説明

電子写真装置用ブレード部材及び電子写真装置用ブレード

【課題】硬化時間が短く、表面に収縮ムラに起因する凹み等の欠陥のないブレード部材を備えた、優れた品質を有する、生産効率の高い、電子写真装置用ブレードを提供する。
【解決手段】プレポリマーを硬化剤により硬化させて得られるポリウレタン樹脂で形成されたブレード部材を有する電子写真装置用ブレードにおいて、前記プレポリマーが(A)ポリイソシアネート及び(B)数平均分子量が2000〜4000のポリオールを含有し、硬化剤が(C)分子量200以下の鎖延長剤、(D)(B)ポリオールの数平均分子量より小さく、(C)鎖延長剤の分子量より大きい数平均分子量を有するポリオール、及び(E)ウレタン硬化用触媒を含有し、化学量論的に過剰なプレポリマー中のポリイソシアネート濃度が0.80mmol/g以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真装置に用いられる電子写真装置用ブレード部材及び電子写真装置用ブレードに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子写真装置には各種のブレードが設けられている。ブレードとしては、記録用紙に現像剤像の転写を行った後に感光体上に残存するトナーを除去するためのクリーニングブレードや現像器内で現像スリーブ上に担持されたトナーを摩擦帯電させながらトナー薄膜を形成する現像ブレード等を挙げることができる。これらのブレードは、通常、弾性体材料から形成されたブレード部材と、ブレード部材が接合されてこれを支持して電子写真装置に取り付けるための金属製ホルダー等の支持部材とを有する。
【0003】
ブレードの製造方法のひとつとして、例えば、クリーニングブレードは、支持部材の片端部に、ブレード部材を一体化して製造する方法がある。ブレード部材としては、耐摩耗性や永久歪みなどに優れる弾性体であることから、ポリウレタン樹脂により形成されたものが用いられている。
【0004】
ポリウレタン樹脂を用いたブレード部材の製造には、ポリイソシアネート、ポリオール、鎖延長剤および触媒を用い、プレポリマー法、セミワンショット法、ワンショット法等の方法が使用される。
【0005】
プレポリマー法によりブレード部材を製造する場合は、ポリイソシアネートとポリオールを用いてプレポリマーを調製し、このプレポリマーに鎖延長剤および触媒を添加したのち、これを成形用の金型に注入して硬化させる。この時、金型に注入してから硬化するまでの硬化時間は、製造効率に大きく影響する。硬化時間が長ければ、金型数を増やさなければならず、多大な投資が必要となる。このため、硬化時間を短縮しようと様々な検討がなされている。
【0006】
ここで硬化時間とは、ブレード部材に変形を起こさずに脱型するのに十分な硬度に達するまでの時間であり、この硬化時間短縮のためには硬度の立ち上がりを速くし、脱型可能な硬度にまで達する時間の短縮を図らなければならない。従来から汎用されているトリエチレンジアミンやジメチルイミダゾール等のウレタン化を促進する触媒を使用する場合、触媒量を増量して硬化時間を短縮する方法がある。触媒を増量してプレポリマーの硬化を行うと、直鎖のウレタン結合は多く生成されるが、硬度の発現には物理的な架橋に寄与する、エージング中の分子間結合によるウレタン結合の凝集が必要であり、加熱硬化のみで硬度の立ち上がりを速めることは困難である。そこで短時間で脱型可能な硬度にまで上昇させるためには、直鎖のウレタン結合だけでなく、架橋を多く形成することが有効と考えられる。例えば、イソシアネートの三量体であるイソシアヌレート結合を生成する触媒を導入することで、架橋密度を高くして硬化時間を短縮する方法がある。(例えば、特許文献1参照)
上記触媒により架橋密度が増大することによって、硬度の立ち上がりが速く脱型可能な硬度に達するまでの時間の短縮が期待できる。一方で、上記触媒は感温性が高くある温度以上で反応が急激に進行するために、反応が不均一になりやすい。その結果、成型品が歪んだり、収縮のムラに起因する凹みが発生するという問題があった。
【特許文献1】特開平08−281837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、硬化時間が短く、表面に収縮ムラに起因する凹み等の欠陥が抑制された電子写真装置用ブレード部材を提供し、これを備えた優れた品質を有する、生産効率が高い電子写真装置用ブレードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、プレポリマー中のポリイソシアネートの化学量論的に過剰な濃度が0.80mmol/g以下であることにより、硬化時間を短縮することができ、しかも均一に硬化を行わせることができ、収縮ムラに起因するブレード部材表面の凹みの発生を抑制することができることの知見を得た。
【0009】
すなわち、本発明は、プレポリマーを硬化剤により硬化させて得られるポリウレタン樹脂で形成された電子写真装置用ブレード部材であって、前記プレポリマーが下記(A)及び(B)を含有し、前記硬化剤が(C)、(D)及び(E)を含有し、プレポリマー中の化学量論的に過剰なポリイソシアネート濃度が0.80mmol/g以下であり、(E)ウレタン硬化用触媒が、イソシアヌレート化触媒および/またはアロファネート化触媒を含有することを特徴とする電子写真装置用ブレード部材に関する。
(A)ポリイソシアネート
(B)数平均分子量が2000〜4000のポリオール
(C)分子量200以下の鎖延長剤
(D)(B)ポリオールの数平均分子量より小さく、(C)鎖延長剤の分子量より大きい数平均分子量を有するポリオール
(E)ウレタン硬化用触媒
また、本発明は、上記電子写真装置用ブレード部材を有することを特徴とする電子写真装置用ブレードに関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電子写真装置用ブレード部材は、硬化時間が短く、表面に収縮ムラに起因する凹み等の欠陥が抑制され、これを備えた本発明の電子写真装置用ブレードは、優れた品質を有する、生産効率が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の電子写真装置用ブレード部材は、プレポリマーを硬化剤により硬化させて得られるポリウレタン樹脂で形成された電子写真装置用ブレード部材であって、前記プレポリマーが(A)及び(B)を含有し、硬化剤が(C)、(D)及び(E)を含有し、プレポリマー中の化学量論的に過剰なポリイソシアネート濃度が0.80mmol/g以下であり、(E)ウレタン硬化用触媒が、イソシアヌレート化触媒および/またはアロファネート化触媒を含有することを特徴とする。
(A)ポリイソシアネート
(B)数平均分子量が2000〜4000のポリオール
(C)分子量200以下の鎖延長剤
(D)(B)ポリオールの数平均分子量より小さく、(C)鎖延長剤の分子量より大きい数平均分子量を有するポリオール
(E)ウレタン硬化用触媒
本発明の電子写真装置用ブレード部材に用いるプレポリマーは、(A)ポリイソシアネート及び(B)数平均分子量が2000〜4000のポリオールを含有する。
【0012】
上記プレポリマーに含有される(A)ポリイソシアネートとしては、具体的には、例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′−MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、カルボジイミド変性MDI、ポリメチレンフェニルポリイソシアネート(PAPI)、オルトトルイジンジイソシアネート(TODI)、ナフチレンジイソシアネート(NDI)、キシレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PDI)、リジンジイソシアネートメチルエステル(LDI)、ジメリルジイソシアネート(DDI)等を挙げることができる。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。これらのなかでも、4,4′−MDIを好ましいものとして挙げることができる。
【0013】
上記プレポリマーに含有される(B)ポリオールとしては、具体的には、ポリエチレンアジペートエステルポリオール、ポリブチレンアジペートエステルポリオール、ポリヘキシレンアジペートエステルポリオール、ポリエチレン−プロピレンアジペートエステルポリオール、ポリエチレン−ブチレンアジペートエステルポリオール、ポリエチレン−ネオペンチレンアジペートエステルポリオールなどのアジペート系ポリエステル等を挙げることができる。また、カプロラクトンを開環重合して得られるポリカプロラクトンエステルなどのポリカプロラクトン系ポリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテルを挙げることができる。また、ポリカーボネートジオールを用いてもよい。これらは、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0014】
前記プレポリマーに含有される(B)ポリオールは、数平均分子量が2000〜4000である。(B)ポリオールの数平均分子量が2000以上であれば、得られるポリウレタン樹脂の物性の低下を抑制することができる。また、数平均分子量が4000以下であれば、後述する硬化剤に含有される(D)ポリオールとの分子量の差を小さく、且つ、ポリオールの分子量の差を多段階的にすることができる。分子量の差が多段階的となることにより、ブレード部材における収縮ムラの発生を抑制することができ、収縮ムラに起因する凹みの発生を抑制することができると考えられる。
【0015】
尚、後述する硬化剤として用いられる(D)(B)ポリオールの数平均分子量より小さく、(C)鎖延長剤の分子量より大きい数平均分子量を有するポリオールをプレポリマーとして用いることもできる。両者を用いることにより、ポリオールの分子量の差が多段階的になるため、感温性触媒を使用し反応が急激な場合でも、構造の分布に偏りが生じにくく、硬化時における収縮ムラに起因する凹みの発生をなくすことができるようになると考えられる。
【0016】
上記プレポリマーには、ポリウレタン樹脂を構成する(A)ポリイソシアネート単位や、(B)数平均分子量が2000〜4000のポリオール単位の機能を阻害しない範囲で、これらとの重合によりポリウレタン樹脂を構成する他の単位となる成分が含まれていてもよい。
【0017】
上記プレポリマー中の(A)ポリイソシアネート成分と、(B)数平均分子量が2000〜4000のポリオール成分の含有割合は、化学量論的に過剰なポリイソシアネートの濃度が0.80mmol/g以下となる割合である。化学量論的に過剰なポリイソシアネートの濃度としては、数式1により表すことができる。
【0018】
化学量論的に過剰のポリイソシアネート濃度=[(ポリイソシアネート当量)−(ポリイソシアネートを除くポリウレタン樹脂を構成する成分の当量)]÷(ポリウレタン樹脂を構成する全成分の総質量) [mmol/g] [式1]
プレポリマー中の化学量論的に過剰なポリイソシアネート濃度を0.80mmol/g以下に設定することで、硬化時の収縮ムラに起因する凹みの発生をなくすことができるのは、必ずしも明らかではないが、次のように考えられる。即ち、特にイソシアヌレート化触媒、アロファネート化触媒等のウレタン硬化触媒を用いると、加熱硬化中に直鎖のウレタン結合以外にも架橋を形成して架橋密度を増大させることができる。しかし、上記触媒のように感温性が高いウレタン硬化触媒を用いると、ある温度以上で反応が急激に進行するために反応が不均一になりやすい。また架橋の形成に関与する成分が過剰に存在した場合、架橋が過剰に形成され構造の分布に偏りが生じやすい。その結果成型品が歪んだり、収縮のムラに起因する凹みが発生しやすいと考えられる。架橋の形成に関与するプレポリマー中のポリイソシアネートを化学量論的な過剰量として、0.80mmol/gとなる濃度を上限として含有することにより、架橋密度増大作用を有する触媒を使用した場合においても、架橋形成の暴走を抑制することができる。このため、硬化時の収縮のムラに起因する凹みの発生をなくすことができると考えられる。
【0019】
上記(A)ポリイソシアネートと、(B)数平均分子量が2000〜4000のポリオールからプレポリマーを形成するには、これらを、上記割合で混合し、必要に応じて加熱、撹拌する方法を挙げることができる。
【0020】
上記プレポリマーの硬化剤としては、(C)分子量200以下の鎖延長剤、(D)(B)ポリオールの数平均分子量より小さく、(C)鎖延長剤の分子量より大きい数平均分子量を有するポリオール、及び、(E)ウレタン硬化用触媒を含有する。
【0021】
上記(C)鎖延長剤としては、具体的には、グリコールや、その他の多価アルコールを挙げることができる。このようなグリコールとしては、例えば、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)、プロピレングリコール(PG)、ジプロピレングリコール(DPG)、1,4−ブタンジオール(1,4BD)、ヘキサンジオール(HD)、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、キシリレングリコール(テレフタリルアルコール)、トリエチレングリコール等を挙げることができる。多価アルコールとしては、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等を挙げることができる。
【0022】
上記(C)鎖延長剤は、分子量200以下であるものを用いる。(C)鎖延長剤の分子量が200以下であれば、ハードセグメントの凝集を促進し、物性の低下を抑制することができる。
【0023】
上記硬化剤に含まれる(D)ポリオールは、プレポリマーに含まれる(B)数平均分子量が2000〜4000のポリオールの数平均分子量より小さく、硬化剤に含まれる(C)鎖延長剤の分子量より大きい数平均分子量を有する。この範囲の数平均分子量を有するポリオールを用いることにより、プレポリマーの硬化時において、収縮ムラからくる凹み模様の発生を抑制することができる。
【0024】
この(D)ポリオールが硬化剤に含まれない場合には、(C)分子量200以下の鎖延長剤と(B)数平均分子量2000〜4000のポリオールとの分子量の差が大きくなる。このため、プレポリマーの(B)ポリオール成分と(A)ポリイソシアネート成分との反応が不均一になりやすい。反応時間の短縮のために感温性触媒を使用すると反応が急激に進行するため、さらに反応が不均一になりやすく、硬化時の収縮ムラに起因する凹みが発生すると考えられる。しかしながら、上記(B)ポリオールの数平均分子量より小さく上記(C)鎖延長剤の分子量より大きい数平均分子量を有する(D)ポリオールを導入することで、分子量の差が多段階的になる。これにより、感温性触媒を使用し反応が急激な場合でも、収縮ムラに起因する凹みの発生をなくすことができるようになったと推察される。
【0025】
また、硬化剤として、更にプレポリマーに含まれる数平均分子量が2000〜4000のポリオールを含有することも好ましく、両者を用いることの効果は、硬化剤として用いる(D)ポリオールをプレポリマーとして用いる場合と同様である。
【0026】
上記(D)ポリオールとしては、具体的には、上記プレポリマーとして用いる(B)ポリオールとして具体的に例示したアジペート系ポリエステルと同様のものを挙げることができる。また、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリエーテルを用いることができる。これらは、単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0027】
上記硬化剤に含有される(E)ウレタン硬化用触媒としては、イソシアヌレート化触媒、アロファネート化触媒、ウレタン化触媒などを挙げることができ、これらのうち、イソシアヌレート化触媒及び/またはアロファネート化触媒を含むものが好ましい。
【0028】
かかるイソシアヌレート化触媒としては、例えば、N−エチルピペリジン、N,N′−ジメチルピペラジン、N−エチルモルフォリン等の第3級アミンなどを挙げることができる。
【0029】
イソシアヌレート化、アロファネート化両方を促進する触媒としては、例えば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム等のテトラアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドや有機弱酸塩、トリメチルヒドロキシプロピルアンモニウム、トリエチルヒドロキシプロピルアンモニウム等のヒドロキシアルキルアンモニウムのハイドロオキサイドや有機弱酸塩、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、カプリン酸、吉草酸、オクチル酸、ミリスチン酸、ナフテン酸等のカルボン酸のアルカリ金属塩の中の1種類、またはその混合物を挙げることができる。このなかでは、成型後にブルームして他のパーツに影響を及ぼすことのないカルボン酸の金属塩が好ましい。
【0030】
また、(E)ウレタン硬化用触媒としては、一般に用いられるポリウレタン硬化用の触媒を使用することができ、例えば三級アミン触媒を挙げることができる。具体的には、ジメチルエタノールアミンなどのアミノアルコール、トリエチルアミンなどのトリアルキルアミン、N,N,N',N'-テトラメチル−1,3−ブタンジアミンなどのテトラアルキルジアミン、トリエチレンジアミン、ピペラジン系、トリアジン系などを例示することができる。また、ウレタン触媒として用いられる金属触媒でもよく、ジブチル錫ジラウレートなどを例示することができる。
【0031】
(E)ウレタン硬化用触媒の配合量としては、反応系中において、3〜1000ppmであることが好ましい。3ppm以上であれば、硬化を促進する効果が得られ、1000ppm以下であれば、金型への流れ性を損なわずに硬化を促進する効果が得られる。
【0032】
上記プレポリマーを硬化剤により硬化させてポリウレタン樹脂のブレード部材を成形する方法としては、例えば、上記プレポリマーに硬化剤を混合した混合物を、金型内に注入し、加熱して硬化させる方法を挙げることができる。また、上記プレポリマーと硬化剤の混合物からシートを成型し、これをカットしてブレード部材を得ることができる。
【0033】
本発明の電子写真装置用ブレードは、上記本発明の電子写真装置用ブレード部材を有するものであれば、いずれのものであってもよく、例えば、上記ブレード部材と、支持部材とが接合された構成を有するものを挙げることができる。支持部材およびブレード部材等の形状は、特に限定されず、使用目的に適した形状とすればよい。
【0034】
上記支持部材の材質は、金属、樹脂などいずれのものであってもよく、具体的には、鋼板、ステンレス鋼板、亜鉛メッキクロメート皮膜鋼板、クロムフリー鋼板等の金属材料、6−ナイロン、6,6−ナイロン等の樹脂材料を挙げることができる。支持部材とブレード部材との接合方法は、例えば、フェノール樹脂等の接着剤を用いて接着する方法等を挙げることができる。
【0035】
本発明の電子写真装置用ブレードの製造方法としては、ブレード部材を調製し、接着剤を塗布または貼着した支持部材の上にブレード部材の接着部を重ね合わせ加熱加圧して接着する方法を挙げることができる。また、金型内に支持部材を配置した後、上記プレポリマーと硬化剤との混合物を、キャビティに注入し、加熱・硬化してブレード部材と支持部材とを一体化させ、電子写真装置用ブレードを製造することができる。
【0036】
本発明の電子写真装置用ブレードは、複写機、レーザービームプリンタ、エルイーディープリンタ(LEDプリンタ)、電子写真製版システムなどの電子写真技術を応用した電子写真装置に用いられる。具体的には、クリーニングブレード、現像ブレード等を挙げることができる。
【実施例】
【0037】
以下に、本発明の電子写真装置用ブレードを適用した具体的な実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
[熱硬化性ポリウレタン樹脂の調製]
4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’−MDI)279.5g、数平均分子量2500のポリエチレンアジペート(PEA)720.5gを80℃で3時間反応させ、NCO%が7%のプレポリマーを得た。また、1,4−ブタンジオール(1,4−BD)27.4g、トリメチロールプロパン(TMP)14.7g、数平均分子量500のポリエチレンアジペート(PEA)63.2gの混合物に、P15(酢酸カリウムのエチレングリコール(EG)溶液、エアープロダクツジャパン社製;商品名)0.17g、トリエチレンジアミン(TEDA)0.53gを加え、ウレタン硬化用触媒を含有する混合物を準備した。
【0038】
上記プレポリマーと上記ウレタン硬化用触媒を含有する混合物とを、成形を行うときに混合し、ポリウレタン樹脂を調製した。前記数式1より算出された化学量論的に過剰となったプレポリマー中のポリイソシアネート濃度は、0.30mmol/gであった。また、(D)ポリオールに該当する数平均分子量2500のポリエチレンアジペート(PEA)と(B)ポリオールに該当する数平均分子量500のポリエチレンアジペート(PEA)の質量の比率(D)/(B)の値は0.09であり、これらを合わせたポリオールの数平均分子量は2400であった。
[クリーニングブレードの成形]
あらかじめ支持部材としてホルダーを用意し、このホルダーの片端部にフェノール系接着剤を塗布した。上型と下型で構成されるクリーニングブレード用成形型にこのホルダーを接着剤を塗布した片端部がキャビティ内に突出した状態で配置し、上記ポリウレタン樹脂をキャビティ内に注入した。これを130℃の加熱温度で反応硬化させ、硬化物を脱型してクリーニングブレードを得た。
【0039】
脱型までの最短時間、脱型時のゴム硬度、得られたクリーニングブレードのブレード部材の凹みについて下記方法で評価した。得られた結果を表1に示した。
[脱型までの最短時間]
脱型時にブレード部材が変形することなく脱型できるようになるまでの加熱硬化時間を求め、脱型までの最短時間とした。
[脱型時のゴム硬度]
ブレード部材が変形することなく脱型できるようになるまで加熱硬化し脱型した直後のクリーニングブレードのブレード部材のゴム硬度(IRHD)をウォーレス(H.W.WALLACE)社製ウォーレス微小硬度計を用い、JIS K 6253に基いて測定した。
[凹み]
脱型までの時間を、上記脱型までの最短時間から延長させて5分までとし、加熱硬化して得られた100個のクリーニングブレードについて、目視で外観を観察しブレード部材に凹みの発生の見られたクリーニングブレードの数を求め、次の基準で評価した。
【0040】
○:凹みの認められたものの数が0個であった
△:凹みの認められたものの数が1〜10個であった
×:凹みの認められたものの数が11個以上であった
[総合評価]
上記脱型までの最短時間が短いこと、脱型時のゴム硬度が概ね60°に達していること、凹みのないことから、総合的に評価した。
[実施例2]
(E)ウレタン硬化用触媒であるP15を表1に示す仕込み量とした以外は実施例1と同様にしてクリーニングブレードを作製し、評価を行った。得られた結果を表1に示す。
[実施例3]
表1に示す仕込み量から得られたNCO%が7.4%のプレポリマーを用い、(E)ウレタン硬化用触媒を表1に示す仕込み量として、実施例1と同様にしてクリーニングブレードを作製し、評価を行った。得られた結果を表1に示す。
[実施例4]
表1に示す仕込み量から得られたNCO%が7.8%のプレポリマーを用い、(E)ウレタン硬化用触媒を表1に示す仕込み量として、実施例1と同様にしてクリーニングブレードを作製し、評価を行った。得られた結果を表1に示す。
[比較例1]
(B)ポリオールとして数平均分子量2000のPEAを用い、表2に示す仕込み量からNCO%が10%のプレポリマーを得た。また硬化剤にポリオールを含有せず、(E)ウレタン硬化用触媒を表2に示す仕込み量として実施例1と同様にしてクリーニングブレードを作製し、評価を行った。得られた結果を表2に示す。
[比較例2]
(B)ポリオールとして数平均分子量1300のPEAを用い、表2に示す仕込み量からNCO%が6.2%のプレポリマーを得た。また硬化剤に(D)ポリオールを含有せず、(E)ウレタン硬化用触媒にはイソシアヌレート化触媒及びアロファネート化触媒のいずれも含有せずに実施例1と同様にしてクリーニングブレードを作製し、評価を行った。得られた結果を表2に示す。なお、加熱硬化時間が5分経過した時点では未硬化であったため、凹みの評価の対象としない。
【0041】
表1および2より、上記プレポリマー及び硬化剤を用い、かつ(E)ウレタン硬化用触媒としてイソシアヌレート化触媒もしくはアロファネート化触媒のいずれかを含有し、ポリイソシアネートとポリオールの反応により化学量論的に過剰となったポリイソシアネート濃度を特定の範囲に設定することで、脱型までの時間が1〜1.5分で脱型時のゴム硬度が概ね60°に達し、凹みのないブレード部材を得ることができた。一方、過剰のポリイソシアネート濃度が0.88mmol/gである比較例1では、凹みの発生が多く見られた。また、(E)ウレタン硬化用触媒としてイソシアヌレート化触媒もしくはアロファネート化触媒のいずれも含有しない比較例2では、収縮ムラに起因する凹みは発生しないものの、脱型までの時間が20分と大幅に長くなる結果となった。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレポリマーを硬化剤により硬化させて得られるポリウレタン樹脂で形成された電子写真装置用ブレード部材であって、前記プレポリマーが下記(A)及び(B)を含有し、前記硬化剤が(C)、(D)及び(E)を含有し、プレポリマー中の化学量論的に過剰なポリイソシアネート濃度が0.80mmol/g以下であり、(E)ウレタン硬化用触媒が、イソシアヌレート化触媒および/またはアロファネート化触媒を含有することを特徴とする電子写真装置用ブレード部材。
(A)ポリイソシアネート
(B)数平均分子量が2000〜4000のポリオール
(C)分子量200以下の鎖延長剤
(D)(B)ポリオールの数平均分子量より小さく、(C)鎖延長剤の分子量より大きい数平均分子量を有するポリオール
(E)ウレタン硬化用触媒
【請求項2】
請求項1記載の電子写真装置用ブレード部材を有することを特徴とする電子写真装置用ブレード