説明

電子式流量計

【課題】本発明は、磁気センサで回転体の回転数を安定して検出することができるとともに、磁気センサで消費する電流量を低減することができる電子式流量計を提供する。
【解決手段】本発明は、磁気センサ1と、A相およびB相駆動ドライバ2,3と、A相コンパレータ4と、B相コンパレータ5、2相エンコード部6と、回転速度タイマ部7とを備える電子式流量計である。2相エンコード部6は、A相およびB相コンパレータ4,5でサンプリングしたイベント信号に基づき羽根車の正逆方向を判定し、正逆方向に応じてカウンタのカウントアップまたはダウンを行ないイベントカウント信号を出力する。回転速度タイマ部7は、羽根車の回転数を算出し、算出した羽根車の回転数に応じて、次に羽根車の回転数を測定するときのA相およびB相コンパレータ4,5のサンプリング信号の周波数、およびA相およびB相駆動ドライバ2,3の駆動期間を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子式流量計に関し、特に、流体の流量に応じて回転する回転体の回転数を磁気的に検出する電子式流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、水道メータなどには、磁気センサを利用した電子式流量計を採用している。水道メータなどに電子式流量計を採用する場合、外部から電源を供給することが困難で、電池を電源とすることが一般的である。そのため、電子式流量計は、電池の寿命を長持ちさせるため消費する電流量を抑制する必要がある。
【0003】
しかし、電子式流量計は、磁気センサから出力される第1および第2の信号によって流体の流量及び流体の流れる方向(磁気センサの回転体の正逆方向)を検出する。そのため、電子式流量計は、磁気センサから出力する第1および第2の信号を、磁気センサの回転体の回転速度に追従させる必要があり、磁気センサに常時電流を供給するため消費する電流量が増大していた。
【0004】
そこで、特許文献1に開示してある電子式流量計は、流量に応じて磁気センサから出力される第1および第2の信号のサンプリングする周期を低速・中速・高速と変化させ、該サンプリングする周期の変化に合わせて磁気センサに供給する電流を間欠的にすることで、消費する電流量を減らしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−246662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示してある電子式流量計は、流量に応じて磁気センサから出力される第1および第2の信号のサンプリングする周期を低速・中速・高速の三段階に変化させるだけであるため、磁気センサに供給する電流を十分に低減することができないという問題があった。
【0007】
また、特許文献1に開示してある電子式流量計は、低速・中速・高速とサンプリングする周期を変化するのに合わせて、磁気センサに供給する電流を間欠的にするだけなので、磁気センサのセンサ感度のバラツキによって、第1および第2の信号を出力するために必要な電流を磁気センサが得られず、磁気センサで回転体の回転数を安定して検出することができないという問題があった。
【0008】
それゆえに、本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、磁気センサで回転体の回転数を安定して検出することができるとともに、磁気センサで消費する電流量を低減することができる電子式流量計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電子式流量計は、磁気センサと、駆動ドライバと、第1コンパレータと、第2コンパレータと、2相エンコード部と、回転速度タイマ部とを備える。磁気センサは、流体の流量に応じて回転する回転体の回転数を磁気的に検出し、検出した回転体の回転数に応じた第1および第2の信号を出力する。駆動ドライバは、磁気センサを駆動する。第1コンパレータは、磁気センサが出力した第1の信号を、サンプリング信号に基づいてサンプリングする。第2コンパレータは、磁気センサが出力した第2の信号を、サンプリング信号に基づいてサンプリングする。2相エンコード部は、第1および第2コンパレータでサンプリングした第1および第2の信号に基づき回転体の正逆方向を判定し、判定した正逆方向に応じてカウンタのカウントアップまたはカウントダウンを行ないイベントカウント信号を出力する。回転速度タイマ部は、2相エンコード部が出力したイベントカウント信号から回転体の回転数を算出し、算出した回転体の回転数に応じて、次に回転体の回転数を測定するときの第1および第2コンパレータのサンプリング信号の周波数、および駆動ドライバの駆動期間を設定する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る電子式流量計によれば、磁気センサで検出した回転体の回転数に応じて、第1および第2コンパレータのサンプリング信号の周波数、および駆動ドライバの駆動期間を変化させることができるので消費する電流量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1に係る電子式流量計の構成を示す概略図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る電子式流量計の磁気センサから出力する信号を説明する波形図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る電子式流量計の2相エンコード部の動作を説明するための波形図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る電子式流量計の回転速度タイマ部の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る電子式流量計の回転速度タイマ部の動作を説明するための波形図である。
【図6】A相またはB相パルス信号、サンプリング周波数および駆動信号のそれぞれの波形を示す図である。
【図7】A相またはB相パルス信号、サンプリング周波数および駆動信号のそれぞれの別の波形を示す図である。
【図8】羽根車の回転数に対するA相駆動ドライバおよびB相駆動ドライバの駆動期間、およびA相コンパレータおよびB相コンパレータのサンプリング周波数の関係を示した図である。
【図9】本発明の実施の形態2に係る電子式流量計の構成を示す概略図である。
【図10】本発明の実施の形態2に係る電子式流量計の回転速度タイマ部の構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の実施の形態3に係る電子式流量計の回転速度タイマ部の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照して説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る電子式流量計の構成を示す概略図である。図1に示す電子式流量計10は、磁気センサ1、A相駆動ドライバ2、B相駆動ドライバ3、A相コンパレータ(第1コンパレータ)4、B相コンパレータ(第2コンパレータ)5、2相エンコード部6、回転速度タイマ部7を含んでいる。
【0013】
また、電子式流量計10は、A相駆動ドライバ2またはB相駆動ドライバ3の駆動を選択する駆動ドライバ選択部8、A相駆動ドライバ2およびB相駆動ドライバ3の駆動期間、A相コンパレータ4およびB相コンパレータ5のサンプリング信号の周波数(以下、サンプリング周波数という)を生成し、出力するクロックコントロール部9を含んでいる。さらに、電子式流量計10は、クロックコントロール部9にクロック信号を供給する低速クロック部11および高速クロック部12、A相コンパレータ4が出力した波形を整形するA相波形整形部13、B相コンパレータ5が出力した波形を整形するB相波形整形部14を含んでいる。
【0014】
磁気センサ1は、流体の流量に応じて回転する羽根車(回転体)の回転軸に取り付けられた永久磁石に対向して設けてあり、羽根車が回転することで永久磁石から磁力の変化を読取り、羽根車の回転数を検出する。具体的に、磁気センサ1は、MR(Magneto Resistance)素子であり、MR素子の抵抗値が変化することで羽根車の回転角に比例したパルス数が発生する。また、磁気センサ1は、回転軸に対して90度離して2つ設けてあり、一方のA相、他方をB相とする。
【0015】
A相駆動ドライバ2は、A相の磁気センサ1を駆動するドライバ回路であり、後述する駆動期間に電流をA相の磁気センサ1に供給する。また、B相駆動ドライバ3は、B相の磁気センサ1を駆動するドライバ回路であり、後述する駆動期間に電流をB相の磁気センサ1に供給する。
【0016】
A相コンパレータ4は、A相の磁気センサ1で検出した羽根車の回転角に比例したパルス信号(A相パルス信号)から、サンプリング周波数に応じた信号をサンプリングして、A相波形信号を出力する。また、B相コンパレータ5は、B相の磁気センサ1で検出した羽根車の回転角に比例したパルス信号(B相パルス信号)から、サンプリング周波数に応じた信号をサンプリングして、B相波形信号を出力する。
【0017】
図2は、本発明の実施の形態1に係る電子式流量計10の磁気センサ1から出力する信号を説明する波形図である。磁気センサ1は、図2に示すように、60mVの振幅を有する正弦波のA相またはB相パルス信号を出力する。A相コンパレータ4またはB相コンパレータ5は、図2に示すように、サンプリング周波数に応じてA相またはB相パルス信号をサンプリングしたA相またはB相波形信号を出力する。さらに、A相波形整形部13またはB相波形整形部14は、A相またはB相波形信号を、図2に示すように矩形波に整形してイベント信号として2相エンコード部6に出力する。なお、A相波形整形部13およびB相波形整形部14は、ラッチ回路で構成してある。
【0018】
2相エンコード部6は、A相コンパレータ4およびB相コンパレータ5でサンプリングしたA相およびB相波形信号(整形後のイベント信号)に基づき羽根車の正逆方向を判定する。また、2相エンコード部6は、判定した正逆方向に応じてカウンタのカウントアップまたはカウントダウンを行ないイベントカウント信号を出力する。つまり、2相エンコード部6は、A相およびB相波形信号の位相差を検出することで羽根車の正逆方向を判定し、位相差によってカウンタのカウントアップまたはカウントダウンを行ない、一定時間内のカウンタ値をイベントカウント信号として出力する。
【0019】
図3は、本発明の実施の形態1に係る電子式流量計10の2相エンコード部6の動作を説明するための波形図である。図3に示す波形は、イベントカウント信号、ベースカウンタ、逆転時保存カウンタ、初回セットフラグ、カウントダウン時信号、カウントアップ信号を図示してある。イベントカウント信号は、ベースカウンタに従い、まず“n1”から“n9”へとカウントアップする。イベントカウント信号は、ベースカウンタが“n9”までカウントアップしたとき、逆転時コンペア値に至り、逆転時保存カウンタに“n9”のカウント値を保存し、カウントダウン時信号が“H”レベルとなる。
【0020】
イベントカウント信号は、逆転時コンペア値に至った後、ベースカウンタに従い、“n8”から“n3”へとカウントダウンする。カウントダウン時信号は、ベースカウンタが“n3”までカウントダウンしたとき、“L”レベルとなる。イベントカウント信号は、カウントダウン時信号が“L”レベルとなった後、ベースカウンタに従い、“n4”から“n6”へとカウントアップする。カウントダウン時信号は、ベースカウンタが“n6”までカウントアップしたとき、再び“H”レベルとなる。イベントカウント信号は、カウントダウン時信号が再び“H”レベルとなった後、ベースカウンタに従い、“n5”から“n2”へとカウントダウンする。カウントダウン時信号は、ベースカウンタが“n2”までカウントダウンしたとき、再び“L”レベルとなる。イベントカウント信号は、カウントダウン時信号が再び“L”レベルとなった後、ベースカウンタに従い、“n3”から“n9”へとカウントアップする。さらに、イベントカウント信号は、ベースカウンタに従い、“n10”からカウントアップし、オーバーフローに至る。
【0021】
初回セットフラグは、2相エンコード部6のカウンタが動作する初回に“H”レベルになるフラグ信号である。なお、初回セットフラグが“L”レベルのとき、図1に示すカウントアップ信号端子からカウントアップ信号を出力する。
【0022】
次に、回転速度タイマ部7は、2相エンコード部6が出力したイベントカウント信号から羽根車の回転数を算出する。また、回転速度タイマ部7は、算出した羽根車の回転数に応じて、次に羽根車の回転数を測定するときのA相コンパレータ4およびB相コンパレータ5のサンプリング周波数、およびA相駆動ドライバ2およびB相駆動ドライバ3の駆動期間を設定するための周波数設定信号をクロックコントロール部9に出力する。また、回転速度タイマ部7は、ドライバ駆動信号を出力する先を選択する選択信号を駆動ドライバ選択部8に出力する。
【0023】
図4は、本発明の実施の形態1に係る電子式流量計10の回転速度タイマ部7の構成を示すブロック図である。図4に示す回転速度タイマ部7は、回転数カウンタ71、コンペア用レジスタ72、比較器73、周波数設定レジスタ74を含んでいる。
【0024】
回転数カウンタ71は、2相エンコード部6が出力したイベントカウント信号から羽根車の回転数を算出する。コンペア用レジスタ72は、n段のコンペア用レジスタを有し、設定する周波数に対応した回転数の閾値(コンペアマッチ)を各段のコンペア用レジスタに保持してある。比較器73は、回転数カウンタ71で算出した羽根車の回転数と、コンペア用レジスタ72に保持してあるコンペアマッチとを比較し、比較結果のレベルを出力する。周波数設定レジスタ74は、n+1段のレジスタを有し、各段のレジスタに比較器73が出力したレベルに対応した周波数の設定値を保持してある。
【0025】
図5は、本発明の実施の形態1に係る電子式流量計10の回転速度タイマ部7の動作を説明するための波形図である。図5に示す波形は、回転数カウンタ信号、回転数カウンタ値、レベルバッファ、周波数設定レジスタ、回転数測定周期タイマを図示してある。なお、図5に示す波形には、2相エンコード部6のベースカウンタ、イベントカウント信号も図示してある。
【0026】
回転数カウンタ71は、回転数測定周期タイマの“H”レベルが入力され、次の回転数測定周期タイマの“H”レベルが入力されるまでの期間において、2相エンコード部6のベースカウンタに従い、回転数カウンタ値を“0”からカウントする。図5に示す第1期間において、回転数カウンタ71は、回転数カウンタ値を“0”から“9”までカウントしている。同様に、回転数カウンタ71は、第2期間において回転数カウンタ値を“0”から“11”までカウントし、第3期間において回転数カウンタ値を“0”から“15”までカウントし、第4期間において回転数カウンタ値を“0”から“n”までカウントしている。
【0027】
比較器73は、図5に示す回転数カウンタ信号と、コンペア用レジスタ72に保持してあるコンペアマッチ1〜7とを比較し、一致したコンペアマッチ1〜7に対応するレベルをレベルバッファに保持する。比較器73は、第1期間において、回転数カウンタ値が“2”のときレベル1を、回転数カウンタ値が“6”のときレベル2を、回転数カウンタ値が“9”のときレベル3をそれぞれレベルバッファに保持する。同様に、比較器73は、第2期間においてレベル1〜レベル4を、第3期間においてレベル1〜レベル6を、第4期間においてレベル1〜レベル2をそれぞれレベルバッファに保持する。
【0028】
周波数設定レジスタ74は、回転数測定周期タイマが“H”レベルとなる直前に、レベルバッファに保持したレベルの周波数の設定値を読出し、周波数設定信号としてクロックコントロール部9に出力する。周波数設定レジスタ74は、第2期間において、回転数測定周期タイマが“H”レベルとなる直前(第1期間)に、レベルバッファに保持したレベル3の周波数の設定値を読出す。同様に、周波数設定レジスタ74は、第3期間において、回転数測定周期タイマが“H”レベルとなる直前(第2期間)に、レベルバッファに保持したレベル4の周波数の設定値を、第4期間において、回転数測定周期タイマが“H”レベルとなる直前(第3期間)に、レベルバッファに保持したレベル6の周波数の設定値をそれぞれ読出す。
【0029】
図1に戻って、クロックコントロール部9は、回転速度タイマ部7が出力した周波数設定信号に基づき、A相駆動ドライバ2およびB相駆動ドライバ3の駆動期間、A相コンパレータ4およびB相コンパレータ5のサンプリング周波数を生成し、出力する。ここで、A相駆動ドライバ2およびB相駆動ドライバ3の駆動期間は、A相駆動ドライバ2およびB相駆動ドライバ3に電流を供給する期間であり、A相駆動ドライバ2およびB相駆動ドライバ3の駆動信号の周波数およびデューティ比により設定することができる。クロックコントロール部9は、A相駆動ドライバ2およびB相駆動ドライバ3の駆動期間を駆動信号の周波数とデューティ比とで設定することで、駆動期間をより細かく設定することができる。なお、A相コンパレータ4およびB相コンパレータ5のサンプリング周波数と、A相駆動ドライバ2およびB相駆動ドライバ3の駆動信号の周波数とは同じ周波数である。電子式流量計10は、A相コンパレータ4およびB相コンパレータ5のサンプリング周波数と、A相駆動ドライバ2およびB相駆動ドライバ3の駆動信号の周波数とを同じ周波数にすることで、後述するレジスタの数を減らすことができる。
【0030】
クロックコントロール部9は、周波数32KHzのクロック信号を発振できる外部発振子を有する低速クロック部11のクロック信号と、周波数20MHzまたは周波数125KHzのクロック信号を発振できる外部発振子を有する高速クロック部12のクロック信号とを組合わせて、周波数設定信号に基づくサンプリング周波数および駆動信号の周波数を生成し、出力する。
【0031】
駆動ドライバ選択部8は、クロックコントロール部9が出力した駆動期間と、回転速度タイマ部7が出力した選択信号に基づき、ドライバ駆動信号を出力するA相駆動ドライバ2またはB相駆動ドライバ3を駆動を選択する。
【0032】
図6は、A相またはB相パルス信号、サンプリング周波数および駆動信号のそれぞれの波形を示す図である。図6に示す波形は、羽根車の回転数の高い(流量が多い)ときの波形を示しており、A相またはB相パルス信号の周波数が高い。周波数が高いA相またはB相パルス信号を磁気センサ1から得るためには、A相駆動ドライバ2およびB相駆動ドライバ3の駆動期間を長くする必要があり、A相駆動ドライバ2およびB相駆動ドライバ3の駆動信号の周波数を高くして、かつデューティ比を大きくする。また、周波数が高いA相またはB相パルス信号が、A相コンパレータ4およびB相コンパレータ5に入力された場合、A相コンパレータ4およびB相コンパレータ5は、周波数が高いA相またはB相パルス信号をサンプリングする必要があるため、サンプリング周波数も高くする必要がある。
【0033】
図7は、A相またはB相パルス信号、サンプリング周波数および駆動信号のそれぞれの別の波形を示す図である。図7に示す波形は、羽根車の回転数の低い(流量が少ない)ときの波形を示しており、A相またはB相パルス信号の周波数が低い。周波数が低いA相またはB相パルス信号を磁気センサ1から得るためには、A相駆動ドライバ2およびB相駆動ドライバ3の駆動期間を短くすることができ、A相駆動ドライバ2およびB相駆動ドライバ3の駆動信号の周波数を低くして、かつデューティ比を小さくする。また、周波数が低いA相またはB相パルス信号が、A相コンパレータ4およびB相コンパレータ5に入力された場合、A相コンパレータ4およびB相コンパレータ5は、周波数が低いA相またはB相パルス信号をサンプリングすることができればよいため、サンプリング周波数も低くすることができる。
【0034】
A相駆動ドライバ2およびB相駆動ドライバ3の駆動期間を短くすることができれば、磁気センサ1に供給する電流を抑えることができるため、電子式流量計10で消費する電流量を低減することができる。また、A相コンパレータ4およびB相コンパレータ5のサンプリング周波数を低くすることができれば、A相コンパレータ4およびB相コンパレータ5に供給する電流を抑えることができるため、電子式流量計10で消費する電流量を低減することができる。
【0035】
図8は、羽根車の回転数に対するA相駆動ドライバ2およびB相駆動ドライバ3の駆動期間、およびA相コンパレータ4およびB相コンパレータ5のサンプリング周波数の関係を示した図である。図8では、羽根車の回転数を高、中、低の3種類に分け、かつ磁気センサ1のセンサ感度を高、低の2種類に分けている。なお、磁気センサ1は、センサ感度が高いほど、A相駆動ドライバ2およびB相駆動ドライバ3の駆動期間を短くしても、所望のA相またはB相パルス信号を得ることができる。
【0036】
羽根車の回転数が高く、磁気センサ1のセンサ感度が高い場合、A相駆動ドライバ2およびB相駆動ドライバ3の駆動期間は、駆動信号のデューティ比を80%、周波数を中〜高程度にし、A相コンパレータ4およびB相コンパレータ5のサンプリング周波数は、中〜高程度にする。羽根車の回転数が高く、磁気センサ1のセンサ感度が低い場合、A相駆動ドライバ2およびB相駆動ドライバ3の駆動期間は、駆動信号のデューティ比を90%、周波数を高くし、A相コンパレータ4およびB相コンパレータ5のサンプリング周波数は、高くする。
【0037】
羽根車の回転数が中程度で、磁気センサ1のセンサ感度が高い場合、A相駆動ドライバ2およびB相駆動ドライバ3の駆動期間は、駆動信号のデューティ比を50%、周波数を中程度にし、A相コンパレータ4およびB相コンパレータ5のサンプリング周波数も、中程度にする。羽根車の回転数が中程度で、磁気センサ1のセンサ感度が低い場合、A相駆動ドライバ2およびB相駆動ドライバ3の駆動期間は、駆動信号のデューティ比を60%、周波数を中程度にし、A相コンパレータ4およびB相コンパレータ5のサンプリング周波数も、中程度にする。
【0038】
羽根車の回転数が低く、磁気センサ1のセンサ感度が高い場合、A相駆動ドライバ2およびB相駆動ドライバ3の駆動期間は、駆動信号のデューティ比を10%、周波数を低くし、A相コンパレータ4およびB相コンパレータ5のサンプリング周波数も、低くする。羽根車の回転数が低く、磁気センサ1のセンサ感度が低い場合、A相駆動ドライバ2およびB相駆動ドライバ3の駆動期間は、駆動信号のデューティ比を20%、周波数を中程度にし、A相コンパレータ4およびB相コンパレータ5のサンプリング周波数も、中程度にする。
【0039】
図6では、羽根車の回転数と、磁気センサ1のセンサ感度とを組合わせて6種類に分けて、A相駆動ドライバ2およびB相駆動ドライバ3の駆動期間、およびA相コンパレータ4およびB相コンパレータ5のサンプリング周波数を設定する場合について説明したが、本実施の形態1に係る電子式流量計10は、これに限定されるもではない。なお、電子式流量計10が、より多くの種類に分けてA相駆動ドライバ2およびB相駆動ドライバ3の駆動期間、およびA相コンパレータ4およびB相コンパレータ5のサンプリング周波数を設定する場合、種類の数に合わせてコンペア用レジスタ72および周波数設定レジスタ74のレジスタの段数を設定する必要がある。
【0040】
以上のように、本発明の実施の形態1に係る電子式流量計10は、回転速度タイマ部7が、2相エンコード部6が出力したイベントカウント信号から羽根車の回転数を算出し、算出した羽根車の回転数に応じて、次に羽根車の回転数を測定するときのA相およびB相コンパレータ4,5のサンプリング周波数、およびA相およびB相駆動ドライバ2,3の駆動期間を設定するので、磁気センサ1のセンサ感度のバラツキに合わせてA相およびB相駆動ドライバ2,3の駆動期間を変更することができ、磁気センサ1で羽根車の回転数を安定して検出することができる。また、本発明の実施の形態1に係る電子式流量計10は、低速・中速・高速の三段階より多く、羽根車の回転数に応じて、A相およびB相コンパレータ4,5のサンプリング周波数、およびA相およびB相駆動ドライバ2,3の駆動期間を変化させることができるの消費する電流量を低減することができる。
【0041】
また、回転速度タイマ部7は、回転数測定周期タイマが“H”レベルとなる直前に、レベルバッファに保持したレベルの周波数の設定値をそれぞれ読出す構成とすることで、次に羽根車の回転数を測定するときのA相およびB相コンパレータ4,5のサンプリング周波数、およびA相およびB相駆動ドライバ2,3の駆動期間を自動的に設定することができる。そのため、回転速度タイマ部7は、次に羽根車の回転数を測定するときのA相およびB相コンパレータ4,5のサンプリング周波数、およびA相およびB相駆動ドライバ2,3の駆動期間を設定するために、CPU(Central Processing Unit)などの演算回路を起動する必要がなく、消費する電流量を低減することができる。
【0042】
さらに、電子式流量計10は、任意の段数のコンペア用レジスタを設定することで、流量などに応じて多くの種類のA相駆動ドライバ2およびB相駆動ドライバ3の駆動期間、およびA相コンパレータ4およびB相コンパレータ5のサンプリング周波数を設定することができ、より消費する電流量を低減することができる。
【0043】
なお、電子式流量計10は、A相駆動ドライバ2およびB相駆動ドライバ3、A相コンパレータ4およびB相コンパレータ5で信号をアナログで処理し、2相エンコード部6および回転速度タイマ部7などで信号をデジタルで処理している。
【0044】
(実施の形態2)
図9は、本発明の実施の形態2に係る電子式流量計の構成を示す概略図である。図9に示す電子式流量計20は、磁気センサ1、A相駆動ドライバ2、B相駆動ドライバ3、A相コンパレータ(第1コンパレータ)4、B相コンパレータ(第2コンパレータ)5、2相エンコード部6、回転速度タイマ部21を含んでいる。
【0045】
また、電子式流量計20は、A相駆動ドライバ2またはB相駆動ドライバ3の駆動を選択する駆動ドライバ選択部8、A相駆動ドライバ2およびB相駆動ドライバ3の駆動期間、A相コンパレータ4およびB相コンパレータ5のサンプリング周波数を生成し、出力するクロックコントロール部9を含んでいる。さらに、電子式流量計20は、クロックコントロール部9にクロック信号を供給する低速クロック部11および高速クロック部12、A相コンパレータ4が出力した波形を整形するA相波形整形部13、B相コンパレータ5が出力した波形を整形するB相波形整形部14を含んでいる。
【0046】
電子式流量計20は、回転速度タイマ部21の構成が異なる以外、図1に示す実施の形態1と同じ構成であるため、同じ構成要素に同じ符号を付して、詳細な説明を繰り返さない。
【0047】
回転速度タイマ部21は、2相エンコード部6が出力したイベントカウント信号から羽根車の回転数を算出する。また、回転速度タイマ部21は、算出した羽根車の回転数に応じて、次に羽根車の回転数を測定するときのA相コンパレータ4およびB相コンパレータ5のサンプリング周波数を設定するためのサンプリング周波数設定信号を、およびA相駆動ドライバ2およびB相駆動ドライバ3の駆動期間を設定するための駆動周波数設定信号をそれぞれクロックコントロール部9に出力する。また、回転速度タイマ部7は、ドライバ駆動信号を出力する先を選択する選択信号を駆動ドライバ選択部8に出力する。
【0048】
図10は、本発明の実施の形態2に係る電子式流量計20の回転速度タイマ部21の構成を示すブロック図である。図10に示す回転速度タイマ部21は、回転数カウンタ211、コンペア用レジスタ212、比較器213、サンプリング周波数設定レジスタ214、駆動周波数設定レジスタ215を含んでいる。
【0049】
回転数カウンタ211は、2相エンコード部6が出力したイベントカウント信号から羽根車の回転数を算出する。コンペア用レジスタ212は、n段のコンペア用レジスタを有し、設定する周波数に対応した回転数の閾値(コンペアマッチ)を各段のコンペア用レジスタに保持してある。比較器213は、回転数カウンタ71で算出した羽根車の回転数と、コンペア用レジスタ212に保持してあるコンペアマッチとを比較し、比較結果のレベルを出力する。サンプリング周波数設定レジスタ214、n+1段のレジスタを有し、各段のレジスタに比較器213が出力したレベルに対応したサンプリング周波数の設定値を保持してある。駆動周波数設定レジスタ215は、n+1段のレジスタを有し、各段のレジスタに比較器213が出力したレベルに対応した駆動周波数の設定値を保持してある。
【0050】
回転速度タイマ部21は、サンプリング周波数設定レジスタ214および駆動周波数設定レジスタ215を有し、サンプリング周波数設定信号と、駆動周波数設定信号とをそれぞれ独立して設定することができる。回転速度タイマ部21の動作は、サンプリング周波数設定信号と、駆動周波数設定信号とをそれぞれ独立して設定することができること以外、回転速度タイマ部7と同じ動作であるため、説明を繰り返さない。
【0051】
以上のように、本発明の実施の形態2に係る電子式流量計20は、回転数カウンタ211が、サンプリング周波数設定信号と、駆動周波数設定信号とをそれぞれ独立して設定することができるので、流量などに応じて、A相駆動ドライバ2およびB相駆動ドライバ3の駆動期間、およびA相コンパレータ4およびB相コンパレータ5のサンプリング周波数をより細かく設定することができ、さらに消費する電流量を低減することができる。
【0052】
(実施の形態3)
図11は、本発明の実施の形態3に係る電子式流量計の回転速度タイマ部7の構成を示す概略図である。図11に示す回転速度タイマ部7は、コンペア用レジスタ72および周波数設定レジスタ74をRAM(Random Access Memory)76に割当てた構成を図示してあるが、他の構成については図4に示す構成と同じであるため図示を繰り返さない。
【0053】
RAM76は、コンペア用レジスタ72の各段に保持してある回転数の閾値(コンペアマッチ)、および周波数設定レジスタ74の各段に保持してある周波数の設定値を、メモリ領域内に割当ててある。そのため、本実施の形態3に係る回転速度タイマ部7は、ハードウェアの構成として、コンペア用レジスタ72および周波数設定レジスタ74を有する必要がなく、コンペア用レジスタ72および周波数設定レジスタ74の回路部分を削減して、回路規模を縮小することができる。また、本実施の形態3に係る回転速度タイマ部7は、コンペア用レジスタ72および周波数設定レジスタ74を動作させるための電流を供給する必要がないので、消費する電流量を低減することができる。
【0054】
また、本実施の形態3に係る電子式流量計は、DTC(Data Transfer Controller)、またはDMAC(Direct Memory Access Controller)を設けることで、RAM76に割当てたコンペア用レジスタ72の各段に保持してある回転数の閾値(コンペアマッチ)、および周波数設定レジスタ74の各段に保持してある周波数の設定値を、CPUを起動することなしに読出し、書込みすることが可能となる。
【0055】
さらに、RAM76は、コンペア用レジスタ72の各段に保持してある回転数の閾値(コンペアマッチ)、および周波数設定レジスタ74の各段に保持してある周波数の設定値を割当てたメモリ領域以外を、CPUなどのメモリ領域として利用することができる。
【0056】
以上のように、本発明の実施の形態3に係る回転速度タイマ部7は、コンペア用レジスタ72の各段に保持してある回転数の閾値(コンペアマッチ)、および周波数設定レジスタ74の各段に保持してある周波数の設定値をRAM76に割当てるので、回路規模を縮小し、かつ消費する電流量を低減することができる。
【0057】
なお、RAM76は、コンペア用レジスタ72の各段に保持してある回転数の閾値(コンペアマッチ)、および周波数設定レジスタ74の各段に保持してある周波数の設定値を割当てる場合に限定されるものではない。RAM76は、実施の形態2で説明した、サンプリング周波数設定レジスタ214の各段に保持してあるサンプリング周波数の設定値、および駆動周波数設定レジスタ215の各段に保持してある駆動周波数の設定値を割当ててもよい。
【0058】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0059】
1 磁気センサ、2 A相駆動ドライバ、3 B相駆動ドライバ、4 A相コンパレータ、5 B相コンパレータ、6 2相エンコード部、7,21 回転速度タイマ部、8 駆動ドライバ選択部、9 クロックコントロール部、10,20 電子式流量計、11 低速クロック部、12 高速クロック部、13 A相波形整形部、14 B相波形整形部、71,211 回転数カウンタ、72,212 コンペア用レジスタ、73,213 比較器、74 周波数設定レジスタ、76 RAM、214 サンプリング周波数設定レジスタ、215 駆動周波数設定レジスタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流量に応じて回転する回転体の回転数を磁気的に検出し、検出した前記回転体の回転数に応じた第1および第2の信号を出力する磁気センサと、
前記磁気センサを駆動する駆動ドライバと、
前記磁気センサが出力した前記第1の信号を、サンプリング信号に基づいてサンプリングする第1コンパレータと、
前記磁気センサが出力した前記第2の信号を、前記サンプリング信号に基づいてサンプリングする第2コンパレータと、
前記第1および前記第2コンパレータでサンプリングした前記第1および前記第2の信号に基づき前記回転体の正逆方向を判定し、判定した正逆方向に応じてカウンタのカウントアップまたはカウントダウンを行ないイベントカウント信号を出力する2相エンコード部と、
前記2相エンコード部が出力した前記イベントカウント信号から前記回転体の回転数を算出し、算出した前記回転体の回転数に応じて、次に前記回転体の回転数を測定するときの前記第1および前記第2コンパレータの前記サンプリング信号の周波数、および前記駆動ドライバの駆動期間を設定する回転速度タイマ部と
を備える電子式流量計。
【請求項2】
前記駆動ドライバの前記駆動期間は、前記磁気センサに供給する駆動信号の周波数およびデューティ比により設定する請求項1に記載の電子式流量計。
【請求項3】
前記サンプリング信号の周波数と、前記磁気センサに供給する前記駆動信号の周波数とを同じ周波数に設定してある請求項2に記載の電子式流量計。
【請求項4】
前記サンプリング信号の周波数と、前記磁気センサに供給する前記駆動信号の周波数とを異なる周波数に設定してある請求項2に記載の電子式流量計。
【請求項5】
前記回転速度タイマ部は、
前記回転体の回転数と、該回転数に対応した前記第1および前記第2コンパレータの前記サンプリング信号の周波数、および前記駆動ドライバの駆動期間とを保持してある複数のレジスタを有し、
前記イベントカウント信号から算出した前記回転体の回転数と、前記複数のレジスタに記憶してある前記回転体の回転数とを比較し、前記第1および前記第2コンパレータの前記サンプリング信号の周波数、および前記駆動ドライバの駆動期間を設定する請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の電子式流量計。
【請求項6】
前記回転速度タイマ部は、前記回転体の回転数と、該回転数に対応した前記第1および前記第2コンパレータの前記サンプリング信号の周波数、および前記駆動ドライバの駆動期間とを前記複数のレジスタに記憶するのに代えて、メモリ回路に割当てる請求項5に記載の電子式流量計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−251861(P2012−251861A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124240(P2011−124240)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】