説明

電子制御装置

【課題】ケースとカバーとのシール性を向上させることのできる電子制御装置を得る。
【解決手段】本発明の電子制御装置では、電子部品5及び配線回路パターンが設けられた回路基板であるプリント配線板1を収納固定するケース2に溝部22を設け、その溝部22内に挿入される突起部31をカバー3の外周縁に設けている。そして、溝部22の内側面22aに対して突起部31の側面31aを溝部22の底部22bに向かって内側に傾斜させることで、接着剤30にかかる圧力を高め、ケース2とカバー3とのシール性を向上させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケース内に収容した回路基板をカバーで覆った電子制御装置に関し、詳細には、回路基板を収容する空間が密閉された電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子制御装置(ECU)として、電子部品を実装した回路基板をケース内に収納し、カバーで蓋をするとともに、当該回路基板が収容された空間を密閉することで、防水性、防塵性を向上させたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この特許文献1では、ケースの外周縁に溝部を設けるとともに、カバーの外周縁に溝部に嵌合する断面U字状の突条部を設け、溝部に接着剤を塗布して突条部を溝部内に挿入することで回路基板が収容された空間を密閉している。
【特許文献1】特開2001−85866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、突条部の側面が溝部の側面に対して平行に設けられているため、接着剤を塗布した溝部内に突条部を挿入する際に突条部の側面が接着剤を押圧する力が弱く、接着剤にかかる圧力を大きくすることができなかった。そのため、突条部の側面に接着剤を十分に馴染ませることができず、ケースとカバーとの接着不良が生じ、シール性が低下してしまうおそれがあった。
【0005】
特に、高粘度の接着剤を用いてケースとカバーとをシールする場合、突条部が接着剤を掻き出してしまうため、突条部の側面の濡れ性がさらに低くなり、かかる問題がより顕著に現れてしまう。
【0006】
そこで、本発明は、ケースとカバーとのシール性を向上させることのできる電子制御装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、天面が開口され、回路基板を収容するケースと、前記ケース開口を覆い、当該ケースに装着されるカバーと、前記ケースと前記カバーのうちのいずれか一方に設けられる溝部と、他方に設けられ、前記溝部に挿入される突起部と、を備え、前記突起部をシール材を介して前記溝部に挿入することで、前記カバーを前記ケースに装着する電子制御装置であって、前記突起部の側面が、前記カバーを前記ケースに装着した状態で当該突起部の側面に対向する前記溝部の内側面に対して、当該溝部の底部に向かって内側に傾斜していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、溝部の内側面に対して突起部の側面を溝部の底部に向かって内側に傾斜させることで、高粘度の接着剤を用いた場合でも、突起部の側面によって接着剤を押圧しながら当該突起部を溝部に挿入することができるため、接着剤にかかる圧力を高めることができ、突起部の側面に接着剤を十分に馴染ませることができる。その結果、突起部の側面における接着剤の濡れ性が向上して接着力が高められるため、ケースとカバーとのシール性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
「電子制御装置の構成」
図1は、本実施形態にかかる電子制御装置をカバー側から見たときの全体斜視図、図2は、図1の分解斜視図、図3は、電子制御装置をケース側から見たときの全体斜視図、図4は、図3の分解斜視図、図5は、ケースを開口側より見たときの平面図、図6は、図1のA−A線断面図、図7は、図1のB−B線における要部拡大断面図、図8は、ケースの固定部が設けられた部分の拡大斜視図、図9は、ケースの固定部が設けられた部分の拡大断面図、図10は、溝部に接着剤を塗布して突起部を挿入させた状態を示す拡大断面図、図11は、本実施形態の第1変形例にかかるケースの固定部が設けられた部分の拡大断面図、図12は、本実施形態の第1変形例にかかる溝部に接着剤を塗布して突起部を挿入させた状態を示す拡大断面図、図13は、本実施形態の変形例を示す図であって、(a)は、本実施形態の第2変形例にかかる溝部に接着剤を塗布して突起部を挿入させた状態を示す拡大断面図、(b)は、本実施形態の第3変形例にかかる溝部に接着剤を塗布して突起部を挿入させた状態を示す拡大断面図、図14は、本実施形態の変形例を示す図であって、(a)は、本実施形態の第4変形例にかかる溝部に接着剤を塗布して突起部を挿入させた状態を示す拡大断面図、(b)は、本実施形態の第5変形例にかかる溝部に接着剤を塗布して突起部を挿入させた状態を示す拡大断面図、図15は、本実施形態の第6変形例にかかるケースの固定部が設けられた部分の拡大断面図、図16は、本実施形態の第7変形例にかかるケースの固定部が設けられた部分の拡大斜視図、図17は、本実施形態の変形例を示す図であって、(a)は、本実施形態の第8変形例にかかるケースの固定部が設けられた部分の拡大斜視図、(b)は、本実施形態の第9変形例にかかるケースの固定部が設けられた部分の拡大斜視図である。
【0011】
本実施形態にかかる電子制御装置は、図1から図4に示すように、回路基板を構成するプリント配線板1と、このプリント配線板1を収納する筐体であるケース2と、ケース2内に固定したプリント配線板1を覆って該ケース2に装着されるカバー3と、を有して構成されている。電子制御装置は、例えば自動車用のエンジン制御ユニットやステアリング制御ユニット或いはブレーキ制御ユニット等に使用され、自動車車体に取り付けられる。もちろん、この電子制御装置は、自動車用に限定されるものではない。
【0012】
プリント配線板1は、図2に示すように、例えばガラスエポキシ樹脂等の如き絶縁樹脂材料等をベースとし、そのベースの表裏面に配線回路パターンを形成するとともに電子部品5を実装させることで電気回路部を構成する。電気回路部は、単層基板であれば表面と裏面に配線回路パターンを形成して構成され、多層基板であれば間に挟まれる中間基板にも配線回路パターンを形成して構成される。配線回路パターンは、図示を省略する絶縁層によってその表面が覆われて保護されている。なお、図2及び図4では、配線回路パターンは、絶縁層で覆われることから図示していない。
【0013】
プリント配線板1に実装される電子部品5には、エンジン制御ユニットではそのユニットを構成するための各種電子部品が使用され、例えばコンデンサ、コイル、トランジスタ、半導体IC等が用いられる。電子部品5のうち、5a、5bは比較的発熱性の高い電子部品(例えばパワートランジスタやインバータなど)である。図2では、複数種類ある電子部品5のうち、一部の電子部品5のみを図示してあり、その他の電子部品は図示を省略してある。
【0014】
また、プリント配線板1には、図4に示すように、ケース2への取り付け面となる裏面1aに外部コネクタと接続されるコネクタ6が取り付けられている。コネクタ6は、プリント配線板1の平面視長方形状をなす長手方向の一側縁寄りで、かつ長手方向長さの中央部近傍の位置に設けられている。プリント配線板1の中で熱変形量が多いのが、前記コネクタ6が取り付けられる部位である。プリント配線板1は、後述するケース2内の四隅からケース2の内方に向かって延設して設けられた基板固定部12に載せられ、基板四隅から同様にケース2の内方に向かった位置に形成された取付孔7に挿通されるネジ8にて固定される。また、プリント配線板1は、後述する基板固定部12の近傍に設けられた位置決めピン9に位置決め孔10を嵌入させてケース2に対する装着位置を定め、このとき位置決めピン9と位置決め孔10とは遊嵌されており、両部材間にクリアランスが形成されている。
【0015】
ケース2は、図2及び図4に示すように、上向きに開口した略四角形状の有底箱状体に形成されている。かかるケース2は、電気回路部で発生した熱を外部へ放熱するために、放熱性に優れたアルミニウム、鉄、ステンレス鋼等の金属材料から形成される。ケース2の底部2aには、コネクタ6の接続口をケース外に突出させるためのコネクタ挿通孔11が形成されている。また、ケース2の底部2aには、ケース2の開口側へと垂直方向に突出し、プリント配線版1が載置される天面12aを有する基板固定部12が設けられている。
【0016】
基板固定部12は、図5に示すように、ケース2の四隅から、ケース2の内方に向かって延設されており、またコネクタ挿通孔11と反対側位置のケース長手方向中央位置近傍にも同じくケース2の内方に向け基板固定部12が設けられている。この基板固定部12の天面12aは、プリント配線板1に対して面接触状態で接するように平坦面とされている。そして、基板固定部12の天面12aには、プリント配線板1を当該基板固定部12にネジ8で固定させるためのネジ孔13が形成されている。
【0017】
また、ケース2には、図2、図5〜図6に示すように、電子部品5で発生した熱を筐体(ケース2)を介して外部へ放熱させる放熱用台座14が設けられている。放熱用台座14は、上述したプリント配線板1に実装される他の電子部品に対して電子部品5と対応する位置に、ケース2の底部2aから開口側へ向かって垂直方向に突出した矩形体として形成されている。本実施形態では、コネクタ挿通孔11とは反対側の左右隅部にそれぞれ設けられている。
【0018】
また、放熱用台座14は、プリント配線板1において放熱が要求される発熱領域(発熱部品の実装領域)に対応して形成され、1つ或いは複数設けることができ、また、放熱用台座14の形状、面積は放熱要求領域に併せて適宜設定されるものである。
【0019】
放熱用台座14は、好ましくは、この上に配置される電子部品5の外形寸法(幅及び長さ)よりも大とされ、当該電子部品5で発生した熱を効率良く放熱させる。かかる放熱用台座14は、上述した基板固定部12にプリント配線板1を載せたときに、このプリント配線板1との間に絶縁空間として機能する微小隙間Sを有する高さとされている。このプリント配線板1に接近する放熱用台座14の上面14aは、凹凸の無い平坦面とされ、電子部品5から放熱された熱を効率よく筐体へ伝熱させるための放熱伝達面として機能する。以下、放熱用台座14の上面14aを、放熱伝達面14aと称する。
【0020】
放熱伝達面14aには、ケース2と配線回路パターンとの接触を抑制する接触防止手段である突起部15が設けられている。かかる突起部15は、放熱用台座14の上面周縁部に前記プリント配線板1に向かって突出している。突起部15は、四隅をネジ8で固定したプリント配線板1が電子部品5から発せられる熱、もしくは車両振動を受けて変形したときに放熱用台座14の上面周縁部14b,14cに接触することから、この上面周縁部14bと14cとが連結している放熱用台座14に設けている。特に、本実施形態では、プリント配線板1の熱変形量が最大となるコネクター6の近傍部に、突起部15を設けている。図5では、放熱用台座14のうちコネクタ挿入孔11に最も近い角部に、突起部15を突設させている。
【0021】
また、プリント配線板1では、電子部品5よりも樹脂材料からなるコネクタ6が最も熱膨張係数が高いため、コネクタ6が設けられる部位が一番延びる部位となる。この変形量が多いコネクタ6が設けられる部位の近傍部に突起部15を設ければ、効果的にケース2と配線回路パターンとの接触を抑制、または防止することができる。
【0022】
また、突起部15は、基板固定部12上にネジ止めされた変形前のプリント配線板1に対しては接触せず、当該プリント配線板1が変形したときに接触する高さとされている。なお、突起部15の配置位置は、プリント配線板1の大きさによりその位置が決められ、例えば図5よりもプリント配線板1が大きい場合には同図中の点線で示す位置に適宜設けられる。この突起部15と放熱伝達面14aと基板固定部12の天面12aとの関係は、図7に示すとおり放熱伝達面14a、突起部15、基板固定部の天面12aの順でその高さが高くなっている。
【0023】
また、この突起部15と対向するプリント配線板1の部位4には、図7で示すように、プリント配線板1の変形によって突起部15とプリント配線板1とが接触し絶縁層を破って配線回路パターンと接触してショートすることを防止するために、配線回路が形成されない部位4を設けている。別の見方をすると、配線回路パターンを形成していない部位4に接触するように、前記突起部15の位置を決めて設けている。図7では、突起部15と対向するプリント配線板1の部位4を配線パターンを形成していない部位として網掛けNで表している。
【0024】
また、放熱伝達面14aとプリント配線板1との間に形成された絶縁空間として機能する微小隙間Sには、電子部品5で発生した熱をケース2へと伝熱させるために、熱伝導性に優れたセラミックス粉等を含んだシート状又はゲル状のシリコン材料からなる放熱材17が介在される。この放熱材17を微小隙間Sに介在させることで、電子部品5から発生された熱をケース2の放熱伝達面14aに逃がし、プリント配線板1が高温となるのを防止している。
【0025】
そして、該電子部品5a,5bに対応したプリント配線板1の領域(図5中T1、T2)は、放熱用台座14の放熱伝達面14aに、放熱材17を介して弾性的に支承されている。
【0026】
また、本実施例において放熱伝達面14aは凹凸の無い平坦面としたが、凹凸を設けても良く、そのようにすれば放熱伝達面14aと放熱材17との接触面積が多くなり、放熱効果を高めることができる。
【0027】
また、放熱材17は柔軟性を有するため、車両振動等によるプリント配線板1の変形や、振動を効果的に吸収することができる。
【0028】
また、ケース2には、冷却効果を高めるための放熱フィン16が設けられている。放熱フィン16は、各放熱用台座14が設けられた部位と対応するケース2の底面に設けられている。
【0029】
そして、ケース2には、この電子制御装置を車体に固定するための固定用ブラケット18、19が設けられている。
【0030】
さらに、このケース(ケースとカバーのうちのいずれか一方)2の開口外周縁部には、図5に示すようにカバー3を接着固定させるためのシール溝(溝部)22が全周に亘って形成されている。
【0031】
このシール溝22は、図8から図10に示すように内側面(内側両側面)22a、22aが底部22bに向かってほぼ垂直となるように形成されている。
【0032】
また、カバー(ケースとカバーのうちの他方)3には、ケース2に形成されたシール溝22に対応して形成され、接着剤(シール材)30とともに該シール溝22に挿入される環状突条部(突起部)31が形成されている。
【0033】
ここで、環状突条部31は、両側面31a,31aが、カバー3をケース2に装着した状態で、それぞれの側面31aに対向するシール溝22の内側面22aに対して、シール溝22の底部22bに向かって内側に傾斜角S3で傾斜するように形成されている。
【0034】
また、ケース2の四隅のシール溝22の近傍には、カバー3を当接して固定する固定部20が形成されている。そして、固定部20には、カバー3を取り付けるためのカバー取付けネジ孔21が形成されている。さらに、ケース2の四隅のうち対角となる角部には、プリント配線板1を覆って配置されるカバー3の取付け位置を規制するための一対のカバー位置決め片20a、20aが形成されている。
【0035】
また、固定部20とシール溝22との間には、当該シール溝22から溢れた接着剤(シール材)30を収容する収容部26が設けられている。
【0036】
本実施形態では、固定部20のカバー当接面20bがシール溝22の上端22cよりも上方に位置するように固定部20を設け、固定部20とシール溝22との間に微小隙間S1を設けることで、収容部26を形成している。
【0037】
また、本実施形態における接着剤(シール材)30の収容部26は、ケース2の四隅の固定部20に近接して形成しているが、図16、図17に示すように、ケース2の四隅の固定部20の近傍の内周側に設けたり、シール溝22の外方、内方もしくはシール溝22の内外両方で、ケース2の全周もしくはその一部に設けてあっても良いものである。
【0038】
ケース2の全周もしくはその一部に設ける場合は、シール溝22の外方及び/又は内方(ケース2の外周側、内周側)を、壁部22dとし、固定部20のカバー当接面20bと同一の高さ(シール溝22の上端22cよりも上方)で形成することで同様の効果を得ることができる。さらに、収容部26を全周に設けた場合には、接着剤30にかかる圧力を高めることができるため、車両振動等によりカバーが位置ずれしてしまうのを抑制することができる。なお、ケース2の長手方向もしくは短手方向の中間部に収容部26を形成した場合でも同様の効果を得ることができる。
【0039】
カバー3は、図1から図4に示すように、ケース2と同様、放熱性に優れたアルミニウム、鉄、ステンレス鋼等の金属材料から形成され、ケース2内に固定したプリント配線板1を覆ってケース2に装着される。本実施形態では、カバー3は、平面視矩形状をなす平板とされている。このカバー3には、ケース内の圧力を調整する呼吸フィルター23を取り付けるフィルター取付け孔24が形成されている。フィルター取付け孔24の周囲には、ケース内への水の浸入を防止する防護壁25が設けられている。
【0040】
また、カバー3の四隅には、上記固定部20のカバー当接面20bに当接して固定される取付部27が設けられており、カバー3の四隅のうち対角となる角部には、一対のカバー位置決め片20a、20a間に遊嵌されて位置決めされる位置決め部27aが形成されている。また、カバー3の四隅には、ケース2に形成されたカバー取付けネジ孔21に固定ネジ28でネジ止めするための固定ネジ取付け孔29が形成されている。
【0041】
さらに、本実施形態では、環状突条部31の側面31aの表面粗さを、シール溝22の内側面22aの表面粗さよりも細かくしている。
【0042】
なお、このシール溝22を、図11,12に示すように、内側面22aA,22aAが底部22bに向かって傾斜角S2で内側に傾斜しているように形成してもよい。すなわち、シール溝22を、下側(底部22b側)に向かうにつれて幅狭となるように形成してもよい。
【0043】
「電子制御装置の組立手順」
次に、上述のように構成された電子制御装置の組立手順について説明する。先ず、図2に示すように、2箇所の放熱伝達面14aに放熱材17を取り付ける。次に、ケース2にプリント配線板1を取り付ける。プリント配線板1をケース2に取り付けるには、コネクタ6を下向きとし、2箇所に形成した位置決め孔10を前記ケース2の位置決めピン9に遊嵌させるとともにプリント配線板1の四隅を各基板固定部12上に載せる。また、このとき、コネクタ6をコネクタ挿入孔11より挿入し、ケース2の底面よりも外方へ突出させる。
【0044】
そして、ネジ8を取付孔7を介してネジ孔13に螺合する。この結果、プリント配線板1は、四隅とコネクタ挿入孔11が設けられた位置とは反対側の側縁部中央に設けられた合計5箇所の基板固定部12上に固定される。また、プリント配線板1は、放熱伝達面14a上に配置された放熱材17とほぼ隙間なく密着する。このプリント配線板1は、5箇所の基板固定部12と放熱材17と密着する部位以外は、ケース2の底部2aに対して接触することなく所定の空間を有したフローティング配置とされる。なお、プリント配線板1に接着剤を塗布し、当該プリント配線板1を接着剤を介して基板固定部12上に取り付けるようにしてもよい。このとき、接着剤が隙間から垂れてしまわないように高粘度の接着剤を用いるのが好適である。
【0045】
次に、ケース2の外周囲に形成されたシール溝22内に接着剤(シール材)30を塗布する。そして、カバー3の対角に形成した2箇所の位置決め部27aを、ケース2に形成した一対のカバー位置決め片20a、20a間に遊嵌させる。また、このとき、環状突条部(突起部)31をシール溝(溝部)22内に挿入させて固定ネジ28を前記カバー3に形成した固定ネジ取付け孔29を介して前記ケース2のカバー取付けネジ孔21にねじ込む。その結果、カバー3は、内部にプリント配線板1を収納させた状態でケース2に固定される。このとき、ケース2とカバー3とが、接着剤30によってシールされ、これにより、ケース外周囲からの水やダスト等の浸入が阻止される。
【0046】
「作用効果」
次に、本実施形態の電子制御装置の作用効果について説明する。
【0047】
従来技術における突条部の場合、突条部の側面の傾斜が無い(ほぼ垂直である)ため、ケースとカバーをシールする場合、突条部が接着剤を掻き出してしまうため、突条部の側面に接着剤が馴染まなくなり所望のシール性が得られない場合があったが、本実施形態では、シール溝(溝部)22の内側面22aに対して環状突条部(突起部)31の側面31aをシール溝(溝部)22の底部22bに向かって傾斜角S3で内側に傾斜させることで、環状突条部(突起部)31の側面31aによって接着剤(シール材)30を押圧しながら環状突条部(突起部)31をシール溝(溝部)22に挿入することができるため、接着剤(シール材)30として高粘度の接着剤を用いた場合でも、接着剤30にかかる圧力を高めることができ、環状突条部(突起部)31の側面31aに接着剤30を十分に馴染ませることができる。その結果、環状突条部(突起部)31の側面31aにおける接着剤の馴染み性が向上して接着力が高められるため、ケース2とカバー3とのシール性を向上させることができる。
【0048】
さらに、本実施形態では、プリント配線板1を接着剤を介して基板固定部12上に取り付ける場合には、プリント配線板1に塗布する接着剤およびシール溝(溝部)22に塗布する接着剤として同一の高粘性接着剤を用いることができる。そのため、プリント配線板1固定用接着剤とカバー3装着用接着剤とを異ならせる必要がなくなり、製造工程の簡素化を図ることができる。
【0049】
また、本実施形態では、シール溝(溝部)22がケース2の外周縁部に形成されるとともに、当該ケース2のシール溝(溝部)22の近傍に、カバー3を当接して固定する固定部20を形成し、当該固定部20とシール溝(溝部)22との間に、当該シール溝(溝部)22から溢れた接着剤30を収容する収容部26を設けたため、環状突条部(突起部)31をシール溝(溝部)22に挿入する際に、シール溝(溝部)22から溢れた接着剤30がカバー3によって押圧されるため、接着剤30にかかる圧力をさらに高めることができ、ケース2とカバー3とのシール性をより一層向上させることができる。
【0050】
また、本実施形態では、固定部20のカバー当接面20bがシール溝(溝部)22の上端22cよりも上方に位置するように固定部20を設け、固定部20とシール溝22との間に微小隙間S1を設けることで、収容部26を形成しているため、収容部の構造を簡素化することができ、製造コスト削減を図ることができる。
【0051】
また、本実施形態の変形例のように、シール溝22の内側面22aを、当該シール溝22の底部22bに向って傾斜角S2で内側に傾斜させることで、シール溝22の成形を容易に行うことができるようになる。
【0052】
またその場合、カバー(ケースとカバーの内の他方)3に形成される環状突条部(突起部)31の傾斜角S3を、シール溝22の内側面22aの傾斜角S2よりも大きくすることで、環状突条部(突起部)31の側面31aへの接着剤(シール材)30の馴染み性を向上させることができる。
【0053】
また、本実施形態では、環状突条部31の側面31aの表面粗さをシール溝22の内側面22aの表面粗さよりも細かくすることで、カバー3のケース2への装着時において位置ずれしやすい環状突条部31の側面31aへの接着剤30の馴染み性をより高めることができるようになる。このように、接着剤30をシール溝22の内側面22aよりも環状突条部31の側面31aに馴染ませることで、カバー3がケース2に対して位置ずれしてしまうのが抑制され、ケース2とカバー3とのシール性をより一層向上させることができる。
【0054】
また、本実施形態の変形例として、図13、図14に示すように、環状突条部31の側面31aを、ケース2の内方のみ、外方のみ傾斜させたり、側面31aの内方と外方の傾斜角S3をそれぞれ異ならせたりしてもよい。いずれの形態においても、本発明とほぼ同様に効果を得ることができる。
【0055】
また、本実施形態においてはシール溝22の上端22cを、ほぼ平行にケース2の内方へ延設しているが、シール溝22の底部22bへ向けて傾斜させて形成してもよい。
【0056】
この場合であれば、環状突条部(突起部)31をシール溝(溝部)22に挿入する際に、シール溝(溝部)22から収容部26へ積極的に接着剤30を溢れさせることができるため、カバー3によって押圧される接着剤30にかかる圧力をさらに高めることができ、ケース2とカバー3とのシール性をより一層向上させることができる。
【0057】
以上、本発明にかかる電子制御装置の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限ることなく要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態を採用することができる。
【0058】
例えば、上記実施形態では、環状突条部の側面の表面粗さを、シール溝の内側面の表面粗さよりも細かくしているが、環状突条部の側面の表面粗さとシール溝の内側面の表面粗さとが同等となるようにしても本発明を実施できる。
【0059】
また、環状突条部(突起部)31の傾斜角S3やシール溝22の内側面22aの傾斜角S2は、環状突条部(突起部)31やシール溝22の形状、面積、接着剤(シール材)30の充填量等によって、適宜設定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施形態にかかる電子制御装置をカバー側から見たときの全体斜視図である。
【図2】図1の分解斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態にかかる電子制御装置をケース側から見たときの全体斜視図である。
【図4】図3の分解斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態にかかるケースを開口側より見たときの平面図である。
【図6】図1のA−A線断面図である。
【図7】図1のB−B線における要部拡大断面図である。
【図8】本発明の一実施形態にかかるケースの固定部が設けられた部分の拡大斜視図である。
【図9】本発明の一実施形態にかかるケースの固定部が設けられた部分の拡大断面図である。
【図10】本発明の一実施形態にかかる溝部に接着剤を塗布して突起部を挿入させた状態を示す拡大断面図である。
【図11】本発明の一実施形態の変形例にかかるケースの固定部が設けられた部分の拡大断面図である。
【図12】本発明の一実施形態の変形例にかかる溝部に接着剤を塗布して突起部を挿入させた状態を示す拡大断面図である。
【図13】本発明の一実施形態の変形例を示す図であって、(a)は、本実施形態の第2変形例にかかる溝部に接着剤を塗布して突起部を挿入させた状態を示す拡大断面図、(b)は、本実施形態の第3変形例にかかる溝部に接着剤を塗布して突起部を挿入させた状態を示す拡大断面図である。
【図14】本発明の一実施形態の変形例を示す図であって、(a)は、本実施形態の第4変形例にかかる溝部に接着剤を塗布して突起部を挿入させた状態を示す拡大断面図、(b)は、本実施形態の第5変形例にかかる溝部に接着剤を塗布して突起部を挿入させた状態を示す拡大断面図である。
【図15】本発明の一実施形態の第6変形例にかかるケースの固定部が設けられた部分の拡大断面図である。
【図16】本発明の一実施形態の第7変形例にかかるケースの固定部が設けられた部分の拡大斜視図である。
【図17】本発明の一実施形態の変形例を示す図であって、(a)は、本実施形態の第8変形例にかかるケースの固定部が設けられた部分の拡大斜視図、(b)は、本実施形態の第9変形例にかかるケースの固定部が設けられた部分の拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0061】
1 プリント配線板(回路基板)
2 ケース
3 カバー
20 固定部
20b カバー当接面
22 シール溝(溝部)
22a 内側面
22b 底部
22c 上端
26 収容部
30 接着剤(シール材)
31 環状突条部(突起部)
31a 側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天面が開口され、回路基板を収容するケースと、前記ケース開口を覆い、当該ケースに装着されるカバーと、前記ケースと前記カバーのうちのいずれか一方に設けられる溝部と、他方に設けられ、前記溝部に挿入される突起部と、を備え、前記突起部をシール材を介して前記溝部に挿入することで、前記カバーを前記ケースに装着する電子制御装置であって、
前記突起部の側面が、前記カバーを前記ケースに装着した状態で当該突起部の側面に対向する前記溝部の内側面に対して、当該溝部の底部に向かって内側に傾斜していることを特徴とする電子制御装置。
【請求項2】
前記溝部が前記ケースと前記カバーのうちのいずれか一方の外周縁部に設けられるとともに、前記突起部が他方の外周縁部に設けられることを特徴とする請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記溝部が前記ケースの外周縁部に形成されるとともに、当該ケースの前記溝部近傍には、前記カバーを当接して固定する固定部が形成されており、
前記固定部と前記溝部との間に、当該溝部から溢れたシール材を収容する収容部が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の電子制御装置。
【請求項4】
前記固定部は、当該固定部のカバー当接面が前記溝部の上端よりも上方に位置するように設けられていることを特徴とする請求項3に記載の電子制御装置。
【請求項5】
前記溝部の内側面が、当該溝部の底面に向って内側に傾斜していることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の電子制御装置。
【請求項6】
前記突起部の側面の表面粗さを、前記溝部の内側面の表面粗さと同等若しくは前記溝部の内側面の表面粗さよりも細かくしたことを特徴とする請求項1〜5のうちいずれか1項に記載の電子制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−56493(P2010−56493A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−222909(P2008−222909)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】