説明

電子写真用ベルト及び電子写真装置

【課題】本発明は、表面の潤滑性および平滑性に優れた電子写真用ベルトに関する。
【解決手段】当該電子写真用ベルトは、ポリアルキレンテレフタレートおよびポリアルキレンナフタレートから選ばれる少なくとも一方と、特定の構造を有する熱可塑性シリコーンエラストマーとを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真用ベルト及び電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の発明の目的は、長期にわたって表面の耐フィルミング性および転写性に優れ、かつクリーニングブレードの摩耗を抑制する中間転写ベルトの提供にある。そして、かかる目的が、マトリックス樹脂および鎖状シリコーンを含んでなり、マトリックス樹脂に対する該シリコーンの含有量を0.5〜10重量%とした転写ベルトにより達成できることを記載している。特許文献1に係るシリコーンとしては、鎖状のオルガノポリシロキサンが挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−316040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者等は、特許文献1に記載の発明に係る転写ベルトについて検討したところ、以下のような課題を見出した。すなわち、転写ベルトの表面の潤滑性を均一に向上させるためには、マトリックス樹脂とシリコーンとを混練し、シリコーンをマトリックス樹脂中に均一に分散させる必要がある。
ところで、電子写真用ベルトに用いる樹脂として、屈曲耐久性に優れるポリアルキレンテレフタレートやポリアルキレンナフタレートを用いたいという要望がある。これらの樹脂は融点(軟化点)が約260℃と非常に高い。そのため、これらの樹脂を従来のシリコーンと混練しようとすると、260℃以上の温度で行なう必要がある。しかしながら、高温下では、通常のシリコーンは分解、或いはシリコーン同士の架橋により、所期のベルトの表面特性の改質効果を得られないことがあった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、マトリックス樹脂として高融点のポリアルキレンテレフタレートまたはポリアルキレンナフタレートを含み、かつ、表面の離型性、潤滑性およびや二次転写性に優れた電子写真用ベルトを提供することにある。
また、本発明の他の目的は、中間転写ベルトを備え、かつ、安定して高品位な電子写真画像を形成することのできる電子写真画像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電子写真用ベルトは、(A)ポリアルキレンテレフタレートおよびポリアルキレンナフタレートから選ばれる少なくとも一方と、(B)下記式(I)で表される繰り返し単位を有する熱可塑性シリコーンエラストマーとを含有することを特徴とする:
【化1】

(上記式(I)において、R〜Rは各々独立に炭素数1〜20の1価の炭化水素基を表す。Xは炭素数2〜20の2価の炭化水素基を表す。aは2〜10の整数を表す。また、bは1〜4000の整数を表す。)。
また本発明に係る電子写真装置は、上記の電子写真用ベルトを中間転写ベルトとして具備していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、融点の高いポリアルキレンテレフタレートおよびポリアルキレンナフタレートから選ばれる少なくとも一方をマトリックス樹脂として含む電子写真用ベルトに対しても、優れた表面特性を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る電子写真装置の説明図である。
【図2】ブロー成形装置の一例の概略図である。
【図3】射出成形装置の一例の概略図である。
【図4】本発明で作製したプリフォームの説明図である。
【図5】本発明で作製したボトル状成形物の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係る電子写真用ベルトは、下記(A)および(B)を含む:
(A)ポリアルキレンテレフタレートおよびポリアルキレンナフタレートから選ばれる少なくとも一方;
(B)熱可塑性シリコーンエラストマー。
そして、上記(B)の熱可塑性シリコーンエラストマーは、下記構造式(I)で表される繰り返し単位を有する。
構造式(I)
【化2】

上記構造式(I)において、R〜Rは、各々独立に炭素数1〜20の1価の炭化水素基を表す。Xは、炭素数2〜20の2価の炭化水素基を表す。また、aは2〜10、bは1〜4000の整数を表す。
【0010】
<成分(A)について>
ポリアルキレンテレフタレートおよびポリアルキレンナフタレートから選ばれる少なくとも一方は、後述する成分(B)の熱可塑性シリコーンエラストマーに対するマトリックス樹脂として機能する。ポリアルキレンナフタレートとしては、ポリエチレンナフタレートを特に好適に用いることができる。また、ポリアルキレンテレフタレートとしては、ポリエチレンテレフタレートを好適に用いることができる。そして、本発明においてはポリアルキレンテレフタレートを1種または2種以上を任意の割合で混合してもよい。
<成分(B)について>
成分(B)に係る熱可塑性シリコーンエラストマーは、前記式(I)で表される繰り返し単位を有する。式(I)から明らかなように、本発明にかかる熱可塑性シリコーンエラストマーは、分子骨格中にシロキサン結合を有するポリジメチルシロキサンセグメントと、ウレア結合(−NH−CO−NH−)を有する結晶性セグメントとを有している。
前記式(I)中、R〜Rは各々独立に1〜20の1価の炭化水素基を表す。具体例を以下に列挙する。メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、ビニル基、フェニル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基。この場合の炭化水素基には、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のフルオロアルキルも含まれる。
Xは炭素数2〜20の2価の炭化水素基を表す。Xの例としては、直鎖アルキレン基、環式アルキレン基、アラルキレン基等が挙げられ、具体例としては、下記構造式(II)で示される、4、4´−ジシクロヘキシルメチル基を挙げることができる。
【化3】

【0011】
電子写真用ベルトとして求められる性能に応じて上記材料の他に、導電剤、相溶化剤、分散剤、着色剤、各種フィラーなどの添加剤を使用することができる。
【0012】
ベルト中に添加剤を分散させるのは、ベルトの機械特性、電気特性、化学特性などを向上するためである。具体的には、ベルトの弾性率を向上し、長期間使用しても変形無く駆動させたり、表面の帯電特性を制御して転写性を向上させたり、さまざまな環境による変動を低減させ、長期安定した使用ができるようにするためである。
【0013】
ここで、本発明において、成分(A)中に分散させる添加剤として上記成分(B)に係る熱可塑性シリコーンエラストマーを選択した理由を以下に述べる。
電子写真用ベルトは、電子写真装置内において所定の張力で張架された状態で使用されることとなるが、長期の使用に伴って、表面にトナーやその外添剤、紙等との接触によって傷が付いたり、また、トナーあるいはトナーの外添剤が付着することがある。これらは、電子写真画像の品位に影響を与える場合がある。このような課題を解決するために、電子写真用ベルトの表面の潤滑性を向上することが行われてきた。一般にベルト表面の潤滑性を向上するための技術として、高温で熔融混練してシリコーンをマトリックス樹脂中に分散させる方法が知られている。
【0014】
しかしながら、シリコーンをマトリックス樹脂中に分散させる場合、使用するシリコーンの選択が非常に重要となる。シリコーンの種類にはシリコーンオイル、シリコーンゴム、熱可塑性シリコーンエラストマーなどがある。
シリコーンオイルは、マトリックス樹脂との高温での熔融混練中に揮発し、最終的なベルト中での含有量の制御が困難である。また、シリコーンオイルを練り込んだマトリクス樹脂は成形性が劣ることがある。
またシリコーンゴムはマトリクス樹脂との熔融混練中にシリコーンゴム同士が架橋して塊となり、マトリックス樹脂中に細かく分散させにくい。そのため、ベルト表面の潤滑性を十分に向上させることが困難であり、またベルトの表面にシリコーンゴムの凝集体に由来する凸部が形成されることがある。かかる不均一な凸部の存在するベルトを中間転写ベルトとして使用した場合、二次転写性が低下することがある。
【0015】
上記した従来のシリコーン潤滑剤に対して、本発明に係る熱可塑性シリコーンエラストマーは潤滑性、耐水性、耐熱性および電気特性に優れるなどのシリコーンとしての特性とゴム弾性を有する熱可塑性エラストマーとしての特性の両方を有している。
【0016】
シリコーンの特性はシロキサン結合以外の分子鎖中の主鎖、側鎖、末端の結合の種類によりその特性が大きく変わる。結合には代表的なものとしてエーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合などがある。これらの結合を付与することで潤滑性、耐水性、耐熱性および電気特性などのさまざま特性をシリコーンに付与することができる。このように分子鎖中の結合種はその特性を決める上で重要な因子である。
【0017】
上記の熱可塑性シリコーンエラストマーの分子鎖中のウレア結合は極性基であり、非常に水素結合しやすい。従って、他の極性樹脂と混ざりやすい。また、シリコーン同士も水素結合により結合しやすい。これにより、ウレア結合を有している上記の熱可塑性シリコーンエラストマーはシリコーンゴムと架橋の種類が大きく異なっている。
【0018】
シリコーンゴムの架橋はポリマー同士が共有結合により結びついており、結合力が非常に大きい。従って、高温で熔融混練をすると、与えられた熱エネルギーが架橋部分以外の切断に費やされる結果、シリコーンゴムの分子量は低下し、ひいてはシリコーンゴムが分解されることとなる。
【0019】
これに対して、上記したウレア結合を含有する熱可塑性シリコーンエラストマーは、水素結合によって架橋しているものと考えられる。水素結合による架橋力は共有結合による架橋力と比較して弱い。水素結合は非共有結合性の分子間力的相互作用であるため、これは一種の物理架橋と考えられ、この物理架橋は熱エネルギーを与えることで容易に切断される。
そのため、水素結合により架橋している熱可塑性シリコーンエラストマーは、熱エネルギーが水素結合の切断に費やされるため、シリコーン分子鎖が切断されにくく、分子量も低下しにくい。すなわち、ウレア結合を含有する熱可塑性シリコーンエラストマーは高温下でも分解されにくい。すなわち、耐熱性に優れている。そのため、本発明に係る熱可塑性シリコーンエラストマーは、高融点のマトリックス樹脂と一緒に高温で熔融混練することができるのである。
【0020】
また、水素結合は、熱エネルギーにより切断されても、冷却されると再び形成される。水素結合の切断および再生は可逆反応と考えられ、このような特性を有する熱可塑性シリコーンエラストマーはエネルギー的に安定であり、温度変化による特性低下が小さい。
本発明の熱可塑性シリコーンエラストマーは、シリコーンの特性を低下させることなく、マトリックス樹脂中に分散することが可能である。
【0021】
従来のシリコーンゴムは熔融混練時の架橋や低分子化により、マトリックス樹脂中への分散性が悪く、表面平滑性が低下したり、潤滑性が十分発揮されない場合があった。これは架橋によりシリコーンゴムの特性が変化したり、シリコーンゴムの塊がベルト表面に突出した結果、表面凹凸が大きくなるためである。さらに、ベルト内部に存在するシリコーンゴムの塊は、マトリックス樹脂相との密着性低下を引き起こし、ベルトの機械的強度を低下させ、耐久性を悪化させる要因にもなっていた。
【0022】
しかし、本発明に係る電子写真用ベルトは、熱可塑性シリコーンエラストマーが均一に分散されている。従って、表面における潤滑性、表面平滑性に優れる。また、マトリックス樹脂中に細かく相溶、分散しているためマトリックス樹脂相との密着性も優れ、機械強度が高く、耐久性に優れる。
【0023】
ベルトの表面平滑性は電子写真における二次転写性の重要な因子でもあり、表面平滑性が悪いと初期画像の画質が著しく低下してしまう。これはベルト上の凹凸が大きいとトナーが安定して保持されず、トナー層厚みの違いにより微小抵抗ムラが発生したり、ベルトとトナー間の静電吸着力に差ができるためである。静電吸着力の差が大きいと効率良く二次転写するための電圧制御が難しくなり、これが二次転写性の低下を引き起こす。
【0024】
しかし、本発明の熱可塑性シリコーンエラストマーが分散されたベルトは、表面平滑性に優れているため、トナーが安定してベルト上に保持される。さらにベルト上に保持されたトナーに対する静電吸着力も均一にかかるため、電圧制御が容易であり二次転写性が向上する。また、シリコーン分子鎖中のウレア基の架橋力は非常に小さいため、架橋による抵抗上昇を緩和することができ、ベルトの微小抵抗ムラによる転写性の低下を抑制することができる。従って、ウレア結合を含有した熱可塑性エラストマーが分散されたベルトは二次転写性の向上に非常に効果的である。
【0025】
また、本発明の熱可塑性シリコーンエラストマーは熱可塑性エラストマーとしての特性も有している。熱可塑性エラストマーはゴム弾性を有するので、ベルトの機械特性の向上に関して、特に弾性率の調整に役立ち、ベルトを長期間使用しても巻きグセが少ない強度にベルトを調整できる特徴がある。巻きグセとは、駆動ローラと従動ローラに架け渡されたベルトが一定の期間放置されるとベルトのローラに巻き付いていた部分に発生する永久歪のことである。この永久歪みが大きいとベルトの内部応力に差ができて破断したり、二次転写部分でトナーの再転写が起こり、二次転写性の低下を引き起こす原因にもなる。マトリックス樹脂中に熱可塑性シリコーンエラストマーを分散してベルトの弾性率を調整し、巻きグセを低減することも本発明においては効果的である。
【0026】
本発明の熱可塑性シリコーンエラストマーはマトリックス樹脂中に0.1〜10質量%含有しているのが望ましい。マトリックス樹脂中の含有量が上記の範囲内にあることで、電子写真用ベルトの弾性率に大きな影響を与えることなく、表面の潤滑性の向上の効果をより確実に発揮させることができる。
【0027】
以上のように、本発明に係る熱可塑性シリコーンエラストマーにより、高温で熔融混練する工程を含んでいても、成形性や機械特性に優れたベルトを作製することができる。
さらに、本発明の熱可塑性シリコーンエラストマーは、分子鎖中に含まれるウレア結合の存在により、マトリックス樹脂と相溶させることができ、マトリクス樹脂中に細かく分散させることができる。したがって、作製したベルトは表面平滑性や二次転写性にも非常に優れている。
【0028】
<ベルト製造方法>
本発明に係るシームレス形状の電子写真用ベルトの成形方法には、例えば遠心成形、チューブ押出、インフレーション成形、押出成形、円筒押出成形、ブロー成形などが挙げられる。これらの中で、図2に示すブロー成形が特に好ましい。図2において、101は試験管形状のプリフォーム、102は加熱炉、103はブロー型、104は延伸棒、105はブロー成形品、および106はエア流入口を示す。
【0029】
ブロー成形の特徴は、延伸により分子配向が起こり、ベルトの機械強度が向上すること、成形再現性に優れ、膜厚ムラが小さいベルトを成形できることにある。また、高速で成形でき、リサイクル品も再利用できることからコストダウンも可能である。
【0030】
以下に、ブロー成形の一実施態様の詳細を示す。
140℃で6時間以上乾燥させた前記マトリックス樹脂と熱可塑性シリコーンエラストマーをニ軸押出し機により、260℃で熔融混練する。均一に混合された各成分を、直径2mm程度のストランドとして押し出して冷水で固化し、カットしてペレットを作製する。樹脂中に水分を含んでいると成形性が低下するため、作製したペレットを140℃で6時間以上乾燥させる。乾燥させたペレットを、図3に示すような射出成形装置に投入し、285℃に調節して射出成形を行い、図4に示すようなプリフォームを作製する。図3において、107はホッパー、108は射出成形装置、109はキャビティ型、および110はコア型、および111はキャビティに充填された樹脂により成形されたプリフォームを示す。
【0031】
次に、作製したプリフォームを用いてブロー成形を行う。図2に示すようなブロー成形装置にプリフォームを設置し、外部加熱ヒーターと内部加熱ヒーターでプリフォームをガラス転移温度以上に加熱する。ガラス転移温度以上に加熱されたプリフォームの口部分を、密封された円筒状の金型で挟み、延伸棒で上方向に延伸し、エアを流入して横方向に二軸延伸して図5に示すボトル状成形物を作製する。
【0032】
さらに、作製したボトル状成形物をシームレス円筒状金型に挿入し、内部に0.05MPaのエアを流入させ、口部分を密閉し、回転させながら200℃まで加熱した後、室温まで冷却する。円筒状金型から取り出した熱処理したボトル状成形物の上下を超音波カッターでカットし、目的のサイズのシームレスな電子写真用ベルトを得る。
【実施例】
【0033】
(実施例1)
<電子写真用ベルトの作製>
下記表1−1の材料を2軸の押し出し機により温度260℃で熔融混練して各成分を均一に混合し、直径2mm程度のストランドとして押し出し、次いで該ストランドをカットしてペレット化した。これを成形用原料(1)とした。
【表1−1】

*:「GENIOMER140」は前記式(I)においてXが炭素数=13の4,4’−ジシクロヘキシルメチル基であり、a=3、b=39であり、かつ、重量平均分子量(Mn)が約36000である。
【0034】
次に、温度140℃で6時間乾燥させた成形用原料(1)を図3に示す射出成形装置108のホッパー107へ投入し、設定温度を285℃にして成形して試験管形状のプリフォームを得た。このときの金型温度は15℃とした。また、図4に示した試験管形状を有するプリフォームのサイズは、図4中のXが136mm、Yが25mmである。このプリフォームを図2に示すブロー成形装置に投入し、下記条件にて成形し図5に示すボトル状成形物501を得た。
・ 縦方向延伸倍率 3.2倍;
・ 横方向延伸倍率 4.9倍;
・ 加熱位置 プリフォームを縦方向に5分割;
・ プリフォーム中心位置の温度 160℃;
・ 一次圧力 0.8MPa;
・ 延伸棒が移動を始めてから気体を流入するまでの時間 0.3sec;
・ 二次圧力 0.8MPa;
・ ブロー金型温度 15℃。
【0035】
次に得られたボトル状成形物501をシームレス円筒状金型に挿入した。このときのシームレス円筒状金型は電鋳製法によって成形された金型を使用した。
具体的には、ボトル状成形物501を、シームレス円筒状金型の内部に挿入後、底型及び肩型を取り付け、ボトル内部に0.05MPaのエアを流入させ、ボトル口部分を密封した。次いで、当該シームレス円筒状金型を加熱装置に設置し、30rpmで回転させながらハロゲンヒータで100秒かけて25℃から190℃まで加熱した。190℃に到達後、エアを当てて50秒かけて金型の温度を25℃まで冷却した。その後、シームレス円筒状金型から熱処理したボトル状成形物を目視で観測すると、歪みや凹みは確認されなかった。
熱処理したボトル状成形物の上端部および下端部を超音波カッターでカットし、長さ250mm、直径119mmの電子写真用ベルトを得た。この電子写真用ベルトの平均膜厚は71μmであり、ベルト中心部の膜厚ムラは71±5μmであった。
【0036】
<評価>
作製した電子写真用ベルトを以下のように評価した。
(表面粗さ)
算術平均粗さ(Ra)および十点平均粗さ(Rzjis)を表面粗さ測定機(商品名:KOSAKA−SE3500、日本海計測特機株式会社製)を用いて測定した。測定は作製した電子写真用シームレスベルトの中央部から30mm×30mmの試験片を切り出し、これをサンプルとして使用した。サンプルを試料台に接着剤で固定し、測定端子をサンプルに接触させ、ベルト幅方向に0.1mm/secの速度で距離4.0mmを走査して測定を行った。
【0037】
(摩擦係数(μ))
測定にはフリクションプレイヤー(商品名:FPR−2100型、RHESCA社製)を用いた。測定サンプルとしては、電子写真用シームレスベルトの中央部から切り出した30mm×30mmの試験片を用いた。測定端子と測定サンプルとの間に荷重を与えるため、ボール付き測定端子上に300gの重りを固定し、測定サンプルの表面と接触させた後、回転半径10mm、回転速度10rpm、回転数100回転の条件でベルト表面上を時計回りに円運動させて測定を行った。上記表面粗さ、および摩擦係数の測定結果を表2に示す。
【0038】
(画像評価1)
電子写真用ベルトを中間転写ベルトとしてフルカラーの電子写真装置(図1)に装着し、紙にベタ黒の画像を印字した。紙には、算術平均粗さ(Ra)=4.0μm、十点平均粗さ(Rzjis)=15μmの表面が粗い紙を用いた。また、紙は、温度23℃、湿度45%RHの環境下に1日置いて上記の画像評価に用いた。評価は、10枚目にプリントされた画像について、目視で二次転写性を評価した。
その結果、転写ムラは確認できず画質は非常に良好であった。なお、図1において、1は感光ドラム、2は軸、3は一次帯電器、4は不図示の像露光手段からの像露光光、5C、5K、5Mおよび5Yはシアン、黒、マゼンタおよびイエローの各色の現像器、6pおよび6sは転写部材、7はクリーニング部材、7rは補助ローラ、8は定着器、11は中間転写体、12はテンションローラ、13はクリーニング装置、およびPは紙等の転写媒体を示す。
【0039】
(画像評価2)
さらに続けてフルカラー画像を1万枚プリントした後の画像を耐久画像(1)とし、目視で二次転写性の評価をしたところ、画像域の部分的に小さな転写ムラが確認されたが画質は良好であった。
【0040】
(実施例2)
<電子写真用ベルトの作製>
下記表1−2の材料を用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真用ベルトを得た。この電子写真用ベルトの平均膜厚は68μm、ベルト中心部の膜厚ムラは68±5μmであった。
【表1−2】

【0041】
<評価>
作製した電子写真用ベルトの表面粗さ、摩擦係数を実施例1と同様に測定した。その結果を下記表2に示す。また、実施例1と同様にして画像評価を行なった。その結果、(画像評価1)については、転写ムラは確認できず画質は非常に良好であった。
また、(画像評価2)については、画像域の全体に渡って小さな転写ムラが確認されたが画質は良好であった。
【0042】
(実施例3)
<電子写真用ベルトの作製>
下記表1−3に記載の材料を用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真用ベルトを得た。このベルトの平均膜厚は69μm、ベルト中心部の膜厚ムラは69±6μmであった。
【表1−3】

【0043】
<評価>
作製した電子写真用ベルトの表面粗さ、摩擦係数を実施例1と同様に測定した。その結果を下記表2に示す。また、実施例1と同様にして画像評価を行なった。その結果、(画像評価1)については転写ムラは確認できず画質は非常に良好であった。
また、(画像評価2)については、画像域の全体に渡って小さな転写ムラが確認されたが画質は良好であった。
【0044】
(実施例4)
<電子写真用ベルトの作製>
下記表1−4に記載の材料を用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真用ベルトを得た。このベルトの平均膜厚は72μm、ベルト中心部の膜厚ムラは72±6μmであった。
【表1−4】

【0045】
<評価>
作製した電子写真用ベルト(4)の表面粗さ、摩擦係数を実施例1と同様に測定した。その結果を下記表2に示す。また、実施例1と同様にして画像評価を行なった。その結果、(画像評価1)については、画像域の部分的に小さな転写ムラが確認されたが画質は良好であった。また、(画像評価2)については、画像域の全体に渡って小さな転写ムラが確認されたが画質は良好であった。
【0046】
(実施例5)
<電子写真用ベルトの作製>
下記表1−5の材料を用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真用ベルトを得た。このベルトの平均膜厚は71μm、ベルト中心部の膜厚ムラは69±6μmであった。
【表1−5】

<評価>
作製した電子写真用ベルトの表面粗さ、摩擦係数を実施例1と同様に測定した。その結果を下記表2に示す。また、実施例1と同様にして画像評価を行なった。その結果、(画像評価1)については、画像域の部分的に小さな転写ムラが確認されたが画質は良好であった。また、(画像評価2)については、画像域の全体に渡って小さな転写ムラが確認されたが画質は良好であった。
【0047】
(実施例6)
<電子写真用ベルトの作製>
下記表1−6の材料を用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真用ベルトを得た。このベルトの平均膜厚は69μm、ベルト中心部の膜厚ムラは70±6μmであった。
【表1−6】

*「GENIOMER 140改」は、上記式(I)においてXがエチレン基である。
【0048】
<評価>
作製した電子写真用ベルトの表面粗さ、摩擦係数を実施例1と同様に測定した。その結果を下記表2に示す。また、実施例1と同様にして画像評価を行なった。その結果、(画像評価1)については、画像域に部分的に小さな転写ムラが確認されたが画質は良好であった。また、(画像評価2)については、画像域の全体に渡って小さな転写ムラが確認されたが画質は良好であった。
【0049】
(比較例1)
<電子写真用ベルトの作製>
下記表1−7の材料を用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真用ベルトを得た。このベルトの平均膜厚は73μm、ベルト中心部の膜厚ムラは73±10μmであった。
【表1−7】

<評価>
作製した電子写真用ベルトの表面粗さ、摩擦係数を実施例1と同様に測定した。その結果を下記表2に示す。また、実施例1と同様にして画像評価を行なった。その結果、(画像評価1)については、画像域に部分的に大きな転写ムラが確認された。また、(画像評価2)については、画像域全体にわたって大きな転写ムラが確認された。
【0050】
(比較例2)
<電子写真用ベルトの作製>
下記表1−8に記載の材料を用いた以外は、実施例1と同様にして電子写真用ベルトを得た。このベルトの平均膜厚は70μm、ベルト中心部の膜厚ムラは70±4μmであった。
【表1−8】

<評価>
作製した電子写真用ベルトの表面粗さ、摩擦係数を実施例1と同様に測定した。その結果を下記表2に示す。また、実施例1と同様にして画像評価を行なった。その結果、(画像評価1)については、画像域全体にわたって小さな転写ムラが確認された。また、(画像評価2)については、画像域全体にわたって大きな転写ムラが確認された。
【0051】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリアルキレンテレフタレートおよびポリアルキレンナフタレートから選ばれる少なくとも一方と、
(B)下記式(I)で表される繰り返し単位を有する熱可塑性シリコーンエラストマーとを含有することを特徴とする電子写真用ベルト:
【化1】

(式(1)において、R〜Rは各々独立に炭素数1〜20の1価の炭化水素基を表し、Xは炭素数2〜20の2価の炭化水素基を表し、aは2〜10の整数を表し、bは1〜4000の整数を表す)。
【請求項2】
前記式(I)において、R〜Rがメチル基であり、Xが4,4’−ジシクロヘキシルメチル基である請求項1に記載の電子写真用ベルト。
【請求項3】
前記ポリアルキレンテレフタレートがポリエチレンテレフタレートである請求項1または2に記載の電子写真用ベルト。
【請求項4】
前記ポリアルキレンナフタレートが、ポリエチレンナフタレートである請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子写真用ベルト。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子写真用ベルトを中間転写ベルトとして具備していることを特徴とする電子写真装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−154355(P2011−154355A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284757(P2010−284757)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】