説明

電子情報処理装置及びプログラム

【課題】 本体表示器において随時に表示更新される画面を遅滞なく外部表示器にも反映させる。
【解決手段】 本体固定に備え付けられた本体表示装置及び本体とは独立して構成されてなる外部表示装置とに同じ画面を表示する際に、本体表示装置に表示する文字・図形等のイメージを外部表示装置に表示する文字・図形等のイメージの描画品質に比較して低い描画品質で描画する。すなわち、同じ画面の表示に関し、本体表示装置において文字・図形等のイメージを低い描画品質で描画した画面を表示させ、外部表示装置において文字・図形等のイメージを前記低い描画品質よりもよい品質で描画した画面を表示させる。これによると、本体表示装置にも低品質であるが画面の表示がなされる一方で、外部表示装置には文字・図形等のイメージが滑らかに遷移してギクシャクした動きにはならないように画面の表示がなされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、本体表示器に表示する画面と同じ画面を同じタイミングに従って外部表示器にも表示し得る電子情報処理装置及びプログラムに関する。特に、本体表示器において随時に表示更新される画面を遅滞なく外部表示器にも反映させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
最近では、スレート型のパーソナルコンピュータ(タブレット端末などとも呼ばれる)やスマートフォンなどといったタッチ操作可能なタッチパネル式ディスプレイ(本体表示器と呼ぶ)を有する電子情報処理装置に、例えば所定の音楽機能を実現する音楽アプリケーションプログラム(ソフトウェアプログラム)をインストールし、該プログラムを動作させることにより当該装置をユーザ演奏及び/又は自動演奏可能な電子楽器などとして楽しむことのできるようになっている。また、こうした電子情報処理装置(便宜的に本体装置と呼ぶ)の中には必要に応じて本体とは独立して構成されてなる外部表示器を接続可能なものがあり、本体に固定的に備え付けられた本体表示器に表示した画面と同じ画面を反映させるために、前記外部表示器に対しても表示出力することのできるようになっている。こうしたものの一例を挙げると、例えば下記に示す特許文献1に記載の技術がある。
【0003】
特許文献1は電子楽器に関する技術であるが、当該電子楽器は本体ディスプレイ用のVRAMと外部ディスプレイ用のVRAMとを備えており、本電子楽器で処理実行中の例えば自動演奏の進行にあわせて前記各VRAMに同じ画像(文字・図形等のイメージ)あるいは異なる画像を書き込むことにより、本体表示器に表示した画面と同じ画面又は本体表示器に表示した画面とは異なる画面を外部表示器にも表示させるようにしている。すなわち、自動演奏と描画とが並列処理されることによって、本体表示器及び外部表示器において例えば同じ歌詞表示画面や楽譜表示画面などが自動演奏にあわせて随時に更新されながらつまり同じタイミングに従って表示されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-258838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1に記載されたような従来技術において、複数の処理の並列処理に伴う本体装置に係る処理負荷が軽い場合には、自動演奏処理に並列して行われる本体表示器及び外部表示器に対する描画処理(前記各VRAMへの画像データの書き込み処理)に遅延が生じないことから、本体表示器及び外部表示器に表示した画面には何らの影響もない。一方、本体装置に係る処理負荷が重い場合には、描画処理に遅延が生じてしまい本体表示器及び外部表示器に表示した画面に悪影響が生じる。例えば、画面を構成する文字・図形等のイメージが滑らかに遷移せずにギクシャクした動きになるといった悪影響が生じ得る。特に、スレート型のパーソナルコンピュータのような汎用の電子情報処理装置では、1つの本体装置内で多数の処理をソフトウェア処理にて並列処理することで各機能を動作させるようになっており、特にタッチ操作を伴う場合にはただでさえ本体装置に係る処理負荷は重くなる。そうした場合に、さらに本体表示器及び外部表示器への描画に係る処理負荷が重くなってしまうと、並列処理されている他の処理に時間的な遅れが生じてしまう恐れが大きくなる。例えば、自動演奏などのようなソフトウェア音源にて楽音信号を形成する処理が時間的に遅れると、楽音がとぎれとぎれに発音されることになりユーザにとって非常に聴き難くなる。
【0006】
そこで、並列処理されている他の処理に遅れが生じることを避けるための方策として、例えば本体表示器又は外部表示器どちらか一方の表示更新を一時的に停止することによって、描画処理よりも自動演奏などの他の処理を優先させることが考えられる。しかし、そもそも外部表示器を用いる目的が本体装置を操作するユーザ以外の多くの人達にもユーザが見ているのと同じ画面を見てもらいたいという要望にあることから、外部表示器の表示更新を一時停止する選択は採りえない。
【0007】
かといって、本体表示器の表示更新を一時停止してしまうと、本体装置を操作するユーザの本体表示器へのタッチ操作に応じての表示更新がなされなくなるので、ユーザは次の操作を行うのに本体表示器のどの位置をタッチすればよいのかを本体表示器に表示されている画面から判断することができず、次の操作を効率的に行うことが困難になる、という不都合が生ずる。この不都合は、ユーザによるタッチ操作に応じて表示が更新される場合に限らず、例えば本体装置で実行される自動演奏の進行にあわせて表示が更新されるあるいは外部の他の装置から受信した情報に基づき表示が更新され、ユーザはそれらの表示更新がどのように行われたのかを表示された画面から確認しながら操作等を進めるような場合にも当てはまる。
【0008】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、描画以外の他の処理を優先させたうえで本体表示器において随時に更新される画面を外部表示器にも遅滞なく反映させることのできるようにした、電子情報処理装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電子情報処理装置は、本体とは独立して設けられてなる外部表示装置を接続可能な電子情報処理装置であって、本体に設けられてなる本体表示装置と、指定された文字・図形等のイメージから構成されてなる同じ画面を同じタイミングに従って表示するように、前記本体表示装置と前記外部表示装置それぞれに画面を表示させる表示制御手段と、前記本体表示装置及び前記外部表示装置に同じ画面を表示する場合に、前記本体表示装置に表示する文字・図形等のイメージを、前記外部表示装置に表示する文字・図形等のイメージの描画品質に比較して低い描画品質で描画するように前記表示制御手段を制御する描画制御手段とを備える。
【0010】
本発明によると、本体に設けられてなる本体表示装置及び本体とは独立して設けられてなる外部表示装置に同じ画面を表示する際に、本体表示装置に表示する文字・図形等のイメージを外部表示装置に表示する文字・図形等のイメージの描画品質に比較して低い描画品質で描画する。すなわち、同じ画面の表示に関し、本体表示装置において文字・図形等のイメージを低い描画品質で描画した画面を表示させる一方で、外部表示装置において文字・図形等のイメージを前記低い描画品質よりもよい品質で描画した画面を表示させるようにした。このようにすると、外部表示装置での画面表示を本体表示装置での画面表示に優先させるような場合に、本体表示装置にも低品質であるが画面の表示がなされる一方で、外部表示装置には文字・図形等のイメージが滑らかに遷移してギクシャクした動きにはならないように画面の表示がなされる。したがって、ユーザはユーザ以外の多くの人達にもユーザが見ているのと同じ画面を外部表示装置によって見てもらいながら、かつユーザは本体表示装置に表示された画面を確認しながらの操作を行うことができるようになる。さらに、並列処理されている他の処理に時間的な遅れを生じさせることがない。
【0011】
本発明は装置の発明として構成し実施することができるのみならず、方法の発明として構成し実施することができる。また、本発明は、コンピュータまたはDSP等のプロセッサのプログラムの形態で実施することができるし、そのようなプログラムを記憶した記憶媒体の形態で実施することもできる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、本体表示装置において文字・図形等のイメージを外部表示装置に表示するよりも低い描画品質で描画してなる画面を表示させるようにしたことから、少なくとも外部表示装置に対しては随時に更新される画面を遅滞なく反映させることができ、もってユーザはユーザ以外の多くの人達にもユーザが見ているのと同じ画面を外部表示装置によって見てもらいながら、かつユーザは手元にある本体表示装置に表示された画面を確認しながらの操作を行うことができるようになる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る電子情報処理装置の全体構成の一実施例を示すハード構成ブロック図である。
【図2】本体表示器及び外部表示器に表示される画面の表示例を示す概念図である。
【図3】タッチ操作処理の一実施例を示すフローチャートである。
【図4】描画品質について説明するための概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に従って詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明に係る電子情報処理装置の全体構成の一実施例を示すハード構成ブロック図である。ここに示す電子情報処理装置(本体装置とも言う)はコンピュータを用いて構成されてなり、前記コンピュータが所定の音楽機能を実現するプログラム(例えば後述する「タッチ操作処理」プログラム)を実行することに基づき、ユーザによる本体表示器7Aへのタッチ操作に応じて本体表示器7A及び外部表示器5Aの表示更新を伴う描画処理と並列して自動演奏やその他の処理を実施する、例えば電子楽器、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、スマートフォン等の電子機器である。
【0016】
図1に示す電子情報処理装置は、マイクロプロセッサユニット(CPU)1、リードオンリメモリ(ROM)2、ランダムアクセスメモリ(RAM)3からなるマイクロコンピュータによって制御される。CPU1は、この装置全体の動作を制御するものである。このCPU1に対して、データ及びアドレスバス1Dを介してROM2、RAM3、検出回路4、外部表示器用表示回路5、タッチ検出回路6、本体表示器用表示回路7、音源/効果回路8、記憶装置9、通信インタフェース(I/F)10がそれぞれ接続されている。
【0017】
ROM2は、CPU1により実行される各種プログラム(例えば、後述の「タッチ操作処理」プログラムなど)や各種データを格納するものである。RAM3は、CPU1が所定のプログラムを実行する際に発生する各種データを一時的に記憶するワーキングメモリとして、あるいは現在実行中のプログラムやそれに関連するデータを記憶するメモリ等として使用される。RAM3の所定のアドレス領域がそれぞれの機能に割り当てられ、レジスタやフラグ、テーブル、メモリなどとして利用される。
【0018】
設定操作子(スイッチ)4Aは、当該装置本体上に物理的に配置される物理操作子である。例えば、物理操作子として電源オン/オフスイッチや音量調整スイッチなどが相当する。勿論、設定操作子4Aは上記した以外にも数値データ入力用のテンキーや文字データ入力用のキーボードなどを含んでいてよい。
【0019】
外部表示器5Aは例えば液晶表示パネル(LCD)やCRT等から構成される当該装置本体とは独立してなるディスプレイであり、当該装置本体にケーブル等を必要とする有線接続あるいはケーブル等を必要としない無線接続により接続される。本体と接続されることにより、本体からの外部出力に従って本体表示器7Aと同じ画面を表示することができるようになっている。なお、外部表示器5Aは本体表示器7Aと異なりタッチパネル式でなくてよい。また、当該装置本体からの画面の外部出力に従って本体表示器7Aと同じ画面(描画品質は異なってよい)が表示可能であればどのような機器であってもよく、例えばプロジェクタなどの表示装置であってもよい。
【0020】
外部表示器用表示回路5は外部表示器5Aを表示制御するものであって、本体表示器7Aに表示されるのと同じ画面(描画品質は異なってよい)を生成して外部表示器5Aに表示させる。すなわち、ここに示す電子情報処理装置は、本体装置に備えられた本体表示器7Aに表示された画面を外部表示器5Aにも同時に映し出すことで、本体装置を操作するユーザが他の大勢の人達にも同じ画面を共有して楽しんでもらうといった用途を想定した構成となっている。外部表示器用表示回路5は描画データを記憶するVRAMを含んでなり、当該VRAMには本装置(具体的にはCPU1、以下同じ)に係る処理負荷の軽い/重いに関わらず常に高い品質での画面描画を実現する描画データが書き込まれる(詳しくは後述する)。描画データは、例えば画面を構成する文字・図形等のイメージの指定情報や画面上における各イメージの配置の位置情報などを含む。
【0021】
装置本体に備えられた本体表示器7Aは、ユーザタッチ操作を検出(認識)する検知機能を有してなるタッチパネル式のディスプレイであって、例えば液晶(LCD)や有機ELあるいは電子ペーパーなどの表示素子と、静電容量方式や抵抗膜方式などのタッチセンサとを備える。これら表示素子やタッチセンサの方式はここに示したものに限らず、公知のどのようなものであってもよい。タッチ検出回路6は前記タッチセンサによる本体表示器7Aへのユーザタッチ操作の検出に応じて、該タッチ操作された本体表示器7A上の任意の操作位置を特定する検知信号を生成し、これをデータ及びアドレスバス1Dを介してCPU1に出力する。
【0022】
本体表示器用表示回路7は本体表示器7Aを表示制御するものであって、本体表示器7Aに例えば自動演奏の進行にあわせて自動的に更新される画面やユーザタッチ操作に応じて更新される画面などを生成して本体表示器7Aに表示させる。本体表示器用表示回路7は描画データを記憶するVRAMを含んでなり、当該VRAMには本装置に係る処理負荷の軽い場合に外部表示器5Aと同じ高い品質での表示を実現する描画データが書き込まれる一方で、本装置に係る処理負荷の重い場合に外部表示器5Aよりも低い品質での表示を実現する描画データが書き込まれるようになっている(詳しくは後述する)。なお、ROM2や記憶装置9等に記憶される各種プログラムや各種データあるいはCPU1の制御状態などを本体表示器7Aに表示できるようになっていてよい。
【0023】
音源/効果回路8は複数のチャンネルで楽音信号の同時発生が可能であり、データ及びアドレスバス1Dを経由して与えられた演奏情報(例えば、後述の「タッチ操作処理」プログラムの実行に伴って生成されるMIDIデータや外部装置から受信したMIDIデータなど)を入力し、これらの演奏情報に基づいて楽音信号を発生する。さらには、該発生した楽音信号に対して適宜に各種の音響効果を付与する。音源/効果回路8から発生された楽音信号は、アンプやスピーカなどを含むサウンドシステム8Aから発音される。この音源/効果回路8とサウンドシステム8Aの構成には、従来のいかなる構成を用いてもよい。例えば、音源/効果回路8はFM、PCM、物理モデル、フォルマント合成等の各種楽音合成方式のいずれを採用してもよく、CPU1によるソフトウェア処理で構成してもよいし、また専用のハードウェアで構成してもよい。
【0024】
記憶装置9は、CPU1が実行する各種制御プログラムや楽音制御パラメータなどの各種データを記憶する。上述したROM2に制御プログラムが記憶されていない場合、この記憶装置9(例えばハードディスク)に制御プログラムを記憶させておき、それをRAM3に読み込むことにより、ROM2に制御プログラムを記憶している場合と同様の動作をCPU1に実行させることができる。このようにすると、制御プログラムの追加やバージョンアップ等が容易に行える。なお、記憶装置9はハードディスク(HD)に限られず、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD‐ROM・CD‐RAM)、光磁気ディスク(MO)、あるいはDVD(Digital Versatile Disk)等の様々な形態の可搬記憶媒体を利用した記憶装置であってもよい。あるいは、フラッシュメモリなどの半導体メモリであってもよい。
【0025】
通信インタフェース(I/F)10は、例えばLANやインターネット、電話回線等の有線あるいは無線の通信ネットワークに接続されており、該通信ネットワークを介して図示を省略したサーバコンピュータ等と接続され、当該サーバから制御プログラムあるいは各種データなどを本電子機器側に取り込むためのインタフェースである。すなわち、ROM2や記憶装置9等に制御プログラムや各種データが記憶されていない場合に、サーバから制御プログラムや各種データをダウンロードするために用いられる。通信インタフェース10は、有線又は無線の近距離通信インタフェースでもよく、外部の他の電子楽器などと演奏情報の送受信をするものであってもよい。こうした通信インタフェース10は、有線あるいは無線のものいずれかでなく双方を具えていてよい。
【0026】
なお、本発明に係る電子情報処理装置として、本実施形態では音源/効果回路8及びサウンドシステム8Aを有してなる電子機器を例に示したがこれに限らず、これらを有しない電子機器であってもよい。その場合、後述の「タッチ操作処理」プログラムの実行に伴って生成される演奏情報を通信インタフェース10を介して接続されている外部の電子楽器に送信し、該外部の電子楽器において前記送信した演奏情報に基づく楽音の発音を行わせるようにするとよい。
【0027】
図1に示す電子情報処理装置においては、上述したように本体表示器7Aに表示した画面を同時に外部表示器5Aにも表示することのできるようにしている。ここで、本体表示器7A及び外部表示器5Aに表示する画面の一例を図2に示す。図2に示した画面の表示例は、「TENORI-ON(商標)」(ヤマハ株式会社)実機を模したものである。
【0028】
「TENORI-ON(商標)」はユーザに音楽の知識がなくても視覚的・直感的に作曲/演奏することのできるように、操作方法および発音/表示のしかたが異なる複数種類の演奏モードが予め用意されており、ユーザがこれら複数の演奏モードを同時に駆使して音を重ね合わせて鳴らすことによって豊かな音楽表現の演奏を行うことを可能とした楽器である。本実施形態においては実機と同様の動作をソフトウェア処理により実現する。ここに示す画面の表示例は、実機において複数行・複数列のマトリックス状に配置されてなるLEDボタンを模した多数のLED表示Bと、設定操作子を模した複数のボタン表示Cと、文字/数字表示部Dとに大きく分けられる。前記多数のLED表示B及び前記複数のボタン表示Cとは、個々のLED表示Bやボタン表示C毎に対応した多数の文字・図形等のイメージの描画によって実現されてもよいし、多数のLED表示B全体や複数のボタン表示C全体をまとめた1つの文字・図形等のイメージの描画によって実現されてもよい。
【0029】
多数のLED表示Bは、演奏モードにより決まる所定の表示態様で点灯(発光)表示されるようにして描画される。LED表示Bの表示態様の例をいくつか挙げると、例えば任意のLED表示Baを短い時間だけ押してすぐに離すタッチ操作が行われた場合には、前記操作されたLED表示Baに割り当て済みの楽音が発音されると同時に、タッチ操作されたLED表示Baを中心にして光が周囲に広がっていくように同心円状の位置にある複数のLED表示Bを順々に点灯表示する(矢印Z参照)。
【0030】
また、任意のLED表示Bbを長押ししてから離すタッチ操作が行われた場合には、そのLED表示Bbを点灯表示する。その際に、当該位置は自動的に発音を繰り返す発音ポイントに設定される。なお、発音ポイントに設定されたLED表示Bbをもう一度長押しすると、そのLED表示Bbを消灯表示して発音ポイントが解除される。発音ポイントの設定がなされると、図中において左端から右端への水平方向(矢印X参照)の移動を繰り返すように、水平方向にLED表示Bc(ループインジケーターと呼ばれる)を順に1つずつ点灯表示することを開始する。この移動するLED表示Bcが発音ポイントに設定された前記点灯中のLED表示Bbと重なると、当該LED表示Bbに割り当て済みの楽音が発音される。
【0031】
さらに、あたかもボールが落下して底にぶつかるたびに元の位置までバウンドすることを繰り返すかの如くに、タッチ操作された最初のLED表示Bdの位置から垂直方向にLED表示Bを順に1つずつ点灯表示する(矢印Y参照)。この場合には、最底辺に位置するLED表示Bが点灯表示されたときに前記LED表示Bdに割り当て済みの楽音が発音される。なお、上記した以外にも多様な表示態様があってよいことは言うまでもない。
【0032】
マトリックス状に配置された多数のLED表示Bの下方には、複数(ここでは10個)のボタン表示Cが表示される。このボタン表示Cは、さまざまな効果を演奏に加える設定を行うための仮想操作子である。例えば、図左側に配置された「L1」〜「L5」の各操作子Cは順に「音色を切り替える」、「発音の長さを変える」、「オクターブを変える」、「ループポイントを変える」、「ループスピードを変える」などの機能を有し、図右側に配置された「R1」〜「R5」の各操作子Cは順に「レイヤーを切り替える」、「テンポを変える」、「トランスポーズを変える」、「各レイヤーの音量を変える」、「ブロックを切り替える」などの機能を有する。ユーザはこれらのボタン表示Cのいずれか1つに触れながら任意のLED表示Bをタッチすることで、さまざまな効果を演奏に加える設定を選択的に行うことができるようになっている。
【0033】
文字/数字表示部Dは、例えば自動演奏中の曲の歌詞や楽譜あるいは選択された演奏モードや設定されている楽音制御パラメータの設定値等を表示する。なお、外部表示器5Aに表示する画面は、図2に示す表示例のうちボタン表示Cや文字/数字表示部Dの表示を省略した画面であってもよい。すなわち、本体表示器7Aに適宜に更新されながら表示される画面の一部と同じであればよい。
【0034】
次に、ユーザタッチ操作に応じて本体表示器7Aに表示する画面と外部表示器5Aに表示する画面とを同時に表示更新すると共に楽音を発音する、「タッチ操作処理」プログラムについて図3を用いて説明する。図3は、タッチ操作処理の一実施例を示すフローチャートである。この「タッチ操作処理」はCPU1によって制御される処理であって、ユーザによる当該プログラムの実行指示に応じて開始される。
【0035】
ステップS1は、初期化処理を行う。初期化処理としては、本体表示器用回路7及び外部表示器用回路5のクリア(描画データの削除)に伴う表示の初期化、本体表示器用表示回路7及び外部表示器用表示回路5への画面の描画品質を共に高品質に設定するなどの処理がある。ステップS2は、装置本体に外部表示器5Aが接続されたか否かを判定する。外部表示器5Aが接続されたと判定した場合には(ステップS2のYES)、本体表示器用表示回路7への描画品質を低品質とする(ステップS3)。また、外部表示器用表示回路5への描画をオンにする(ステップS4)。
【0036】
本体表示器7Aと同じ画面を表示する表示制御対象となる外部表示器5Aがあると、描画に関して本体表示器7Aだけを表示制御する場合に比べて本体装置に係る処理負荷は増す。そうすると、描画に優先されるべき後述の自動演奏処理やその他の処理(ステップS16〜S18参照)に遅れが生じる恐れがある。それらの処理遅れは避けなければならないが、その一方で本体表示器7A及び外部表示器5Aには画面を遅滞なく表示させたいという要望もある。そこで、本実施形態では、描画以外の他の処理を優先させたうえで本体表示器7Aにおいて随時に更新される画面を外部表示器5Aにも遅滞なく反映させるために、本体表示器用表示回路7への描画品質を低品質に設定する。この設定に従って、低品質な表示を実現するために、文字・図形等のイメージを低い描画品質で描画するべくソフトウェアによる表示アルゴリズムを変更制御するようにしている。
【0037】
外部表示器5Aが接続されていないと判定した場合には(ステップS2のNO)、ステップS5の処理へジャンプする。この場合、本体表示器7Aと同じ画面を表示する外部表示器5Aがなく本体表示器7Aだけを表示制御すればよいので、描画に関して本体装置に係る処理負荷が増すことがない。そうであるならば、描画に優先される後述の自動演奏処理やその他の処理に遅れが生じる恐れがないので、上記のようにして本体表示器用表示回路7への描画品質を低品質に設定する必要はない。
【0038】
ステップS5は、本体装置から外部表示器5Aの接続が解除されたか否かを判定する。外部表示器5Aの接続が解除されていないと判定した場合には(ステップS5のNO)、ステップS8の処理へジャンプする。この場合は、本体表示器7Aと同じ画面を表示する外部表示器5Aがあり、描画に関して本体装置に係る処理負荷は増すので、本体表示器用表示回路7への描画品質を低品質の設定のままで維持する。一方、外部表示器5Aの接続が解除されたと判定した場合には(ステップS5のYES)、本体表示器用表示回路7への描画品質を高品質とする(ステップS6)。また、外部表示器用表示回路5への描画をオフにする(ステップS7)。すなわち、外部表示器5Aの接続が解除された場合には、描画に優先される後述の自動演奏処理やその他の処理に遅れが生じる恐れがなく、本体表示器用表示回路7への描画品質を低品質の設定のままで維持する必要がないので、本体表示器用表示回路7への描画品質を高品質に戻す。
なお、本体装置への外部表示器5Aの接続有無は、本体装置が自動的に検出してもよいし、接続された旨や解除された旨をユーザからの指示操作により検出してもよい。
【0039】
ステップS8は、本体表示器7Aへのユーザによるタッチ操作がなされたか否かを判定する。タッチ操作がなされていないと判定した場合には(ステップS8のNO)、ステップS16の処理へジャンプする。タッチ操作がなされたと判定した場合には(ステップS8のYES)、当該タッチ操作が本体表示器7Aの表示のうちLED表示B(図2参照)上で行われたか否かを判定する(ステップS9)。LED表示B上で行われたタッチ操作であると判定された場合には(ステップS9のYES)、本体装置に係る処理負荷に応じて変わり得る描画品質(高品質又は低品質のいずれか)の設定にて本体表示器用表示回路7へのLED表示Bの描画を更新する(ステップS10)。また、外部表示器用表示回路5への描画がオンであるならば、本体装置に係る処理負荷に応じては変わることのない高品質の設定にて外部表示器用表示回路5へのLED表示Bの描画を更新する(ステップS11)。これにより、ユーザタッチ操作に応じて本体表示器7Aにおいて随時に更新される表示を遅滞なく外部表示器5Aにも反映させる。ステップS12は、既に図2で説明したようなLED表示Bの点灯に対応する発音処理を実行する。
【0040】
他方、上記ステップS9において、本体表示器7Aへのユーザによるタッチ操作がLED表示B上で行われたタッチ操作でないと判定された場合には(ステップS9のNO)、当該タッチ操作が仮想操作子C上で行われたタッチ操作であるか否かを判定する(ステップS13)。仮想操作子C上で行われたタッチ操作でないと判定した場合には(ステップS13のNO)、ステップS16の処理へジャンプする。仮想操作子C上で行われたタッチ操作であると判定された場合には(ステップS13のYES)、本体表示器用表示回路7へのタッチ操作された仮想操作子表示Cの描画を更新する(ステップS14)。また、タッチ操作された仮想操作子表示Cに対応したパラメータなどの設定を行う(ステップS15)。
【0041】
ステップS16は、自動演奏処理を実行する。ステップS17は、外部装置からの演奏情報等の送信があれば当該データを受信する処理を実行する。ステップS17は、前記外部装置から受信した演奏情報に基づく楽音の発音制御などのその他の処理を実行する(ステップS18)。これらの処理は、本体表示器7A及び外部表示器5Aへの描画処理に優先して実行される処理である。ステップS19は、当該タッチ操作処理の停止指示がなされたか否かを判定する。この処理停止指示は、当該タッチ操作処理プログラムの実行が停止された場合に限らず、本体装置が強制的に電源オフされた場合にもなされる。処理停止指示がなされていないと判定した場合には(ステップS19のNO)、ステップS2の処理に戻ってステップS2〜S19までの処理を繰り返す。処理停止指示がなされたと判定した場合には(ステップS19のYES)、本タッチ操作処理を終了する。
【0042】
上述したように、本実施形態においては、本体装置における処理負荷(上記例では接続された外部表示器5Aへの描画処理に係る負荷)に従い本体表示器7Aの描画品質を調整することで、描画以外の他の処理(ここでは自動演奏処理など)を優先させたうえで随時に表示更新される画面を本体表示器7A及び外部表示器5Aに遅滞なく反映させることのできるようにしている。ここで、本体表示器7Aの描画品質の調整方法(高品質又は低品質)について図4を用いて説明する。以下に示す描画品質の調整方法は、1乃至複数が組み合わされて採用されてよい。
【0043】
第1の調整方法としては、例えば図4(a)に示すように表示更新頻度を変えることが挙げられる。高品質な表示を行いたい場合には描画フレームGの1秒間あたりの表示更新頻度を例えば60回(60個のイメージを使用する)とする一方で、低品質な表示を行いたい場合には前記描画フレームGの1秒間あたりの表示更新頻度を例えば数回程度(数個のイメージを使用する)とする。これによれば、水平方向や垂直方向に移動させるようにしてLED表示Bを移動させる表示を行う際に、高品質の場合には隣り合うLED表示Bが連続的に点灯しているように表示される一方で、低品質の場合には例えば1つ乃至複数飛ばしにLED表示Bが点灯しているように表示される。
【0044】
第2の調整方法としては、例えば図4(b)に示すように例えば個々のLED表示B(文字・図形等のイメージ)を3Dの表示パーツPを用いて表示しているような場合に、それらの表示パーツPのポリゴン数を変えることが挙げられる。例えば、高品質な表示を行いたい場合には多数の多角形(例えば三角形や四角形)の組み合わせからなる球体状の3Dの表示パーツPを表示する一方で、低品質な表示を行いたい場合には組み合わせる多角形の数を減じた球体状の3Dの表示パーツあるいは1枚の円状の表示パーツP´(この場合、表示は2D)を表示する。表示パーツPのポリゴン数の少ない方が多い場合に比べて座標計算等の描画に係る処理負荷や描画用のデータ量を低減させることができるが、表示される画像は全体的に粗い感じの大雑把なものとなる。
【0045】
第3の調整方法としては、例えば図4(c)に示すように模様等を施してなる複雑な表示形態のオリジナルの画像パーツO(ビットマップデータ)を、オリジナル画像パーツOに比べると表示形態が簡易である汎用の(当該本体装置の基本性能としてあらかじめ備わっている)画像パーツHに置換することが挙げられる。高品質な表示を行いたい場合には例えば段階的なグラデーションにより凝った模様を有する(解像度の高い)オリジナル画像パーツOを用いる一方で、低品質な表示を行いたい場合には例えばグラデーション等の模様のないのっぺりとしたシンプルな模様の(解像度の低い)汎用描画パーツHを用いる。オリジナル描画パーツOを用いる方が表示される画像が詳細なものとなるが、オリジナル描画パーツOの描画には例えば濃淡の諧調とそれぞれの表示位置とからなるデータをもとに計算を行わなければならないこと、生成された画像のアクセスや読み込みに時間がかかることなどから描画に係る処理負荷がどうしても大きくなる。
【0046】
このように、文字・図形等のイメージを描画する際のフレームレートを低くする、文字・図形等のイメージのポリゴン数を減らす、文字・図形等のイメージを複雑な表示形態からなる表示パーツ(表示部品)を用いずに簡易な表示形態からなる汎用の表示パーツに差し替えて描画する、といったソフトウェア処理をCPU1に実行させることで、外部表示器5Aに表示する画面よりも低品質な文字・図形等のイメージから構成されてなる画面を本体表示器7Aに表示させることができ、これにより本体装置に係る処理負荷を減少させることができる。
【0047】
以上のように、本発明に係る電子情報処理装置においては、本体表示器7Aと外部表示器5Aとに同じ画面を同じタイミングで表示する際に、本体表示器7Aに表示する画面を構成する文字・図形等のイメージを外部表示器5Aに表示する画面を構成する文字・図形等のイメージの描画品質に比較して低い描画品質で描画するようにした。このようにすると、外部表示器5Aでの画面表示を本体表示器7Aでの画面表示に優先させるような場合であっても、本体表示器5Aにも低品質であるが画面の表示がなされる。また、本体表示器7A及び外部表示器5Aに表示される画面を構成する文字・図形等のイメージは滑らかに遷移してギクシャクした動きにはならない。したがって、ユーザはユーザ以外の多くの人達にもユーザが見ているのと同じ画面を外部表示器5Aによって見てもらいながら、かつユーザは本体表示器7Aに表示された画面を確認しながらのユーザタッチ操作等を行うことができるようになる。さらに、並列処理されている自動演奏処理などの他の処理に時間的な遅れを生じさせることもない。
【0048】
以上、図面に基づいて実施形態の一例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、様々な実施形態が可能であることは言うまでもない。例えば、本体表示器7A及び外部表示器5Aにユーザタッチ操作に基づく画面を随時に表示する処理は、例示したようなマトリックスシーケンサタイプの楽音生成処理に伴うものに限らない。その他の楽音生成処理でもよいし、また楽音生成に関係ない処理、例えばゲーム、メディアアート、プレゼンテーションなどに関する各種処理であってもよい。
なお、外部表示器5Aを接続したままの状態で、当該外部表示器5Aへの表示をするかしないかを設定することのできるようにしてもよい。そうした場合、上記した実施例における外部表示器5Aの装置本体への接続/接続解除に従って本体表示器7Aへの描画品質を低品質又は高品質に設定することに代えて(ステップS2〜S7参照)、外部表示器5Aへの表示をする/しないの設定切り替えに従って本体表示器7Aへの描画品質を低品質又は高品質に設定するようにしてよい。
【0049】
なお、上述のタッチ操作処理プログラムはコンピュータソフトウェアの形態に限らず、DSP(ディジタル・シグナル・プロセッサ)によって処理されるマイクロプログラムの形態でも実施可能であり、またこの種のプログラムの形態に限らず、ディスクリート回路又は集積回路若しくは大規模集積回路等を含んで構成された専用のハードウェア装置の形態で実施してもよい。
【符号の説明】
【0050】
1…CPU、2…ROM、3…RAM、4…検出回路、4A…設定操作子、5…外部表示器用表示回路、5A…外部表示器、6…タッチ検出器、7…本体表示器用表示回路、7A…本体表示器、8…音源/効果回路、8A…サウンドシステム、9…記憶装置、10…通信インタフェース、1D…データ及びアドレスバス、B…LED表示、C…仮想操作子、D…文字/数字表示部、G…描画フレーム、P(P´)…表示パーツ、H…汎用画像パーツ、O…オリジナル画像パーツ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体とは独立して設けられてなる外部表示装置を接続可能な電子情報処理装置であって、
本体に設けられてなる本体表示装置と、
指定された文字・図形等のイメージから構成されてなる同じ画面を同じタイミングに従って表示するように、前記本体表示装置と前記外部表示装置それぞれに画面を表示させる表示制御手段と、
前記本体表示装置及び前記外部表示装置に同じ画面を表示する場合に、前記本体表示装置に表示する文字・図形等のイメージを、前記外部表示装置に表示する文字・図形等のイメージの描画品質に比較して低い描画品質で描画するように前記表示制御手段を制御する描画制御手段と
を備える電子情報処理装置。
【請求項2】
前記描画制御手段は、前記指定された文字・図形等のイメージを描画する際のフレームレートを低くする、前記指定された文字・図形等のイメージのポリゴン数を減らす、前記指定された文字・図形等のイメージを複雑な表示形態からなる表示部品を用いずに簡易な表示形態からなる表示部品に差し替えて描画する、の各制御を1又は複数組み合わせて実行させることにより低い描画品質での描画を実現させることを特徴とする請求項1に記載の電子情報処理装置。
【請求項3】
コンピュータに、
指定された文字・図形等のイメージから構成されてなる同じ画面を同じタイミングに従って表示するように、本体に設けられてなる本体表示装置と本体とは独立して設けられてなる外部表示装置それぞれに画面を表示させる手順と、
前記本体表示装置及び前記外部表示装置に同じ画面を表示する場合に、前記本体表示装置に表示する文字・図形等のイメージを、前記外部表示装置に表示する文字・図形等のイメージの描画品質に比較して低い描画品質で描画するように実行させる手順と
を実行させるプログラム。
【請求項4】
コンピュータに、
指定された文字・図形等のイメージから構成されてなる同じ画面を同じタイミングに従って表示するように、本体に設けられてなる本体表示装置と本体とは独立して設けられてなる外部表示装置それぞれに画面を表示させる手順と、
前記本体表示装置及び前記外部表示装置に同じ画面を表示する場合に、前記本体表示装置に表示する文字・図形等のイメージを、前記外部表示装置に表示する文字・図形等のイメージの描画品質に比較して低い描画品質で描画するために、前記指定された文字・図形等のイメージを描画する際のフレームレートを低くする、前記指定された文字・図形等のイメージのポリゴン数を減らす、前記指定された文字・図形等のイメージを複雑な表示形態からなる表示部品を用いずに簡易な表示形態からなる表示部品に差し替えて描画する、の各制御を1又は複数組み合わせて実行させる手順と
を実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−242883(P2012−242883A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109154(P2011−109154)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】