説明

電子回路基板用コネクタにおける同基板の動作保証構造

【課題】電子回路基板をコネクタを介しマザーボードに接続しメモリー増設を図る場合において課題となっていた信号用コンタクト間におけるクロストーク、インピーダンスの不整合の問題を適切に解決する。
【解決手段】コネクタの受口内へ差し込まれる電子回路基板1のインサート板部4の表面に多数の信号用電極パッド5を配し、上記コネクタの受口内に上記信号用電極パッド5と接触する多数の信号用コンタクト10を保有させて成る電子回路基板用コネクタにおいて、上記受口内の信号用コンタクト10間に上記電子回路基板1とは導通しない遮閉用接地コンタクト12を介在する。そして該遮閉用接地コンタクト12を信号用コンタクト10と並行に延ばし先端が上記インサート板部4上の信号用電極パッド5間に介在する長さにした電子回路基板用コネクタにおける同基板の動作保証構造。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明はコンピューター内のマザーボードにメモリー素子を保有せる電子回路基板を増設する場合等に使用するコネクタ、殊に同コネクタにおける上記電子回路基板の動作保証構造に関する。
【0002】
【従来の技術】上記電子回路基板はマザーボードに実装したコネクタを介して上記マザーボードに接続され上記増設が図られる。従って電子回路基板はその端部にコネクタの受口内へ差し込まれるインサート板部を有し、このインサート板部の両表面に狭小ピッチで配された信号用電極パッドと接地用電極パッドを上記コネクタの受口内に保有された信号用コンタクトと接地用コンタクトに加圧接触させ、該信号用コンタクト及び接地用コンタクトをマザーボードの信号ラインと接地ラインに接続することにより、上記増設を図っている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】而して、上記電子回路基板とマザーボード(コンピュータ内蔵の電子回路母板)とは回路設計によって信号ラインに対して高速信号(高周波信号)が伝送し易いように信号ラインのインピーダンスを一定(一般的には50Ω)となるように設計している。例えば信号ラインの近傍に接地ラインを配することもその具体例である。
【0004】然るに、上記電子回路基板用のコネクタにおいては、信号用コンタクトが狭小ピッチで並設され、電子回路基板の一方の表面に狭小ピッチで並設された信号用電極パッドに加圧接触する構造となっているために、信号ラインの入力端又は出力端を形成する信号用コンタクト間におけるクロストークの問題を生じ、又信号用コンタクトの高周波信号に対するインピーダンスを適正な値にすることができず、高速信号の伝送の際に伝送速度の遅れ等の問題を招来する。
【0005】発明者らは上記問題を解決するため、上記信号用電極パッド間に接地用電極パッドを配し、信号用電極パッドに加圧接触する信号用コンタクト間において接地用コンタクトを上記接地用電極パッドに接触させる方法を思考したが、この様な構造では狭小ピッチの信号用電極パッド間に、更に新たな接地用電極パッドを増設せねばならず、信号用電極パッドのピッチが例えば1.0mmとすると、信号用と接地用の電極パッドのピッチは0.5mmとなってしまい、製造の困難性を伴うばかりか、信号用電極パッド及び接地用電極パッドと、信号用コンタクト及び接地用コンタクトとを正確に位置決めし対応させることが非常に困難となる。
【0006】更に上記方法では信号用と接地用の全コンタクトが、信号用と接地用の全電極パッドに加圧接触する構造となるため、加圧接触する総芯数が略二倍になり、電子回路基板のコネクタに対する挿抜力を過大にする問題点を招来する。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は上記知見に基き、想到したものであって、上記問題に適切に対処する、電子回路基板用コネクタにおける同基板の動作保証構造を提供するものである。
【0008】上記電子回路基板のインサート板部の表面には多数の信号用電極パッドと接地用電極パッドが配置されている。
【0009】他方マザーボードに実装されるコネクタの受口内には多数の信号用コンタクトと接地用コンタクトを保有しており、上記電子回路基板のインサート板部が上記受口内に差し込まれた時、上記信号用電極パッドが信号用コンタクトに加圧接触し、上記接地用電極パッドが接地用コンタクトに加圧接触し、これら加圧接触を介してマザーボードの信号ライン又は接地ラインに接続されるようになっている。
【0010】而して、本発明は上記電子回路基板とコネクタの接続構造において、上記信号用コンタクト間に上記電子回路基板とは電気的に導通しない遮閉用接地コンタクトを介在する。
【0011】上記遮閉用接地コンタクトは信号用コンタクトと並行に延ばし、その先端を上記インサート板上の信号用電極パッド間に介在する長さにし、同先端を電子回路基板とは電気的に非導通状態に置き、基端は他のコンタクトと同様コネクタ本体を貫通し、マザーボードの接地ラインとの接続に供する。好ましくは上記遮閉用コンタクトの先端は上記インサート板部の表面に対し遊離しており、電子回路基板の挿抜に対し無負荷である。
【0012】上記の通り遮閉用コンタクトは一端が接地され、他端が電子回路基板に対し非導通状態に置かれるコンタクトであり、このコンタクトを上記の通り信号用コンタクト間に介在することにより、隣接する信号用コンタクトを高周波や電磁波的に互いに遮断してクロストーク現象を防止すると共に、信号用コンタクトのインピーダンスを適切な値にして高速信号の伝送特性を向上する。
【0013】上記遮閉用接地コンタクトは信号用コンタクトや接地用コンタクトと同一形状に打抜いて信号用コンタクトに並べて植込むだけの簡素な手段にて所期の遮閉目的を有効に達成する。
【0014】又信号用電極パッド間に遮閉用接地コンタクトが接触する電極パッドを設けずに上記目的を達成し、電極パッドの増設を要せず、増設の困難性を伴わない。
【0015】加えて、遮閉用接地コンタクトは電子回路基板に対し非導通であるから、インサート板部の表面に対し遊離し無負荷にすることにより、電子回路基板のコネクタ受口内への挿入抵抗を増大することがない。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態例を図1乃至図7に基いて説明する。
【0017】図7に示すように、電子回路基板1は略矩形の絶縁基板2の一方の表面にメモリー素子(ICチップ)3を重ね一体にパッケージングした構造であり、絶縁基板2の一端、従って電子回路基板1の一端に略矩形のインサート板部4を有する。
【0018】上記インサート板部4の一方の表面にはメモリー素子3の外部端子である多数の信号用電極パッド5が、該インサート板部4の端縁に沿い狭ピッチで列設され、他方の表面にはメモリー素子3の外部端子である所要数の接地用電極パッド6が、該インサート板部4の端縁に沿い列設されている。この電子回路基板1の構造は増設用回路基板の一般的構造である。
【0019】他方マザーボードの信号ライン及び接地ラインに表面実装されるコネクタ7は図1乃至図3に示すように、絶縁材から成る略直方体形を呈するコネクタ本体8に、上記電子回路基板1のインサート板部4を受け入れる受口9を有し、該受口9内に上記インサート板部4の一方の表面に配された信号用電極パッド5へ加圧接触する信号用コンタクト10と、上記インサート板部4の他方の表面に配された接地用電極パッド6に加圧接触する接地用コンタクト11とを保有する。
【0020】従って信号用コンタクト10と接地用コンタクト11とは片当てバネ構造のコンタクトであり、信号用コンタクト10と接地用コンタクト11とを互いに対向して受口9に沿い列設する。即ち両コンタクト10,11は並列して設けられ、一方の列は信号用コンタクト10にし、他方の列は接地用コンタクト11にし、両コンタクト10,11の列間にインサート板部4の挿入間隔を形成する。
【0021】上記信号用コンタクト10間に遮閉用接地コンタクト12を介在させる。従って信号用コンタクト10と遮閉用接地コンタクト12とは交互に一列に配置されるように、上記受口9内に保有される。
【0022】上記信号用コンタクト10と接地用コンタクト11と遮閉用接地コンタクト12とは、各基端部がコネクタ本体8の受口9の内底壁に植設され、同底壁を貫通してコネクタ本体8の底面に沿い折曲されて外方へ突出され、この突出部にてマザーボード、即ち電子回路母板の信号ライン又は接地ラインに表面実装する表面実装端子片19,20,21を形成しており、そしてこの植設部から受口9の開口部に向かって延び、先端は自由端とされている。
【0023】従って各コンタクト10,11,12は植設部を支点として内外へ弾性変位可能であり、この弾性によって各電極パッド5,6との加圧接触力を得る。
【0024】好ましくは信号用コンタクト10と遮閉用接地コンタクト12の列と、接地用コンタクト11の列間にインサート板部4が差し込まれた時、このインサート板部4によって信号用コンタクト10と接地用コンタクト11が弾性に抗して外方へ変位され、その反力にて信号用電極パッド5と接地用電極パッド6と加圧接触し、遮閉用接地コンタクト12はインサート板部3に対し無負荷とする。
【0025】この点の好ましい例について詳述すると、図2、図3等に示すように信号用コンタクト10と接地用コンタクト11とは同一形状に打抜き加工された片当て形のコンタクト形状にし、同様に遮閉用接地コンタクト12も上記両コンタクト10,11と同一形状に打抜き、信号用コンタクト10間に介在させる。
【0026】信号用と接地用のコンタクト10,11は植設部から受口9の開口部に向かって延びるバネ部13,14を有し、その各先端部(自由端部)に互いに対向方向へ突出する突起15,16、即ち信号用電極パッド5と接地用電極パッド6に向かって突出する突起15,16を有する。
【0027】上記遮閉用接地コンタクト12は上記信号用コンタクト10間に介在し、信号用コンタクト10と並行に延び、その先端が上記インサート板部4上の信号用電極パッド5間に介在する長さを有する。
【0028】詳述すると、遮閉用接地コンタクト12は信号用コンタクト10のバネ部13と並行に延びるバネ部17を有し、先端に信号用コンタクト10と同様の、内方へ向かって突出する突起18、即ちインサート板部4の表面へ向かって突出する突起18を有する。
【0029】そしてこの突起18、即ち遮閉用接地コンタクト12の先端部(自由端部)は信号用電極パッド5間に介在し、即ち信号用コンタクト10の突起15間に介在し、電子回路基板1のインサート板部4に対し電気的に非導通とする。好ましくは遮閉用接地コンタクト12の先端(突起18)は上記インサート板部4の表面から僅かに離間し、遊離状態とする。
【0030】上記の通り遮閉用接地コンタクト12は一端が増設用の電子回路基板1に対し非導通且つ非接触状態であり、他端がマザーボードの接地ラインに対し接続され接地されるコンタクトである。
【0031】而して、電子回路基板1のインサート板部4が受口9を介して信号用コンタクト10及び遮閉用接地コンタクト12の列と、接地用コンタクト11の列間に差し込まれた時、このインサート板部4の介入によって信号用と接地用のコンタクト10,11のみが外方へ弾性変位し、その反力で信号用と接地用の電極パッド5,6に加圧接触し、遮閉用接地コンタクト12が非導通且つ無負荷で信号用コンタクト10間に介在し且つ信号用電極パッド5間に介在する状態が形成される。
【0032】遮閉用接地コンタクト12は信号用及び接地用コンタクト10,11と同一形状にする他、遮閉目的だけに限れば、信号用コンタクト10間を遮閉する他の形状、例えば隣接する信号用コンタクト10の対向断面積よりも広い面積を有する板状のコンタクトであっても良い。
【0033】図3A、図6Aに示すように、上記遮閉用接地コンタクト12は電子回路基板1のインサート板部4が受口9内に差し込まれていない時(常態)では信号用コンタクト10の後方へ位相をずらした位置に配され、図3B、図6Bに示すようにインサート板部4が差し込まれた時には、このインサート板部4の厚みによって信号用コンタクト10が後方へ弾性変位され遮閉用接地コンタクト12と略同位相に並び、即ち突起部15と18、バネ部13と17とが互いの隣接面を略対向状態にする。この時、遮閉用接地コンタクト12の突起部18はインサート板部4の表面に対し遊離し、非導通且つ非接触状態に置かれる。
【0034】本発明は上記インサート板部の一表面に対し信号用電極パッド5と接地用電極パッド6の一部が列配置され、これに対応して各コンタクト10,11が列配置されている場合にも実施できる。
【0035】
【発明の効果】本発明によれば、電子回路基板をコネクタを介しマザーボードに接続しメモリー増設を図る場合において課題となっていた信号用コンタクト間におけるクロストーク、インピーダンスの不整合の問題を適切に解決でき、この目的を信号用コンタクト間に遮閉用接地コンタクトを介在する極めて簡潔なる手段にて有効に達成できる。加えて上記遮閉用接地コンタクトは電子回路基板の挿抜に対し非導通且つ無負荷にすることにより、回路基板の挿抜抵抗の増加を招かず、又電極パッドの増設を要しない等の利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態例を示す電子回路基板のインサート板部とコネクタの斜視図である。
【図2】上記インサート板部に対する信号用コンタクトと遮閉用信号コンタクトの配置状態を示す要部斜視図である。
【図3】Aは上記コネクタの断面図であり、Bはこのコネクタに上記電子回路基板のインサート板部を差し込んだ状態を示す断面図である。
【図4】図2における正面図である。
【図5】上記インサート板部に対する遮閉用接地コンタクトの設置状態を示す図4におけるA−A線断面図である。
【図6】Aは図4におけるB−B線断面図であり、上記図4におけるインサート板部を挿入していない状態を以って示し、Bは同挿入状態を以って示す同B−B線断面図である。
【図7】Aは電子回路基板を一方の表面より見た平面図であり、Bは同他方の表面より見た要部平面図であり、Cは同側断面図である。
【符号の説明】
1 電子回路基板
2 絶縁基板
3 メモリー素子
4 インサート板部
5 信号用電極パッド
6 設置用電極パッド
7 コネクタ
8 コネクタ本体
9 受口
10 信号用コンタクト
11 接地用コンタクト
12 遮閉用接地コンタクト

【特許請求の範囲】
【請求項1】電子回路基板の端部にコネクタの受口内へ差し込まれるインサート板部を設け、このインサート板部の表面に多数の信号用電極パッドを配し、上記コネクタの受口内に上記信号用電極パッドと接触する多数の信号用コンタクトを保有させて成る電子回路基板用コネクタにおいて、上記受口内の信号用コンタクト間に上記電子回路基板とは導通しない遮閉用接地コンタクトを介在し、該遮閉用接地コンタクトは信号用コンタクトと並行に延び先端が上記インサート板部上の信号用電極パッド間に介在する長さを有することを特徴とする電子回路基板用コネクタにおける同基板の動作保証構造。
【請求項2】上記遮閉用接地コンタクトの先端は上記インサート板部の表面に対し遊離していることを特徴とする請求項1記載の電子回路基板用コネクタにおける同基板の動作保証構造。

【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開平10−233260
【公開日】平成10年(1998)9月2日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−31994
【出願日】平成9年(1997)2月17日
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000177690)山一電機株式会社 (233)