説明

電子回路および液晶表示装置

【課題】バックライトの点灯不能という不具合を確実に抑止する。
【解決手段】バックライトを駆動させるための制御信号をバックライト側の回路へ出力する出力ポートを有するメイン制御部と、メイン制御部に対し、電源とメイン制御部の機能を有効化するためのイネーブル信号とを供給する供給部と、を備える電子回路であって、上記イネーブル信号の供給が実行されるまで上記出力ポートからのバックライト側への信号出力を停止させる停止回路をさらに備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路および液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置においては、バックライトにより液晶パネルを照射することで映像表示に必要な明るさを確保する。液晶表示装置は、バックライトの駆動を制御するためのバックライト制御ICや、バックライト制御ICの制御等を実行するメインICを備える。メインICは、バックライト制御ICに対する制御の他にも、液晶表示装置内の各部をコントロールする。液晶表示装置では、装置の主電源が入れられると装置内の電源回路からメインICに対し駆動用の電源が供給され、また、メインICの機能を有効化するためのイネーブル信号が供給される。メインICは、当該電源およびイネーブル信号の供給を受けることで実質的に稼働する。
【0003】
なお、電源供給の制御技術の一つとして、通常は電源供給されていない第1周辺機器に対する電源供給を開始する際に、電源供給状態になっている第2周辺機器の電源供給を停止し、第1周辺機器に対する消費電流が安定した後に、第2周辺機器の電源供給を再開する携帯用端末装置が知られている(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001‐25166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したメインICに対しては、電源供給にかかる回路の設計上、主電源をオンにする操作がなされるとまず電源が供給され、その後(微小時間経過後)にイネーブル信号が供給される。このように電源供給とイネーブル信号の供給との間に時間差があると、メインICが備える出力ポートにおける電圧レベルが一時的に不安定になることがある。当該出力ポートの電圧レベルが一時的に不安定になると、当該出力ポートからの信号を入力するバックライト制御IC側では、本来不要な(異常な)信号値を検出することがある。そして、この異常な信号値の検出に伴い、バックライト制御ICがラッチ(状態保持)することがあり、結果、その後バックライトを点灯できないこともある。なお上記文献は、このようなメインICの出力ポートの不安定化によるバックライト制御ICのラッチを解消しようとするものではなかった。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、バックライトの点灯不能という不具合発生を確実に抑止するための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様の一つは、バックライトを駆動させるための制御信号をバックライト側の回路へ出力する出力ポートを有するメイン制御部と、メイン制御部に対し、電源とメイン制御部の機能を有効化するためのイネーブル信号とを供給する供給部と、を備える電子回路であって、上記イネーブル信号の供給が実行されるまで上記出力ポートからのバックライト側への信号出力を停止させる停止回路をさらに備える構成としてある。
【0008】
当該構成によれば、イネーブル信号の供給が実行されるまでは、つまりメイン制御部が正常に稼働開始するまでは、メイン制御部の上記出力ポートからのバックライト側への信号出力が停止される。そのため、イネーブル信号の供給がされるまでの期間における上記出力ポートの電圧レベルの不安定化に起因するバックライト側の異常発生が、確実に抑止される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】液晶表示装置の構成を概略的に示す図である。
【図2】停止回路の回路図である。
【図3】本実施形態による各信号の変化態様を例示する図である。
【図4】従来における各信号の変化態様を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態として、上記停止回路は、上記出力ポートとグラウンドとの間に配設されて出力ポートをグラウンドへ導通させるスイッチ素子を備え、当該スイッチ素子は、上記イネーブル信号の供給に伴い出力ポートとグラウンドとの接続を切る、という構成を採用できる。
また、本発明の実施形態として、液晶パネルと、液晶パネルを照射するためのバックライトと、バックライトの駆動を制御するためのバックライト制御ICと、バックライト制御ICを駆動するための制御信号をバックライト制御ICへ出力する出力ポートを有するメインICと、メインICに対し第1電源供給ラインにより電源を供給する第1DC‐DCコンバータと、第1DC‐DCコンバータから第2電源供給ラインにより供給される電源を受けて、メインICの機能を有効化するためのイネーブル信号をメインICに対し供給する第2DC‐DCコンバータと、を備える液晶表示装置であって、上記イネーブル信号の供給が実行されるまで上記出力ポートからバックライト制御ICへの信号出力を停止させる停止回路をさらに備え、上記停止回路は、上記出力ポートとグラウンドとの間に配設された第1トランジスタであって第1DC‐DCコンバータから第3電源供給ラインにより供給される電源をベースに入力してオン状態となり出力ポートをグラウンドへ導通させる第1トランジスタと、第3電源供給ラインとグラウンドとの間に配設された第2トランジスタであって第2DC‐DCコンバータから供給されるイネーブル信号をベースに入力してオン状態となることにより第1トランジスタをオフ状態にして出力ポートとグラウンドとの接続を切る第2トランジスタとを備える構成を採用できる。
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態をより詳細に説明する。
図1は、本実施形態にかかる液晶表示装置10の構成を概略的に示している。液晶表示装置10は、本発明の電子回路を構成の一部として含む装置である。液晶表示装置10は、DC‐DCコンバータ11、DC‐DCコンバータ12、メインIC(Integrated Circuit)13、バックライト(BL)制御IC14、バックライト15、パネル駆動回路16、液晶パネル17、停止回路20等を含んでいる。DC‐DCコンバータ11およびDC‐DCコンバータ12は、入力した直流電圧DCを異なる値の直流電圧DCに変換して出力する回路であり、供給部に該当する。DC‐DCコンバータ11は第1DC‐DCコンバータに該当し、DC‐DCコンバータ12は第2DC‐DCコンバータに該当する。
【0012】
DC‐DCコンバータ11は、液晶表示装置10が備える図示しない電源回路で生成された直流電圧DCを入力し、常時電圧Vall(例えば、3.3V)や電源電圧Vcc(例えば、3.3V)を出力する。常時電圧Vallは、液晶表示装置10が、電源コード(ACコード)を介して外部の商用電源と接続している場合に常にDC‐DCコンバータ11からラインL3(第3電源供給ライン)へ出力される電圧である。一方、電源電圧Vccは、液晶表示装置10の主電源(電源ボタン)がユーザによってオン状態とされることで、DC‐DCコンバータ11からラインL1(第1電源供給ライン)へ出力される電圧である。
【0013】
常時電圧Vallは、ラインL3を介して停止回路20へ入力される。一方、電源電圧Vccは、ラインL1を介してメインIC13へ入力される。メインIC13は、所定の制御用プログラムに従って液晶表示装置10全体をコントロールする制御部である。メインIC13は、複数の入力ポートおよび出力ポートを備え、そのうちの一つとして、出力ポート13aを有している。出力ポート13aからはBL制御IC14を駆動するための制御信号(BL‐SW信号)をBL制御IC14へ向けて出力可能である。BL制御IC14は、BL‐SW信号を入力することにより駆動し、バックライト15の駆動を制御する(バックライト15の点灯/消灯や、輝度等を制御する)。BL‐SW信号は、バックライト15を駆動させるための制御信号であるとも言える。
【0014】
電源電圧Vccは、ラインL1から枝分かれしたラインL2(第2電源供給ライン)を介してDC‐DCコンバータ12へも入力される。DC‐DCコンバータ12は、入力した電源電圧Vccを低減させて生成した電圧(イネーブル(EN)信号)を、メインIC13へ入力する。EN信号は、例えば、1.25Vとなる。EN信号は、メインIC13の機能を有効化するための信号である。つまりメインIC13は、電源ボタンがユーザによってオン状態とされることで電源電圧Vccを入力し、かつ、所定値のEN信号を入力した場合に、稼働を開始する。稼働開始したメインIC13からは適切な値の上記BL‐SW信号が適切なタイミングで出力ポート13aから出力される。これにより、バックライト15が点灯し、液晶パネル17を照射する。なお、EN信号は、停止回路20へも入力される。
【0015】
また、液晶表示装置10では、パネル駆動回路16が、所定の入力系統により入力した映像信号(入力映像信号)に基づいて液晶パネル17の各画素を駆動することにより、液晶パネル17に映像表示をさせる。液晶表示装置10は、放送信号の受信機能(チューナ等)を備えないモニターであってもよいし、放送信号の受信機能を備えるテレビジョンであってもよい。さらに液晶表示装置10は、入力映像信号に対する所定の映像処理を実行する映像処理回路や、信号のデコード処理を行うデコーダや、音声出力のための回路やスピーカ等、モニター或いはテレビジョンとして公知の各種構成を有する。
【0016】
このように、電源電圧VccがメインIC13およびDC‐DCコンバータ12へ入力され、DC‐DCコンバータ12が電源電圧Vccに基づいてEN信号を生成する構成においては、メインIC13が電源電圧Vccよりも先にEN信号を入力することはあり得ない。そのため、メインIC13が電源電圧Vccを入力してからEN信号を入力するまでに微小な時間差が生じ、この微小時間中においては、メインIC13の出力ポート13aにおける電圧レベルが電源電圧Vccの影響を受けて不安定化する場合がある。つまり、本来メインIC13が稼働開始して適切な値のBL‐SW信号を適切なタイミングで出力ポート13aから出力するまでは、出力ポート13aの電位は0(BL‐SW信号無し)であるべきところ、上記不安定化により出力ポート13aから何らかの値(異常値)が出力され、この異常値をBL制御IC14が入力してしまうことが考えられる。なお、メインIC13が電源電圧Vccを入力するタイミングとEN信号を入力するタイミングとのずれを0にできれば上記異常値は発生しなくなるが、そのような構成を実現するには当該装置における電源供給のシーケンスを大幅に変更する必要があり、多大な労力およびコストを要する。そこで本実施形態では、停止回路20を出力ポート13aに接続するという低コストかつ低労力な手法により、このような異常値が発生しないようにしている。
【0017】
図2は、停止回路20の回路構成を示している。停止回路20は、トランジスタTr1(第1トランジスタ。スイッチ素子。)とトランジスタTr2(第2トランジスタ)とを含む回路である。トランジスタTr1は、出力ポート13aとグラウンドGNDとの間に配設されており、そのコレクタを、抵抗R1を挟んで出力ポート13a側に接続し、エミッタをグラウンドGND側に接続している。また、トランジスタTr1のベースには抵抗R2を介して常時電圧Vallが印加されている。トランジスタTr1は、常時電圧Vallをベースに入力することでコレクタ‐エミッタ間が導通してオン状態となり、これにより出力ポート13aをグラウンドGNDへ導通させる(出力ポート13aの電位が0に保たれる)。
【0018】
トランジスタTr2は、ラインL3(常時電圧Vall)とグラウンドGNDとの間に配設されており、そのコレクタを、抵抗R2を挟んでラインL3側に接続し、エミッタをグラウンドGND側に接続している。また、トランジスタTr2のベースには抵抗R3を介してEN信号が印加される。トランジスタTr2は、EN信号をベースに入力することでコレクタ‐エミッタ間が導通してオン状態となる。つまり、トランジスタTr2がオン状態となることで、ラインL3の電位がグラウンドGNDに落ち、同時にトランジスタTr1のベース電圧が下がりトランジスタTr1がオフ状態となる。これにより出力ポート13aとグラウンドGNDとの接続が切れ、出力ポート13aからの出力はBL制御IC14へ入力されるようになる。すなわち本実施形態によれば、メインIC13へのEN信号の供給が実行されるまでは、出力ポート13aからBL制御IC14への信号出力を確実に停止させることができる。
【0019】
図3は、本実施形態による各信号の変化態様を例示しており、図4は、停止回路20を備えない従来の構成における各信号の変化態様を例示している。従来(図4)においては、電源ボタンのオン(P‐ON)により電源電圧Vccが立ち上がるとこれに伴い、メインIC13にEN信号が入力されるよりも前に、出力ポート13aで上記異常値としてのBL‐SW信号が立ち上がる。このような高い異常値をBL制御IC14が入力すると、BL制御IC14の仕様によってはラッチ(状態保持)してしまうことがあり、その結果、以降バックライト15が点灯されないことがある。
【0020】
一方、本実施形態(図3)によれば、電源ボタンのオン(P‐ON)により電源電圧Vccが立ち上がった場合でも、(ある一定値以上の)EN信号がメインIC13に入力されるまでトランジスタTr1のベース電圧が所定の高い状態で維持される(トランジスタTr1のオン状態が維持される)ため、上記異常値としてのBL‐SW信号が出力ポート13aからBL制御IC14側へ出力される事態は発生し得ない。よって、その後、メインIC13が稼働開始して適切な値のBL‐SW信号が適切なタイミングで出力ポート13aから出力される。このように本実施形態によれば、メインIC13が稼働開始するまでに出力ポート13aに異常値が発生してそれによりバックライト15が点灯できなくなる、という不具合を簡易な構成で確実に解消することができる。
【符号の説明】
【0021】
10…液晶表示装置、11,12…DC‐DCコンバータ、13…メインIC、14…BL制御IC、15…バックライト、17…液晶パネル、20…停止回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックライトを駆動させるための制御信号をバックライト側の回路へ出力する出力ポートを有するメイン制御部と、メイン制御部に対し、電源とメイン制御部の機能を有効化するためのイネーブル信号とを供給する供給部と、を備える電子回路であって、
上記イネーブル信号の供給が実行されるまで上記出力ポートからのバックライト側への信号出力を停止させる停止回路をさらに備えることを特徴とする電子回路。
【請求項2】
上記停止回路は、上記出力ポートとグラウンドとの間に配設されて出力ポートをグラウンドへ導通させるスイッチ素子を備え、当該スイッチ素子は、上記イネーブル信号の供給に伴い出力ポートとグラウンドとの接続を切ることを特徴とする請求項1に記載の電子回路。
【請求項3】
液晶パネルと、液晶パネルを照射するためのバックライトと、バックライトの駆動を制御するためのバックライト制御ICと、バックライト制御ICを駆動するための制御信号をバックライト制御ICへ出力する出力ポートを有するメインICと、メインICに対し第1電源供給ラインにより電源を供給する第1DC‐DCコンバータと、第1DC‐DCコンバータから第2電源供給ラインにより供給される電源を受けて、メインICの機能を有効化するためのイネーブル信号をメインICに対し供給する第2DC‐DCコンバータと、を備える液晶表示装置であって、
上記イネーブル信号の供給が実行されるまで上記出力ポートからバックライト制御ICへの信号出力を停止させる停止回路をさらに備え、
上記停止回路は、上記出力ポートとグラウンドとの間に配設された第1トランジスタであって第1DC‐DCコンバータから第3電源供給ラインにより供給される電源をベースに入力してオン状態となり出力ポートをグラウンドへ導通させる第1トランジスタと、第3電源供給ラインとグラウンドとの間に配設された第2トランジスタであって第2DC‐DCコンバータから供給されるイネーブル信号をベースに入力してオン状態となることにより第1トランジスタをオフ状態にして出力ポートとグラウンドとの接続を切る第2トランジスタとを備えることを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−203075(P2012−203075A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−65496(P2011−65496)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】