説明

電子制御装置

【課題】筐体を構成するケースとカバーの寸法公差に関わらずこれらの接合面間にシール材を充填可能としつつも、当該接合面からのシール材の溢れ出しを抑制し得る電子制御装置を提供する。
【解決手段】その接合面26にシール溝27を有するケース12と、その接合面39にシール溝に係合する固定用突条40を有するカバー13とを、シール溝内に充填された接着剤30を介して接合することによって構成された筺体内に回路基板を収容してなる電子制御装置において、シール溝の内周側壁27aの上端面とカバーの接合面との間に設けられた内周側隙間L3と、シール溝の外周側壁27bの上端面とカバーの接合面との間に設けられた外周側隙間L4とを異ならせることによって、当該両隙間のうち大きい方の隙間側に、固定用突条により押し退けられた接着剤が滞留するシール材滞留部を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車に搭載され、エンジンやブレーキ等の制御に供する電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子制御装置としては、例えば以下の特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
この電子制御装置では、エンジンルーム内に配置されるなど水分に晒されるおそれがあることから、ケースの接合面に設けたシール溝にシール材を充填し、該シール材が充填されたシール溝に、カバー接合面に設けた突条を係合させることによって、ケースとカバーとの間にシール材を介在させる構成とし、これによって、筐体内への水分の侵入を抑制するようになっている。
【0004】
この際、前記電子制御装置では、ケース及びカバーに生ずる加工誤差(寸法誤差)を考慮し、これらの接合面間に隙間を設ける設計とすることで両部品の歩留まりを確保することになるが、この隙間内に水分が滞留してしまうと錆等の原因となるおそれがあることから、当該隙間まで含めて前記シール材によりシールすることで、かかる問題を解消する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−56493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記隙間は、ケースとカバーの最大公差を基準に設定され、これに合わせて前記シール材の充填量も設定されることになるため、当該両者の寸法誤差が小さい場合(単にケースないしカバー単体の各加工誤差が小さいことにより両者の寸法誤差が小さくなる場合は勿論のこと、これら両者の加工誤差の組み合わせにより当該両者の寸法誤差が小さくなる場合も含む。以下、同じ。)には、前記接合面からシール材が溢れ出してしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、かかる技術的課題に鑑みて案出されたものであって、筐体を構成するケースとカバーの寸法公差に関わらずこれらの接合面間にシール材を充填可能としつつも、当該接合面からのシール材の溢れ出しを抑制し得る電子制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、その接合面にシール溝を有する第1部材と、その接合面に前記シール溝に係合する突条を有する第2部材とを、前記シール溝内に充填されたシール材を介して接合することにより構成された筺体内に回路基板を収容してなる電子制御装置において、前記シール溝の内周縁と前記第2部材の接合面との間に設けられた第1隙間と、前記シール溝の外周縁と前記第2部材の接合面との間に設けられた第2隙間とを異ならせることによって、当該両隙間のうち大きい方の隙間側に、前記突条により押し退けられた前記シール材が滞留するシール材滞留部を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本願発明によれば、突条に押し退けられてシール溝から溢れ出たシール材はシール材滞留部内に滞留することになり、ケースやカバーの寸法誤差が小さく当該シール材の溢れ出る量が比較的多くなった場合でも、当該シール材が筐体の外部や筐体の基板収容部内に流出してしまう不都合を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る電子制御装置を表側から見た斜視図である。
【図2】本発明に係る電子制御装置を裏側から見た斜視図である。
【図3】図1に示す電子制御装置の分解斜視図である。
【図4】図1のA−A線断面図である。
【図5】図4の要部拡大図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る図1のB−B線断面図である。
【図7】位置決め固定片が位置決め固定壁により位置決めされた状態を現す図6に相当する断面図である。
【図8】本発明の第1実施形態に係る図1のC−C線断面図である。
【図9】同実施形態の他例を現した図8に相当する断面図である。
【図10】本発明の第2実施形態を示す図1のC−C線断面図である。
【図11】同実施形態の他例を現した図8に相当する断面図である。
【図12】同実施形態の第1変形例を現した図8に相当する断面図である。
【図13】同実施形態の第2変形例を現した図8に相当する断面図である。
【図14】同実施形態の第3変形例を現した図8に相当する断面図である。
【図15】本発明の他の実施形態を現した図8に相当する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る電子制御装置の各実施形態を図面に基づいて詳述する。なお、以下に示す各実施形態では、この電子制御装置を自動車のエンジン制御に適用したものを示している。
【0012】
図1〜図8は本発明に係る第1実施形態を示し、当該実施形態に係る電子制御装置は、特に図3に示すように、その表裏面に例えばコンデンサやコイル、トランジスタやICなど所定の電子部品14が実装される回路基板11と、該回路基板11が収容固定される金属製のケース12(本発明に係る第1部材に相当)と、前記回路基板11を覆うように前記ケース12の上方から被嵌して当該ケース12と共に本発明に係る筐体を構成するカバー13(本発明に係る第2部材に相当)と、から主として構成され、車両のエンジンルーム等に搭載される。
【0013】
前記回路基板11は、いわゆるプリント配線基板であり、例えばガラスエポキシ樹脂等からなる板材の表裏面ないしその内部に配線回路パターン(図示外)が形成され、この配線回路パターンに前記各電子部品14が半田等により電気的に接続されている。
【0014】
また、前記回路基板11には、図3、図4に示すように、前記ケース12に対する取付面となる裏面11bに、外部のコネクタ(図示外)とそれぞれ接続される3つの第1〜第3接続口16〜18を有するコネクタ15が取り付けられている。このコネクタ15は、その接続先に応じて3つに分割された前記各接続口16〜18がベースとなる取付基部19を介して一体化されたもので、この取付基部19を介して回路基板11に複数のビス20によって固定されている。そして、このコネクタ15は、図2に示すように、前記取付基部19によって連結された一連の接続口16〜18が、ケース12の底壁12aに開口形成された後記の窓部21を介して外部へ臨むようになっていて、ケース12の外部にて前記図外のコネクタと接続される。
【0015】
なお、前記各接続口16〜18には、それぞれ前記図外の配線回路パターンに電気的に接続された複数の雄型端子16a〜18aが収容されており、これらの雄型端子16a〜18aが前記図外のコネクタに収容される複数の雌型端子と接続されることで、当該図外のコネクタ(雌型端子)に接続されるセンサ類やポンプ等の所定の機器と電気的に接続されることとなる。
【0016】
前記ケース12は、図3に示すように、鉄ないしアルミニウム等の放熱性に優れた金属材料によっていわゆる箱状に一体形成されたものであって、具体的には、ほぼ矩形状の底壁12aの外周縁(各側辺)に第1〜第4側壁12b〜12eが立設され、全体が上方へと開口するように構成されている。そして、このケース12の底壁12aには、コネクタ15の前記各接続口16〜18を当該ケース12の外部へと臨ませる窓部21が貫通形成されていて、この窓部21に前記各接続口16〜18が嵌挿されることにより、これら各接続口16〜18が当該ケース12の外部へ突出するようになっている。
【0017】
また、前記ケース12の底壁12aの内側面には、回路基板11の取付固定に供する複数の基板固定部22が立設されている。これら基板固定部22は、その上端部に、それぞれ回路基板11を支持する平坦状の支持面22aが構成されていて、これら各支持面22aには、回路基板11の固定に供する図外のビスが螺合する雌ねじ穴22bが形成されている。かかる構成から、回路基板11の外周縁部に複数設けられたビス挿通孔11cに挿通する前記図外のビスが前記各雌ねじ穴22bに螺着されることにより、回路基板11が前記各基板固定部22に支持された状態でケース12に固定されることとなる。
【0018】
さらに、前記ケース12の底壁12aの内側面には、前記各電子部品14のうち特に発熱性の高いものの放熱に供する一対の第1、第2放熱用台座23a,23bが突設されている。この第1、第2放熱用台座23a,23bは、前記発熱性の高い電子部品が実装される所定領域に設けられていて、それぞれ周知の第1、第2放熱シート24a,24bを介して前記発熱性の高い電子部品の熱が伝達されるようになっている。ここで、前記各放熱シート24a,24bは、例えば放熱グリス等でもよく、いわゆる熱伝導材であればシート状のものに限定されるものではない。
【0019】
一方で、前記第1、第2放熱用台座23a,23bが設けられる底壁12aの外側面には、図2に示すように、放熱の促進に供する第1、第2放熱フィン25a,25bが設けられている。これによって、前記各放熱用台座23a,23bが受けた熱が効率よく放熱され、冷却効果を高めることが可能となっている。
【0020】
また、前記ケース12には、図3〜図5に示すように、前記各側壁12b〜12eの上端に、カバー13との接合に供するほぼ平坦状の一連の接合面26が周方向に亘って構成されると共に、この接合面26には、当該ケース12とカバー13の固定に供する接着剤30(本発明に係るシール材に相当)が充填される一連のシール溝27が全周に亘って切欠形成されている。このシール溝27には、前記接着剤30が充填された状態でカバー13に設けられる後記の固定用突条40が挿入されるようになっていて、主として当該シール溝27と前記固定用突条40とが接着剤30を介して接着されることで、ケース12とカバー13とが固定されることとなる(図6、図8参照)。
【0021】
ここで、前記ケース12とカバー13の接着固定に際し、本実施形態では、後述するように、ケース12にカバー13が被嵌(固定)された状態においてケース12の接合面26とカバー13の接合面39との間に後記の各隙間L3,L4が確保される構成となっていて、後述するように、後記の固定用突条40がシール溝27内に進入することに伴って接着剤30が前記各隙間L3,L4へと押し出されることにより、当該両隙間L3,L4内にも接着剤30が充填されるようになっている(図6参照)。すなわち、前記両隙間L3,L4内にも接着剤30が充填されることにより、シール溝27と固定用突条40に加え、ケース12の接合面26とカバー13の接合面39までが接着剤30によって接合されるようになっている。かかる構成により、特に後記の外周側隙間L4内に水分等が溜まってしまう不都合を回避して、当該隙間L4内における錆の発生等を抑制することが可能となっている。
【0022】
なお、このような構成からして、前記接着剤30については、硬化前に流動性を有するシール材であれば特に組成等は問わず、エポキシ系やシリコーン系、アクリル系など、電子制御装置の仕様等に応じて自由に選択できる。さらには、シール溝27への接着剤30の充填量についても、シール溝27一杯に充填される必要はなく、後述するような固定用突条40による押し出し作用によって後記の外周側隙間L4が満たされるに足る量が充填されていればよい。
【0023】
また、前記シール溝27は、特に図8に示すように、その内周側壁27aがその外周側壁27bよりL5だけ低く設定されていて、後記の外周側隙間L4に比べて後記の内周側隙間L3の方が大きくなるように構成されている。換言すれば、当該シール溝27において内周側隙間L3の方が大きくなるよう形成したことによって、当該内周側隙間L3内により多くの接着剤30が充填され且つ滞留するようになっていて、本実施形態では、当該内周側隙間L3が、本発明に係るシール材滞留部として構成されるようになっている。
【0024】
また、前記ケース12における第1、第3側壁12b,12dの外側部には、図1〜図3に示すように、当該電子制御装置の車体(図示外)への取付固定に供する一対の第1、第2ブラケット28,29が一体に設けられている。そして、第1ブラケット28には、上下方向に貫通する貫通孔28aが設けられる一方で、第2ブラケット29には、側方に開口する切欠溝29aが設けられていて、これら貫通孔28a及び切欠溝29aをもって前記車体への取付固定が行われる。
【0025】
さらに、前記第1、第2ブラケット28,29には、図3、図4に示すように、カバー13に設けられる後記の係合突起46a,46bと係合可能に構成された第1、第2係合溝28b,29bが切欠形成されている。ここで、これら各切欠溝28b,29bは、それぞれ対応する前記各係合突起46a,46bのみが係合可能となるように構成されている。つまり、例えば第2係合突起46bを第1切欠溝28bには係合することができないように構成されており、これによって、ケース12とカバー13の誤組み付けの防止が図られている。
【0026】
また、前記ケース12には、図3、図5に示すように、前記各側壁12b〜12eによって構成される各隅部(四隅)に、当該ケース12に対するカバー13の水平方向(水平回転方向を含む)の位置決めに供する第1〜第4位置決め固定壁31〜34が立設され、前記各側壁12b〜12eと一体に構成されている。なお、これらの位置決め固定壁31〜34はいずれも同形状に構成されていることから、その構成については、便宜上、図5〜図7の各図示に基づいて、第1位置決め固定壁31についてのみ、以下に説明する。
【0027】
すなわち、前記第1位置決め固定壁31は、図1、図6に示すように、第1側壁12bに沿って構成される第1位置決め壁35と、第4側壁12eに沿って構成される第2位置決め壁36と、前記両位置決め壁35,36を繋ぐように構成され、ケース12に対するカバー13の固定に供する固定壁37と、を有し、これらが一体に形成されている。
【0028】
前記第1位置決め壁35は、カバー13に設けられる後記の第1位置決め固定片41の第1係合溝45aと係合することで、その対角に位置する第3位置決め固定壁33の第1位置決め壁33aと共に、主として、カバー13の長辺方向(図1中のX軸方向)の移動を規制する。
【0029】
前記第2位置決め壁36は、カバー13に設けられる後記の第1位置決め固定片41の第2係合溝45bと係合することで、その対角に位置する第3位置決め固定壁33の第2位置決め壁33bと共に、主として、カバー13の短辺方向(図1中のY軸方向)の移動を規制する。
【0030】
前記固定壁37は、図5〜図7に示すように、その内側面37aがカバー13に設けられる後記の第1位置決め固定片41の外側面41aと当接することによって、その対角に位置する第3位置決め固定壁33の固定壁33cと共に、主として、カバー13の対角線方向の移動規制に供する(図1参照)。
【0031】
また、前記固定壁37の内側面37aには、その高さ方向における所定位置に、後記の第1位置決め固定片41に設けられる係止突起41bに係止可能に構成された係止溝37bが穿設されている。そして、かかる係止溝37bに前記係止突起41bが係止することで、ケース12に対するカバー13の鉛直方向(図1中のZ軸方向)の移動が規制され、その対角に位置する第3位置決め固定壁33の固定壁33cと共にカバー13の鉛直方向の移動を規制する。
【0032】
さらに、前記固定壁37の内側上端部には、前記内側面37a側へ下り傾斜状となるテーパ面37cが設けられている。なお、本実施形態では、このテーパ面37cを平滑に形成することとしたが、必ずしも平滑である必要はなく、例えばその断面が外方へ凸円弧状となるように形成することも可能である。
【0033】
前記カバー13は、図3、図5に示すように、金属材料に比べて軽量な所定の樹脂材料によってケース12と同様のいわゆる箱状に一体成形されたものであり、ほぼ矩形状の天井壁13aの外周縁(各側辺)に第1〜第4側壁13b〜13eが設けられ、全体が下方へと開口するように構成されていて、ケース12内に収容された回路基板11を覆うように被嵌されることによって、当該ケース12に組み付けられる。
【0034】
そして、このカバー13は、図3に示すように、前記第1〜第4側壁13b〜13eの各先端部に、ケース12の接合面26と対向するような一連の接合部38が側方へ鍔状に突設されると共に、図6に示すように、この接合部38下面である接合面39に、ほぼ環状に構成された一連の固定用突条40が全周に亘って突出形成されていて、この固定用突条40がシール溝27に係合した状態で接着剤30を介してケース12に固定されている。
【0035】
この固定用突条40は、図6、図7に示すように、その厚さがシール溝27の溝幅に比べて十分に小さく設定されることで当該シール溝27との間に所定の隙間Lxが確保されるようになっていて、当該隙間をもってシール溝27との間に所定量の接着剤30を介在させることが可能となっている。また、この固定用突条40は、その突出量についてもシール溝27の溝深さより小さく設定され、当該シール溝27内にて接着剤30を切断してしまうことがないように構成されている。
【0036】
また、前記カバーの接合部38には、図1、図3に示すように、その四隅に、ケース12の第1〜第4位置決め固定壁31〜34にそれぞれ対向する第1〜第4位置決め固定片41〜44が延設され、当該カバー13と一体に構成されている。なお、これらの位置決め固定片41〜44は、前記各位置決め固定壁31〜34と同様に、いずれも同形状に構成されるていことから、その構成については、便宜上、図5〜図7の図示に基づいて、第1位置決め固定片41についてのみ、以下に説明する。
【0037】
すなわち、前記第1位置決め固定片41は、図5に示すように、前記接合面26に対してほぼ直角に折れ曲がるように立設され、その外側面41aが第1位置決め固定壁31に係る固定壁37の内側面37aと対向し、相互に面接触するような構成となっている。さらに、この第1位置決め固定片41の両側部には、第1、第2位置決め壁35,36にそれぞれ係合可能な第1、第2係合溝45a,45bが切欠形成されており、該各係合溝45a,45bが前記各位置決め壁35,36と係合することで、その対角に位置する第3位置決め固定片43と共にカバー13の水平方向の移動を規制し、これによって、ケース12に対するカバー13の位置決めが行えるようになっている。
【0038】
また、前記第1位置決め固定片41の外側面41aには、図6、図7に示すように、前記固定壁37の係止溝37bに係止可能に構成された係止突起41bが突出形成されている。そして、この係止突起41bが前記係止溝37bに係止することで、その対角に位置する第3位置決め固定片43と共にカバー13の鉛直方向の移動を規制し、これによって、ケース12に対しカバー13を固定(仮固定)することが可能となっている。
【0039】
ここで、前記係止突起41bは、その断面がほぼ円弧状となるように形成されると共に、その中心から接合面39までの距離L1(以下、「係止突起41bのオフセット量」という。)が、前記固定壁37における係止溝37bの中心から外周側壁27bの上端面までの距離L2(以下、「係止溝37bのオフセット量」という。)よりも小さくなるように、つまり当該係止溝37bのオフセット量L2との間において「L1<L2」の関係が成立するように設定されている。すなわち、かかる構成によって、ケース12とカバー13を組み付けた状態において、ケース12の接合面26を構成する内周側壁27a及び外周側壁27bの各上端面とカバー13の接合面39との間に、それぞれ所定の隙間である内周側隙間L3及び外周側隙間L4(L3−L5)が形成されるようになっている。そして、本実施形態では、前述のように、内周側壁27aの方が外周側壁27bよりも低くなるように構成されることで、前記両隙間L3,L4間において「L3>L4」の関係が成立するように設定されている。
【0040】
なお、前記外周側隙間L4については、ケース12とカバー13の最大公差に合わせて設定され、当該両者12,13の寸法誤差が最大となったときでも前記両接合面26,39同士が接触しないような構成となっている。
【0041】
また、前記「L3>L4」の関係となるように前記両隙間L3,L4を設定するにあたり、当該両隙間L3,L4は、前記両側壁27a,27bの厚さ幅との関係から、シール溝27内への固定用突条40の進入により当該シール溝27内の接着剤30が前記各隙間L3,L4から筺体CSの内外へと流出することがないような比率に設定されている。ここでいう「筺体CSの内外へ流出しない」とは、接着剤30が筺体CSの内外に全くはみ出さないという意ではなく、前記各隙間L3,L4からケース12の各内外側面を伝って流れ落ちることはない意であり、例えば図8に示すように、筺体CSの内外へ僅かに臨むような状態は許容する趣旨である。換言すれば、筺体CS外であればその後の作業性を損なうことがなく、また、筺体CS内であれば当該筺体CS内に収容される回路基板11等に悪影響を及ぼさない程度のはみ出しは許容する趣旨である。
【0042】
このような構成から、カバー13は、図6に示すように、ケース12に係止固定される前に固定用突条40が予めシール溝27に充填された接着剤30中に進入することで、シール溝27内の接着剤30が前記各隙間L3,L4内へと押し出されて、ケース12の接合面26(内周側壁27a及び外周側壁27bの各上端面)とカバー13の接合面39との間にも接着剤30の一部が充填されるようになっている。
【0043】
さらに、前記第1位置決め固定片41には、図7に示すように、その基端側に有する曲折部41dの外側に、いわゆる面取りにより形成された円弧状隅部41cが構成されている。かかる構成とすることで、ケース12にカバー13を組み付ける際に、前記円弧状隅部41cが前記固定壁37のテーパ面37c上を滑降することによって、その対角に設けられる第1位置決め固定片43と共に、カバー13の水平方向位置をケース12の中央側へと導く(ガイドする)、当該カバー13のいわゆるセンタリングを行うことが可能となっている。
【0044】
また、前記カバー13にて第1、第2側壁13b,13cに隣接する接合部38の側部には、前記第1、第2ブラケット28,29の係合溝28b,29bに対応する第1、第2係合突起46a,46bが、それぞれ当該接合部38の厚さ幅方向に沿って突設されている。これにより、前述のようなカバー13の誤組み付け防止が図れる。
【0045】
さらに、前記カバー13には、図1、図3に示すように、その天井壁13aに、ほぼ円形の呼吸孔47が貫通形成されており、この呼吸孔47の外側開口端部には、当該カバー13とケース12とによって構成される筐体CSの内外圧力差の調整に供する呼吸フィルタ48が配設されている。なお、前記呼吸孔47の外周縁部には、いわゆる堰塞壁49が全周に亘って立設されることで、前記筐体CS内への水の侵入が抑制可能となっている。
【0046】
以下、上述のように構成された電子制御装置の組立について説明する。
【0047】
まず、図3に示すように、ケース12の前記各放熱用台座23a,23b上に前記各放熱シート24a,24bを貼着して、回路基板11にコネクタ15をビス20により取付固定した後、この回路基板11を、コネクタ15の前記各接続口16〜18を窓部21に挿通させつつケース12の基板固定部22の支持面22a上に載置して、図外のビスをもってケース12に固定する。
【0048】
そして、この回路基板11が取り付けられたケース12のシール溝27内に接着剤30を充填した後、当該ケース12にカバー13を被嵌する。具体的には、カバー13の前記各係合突起46a,46bがケース12の前記各係合溝28b,29bと係合可能となるようにカバー13の向きを調整し、当該両者12,13の四隅を合わせるようにしてカバー13の前記各位置決め固定片41〜44の下端部外側をケース12の前記各位置決め固定壁31〜34の上端部内側に当接させるかたちで、当該カバー13を接合部38側からケース12上に載置する。
【0049】
すると、前記カバー13は、図7にて仮想線で示すように、前記各位置決め固定片41〜44の円弧状隅部41c…が前記各位置決め固定壁31〜34のテーパ面37c…上を滑降することでセンタリングされ、このセンタリングが完了した状態でカバー13を下方へ押し込むことにより、図7にて実線で示すように、前記各位置決め固定片41〜44と前記各位置決め固定壁31〜34との係合構造をもって、ケース12に対するカバー13の水平方向についての位置決めがなされ、カバー13側の固定用突条40の先端がシール溝27の幅方向中央付近に臨むことになる。
【0050】
そして、この位置決めされた状態で、カバー13をさらに下方へ押し込むことによって、図6にて仮想線で示すように、前記各位置決め固定片41〜44の係止突起41b…が前記各位置決め固定壁31〜34の内側面37a…により押し退けられ、当該各位置決め固定片41〜44が内側へ弾性変形した状態で前記各係止突起41b…が前記各内側面37a…を摺動することとなって、前記各係止溝37b…の位置に到達したところで、図6にて実線で示すように、前記弾性変形に基づく復元力をもって当該各係止突起41b…がそれぞれ前記各係止溝37b…内に嵌合し係止することとなる。すると、かかる係止構造によって、ケース12に対するカバー13の鉛直方向の移動が規制されて、当該カバー13がケース12に仮固定される。
【0051】
また、かかるカバー13の押し込みに伴い、特に図8に示すように、シール溝27に固定用突条40が係合することによって、当該シール溝27内に充填された接着剤30が固定用突条40によってシール溝27の外へと押し出され、当該接着剤30が前記各隙間L3,L4に充填されることとなる。これにより、シール溝27と固定用突条40間のみならず、前記両接合面26,39間までが接着剤30によって液密にシールされることとなって、ケース12とカバー13間のシール長を稼ぐことができ、当該両者12,13間の良好なシール性の確保に供される。
【0052】
そして、この際、前記各隙間L3,L4については、これらを相互に異ならせることによってシール溝27の内外周の一方側に前記シール材滞留部が構成されていることから、ケース12とカバー13の寸法誤差が小さく(例えば隙間Lxが小さく)当該シール溝27から押し出される接着剤30の量が比較的多くなった場合であっても、この多くは、前記両隙間L3,L4の比率に応じ、より大きな隙間L3である前記シール材滞留部へと流入し滞留することとなり、当該接着剤30が筺体CSの内外へと流出してしまう不都合が抑制されることとなる。
【0053】
より具体的には、前記内周側隙間L3については、比較的大きく設定されていることから、前記シール溝27から溢れ出した接着剤30が積極的に導入されることとなり、前記寸法誤差が小さくなったことにより増量した接着剤30を吸収することに供される。また、前記「L3>L4」としてその体積を増加させたことにより、前記積極的に導入した接着剤30が筺体CS内部へと流れ込んでしまうおそれを低減させることもできる。
【0054】
一方、前記外周側隙間L4については、前記内周側隙間L3に対して比較的小さく設定されていることから、前記シール溝27から溢れ出した接着剤30の多くは内周側隙間L3に流入することとなり、当該外周側隙間L4を介して筺体CSの外部へと流出してしまうおそれを低減させることができる。また、前記両隙間L3,L4の比率により、前記シール溝27から溢れ出した接着剤30を筺体CSの外部へと流出させることを抑制しつつも、当該接着剤30によって外周側隙間L4内を適切に埋める(シールする)ことができ、当該外周側隙間L4内に水分等が溜まってしまうことによる前記錆の発生等の問題を抑制することもできる。
【0055】
このようにして、前記ケース12にカバー13が仮固定された後、前記係止構造をもって固定用突条40が接着剤30中に進入した状態のまま保持されることで、所定時間の経過後に接着剤30が硬化し、ケース12とカバー13が完全に固定されることとなり、これをもって、前記電子制御装置の組立が完了する。
【0056】
以上のことから、本実施形態による電子制御装置によれば、前記シール溝27の内外周側壁27a,27bの高さを相互に異ならせて、当該シール溝27の内外周一方側に前記シール材滞留部を構成したことによって、ケース12やカバー13の寸法誤差が小さく当該シール溝27から押し出される接着剤30の量が比較的多くなった場合でも、これを当該シール材滞留部内に滞留させることにより、前記押し出された接着剤30が筺体CSの内外へ流出してしまう不都合を抑制することができる。すなわち、接着剤30を筺体CSの外部へと流出させないようにすることにより、その後の組立における作業性(筺体CSの手扱い)を悪化させてしまうおそれを低減させることができると共に、接着剤30を筺体CSの内部へと流出させないようにすることで、当該筺体CSの内部に収容される回路基板11等に悪影響を及ぼすおそれも低減させることができる。
【0057】
そして、特に、本実施形態の場合には、ケース12とカバー13の両接合面26,39間の前記両隙間L3,L4について「L3>L4」の関係となるように構成し、当該シール溝27の内周側に前記シール材滞留部を設けて、当該シール溝27の内周側へと接着剤30を積極的に導くことによって、とりわけ、接着剤30の筺体CS外部への流出を効果的に抑制することに供される。
【0058】
しかも、本発明に係る前記シール材滞留部にあっては、シール溝27の内外周側壁27a,27bの高さを相互に異ならせることによって構成したため、筺体CSの水平方向に係る幅寸法の増大化を伴わず、その大きさを自由に設定することもできる。換言すれば、シール材滞留部の大きさによって筺体CSの水平方向に係る幅寸法が大型化してしまうおそれがなく、所定幅寸法でもってより多くの接着剤30を滞留させることができる、といったメリットを有している。
【0059】
また、従来では、複数のビスを用いてケース12とカバー13を仮固定していたところ、本実施形態では、ケース12の少なくとも一対の前記各位置決め固定壁31〜34に前記各係止溝37b…を設けると共に、カバー13の前記各位置決め固定片41〜44に前記各係止溝37b…に係止可能な前記各係止突起41b…を設けることとして、樹脂材料からなるカバー13の弾性を利用したいわゆるスナップフィット構造をもってケース12とカバー13とを係止固定可能に構成したことから、当該両者12,13の仮固定を容易に行うことができる。これによって、装置の組立作業性のさらなる向上が図れると共に、従来のように複数のビスを使用することがない分、当該装置の軽量化にも貢献できる。
【0060】
さらには、かかる従来のビス止め構造を廃止することによって、特にケース12側のねじ穴の加工も不要になるため、当該加工工数の低減化による生産性の向上及びコスト低減も図れる。
【0061】
また、樹脂材料により形成したカバー13については、単なる蓋形状とするのではなく、前記天井壁13aとその周縁部に立設した前記各側壁13b〜13eとによって構成されるいわゆる箱形状としたことで、カバー13自体の剛性の向上も図れ、当該カバー13の熱影響による反り変形についても抑制することができる。したがって、かかる観点からも、装置の耐久性のさらなる向上に寄与することができる。
【0062】
なお、本実施形態においては、前記ケース12におけるシール溝27の内周側壁27aを切り欠くことによって前記シール材滞留部を設ける構成としたが、当該ケース12側ではなく、図9に示すように、前記内周側壁27aに対向するカバー13の接合面39を切り欠くことによって前記シール材滞留部を構成することも可能である。より具体的には、前記固定用突条40の外周側接合面39bに対し、当該固定用突条40の内周側接合面39aをL5だけ高く設定し、この内周側接合面39aとケース12の接合面26(シール溝27の内周側壁27a上面)との間に前記シール材滞留部を構成してもよく、この場合であっても、前述した本実施形態の作用効果と同様の作用効果が奏せられる。
【0063】
図10は本発明の第2実施形態を示したものであり、前記シール材滞留部を、前記シール溝27の内周側ではなく、当該シール溝27の外周側に設けたものである。
【0064】
すなわち、本実施形態では、前記シール溝27の内周側壁27aに対し外周側壁27bがL5だけ低く設定されていて、当該外周側壁27bとカバー13の接合面39との間に形成される前記外周側隙間L4が前記シール材滞留部として構成されている。
【0065】
このように、本実施形態では、前記シール溝27の外周側に積極的に接着剤30を導く構成としているが、当該実施形態においても、前記第1実施形態と同様、前記両隙間L3,L4の比率を調整することにより、当該各隙間L3,L4内にそれぞれ充填された各接着剤30が筐体CSの内外に流出してしまわないような構成となっている。なお、「流出」の定義については、前記第1実施形態と同様である。
【0066】
したがって、本実施形態によっても、前記第1実施形態と同様の作用効果が奏せられるのは勿論のこと、特に本実施形態の場合には、シール溝27の外周側に前記シール材滞留部を設けて、当該シール溝27の外周側に接着剤30を積極的に導くようにしたことから、外周側隙間L4が接着剤30によって十分に満たされることとなって、当該外周側隙間L4内に水分等が溜まってしまうことによる前記錆の発生等の問題を効果的に抑制することに供される。
【0067】
なお、本実施形態においては、前記ケース12におけるシール溝27の外周側壁27bを切り欠くことによって前記シール材滞留部を設ける構成としたが、当該ケース12側ではなく、図11に示すように、前記外周側壁27bに対向するカバー13の接合面39を切り欠くことによって前記シール材滞留部を構成することも可能である。より具体的には、前記固定用突条40の内周側接合面39aに対し、当該固定用突条40の外周側接合面39bをL5だけ高く設定し、この外周側接合面39bとケース12の接合面26(シール溝27の外周側壁27b上面)との間に前記シール材滞留部を構成してもよく、この場合であっても、前述した本実施形態の作用効果と同様の作用効果が奏せられる。
【0068】
図12は本発明の第2実施形態の変形例を示したものであり、前記シール材滞留部を構成する外周側隙間L4の外端側に、後記の拡大部50を設けることとしたものである。
【0069】
すなわち、本実施形態では、前記シール溝27の外周側壁27bの上端外側縁に、外方へ向かって下り傾斜状となる第1テーパ面51aを設けると共に、これに対向するカバー13の外周縁に、外方へ向かって上り傾斜状となる第2テーパ面51bが設けられていて、前記両テーパ面51a,51bによって、前記外周側隙間L4を外方へ向かって拡大する拡大部50が構成されている。
【0070】
かかる構成とした場合であっても、前記第2実施形態と同様の作用効果が奏せられるのは勿論のこと、特に本変形例の場合には、前記拡大部50を設けたことにより、前記シール材滞留部により多くの接着剤30を滞留させることが可能となる。換言すれば、前記シール溝27から溢れ出した接着剤30が多量となる場合であっても、当該接着剤30が筐体CSの外部へと流出してしまうおそれを低減させることができる。
【0071】
なお、本変形例では、前記拡大部50を、前記両テーパ面51a,51bによって構成することとしたが、当該拡大部50の構成については、前記構成に限定されるものではなく、例えば図13に示すような横断面ほぼ円弧状を成す一対の円弧テーパ面52a,52bや、図14に示すような一対の段差状凹部53a,53bを設けることによって当該拡大部50を構成することも可能である。なお、いずれの形態によっても本変形例と同様の作用効果が奏せられるのは言うまでもない。
【0072】
本発明は、前記各実施形態の構成に限定されるものではなく、例えばケース12及びカバー13の双方を金属材料によって構成し、従来と同様に、当該両者12,13を複数のビスを用いて仮固定を行う場合であっても、前記各実施形態に係る位置決め効果を得ることは可能である。
【0073】
また、前記固定用突状40については、図15に示すように先細り状に形成してもよく、かかる構成とすることで、前記シール溝27から溢れ出す接着剤30の量を低減することができ、特に筐体CSの外部への接着剤30の大きなはみ出しや流出の抑制に供される。
【0074】
さらに、前記ケース12におけるシール溝27の内外周壁27a,27bやカバー13の前記各接合部39a,39bについても、前記各実施形態で開示したような水平状である必要はなく、例えば下り傾斜や上り傾斜など(図11参照)、前記接着剤30の粘度や前記シール溝27から溢れ出す接着剤30の量等に応じて自由に変更することができる。
【符号の説明】
【0075】
11…回路基板
12…ケース(第1部材)
13…カバー(第2部材)
26…接合面(第1部材の接合面)
27…シール溝
30…接着剤(シール材)
39…接合面(第2部材の接合面)
40…固定用突条(突条)
L3…内周側隙間(第1隙間)
L4…外周側隙間(第2隙間)
CS…筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その接合面にシール溝を有する第1部材と、
その接合面に前記シール溝に係合する突条を有し、該突条を前記シール溝に係合させることによって前記第1部材に組み付けられる第2部材と、
前記第1部材と前記第2部材とによって構成される筐体内に収容され、その一側面又は両側面に電子部品が実装される回路基板と、
前記シール溝の内周縁とこれに対向する前記第2部材の接合面との間に形成される第1隙間と、
前記シール溝の外周縁とこれに対向する前記第2部材の接合面との間に形成される第2隙間と、
前記シール溝内に充填され、前記突条に押し退けられることで前記第1部材と前記第2部材の接合面間を液密にシールするシール材と、
前記第1隙間と前記第2隙間とを異ならせることによって当該両隙間のうち大きい方の隙間側に設けられ、前記突条により押し退けられた前記シール材が滞留するシール材滞留部と、を備えたことを特徴とする電子制御装置。
【請求項2】
前記シール材滞留部は、前記第2隙間側に設けられることを特徴とする請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記第2部材は、前記第1部材に係止可能な一対の係止片を有し、該一対の係止片を介して前記第1部材に係止固定されるように構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−227217(P2012−227217A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−91157(P2011−91157)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】