説明

電子式電力量計

【課題】 配電線から侵入する雷サージが電力需要家内の家電機器や情報機器まで達することを阻止する雷サージ対策を施した電子式電力量計を提供する。
【解決手段】 通信端局ユニット11、電力量計ユニット12および直結ユニット13が筐体14の上部に組み付けられると共に、電線が接続される電源側端子部15S,16Sおよび負荷側端子部15L,16Lを有する端子ブロック17が筐体14の下部に取り付けられた電子式電力量計において、電源側端子部15S,16Sから侵入するサージを吸収するサージ防護手段を端子ブロック17に設け、そのサージ防護手段を、電源側端子部16Sに空洞部27を介して並設された接地金具26と電源側端子部16Sとの間に形成された放電ギャップ28とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば一般家庭などの電力需要家が使用する電力量を計測して表示する電子式電力量計に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、一般家庭などの電力需要家が使用する電力量を計測して表示する電力量計として、電子式電力量計が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
この種の電子式電力量計は、図7および図8に示すように、通信端局ユニット1、電力量計ユニット2および開閉器ユニット3が筐体4の上部に組み付けられると共に、配電線が接続される電源側端子部5S,6Sおよび負荷側端子部5L,6Lを有する端子ブロック7が筐体4の下部に取り付けられた構造を具備する。なお、図7は通信端局ユニット1、電力量計ユニット2および開閉器ユニット3と端子ブロック7の組立分解斜視図、図8は通信端局ユニット1、電力量計ユニット2および開閉器ユニット3と端子ブロック7の組立完了斜視図である。
【0004】
電力量計ユニット2は、電源から配電線を介して負荷に供給された電力量を計測する計測回路が内蔵されている。また、開閉器ユニット3は、電力量計ユニット2と負荷との間を開閉するリレー回路が内蔵されている。さらに、通信端局ユニット1は、電力量計ユニット2で計測された電力量を含む各種データを外部に送信したり、開閉器ユニット3のリレー回路を遮断するための制御信号を外部から受信したりする送受信回路が内蔵されている。
【0005】
端子ブロック5は、筐体4を構成するベース部8の下部に取り付けられている。この端子ブロック5の電源側端子部5S,6Sと負荷側端子部5L,6Lとの間に、通信端局ユニット1、電力量計ユニット2および開閉器ユニット3が電気的に接続されている。これら通信端局ユニット1、電力量計ユニット2および開閉器ユニット3は、ベース部8に設けられたソケット構造9(図7参照)でもって電源側端子部5S,6Sと負荷側端子部5L,6Lとの間に接続されることになる。
【0006】
また、通信端局ユニット1、電力量計ユニット2および開閉器ユニット3を被覆する透明の保護カバー10がベース部8に取り付けられる。このベース部8と保護カバー10とで筐体4が構成されている。端子ブロック5には、電力供給設備からの配電線が電源側端子部5S,6Sにネジ止めにより接続され、電力需要家内の負荷への配電線が負荷側端子部5L,6Lにネジ止めにより接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−226842号公報
【特許文献2】特開2006−170787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、一般家庭などの電力需要家では、各種の家電機器や情報機器が使用されており、これら家電機器や情報機器の多様化に伴い、落雷などによる過大な雷サージが家電機器や情報機器の電源線から侵入して、その雷サージでもって家電機器や情報機器が破壊されることを未然に防止する必要がある。
【0009】
そのため、前述した家電機器や情報機器の電源線から雷サージが侵入してくるのを未然に防止する目的として、電力需要家に設置された電子式電力量計に雷サージ対策を施すことが要望されているというのが現状であった。
【0010】
そこで、本発明は前述の問題点に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、配電線から侵入する雷サージが電力需要家内の家電機器や情報機器まで達することを阻止する雷サージ対策を施した電子式電力量計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、電力量計ユニットを含む複数のユニットが筐体の上部に組み付けられると共に、電線が接続される電源側端子部および負荷側端子部を有する端子ブロックが前記筐体の下部に取り付けられた電子式電力量計において、前記電源側端子部から侵入するサージを吸収するサージ防護手段を前記端子ブロックに設けたことを特徴とする。なお、前述の「電力量計ユニットを含む複数のユニット」とは、電力量計ユニットの他、通信端局ユニットや開閉器ユニット(直結ユニット)などの各種ユニットを意味する。また、「サージ」は、落雷などによる雷サージ以外の過渡的な過大電圧も含む。
【0012】
本発明では、電源側端子部から侵入するサージを吸収するサージ防護手段を端子ブロックに設けたことにより、電源側端子部から侵入するサージを端子ブロックのサージ防護手段で阻止することができるので、そのサージが端子ブロックから電力量計ユニットを含む複数のユニットに達することを回避でき、電力量計ユニットを含む複数のユニットをサージから保護することができる。
【0013】
本発明におけるサージ防護手段は、前記電源側端子部に空洞部を介して並設された接地金具と前記電源側端子部との間に形成された放電ギャップとすることが可能である。このようにすれば、電源側端子部から侵入するサージを放電ギャップでの放電現象により接地側へ速やかに吸収することができる。
【0014】
本発明における放電ギャップは、前記電力量計ユニットを含む複数のユニットに設けられたサージ防護素子よりも低い放電開始電圧に設定されていることが望ましい。このようにすれば、電源側端子部から侵入するサージが端子ブロックの放電ギャップでの放電開始により吸収することで電力量計ユニットを含む複数のユニットに達することを確実に回避することができる。
【0015】
また、本発明におけるサージ防護手段は、前記端子ブロックに並設された複数の電源側端子部間に接続されたサージ防護素子とすることも可能である。このようにすれば、電源側端子部から侵入するサージをサージ防護素子により速やかに吸収することができる。
【0016】
本発明におけるサージ防護素子は、前記電力量計ユニットを含む複数のユニットに設けられたサージ防護素子よりも低い制限電圧に設定されていることが望ましい。このようにすれば、電源側端子部から侵入するサージが端子ブロックのサージ防護素子により吸収することで電力量計ユニットを含む複数のユニットに達することを確実に回避することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電源側端子部から侵入するサージを吸収するサージ防護手段を端子ブロックに設けたことにより、電源側端子部から侵入するサージを端子ブロックのサージ防護手段で阻止することができるので、そのサージが端子ブロックから電力量計ユニットを含む複数のユニットに達することを回避でき、電力量計ユニットを含む複数のユニットをサージから保護することができる。このように簡単なサージ対策により信頼性の高い長寿命の電子式電力量計を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態で、前面の保護カバーを外した状態での電子式電力量計を示す正面図である。
【図2】本発明の実施形態で、通信端局ユニット、電力量計ユニットおよび直結ユニットと端子ブロックの組立分解斜視図である。
【図3】本発明の実施形態で、通信端局ユニット、電力量計ユニットおよび直結ユニットと端子ブロックの組立完了斜視図である。
【図4】(a)は図2の端子ブロックを示す斜視図、(b)は(a)のA−A線に沿う断面を見た斜視図である。
【図5】図4(b)の接地金具を示す斜視図である。
【図6】本発明の他の実施形態で、電源側端子部間にサージ防護素子を設けた端子ブロックを示す斜視図である。
【図7】従来の電子式電力量計で、通信端局ユニット、電力量計ユニットおよび開閉器ユニットと端子ブロックの組立分解斜視図である。
【図8】従来の電子式電力量計で、通信端局ユニット、電力量計ユニットおよび開閉器ユニットと端子ブロックの組立完了斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る電子式電力量計の実施形態を以下に詳述する。なお、以下の実施形態では、交流単相2線式の電力量計を例示するが、交流単相3線式の電力量計についても適用可能である。
【0020】
図2および図3に示す実施形態の電子式電力量計は、通信端局ユニット11、電力量計ユニット12および直結ユニット13が筐体14の上部に組み付けられると共に、配電線が接続される電源側端子部15S,16Sおよび負荷側端子部15L,16Lを有する端子ブロック17が筐体14の下部に取り付けられた構造を具備する。電力量計ユニット12の上方に通信端局ユニット11が配置され、電力量計ユニット12の下方、つまり、端子ブロック17側に直結ユニット13が配置されている。なお、図2は通信端局ユニット11、電力量計ユニット12および直結ユニット13と端子ブロック17の組立分解斜視図、図3は通信端局ユニット11、電力量計ユニット12および直結ユニット13と端子ブロック17の組立完了斜視図である。
【0021】
電力量計ユニット12は、電源から配電線を介して負荷に供給された電力量を計測する計測回路が内蔵されている。また、通信端局ユニット11は、電力量計ユニット12で計測された電力量を含む各種データを外部に送信したり、電力量計ユニット12を制御するための制御信号を外部から受信したりする送受信回路が内蔵されている。さらに、直結ユニット13は、電力量計ユニット12と負荷との間を開閉するリレー回路が内蔵された開閉器ユニット3(図7および図8参照)と異なり、その開閉器ユニット3のリレー回路を短絡させたものである。
【0022】
端子ブロック15は、筐体14を構成するベース部18の下部に取り付けられている。図1に示すように、この端子ブロック15の電源側端子部15S,16Sと負荷側端子部15L,16Lとの間に、通信端局ユニット11、電力量計ユニット12および直結ユニット13が二つの接続線21,22により電気的に接続されている。電源側端子部15Sと負荷側端子部15Lとを繋ぐ接続線21、および電源側端子部16Sと負荷側端子部16Lとを繋ぐ接続線22は、電源側端子部15S,16Sから負荷側端子部15L,16Lへ至る通電路として、ベース部18の内部および各ユニット11〜13の内部に配設されている。なお、図1中の接続線21,22は模式的に表されている。
【0023】
これら通信端局ユニット11、電力量計ユニット12および直結ユニット13は、ベース部18に設けられたソケット構造19でもってベース部18の内部配線と各ユニット11〜13の内部配線とを電気的に接続することにより二つの接続線21,22が形成され、これにより電源側端子部15S,16Sと負荷側端子部15L,16Lとの間に接続された状態でベース部18に組み付けられる。
【0024】
また、図2および図3に示すように、通信端局ユニット11、電力量計ユニット12および直結ユニット13を被覆する透明の保護カバー20がベース部18に取り付けられる。このベース部18と保護カバー20とで筐体14が構成されている。端子ブロック15には、電力供給設備からの配電線が電源側端子部15S,16Sにネジ止めにより接続され、電力需要家内の負荷への配電線が負荷側端子部15L,16Lにネジ止めにより接続される。
【0025】
このような電子式電力量計が設置された一般家庭などの電力需要家では、各種の家電機器や情報機器が使用されており、これら家電機器や情報機器の多様化に伴い、落雷などによる過大な雷サージが家電機器や情報機器の電源線から侵入して、その雷サージでもって家電機器や情報機器が破壊されることを未然に防止する必要がある。
【0026】
そこで、電力需要家に設置された電子式電力量計に雷サージ対策を施すため、電源側端子部15S,16Sから侵入するサージを吸収するサージ防護手段としての放電ギャップを端子ブロック17に設ける。このサージ防護手段としての放電ギャップは以下の構造を具備する。
【0027】
図1および図4(a)(b)に示すように端子ブロック17の中央部位、つまり、電源側端子部16Sと負荷側端子部16Lとの間に接地金具26を埋設し、その接地金具26と電源側端子部16Sとの間に空洞部27を形成する。この空洞部27の形成により接地金具26と電源側端子部16Sとの間に放電ギャップ28を形成する。なお、この放電ギャップ28での放電現象が所定の放電開始電圧で発生し易くするように、図5に示すように接地金具26の電源側端子部側の側面に、電源側端子部16Sに向けて突出する突起29を設けている。前述の接地金具26は、接地線をネジ止めにより接続することにより大地と接続される。
【0028】
このように電源側端子部15S,16Sから侵入する雷サージを吸収するサージ防護手段としての放電ギャップ28を端子ブロック17に設けたことにより、電源側端子部15S,16Sから侵入する雷サージを放電ギャップ28での放電現象により接地金具26を介して接地側である大地へ速やかに吸収することができるので、その雷サージが通信端局ユニット11、電力量計ユニット12および直結ユニット13に達することを回避でき、通信端局ユニット11、電力量計ユニット12および直結ユニット13をサージから保護することができる。
【0029】
例えば、図1に示すように、通信端局ユニット11および電力量計ユニット12にバリスタやサージアブソーバ等のサージ防護素子24,25を設けた電子式電力量計の場合、つまり、端子ブロック17の電源側端子部15Sと負荷側端子部15Lとを繋ぐ接続線21と、端子ブロック17の電源側端子部16Sと負荷側端子部16Lと繋ぐ接続線22との間、すなわち、線間の電源側にサージ防護素子24,25を通信端局ユニット11および電力量計ユニット12の内部で接続した電子式電力量計の場合、放電ギャップ28の放電開始電圧は、通信端局ユニット11および電力量計ユニット12に内蔵されたサージ防護素子24,25の制限電圧よりも低く設定する。
【0030】
このように、放電ギャップの28放電開始電圧を、通信端局ユニット11および電力量計ユニット12に内蔵されたサージ防護素子24,25の制限電圧よりも低く設定することにより、サージ防護素子24,25によるサージ吸収よりも低い電圧で放電ギャップ28での放電が開始するため、電源側端子部15S,16Sから侵入する雷サージが通信端局ユニット11、電力量計ユニット12および直結ユニット13に達することを確実に回避することができる。
【0031】
なお、前述の実施形態では、サージ防護手段として放電ギャップ28を端子ブロック17に設けた場合について説明したが、本発明はこれに限定されることなく、サージ防護手段の他の実施形態として、図6に示すように、二つの電源側端子部15S,16S間にバリスタやサージアブソーバ等のサージ防護素子30を接続することも可能である。これにより、電源側端子部15S,16Sから侵入する雷サージをサージ防護素子30により速やかに吸収することができる。
【0032】
また、通信端局ユニット11および電力量計ユニット12にバリスタやサージアブソーバ等のサージ防護素子24,25を設けた電子式電力量計の場合(図1参照)、端子ブロック17の二つの電源側端子部15S,16S間に設けたサージ防護素子30は、通信端局ユニット11および電力量計ユニット12に内蔵されたサージ防護素子24,25よりも低い制限電圧に設定する。
【0033】
このように、端子ブロック17に設けたサージ防護素子30の制限電圧を、通信端局ユニット11および電力量計ユニット12に内蔵されたサージ防護素子24,25の制限電圧よりも低く設定することにより、サージ防護素子24,25によるサージ吸収よりも低い電圧でサージ防護素子30により雷サージを吸収することができるため、電源側端子部15S,16Sから侵入する雷サージが通信端局ユニット11、電力量計ユニット12および直結ユニット13に達することを確実に回避することができる。
【0034】
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0035】
11 通信端局ユニット
12 電力量計ユニット
13 直結ユニット
14 筐体
15S,16S 電源側端子部
15L,16L 負荷側端子部
17 端子ブロック
26 接地金具
27 空洞部
28 サージ防護手段(放電ギャップ)
30 サージ防護手段(サージ防護素子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力量計ユニットを含む複数のユニットが筐体の上部に組み付けられると共に、電線が接続される電源側端子部および負荷側端子部を有する端子ブロックが前記筐体の下部に取り付けられた電子式電力量計において、前記電源側端子部から侵入するサージを吸収するサージ防護手段を前記端子ブロックに設けたことを特徴とする電子式電力量計。
【請求項2】
前記サージ防護手段は、前記電源側端子部に空洞部を介して並設された接地金具と前記電源側端子部との間に形成された放電ギャップとした請求項1に記載の電子式電力量計。
【請求項3】
前記放電ギャップは、前記電力量計ユニットを含む複数のユニットに設けられたサージ防護素子よりも低い放電開始電圧に設定されている請求項2に記載の電子式電力量計。
【請求項4】
前記サージ防護手段は、前記端子ブロックに並設された複数の電源側端子部間に接続されたサージ防護素子とした請求項1に記載の電子式電力量計。
【請求項5】
前記サージ防護素子は、前記電力量計ユニットを含む複数のユニットに設けられたサージ防護素子よりも低い制限電圧に設定されている請求項4に記載の電子式電力量計。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−43347(P2011−43347A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−190023(P2009−190023)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【出願人】(000164438)九州電力株式会社 (245)
【出願人】(000222037)東北電力株式会社 (228)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)