説明

電子天びん/電子はかり

【課題】 計量皿を取り囲む保護壁をはかり本体に取り付けるだけで、はかり本体の保護カバーを着脱自在に固定することのできる新規な電子天びん/電子はかりを提供する。
【解決手段】 計量皿4を備えた電子天びん/電子はかりであって、計量皿4の周辺を取り囲むようにはかり本体1に係合手段を介して着脱自在に取り付けられた円筒状の保護壁6と、はかり本体1に着脱自在にかぶせられる薄い透明な保護カバー11とを備え、前記保護カバー11は計量皿を露出させる円形の開口部12を備え、該開口部12の周縁部分が保護壁6の下端面とはかり本体1の上面との間で挟まれて保護カバー11がはかり本体に固定されている構造とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、秤量装置である電子天びん/電子はかりに関し、さらに詳しくは、計量皿の周辺を取り囲む保護壁を備えた電子天びん/電子はかりに関する。
なお、ここでの電子天びん/電子はかりは、電磁力平衡機構を備えた電子天びん、ロードセル式や音叉式、静電容量式等の電子はかりをはじめ、被測定物の重量加重を電気信号として検出して計測する秤量装置全般を含むものであり、以下これらを総括して電子天びんという。
【背景技術】
【0002】
微量の対象物を精密測定する電子天びんでは、空気の流動による測定誤差の防止のために秤量物を載置する計量皿の上部空間を透明な風防ケースで覆うようにしたものがある(特許文献1参照)。
【0003】
また、計量皿周囲の空気の流動ではさほど影響されない程度の測定対象物にも利用できるように、広範囲の用途に対応する汎用型の電子天びんも提供されている。この電子天びんでは、図8に示すように、計量皿4の上部空間を覆う風防ケースを備えておらず、計量皿4がはかり本体1の上面で外部に露出して形成されている。
【0004】
また従来では、上記図8に示すように、計量皿4を露出させた状態で、はかり本体1の上面並びに周側面を覆うことのできる透明な合成樹脂製の汚れ防止用保護カバー11が販売時にオプションとして提供され、はかり本体1にかぶせて使用される。この保護カバー11の取付には、多くの場合両面テープ15を介してはかり本体1に接着固定されている。
【特許文献1】特開平08−136333号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記汎用型の電子天びんにおいて、計量皿が外部に露出されていると、計測時に誤って計量皿周側面に接触して緻密に組み付けられている計量皿軸部を衝撃により破損するなどの弊害があると共に、計量皿周囲並びに裏面とはかり本体との間に形成される隙間から軸部周囲の間隙を抜けて、はかり本体内部に塵芥物が入って内部の電子機器に悪影響を及ぼす等の問題点があった。
【0006】
また、上記した汚れ防止用の保護カバーを使用する場合は、両面テープによりはかり本体に接着固定されるために半永久的に取り付けた状態で使用されることになり、一旦取り付けてしまうと洗浄等のために取り外すことができず、汚れて交換したいときや不要なときは破って取り外すしかできなかった。保護カバーをはかり本体にかぶせるだけで固定しておかないこともできるが、その場合は、保護カバーの位置がずれて使いにくくなったり、保護カバーが計量皿や計量皿軸部に接触して測定結果に影響を及ぼすことがあった。
【0007】
そこで本発明は、計量皿に不用意に衝撃が加わることを防止し、また、計量皿軸部に塵芥物が入り込むのを抑えるようにした電子天びんを提供することを目的とする。
また、保護カバーをはかり本体にかぶせた状態で簡単かつ確実に固定することができ、しかも後から保護カバーを着脱できるようにした電子天びんを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する為に本発明では次のような技術的手段を講じた。即ち、本発明は、計量皿を備えた電子天びん/電子はかりであって、計量皿の周辺を取り囲むようにはかり本体に着脱自在に取り付けられた円筒状の保護壁と、はかり本体にかぶせられる透明な保護カバーとを備え、前記保護カバーは計量皿を露出させる円形の開口部が形成され、この開口部周縁部分が保護壁下端面とはかり本体の上面との間で挟まれて保護カバーがはかり本体に固定されるようにしている。
【0009】
なお、前記保護壁内面と計量皿周側面との隙間は接触しないことを前提に、可能な限り小さくすることが好ましく、例えば0.5〜2mm程度とするのが好ましい。また保護壁の高さは、計量皿の周側面を充分にカバーする寸法、例えば1cm〜2cm程度がよい。また前記保護カバーは、合成樹脂シート材で形成され、計量皿を露出させた状態で、はかり本体の上面並びに周側面を覆うように形成するのがよい。
【発明の効果】
【0010】
上記のごとく構成された本発明の電子天びんでは、計量皿の周辺が円筒状の保護壁によって取り囲まれているので、誤って計量皿の周側面に接触して衝撃を与えることをなくすることができると共に、保護壁内面と計量皿周側面との隙間を可能な限り小さくすることによって塵芥物が隙間からはかり本体内に侵入するのを抑えることができる。また保護壁ははかり本体に着脱自在に取り付けられているから、計量皿下面に埃が入った場合には保護壁を取り外して容易に清掃することができる。更に、保護カバーをはかり本体にかぶせた状態にして、計量皿の周囲において保護カバーの上から保護壁を取り付けるだけで保護カバーを固定することができるとともに、保護壁を取り外せば保護カバーの固定が解除されるので、保護カバーが不要になったときや汚れの洗浄、或いは交換時に簡単に取り外すことができる、といった優れた効果がある。
【0011】
(その他の課題を解決するための手段及び効果)
上記発明において、保護壁の内面下端に複数の係合爪が設けられ、該係合爪が、はかり本体側に設けられた被係合部に着脱自在に係合するように構成されていてもよい。
これにより、係合手段を簡単な構造で形成することができると共に、係合による保護壁の着脱操作を固定金具や工具を使用することなく容易に行うことができる。
【0012】
また本発明では、保護壁の上端に透明なドームを連接して計量皿上方に風防ケースを形成するようにしてもよい。
これにより、空気の流動が影響するような精密な計測にも対応することができ、広範囲な計測に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下において本発明にかかる電子天びんについて、図面に示した実施例に基づき説明する。図1は本発明の一実施形態である電子天びんの斜視図であり、保護壁並びに保護カバーの取付前の状態を示す。また、図2は、図1の電子天びんにおいて計量皿、保護壁、保護カバーを取り外した状態を示す。また、図3は保護壁並びに保護カバーを、はかり本体に取り付けた状態を示す断面図である。
【0014】
はかり本体1は、内部に天びん機構などからなる重量検出部を備え、表面には測定した重量値などを表示する表示部2を備え、下面に4個の脚3が設けられている。はかり本体1の上面には被測定物を載せるための計量皿4が上方に少し露出するようにして設置されており、中心の軸部5を介して内部の重量検出部と結合されている。通常、この計量皿4は取り外しできるように軸部5に載置するだけで接続されている。
【0015】
更に、はかり本体1は、計量皿4の周辺を取り囲むように配置された円筒状の保護壁6を備えている。この保護壁6は板金加工により形成され、はかり本体1に係合手段を介して着脱自在に取り付けられている。前記係合手段は、保護壁6の内面下端に間隔をあけつつ内側に向けて突出形成された複数の、好ましくば4つの係合爪7と、はかり本体側1に設けられて前記係合爪7と着脱自在に係合する被係合部8とからなり、保護壁6の係合爪7を被係合部8の切開部8aから差し込んで保護壁6を回動操作することにより係合爪7が被係合部8の下方に嵌り込んで係合したり、或いは係合解除するように構成されている。尚、前記被係合部8は、計量皿4の軸芯5と同芯的な円盤9の外周縁に形成されており、該円盤9は、はかり本体1にビス10で固定されている。
【0016】
なお、前記保護壁6の内面と計量皿4の周側面との隙間は可能な限り小さく、例えば0.5〜2mm程度で形成されている。また保護壁6の高さは、計量皿4の周側面を充分にカバーできる寸法、例えば1cm〜2cm程度がよい。
【0017】
更に、本発明の電子天びんでは、はかり本体1に着脱自在にかぶせられる薄い透明な合成樹脂製の保護カバー11を備えている。この保護カバー11は計量皿4部分を露出させる円形の開口部12を備え、保護カバー11をはかり本体1に取り付けたときに、開口部11の周縁部分が保護壁11の下端面と、はかり本体1の上面との間で挟まれて保護壁11がはかり本体1に固定できるように形成されている。また保護カバー11は、計量皿4を露出させた状態で、はかり本体1の上面並びに周側面を覆う状態で形成されている。
【0018】
なお、図1の状態において、保護カバー11が不要の場合は、保護壁6のみをはかり本体1に取り付けて使用することもできる。保護壁6を取り付けることによって、計量皿4の周辺が円筒状の保護壁6によって取り囲まれるので、誤って計量皿4の周側面に接触して衝撃を与えることをなくすることができると共に、塵芥物がはかり本体1内に侵入するのを抑えることができる。また保護壁6は、はかり本体1に回動操作によって簡単に取り付けることができる。
【0019】
また、保護カバー11をはかり本体1に取り付けて使用する場合は、保護カバー11をはかり本体1にかぶせた後に、保護壁7を取り付けるだけで、保護カバー11の開口部12の端縁部分を押さえ込んではかり本体1に固定することができる。この場合、図4に示すように、保護壁6の下端面に保護カバー11の開口部端縁部分が嵌る段差6aを設けることにより、安定よく開口部端縁部分を押さえ込むことができる。また、保護壁7を取り外せば保護カバー11の固定が解除されるので、保護カバー11が不要になったときや汚れの洗浄、或いは交換時に簡単に取り外すことができる。
【0020】
上記実施例では、保護壁6を回動操作することによって係合爪7と被係合部8が係合並びに係合解除するようにしたが、図5に示すように、保護壁6を上方から単に押し下げるだけで係合爪7’が被係合部8’に弾性係合するように形成することも可能である。この場合、係合爪7’の弾性変形を容易にするために、例えば図6に示すように係合爪7’を挟んで上下に延びる左右一対のスリット13を設けるのがよい。
【0021】
また本発明では、図7に示すように、保護壁6の上端に透明なドーム14を連接して風防ケースとすることもできる。透明なドーム14は、例えば透明なアクリル成形品(窓付)によって形成することが可能であろう。この場合、透明なドーム14は保護壁6に対して着脱自在とするのがよい。これにより必要に応じて簡単に風防ケースを形成したり、或いは除去することが可能となる。
【0022】
以上本発明の実施例について説明したが、本発明は必ずしもこれら実施例構造のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で適宜改変して実施することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、電磁力平衡機構を備えた電子天びん、ロードセル式や音叉式、静電容量式等の電子天びんをはじめ、被測定物の重量加重を電気信号として検出して計測する秤量装置全般に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明にかかる電子天びんの斜視図であって、保護壁並びに保護カバーの取付前を示す。
【図2】上記電子天びんの計量皿、保護壁並びに保護カバーを取り外した斜視図。
【図3】上記保護壁並びに保護カバーを、はかり本体に取り付けた状態を示す断面図。
【図4】保護壁と保護カバーとの取り付け状態を示す拡大断面図。
【図5】本発明における係合手段の別の実施例を示す拡大断面図。
【図6】図5で示した実施例における保護壁の部分的な側面図。
【図7】本発明の別の実施例を示す断面図。
【図8】従来の電子天びんを示す斜視図。
【符号の説明】
【0025】
1 はかり本体
4 計量皿
5 軸部
6 保護壁
7 係合爪
8 被係合部
11 保護カバー
12 開口部
14 ドーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計量皿を備えた電子天びん/電子はかりであって、
計量皿の周辺を取り囲むようにはかり本体に着脱自在に取り付けられた円筒状の保護壁と、
はかり本体にかぶせられる透明な保護カバーとを備え、前記保護カバーは計量皿を露出させる円形の開口部が形成され、この開口部周縁部分が保護壁下端面とはかり本体の上面との間で挟まれて保護カバーがはかり本体に固定されることを特徴とする電子天びん/電子はかり。
【請求項2】
前記保護壁の内面下端に複数の係合爪が設けられ、該係合爪が、はかり本体側に設けられた被係合部に着脱自在に係合するように構成されている請求項1に記載の電子天びん/電子はかり。
【請求項3】
前記係合爪と被係合部とは保護壁の回動操作により係合並びに係合解除するように構成されている請求項1又は請求項2に記載の電子天びん/電子はかり。
【請求項4】
前記保護カバーは合成樹脂シート材で形成され、計量皿を露出させた状態で、はかり本体の上面並びに周側面を覆うように形成されている請求項1〜請求項3のいずれかに記載の電子天びん/電子はかり。
【請求項5】
前記保護壁の上端に透明なドームを連接して計量皿上方に風防ケースを形成した請求項1〜請求項4のいずれかに記載の電子天びん/電子はかり。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−36583(P2009−36583A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−199768(P2007−199768)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)