法等の通常のガスクロマトグラフで使用される検出方法を使用して測定する。この方法は、トナーを開閉容器中に封入し、複写機等の熱定着時程度に加温し、容器中に揮発成分が充満した状態で速やかに容器中のガスをガスクロマトグラフに注入して揮発成分量を測定するとともに、MS(質量分析)も行うものである。
【0094】
以下に、ヘッドスペースガスクロマトグラフによる測定法を詳細に説明する。
【0095】
〈ヘッドスペースガスクロマトグラフ測定方法〉
1.試料の採取
20mlヘッドスペース用バイアルに0.8gの試料を採取する。試料量は、0.01gまで秤量する(単位質量あたりの面積を算出するのに必要)。専用クリンパーを用いてバイアルをセプタムを用いてシールする。
2.試料の加温
170℃の恒温槽に試料を立てた状態で入れ、30分間加温する。
3.ガスクロマトグラフ分離条件の設定
質量比で15%になるようにシリコンオイルSE−30でコーティングした担体を内径3mm、長さ3mのカラムに充填したものを分離カラムとして用いる。該分離カラムをガスクロマトグラフに装着し、Heをキャリアとして、50ml/分で流す。分離カラムの温度を40℃にし、15℃/分で260℃まで昇温させながら測定する。260℃到達後5分間保持する。
4.試料の導入
バイアルビンを恒温槽から取り出し、直ちにガスタイトシリンジで試料から発生したガス1mlを採取し、これを上記分離カラムに注入する。
5.計算
内部基準物質として使用した有機シラノール化合物により、予め検量線を作製し、それぞれ各成分の濃度を求める。
6.機材
(1)ヘッドスペース条件
ヘッドスペース装置
ヒューレットパッカード社製HP7694「Head Space Sampler」
温度条件
トランスファーライン:200℃
ループ温度:200℃
サンプル量:0.8g/20mlバイアル
(2)GC/MS条件
GC:ヒューレットパッカード社製HP5890
MS:ヒューレットパッカード社製HP5971
カラム:HP−624 30m×0.25mm
オーブン温度:40℃(3min)−15℃/min−260℃
測定モード:SIM
(画像安定化剤)
着色剤の保存性を向上させるために画像安定化剤として例えば特開平8−29934号公報の10〜13頁に記載及び引用されている化合物を添加してもよく、市販されているフェノール系、アミン系、硫黄系、リン系の化合物なども挙げられる。同様の目的で紫外線吸収剤として例えば有機系紫外線吸収剤や無機系紫外線吸収剤を添加してもよい。有機系紫外線吸収剤としては、2−(2′−ヒドロキシ−5′−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系化合物、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物、フェニルサルシレート、4−t−ブチルフェニルサルシレート、2,5−t−ブチル−4−ヒドロキシ安息香酸n−ヘキサデシルエステル、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシベンゾエート等のヒドロキシベンゾエート系化合物等を挙げられる。無機系紫外線吸収剤としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化鉄、硫酸バリウム等を挙げることが出来るが、有機系紫外線吸収剤の方が好ましく、紫外線吸収剤としては、50%透過率での波長が350〜420nmが好ましく、より好ましくは360nm〜400nmであり、350nmより低波長では、紫外線遮断能が弱く、420nmより高波長では着色が強くなり好ましくない。添加量については特に制限はないが、色素に対して10〜200質量%の範囲が好ましく、50〜150質量%がより好ましい。また、これらを併用して用いることも好ましい。
【0096】
〈トナーの製造方法〉
本発明のトナーの製造方法は、特に限定されるものではない。混練、粉砕、分級工程を経てトナーを作製する粉砕法や重合性単量体を重合させ、同時に、形状や大きさを制御しながら粒子形成を行う重合法などにより作製することが可能であるが、より好ましくは、重合法である。この製造方法は、重合性単量体を懸濁重合法により重合して樹脂粒子を調製し、あるいは、必要な添加剤の乳化液を加えた液中(水系媒体中)にて単量体を乳化重合、あるいはミニエマルジョン重合を行って微粒の樹脂粒子を調製し、必要に応じて荷電制御性樹脂粒子を添加した後、有機溶媒、塩類などの凝集剤等を添加して当該樹脂粒子を凝集、融着する方法で製造するものである。
【0097】
〈懸濁重合法〉
本発明のトナーを製造する方法の一例としては、重合性単量体中に荷電制御性樹脂を溶解させ、着色剤や必要に応じて離型剤、さらに重合開始剤等の各種構成材料を添加し、ホモジナイザー、サンドミル、サンドグラインダー、超音波分散機などで重合性単量体に各種構成材料を溶解あるいは分散させる。この各種構成材料が溶解あるいは分散された重合性単量体を分散安定剤を含有した水系媒体中にホモミキサーやホモジナイザーなどを使用しトナーとしての所望の大きさの油滴に分散させる。その後、攪拌機構が後述の攪拌翼である反応装置(攪拌装置)へ移し、加熱することで重合反応を進行させる。反応終了後、分散安定剤を除去し、濾過、洗浄し、さらに乾燥することで本発明のトナーを調製する。なお、本発明でいうところの「水系媒体」とは、少なくとも水が50質量%以上含有されたものを示す。
【0098】
〈乳化重合法〉
本発明のトナーを製造する方法として樹脂粒子を水系媒体中で塩析/融着させて調製する方法が好ましい。この方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、特開平5−265252号、同6−329947号、同9−15904号に示す方法等を挙げることができる。すなわち、樹脂粒子と着色剤などの構成材料の分散粒子、あるいは樹脂および着色剤等より構成される微粒子を複数以上塩析、凝集、融着させる方法、特に水中に、これらを乳化剤を用いて分散した後に、臨界凝集濃度以上の凝集剤を加え塩析させると同時に、形成された重合体自体のガラス転移点温度以上で加熱融着させて融着粒子を形成しつつ徐々に粒径を成長させ、目的の粒径となったところで水を多量に加えて粒径成長を停止し、さらに加熱、攪拌しながら粒子表面を平滑にして形状を制御し、その粒子を含水状態のまま流動状態で加熱乾燥することにより、本発明のトナーを形成することができる。なお、ここにおいて凝集剤と同時にアルコールなど水に対して無限溶解する溶媒を加えてもよい。
【0099】
本発明のトナーの製造方法においては、重合性単量体に結晶性物質を溶かした後、重合性単量体を重合させる工程を経て形成した複合樹脂微粒子と着色剤粒子とを塩析/融着させる方法が好ましく用いられる。重合性単量体に結晶性物質を溶かすとき、結晶性物質を溶解させて溶かしても、溶融して溶かしてもよい。
【0100】
また、本発明のトナーの製造方法としては、多段重合法によって得られる複合樹脂微粒子と着色剤粒子とを塩析/融着させる工程が好ましく用いられる。ここで、多段重合法について以下に説明する。
【0101】
(多段重合法により得られる複合樹脂粒子の製造方法)
多段重合法を用いる場合、本発明のトナーの製造方法は、以下に示す工程より構成されることが好ましい。
1:多段重合工程
2:複合樹脂粒子と着色剤粒子とを塩析/融着させてトナー粒子を得る塩析/融着工程
3:トナー粒子の分散系から当該トナー粒子を濾別し、当該トナー粒子から界面活性剤などを除去する濾過・洗浄工程
4:洗浄処理されたトナー粒子を乾燥する乾燥工程
5:乾燥処理されたトナー粒子に外添剤を添加する工程
から構成される。
【0102】
以下、各工程について、詳細に説明する。
【0103】
〔多段重合工程〕
多段重合工程とは、オフセット発生防止したトナーを得るべく樹脂粒子の分子量分布を拡大させるために行う重合方法である。すなわち、1つの樹脂粒子において異なる分子量分布を有する相を形成するために重合反応を多段階に分けて行うものであって、得られた樹脂粒子がその粒子の中心より表層に向かって分子量勾配を形成させる様に意図して行うものである。例えば、はじめに高分子量の樹脂粒子分散液を得た後、新たに重合性単量体と連鎖移動剤を加えることによって低分子量の表層を形成する方法が採られている。
【0104】
本発明においては、製造の安定性および得られるトナーの破砕強度の観点から三段重合以上の多段重合法を採用することが好ましい。以下に、多段重合法の代表例である二段重合法および三段重合法について説明する。この様な多段階重合反応によって得られたトナーでは破砕強度の観点から表層程低分子量のものが好ましい。
【0105】
〈二段重合法〉
二段重合法は、結晶性物質を含有する高分子量樹脂から形成される中心部(核)と、低分子量樹脂から形成される外層(殻)とにより構成される複合樹脂粒子を製造する方法である。
【0106】
この方法を具体的に説明すると、先ず、結晶性物質を単量体に溶解させて単量体溶液を調製し、この単量体溶液を水系媒体(例えば、界面活性剤水溶液)中に油滴分散させた後、この系を重合処理(第一段重合)することにより、結晶性物質を含む高分子量の樹脂粒子の分散液を調製するものである。
【0107】
次いで、この樹脂粒子の分散液に、重合開始剤と低分子量樹脂を得るための単量体とを添加し、樹脂粒子の存在下で単量体を重合処理(第二段重合)を行うことにより、樹脂粒子の表面に、低分子量の樹脂(単量体の重合体)からなる被覆層を形成する方法である。
【0108】
〈三段重合法〉
三段重合法は、高分子量樹脂から形成される中心部(核)、結晶性物質を含有する中間層及び低分子量樹脂から形成される外層(殻)とにより構成される複合樹脂粒子を製造する方法である。本発明のトナーでは上記の様な複合樹脂粒子として存在するものである。
【0109】
この方法を具体的に説明すると、先ず、常法に従った重合処理(第一段重合)により得られた樹脂粒子の分散液を、水系媒体(例えば、界面活性剤の水溶液)に添加するとともに、上記水系媒体中に、結晶性物質を単量体に溶解させてなる単量体溶液を油滴分散させた後、この系を重合処理(第二段重合)することにより、樹脂粒子(核粒子)の表面に、結晶性物質を含有する樹脂(単量体の重合体)からなる被覆層(中間層)を形成して、複合樹脂粒子(高分子量樹脂−中間分子量樹脂)の分散液を調製する。
【0110】
次いで、得られた複合樹脂粒子の分散液に、重合開始剤と低分子量樹脂を得るための単量体とを添加し、複合樹脂粒子の存在下で単量体を重合処理(第三段重合)することにより、複合樹脂粒子の表面に、低分子量の樹脂(単量体の重合体)からなる被覆層を形成する。上記方法において、中間層を組み入れることにより、結晶性物質を微細かつ均一に分散することができ好ましい。
【0111】
本発明のトナーの製造方法の1態様においては、重合性単量体を水系媒体中で重合することが1つの特徴である。すなわち、結晶性物質を含有する樹脂粒子(核粒子)または被覆層(中間層)を形成する際に、結晶性物質を単量体に溶解させ、得られる単量体溶液を水系媒体中で油滴分散させ、この系に重合開始剤を添加して重合処理することにより、ラテックス粒子として得る方法である。
【0112】
本発明に用いられる水系媒体とは、水50質量%〜100質量%と水溶性の有機溶媒0〜50質量%とからなる媒体をいう。水溶性の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等を例示することができ、得られる樹脂を溶解しないアルコール系有機溶媒が好ましい。
【0113】
結晶性物質を含有する樹脂粒子または被覆層を形成するために好適な重合法としては、臨界ミセル濃度以下の濃度の界面活性剤を溶解してなる水系媒体中に、結晶性物質を単量体に溶解した単量体溶液を、機械的エネルギーを利用して油滴分散させて分散液を調製し、得られた分散液に水溶性重合開始剤を添加して、油滴内でラジカル重合させる方法(以下、本発明では「ミニエマルジョン法」という。)を挙げることができ、本発明の効果をより発揮することができ好ましい。なお、上記方法において、水溶性重合開始剤に代えて、あるいは水溶性重合開始剤と共に、油溶性重合開始剤を用いても良い。
【0114】
機械的に油滴を形成するミニエマルジョン法によれば、通常の乳化重合法とは異なり、油相に溶解させた結晶性物質の脱離が少なく、形成される樹脂粒子または被覆層内に十分な量の結晶性物質を導入することができる。
【0115】
ここで、機械的エネルギーによる油滴分散を行うための分散機としては、特に限定されるものではなく、例えば、高速回転するロータを備えた攪拌装置「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)、超音波分散機、機械式ホモジナイザー、マントンゴーリンおよび圧力式ホモジナイザーなどを挙げることができる。また、分散粒子径としては、10nm〜1000nmが好ましく、更に好ましくは50nm〜1000nmであり、特に好ましくは30nm〜300nmである。
【0116】
分散粒子径に分布を持たせることで、トナー粒子中における結晶性物質の相分離構造、すなわちフェレ水平径、形状係数及びこれらの変動係数を制御してもよい。
【0117】
なお、結晶性物質を含有する樹脂粒子または被覆層を形成するための他の重合法として、乳化重合法、懸濁重合法、シード重合法などの公知の方法を採用することもできる。また、これらの重合法は、複合樹脂粒子を構成する樹脂粒子(核粒子)または被覆層であって、結晶性物質を含有しないものを得るためにも採用することができる。
【0118】
この重合工程で得られる複合樹脂粒子の粒子径は、電気泳動光散乱光度計「ELS−800」(大塚電子社製)を用いて測定される質量平均粒径で10〜1000nmの範囲にあることが好ましい。
【0119】
また、複合樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)は48℃〜74℃の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは52℃〜64℃である。
【0120】
また、複合樹脂粒子の軟化点は95℃〜140℃の範囲が好ましい。
【0121】
本発明のトナーは、樹脂および着色粒子の表面に、塩析/融着法によって樹脂粒子を融着させて樹脂層を形成させて得られるものであるが、このことについて以下に説明する。
【0122】
〔塩析/融着工程〕
この塩析/融着工程は、前記多段重合工程によって得られた複合樹脂粒子と着色剤粒子とを塩析/融着させる(塩析と融着とを同時に起こさせ、樹脂中に顔料を分散、含有させる)ことによって、不定形(非球形)のトナー粒子を得る工程である。
【0123】
本発明において、塩析/融着とは、塩析(粒子の凝集)と融着(粒子間の界面消失)とが同時に起こること、または、塩析と融着とを同時に起こさせる行為をいう。塩析と融着とを同時に行わせるためには、複合樹脂粒子を構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)以上の温度条件下において粒子(複合樹脂粒子、着色剤粒子)を凝集させることが好ましい。
【0124】
この塩析/融着工程では、複合樹脂粒子および着色剤粒子とともに、荷電制御剤などの内添剤粒子(数平均一次粒子径が10nm〜1000nm程度の微粒子)を塩析/融着させてもよい。また、着色剤粒子は、表面改質されていてもよく、表面改質剤としては、従来公知のものを使用することができる。
【0125】
〔熟成工程〕
熟成工程は、塩析/融着工程に後続する工程であり、樹脂粒子の融着後も温度を結晶性物質の融点近傍、好ましくは融点±20℃に保ち、一定の強度で攪拌を継続することにより、結晶性物質を相分離させる工程である。この工程において結晶性物質のフェレ水平径、形状係数及びこれらの変動係数を制御することが可能である。
【0126】
また、本発明においては、凝集剤に用いる2価(3価)の金属元素と後述する凝集停止剤として加える1価の金属元素の合計値が350〜35000ppmであることが好ましい。トナー中の金属イオン残存量の測定は、蛍光X線分析装置「システム3270型」〔理学電気工業(株)製〕を用いて、凝集剤として用いられる金属塩の金属種(例えば、塩化カルシウムに由来するカルシウム等)から発する蛍光X線強度を測定することによって求めることができる。具体的な測定法としては、凝集剤金属塩の含有割合が既知のトナーを複数用意し、各トナー5gをペレット化し、凝集剤金属塩の含有割合(質量ppm)と、当該金属塩の金属種からの蛍光X線強度(ピーク強度)との関係(検量線)を測定する。次いで、凝集剤金属塩の含有割合を測定すべきトナー(試料)を同様にペレット化し、凝集剤金属塩の金属種からの蛍光X線強度を測定し、含有割合すなわち「トナー中の金属イオン残存量」を求めることができる。
【0127】
〔濾過・洗浄工程〕
この濾過・洗浄工程では、上記の工程で得られたトナー粒子の分散系から当該トナー粒子を濾別する濾過処理と、濾別されたトナー粒子(ケーキ状の集合物)から界面活性剤や塩析剤などの付着物を除去する洗浄処理とが施される。ここに、濾過処理方法としては、遠心分離法、ヌッチェ等を使用して行う減圧濾過法、フィルタープレス等を使用して行う濾過法など特に限定されるものではない。
【0128】
〔乾燥工程〕
この工程は、洗浄処理されたトナー粒子を乾燥処理する工程であるが、本発明においては、減圧乾燥処理する工程であることが好ましい。
【0129】
この工程で使用される減圧乾燥機としては、例えば、減圧スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機などを挙げることができるがこれらに限定されるものではない。具体的には、減圧可能な静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機或いは攪拌式乾燥機などを使用することが好ましい。
【0130】
減圧乾燥時の条件は、乾燥温度がトナーに用いた樹脂のTg以下であればよく、減圧度、乾燥時間等は特に限定されず、適宜設定することができる。
【0131】
なお、減圧乾燥処理されたトナー粒子同士が、弱い粒子間引力で凝集している場合には、当該凝集体を解砕処理してもよい。ここに、解砕処理装置としては、ジェットミル、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル、フードプロセッサー等の機械式の解砕装置を使用することができる。
【0132】
本発明のトナーは、着色剤の不存在下において複合樹脂粒子を形成し、当該複合樹脂粒子の分散液に着色剤粒子の分散液を加え、当該複合樹脂粒子と着色剤粒子とを塩析/融着させることにより調製されることが好ましい。
【0133】
このように、複合樹脂粒子の調製を着色剤の存在しない系で行うことにより、複合樹脂粒子を得るための重合反応が阻害されることない。このため、本発明のトナーによれば、優れた耐オフセット性が損なわれることはなく、トナーの蓄積による定着装置の汚染や画像汚れを発生させることはない。
【0134】
また、複合樹脂粒子を得るための重合反応が確実に行われる結果、得られるトナー粒子中に単量体やオリゴマーが残留するようなことはなく、当該トナーを使用する画像形成方法の熱定着工程において、異臭を発生させることはない。
【0135】
更に、得られるトナー粒子の表面特性は均質であり、帯電量分布もシャープとなるため、鮮鋭性に優れた画像を長期にわたり形成することができる。このようなトナー粒子間における組成・分子量・表面特性が均質であるトナーによれば、接触加熱方式による定着工程を含む画像形成方法において、画像支持体に対する良好な接着性(高い定着強度)を維持しながら、耐オフセット性および巻き付き防止特性の向上を図ることができ、適度の光沢を有する画像が得られる。
【0136】
次に、トナー製造工程で用いられる各構成因子について、詳細に説明する。
【0137】
(重合性単量体)
本発明に用いられる樹脂(バインダー)を造るための重合性単量体としては、疎水性単量体を必須の構成成分とし、必要に応じて架橋性単量体が用いられる。また、下記するごとく酸性極性基を有する単量体又は塩基性極性基を有するモノマーを少なくとも1種類含有するのが望ましい。
【0138】
(1)疎水性単量体
単量体成分を構成する疎水性単量体としては、特に限定されるものではなく従来公知の単量体を用いることができる。また、要求される特性を満たすように、1種または2種以上のものを組み合わせて用いることができる。
【0139】
具体的には、モノビニル芳香族系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、ビニルエステル系単量体、ビニルエーテル系単量体、モノオレフィン系単量体、ジオレフィン系単量体、ハロゲン化オレフィン系単量体等を用いることができる。
【0140】
ビニル芳香族系単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、3,4−ジクロロスチレン等のスチレン系単量体およびその誘導体が挙げられる。
【0141】
アクリル系単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、γ−アミノアクリル酸プロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等が挙げられる。
【0142】
ビニルエステル系単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等が挙げられる。
【0143】
ビニルエーテル系単量体としては、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルフェニルエーテル等が挙げられる。
【0144】
モノオレフィン系単量体としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。
【0145】
ジオレフィン系単量体としては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられる。
【0146】
(2)架橋性単量体
樹脂粒子の特性を改良するために架橋性単量体を添加しても良い。架橋性単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ジビニルエーテル、ジエチレングリコールメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、フタル酸ジアリル等の不飽和結合を2個以上有するものが挙げられる。
【0147】
(3)酸性極性基を有する単量体
酸性極性基を有する単量体としては、(a)カルボキシル基(−COOH)を有するα,β−エチレン性不飽和化合物及び(b)スルホン基(−SOH)を有するα,β−エチレン性不飽和化合物を挙げることができる。
【0148】
(a)の−COO基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物の例としては、アクリル酸、メタアクリル酸、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、マレイン酸モノブチルエステル、マレイン酸モノオクチルエステル、およびこれらのNa、Zn等の金属塩類等を挙げることができる。
【0149】
(b)の−SOH基を有するα,β−エチレン性不飽和化合物の例としてはスルホン化スチレン、そのNa塩、アリルスルホコハク酸、アリルスルホコハク酸オクチル、そのNa塩等を挙げることができる。
【0150】
(4)塩基性極性基を有するモノマー
塩基性極性基を有するモノマーとしては、(i)アミン基或いは4級アンモニウム基を有する炭素原子数1〜12、好ましくは2〜8、特に好ましくは2の脂肪族アルコールの(メタ)アクリル酸エステル、(ii)(メタ)アクリル酸アミド或いは随意N上で炭素原子数1〜18のアルキル基でモノ又はジ置換された(メタ)アクリル酸アミド、(iii)Nを環員として有する複素環基で置換されたビニル化合物及び(iv)N,N−ジアリル−アルキルアミン或いはその四級アンモニウム塩を例示することができる。中でも、(i)のアミン基或いは四級アンモニウム基を有する脂肪族アルコールの(メタ)アクリル酸エステルが塩基性極性基を有するモノマーとして好ましい。
【0151】
(i)のアミン基或いは四級アンモニウム基を有する脂肪族アルコールの(メタ)アクリル酸エステルの例としては、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、上記4化合物の四級アンモニウム塩、3−ジメチルアミノフェニルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロピルトリメチルアンモニウム塩等を挙げることができる。
【0152】
(ii)の(メタ)アクリル酸アミド或いはN上で随意モノ又はジアルキル置換された(メタ)アクリル酸アミドとしては、アクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド、ピペリジルアクリルアミド、メタクリルアミド、N−ブチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−オクタデシルアクリルアミド等を挙げることができる。
【0153】
(iii)のNを環員として有する複素環基で置換されたビニル化合物としては、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニル−N−メチルピリジニウムクロリド、ビニル−N−エチルピリジニウムクロリド等を挙げることができる。
【0154】
(iv)のN,N−ジアリル−アルキルアミンの例としては、N,N−ジアリルメチルアンモニウムクロリド、N,N−ジアリルエチルアンモニウムクロリド等を挙げることができる。
【0155】
(重合開始剤)
本発明に用いられるラジカル重合開始剤は、水溶性であれば適宜使用が可能である。例えば、過硫酸塩(例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等)、アゾ系化合物(例えば、4,4′−アゾビス4−シアノ吉草酸及びその塩、2,2′−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩等)、パーオキシド化合物等が挙げられる。更に、上記ラジカル性重合開始剤は、必要に応じて還元剤と組み合わせレドックス系開始剤とする事が可能である。レドックス系開始剤を用いることにより、重合活性が上昇し、重合温度の低下が図れ、更に重合時間の短縮が達成でき好ましい。
【0156】
重合温度は、重合開始剤の最低ラジカル生成温度以上であればどの温度を選択しても良いが例えば50℃から90℃の範囲が用いられる。但し、常温開始の重合開始剤、例えば過酸化水素−還元剤(アスコルビン酸等)の組み合わせを用いる事で、室温またはそれ以上の温度で重合する事も可能である。
【0157】
(界面活性剤)
前述の重合性単量体を使用して、特にミニエマルジョン重合を行うためには、界面活性剤を使用して水系媒体中に油滴分散を行うことが好ましい。この際に使用することのできる界面活性剤としては、特に限定されるものでは無いが、下記のイオン性界面活性剤を好適な化合物の例として挙げることができる。
【0158】
イオン性界面活性剤としては、例えば、スルホン酸塩(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アリールアルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウム、3,3−ジスルホンジフェニル尿素−4,4−ジアゾ−ビス−アミノ−8−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム、オルト−カルボキシベンゼン−アゾ−ジメチルアニリン、2,2,5,5−テトラメチル−トリフェニルメタン−4,4−ジアゾ−ビス−β−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム等)、硫酸エステル塩(ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム等)、脂肪酸塩(オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム等)が挙げられる。
【0159】
また、ノニオン性界面活性剤も使用することができる。具体的には、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドとポリエチレンオキサイドの組み合わせ、ポリエチレングリコールと高級脂肪酸とのエステル、アルキルフェノールポリエチレンオキサイド、高級脂肪酸とポリエチレングリコールのエステル、高級脂肪酸とポリプロピレンオキサイドのエステル、ソルビタンエステル等をあげることができる。
【0160】
本発明において、これら界面活性剤は、主に乳化重合時の乳化剤として使用されるが、他の工程または他の目的で使用してもよい。
【0161】
(樹脂粒子、トナーの分子量分布)
本発明に係るトナーは、ピークまたは肩が100,000〜1,000,000、および1,000〜50,000に存在することが好ましく、さらにピークまたは肩が100,000〜1,000,000、25,000〜150,000及び1,000〜50,000に存在することがさらに好ましい。
【0162】
樹脂粒子の分子量は、100,000〜1,000,000の領域にピークもしくは肩を有する高分子量成分と、1,000から50,000未満の領域にピークもしくは肩を有する低分子量成分の両成分を少なくとも含有する樹脂が好ましい。さらに好ましくは、ピーク分子量で15,000〜100,000の部分にピーク又は肩を有する中間分子量体の樹脂を使用することが好ましい。
【0163】
トナーあるいは樹脂の分子量測定方法は、THF(テトラヒドロフラン)を溶媒としたGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)による測定がよい。すなわち、測定試料0.5〜5mg、より具体的には1mgに対してTHFを1.0ml加え、室温にてマグネチックスターラーなどを用いて撹拌を行い、充分に溶解させる。ついで、ポアサイズ0.45〜0.50μmのメンブランフィルターで処理した後に、GPCへ注入する。GPCの測定条件は、40℃にてカラムを安定化させ、THFを毎分1.0mlの流速で流し、1mg/mlの濃度の試料を約100μl注入して測定する。カラムは、市販のポリスチレンジェルカラムを組み合わせて使用することが好ましい。例えば、昭和電工社製のShodex GPC KF−801、802、803、804、805、806、807の組合せや、東ソー社製のTSKgelG1000H、G2000H、G3000H、G4000H、G5000H、G6000H、G7000H、TSKguard columnの組合せなどを挙げることができる。又、検出器としては、屈折率検出器(IR検出器)、あるいはUV検出器を用いるとよい。試料の分子量測定では、試料の有する分子量分布を単分散のポリスチレン標準粒子を用いて作成した検量線を用いて算出する。検量線作成用のポリスチレンとしては10点程度用いるとよい。
【0164】
(凝集剤)
本発明で用いられる凝集剤は、金属塩の中から選択されるものが好ましい。
【0165】
金属塩としては、一価の金属、例えばナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属の塩、二価の金属、例えばカルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属の塩、マンガン、銅等の二価の金属塩、鉄、アルミニウム等の三価の金属塩等が挙げられる。
【0166】
これら金属塩の具体的な例を以下に示す。一価の金属の金属塩の具体例として、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、二価の金属の金属塩として塩化カルシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン等が挙げられる。三価の金属塩としては、塩化アルミニウム、塩化鉄等が挙げられる。これらは、目的に応じて適宜選択される。一般的には一価の金属塩より二価の金属塩のほうが臨界凝集濃度(凝析値或いは凝析点)が小さく、更に三価の金属塩の臨界凝集濃度は小さい。
【0167】
本発明で言う臨界凝集濃度とは、水性分散液中の分散物の安定性に関する指標であり、凝集剤を添加し、凝集が起こる点の濃度を示している。この臨界凝集濃度は、ラテックス自身及び分散剤により大きく変化する。例えば、岡村誠三他著高分子化学17,601(1960)等に記述されており、これらの記載に従えば、その値を知ることが出来る。又、別の方法として、目的とする粒子分散液に所望の塩を濃度を変えて添加し、その分散液のζ電位を測定し、ζ電位が変化し出す点の塩濃度を臨界凝集濃度とすることも可能である。
【0168】
本発明では、金属塩を用いて臨界凝集濃度以上の濃度になるように重合体微粒子分散液を処理する。この時、当然の事ながら、金属塩を直接加えるか、水溶液として加えるかは、その目的に応じて任意に選択される。水溶液として加える場合には、重合体粒子分散液の容量と金属塩水溶液の総容量に対し、添加した金属塩が重合体粒子の臨界凝集濃度以上になる必要がある。
【0169】
本発明における凝集剤たる金属塩の濃度は、臨界凝集濃度以上であれば良いが、好ましくは臨界凝集濃度の1.2倍以上、更に好ましくは1.5倍以上添加される。
【0170】
(離型剤)
本発明に使用されるトナーは、離型剤を内包した樹脂粒子を水系媒体中に於いて融着させたトナーであることが好ましい。この様に樹脂粒子中に離型剤を内包させた樹脂粒子を着色剤粒子と水系媒体中で塩析/融着させることで、微細に離型剤が分散されたトナーを得ることができる。
【0171】
本発明に係るトナーでは、離型剤として、低分子量ポリプロピレン(数平均分子量=1500〜9000)や低分子量ポリエチレン等が好ましく、特に好ましくは、下記式で表されるエステル系化合物である。
【0172】
−(OCO−R
式中、nは1〜4の整数、好ましくは2〜4、さらに好ましくは3〜4、特に好ましくは4である。R、Rは、各々置換基を有しても良い炭化水素基を示す。Rは、炭素数1〜40、好ましくは1〜20、さらに好ましくは2〜5がよい。Rは、炭素数1〜40、好ましくは16〜30、さらに好ましくは18〜26がよい。
【0173】
次に代表的な化合物の例を以下に示す。
【0174】
【化7】

【0175】
【化8】

【0176】
上記化合物の添加量は、トナー全体に対し1〜30質量%、好ましくは2〜20質量%、さらに好ましくは3〜15質量%である。
【0177】
本発明に係るトナーでは、ミニエマルジョン重合法により樹脂粒子中に上記離型剤を内包させ、トナー粒子とともに塩析、融着させて調製することが好ましい。
【0178】
(荷電制御剤)
トナーは、着色剤、離型剤以外にトナー用材料として種々の機能を付与することのできる材料を添加することができる。具体的には、荷電制御剤等が挙げられる。これらの成分は前述の塩析/融着段階で樹脂粒子と着色剤粒子と同時に添加し、トナー中に包含する方法、樹脂粒子自体に添加する方法等種々の方法で添加することができる。
【0179】
荷電制御剤は、種々の公知のもので、且つ水中に分散することができるものを使用することができる。具体的には、ニグロシン系染料、ナフテン酸または高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩あるいはその金属錯体等が挙げられる。
【0180】
(外添剤)
本発明に係るトナーには、流動性の改良やクリーニング性の向上などの目的で、いわゆる外添剤を添加して使用することができる。これら外添剤としては特に限定されるものでは無く、種々の無機微粒子、有機微粒子及び滑剤を使用することができる。
【0181】
外添剤として使用できる無機微粒子としては、従来公知のものを挙げることができる。具体的には、シリカ微粒子、チタン微粒子、アルミナ微粒子等を好ましく用いることができる。これら無機微粒子は疎水性であることが好ましい。
【0182】
シリカ微粒子の具体例としては、日本アエロジル(株)製の市販品R−805、R−976、R−974、R−972、R−812、R−809、ヘキスト(株)製のHVK−2150、H−200、キャボット(株)製の市販品TS−720、TS−530、TS−610、H−5、MS−5等が挙げられる。
【0183】
チタン微粒子の具体例としては、例えば、日本アエロジル(株)製の市販品T−805、T−604、テイカ(株)製の市販品MT−100S、MT−100B、MT−500BS、MT−600、MT−600SS、JA−1、富士チタン(株)製の市販品TA−300SI、TA−500、TAF−130、TAF−510、TAF−510T、出光興産(株)製の市販品IT−S、IT−OA、IT−OB、IT−OC等が挙げられる。
【0184】
アルミナ微粒子の具体例としては、例えば、日本アエロジル(株)製の市販品RFY−C、C−604、石原産業(株)製の市販品TTO−55等が挙げられる。
【0185】
外添剤として使用できる有機微粒子としては、数平均一次粒子径が10〜2000nm程度の球形の微粒子を挙げることができる。かかる有機微粒子の構成材料としては、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、スチレン−メチルメタクリレート共重合体などの微粒子を挙げることができる。
【0186】
外添剤として使用できる滑剤としては、高級脂肪酸の金属塩を挙げることができる。かかる高級脂肪酸の金属塩の具体例としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸銅、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等のステアリン酸金属塩;オレイン酸亜鉛、オレイン酸マンガン、オレイン酸鉄、オレイン酸銅、オレイン酸マグネシウム等のオレイン酸金属塩;パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸銅、パルミチン酸マグネシウム、パルミチン酸カルシウム等のパルミチン酸金属塩;リノール酸亜鉛、リノール酸カルシウム等のリノール酸金属塩;リシノール酸亜鉛、リシノール酸カルシウムなどのリシノール酸金属塩等が挙げられる。
【0187】
外添剤の添加量としては、トナーに対して0.1〜5質量%程度であることが好ましい。
【0188】
〈外添剤の添加工程〉
この工程は、乾燥処理されたトナー粒子に外添剤を添加する工程である。
【0189】
外添剤を添加するために使用される装置としては、タービュラーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、V型混合機などの種々の公知の混合装置を挙げることができる。
【0190】
(トナー粒子)
本発明に係るトナーの粒径は、個数平均粒径で3〜10μmであることが好ましく、更に好ましくは3〜8μmとされる。この粒径は、トナーの製造方法において、凝集剤(塩析剤)の濃度や有機溶媒の添加量、融着時間、重合体の組成によって制御することができる。
【0191】
個数平均粒径が3〜10μmであることにより、定着工程において、飛翔して加熱部材に付着しオフセットを発生させる付着力の大きいトナー微粒子が少なくなり、また、転写効率が高くなってハーフトーンの画質が向上し、細線やドット等の画質が向上する。
【0192】
トナーの個数平均粒径は、コールターカウンターTA−II、コールターマルチサイザー、SLAD1100(島津製作所社製レーザー回折式粒径測定装置)等を用いて測定することができる。
【0193】
本発明においては、コールターマルチサイザーを用い、粒度分布を出力するインターフェース(日科機社製)、パーソナルコンピューターを接続して使用した。前記コールターマルチサイザーにおけるアパーチャーとしては、100μmのものを用いて、2μm以上(例えば2〜40μm)のトナーの体積分布を測定して粒度分布および平均粒径を算出した。
【0194】
〈トナー粒子の好ましい形状係数の範囲〉
本発明に係るトナーの形状係数は、1.0〜1.6のものが65個数%以上、好ましくは1.2〜1.6のものが65個数%以上、特に好ましくは1.2〜1.6のものが70個数%以上のものである。
【0195】
本発明に係るトナーの形状係数は、下記式により示されるものであり、トナー粒子の丸さの度合いを示す。
【0196】
形状係数=((最大径/2)×π)/投影面積
ここに、最大径とは、トナー粒子の平面上への投影像を2本の平行線ではさんだとき、その平行線の間隔が最大となる粒子の幅をいう。また、投影面積とは、トナー粒子の平面上への投影像の面積をいう。本発明では、この形状係数は、走査型電子顕微鏡により2000倍にトナー粒子を拡大した写真を撮影し、ついでこの写真に基づいて「SCANNING IMAGE ANALYZER」(日本電子社製)を使用して写真画像の解析を行うことにより測定した。この際、100個のトナー粒子を使用して本発明の形状係数を上記算出式にて測定したものである。
【0197】
本発明に係るトナーとしては、トナー粒子の粒径をD(μm)とするとき、自然対数lnDを横軸にとり、この横軸を0.23間隔で複数の階級に分けた個数基準の粒度分布を示すヒストグラムにおいて、最頻階級に含まれるトナー粒子の相対度数(m1)と、前記最頻階級の次に頻度の高い階級に含まれるトナー粒子の相対度数(m2)との和(M)が70%以上であるトナーであることが好ましい。
【0198】
相対度数(m1)と相対度数(m2)との和(M)が70%以上であることにより、トナー粒子の粒度分布の分散が狭くなるので、当該トナーを画像形成工程に用いることにより選択現像の発生を確実に抑制することができる。
【0199】
本発明において、前記の個数基準の粒度分布を示すヒストグラムは、自然対数lnD(D:個々のトナー粒子の粒径)を0.23間隔で複数の階級(0〜0.23:0.23〜0.46:0.46〜0.69:0.69〜0.92:0.92〜1.15:1.15〜1.38:1.38〜1.61:1.61〜1.84:1.84〜2.07:2.07〜2.30:2.30〜2.53:2.53〜2.76・・・)に分けた個数基準の粒度分布を示すヒストグラムであり、このヒストグラムは、下記の条件に従って、コールターマルチサイザーにより測定されたサンプルの粒径データを、I/Oユニットを介してコンピュータに転送し、当該コンピュータにおいて、粒度分布分析プログラムにより作成されたものである。
【0200】
〔測定条件〕
1:アパーチャー:100μm
2:サンプル調製法:電解液〔ISOTON R−11(コールターサイエンティフィックジャパン社製)〕50〜100mlに界面活性剤(中性洗剤)を適量加えて攪拌し、これに測定試料10〜20mgを加える。この系を超音波分散機にて1分間分散処理することにより調製する。
【0201】
また、本発明に係るトナーは、体積基準におけるメディアン径(D50v)を3μm以上8μm以下とすることが好ましい。体積基準メディアン径を上記範囲とすることにより、たとえば、1200dpi(dpi;1インチ(2.54cm)あたりのドット数)レベルの非常に微小なドット画像を忠実に再現することも可能である。
【0202】
本発明に係るトナーは、写真画像の色再現を忠実に行える様にすることが課題の1つであるが、体積基準メディアン径を上記範囲の小径レベルのものにすることにより、写真画像を構成するドット画像が微小化され印刷画像と同等以上の高精細写真画像が得られる。特に、オンデマンド印刷と呼ばれる数百部から数千部レベルでプリント注文を受ける印刷分野では、高精細な写真画像の入った高画質プリントを迅速にユーザへ納品できる。
【0203】
なお、トナーの体積基準メディアン径(D50v)は、マルチサイザー3(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用のコンピューターシステムを接続した装置を用いて測定、算出することができる。
【0204】
測定手順としては、トナー0.02gを、界面活性剤溶液20ml(トナーの分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)で馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー分散液を作製する。このトナー分散液を、サンプルスタンド内のISOTONII(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定濃度5〜10%になるまでピペットにて注入し、測定機カウントを2500個に設定して測定する。なお、マルチサイザー3のアパーチャー径は50μmのものを使用する。
【0205】
本発明に係るトナーは、その体積基準の粒度分布における変動係数(CV値)が2%以上21%以下のものが好ましく、5%以上15%以下のものがより好ましい。
【0206】
体積基準の粒度分布における変動係数(CV値)は、トナー粒子の粒度分布における分散度を体積基準で表したもので、以下の式によって定義される。
【0207】
CV値(%)=(個数粒度分布における標準偏差)/(個数粒度分布におけるメディアン径(D50v))×100
このCV値の値が小さい程、粒度分布がシャープであることを示し、それだけトナー粒子の大きさが揃っていることを意味する。すなわち、大きさの揃ったトナーが得られることになるので、デジタル画像形成で求められる微細なドット画像や細線をより高精度に再現することが可能である。また、写真画像をプリントするにあたり、大きさの揃った小径トナーを用いることにより、印刷インクで作製された画像レベルあるいはそれ以上の高画質の写真画像を作成することができる。
【0208】
本発明に係るトナーは、その軟化点温度(Tsp)が70℃以上110℃以下となるものが好ましく、70℃以上100℃以下となるものがより好ましい。本発明に係るトナーに使用される着色剤は、熱の影響を受けてもスペクトルが変化することのない安定した性質を有するものであるが、軟化点を前記範囲とすることで定着時にトナーに加わる熱の影響をより低減させることができる。したがって、着色剤に負担をかけずに画像形成が行えるので、より広く安定した色再現性を発現させることが期待される。
【0209】
また、トナーの軟化点を前記範囲とすることにより、従来技術よりも低い温度でトナー画像定着が行える様になり、電力消費の低減を実現した環境に優しい画像形成を可能にする。
【0210】
なお、トナーの軟化点は、たとえば、以下の方法を単独で、あるいは、組み合わせることにより制御が可能である。すなわち、
(1)樹脂形成に用いる単量体の種類や組成比を調節する。
(2)連鎖移動剤の種類や添加量により樹脂の分子量を調節する。
(3)ワックス等の種類や添加量を調節する。
【0211】
また、トナーの軟化点温度の測定方法は、具体的には「フローテスターCFT−500(島津製作所社製)」を用い、高さ10mmの円柱形状に成形し、昇温速度6℃/分で加熱しながらプランジャーより1.96×10Paの圧力を加え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出すようにし、これにより当該フローテスターのプランジャー降下量−温度間の曲線(軟化流動曲線)を描き、最初に流出する温度を溶融開始温度、降下量5mmに対する温度を軟化点温度とするものが挙げられる。
【0212】
次に、本発明に係るトナーの製造方法について説明する。
【0213】
本発明に係るトナーは、少なくとも樹脂と一般式(1)で表される着色剤を含有してなる粒子(以下、着色粒子ともいう)より構成されるものである。本発明に係るトナーを構成する着色粒子は、特に限定されるものではなく、従来のトナー製造方法により作製することが可能である。すなわち、混練、粉砕、分級工程を経てトナーを作製するいわゆる粉砕法によるトナー製造方法や、重合性単量体を重合させ、同時に、形状や大きさを制御しながら粒子形成を行ういわゆる重合トナーの製造方法(たとえば、乳化重合法、懸濁重合法、ポリエステル伸長法等)を適用することにより作製可能である。
【0214】
なお、粉砕法により本発明に係るトナーを製造する場合、混練物の温度を130℃以下に維持した状態で作製を行うことが好ましい。これは、混練物に加える温度が130℃を超えると、混練物に加えられた熱の作用で混練物中における着色剤の凝集状態に変動を来し均一な凝集状態を維持できなくなるおそれがあるためである。仮に、凝集状態にバラツキが発生すると、作製されたトナーの色調にバラツキが生じることになり、色濁りの原因となることが懸念される。
【0215】
(現像剤)
本発明に係るトナーは、一成分現像剤でも二成分現像剤として用いてもよい。
【0216】
一成分現像剤として用いる場合は、非磁性一成分現像剤、あるいはトナー中に0.1〜0.5μm程度の磁性粒子を含有させ磁性一成分現像剤としたものがあげられ、いずれも使用することができる。
【0217】
また、キャリアと混合して二成分現像剤として用いることができる。この場合は、キャリアの磁性粒子として、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等の従来から公知の材料を用いることが出来る。特にフェライト粒子が好ましい。上記磁性粒子は、その体積平均粒径としては15〜100μm、より好ましくは25〜80μmのものがよい。
【0218】
キャリアの体積平均粒径の測定は、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0219】
キャリアは、磁性粒子が更に樹脂により被覆されているもの、あるいは樹脂中に磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアが好ましい。コーティング用の樹脂組成としては、特に限定は無いが、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル系樹脂或いはフッ素含有重合体系樹脂等が用いられる。また、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、スチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、フェノール樹脂等を使用することができる。
【実施例】
【0220】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
着色剤分散液1の作製
(1)顔料1の調整(再沈法−1による結晶変換処理)
化合物(1−1)1部をテトラヒドロフラン50質量部に溶解し、顔料溶液を作製した。続いて、5℃に冷却した水500質量部を800rpmで撹拌させておき、そこに顔料溶液を添加していくと、微細顔料1が析出した。1時間撹拌後、濾過、水洗、乾燥、粉砕し、顔料1を得た。
【0221】
得られた顔料1のX線回折スペクトルを測定したところ、図1のようになり、強度化率Tは1.8であった。
【0222】
また顔料1の一次粒径D(nm)については、日立超高性能分析走査電子顕微鏡SU−70(日立ハイテクノロジーズ製)を用いて測定したところ135nmであった。
(2)「着色剤分散液1」
n−ドデシル硫酸ナトリウム20質量部をイオン交換水160質量部に投入し、溶解、撹拌して界面活性剤水溶液を調製した。この界面活性剤水溶液中に、顔料1を40質量部添加し、「アジテータミル LMZ(商品名、アシザワ(株)製)」を用いて3時間分散処理を行い、「着色剤分散液1」を作製した。
【0223】
「着色剤分散液1」は、粒子径分布の50%累積値D50(nm)が85nmであった。なお、D50(nm)は、ナノトラックUPA150EX(日機装製)を用いて測定したものである。
着色剤分散液2の作製
(1)顔料2の調整(ソルベントソルトミリング法−1による結晶変換処理)
化合物(1−1)を1部、粉砕した塩化ナトリウム10部、ジエチレングリコール1.5部を双腕型ニーダーに仕込み、100℃で8時間混練した。混練後水に取り出し、1時間攪拌後、濾過、水洗、乾燥、粉砕し、顔料2を得た。
【0224】
得られた顔料2のX線回折スペクトルを測定したところ、強度化率Tは2.8であった。
【0225】
また顔料2の一次粒径D(nm)については、日立超高性能分析走査電子顕微鏡SU−70(日立ハイテクノロジーズ製)を用いて測定したところ35nmであった。
(2)「着色剤分散液2」
n−ドデシル硫酸ナトリウム20質量部をイオン交換水160質量部に投入し、溶解、撹拌して界面活性剤水溶液を調製した。この界面活性剤水溶液中に、顔料2を40質量部添加し、「アジテータミル LMZ(商品名、アシザワ(株)製)」を用いて3時間分散処理を行い、「着色剤分散液2」を作製した。
【0226】
「着色剤分散液2」は、粒子径分布の50%累積値D50(nm)が35nmであった。なお、D50(nm)は、ナノトラックUPA150EX(日機装製)を用いて測定したものである。
着色剤分散液3〜16の作製
着色剤分散液1または2の作製において、条件を表1に記載の通りに変更した他は同様の手順で着色剤分散液3〜16を作製した。
着色剤分散液17の作製(比較例)
着色剤分散液2の作製において、顔料を化合物(1−1)から銅フタロシアニンに変更し、結晶変換処理も「なし」とした他は同様にして着色剤分散液17を作製した。
着色剤分散液18の作製(比較例)
着色剤分散液2の作製において、顔料を化合物(1−1)から銅フタロシアニンとニッケルフタロシアニンの併用(併用比は質量比で:1/1)に変更した他は同様にして着色剤分散液を18作製した。
着色剤分散液19の作製(比較例)
着色剤分散液9の作製において、結晶変換処理を「なし」とした他は同様にして着色剤分散液19を作製した。
着色剤分散液20の作製(比較例)
着色剤分散液16の作製において、結晶変換処理を「なし」とした他は同様にして着色剤分散液20を作製した。
【0227】
図2に着色剤分散液19に含まれる顔料19のXRDスペクトルを示す。該顔料の強度化率Tは、0.6であり、本発明の範囲には属していない。
【0228】
<分散性評価>
着色剤分散液1〜20の顔料分散性を評価した。
【0229】
顔料分散性の評価は、着色剤分散液1〜20の粒子径分布の50%累積値D50(nm)で判断した。分散機は、「アジテータミル LMZ(商品名、アシザワ(株)製)」を用い、分散時間は3時間とした。
【0230】
判断基準は以下の通りで、A及びBが実用に十分耐えられるレベルであった。結果は表1に示す。
A: D50が50nm以下
B: D50が50nmより大きく100nm以下
C: D50が100nmより大きく200nm以下
D: D50が200nmより大きい
評価結果は、表1に示した。
【0231】
【表1】

【0232】
表1中、
ソルベントソルトミリング法−2はソルベントソルトミリング法−1の混錬温度を70℃に変えた条件である。
【0233】
ソルベントソルトミリング法−3はソルベントソルトミリング法−1の混錬温度を130℃に変えた条件である。
【0234】
表1の結果より、本願発明内の着色剤分散液1〜16は、比較例の着色剤分散液17〜20に比し、着色剤分散液中の顔料の平均粒径が小さく、分散性に優れていることがわかる。
【0235】
シアントナー1(本願発明内)の作製
(1)「コア部用樹脂粒子1」の作製
下記に示す第1段重合、第2段重合及び第3段重合を経て多層構造を有する「コア部用樹脂粒子1」を作製した。
【0236】
(a)第1段重合
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に下記(構造式1)に示すアニオン系界面活性剤4質量部をイオン交換水3040質量部とともに投入し、界面活性剤水溶液を調製した。
【0237】
(構造式1) C1021(OCHCHSONa
上記界面活性剤水溶液中に、過硫酸カリウム(KPS)10質量部をイオン交換水400質量部に溶解させた重合開始剤溶液を添加し、温度を75℃に昇温させた後、下記化合物よりなる単量体混合液を1時間かけて反応容器中に滴下した。
【0238】
スチレン 532質量部
n−ブチルアクリレート 200質量部
メタクリル酸 68質量部
n−オクチルメルカプタン 16.4質量部
上記単量体混合液を滴下後、この系を75℃にて2時間にわたり加熱、撹拌することにより重合(第1段重合)を行い、樹脂粒子を作製した。この樹脂粒子を「樹脂粒子A1」とする。なお、第1段重合で作製した「樹脂粒子A1」の重量平均分子量は16,500だった。
【0239】
(b)第2段重合
撹拌装置を取り付けたフラスコ内に下記化合物からなる単量体混合液を投入し、続いて、離型剤としてパラフィンワックス「HNP−57(日本製蝋社製)」93.8質量部を添加し、90℃に加温して溶解させた。この様にして単量体溶液を調製した。
【0240】
スチレン 101.1質量部
n−ブチルアクリレート 62.2質量部
メタクリル酸 12.3質量部
n−オクチルメルカプタン 1.75質量部
一方、前記アニオン界面活性剤3質量部をイオン交換水1560質量部に溶解させた界面活性剤水溶液を調製し、98℃に加熱した。この界面活性剤水溶液中に前記「樹脂粒子A1」を32.8質量部(固形分換算)添加し、さらに、上記パラフィンワックスを含有する単量体溶液を添加した後、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス(エムテクニック社製)」で8時間混合分散した。前記混合分散により分散粒子径が340nmの乳化粒子を含有する乳化粒子分散液を調製した。
【0241】
次いで、前記乳化粒子分散液に過硫酸カリウム6質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた重合開始剤溶液を添加し、この系を98℃にて12時間にわたり加熱撹拌を行うことで重合(第2段重合)を行って樹脂粒子を作製した。この樹脂粒子を「樹脂粒子A2」とする。なお、第2段重合で作製した「樹脂粒子A2」の重量平均分子量は23,000だった。
【0242】
(c)第3段重合
上記第2段重合で得られた「樹脂粒子A2」に、過硫酸カリウム5.45質量部をイオン交換水220質量部に溶解させた重合開始剤溶液を添加し、80℃の温度条件下で、下記化合物からなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。
【0243】
スチレン 293.8質量部
n−ブチルアクリレート 154.1質量部
n−オクチルメルカプタン 7.08質量部
滴下終了後、2時間にわたり加熱撹拌を行って重合(第3段重合)を行い、重合終了後、28℃に冷却して「コア部用樹脂粒子1」を作製した。第3段重合で作製した。「コア部用樹脂粒子1」の重量平均分子量は26,800であった。
【0244】
(4)「シェル用樹脂粒子」の作製
前記「コア部用樹脂粒子1」の作製における第1段重合で使用された単量体混合液を以下のものに変更した以外は同様にして、重合反応及び反応後の処理を行って「シェル用樹脂粒子1」を作製した。
【0245】
スチレン 624質量部
2−エチルヘキシルアクリレート 120質量部
メタクリル酸 56質量部
n−オクチルメルカプタン 16.4質量部
(5)シアントナー1の作製
下記の手順によりシアントナー1を作製した。
【0246】
(a)コア部の形成
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、
コア部用樹脂粒子 420.7質量部(固形分換算)
イオン交換水 900質量部
着色剤分散液1 200質量部
を投入、撹拌した。反応容器内の温度を30℃に調整後、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pHを8乃至11に調整した。
【0247】
次いで、塩化マグネシウム・6水和物2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を撹拌の下で30℃にて10分間かけて添加した。3分間放置後に昇温を開始し、この系を60分間かけて65℃まで昇温させ、上記粒子の会合を行った。この状態で「マルチサイザー3(コールター社製)」を用いて会合粒子の粒径測定を行い、会合粒子の体積基準メディアン径が5.5μmになった時に、塩化ナトリウム40.2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解させた水溶液を添加して会合を停止させた。
【0248】
会合停止後、さらに、熟成処理として液温を70℃にして1時間にわたり加熱撹拌を行うことにより融着を継続させて「コア部1」を作製した。
【0249】
「コア部1」の平均円形度を「FPIA2000(システックス社製)」で測定したところ、0.912だった。
【0250】
(b)シェルの形成
次に、上記液を65℃にして「シェル用樹脂粒子1」を96質量部添加し、さらに、塩化マグネシウム・6水和物2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を10分間かけて添加した後、70℃まで昇温させて1時間にわたり撹拌を行った。この様にして、「コア部1」の表面に「シェル用樹脂粒子1」を融着させた後、75℃で20分間熟成処理を行ってシェルを形成させた。
【0251】
この後、塩化ナトリウム40.2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を添加してシェル形成を停止した。さらに、8℃/分の速度で30℃に冷却して生成した着色粒子をろ過し、45℃のイオン交換水で繰り返し洗浄した後、40℃の温風で乾燥することにより、コア部表面にシェルを有する「着色粒子1」を作製した。
【0252】
(c)外添処理
作製した「着色粒子1」に下記外添剤を添加して、ヘンシェルミキサ(三井三池鉱業社製)にて外添処理を行い、「シアントナー1」を作製した。
【0253】
ヘキサメチルシラザン処理したシリカ(平均一次粒径12nm) 0.6質量部
n−オクチルシラン処理した二酸化チタン(平均一次粒径24nm) 0.8質量部
なお、ヘンシェルミキサーによる外添処理は、撹拌羽根の周速35m/秒、処理温度35℃、処理時間15分の条件の下で行った。
シアントナー2〜16(本願発明内)の作製
シアントナー1の作製において、着色剤分散液1を表1に記載の通りに変更した他は同様の手順でシアントナー2〜16を作製した。
シアントナー17〜20(比較例)の作製
シアントナー1の作製において、着色剤分散液1を表1に記載の通りに変更した他は同様の手順でシアントナー17〜20を作製した。
【0254】
〈イエロー、マゼンタ、ブラックトナーの作製〉
イエロートナーの作製
シアントナー1の作製において、着色剤分散液をC.I.ピグメントイエロー74を含むものに変更した他は同様の手順でイエロートナーを作製した。
マゼンタトナーの作製
シアントナー1の作製において、着色剤分散液をC.I.ピグメントレッド122を含むものに変更した他は同様の手順でマゼンタトナーを作製した。
ブラックトナーの作製
シアントナー1の作製において、着色剤分散液をカーボンブラック「モーガルL」(キャボット社製)を含むものに変更した他は同様の手順でブラックトナーを作製した。
【0255】
〈現像剤の調製〉
上記「シアントナー1〜20」及びイエロー、マゼンタ、ブラック各トナーの各々に、シリコーン樹脂を被覆した体積平均粒径60μmのフェライトキャリアを混合し、トナー濃度が6%の「シアン現像剤1〜20」及びイエロー現像剤、マゼンタ現像剤、ブラック現像剤を調製した。
【0256】
〈評価〉
評価は、市販の複合プリンター「bizhub Pro C6500(コニカミノルタビジネステクノロジーズ(株)製)」に、各現像剤を投入した現像装置を装填して行った。
【0257】
尚、上記複合プリンターは、黄色、マゼンタ色、シアン色及び黒色に対応する画像形成ユニットを有し、中間転写ベルト上でトナー像を重ねるタンデム型画像形成装置であり、ベルト定着方式の定着装置を採用している。上記複合プリンターに搭載して、評価を行った。なお、前述のベルト定着方式の定着装置における加熱ローラの表面材質、表面温度等の各種条件を以下の様にした。
【0258】
定着速度:330mm/sec
加熱ローラの表面材質:ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)
加熱ローラの表面温度:175℃
評価は、上記評価装置に前記で作製したシアントナーを順次に装填し(イエロー、マゼンタ、ブラックの各トナーは固定)、常温常湿(20℃、55%RH)の環境下で、以下の項目について評価を行った。
【0259】
本発明のカラートナーを用いたトナーセットによって、上記の画像形成装置を用いて、紙に、それぞれ反射画像(紙上の画像)を作製し、以下に示す方法で評価した。なお、トナー付着量は0.7±0.05(mg/cm)の範囲で評価した。
【0260】
(彩度評価)
本発明のシアントナー及び比較用トナーを用いて、CIELAB色空間において、色相角240度で明度40および70での最大彩度のベタ画像を出力した。本発明を用いない比較用トナー(シアントナー17)を用いた場合を基準とし、彩度の向上率によって判断した。A及びBが実用に十分耐えられるレベルであった。結果を表1に示す。
A:彩度の向上が10%以上
B:彩度の向上が5%以上10%未満
C:彩度の向上が2%以上5%未満
D:彩度の向上が2%未満
(色再現域評価)
イエロー/マゼンタ/シアンの単色、及びR/G/Bのそれぞれのベタ画像部を用いて、その色域を測定して面積拡大を確認した。印刷用Japanカラーの色域を基準として評価した。A及びBが実用に十分耐えられるレベルであった。結果を表1に示す。
A:面積の拡大が5%以上
B:面積の拡大が2%以上5%未満
C:面積の拡大が2%未満
D:面積の拡大なし
〈画像保存性〉
(耐光性)
彩度評価に用いた画像をキセノンフェードメーターで7日間照射し、照射前後の混色画像について、色相変化を評価した。照射前の画像を100%とし、色素残存率が90%以上をA、80%以上〜90%未満をB、70%以上80%未満をC、70%未満をDとした。A及びBが実用に十分耐えられるレベルであった。結果を表1に示す。
【0261】
(耐オゾン性)
オゾンガス濃度が5ppm(25℃;60%RH)に設定された条件下で、混色した画像を7日間、オゾンガスに曝露した。曝露前後の混色画像について、色相変化を評価した。曝露前の画像を100%とし、色素残存率が90%以上をA、80%以上〜90%未満をB、70%以上80%未満をC、70%未満をDとした。A及びBが実用に十分耐えられるレベルであった。結果を表2に示す。
【0262】
【表2】

【0263】
表2から明らかなように、本願発明の構成を有する電子写真用シアントナーは1〜16は電子写真画像の彩度、色再現域、耐光性、耐オゾン性の各評価において、比較例のシアントナー17〜20に比し、良好な評価結果を得ている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線回折スペクトルにおいて、Cu−Kα線に対するブラッグ角2θ=8.0°以上10.0°未満における最大回折スペクトルの絶対強度(Aとする)、およびCu−Kα線に対するブラッグ角2θ=10.0°以上12.0°未満における最大回折スペクトルの絶対強度(Bとする)の強度比率T(T=A/B)が1.0以上3.0以下である下記一般式(1)で表される化合物の顔料を含有することを特徴とする電子写真用シアントナー。
【化1】

(式中、MはSiもしくはGeを表す。Z、Zはアルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アリールオキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基または−OSiRaRbRc(ただし、Ra、RbおよびRcは各々独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基を示す)で表される基のいずれかを表す。Z、Zは互いに同一でも相違してもよい。R〜Rは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルスルホニル基、アルキルスルファモイル基または−SiRaRbRc(ただし、Ra、RbおよびRcは各々独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基を示す)のいずれかで表される基を表す。R〜Rは互いに同一でも相違してもよい。)
【請求項2】
上記強度比率Tが2.0以上3.0以下であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真用シアントナー。
【請求項3】
顔料を樹脂中に含有させる電子写真用シアントナーの製造方法において、該顔料が、下記一般式(1)で表される化合物の顔料であり、該顔料にソルベントソルトミリング処理又は再沈法の処理を施して、該顔料の結晶構造を、X線回折スペクトルにおいて、Cu−Kα線に対するブラッグ角2θ=8.0°以上10.0°未満における最大回折スペクトルの絶対強度(Aとする)、およびCu−Kα線に対するブラッグ角2θ=10.0°以上12.0°未満における最大回折スペクトルの絶対強度(Bとする)の強度比率T(T=A/B)が1.0以上3.0以下に結晶変換させることを特徴とする電子写真用シアントナーの製造方法。
【化2】

(式中、MはSiもしくはGeを表す。Z、Zはアルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アリールオキシ基、アルコキシ基、アシルオキシ基または−OSiRaRbRc(ただし、Ra、RbおよびRcは各々独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基を示す)で表される基のいずれかを表す。Z、Zは互いに同一でも相違してもよい。R〜Rは水素原子、アルキル基、アリール基、アルキルスルホニル基、アルキルスルファモイル基または−SiRaRbRc(ただし、Ra、RbおよびRcは各々独立に、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基を示す)のいずれかで表される基を表す。R〜Rは互いに同一でも相違してもよい。)

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−203070(P2012−203070A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65437(P2011−65437)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】