説明

電子方位計および電子方位計の制御方法

【課題】 ステップモータのロータから生じる磁界に起因する磁気センサの出力の狂いを補正して正確な方位計測を行えるとともに、そのために必要な補正データの個数を少なくできる電子方位計および電子方位計の制御方法を提供する。
【解決手段】 ロータの回転を指針へ伝達してこの指針を運針する伝達機構を備えた電子方位計において、伝達機構は、ロータを正転させて指針が順方向に回転した後、当該ロータを逆転させて指針が逆方向の回転を開始するまでに、当該ロータの複数ステップの逆転を必要とする遊びを有し、磁気センサの出力に基づき方位計測が行われる場合に、前記ロータの磁極の向きが所定の向きか否かを判別する極性判別手段(S6)と、極性判別手段により所定の向きでないと判別された場合に、前記ロータを逆転させて当該ロータの極性の向きを所定の向きにする制御手段(S7)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、磁気センサと指針とステップモータとを備えた電子方位計、および、この電子方位計の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以前より、指針をステップモータによって駆動する電子時計に、磁気センサを搭載して方位の計測機能を追加したものが実用化されている。ステップモータは磁化されたロータを有するため、磁気的な影響により磁気センサの出力に狂いを生じさせる。さらに、ロータの向きによって、ロータから磁気センサに及ぼされる磁界の向きや大きさも変化する。
【0003】
そこで、従来の方位の計測機能を有する電子時計においては、特許文献1に示されるように、方位計測の際に、ステップモータのロータの極性の向きを判別し、この極性の向きに応じて計測値を補正する処理が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−170664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
磁気センサの出力に対してステップモータのロータの向きに応じた補正を行うには、工場出荷前のデータ設定工程の際、或いは、ユーザによる較正処理の際に、ロータの磁極の向きを全パターンに変化させて、各パターンで磁気センサの出力の狂いを測定し、それぞれに対応した複数の補正データを算出して、制御データとして記憶させておく必要がある。
【0006】
しかしながら、電子時計に多数のステップモータが搭載されるようになると、上記のように算出して記憶させておく必要のある補正データの数が非常に多くなるという課題が生じる。例えば、2極のステップモータが3個ある場合には、2=8通りの補正データが必要となり、2極のステップモータが5個ある場合には、2=32通りの補正データが必要となる。
【0007】
この発明の目的は、ロータの磁界に起因する磁気センサの出力の狂いを補正して正確な方位計測を行えるとともに、そのために必要な補正データの個数を少なくすることのできる電子方位計および電子方位計の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
磁気センサと、
この磁気センサの出力に基づいて方位情報を表示させる表示制御手段と、
指針と、
ロータを正転及び逆転可能な2極のステップモータと、
前記ロータの回転を前記指針へ伝達してこの指針を運針する伝達機構と、
前記ステップモータを駆動制御して前記ロータを正転に且つ前記指針を順方向に回転させて前記指針により任意の情報を表示させる指針制御手段と、
を備えた電子方位計において、
前記伝達機構は、前記ロータを正転させて前記指針が順方向に回転した後、前記ロータを逆転させて前記指針が逆方向の回転を開始するまでに、前記ロータの複数ステップの逆転を必要とする遊びを有し、
前記磁気センサの出力に基づき方位計測が行われる場合に、前記ロータの磁極の向きが所定の向きか否かを判別する極性判別手段と、
前記極性判別手段により所定の向きでないと判別された場合に、前記ロータを逆転させて前記極性の向きを所定の向きにする極性制御手段と、
を備えていることを特徴としている。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の電子方位計において、
前記ロータの磁極が前記所定の向きのときに前記磁気センサの出力に生じる狂いを補正するための補正データを記憶する補正データ記憶手段と、
前記補正データに基づく補正を行った上で前記磁気センサの出力に基づき方位を算出する方位算出手段と、
を備えたことを特徴としている。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の電子方位計において、
第1指針と、
第1指針を駆動するための第1ステップモータおよび第1伝達機構と、
第2指針と、
第2指針を駆動するための第2ステップモータおよび第2伝達機構と、
を備え、
前記第2伝達機構は前記遊びを有する一方、前記第1伝達機構は前記遊びを有さず、
前記極性制御手段は、前記第2ステップモータに対して前記方位計測が行われる場合にロータの磁極の向きを前記所定の向きにする制御を行い、
前記補正データ記憶手段には、前記第2ステップモータのロータの磁極が前記所定の向きにあり、且つ、前記第1ステップモータのロータの磁極が複数の向きの各々にあるときの複数のパターンにそれぞれ対応する複数の前記補正データが記憶され、
前記方位算出手段は、前記複数の補正データのうち前記第1ステップモータのロータの磁極の向きに対応した補正データに基づいて前記磁気センサの出力を補正して方位を算出することを特徴としている。
【0011】
請求項4記載の発明は、
磁気センサと、指針と、ロータを正転および逆転可能な2極のステップモータと、前記ロータの回転を前記指針へ伝達してこの指針を運針する伝達機構と、前記ステップモータを駆動制御して前記ロータを正転に且つ前記指針を順方向に回転させて前記指針により任意の情報を表示させる指針制御手段とを備え、前記伝達機構は、前記ロータを正転させて前記指針が順方向に回転した後、前記ロータを逆転させて前記指針が逆方向の回転を開始するまでに、前記ロータの複数ステップの逆転を必要とする遊びを有するように構成された電子方位計の制御方法であって、
前記磁気センサの出力に基づき方位計測が行われる場合に、前記ロータの磁極の向きが所定の向きか否かを判別する極性判別ステップと、
前記極性判別ステップで所定の向きでないと判別された場合に、前記ロータを逆転させて前記極性の向きを所定の向きにする極性制御ステップと、
を含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明に従うと、指針の動作に影響を与えることなく、方位計測が行われる場合にステップモータのロータの磁極を所定の向きにしておくことができる。従って、ロータの磁極が逆向きのときの補正データが不要となって、必要な補正データの個数を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態の電子方位計の全体構成を示すブロック図である。
【図2】CPUにより実行される方位計測処理の制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態の電子方位計の全体構成を示すブロック図である。
【0016】
この実施の形態の電子方位計1は、文字板上で複数の指針(秒針2、分針3、時針4)を回転させて時刻を表示する時計機能と、秒針2を用いて特定の方位(例えば北の方位)を指し示す電子方位計の機能とを有するもので、例えば腕装着型の形態に構成されている。この電子方位計1は、図1に示すように、秒針2と、秒針2を1ステップずつ駆動するステップモータ(第1ステップモータ)62と、このステップモータ62に駆動電流を供給するモータ駆動回路63と、ステップモータ62のロータの磁極の向きを記憶する極性記憶回路64と、複数の歯車が連結されてなりステップモータ62の回転運動を伝達して秒針2を回転させる秒針輪列機構65と、時針4および分針3と、時針4および分針3を連動させて1ステップずつ駆動するステップモータ(第2ステップモータ)57と、このステップモータ57に駆動電流を供給するモータ駆動回路58と、ステップモータ57のロータの磁極の向きを記憶する極性記憶回路59と、複数の歯車が連結されてなりステップモータ57の回転運動を伝達して時針4および分針3を連動させて回転させる時分針輪列機構60とを備えている。
【0017】
また、この電子方位計1は、CPU(中央演算処理装置)を内蔵し装置の全体的な制御を行う制御部40と、制御部40のCPUが実行する制御プログラムや制御データが格納されたROM(Read Only Memory)46と、制御部40のCPUに作業用のメモリ空間を提供する作業用記憶手段としてのRAM(Random Access Memory)47と、制御用の設定データが記憶される補正データ記憶手段としてのEEPROM(電気的消去型Programmable ROM)45と、計時用に一定周期の信号を生成する発振回路48および分周回路49と、分周回路49の信号をカウントして計時を行う計時回路50と、各部に電源電圧を供給する電源部51と、外部からの操作指令を入力する操作部52と、磁界の検出を行う磁気センサとしての方位センサ53と、方位センサ53の検出信号を合成して直交する2方向の磁界の大きさを表わす信号を生成する方位検出部54等を備えている。
【0018】
ステップモータ57,62は、2極のステータと、2極のロータとをそれぞれ備えている。ステータに巻回されたコイルに駆動電流を所定の向きに流すことでロータが0°から180°の回転位置まで回転し、このコイルに駆動電流を逆向きに流すことでロータが180°から360°の回転位置まで回転するようになっている。また、ステータのコイルに流す電流の波形によって、ロータの回転方向を正転と逆転とに切り替えることが可能になっている。
【0019】
ロータは、2極に磁化されているため、回転角度が0°のときと180°のときとで、磁極の向きが反転されてロータから周囲に及ぼされる磁界の向きや大きさが変化する。時分針駆動用のステップモータ57のロータの回転角度が0°のときをパターン“01”、この回転角度が180°のときをパターン“02”、秒針駆動用のステップモータ62のロータの回転角度が0°のときをパターン“03”、この回転角度が180°のときをパターン“04”と記す。
【0020】
時分針輪列機構60は、複数の歯車が連結されて構成される。個々の歯車の連結部には僅かな遊び(バックラッシュとも言う)があり、複数の歯車間の遊びが合わさることで、ステップモータ57のロータを正転させて時針4および分針3を順方向(時計回り)に回転させた後、ロータを逆転させて時針4および分針3を逆方向(半時計回り)へ回転開始させるまでに、ロータの複数ステップの回転が必要になっている。すなわち、分針3と時針4とを順方向へ送っている際に、ロータを1ステップ逆転させても、このロータの回転運動は時分針輪列機構60を介して分針3と時針4に伝達されず、分針3と時針4は動かないようになっている。つまり、この時分針輪列機構60が1ステップの逆転を指針まで伝達しない遊びを有する伝達機構(第2伝達機構)を構成する。
【0021】
秒針輪列機構65は、連結されている歯車が比較的に少ないため、輪列機構全体の遊びの量はさほど大きくならず、秒針2を順方向へ送っている際に、ロータを1ステップ逆転させると、このロータの回転運動が秒針輪列機構65を介して秒針2に伝達されて、秒針2が逆方向に移動する。なお、輪列機構の遊び量は、製品の個々の個体毎に僅かな差異があるため、遊びが大きくてロータの1ステップの逆転では秒針2が逆方向に移動しない個体もある。つまり、この秒針輪列機構65が1ステップの逆転を指針まで伝達しない遊びを有さない第1伝達機構を構成する。
【0022】
極性記憶回路59,64は、モータ駆動回路58,63からステップモータ57,62に出力された駆動電流の向きを検出して、この向きを表わす極性データを保持する回路である。この極性データによってステップモータ57,62のロータの磁極の向きを判別することができる。
【0023】
方位センサ53および方位検出部54は、互いに直交するX軸方向とY軸方向との2軸の方向の磁界の大きさを検出することで、磁北の方位を計測可能とするものである。方位センサ53の2軸の方向は、例えばX軸方向が文字板の12時方向と重なり、Y軸方向が文字板の3時方向と重なるように設定され、方位検出部54の出力に基づいて、電子方位計1の文字板上の何れの方向が磁北の向きなのか算出可能になっている。
【0024】
ROM46には、所定周期でモータ駆動回路58,63に制御信号を送ってステップモータ57,62を駆動することで複数の指針2〜4により文字板上で時刻を表示させる時刻表示処理のプログラムが記憶されている。この時刻表示処理においては、分周回路49から1秒周期で出力される1秒信号に基づいて秒針2を1ステップ時計回りに運針するとともに、計時回路50から10秒周期で出力される10秒信号に基づいて分針3と時針4を1ステップ時計回りに運針するようになっている。また、ROM46には、方位の計測を繰り返し行って秒針2により特定の方位を指し示す方位計測処理のプログラムが記憶されている。
【0025】
EEPROM45には、方位センサ53の出力の狂いを補正する補正データとしてのトリミングデータ45aが記憶されている。方位センサ53の出力の狂いには、ステップモータ57,62のロータから及ぼされる磁界に起因するオフセット誤差が含まれている。このオフセット誤差はロータの磁極の向きが変わることで変化する。それゆえ、ステップモータ57,62のロータが何れの向きにあるときにも、方位センサ53の出力の狂いを補正可能にするためには、ロータの全ての向きの組合せにそれぞれ対応する複数のトリミングデータを記憶させておき、ロータの向きの組合せに応じたトリミングデータを使用しなければならない。
【0026】
しかしながら、この実施形態の電子方位計1においては、方位計測の際に時分針駆動用のステップモータ57のロータは必ずパターン“02”の向きになるように制御される。そのため、この実施形態の電子方位計1には、上記トリミングデータ45aとして、時分針駆動用のステップモータ57のロータがパターン“02”の向きで、秒針駆動用のステップモータ62のロータがパターン“03”の向きのときに対応したパターン“03”用のトリミングデータと、時分針駆動用のステップモータ57のロータがパターン“02”の向きで、秒針駆動用のステップモータ62のロータがパターン“04”の向きのときに対応したパターン“04”用のトリミングデータとの、2種類のトリミングデータのみが記憶されている。
【0027】
次に、上記構成の電子方位計1の動作について説明する。
【0028】
図2は、制御部40のCPUが実行する方位計測処理の制御手順を示すフローチャートである。
【0029】
この方位計測処理は、所定の計測時間(例えば20秒間)にわたって1秒毎に方位計測を行って秒針2により北の方位を指し示す処理である。また、この方位計測処理の間も時針4と分針3によって時刻の表示が継続されるように、計時回路50から10秒信号が出力されるごとに時針4と分針3を1ステップずつ進める制御も併せて行われるようになっている。
【0030】
この方位計測処理は、ユーザが操作部52を介して方位計測の開始指令を入力することで開始される。この方位計測処理が開始されると、先ず、ステップS1において、制御部40のCPUは方位計測処理の残り時間を表わす変数tの値を確認して、残り時間(t)がゼロになったか判別する(ステップS1)。そして、ゼロであればこの方位計測処理を終了するが、ゼロでなければ次に進む。
【0031】
次に進むと、制御部40のCPUは、先ず、10秒信号の入力の有無に基づき計時回路50で10秒キャリーが生じたか否かを判別する(ステップS2)。その結果、10秒キャリーが生じていなければ、続いて、1秒信号の入力の有無に基づき分周回路49で1秒キャリーが生じたか否かを判別する(ステップS9)。そして、1秒キャリーも生じていなければ、ステップS1に戻る。
【0032】
つまり、ステップS1,S2,S9のループ処理が繰り返されることで、残り時間が確認されながら、10秒キャリーまたは1秒キャリーが生じるまで待機されるようになっている。そして、10秒キャリーが生じたら、ステップS2の判別処理でループ処理を一旦抜けて、ステップS3〜S8a,S8bの10秒キャリー発生時の処理に移行する。また、1秒キャリーが生じたら、ステップS9の判別処理でループ処理を一旦抜けて、ステップS10〜S16の1秒キャリー発生時の処理に移行するようになっている。
【0033】
10秒信号の入力があって10秒キャリー発生時の処理へ移行したら、先ず、CPUは、時分針駆動用のステップモータ57を正転側に1ステップ駆動し(ステップS3:指針制御手段)、次に、逆転フラグを確認する(ステップS4)。この逆転フラグとは、時分針駆動用のステップモータ57を1ステップ逆転している状態か否かを表わすフラグである。1ステップ逆転している場合、時分針輪列機構60の遊び部分に1ステップ分の隙間が開いた状態にあり、ステップS3の1ステップの駆動ではこの隙間が詰められただけで時分針3,4は1ステップ分進んでいないことになる。そのため、ステップS4で逆転フラグがセットされていると判別された場合には、さらにステップモータ57を正転側に1ステップ駆動して時分針3,4を1ステップ分進める(ステップS5:指針制御手段)。そして、次のステップに進む。
【0034】
一方、ステップS4で逆転フラグがセットされていないと判別されれば、そのまま次のステップに進む。
【0035】
次に進んだら、CPUは、時分針駆動用のステップモータ57のロータがパターン“01”の向きになっているか否か、極性記憶回路59の極性データに基づいて判別する(ステップS6:極性判別手段)。その結果、パターン“01”の向きになっていれば、方位計測の際にパターン“02”の向きになるように、ステップモータ57を逆転側に1ステップ駆動する(ステップS7:極性制御手段)。先に説明したように、時分針輪列機構60の遊びにより、この逆転の駆動で時針4と分針3は移動しない。ロータを逆転させたら、この状態を記憶するために逆転フラグをセットする(ステップS8a)。そして、10秒キャリー発生時の処理を終えて、ステップS9に移行する。
【0036】
一方、ステップS6の判別処理でパターン“02”の向きと判別されたら、この状態を記憶するために逆転フラグをオフにする(ステップS8b)。そして、10秒キャリー発生時の処理を終えて、ステップS9に移行する。
【0037】
ステップS1,S2,S9のループ処理中、1秒信号の入力があって1秒キャリー発生時の処理に移行したら、先ず、CPUは、方位計測処理の残り時間を表わす変数tの値を「1」減算する(ステップS10)。次いで、方位センサ53および方位検出部54に方位計測を行わせてその出力を取り込む(ステップS11)。さらに、極性記憶回路64の極性データに基づいて、秒針駆動用のステップモータ62のロータがパターン“03”の向きになっているか判別する(ステップS12)。
【0038】
ステップS12の判別の結果、ロータがパターン“03”の向きであれば、EEPROM45のトリミングデータ45aのうちパターン“03”用のデータを使用するためにこのデータを読み出す(ステップS13)。一方、ステップS12の判別の結果、ロータがパターン“04”の向きであれば、EEPROM45のトリミングデータ45aのうちパターン“04”用のデータを使用するためにこのデータを読み出す(ステップS14)。そして、ステップS13又はS14で読み出したトリミングデータ45aを用いて方位検出部54の出力を補正して正確な磁北の方位を算出する(ステップS15)。上記のステップS11〜S15の処理により方位算出手段が構成される。
【0039】
つまり、上述のステップS6〜S8a,S8bの処理によって、ステップS11の方位計測時には時分針駆動用のステップモータ57のロータはパターン“02”の向きにされている。そのため、ステップS11の方位計測の補正を行う場合には、秒針駆動用のステップモータ62のロータの向きのみを考慮すれば良いようになっている。
【0040】
補正により正確な方位を算出したら、次に、CPUは、ステップモータ62を必要なステップ数駆動して秒針2を北の方位まで運針する(ステップS16:表示制御手段)。この処理により秒針2によって北方が表示されることになる。そして、1秒キャリー発生時の処理を終えて、ステップS1に戻る。
【0041】
以上のように、この実施形態の電子方位計1によれば、方位計測処理の実行中、10秒キャリーの発生に伴って時針4と分針3を時計回りに運針したら、ステップモータ57のロータがパターン“01”の向きになっているか否かを判別し、パターン“01”の向きになっていればロータを逆転させてパターン“02”の向きになるように制御される。それゆえ、方位計測時には常にステップモータ57のロータはパターン“02”の向きになって、パターン“01”の向きに対応するトリミングデータが不要になる。従って、方位計測に関する較正処理でトリミングデータ45aを求める処理の工数を減らすことができ、また、トリミングデータ45aを記憶するEEPROM45の記憶容量を小さくすることができる。
【0042】
また、この実施形態の電子方位計1によれば、EEPROM45のトリミングデータ45aを用いて、ステップモータ57,62のロータの向きに応じた補正がなされて、方位計測値が求められるので、トリミングデータの個数が減っても正確な方位を算出することができる。
【0043】
また、この実施形態の電子方位計1においては、時分針輪列機構60の遊び量は大きい一方、秒針輪列機構65の遊び量は小さくなっている。そのため、方位計測の際にロータを常に所定の向きにする制御は時分針駆動用のステップモータ57に対してだけ行う一方、秒針駆動用のステップモータ62のロータの向きの違いに対しては、ロータの向きに応じて2種類のトリミングデータ45aを使い分けることによって対処するようになっている。従って、ロータの向きの制御を行うことのできない指針の駆動系が含まれる場合にも、必要なトリミングデータの数を有効に減らすことができる。
【0044】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。例えば、上記実施形態では、ステップモータにより駆動される指針として時刻表示を行う指針を例示したが、これに制限されず、順方向に回転して任意の表示を行う指針であれば、本発明の指針として同様に適用可能である。
【0045】
また、ステップモータのロータの向きを判別する手段として、極性記憶回路の極性データを用いる構成を例示したが、この極性記憶回路の代わりに、制御部40の内部或いはRAMにステップモータの直前の駆動制御の内容(どの回転角度に駆動したかを示す内容)を記憶させておき、この記憶データを用いてロータの向きを判別するように構成することもできる。
【0046】
また、上記実施形態では、方位計測処理中の時分針3,4の運針直後にステップモータ57のロータの向きの判別と向きの制御とを行う例を示したが、方位計測を行う直前にこのロータの向きの判別および向きの制御を行うようにしても良い。
【0047】
また、上記実施形態では、方位情報を秒針2により表示する構成を示したが、例えば指針は用いずに液晶表示器等により方位情報を表示する構成としても良い。その他、指針の数、ステップモータの数、方位計測処理の具体的な制御手順など、実施形態で示した細部は発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 電子方位計
2 秒針
3 分針
4 時針
40 制御部
45 EEPROM
45a トリミングデータ
48 発振回路
49 分周回路
50 計時回路
53 方位センサ
54 方位検出部
57 ステップモータ
58 モータ駆動回路
59 極性記憶回路
60 時分針輪列機構
62 ステップモータ
63 モータ駆動回路
64 極性記憶回路
65 秒針輪列機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気センサと、
この磁気センサの出力に基づいて方位情報を表示させる表示制御手段と、
指針と、
ロータを正転及び逆転可能な2極のステップモータと、
前記ロータの回転を前記指針へ伝達してこの指針を運針する伝達機構と、
前記ステップモータを駆動制御して前記ロータを正転に且つ前記指針を順方向に回転させて前記指針により任意の情報を表示させる指針制御手段と、
を備えた電子方位計において、
前記伝達機構は、前記ロータを正転させて前記指針が順方向に回転した後、前記ロータを逆転させて前記指針が逆方向の回転を開始するまでに、前記ロータの複数ステップの逆転を必要とする遊びを有し、
前記磁気センサの出力に基づき方位計測が行われる場合に、前記ロータの磁極の向きが所定の向きか否かを判別する極性判別手段と、
前記極性判別手段により所定の向きでないと判別された場合に、前記ロータを逆転させて前記極性の向きを所定の向きにする極性制御手段と、
を備えていることを特徴とする電子方位計。
【請求項2】
前記ロータが前記所定の向きのときに前記磁気センサの出力に生じる狂いを補正するための補正データを記憶する補正データ記憶手段と、
前記補正データに基づく補正を行った上で前記磁気センサの出力に基づき方位を算出する方位算出手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1記載の電子方位計。
【請求項3】
第1指針と、
第1指針を駆動するための第1ステップモータおよび第1伝達機構と、
第2指針と、
第2指針を駆動するための第2ステップモータおよび第2伝達機構と、
を備え、
前記第2伝達機構は前記遊びを有する一方、前記第1伝達機構は前記遊びを有さず、
前記極性制御手段は、前記第2ステップモータに対して前記方位計測が行われる場合にロータの磁極の向きを前記所定の向きにする制御を行い、
前記補正データ記憶手段には、前記第2ステップモータのロータの磁極が前記所定の向きにあり、且つ、前記第1ステップモータのロータの磁極が複数の向きの各々にあるときの複数のパターンにそれぞれ対応する複数の前記補正データが記憶され、
前記方位算出手段は、前記複数の補正データのうち前記第1ステップモータのロータの磁極の向きに対応した補正データに基づいて前記磁気センサの出力を補正して方位を算出する
ことを特徴とする請求項2記載の電子方位計。
【請求項4】
磁気センサと、指針と、ロータを正転および逆転可能な2極のステップモータと、前記ロータの回転を前記指針へ伝達してこの指針を運針する伝達機構と、前記ステップモータを駆動制御して前記ロータを正転に且つ前記指針を順方向に回転させて前記指針により任意の情報を表示させる指針制御手段とを備え、前記伝達機構は、前記ロータを正転させて前記指針が順方向に回転した後、前記ロータを逆転させて前記指針が逆方向の回転を開始するまでに、前記ロータの複数ステップの逆転を必要とする遊びを有するように構成された電子方位計の制御方法であって、
前記磁気センサの出力に基づき方位計測が行われる場合に、前記ロータの磁極の向きが所定の向きか否かを判別する極性判別ステップと、
前記極性判別ステップで所定の向きでないと判別された場合に、前記ロータを逆転させて前記極性の向きを所定の向きにする極性制御ステップと、
を含むことを特徴とする電子方位計の制御方法。

【図1】
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【図2】
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