説明

電子写真用現像剤およびその製造方法、並びにトナーの評価方法

【課題】長期にわたって画像カブリやフィルミングの発生を防止することができる電子写真用現像剤およびその製造方法、並びにトナーの評価方法を提供することである。
【解決手段】少なくとも結着樹脂および着色剤を含むトナー粒子に外添剤を外添したトナーと、キャリアとを混合し撹拌して現像剤化され、現像剤化の前後における前記トナーを蛍光X線分析法により測定して得られる外添剤の強度が、下記関係式(I)を満足する電子写真用現像剤およびその製造方法、並びにトナーの評価方法である。
【数3】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、レーザープリンタ等で採用されている電子写真法、静電記録法、静電印刷法等において、静電潜像を現像するために使用する乾式の電子写真用現像剤およびその製造方法、並びにトナーの評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、乾式の電子写真法等において感光体上に形成された静電潜像を現像する際に用いられる二成分系の電子写真用現像剤は、結着樹脂、着色剤等を含むトナー粒子にシリカ等の外添剤を外添したトナーと、キャリアとを混合し撹拌して現像剤化することにより製造されている。このように外添剤がトナー粒子表面に存在することによって、トナーの帯電性や流動性等を制御することができる。
【0003】
ところが、トナー粒子への付着力が弱いことが原因で外添剤がトナー粒子表面から遊離すると、フィルミングなどの不具合が発生することがある。そこで、特許文献1には、現像剤をダイス型で圧縮してペレットを作製し、このペレットの表裏面を蛍光X線分析法により測定して、得られた測定値の差から外添剤の遊離量を求める測定方法、およびこれにより得られた外添剤の遊離量と外添剤の添加量とが所定の関係を満足する現像剤が提案されている。この特許文献1によれば、外添剤の添加量に対する外添剤の遊離量の範囲を規定することで、フィルミングの発生を防止して良好な画像を得ることができるとされている。
【0004】
しかしながら、本発明者の検討によると、特許文献1に記載の現像剤のように外添剤の遊離量を規定するという方法では、フィルミングの発生は防止できても、初期から長期の連続印字時(耐刷時)まで安定したトナーの帯電性および流動性を維持することができず、画像カブリが発生することが判明した。
【特許文献1】特開2001−92175号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、長期にわたって画像カブリやフィルミングの発生を防止することができる電子写真用現像剤およびその製造方法、並びにトナーの評価方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
トナーとキャリアとを混合し撹拌して現像剤化することにより得られる二成分現像剤では、現像剤化の際におけるキャリアとの摩擦によって、トナー粒子から外添剤の一部が遊離するだけでなく、外添剤の一部がトナー粒子中に埋没する。このような外添剤の埋没が生じると、トナーの帯電性や流動性等を制御するという外添剤の機能が低下し、画像カブリが発生する。ところが、特許文献1に記載の遊離量の測定方法では、現像剤のペレットの表裏面をそれぞれ測定し、得られた測定値を比較するだけであるため、現像剤化による影響を考慮していない。しかも、この測定方法では、外添剤の遊離量を測定するのみであり、現像剤化時の摩擦による外添剤の埋没度合いについては評価していない。したがって、特許文献1に記載の方法では、外添剤の遊離に起因するフィルミングの発生を抑制することはできても、外添剤の埋没に起因するトナーの帯電性および流動性の低下を抑制することはできないので、画像カブリが生じると考えられる。
【0007】
このような考察を基に、本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、外添剤の埋没度合いは、トナーを蛍光X線分析法により測定したときの外添剤の強度と密接に関係しており、外添剤がトナー粒子中に埋没する程、外添剤の強度が小さくなる傾向にあるという知見を得た。さらに、蛍光X線分析法を用いて、現像剤化の前後のトナーにおける外添剤の強度をそれぞれ測定し、得られた測定値を比較することで、外添剤の遊離度合いおよび外添剤の埋没度合い、すなわち遊離および埋没により外添剤としての機能を発揮しなくなった外添剤の割合を把握することができるという知見を得た。これらの知見に基づいて、本発明者は、さらに検討を重ね、現像剤化の前後における外添剤の強度が所定の関係を満足するときには、フィルミングだけでなく、長期にわたって安定した帯電性および流動性を維持して画像カブリをも防止することができるという新たな事実を見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の電子写真用現像剤は、少なくとも結着樹脂および着色剤を含むトナー粒子に外添剤を外添したトナーと、キャリアとを混合し撹拌して現像剤化される現像剤であって、蛍光X線分析装置の試料台上に、現像剤化の前後における前記トナーの薄層をそれぞれ形成し、これらのトナー薄層にX線を照射して測定される外添剤の強度が、下記関係式(I)を満足することを特徴とする。
【数2】

【0009】
また、本発明の電子写真用現像剤の製造方法は、少なくとも結着樹脂および着色剤を含むトナー粒子に外添剤を外添してトナーを得、該トナーとキャリアとを混合し撹拌して現像剤化する電子写真用現像剤の方法であって、蛍光X線分析装置の試料台上に、現像剤化の前後におけるトナーの薄層をそれぞれ形成し、これらのトナー薄層にX線を照射して外添剤の強度をそれぞれ測定し、これらの強度比に基づいて設定した撹拌速度および/または撹拌時間で撹拌して現像剤化することを特徴とする。
【0010】
ところで、トナーにおける外添剤の強度を蛍光X線分析法を用いて測定するに際して、特許文献1に記載のように現像剤を圧縮して作製したペレットを測定用試料として使用すると、ペレット作製時の圧縮により外添剤の一部がトナー粒子中に埋没してしまうため、トナーへの埋没度合いを正確に測定できないことがある。一方、本発明のトナーの評価方法では、蛍光X線分析装置の試料台上にトナーの薄層を形成し、該トナー薄層にX線を照射して外添剤の強度を測定するので、測定用試料の作製時に外添剤がトナー粒子中に埋没するのを防止できる。これにより、外添剤の遊離度合いはもちろんのこと、外添剤の埋没度合いをも正確に測定することができる。
【0011】
すなわち、本発明のトナーの評価方法は、蛍光X線分析装置の試料台上に、少なくとも結着樹脂および着色剤を含むトナー粒子に外添剤が外添されたトナーの薄層を形成し、該トナー薄層にX線を照射し外添剤の強度を測定して、前記トナー粒子に対する外添剤の遊離度合いおよび外添剤の埋没度合いを評価することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電子写真用現像剤およびその製造方法によれば、蛍光X線分析法により現像剤化の前後における外添剤の強度をそれぞれ測定し、これらの強度比が所定の範囲内になるように調整することにより、トナーの帯電性を初期から耐刷時まで安定させることができるので、長期にわたって画像カブリやフィルミングの発生を防止して良好な画像を得ることができる。
【0013】
本発明のトナーの評価方法によれば、従来のように現像剤を圧縮して作製したペレットを測定するのではなく、蛍光X線分析装置の試料台上にトナー薄層を形成し、該トナー薄層にX線を照射して外添剤の強度を測定するので、外添剤の遊離度合いはもちろんのこと、外添剤の埋没度合いをも正確に測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の電子写真用現像剤およびその製造方法、並びにトナーの評価方法について詳細に説明する。本発明の電子写真用現像剤は、少なくとも結着樹脂および着色剤を含むトナー粒子に外添剤を外添したトナーと、キャリアとを混合し撹拌して現像剤化される二成分系現像剤であり、現像剤化の前後におけるトナーを蛍光X線分析法により測定して得られる外添剤の強度が、上記関係式(I)を満足するものである。
【0015】
トナー粒子を構成する結着樹脂としては、特に限定されないが、例えばスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン-アクリル系共重合体、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、N-ビニル系樹脂、スチレン-ブタジエン樹脂等の熱可塑性樹脂を使用するのが好ましい。
【0016】
ポリスチレン系樹脂としては、スチレンの単独重合体でも、スチレンと共重合可能な他の共重合モノマーとの共重合体でもよい。共重合モノマーとしては、p-クロルスチレン;ビニルナフタレン;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレンなどのエチレン不飽和モノオレフィン類;塩化ビニル、臭化ビニル、弗化ビニルなどのハロゲン化ビニル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル、酪酸ビニルなどのビニルエステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ドテシル、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸2-クロルエチル、アクリル酸フェニル、α-クロルアクリル酸メチル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸エステル;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アクリルアミドなどの他のアクリル酸誘導体;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなどのビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、メチルイソプロペニルケトンなどのビニルケトン類;N-ビニルピロール、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルインドール、N-ビニルピロリデンなどのN-ビニル化合物などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせてスチレン単量体と共重合させてもよい。
【0017】
ポリエステル系樹脂としては、アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合ないし共縮重合によって得られるものであれば使用することができる。ポリエステル系樹脂を合成する際に用いられる成分としては、以下のものが挙げられる。まず、2価または3価以上のアルコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブテンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオール類;ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等のビスフェノール類;ソルビトール、1,2,3,6-ヘキサンテトロール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼン等の3価以上のアルコール類が例示される。
【0018】
また、2価または3価以上のカルボン酸成分としては、2価または3価カルボン酸、この酸無水物またはこの低級アルキルエステルが用いられ、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、あるいはn-ブチルコハク酸、n-ブテニルコハク酸、イソブチルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n-オクチルコハク酸、n-オクテニルコハク酸、n-ドデシルコハク酸、n-ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、イソドデセニルコハク酸等のアルキルまたはアルケニルコハク酸等の2価カルボン酸;1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,3-ジカルボキシル-2-メチル-2-メチレンカルボキシプロパン、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8-オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸等の3価以上のカルボン酸等が例示される。ポリエステル系樹脂の軟化点は、80〜150℃であることが好ましく、より好ましくは90〜140℃である。
【0019】
また、結着樹脂として熱可塑性樹脂を100%使用する必要はなく、架橋剤を添加したり、あるいは熱硬化性樹脂を一部使用してもよい。このように一部架橋構造を導入することにより、定着性を低下させることなく、トナーの保存安定性、形態保持性、耐久性等をより向上させることができる。
【0020】
熱硬化性樹脂としては、例えばエポキシ系樹脂、シアネート系樹脂等を使用することができる。具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリアルキレンエーテル型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、シアネート樹脂等の1種または2種以上の組み合わせが挙げられる。
【0021】
また、結着樹脂のガラス転移点(Tg)は、50〜65℃、好ましくは50〜60℃であるのがよい。ガラス転移点が上記範囲よりも低いと、得られたトナー同士が現像器内で融着し、保存安定性が低下してしまうおそれがある。また、樹脂強度が低いため、感光体へのトナー付着が生じる傾向がある。一方、ガラス転移点が上記範囲よりも高いと、トナーの低温定着性が低下してしまうおそれがある。結着樹脂のガラス転移点は、示差走査熱量計(DSC)を用いて比熱の変化点から求めることができる。具体的には、測定装置としてセイコーインスツルメンツ社製示差走査熱量計DSC-6200を用い、吸熱曲線を測定することで求めることができる。この場合、測定試料10mgをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを使用し、測定温度範囲25〜200℃、昇温速度10℃/分で常温常湿下にて測定を行い、得られた吸熱曲線よりガラス転移点を求める。
【0022】
着色剤としては、例えば、黒色顔料としてアセチレンブラック、ランブラック、アニリンブラック等のカーボンブラック;黄色顔料として黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマンネントイエローNCG、タートラジンレーキ;橙色顔料として、赤口黄鉛、モリブテンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGK;赤色顔料としてベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B;紫色顔料としてマンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ;青色顔料として紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC;緑色顔料としてクロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファナルイエローグリーンG;白色顔料として亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等を使用できる。
【0023】
トナー粒子には、本発明の効果を害しない範囲でその他の添加剤を添加してもよい。このような添加剤としては、例えば電荷制御剤、ワックスなどが挙げられる。電荷制御剤としては、公知の電荷制御剤を使用できる。正帯電性電荷制御剤としては、例えばニグロシン染料、脂肪酸変性ニグロシン染料、カルボキシル基含有脂肪酸変性ニグロシン染料、四級アンモニウム塩、アミン系化合物、有機金属化合物等を使用でき、負帯電性電荷制御剤としては、例えばオキシカルボン酸の金属錯体、アゾ化合物の金属錯体、金属錯塩染料やサリチル酸誘導体等を使用できる。ワックスとしては、例えば合成ポリエチレンワックス、合成ポリプロピレンワックス等のオレフィン系ワックス、カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の植物系ワックス、モンタンワックス等の鉱物系ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油系ワックス、エステル系ワックス、テフロン(登録商標)系ワックス等が挙げられる。
【0024】
トナー粒子に外添する外添剤としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム等の無機微粉末、ポリメチルメタクリレート等の有機微粉末、ステアリン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を併用することができる。
【0025】
キャリアとしては、鉄、酸化鉄、還元鉄、フェライト、マグネタイト、ニッケル、コバルト等の金属、これらの合金や酸化物等からなる粒子、前記各材料の微粒子を結着樹脂中に分散させた粒子などを使用することができる。これらの粒子は、十分な帯電性を付与するために、粒子表面が樹脂被覆されているのが好ましい。粒子表面を被覆する樹脂としては、スチレンアクリル樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、シリコン樹脂、アクリル変性シリコン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。粒子表面への樹脂被覆法としては、流動層式スプレードライ法、浸せき法などが挙げられる。
【0026】
次に、本発明の電子写真用現像剤の製造方法について説明する。
<トナーの製造>
トナーは、結着樹脂および着色剤と、必要に応じてワックス、電荷制御剤等の添加剤を所定の配合比で混合し、溶融混練、粉砕、分級などの各工程を経てトナー粒子を作製した後、該トナー粒子に、帯電性、流動性等を付与するために種々の外添剤を外添して得ることができる。
【0027】
各成分の配合量は、結着樹脂100質量部に対して、着色剤が2〜10質量部、好ましくは3〜7質量部、ワックスが1〜10質量部、好ましくは2〜6質量部、電荷制御剤が2〜10質量部、好ましくは3〜7質量部であるのがよい。また、トナー粒子の体積平均粒子径は、6〜10μm程度であるのがよい。トナー粒子の体積平均粒子径は、例えばコールター社製コールターカウンターマルチサイザーIIを使用して、アパーチャー径100μmにて測定することができる。
【0028】
外添剤の外添処理は、例えばヘンシェルミキサー、V型混合機、ターブラミキサー、ハイブリタイザー、ロッキングミキサー等を用いて、外添剤とトナー粒子とを混合し撹拌することにより行うことができる。外添剤の添加量は、トナー粒子100質量部に対して0.2〜2.0質量部、好ましくは0.4〜1.0質量部であるのがよい。外添剤の平均粒子径は、6〜30nm、好ましくは8〜12nmであるのがよい。外添剤の個数平均粒子径は、例えば電子顕微鏡観察による画像解析により測定することができる。
【0029】
<現像剤化>
次に、上記で得られたトナーとキャリアとを混合し撹拌して現像剤化する。トナーの添加量は、キャリア100質量部に対して3〜10質量部、好ましくは4〜8質量部であるのがよい。キャリアの体積平均粒子径は、40〜80μm程度であるのがよい。キャリアの体積平均粒子径は、例えばレーザー回折式粒度分布測定器「LA−700」(堀場製作所社製)を用いて測定することができる。トナーとキャリアとの混合・撹拌には、例えばボールミル、ナウターミキサー、ロッキングミキサーなどの混合機を用いることができる。
【0030】
本発明における現像剤化に際しては、現像剤化する前のトナーを蛍光X線分析法により測定して得られる外添剤の強度Aと、現像剤化した後のトナーにおける外添剤の強度Bとの比(B/A)が、前記式(I)の関係を満足するように、混合機の種類、撹拌速度、撹拌時間等の現像剤化条件を予め設定しておき、この設定条件で現像剤化することが重要である。
【0031】
外添剤の強度比(B/A)が1である場合、すなわち現像剤化前後のトナー外添剤の強度が変化しない場合は、外添剤は遊離も埋没もしていない。しかし、外添剤の強度比(B/A)が1より小さい場合、すなわち現像剤化する前のトナー外添剤強度に対して現像剤化した後のトナー外添剤強度が減少している場合は、外添剤は遊離および/または埋没している。外添剤の強度比(B/A)が0.98以上になると、外添剤の遊離および埋没がともにほとんどなく、外添剤の遊離量が少なくなり過ぎて、トナーと感光体表面との間のスペーサー効果が弱まってトナーが感光体に付着し易くなりフィルミングが発生する。外添剤の強度比(B/A)が0.90以下になると、外添剤の遊離および埋没がともに進行し、外添剤の埋没量が多くなりすぎて、帯電量の低下、流動性の悪化、あるいは現像器内のトナーの帯電量分布がブロードになって画像カブリが増大する。
【0032】
現像剤化する前の外添剤の強度Aは、蛍光X線分析装置(例えば(株)リガク製RIX−2100など)を用いて以下のようにして測定することができる。まず、蛍光X線分析装置の試料台上に、現像剤化する前のトナーの薄層を形成する。このトナー薄層は、好ましくは厚みが均一であるのがよく、より好ましくは厚みが均一で単層であるのがよい。このようなトナー薄層を形成する方法としては、例えば試料台の表面に接着剤を塗布したり、両面テープを貼付して試料台の表面に粘着面を形成し、この粘着面にトナーを自然落下させるか、ブローオフ帯電量測定装置(東芝ケミカル社製TB−200など)を利用して粘着面にトナーを噴霧する方法が挙げられる。トナーを自然落下させた後、あるいは噴霧した後には、必要に応じて試料台を軽く叩いて振動を与えたり、エアーブローなどにより余分に積もったトナーを除去してもよい。ついで、トナー薄層を形成した試料台を蛍光X線分析装置にセットし、所定の条件でトナー薄層にX線を照射して外添剤の強度Aを測定する。
【0033】
現像剤化した後の外添剤の強度Bを測定する際には、蛍光X線分析法による測定前に、トナーとキャリアとを分離する必要がある。そして、トナーをキャリアから分離した後、装置の試料台上にトナーの均一な薄層を形成し、上記と同様にしてX線照射して外添剤の強度Bを測定する。
【0034】
トナーとキャリアとの分離には、例えばブローオフ帯電量測定装置(東芝ケミカル社製TB−200など)を用いることができる。具体的には、ブローオフ帯電量測定装置の帯電量測定セルの下側に、両面テープを貼付した試料台を設置する。帯電量測定セルとしては、例えばSUS316製400メッシュの金網を用いる。そして、トナーとキャリアとからなる所定量の現像剤を金網上に載置して、所定のブロー圧、ブロー時間でブローガスを以下の条件で現像剤に吹き付けて、トナーとキャリアを分離する。これにより、トナーは金網を通過して試料台上に落下してトナー薄層となり、キャリアは金網上に残る。なお、試料台上にトナーが余分に積もった場合には、試料台を軽く叩いて振動を与えたり、エアーブローなどにより余分なトナーを除去してもよい。
ブローガス : 窒素
ブロー圧 : 1kg/cm2
ブロー時間 : 20秒
使用現像剤量 : 1.0g
【0035】
トナーとキャリアからなる二成分系現像剤では、上記のようにして得られた外添剤の強度Aと強度Bとの比(B/A)が、外添剤の埋没量(埋没度合い)および外添剤の遊離量(遊離度合い)を表しているので、強度比(B/A)から埋没量および遊離量の適否を評価することができる。
【0036】
以上、本発明の電子写真用現像剤およびその製造方法、並びにトナーの評価方法について説明したが、本発明のトナーの評価方法は、初期現像剤だけでなく、補給トナーとキャリアとが現像器内で混合された二成分系現像剤にも適用可能である。
【0037】
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0038】
[ポリエステル樹脂の製造]
ポリオキシプロピレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン4.0モル、ポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン1.0モル、テレフタル酸4.5モル、無水トリメリット酸0.5モル、および酸化ジブチル錫4gを窒素雰囲気下、230℃で8時間かけて反応させ、軟化点120℃のポリエステル樹脂を得た。
【実施例1】
【0039】
[トナーの製造]
上記ポリエステル樹脂 100質量部
カーボンブラック(三菱化学社製:MA100) 5質量部
電荷制御剤(藤倉化成社製:FCA201PS) 5質量部
ワックス(三洋化成社製:ユーメックス110TS) 4質量部
各成分を上記配合比でヘンシェルミキサーにて混合し攪拌した後、2軸押出機にて溶融混錬し、粗粉砕し、衝突式気流粉砕機にて微粉砕して平均粒子径9μmのトナー粒子を得た。ついで、得られたトナー粒子100質量部とシリカ(日本アエロジル社製:RA200HS)0.5質量部を三井金属鉱山社製「ヘンシェルミキサー20B」にて5分間混合してトナーを調製した。次に、このトナー5質量部とフェライトキャリヤ(パウダーテック社製「FL184-150」)100質量部を愛知電機社製「ロッキングミキサーRM60」を用いて60回転にて20分間混合して電子写真用現像剤を得た。
【実施例2】
【0040】
トナー粒子100質量部とシリカ0.5質量部をヘンシェルミキサー20Bにて10分間混合してトナーを調製し、該トナー5質量部とフェライトキャリヤ100質量部をホソカワミクロン社製「ナウターミキサーNX-S」を用いて10分間混合した他は、実施例1と同様にして電子写真用現像剤を得た。
【0041】
[比較例1]
トナー粒子100質量部とシリカ0.5質量部をヘンシェルミキサー20Bにて1分間混合してトナーを調製し、該トナー5質量部とフェライトキャリヤ100質量部をロッキングミキサーRM60を用いて60回転にて3分間混合した他は、実施例1と同様にして電子写真用現像剤を得た。
【0042】
[比較例2]
トナー粒子100質量部とシリカ0.5質量部をヘンシェルミキサー20Bにて10分間混合してトナーを調製し、該トナー5質量部とフェライトキャリヤ100質量部をホソカワミクロン社製「ナウターミキサーNX-S」を用いて20分間混合した他は、実施例1と同様にして電子写真用現像剤を得た。
【0043】
[比較例3]
トナーとフェライトキャリアを愛知電機社製「ロッキングミキサーRM60」を用いて60回転にて90分間混合した他は、実施例1と同様にして電子写真用現像剤を得た。
【0044】
<蛍光X線分析法による外添剤強度の測定>
実施例1,2、および比較例1〜3の電子写真用現像剤について、現像剤化の前後におけるトナーを蛍光X線分析法によりそれぞれ分析して外添剤の強度を測定した。外添剤の強度測定に用いた蛍光X線分析装置および測定条件は以下の通りである。
蛍光X線分析装置:理学電機工業(株)製RIX−2100
スペクトル:Kα
ターゲット:Rh
電圧:50kV
電流:30mA
検出器:PC(プロポーシャナルカウンター)
分光結晶:Si(シリコン):TAP
【0045】
現像剤化する前の外添剤の強度Aは、上記装置を用いて以下のようにして測定した。すなわち、直径30mmの試料台上に現像剤化する前のトナーの均一な薄層を形成した後、トナー薄層にX線を照射して外添剤の強度を測定した。
なお、トナー薄層は、以下のようにして形成した。すなわち、試料台の表面に両面テープを貼付して試料台の表面に粘着面を形成し、この粘着面に、ブローオフ帯電量測定装置(東芝ケミカル社製TB−200)を利用してトナーを噴霧した。トナーの噴霧後には、試料台を軽く叩いて振動を与え、余分に積もったトナーを除去した。これにより、試料台上にトナー薄層を形成した。
【0046】
現像剤化した後の外添剤の強度Bを測定する際には、蛍光X線分析法による分析前に、トナーとキャリアとを分離し、試料台上にトナーの均一な薄層を形成し、このトナー薄層にX線照射して外添剤の強度Bを測定した。トナーとキャリアとの分離方法およびトナー薄層の形成方法は以下の通りである。まず、ブローオフ帯電量測定装置(東芝ケミカル社製TB−200)の帯電量測定セルの下側に、両面テープを貼付した試料台を設置した。帯電量測定セルとしては、SUS316製400メッシュの金網を用いた。そして、トナーとキャリアとからなる所定量の現像剤を金網上に載置して、所定のブロー圧、ブロー時間でブローガスを以下の条件で現像剤に吹き付けて、トナーとキャリアを分離した。これにより、トナーは金網を通過して試料台上に落下してトナー薄層となり、キャリアは金網上に残った。試料台上に余分に積もったトナーは、試料台を軽く叩いて振動を与えることにより除去した。結果を表1に示す。
ブローガス : 窒素
ブロー圧 : 1kg/cm2
ブロー時間 : 20秒
使用現像剤量 : 1.0g
【0047】
また、実施例1,2、および比較例1〜3の電子写真用現像剤を用いて、原稿濃度5%にて連続印字(A4用紙縦向き)したときの画像カブリおよびドラムフィルミングの発生状況を評価した。評価には、京セラミタ(株)製FS−8000C(単層型有機感光体ドラムに改造した改造機)を用いた。結果を表1に示す。なお、各評価は以下のようにして行った。
<画像カブリ>
反射濃度計(東京電色社製TC-6DS)を用いてプリンター画像の非画像形成部の濃度およびベースペーパーの濃度を測定し、これらの濃度差(非画像形成部−ペースペーパー)を算出した。なお、表1中の○、×は、それぞれ以下の数値範囲を意味する。
○:濃度差0.008未満
×:濃度差0.008以上
<ドラムフィルミング>
1000枚印刷後の感光体ドラム表面を目視観察して評価した。
○:フィルミングの発生は見られなかった。
×:フィルミングが発生していた。
【表1】

【0048】
表1から、外添剤の強度比(B/A)が0.98の比較例1では、1000枚印字後にドラムフィルミングが発生していた。また、強度比(B/A)が0.90以下の比較例2,3では、1000枚印字後に画像カブリが発生していた。一方、強度比(B/A)が本発明の範囲内である実施例1,2では、1000枚印字後でも画像カブリおよびドラムフィルミングは発生していなかった。これは、外添処理時間および現像剤化時間の短い比較例1の場合には、全てのシリカがトナー表面に付着した後、それ以上の混合が行われないために、ほとんどのシリカは遊離も埋没もせず、トナーと感光体表面のスペーサー効果が弱まってドラムフィルミングが発生し、外添処理時間および現像剤化時間の長い比較例2,3の場合には、シリカの遊離および埋没が進み、画像カブリが発生したためである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも結着樹脂および着色剤を含むトナー粒子に外添剤を外添したトナーと、キャリアとを混合し撹拌して現像剤化される電子写真用現像剤であって、
蛍光X線分析装置の試料台上に、現像剤化の前後における前記トナーの薄層をそれぞれ形成し、これらのトナー薄層にX線を照射して測定される外添剤の強度が、下記関係式(I)を満足することを特徴とする電子写真用現像剤。
【数1】

【請求項2】
少なくとも結着樹脂および着色剤を含むトナー粒子に外添剤を外添してトナーを得、該トナーとキャリアとを混合し撹拌して現像剤化する電子写真用現像剤の製造方法であって、
蛍光X線分析装置の試料台上に、現像剤化の前後におけるトナーの薄層をそれぞれ形成し、これらのトナー薄層にX線を照射して外添剤の強度をそれぞれ測定し、これらの強度比に基づいて設定した撹拌速度および/または撹拌時間で撹拌して現像剤化することを特徴とする電子写真用現像剤の製造方法。
【請求項3】
蛍光X線分析装置の試料台上に、少なくとも結着樹脂および着色剤を含むトナー粒子に外添剤が外添されたトナーの薄層を形成し、該トナー薄層にX線を照射し外添剤の強度を測定して、前記トナー粒子に対する外添剤の遊離度合いおよび外添剤の埋没度合いを評価することを特徴とするトナーの評価方法。