説明

電子写真用トナー

【課題】帯電量の環境安定性に優れた電子写真用トナーを提供すること。
【解決手段】結着樹脂及び磁性粉を含有してなる電子写真用トナーであって、前記結着樹脂が炭素数1〜18のアルキル基を有するモノアルキルスズ化合物の存在下、アルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合させて得られるポリエステルであり、該ポリエステル中のジアルキルスズ化合物及びトリアルキルスズ化合物の総含有量が重量基準で50ppm以下であるポリエステルを含有してなる、電子写真用トナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像に用いられる電子写真用トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子写真法においては、現像器が小型で構成が簡素化される傾向にある。そこで、キャリアを必要とせず、装置の小型化が有利な観点から、磁性トナーを用いた磁性一成分現像方式が好適に採用されている。
【0003】
特許文献1では、磁性トナーは相当量の磁性粉を含有させる必要があることから、分散性に優れる、結着樹脂の主成分がスズ化合物を触媒として合成されたポリエステルユニットを有する樹脂である磁性トナーが開示されている。
【0004】
特許文献2では、スズ触媒を用いて得られたトナー用結着樹脂として、スズ含有触媒の存在下に形成され、ジブチルスズオキサイド化合物中のトリブチルスズ化合物の含有量が250ppm以下であるポリエステル樹脂からなる静電荷像現像用トナーバインダーが開示されている。
【特許文献1】特開2005-208552号公報
【特許文献2】国際公開第2003/073171号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のポリエステルを含有した磁性トナーは、高温高湿下での帯電量低下を生じやすく、とくに高速連続印刷においての帯電量低下が顕著である。
【0006】
本発明の課題は、帯電量の環境安定性に優れた電子写真用トナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、結着樹脂及び磁性粉を含有してなる電子写真用トナーであって、前記結着樹脂が炭素数1〜18のアルキル基を有するモノアルキルスズ化合物の存在下、アルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合させて得られるポリエステルであり、該ポリエステル中のジアルキルスズ化合物及びトリアルキルスズ化合物の総含有量が重量基準で50ppm以下であるポリエステルを含有してなる、電子写真用トナーに関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の電子写真用トナーは、高温高湿下での連続印刷においても良好な帯電量を有することが出来るという、帯電量の環境安定性について優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の電子写真用トナーは、結着樹脂及び磁性粉を含有し、前記結着樹脂が炭素数1〜18のアルキル基を有するモノアルキルスズ化合物の存在下、アルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合させて得られるポリエステルであり、該ポリエステル中のジアルキルスズ化合物及びトリアルキルスズ化合物の総含有量が所定の範囲内にある点に一つの特徴を有する。
【0010】
モノアルキルスズ化合物は、ポリエステル製造用触媒としての活性が高く好適に用いられる一方で、得られるポリエステルを含有した磁性トナーは、帯電量の環境安定性に欠ける傾向がある。そこで、本発明者らが検討したところ、モノアルキルスズ化合物を製造する際に副生したジアルキルスズ化合物及びトリアルキルスズ化合物がポリエステル製造後もポリエステル中に残存し、帯電量の環境安定性を低下させる原因となっており、これらの含有量が所定の範囲内に制御されている場合に、帯電量の環境安定性が向上することが判明した。
【0011】
本発明におけるポリエステル中のジアルキルスズ化合物及びトリアルキルスズ化合物の総含有量は、帯電量の環境安定性の観点から、重量基準で、50ppm以下であり、好ましくは40ppm以下、より好ましく30ppm以下である。ジアルキルキスズ化合物及びトリアルキルスズ化合物の含有量の制御方法として、含有するジアルキルスズ化合物及びトリアルキルスズ化合物の含有量を予め低減したモノアルキルスズ化合物を使用する方法が挙げられ、さらに縮重合反応時の条件を調整し、ジアルキルスズ化合物及びトリアルキルスズ化合物を分解させることにより低減してもよい。
【0012】
ジアルキルスズ化合物としては、ジクロロブチルスズ、ジブチルスズオキサイド等が挙げられる。
【0013】
トリアルキルスズ化合物としては、酢酸トリブチルスズ、臭化トリブチルスズ、クロロトリブチルスズ、水素化トリブチルスズ、酸化ビス(トリブチルスズ)、ビス(トリブチルスズ(IV))、硫酸ビス(トリブチルスズ)等が挙げられる。
【0014】
本発明では、触媒活性及び帯電の立ち上がり性の観点から、炭素数が1〜18、好ましくは2〜12、より好ましくは4のアルキル基を有するモノアルキルスズ化合物を使用する。
【0015】
炭素数1〜18のアルキル基を有するモノアルキルスズ化合物としては、メチルスズ(IV)ヒドロキシオキサイド、エチルスズ(IV)ヒドロキシオキサイド、プロピルスズ(IV)ヒドロキシオキサイド、ブチルスズ(IV)ヒドロキシオキサイド、オクチルスズ(IV)ヒドロキシオキサイド、ラウリルスズ(IV)ヒドロキシオキサイド、ステアリルスズ(IV)ヒドロキシオキサイド、トリクロロブチルスズ等が挙げられるが、帯電特性の観点からブチルスズ(IV)ヒドロキシオキサイドが好ましい。
【0016】
炭素数1〜18のアルキル基を有するモノアルキルスズ化合物としては、例えば、MBTO(エーピーアイコーポレーション(株)製、ブチルスズ(IV)ヒドロキシオキサイド)等の市販品中のジアルキルスズ化合物及びトリアルキルスズ化合物の含有量を必要に応じて適宜調整して用いることができる。
【0017】
炭素数1〜18のアルキル基を有するモノアルキルスズ化合物中に不純物として存在するジアルキルスズ化合物及びトリアルキルスズ化合物の総含有量は、2.0重量%以下が好ましく、1.0重量%以下がより好ましく、0.5重量%以下がさらに好ましい。モノアルキルスズ化合物中のジアルキルスズ化合物及びトリアルキルスズ化合物は、例えば、モノアルキルスズ化合物は溶解せず、ジアルキルスズ化合物及び/又はトリアルキルスズ化合物は溶解する溶剤に、ジアルキルスズ化合物及びトリアルキルスズ化合物の含有量を低減しようとするモノアルキルスズ化合物を混合し、濾別する方法により低減することができる。例えば、ブチルスズ(IV)ヒドロキシオキサイドは溶解せず、ジブチルスズ化合物及びトリブチルスズ化合物は溶解する溶剤としては、例えば、アセトニトリル等が挙げられる。
【0018】
炭素数1〜18のアルキル基を有するモノアルキルスズ化合物の存在量は、帯電の立ち上がり性及び触媒活性の観点から、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100重量部に対して、0.01〜1重量部が好ましく、0.1〜0.5重量部がより好ましく、0.15〜0.4重量部がさらに好ましい。
【0019】
アルコール成分としては、ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.0)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等の、式(I):
【0020】
【化1】

【0021】
(式中、ROはアルキレンオキサイドであり、Rは炭素数2又は3のアルキレン基、x及びyはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示す正の数であり、xとyの和は1〜16、好ましくは1.5〜5である)
で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、水素添加ビスフェノールA、ソルビトール、又はそれらのアルキレン(炭素数2〜4)オキサイド(平均付加モル数1〜16)付加物等が挙げられ、これらの中では、帯電性と耐久性の観点から、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物が好ましい。
【0022】
ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物の含有量は、アルコール成分中、50モル%以上が好ましく、70モル%以上がより好ましく、実質的に100モル%がさらに好ましい。
【0023】
また、カルボン酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸、マレイン酸、アジピン酸、コハク酸等のジカルボン酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸等の炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上の多価カルボン酸、それらの酸の無水物及びそれらの酸のアルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。
【0024】
アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合反応は、例えば、不活性ガス雰囲気中にて、少なくともモノアルキルスズ化合物の存在下、180〜250℃の温度で行うことができる。例えば、縮重合反応を、230〜250℃程度の高温下で長時間行うことにより、ポリエステル中に残存するジアルキルスズ化合物及びトリアルキルスズ化合物を低減することができる。
【0025】
ポリエステルの軟化点は、低温定着性と耐ホットオフセット性の観点から、80〜160℃が好ましく、90〜150℃がより好ましく、95〜140℃がさらに好ましく、100〜130℃がさらに好ましい。また、ガラス転移点は、低温定着性と保存性の観点から、50〜80℃が好ましく、55〜70℃がより好ましい。
【0026】
なお、本発明におけるポリエステルは、変性されたポリエステルであってもよい。変性されたポリエステルとは、フェノール、ウレタン等によりグラフト化やブロック化したポリエステルをいう。
【0027】
本発明におけるポリエステルの結着樹脂中の含有量は、磁性トナーの分散性及び定着性の観点から、70重量%以上が好ましく、80重量%以上がより好ましく、90重量%以上がさらに好ましく、実質的に100重量%であることがさらに好ましい。
【0028】
本発明の電子写真用トナーには、磁性粉が含有されている。磁性粉としては、コバルト、鉄、ニッケル等の強磁性体、コバルト、鉄、ニッケル、アルミニウム、鉛、マグネシウム、亜鉛、マンガン等の金属の合金、Fe、γ-Fe、コバルト添加酸化鉄等の金属酸化物、Mn-Znフェライト、Ni-Znフェライト等の各種フェライト、マグネタイト、ヘマタイト等を1種又は2種以上を併せて使用することができる。さらに、これら磁性分の表面がシランカップリング剤、チタネートシランカップリング剤等の表面処理剤で処理されたもの、又はポリマーコーティングされたものであってもよい。
【0029】
磁性粉の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、磁性粉の分散性及び帯電の環境性の観点から10〜90重量部が好ましく、20〜80重量部がより好ましく、30〜70重量部がさらに好ましい。また、色目や帯電量の調整のために、カーボンブラックやフタロシアニンブルー等公知の着色剤を併用してもよい。
【0030】
本発明のトナーには、さらに、離型剤、荷電制御剤、流動性向上剤、導電性調整剤、体質顔料、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、老化防止剤、クリーニング性向上剤等の添加剤が原料として配合されていてもよい。
【0031】
本発明のトナーは、混練粉砕法、乳化凝集法、スプレイドライ法、重合法等の公知の方法により製造することができる。混練粉砕法により粉砕トナーを製造する一般的な方法としては、例えば、結着樹脂、着色剤、荷電制御剤等をボールミル等の混合機で均一に混合した後、密閉式ニーダー又は1軸もしくは2軸の押出機等で溶融混練し、冷却、粉砕、分級する方法等が挙げられる。さらに、製造過程における粗粉砕物や、得られたトナーの表面に、必要に応じて疎水性シリカ等の流動性向上剤等を添加してもよい。本発明のトナーの体積中位粒径(D50)は、3〜15μmが好ましく、4〜8μmがより好ましい。なお、本明細書において、体積中位粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さい方から計算して50%になる粒径を意味する。
【0032】
本発明の電子写真用トナーは、一成分現像用トナーとして、又はキャリアと混合して二成分現像剤として用いることができるが、特に、帯電量の環境安定性に優れることから、磁性一成分現像用トナーとして用いることが好ましい。
【実施例】
【0033】
〔樹脂の軟化点〕
フローテスター(島津製作所、CFT-500D)を用い、1gの試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押出した。温度に対し、フローテスターのプランジャー降下量をプロットし、試料の半量が流出した温度を軟化点とする。
【0034】
〔樹脂のガラス転移点〕
示差走査熱量計(セイコー電子工業社製、DSC210)を用いて200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却したサンプルを昇温速度10℃/分で昇温し、吸熱の最高ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度とする。
【0035】
〔トナーの体積中位粒径(D50)〕
測定機:コールターマルチサイザーII(ベックマンコールター社製)
アパチャー径:100μm
測定粒径範囲:2〜60μm
解析ソフト:コールターマルチサイザーアキュコンプ バージョン 1.19(ベックマンコールター社製)
電解液:アイソトンII(ベックマンコールター社製)
分散液:エマルゲン109P(花王社製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB:13.6)5%電解液
分散条件:分散液5mlに測定試料10mgを添加し、超音波分散機にて1分間分散させ、その後、電解液25mlを添加し、さらに、超音波分散機にて1分間分散させる。
測定条件:ビーカーに電解液100mlと分散液を加え、3万個の粒子の粒径を20秒で測定できる濃度で3万個の粒子を測定し、その粒度分布から体積中位粒径(D50)を求める。
【0036】
スズ触媒の精製
水/アセトニトリルが1/1(容量比)の混合溶媒100mlに2Mの塩酸10mlを添加した後、クロロホルムに溶解させたモノアルキルスズ化合物「MBTO」(エーピーアイコーポレーション(株)製、ブチルスズ(IV)ヒドロキシオキサイド(MBTO)の含有量:97.4重量%、ジブチルスズ化合物(DBT)の含有量:2.5重量%、トリブチルスズ化合物(TBT)の含有量:0.1重量%)を溶液に加え、振とうしたのち、分液ロートを用いて水相とアセトニトリル相に分離した溶液からアセトニトリル相のみを除去した。この操作を、DBT及びTBTの含有量が所望の範囲となるまで繰り返し、MBTO-A〜MBTO-Eを得た。MBTO、DBT及びTBTの各含有量を表1に示す。
【0037】
なお、本実施例において、MBTO、DBT及びTBTの含有量は、以下の方法により測定した。
【0038】
〔MBTO、DBT及びTBTの含有量の測定〕
試料を抽出溶液(KOHのメタノール溶液)で処理する。さらに抽出液をテトラエチルホウ酸ナトリウムで処理し、得られたアルキル化合物をGC/MS/SIMで定量する。また、触媒の主成分であるブチルスズ(IV)ヒドロキシオキサイドについては、GCで定量する。詳細を以下に示す。
(1) 試料溶液の調製
試料として、触媒0.1g又は樹脂1.0gを使用し、図1に示すフローチャートに従って前処理し、GC/MS/SIM測定用の試料溶液を調製する。触媒の試料溶液は最終的に100mlとし、樹脂の試料溶液は最終的に10mlとする。
(2) 標準溶液の調製
市販のトリクロロブチルスズ、ジクロロジブチルスズ、クロロトリブチルスズの混合溶液から3つの標準溶液(定量用に1ppm、0.1ppm、定量下限用に10ppb)を調製する。
(3) 測定装置
GC-MS:GC mate II(日本電子社製)
GC:GC-2010型(島津製作所製)
(4) GC測定条件
カラム:CP-SIL-5CB(0.25mmID×60m)
温度:100℃〜250℃(5℃/min)
注入口温度:250℃
キャリヤーガス:ヘリウム(1ml/min)
注入量:1μl
(5) MS測定条件
検出:選択的イオンモニタリング(SIM)
加速電圧:4kv
イオン源温度:180℃
測定質量数:m/z=179(モノブチル)
m/z=263(ジブチル、トリブチル)
【0039】
【表1】

【0040】
樹脂製造例1
表2に示す無水トリメリット酸以外の原料モノマー及びスズ触媒を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、230℃で10時間縮重合反応させた。さらに、8.3kPaで1時間反応させた後、210℃に冷却し、表2に示す無水トリメリット酸を添加し、常圧で1時間反応させた後、10.0kPaにて所望の軟化点に達するまで反応を行い、樹脂A〜C及びE〜Hを得た。
【0041】
樹脂製造例2
表2に示す原料モノマー及びスズ触媒を、窒素導入管、脱水管、攪拌器及び熱電対を装備した5リットル容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下、230℃で12時間縮重合反応させた。さらに、8.0kPaで所望の軟化点に達するまで反応させて樹脂Dを得た。
【0042】
【表2】

【0043】
実施例1〜5及び比較例1〜4
表3に示す結着樹脂を合わせて100重量部、磁性粉「MTS106HD」(戸田工業社製)67重量部、荷電制御剤「T-77」(保土ヶ谷化学工業社製)0.5重量部及びポリエチレンワックス「C-80」(サゾール社製、融点82℃)2重量部及びポリプロピレンワックス「NP-105」(三井化学社製、融点140℃)2重量部をヘンシェルミキサーで十分混合した後、同方向回転二軸押出し機を用い、ロール回転速度200r/min、ロール内の加熱温度140℃、混合物の供給速度は20kg/hであった。得られた溶融混練物を冷却、粗粉砕した後、ジェットミルにて粉砕し、分級して、体積中位粒径(D50)が8.0μmの粉体を得た。得られた粉体100重量部に対して、疎水性シリカ「アエロジル R-972」(日本アエロジル社製)1.5重量部及び疎水性酸化チタン「TiSr」(富士チタン社製)1.0重量部を添加し、ヘンシェルミキサーにより混合して磁性トナーを得た。
【0044】
試験例1〔帯電量の環境安定性〕
磁性トナー0.6gとシリコーンフェライトキャリア(関東電化工業社製、体積平均粒子径90μm)19.4gを50ml容のポリ瓶に入れ、表3に示す温度、相対湿度の各環境条件下において、ボールミルを用いて400r/minで混合し、帯電量をq/mメーター(EPPING社製)を用いて測定した。混合時間60秒後の帯電量と混合時間600秒後の帯電量の比率(混合時間600秒後の帯電量/混合時間60秒後の帯電量)を計算し、以下の評価基準に従って帯電量の環境安定性を評価した。結果を表3に示す。
【0045】
〔帯電量の環境安定性の評価基準〕
◎:帯電量の比率が0.8以上
○:帯電量の比率が0.6以上、0.8未満
×:帯電量の比率が0.6未満
【0046】
【表3】

【0047】
以上の結果より、ポリエステル中のジアルキルスズ化合物及びトリアルキルスズ化合物の総含有量が重量基準で50ppmを超える樹脂E〜Hを含有したトナーの比較例1〜4と対比して、実施例1〜5のトナーはポリエステル中のジアルキルスズ化合物及びトリアルキルスズ化合物の総含有量が重量基準で50ppm以下である樹脂A〜Dを含有するため、帯電量の環境安定性に優れていることが分かる。特に、本試験例は、高速印刷機を想定し、ボールミルの回転数を400r/minと高めに設定し、しかも初期帯電量として攪拌開始から60秒後の帯電量と耐刷後の帯電量として攪拌時間600秒後の帯電量との対比を行ったが、実施例1〜5のトナーは環境条件に係らず、耐刷に伴う帯電量の低下率が小さく、優れた帯電量の環境安定性を示すことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の電子写真用トナーは、電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において形成される潜像の現像等に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は、ブチルスズ(IV)ヒドロキシオキサイド(MBTO)、ジブチルスズ化合物(DBT)、トリブチルスズ化合物(TBT)の含有量の測定において、GC/MS/SIM測定に用いる試料溶液の調製方法を示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂及び磁性粉を含有してなる電子写真用トナーであって、前記結着樹脂が炭素数1〜18のアルキル基を有するモノアルキルスズ化合物の存在下、アルコール成分とカルボン酸成分とを縮重合させて得られるポリエステルであり、該ポリエステル中のジアルキルスズ化合物及びトリアルキルスズ化合物の総含有量が重量基準で50ppm以下であるポリエステルを含有してなる、電子写真用トナー。
【請求項2】
炭素数1〜18のアルキル基を有するモノアルキルスズ化合物中に不純物として存在するジアルキルスズ化合物及びトリアルキルスズ化合物の総含有量が2.0重量%以下である、請求項1記載の電子写真用トナー。
【請求項3】
炭素数1〜18のアルキル基を有するモノアルキルスズ化合物の存在量が、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100重量部に対して、0.01〜1重量部である、請求項1又は2記載の電子写真用トナー。
【請求項4】
アルコール成分が、式(I):
【化1】

(式中、ROはアルキレンオキサイドであり、Rは炭素数2又は3のアルキレン基、x及びyはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示す正の数であり、xとyの和は1〜16である)
で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を含有してなるポリエステルである、請求項1〜3いずれか記載の電子写真用トナー。
【請求項5】
磁性粉を、結着樹脂100重量部に対して10〜90重量部含有してなる請求項1〜4いずれか記載の電子写真用トナー。

【図1】
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【公開番号】特開2007−187923(P2007−187923A)
【公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−6648(P2006−6648)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】