説明

電子時計

【課題】 ユーザーに対して電子時計が通常表示を行わない理由を適切な表示により知らせて、状況に応じた焼き付き防止の表示制御を行う電子時計を提供する。
【解決手段】 メモリー性の表示手段3と、表示手段を制御する制御手段と、温度を検出する温度検出手段とを備える電子時計1であって、前記制御手段は、表示手段の表示モードを、通常表示5Aを行う第1モードと、通常表示を行わない理由を第1の視覚表現によって表示する第2モードとに切り替える表示モードの切り替え制御を行い、前記第1モードから前記第2モードへの表示モードの切り替え制御は、前記第1モード時において、前記温度検出手段が所与の設定温度範囲未満の温度を検出した場合に行い、前記第2モード時において、前記第1の視覚表現に加えて、通常表示のうち一部の表示を継続して表示手段に表示(5B)させる第1の視覚表現表示処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子時計等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電源を切っても画像を保持できるメモリー性を有する表示パネルが開発され、電子時計等にも使用されている。メモリー性を有する表示パネルとしては、EPD(Electro Phoretic Display)すなわち電気泳動表示装置や、メモリー性液晶表示装置等が知られている。
【0003】
メモリー性を有する表示パネルに時刻を表示する電子時計の場合、一般に安定した性能を維持できる使用温度範囲(例えば−10℃〜60℃)が定められている。特許文献1の発明は、冷却ファンや加熱ヒーターを設けて強制的に温度制御を行うことによって、使用温度範囲外での使用を回避する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−202251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、電子時計のように電池で駆動される製品において、消費電力の高い冷却ファン等を付加することは現実的ではない。また、冷却ファンのような部品の追加は製造コスト上昇という問題も生じ得る。よって、電子時計が使用される環境の温度(使用環境温度)が使用温度範囲外になった場合に警告を表示するなどの機能が求められる。
【0006】
例えば図9(A)は、従来の電子時計100が使用温度範囲を越える高温で使用されて、「TOO HOT!60℃以下でご使用ください」という警告文を含む表示500Xが表示パネル300に継続して表示されている状態を示す。警告文によりユーザーは状況を把握し、使用環境温度を下げるなどの対応をとることができる。
【0007】
しかし、一般に使用温度範囲より高温の環境下では、前記警告文のような固定パターンの表示によって比較的短時間であっても焼き付きを生じ得る。そして、固定パターンが長時間又は繰り返し表示された場合には、電荷負荷の残留が固定化して残像が常時視認されることとなり、製品の品質上の問題を生じ得る。
【0008】
例えば図9(B)はこのような問題を生じた場合の例である。図9(B)では、通常表示として現在時刻が黒色で10:10と表示されているが、前記警告文も薄い灰色で残像として視認されてしまっている(500Y)。
【0009】
そこで、電子時計が使用温度範囲外の環境下に置かれた場合には、直ちに表示パネルを単一色表示にする手法が考えられる。例えば、図9(C)は単一色表示500Zの例である。一切の固定パターンを表示しないことで焼き付きを防止することができる。
【0010】
しかし、単一色表示が継続する場合には、時刻表示がされないため電子時計としての基本機能が失われてしまうとの問題が生じる。また、ユーザーにとっては、単一色表示となった理由が、使用温度範囲外であるためか、電池が消耗したためか、故障によるものか等の区別がつかないという問題が生じ得る。
【0011】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものである。本発明のいくつかの態様によれば、電子時計が設定温度範囲外で使用される場合等に、ユーザーに対して電子時計が通常表示を行わない理由を適切な表示により知らせて、状況に応じた焼き付き防止の表示制御や入力制御を行う電子時計を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)本発明は、メモリー性の表示手段と、前記表示手段を制御する制御手段と、温度を検出する温度検出手段とを備える電子時計であって、前記制御手段は、前記表示手段の表示モードを、通常表示を行う第1モードと、前記通常表示を行わない理由を第1の視覚表現によって表示する第2モードとに切り替える表示モードの切り替え制御を行い、前記第1モードから前記第2モードへの表示モードの切り替え制御は、前記第1モード時において、前記温度検出手段が所与の設定温度範囲未満の温度を検出した場合に行い、前記第2モード時において、前記第1の視覚表現に加えて、前記通常表示のうち一部の表示を継続して前記表示手段に表示させる第1の視覚表現表示処理を行う。
【0013】
本発明に係る電子時計は、電子時計としての利便性と焼き付けによる品質上の問題の双方を考慮した適切な制御を行う。
【0014】
まず、設定温度範囲(例えば−10℃〜60℃)より低温の環境下では、コントラストの低下はあり得るが焼き付きを生じる可能性は低く、同環境下で単一色表示を行うことは利便性の面から得策ではない。
【0015】
そこで、本発明に係る電子時計は、設定温度範囲よりも低温の環境下では、通常表示を行わない理由(低温である旨)をユーザーに示しつつ、かつ、通常表示のうち一部の表示を継続する。このとき、理由を明示することで電子時計が故障のために通常表示を行っていないとユーザーが誤解することを回避し、通常表示の一部の表示を継続することで時計としての利便性を向上させる。
【0016】
ここで、第1モードの通常表示とは、少なくとも時刻表示を含む表示をいう。電子時計の表示モードは、通常は第1モードである。なお、メモリー性の表示装置では、前記時刻表示の各時刻情報(例えば時や分)の更新時のみ表示装置を作動し、次に更新されるまでは電力を供給せずにその表示を継続できる。従って、一般的な液晶表示装置のように、表示を維持する場合にも電力供給が必要な表示装置を用いる場合に比べて、メモリー性の表示装置を用いることで消費電力を大幅に低減できる。
【0017】
本発明の表示モードは、時計の温度が設定温度範囲よりも低温となったことを温度検出手段が検出することで第1モードから第2モードへと移行する。なお、設定温度範囲とはいわゆる電子時計の使用温度範囲であってもよいし、別の基準で選択された温度範囲であってもよい。また、設定温度範囲は、例えば予め固定的に設定されていてもよいし、環境に応じて又は操作により変動するものであってもよい。
【0018】
第2モードにおいて、制御手段は表示手段に視覚表現を表示させて低温状態であることを示す。この視覚表現は、文字、メッセージ、画像、図形、模様、色彩、記号等のいずれか、又はこれらの組み合わせであってもよい。なお、表示手段はメモリー性を有しているので、低温状態の表示については電力供給が無くても表示し続けることができる。この視覚表現の表示により、ユーザーは電子時計が設定温度範囲未満の低温環境下にあることを容易に把握でき、その状態を解消するために適切な対応、例えば暖かい室内への移動等を行うことができる。
【0019】
本発明の第2モードにおいては、前記通常表示のうち一部の表示を継続する。例えば、時刻が専らメモリー性の表示手段に示される電子時計(デジタル時計)においては、第2モードに移行した場合に時刻表示までも停止すると電子時計としての基本機能が失われる。この例においては、通常表示の一部である時刻表示を第2モードでも継続して表示すれば、電子時計としての基本機能を保つことができユーザーにとって利便性が向上する。なお、時刻表示に加えてアラームのオン、オフを知らせる視覚表現(アラーム表示)の継続表示やバッテリー残量を示す視覚表現(バッテリー表示)の継続表示をおこなってもよい。このことにより、さらに利便性が向上する。
【0020】
(2)この電子時計において、操作を受け付ける受付手段を含み、前記受付手段は、前記第1モード時において、所与の操作を受け付ける処理を行い、前記第2モード時において、前記所与の操作を受け付ける処理を行わなくてもよい。
【0021】
本発明によれば、通常表示を行う第1モード時において受付手段に対する所与の操作を、第2モード時においては無効とすることでユーザーに故障との誤解を与えることを回避できる。ここで、第1モード時において受け付け手段が所与の操作を受け付けた場合には、例えば、制御手段が現在の表示内容から表示態様を変更させてもよいし、ランプが点灯・消灯してもよいし、アラーム試聴の禁止などの機能設定がされてもよい。
【0022】
例えば、ユーザーが第1モードのような表示態様の変更を求めた場合、設定温度範囲よりも低温の環境下では表示画面の再描画が極端に遅いために、かえってユーザーに故障であるとの誤解を与えるおそれがある。よって、第2モード時においては第1モード時に行う表示態様の変更はせずに、第1の視覚表現に加えて通常表示の一部を表示手段に表示させる第1の視覚表現表示処理を継続させる。このことにより、ユーザーに誤解を生じさせないようにできる。
【0023】
具体例として、特定のボタンを押すことにより、設定温度範囲内の環境下では1秒でワールドタイムの都市設定の切り替えが可能であるところ、設定温度範囲よりも低温の環境下で30秒かかるとすればユーザーは故障との疑念を抱く可能性が高い。よって、前記特定のボタンが押されても、第2モード時には第1の視覚表現表示処理を継続させる方がユーザーにとっても好ましい。
【0024】
(3)この電子時計において、前記制御手段は、前記表示手段の表示モードを、さらに前記通常表示を行わない理由を第2の視覚表現によって表示する第3モードと、前記表示手段の全面を単一色で表示する第4モードとに切り替える表示モードの切り替え制御を行い、前記第1モードから前記第3モードへの表示モードの切り替え制御は、前記第1モード時において、前記温度検出手段が前記設定温度範囲より高い温度を検出した場合に行い、前記第3モードから前記第4モードへの表示モードの切り替え制御は、前記第3モード時において、前記表示モードが前記第3モードに移行してから所与の時間経過後に行い、前記第3モード時において、前記第2の視覚表現を前記表示手段に表示させる第2の視覚表現表示処理を行い、前記第4モード時において、前記単一色を前記表示手段に表示させた後にその表示の更新を停止する単一色表示処理を行ってもよい。
【0025】
本発明によれば、例えば予め設定された設定温度範囲よりも高温の環境下で、通常表示を行わない理由(高温である旨)をユーザーに示して適切な対応を促し、一定時間の経過後に、単一色を表示手段に表示させてその表示の更新を停止する表示モードへと移行する。このことにより、電子時計が故障のために通常表示を行わないとユーザーが誤解することを回避しつつ、一定時間経過後には単一色表示を行うので表示手段の焼き付きを防止することができる。
【0026】
設定温度範囲よりも低温の場合のみならず、同温度範囲よりも高温の環境下においても適切な情報の提供や表示制御を行うことによって、電子時計の品質の劣化を防ぐことができる。
【0027】
(4)この電子時計において、前記受付手段は、前記第3モードおよび前記第4モードのうち少なくとも一つのモード時において、前記所与の操作を受け付ける処理を行わなくてもよい。
【0028】
本発明によれば、通常表示を行う第1モードにおいて現在の表示内容から表示態様を変更させる等の受付手段に対する所与の操作を、第3、第4モード時においては無効とすることで早期に第4モードに移行させて、又は第4モードの状態を維持させて、表示画面に焼き付きが生じることを防止することができる。
【0029】
設定温度範囲よりも高温の環境下では、品質保持の側面から、受付手段に対する所与の操作に従うよりも表示画面の焼き付きの防止を優先させる必要がある。よって、第4モード時においては第1モード時に行う表示形式の変更等はせずに、単一色表示処理を継続させる。また、第3モード時においても、第2の視覚表現表示処理の終了後に速やかに第4モードに移行させる。このことにより、電子時計の表示部における品質劣化を防ぐことができる。
【0030】
(5)この電子時計において、前記制御手段は、前記表示手段の表示モードを、さらに前記表示手段の全面を単一色で表示する第4モードに切り替える表示モードの切り替え制御を行い、前記第1モードから前記第4モードへの表示モードの切り替え制御は、前記第1モード時において、前記温度検出手段が前記設定温度範囲より高い温度を検出した場合に行い、前記第4モード時において、前記単一色を前記表示手段に表示させた後にその表示の更新を停止する単一色表示処理を行ってもよい。
【0031】
本発明によれば、例えば予め設定された設定温度範囲よりも高温の環境下では、直ちに単一色を表示手段に表示させてその表示の更新を停止する表示モードへと移行する。このことにより、表示手段の焼き付きを防止することができる。
【0032】
警告表示を含めて固定パターンの表示をすることなく、直ちに単一色表示に移行することで、表示手段の焼き付きが生じる可能性を低くする。
【0033】
(6)この電子時計において、前記受付手段は、前記第4モード時において、前記所与の操作を受け付ける処理を行わなくてもよい。
【0034】
本発明によれば、通常表示を行う第1モードにおいて現在の表示内容から表示態様を変更させる等の受付手段に対する所与の操作を、第4モード時においては無効とすることで第4モードの状態を維持させて、表示画面に焼き付きが生じることを防止することができる。
【0035】
設定温度範囲よりも高温の環境下では、品質保持の側面から、受付手段に対する所与の操作に従うよりも表示画面の焼き付きの防止を優先させる必要がある。よって、第4モード時においては第1モード時に行う表示形式の変更等はせずに、単一色表示処理を継続させる。
【0036】
(7)この電子時計において、前記制御手段は、前記第2モード時において、前記一部の表示として時刻表示を行ってもよい。
【0037】
本発明によれば、予め設定された設定温度範囲よりも低温の環境下でも、時刻表示を継続してユーザーに示すため、電子時計としての基本機能を失うことがない。
【0038】
(8)この電子時計において、前記表示手段は、少なくとも第1色、第2色及び前記第1色と前記第2色の中間色を表示可能であり、前記制御手段は、前記第3モード時において、前記第2の視覚表現を前記中間色により前記表示手段に表示させてもよい。
【0039】
本発明によれば、設定温度範囲よりも高温の環境下で、高温である旨をユーザーに示す第2の視覚表現を中間色で表示することで、第2の視覚表現自体が焼き付きの原因となる恐れを低減させる。設定温度範囲よりも高温の環境下では表示手段の焼き付きが生じやすいため、あえて、コントラストの低い表示(中間色による表示)を行うことで電荷負荷の残留を生じにくくする。
【0040】
ここで、第1色と第2色とは、EPD等のメモリー性の表示手段が最低限表示可能な基本色である2色である。例えば、二粒子系マイクロカプセル型の電気泳動方式では、分散液は無色透明、泳動粒子は白色又は黒色のものがある。この方式の電気泳動表示部は、白色又は黒色の2色を基本色として少なくとも2色を表示可能である。第1色として泳動粒子の一の色である黒色を割り当て、第2色として白色を割り当ててもよい。このとき、中間色は灰色となる。なお、中間色は一つの階調に限らず、複数の階調であってもよい。
【0041】
(9)この電子時計において、前記表示手段は、少なくとも第1色及び第2色を表示可能であり、前記制御手段は、前記第2モード時において、所与の復帰条件を満たした場合に、最初に前記第1色、次に前記第2色を前記表示手段の全面に表示させた後に第1モードに切り替える表示モードの切り替え制御を行ってもよい。
【0042】
本発明によれば、制御手段は、所与の復帰条件、すなわち通常表示を行い得る条件が整った場合に第1モードへの切り替えを行うが、その通常表示の前に前記表示手段の全面を第1色にした後、第2色にする初期化動作を行ってもよい。
【0043】
本発明によれば、初期化動作として、第1モードへの切り替えを行う前に例えば全面を黒にした後に全面を白とする制御を行う。初期化動作を行うことで、第2モードの表示において、例えばコントラストが低下していたり、残像・焼き付きを生じ得る表示がされていたりしても、これらの影響等を受けずに通常表示を行うことができる。なお、この例において、初期化動作として全面を白にした後に全面を黒とする制御を行ってもよい。
【0044】
(10)この電子時計において、前記制御手段は、前記温度検出手段が、前記設定温度範囲に含まれかつ前記設定温度範囲よりも狭い温度範囲を有する復帰温度範囲内の温度を検出することを前記所与の復帰条件としてもよい。
【0045】
本発明によれば、他の表示モードから第1モードへ復帰する温度を設定温度範囲よりも狭い復帰温度範囲内の温度とすることで、温度検出手段が設定温度範囲の境界値付近の温度を検出した場合にも表示モード間で遷移を繰り返すことを回避し、安定した画面表示を行わせることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1(A)、図1(B)、図1(C)、図1(D)は第1実施形態における電子時計の表示例を示す図。
【図2】図2(A)は第一実施形態における表示モードの切り替えを示す状態遷移図。図2(B)は第1モードにおけるサブモードの切り替えを示す状態遷移図。
【図3】第1実施形態における電子時計のブロック図。
【図4】第1実施形態における制御のフローチャート図。
【図5】第1実施形態の変形例における制御のフローチャート図。
【図6】図6(A)は第1実施形態における第1モードでのBボタンの機能例を示す図。図6(B)は第1実施形態における第2モードでのBボタンの機能例を示す図。図6(C)は第1実施形態における第3モードでのBボタンの機能例を示す図。
【図7】第1実施形態における外部入力があった場合の制御のフローチャート図。
【図8】第2実施形態における電子時計の表示例を示す図。
【図9】図9(A)、図9(B)、図9(C)は従来の電子時計の表示例を示す図。
【図10】図10(A)、図10(B)、図10(C)は第1実施形態の別の変形例における電子時計の表示例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、第2実施形態以降の説明において、第1実施形態と同様の構成については、同一符号を付し、説明を省略する。
【0048】
1.第1実施形態
本発明の第1実施形態について図1〜図7を参照して説明する。
【0049】
1.1.電子時計による表示
1.1.1.電子時計の外観
図1(A)〜図1(D)は、本実施形態の電子時計1の正面図である。本実施形態において電子時計1は、EPD(電気泳動表示装置)3に、表示モードに応じた表示を行っている。
【0050】
本実施形態では表示モードは第1モード〜第4モードまでの4つであるが、第3モードと第4モードはなくてもよいし本実施形態と異なる表示モードであってもよい。なお、第3モードと第4モードのない本実施形態の変形例については、後にフローチャート(図5)を用いて説明する。
【0051】
図1(A)の表示5Aは第1モードの表示例であり、図1(B)の表示5Bは第2モードの表示例である。そして、図1(C)の表示5Cは第3モードの表示例であり、図1(D)の表示5Dは第4モードの表示例である。ここで、図1(A)〜図1(D)の表示5A〜5Dは物理的に同一のEPD3に表示される。
【0052】
図1(A)〜図1(D)において、電子時計1のEPD3はケース2にはめ込まれている。また、ケース2には、操作を受け付ける受付手段として、ボタン6が設けられている。本実施形態ではボタンA〜ボタンCの3つのボタンが備わっているが、いくつボタンがあってもよいし、無くてもよい。本実施形態において、ボタンA、ボタンB、ボタンCからなるボタン6は、操作を受け付ける受付手段として機能する。例えば、ユーザーがボタンAを押すことで電子時計1の各種モードが選択されて、ボタンB、ボタンCによって文字や数値等がそれぞれ順方向、逆方向に変化してもよい。
【0053】
なお、電子時計1は乾電池等の一次電池を動力源としてもよいし、図外に発電手段として機能する太陽電池を有していてもよい。さらに太陽電池が光を受光して発電し、発生した電力を二次電池に充電してから動力源に用いてもよい。
【0054】
1.1.2.通常表示(第1モード)
通常、電子時計1の表示モードは、図1(A)に示すように時刻情報などの通常表示5Aを行う第1モードである。本実施形態では、通常表示5Aとしてワールドタイム(LONDON 01:10)、時刻(10:10)、キーガイダンス(MODE ▲ ▼)を表示する。なお、通常表示の内容はこの組み合わせに限られるものではない。例えば、他にもアラーム時刻や現在選択されている機能を表すアイコンなどを表示してもよい。第1モードにおいてEPD3に表示される時刻情報の表示は1分又は1時間毎に更新される。また、必要に応じてコントラストを保つリフレッシュ動作や、DCバランスを保つための書き換え(例えば表示の反転)等も行われる。
【0055】
電子時計1は、時計の温度を検出する温度検出手段(図外)を備える。温度検出手段が予め設定された設定温度範囲内の温度を検出している場合には、電子時計1の表示モードは第1モードのままである。ここで、設定温度範囲とは、例えば電子時計1が安定した性能を維持できる使用温度範囲であってもよい。本実施例では、設定温度範囲は−10℃〜60℃であるとする。
【0056】
1.1.3.低温警告表示(第2モード)
しかし、温度検出手段が設定温度範囲未満の温度を検出した場合には、電子時計1の表示モードは温度が−10℃未満であることを警告する表示を行う第2モードに移る(C1)。そして、第2モードにおいて、予め設定された設定温度範囲内の温度を検出すること等の復帰条件を満たせば第1モードに遷移する(C2)。以下、第2モードについて詳細を述べる。
【0057】
図1(B)に示すように、本実施形態では、第2モードにおいて設定温度範囲未満の温度であるために通常表示が行われないことを示す第1の視覚表現(TOO COLD! −10℃以上でご使用ください)を含む表示5BがEPD3に表示される。ユーザーは、第1の視覚表現を見て、電子時計1を暖かい場所に移動させるなどの適切な対応をとることができる。なお、第1の視覚表現はメッセージなどに限らず、アイコンなどの図形で表現されてもよい。
【0058】
このとき、メモリー性の表示装置であるEPD3は、駆動信号(制御信号)の入力がなくても第1の視覚表現を表示し続けられる。具体的には、EPD3の駆動電極(例えば、画素電極やセグメント電極)および共通電極に電圧を印加せず、ハイインピーダンス状態のままにしておいても、前記視覚表現はEPD3に表示され続ける。よって、第1モードに復帰(C2)するまで第1の視覚表現が長時間継続して表示されても、消費電力を低く抑えることができる。なお、第2モードは設定温度範囲未満の低温下であるため、一般に第1の視覚表現によって焼き付きを生じる可能性は低い。
【0059】
本実施形態において、表示5Bは第1モードから継続して時刻表示(10:10)も行う。すなわち、第2モードでも電子時計の基本機能である時刻表示は継続して行われる。このことにより、電子時計としての基本機能を保つことができ利便性が向上する。
【0060】
電子時計1の表示モードが第2モードにある場合に、例えば温度検出手段が予め設定された設定温度範囲内の温度を検出することを復帰条件として第1モードに遷移してもよい(C2)。このとき、温度検出手段が−10℃付近の温度を検出している場合に、第1モードと第2モードの間を頻繁に遷移する可能性がある。そのため、復帰条件のしきい値温度を設定温度範囲の下限値よりも高い温度(例えば−5℃)とすることで、電子時計1の表示モードが安定して遷移するようにしてもよい。
【0061】
1.1.4.高温警告表示(第3モード)
さらに、電子時計1は温度検出手段が設定温度範囲より高い温度を検出した場合に、第1モード以外の表示モード(本実施形態では第3モード、第4モード)に変化してもよい。概略を述べると、温度検出手段が設定温度範囲より高い温度を検出した場合、電子時計1の表示モードは温度が60℃より高いことを警告する第3モードに移る(C3)。そして、第3モードにおいて一定時間が経過するとEPD3の焼き付き防止のために単一色表示を行う第4モードに移る(C4)。なお、第4モードにおいて、予め設定された設定温度範囲内の温度を検出すること等の復帰条件を満たせば第1モードに遷移する(C5)。設定温度範囲よりも低温の場合と高温の場合とで、特にEPD3に対する環境の影響が異なるので、表示モードをそれぞれに対応させて用意することは電子時計1の品質保持の側面からは好ましい。
【0062】
図1(C)に示すように、第3モードにおいては、設定温度範囲より高い温度であるために通常表示が行われないことを示す第2の視覚表現(TOO HOT! 60℃以下でご使用ください)を含む表示5CがEPD3に表示される。ユーザーは、第2の視覚表現を見て、電子時計1を涼しい場所に移動させるなどの適切な対応をとることができる。なお、第2の視覚表現はメッセージなどに限らず、アイコンなどの図形で表現されてもよい。
【0063】
このとき、EPD3は駆動信号(制御信号)の入力がなくても第2の視覚表現を表示し続けられることは第2モードの場合と同じである。しかし、第1モードに復帰(C5)するまで第2の視覚表現が長時間継続して表示されると、設定温度範囲より高い高温環境下にあるため、第2の視覚表現によって焼き付きが生じる恐れがある。そこで本実施形態では、電子時計としての利便性よりもEPD3の焼き付き防止(品質保証)を優先させて、第3モードに移って所与の時間(例えば1分)経過後に単一色表示5Dを行う第4モードに移る(C4)。
【0064】
なお、図1(C)では第2の視覚表現は白色を背景とした黒色のメッセージであるが、中間色である灰色によって同メッセージが表示されていてもよい。中間色(灰色)による表示を行うことで電荷負荷の残留を生じにくくし、第2の視覚表現によって焼き付きが生じる恐れをさらに低減させることができる。なお、中間色の階調は、例えば視認性が失われない範囲で一の階調を選択してもよいし、状況(温度変化)に応じて調整されてもよい。電子時計1が使用される環境の温度が急激に上昇した場合(例えば80℃)には、視認性よりもEPD3の焼き付き防止(品質保証)を優先させて、背景色に近い階調の中間色によって同メッセージが表示されるようにしてもよい。
【0065】
1.1.5.単一色表示(第4モード)
図1(D)に示すように、第4モードにおいてはEPD3の全面を単一色で表示する。その後は駆動信号(制御信号)の入力がなくても単一色表示を継続できる。すなわち、電子時計1は、電力を消費することなく、単一色表示を保つことができる。このとき、EPD3の同一位置に固定パターンのメッセージ等を表示することはないため、表示モードが長時間第4モードであっても画面の焼き付きを生じることはない。
【0066】
電子時計1の表示モードが第4モードにある場合に、例えば温度検出手段が予め設定された設定温度範囲内の温度を検出することを復帰条件として第1モードに遷移してもよい(C5)。このとき、温度検出手段が60℃付近の温度を検出している場合に、第1モード、第3モード、第4モードの間を頻繁に遷移する可能性がある。そのため、復帰条件のしきい値温度を設定温度範囲の上限値よりも低い温度(例えば55℃)とすることで、電子時計1の表示モードが安定して遷移するようにしてもよい。
【0067】
図1(A)〜図1(D)で示したように電子時計1は、表示モードに対応した表示5A〜5Dを行うことにより、ユーザーに対して電子時計が通常表示を行わない理由を適切な表示により知らせて、状況に応じて焼き付き防止を考慮した表示制御を行うことができる。
【0068】
ここで、図10(A)〜図10(C)は、図1に示した本実施形態に係る電子時計1の変形例を示す。図10(A)、図10(B)については、それぞれ図1(A)、図1(B)と同じであり説明を省略する。
【0069】
図10における電子時計1は、温度検出手段が設定温度範囲より高い温度を検出した場合に、第3モードを経由せずに第4モードに変化する。温度検出手段が設定温度範囲より高い温度を検出した場合、電子時計1の表示モードはEPD3の焼き付き防止のために単一色表示を行う第4モードに移る(C3A)。図10の変形例では、EPD3の焼き付き防止の効果が図1の実施例よりも高い。EPD3の焼き付きの可能性をより低くするために第3モードの警告表示までも行わないからである。
【0070】
なお、図10(C)の状態の電子時計1(第4モード)は、図1の実施例における電子時計1と同様に、予め設定された設定温度範囲内の温度を検出すること等の復帰条件を満たせば第1モードに遷移してもよい(C5)。また、第1モードに遷移するときに限らず、第4モード時における動作や性質は、図1の実施例における電子時計1と同様であってもよい。
【0071】
1.2.表示モードの遷移図
1.2.1.通常動作時
図2(A)は、図1に示した本実施形態に係る電子時計1が通常の機能を発揮する状態(通常動作時)における表示モードの遷移を表す図である。なお、本実施形態に係る電子時計1の表示モードの切り替えは、図3に示す表示制御回路14、停止時間カウンター23などの制御手段によって行われてもよい。
【0072】
図2(A)の表示モードである第1〜第4モード(M1〜M4)は、それぞれ図1(A)〜図1(D)に対応する。電子時計1の制御手段は、第1〜第4モード(M1〜M4)において、それぞれ表示5A〜5DをEPD3に表示させる。なお、表示モードの遷移C1〜C5は、図1のC1〜C5と同じである。
【0073】
1.2.2.初期化動作時
図2(B)は、電子時計1のリセット時などに初期化動作が行われた場合の表示モードの遷移を表す図である。初期化モードM11で初期化動作を行った後は第1モードに移る。電子時計1は、図2(A)の通常動作時の表示モード(M1〜M4)に加えて、初期化動作だけを行う初期化モードM11を含んでいてもよい。
【0074】
本実施形態において、EPD3は黒色の電気泳動粒子と白色の電気泳動粒子が分散した電気泳動粒子分散液がマイクロカプセルに封入された2色の粉体流体方式の電気泳動層を用いている。よって、少なくとも、第1色として黒色を、また、第2色として白色を表示することができる。なお、EPD3の表示方式はセグメント方式でも、TFT回路などを用いたドットマトリクス方式でもよい。
【0075】
初期化モードM11においては、例えばリセット信号が入力された後に、EPD3の全面を黒の単一色表示にした後に、全面を白の単一色表示とする初期化動作が行われる(図8のM11参照)。この動作により、EPD3の全面においてマイクロカプセルが相反する状態をとるので、その後の通常表示においてコントラストが改善される。初期化動作の完了後、モードは第1モードに移り(C11)、第1モードにおいては、例えば図1の表示5Aのような通常表示が行われる。
【0076】
1.3.電子時計の構成ブロック図
図3は、本実施形態における電子時計1のブロック図を表す。表示モードの切り替えは、例えば図3の構成によって実現可能である。
【0077】
電子時計1は、図3に示すように、発振回路11、分周回路12、計時カウンター13、表示制御回路14、EPD3、ボタン6(例えば、ボタンBとボタンC)によりオン・オフが行われるスイッチ15、16、時刻修正回路17、停止時間カウンター23、温度センサー41、温度検出回路42を含む。EPD3は図1のEPD3に対応する。なお、例えば太陽電池、充電制御回路、二次電池等を有していてもよいが、本実施形態では図外の一次電池を電源として用いているものとする。
【0078】
発振回路11は、水晶振動子やセラミック振動子等の基準発振源を高周波発振させ、基準発振信号を生成する。
【0079】
分周回路12は、発振回路11で生成された基準発振信号を分周して所定の基準信号(例えば、1Hzの信号)を生成する。
【0080】
計時カウンター13は、分周回路12で生成された基準信号をカウントして現時刻を計時する。また、計時カウンター13は、時刻修正回路17から入力される時刻修正信号に基づいて、カウンター値つまり現時刻情報を修正してもよい。
【0081】
表示制御回路14は、表示モードが第1モード(図2のM1)であると判断した場合には、計時カウンター13で計時された現時刻の情報に基づいてEPD3の表示を制御して通常表示(図1の5A)を行う。
【0082】
また、表示制御回路14は、温度検出回路42からの信号に基づいて表示モードが第2モード(図2のM2)であると判断した場合には、第1の視覚表現等をEPD3に表示させる第1の視覚表現表示処理を行う。本実施形態において、表示制御回路14は、第2モードの場合にも計時カウンター13で計時された現時刻の情報に基づいた時刻表示を行う(図1の5B)。
【0083】
そして、表示制御回路14は、温度検出回路42からの信号に基づいて表示モードが第3モード(図2のM3)であると判断した場合には、第2の視覚表現をEPD3に表示させる第2の視覚表現表示処理を行う。その後、表示制御回路14は、表示モードが第3モードになってからの経過時間を知らせる信号(例えば、停止時間カウンター23からの制御信号)に基づいて、EPD3の全面を単一色で表示(図1の5D)して画面の焼き付きを防止する。
【0084】
また、表示制御回路14は、温度検出回路42からの信号に基づいて、表示モードが第2モード又は第4モードから第1モードへと復帰したと判断した場合にも、EPD3の表示を制御して通常表示(図1の5A)を行う。
【0085】
スイッチ15、16は、図1のボタン6のうちボタンB、Cを押した際にそれぞれ入力される。なお、本実施形態ではボタンB、Cを対応させているが、この対応に限らない。スイッチ15、16は、受付手段であるボタンB、Cの入力を検出する入力検出手段として機能する。
【0086】
時刻修正回路17は、各スイッチ15、16からの信号、つまり各ボタンB、Cの入力操作に基づき、時刻修正信号を計時カウンター13に出力する。
【0087】
ここで、各スイッチ15、16からの信号は表示制御回路14にも入力されてもよい。表示制御回路14は、各ボタンB、Cの所定の操作を検出し、例えばワールドタイムで指定都市が変更されたことを判定してEPD3の表示を制御してもよい(図6(A)参照)。
【0088】
なお、スイッチの数は2つに限らず、更にボタンAに対応するスイッチがあってもよい。そして、そのスイッチからの信号も計時カウンター13、表示制御回路14に入力されてもよい。
【0089】
温度センサー41は、電子時計1が使用される環境の温度(使用環境温度)を検出するセンサーである。温度センサー41により本発明の温度検出手段が構成される。温度センサー41は電子時計1の使用環境温度を直接的、又は間接的に検出する。温度センサー41はEPD3の表面温度を測定してもよいし、電子時計1の周囲の温度を測定してもよい。また、温度センサー41は電子時計1の一部の内部温度を測定し、温度検出回路42等がその内部温度から電子時計1の使用環境温度を計算してもよい。
【0090】
温度検出回路42は、温度センサー41で検出された温度を表示制御回路14(又は、停止時間カウンター)が要求する形式の信号に変換して出力する。例えば、温度検出回路42は所定の閾値(例えば、設定温度範囲の上限値や下限値)を超えているか否かを判定し、結果に応じた表示モードへの移行を要求する信号を表示制御回路14、停止時間カウンター23に出力してもよい。また、例えば測定された温度情報自体を表示制御回路14、停止時間カウンター23に出力してもよい。
【0091】
停止時間カウンター23は、温度検出回路42からの信号に基づいて第3モード(図2のM3)であると判断した場合には、第4モード(図2のM4)に移る時間を測るのに用いるカウンターを動作させる。停止時間カウンター23は、例えばカウンターの値を表示制御回路14に出力してもよいし、カウンターの値に基づいて表示モードが第3モードから第4モードへと移るタイミングを知らせる制御信号を表示制御回路14に出力してもよい。なお、停止時間カウンター23は、分周回路12からのクロック(例えば1Hzのクロック)を入力してカウンターを動作させてもよい。
【0092】
1.4.フローチャート図
1.4.1.計時処理
図4は、本実施形態に係る電子時計1の制御のフローチャート図である。まず、計時処理に関連するS20からS30について説明する。
【0093】
計時カウンター13は、分周回路12から基準信号(例えば1Hz)の入力があるか、つまり秒カウントがあるかを判定する(S20)。
【0094】
S20で秒カウントがなかった場合は、サブルーチン外部入力処理S50が実行され、その後処理が続行される。外部入力処理S50については後に説明する。
【0095】
一方、S20で秒カウントがあった場合、つまり基準信号が入力された場合、計時カウンター13はカウントアップする(S22)。
【0096】
次に、計時カウンター13は分桁上げが行われたか否かを判定する(S30)。すなわち、計時カウンター13の秒カウンターが60秒に達し、分カウンターをカウントアップした時点で、分桁上げが行われたと判定される。
【0097】
ここで、分桁上げが行われなかった場合、S20に戻り、上記の処理を繰り返す。
【0098】
1.4.2.表示モード制御
一方、S30で分桁上げが行われた場合、以下の表示モードに関するステップが行われる。ここからは図2の表示モードの遷移に沿って説明をする。なお、表示停止モード(S90A)は第4モードに対応し、このときEPD3は単一色で表示されている(図1の5D)。また、低温表示モード(S90B)は第2モードに対応し、このときEPD3は低温の警告等を表示している(図1の5B)。そして、高温の警告を表示(S94A)は第3モードに対応し、図1の5Cのような表示がなされている。
【0099】
1.4.2.1.第1モード
電子時計1の表示モードが第1モード、すなわち通常表示モードである場合(S90AのN、S90BのN)、分桁上げに応じて時刻、ワールドタイムが更新される(S62)。
【0100】
次に、温度検出回路42は、温度センサー41で測定された温度tが閾値t2よりも高いかを判定する(高温判定、S92A)。温度tが閾値t2以下であって高温判定をパスした場合は(S92AのN)、温度tが閾値t1未満であるかを判定する(低温判定、S92B)。温度tが閾値t1以上であって低温判定もパスした場合は(S92BのN)、表示モードは第1モードのままであり、S20に戻る。ここで、閾値t2は電子時計1の使用温度範囲における高温側の境界温度(例えば60℃)であってもよく、閾値t1は低温側の境界温度(例えば−10℃)であってもよいが、これらに限るものではない。
【0101】
1.4.2.2.第1モードから第2モードへの遷移
電子時計1の表示モードが第1モードから第2モードへと変化するのは、温度検出回路42による低温判定でパスしなかった場合、すなわち温度tが閾値t1未満(S92BのY)の場合である。このとき、表示制御回路14はEPD3に低温の警告と時刻を表示させる(S94B)。そして、電子時計1の表示モードは第2モード(低温表示モード)に設定されて(S96B)、S20に戻る。
【0102】
1.4.2.3.第2モード
電子時計1の表示モードが第2モード(低温表示モード)の場合(S90BのY)にも、分桁上げに応じて時刻が更新される(S64)。ただし、第1モードと異なり、ワールドタイムとキーガイダンスは表示されずに低温の警告が表示されている(図1の5B参照)。
【0103】
1.4.2.4.第2モードから第1モードへの遷移
次に、温度検出回路42は、温度センサー41で測定された温度tが閾値t1+A1以上となったかを判定する(低温側復帰判定、S98B)。温度tが閾値t1+A1未満であって低温側復帰判定をパスしない場合には、再びS20に戻る(S98BのN)。逆に、温度tが閾値t1+A1以上であって低温側復帰判定をパスした場合には(S98BのY)、表示制御回路14は時刻と、低温の警告に代えてワールドタイムとキーガイダンスとをEPD3に表示させる(S14B)。そして、電子時計1の表示モードは第2モードから第1モードへと移り(低温表示モードを解除、S100B)、S20に戻る。
【0104】
ここで、低温側復帰判定において、閾値は低温判定と同じt1ではなく、ノイズの影響等を避けるためにt1にヒステリシスを持たせたt1+A1である方が好ましい。例えば、t1が−10℃である場合にA1として5℃を選択すれば、低温側復帰判定における閾値は−5℃である。温度tが−10℃付近でゆらぐ場合でも、表示モードが第1モードと第2モードの間でたびたび遷移しEPD3の表示が不安定となる状態を避けることができる。
【0105】
1.4.2.5.第1モードから第3モードへの遷移
電子時計1の表示モードが第1モードから第3モードへと変化するのは、温度検出回路42による高温判定でパスしなかった場合、すなわち温度tが閾値t2より高い(S92AのY)場合である。このとき、表示制御回路14はEPD3に高温の警告を表示させる(S94A)。このとき、電子時計1の表示モードは第3モードとなる。
【0106】
1.4.2.6.第3モードから第4モードへの遷移
電子時計1の表示モードが第3モードとなって1分経過すると(S68)、表示制御回路14はEPD3の全面に白を単一色表示させる(S70)。そして、電子時計1の表示モードは第4モード(表示停止モード)に設定されて(S96A)、S20に戻る。
【0107】
1.4.2.7.第4モードから第1モードへの遷移
電子時計1の表示モードが第4モード(表示停止モード)の場合(S90AのY)、温度検出回路42は、温度センサー41で測定された温度tが閾値t2−A2以下となったかを判定する(高温側復帰判定、S98A)。温度tが閾値t2−A2よりも高く、高温側復帰判定をパスしない場合には、再びS20に戻る(S98AのN)。逆に、温度tが閾値t2−A2以下であって高温側復帰判定をパスした場合には(S98AのY)、表示制御回路14は時刻とワールドタイムとキーガイダンスとをEPD3に表示させる(S14A)。そして、電子時計1の表示モードは第4モードから第1モードへと移り(表示停止モードを解除、S100A)、S20に戻る。
【0108】
ここで、高温側復帰判定においても、低温側復帰判定と同様に、閾値は高温判定と同じt2ではなくヒステリシスを持たせたt2−A2である方が好ましい。例えば、t2が60である場合にA2として5℃を選択すれば、高温側復帰判定における閾値は55℃である。温度tが60℃付近でゆらぐ場合でも、表示モードが第1モード、第3モード、第4モードの間で頻繁に遷移しEPD3の表示が不安定となる状態を避けることができる。
【0109】
1.5.フローチャート図(変形例)
図5は、本実施形態の変形例に係る電子時計1の制御のフローチャート図である。この変形例では第3モードと第4モードは含まれない。よって、高温判定、高温側復帰判定は行われない。
【0110】
図5では、図4と同じステップについては同じ番号を付して説明を省略し、相違点のみを説明する。本実施形態の変形例に係る電子時計1の制御のフローチャートでは、S30で分桁上げが行われた場合に(S30Y)、すぐに第2モード(低温表示モード)であるか否かが判断される(S90C)。また、電子時計の表示モードが第1モードの場合に(S90CのN)、時刻等を更新(S62)した後で低温判定(S92C)のみが行われる。その他のステップは図4と同じである。この変形例では、低温判定、低温側復帰判定に限ることにより必要な回路を簡素化でき、しかも低温時にも時刻等を継続して表示できる利便性の高い電子時計を提供することができる。
【0111】
1.6.受付手段
図6(A)〜(C)は、操作を受け付ける受付手段の一つであるBボタン(図1のボタン6のひとつ)についての機能例を示す図である。図6(A)は電子時計の表示モードが第1モードの場合を、図6(B)は第2モードの場合を、図6(C)は第3モードの場合を示す。
【0112】
図6(A)は、通常表示モード(第1モード)においてワールドタイムが表示されており、ボタンBを押す度にワールドタイムの都市が昇順で変化する例である。Bボタンを押す前はワールドタイムの都市はLONDONであるが、ボタンBを押した後にはMOSCOWに変化している。第1モードにおいて、受付手段であるBボタンに期待される機能は、都市名と現地時刻の変更であり、これによりEPD3の画面は表示5Aから表示5Gへと表示態様が変化する。また、例えば背景が変化したり、反転表示になったりする表示形式の変更等を伴ってもよい。
【0113】
しかし、図6(B)は表示モードが第2モードであり、EPD3には低温の警告が表示されている(5B)。そして、低温時にはEPDの特性から、画面の再描画に時間がかかる。そのため、第1モードのように表示の変更を要求する入力が行われた場合には、ユーザーは画面の変化があまりに遅いために故障していると誤解する可能性がある。
【0114】
そのため、本実施形態では表示モードが第2モードの場合には、図6(B)のようにBボタンが押されても画面変更の要求は受け付けられず、画面5Bに変化は生じない。
【0115】
図6(C)は、表示モードが第3モードであり、EPD3には高温の警告が表示されている(5C)。そして、高温時においてはEPD3に焼き付きが生じる可能性が高い。そのため、第1モードのように表示の変更等を要求する入力が行われた場合に、それを受け付けることで単一色表示を行う(第4モードに移行する)までの時間が遅延することがあると、EPD3に焼き付きが生じて電子時計の品質劣化を招く。
【0116】
そのため、本実施形態では表示モードが第3モードの場合にも、図6(C)のようにBボタンが押されても画面変更の要求は受け付けられず、画面5Cに変化は生じない。なお、単一色表示を行う第4モードにおいても第3モードと同様の理由から、Bボタンが押されても画面変更の要求は受け付けられず、表示画面に変化は生じない。また、ここではBボタンを用いて例示したが、AボタンやCボタンについても同様である。
【0117】
本実施例においては、画面の変化の有無にかかわらず、電子時計1の表示モードが第2〜第4モードの場合には、ボタンによる要求動作を受け付けないものとしている。ただし、電子時計1の表示モードが第2〜第4モードであっても、画面に変化が生じないか、又は生じてもユーザーが電子時計の故障と捉える可能性が低いものについてはボタンによる要求動作を受け付けても構わない。例えば、アラームを停止させるためのボタン操作は、画面表示と関係がないため受け付けてもよい。
【0118】
1.7.フローチャート図(外部入力処理)
図7は、本実施形態の電子時計1の外部入力処理についてのフローチャート図である。図4、図5の外部入力処理S50に対応する。本実施形態では図6の例示の通り、操作を受け付ける受付手段として外部入力であるボタン6(図1)が用いられる。また、ボタン6においてはボタンA〜Cでフローチャート上の扱いに差はなく、すべて図7のフローチャートに従う。
【0119】
まず、外部入力の有無が判断される(S500)。本実施形態では、外部入力とはボタン6(ボタンA〜C)を押すことが対応する。ボタン6が押されない場合には、表示制御回路14は特に処理を行わない(S500N)。
【0120】
ボタン6が押されると(S500Y)、表示制御回路14は低温表示モード(図2の第2モードM2)であるかどうかを判断する(S502)。低温表示モードである場合にも、表示制御回路14は特に処理を行わない(S502Y)。ユーザーからの外部操作を受け付けた場合、反応が遅いために故障との誤認を生じさせるからである。
【0121】
低温表示モードでない場合には(S502N)、表示制御回路14は高温表示モード(図2の第3モードM3)であるかどうかを判断する(S504)。高温表示モードである場合にも、表示制御回路14は特に処理を行わない(S504Y)。ユーザーからの外部操作を受け付けることで単一色表示を行う(図2の第4モードM4に移行する)までの時間が遅延すると、EPD3に焼き付きが生じて電子時計の品質劣化を招く恐れがあるからである。
【0122】
高温表示モードでない場合には(S504N)、表示制御回路14は表示停止モード(図2の第4モードM4)であるかどうかを判断する(S506)。表示停止モードである場合にも、高温表示モードである場合と同様の理由により、表示制御回路14は特に処理を行わない(S506Y)。
【0123】
表示停止モードでない場合には(S506N)、表示モードは通常表示モード(図2の第1モードM1)である。このとき、押されたボタンに応じた処理(S508)が行われて外部入力処理が完了する。押されたボタンに応じた処理は、例えばワールドクロックでBボタンが押されたので都市を一つ進めて、その都市の時刻を表示することである(図6(A)参照)。
【0124】
このように、本実施形態では通常表示モード以外の表示モードではボタンが押されても何ら処理を行わないので、ユーザーに電子時計1が故障したという疑念を生じさせず、表示画面の焼き付きも防止できる。
【0125】
なお、本実施形態の変形例として、高温表示モードおよび表示停止モードの少なくとも一方は、ボタンが押されたことに対して所与の処理を行ってもよい。例えば、表示停止モードにおいてボタンが押された場合には、一定時間(例えば、数秒の間)は高温表示モードと同じ警告を表示する処理を行い、ユーザーに対して設定温度範囲内で使用するように促してもよい。また、例えば高温表示モードにおいてボタンが押された場合には、強制的に表示停止モードに移行する処理を行ってもよい。これらの変形例では、図7のフローチャートからS504およびS506の少なくとも一方が取り除かれたフローチャートが用いられることになる。
【0126】
2.第2実施形態
本発明の第2実施形態について図8を参照して説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については、同一符号を付して説明を省略し、相違する部分について説明する。
【0127】
図8は、本実施形態における電子時計の表示例を示し、同時に、初期化モードM11を含む表示モードの遷移を図示したものである。
【0128】
本実施形態と第1実施形態との差異は、低温側復帰判定をパスして(図4 S98BのY)第1モードに移る場合(C2A)には、初期化モードM11を経由し、黒の単一色表示5Eと白の単一色表示5Fが最低1回づつ行われることである。単一色表示の順番は白の単一色表示が先でも(C111)、黒の単一色表示が先であっても(C110)よい。また、遷移C110、C111を複数回繰り返しても構わない。初期化モードM11を経て通常表示5Aを行うことにより、第2モードの表示において、例えばコントラストが低下していたり、残像・焼き付きを生じ得る表示がされていたりしても、通常表示には影響を与えることがない。
【0129】
同様に、本実施形態において高温側復帰判定をパスして(図4 S98AのY)第1モードに移る場合(C5A)にも、初期化モードM11を経由してもよい。
【0130】
なお、本実施形態において、その他の部分については第1実施形態と同様である。
【0131】
3.その他
なお、前記各実施形態では、EPD3に通常の表示を行わない理由を文字(メッセージ)で表示しているが、前記の通り、アイコンや図形、色彩、フラグといった視覚表現で表示してもよい。すなわち、ユーザーが通常表示でない理由を把握できる内容を表示すればよい。
【0132】
前記各実施形態では、EPD3は、黒粒子および白粒子による白黒二粒子系の電気泳動が行われるものでもよいし、青白等の一粒子系の電気泳動を行っても良く、また、白黒以外の組み合わせでも構わない。
【0133】
そして、メモリー性の表示手段は、EPD3に限定されず、他のメモリー性を有するディスプレイでもよい。例えば、ECD(Electrochromic Display=エレクトロクロミックディスプレイ)、強誘電性液晶ディスプレイ、コレステリック液晶ディスプレイ等でもよい。
【0134】
さらに、本発明の電子時計は、腕時計に限らず、置き時計、掛け時計、懐中時計などの
時計機能を有する機器に広く適用できる。
【0135】
これらの例示に限らず、本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0136】
1…電子時計、2…ケース、3…EPD(電気泳動表示装置)、5A…(通常)表示、5B〜5G…表示、6…ボタン、11…発振回路、12…分周回路、13…計時カウンター、14…表示制御回路、15…スイッチ、16…スイッチ、17…時刻修正回路、23…停止時間カウンター、41…温度センサー、42…温度検出回路、M1…第1モード、M2…第2モード、M3…第3モード、M4…第4モード、M11…初期化モード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メモリー性の表示手段と、前記表示手段を制御する制御手段と、温度を検出する温度検出手段とを備える電子時計であって、
前記制御手段は、
前記表示手段の表示モードを、通常表示を行う第1モードと、前記通常表示を行わない理由を第1の視覚表現によって表示する第2モードとに切り替える表示モードの切り替え制御を行い、
前記第1モードから前記第2モードへの表示モードの切り替え制御は、前記第1モード時において、前記温度検出手段が所与の設定温度範囲未満の温度を検出した場合に行い、
前記第2モード時において、前記第1の視覚表現に加えて、前記通常表示のうち一部の表示を継続して前記表示手段に表示させる第1の視覚表現表示処理を行う、電子時計。
【請求項2】
請求項1に記載の電子時計において、
操作を受け付ける受付手段を含み、
前記受付手段は、
前記第1モード時において、所与の操作を受け付ける処理を行い、
前記第2モード時において、前記所与の操作を受け付ける処理を行わない、電子時計。
【請求項3】
請求項2に記載の電子時計において、
前記制御手段は、
前記表示手段の表示モードを、さらに前記通常表示を行わない理由を第2の視覚表現によって表示する第3モードと、前記表示手段の全面を単一色で表示する第4モードとに切り替える表示モードの切り替え制御を行い、
前記第1モードから前記第3モードへの表示モードの切り替え制御は、前記第1モード時において、前記温度検出手段が前記設定温度範囲より高い温度を検出した場合に行い、
前記第3モードから前記第4モードへの表示モードの切り替え制御は、前記第3モード時において、前記表示モードが前記第3モードに移行してから所与の時間経過後に行い、
前記第3モード時において、前記第2の視覚表現を前記表示手段に表示させる第2の視覚表現表示処理を行い、
前記第4モード時において、前記単一色を前記表示手段に表示させた後にその表示の更新を停止する単一色表示処理を行う、電子時計。
【請求項4】
請求項3に記載の電子時計において、
前記受付手段は、
前記第3モードおよび前記第4モードのうち少なくとも一つのモード時において、前記所与の操作を受け付ける処理を行わない、電子時計。
【請求項5】
請求項2に記載の電子時計において、
前記制御手段は、
前記表示手段の表示モードを、さらに前記表示手段の全面を単一色で表示する第4モードに切り替える表示モードの切り替え制御を行い、
前記第1モードから前記第4モードへの表示モードの切り替え制御は、前記第1モード時において、前記温度検出手段が前記設定温度範囲より高い温度を検出した場合に行い、
前記第4モード時において、前記単一色を前記表示手段に表示させた後にその表示の更新を停止する単一色表示処理を行う、電子時計。
【請求項6】
請求項5に記載の電子時計において、
前記受付手段は、
前記第4モード時において、前記所与の操作を受け付ける処理を行わない、電子時計。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の電子時計において、
前記制御手段は、
前記第2モード時において、前記一部の表示として時刻表示を行う、電子時計。
【請求項8】
請求項3乃至5のいずれかに記載の電子時計において、
前記表示手段は、
少なくとも第1色、第2色及び前記第1色と前記第2色の中間色を表示可能であり、
前記制御手段は、
前記第3モード時において、前記第2の視覚表現を前記中間色により前記表示手段に表示させる、電子時計。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれかに記載の電子時計において、
前記表示手段は、
少なくとも第1色及び第2色を表示可能であり、
前記制御手段は、
前記第2モード時において、所与の復帰条件を満たした場合に、最初に前記第1色、次に前記第2色を前記表示手段の全面に表示させた後に第1モードに切り替える表示モードの切り替え制御を行う、電子時計。
【請求項10】
請求項9に記載の電子時計において、
前記制御手段は、
前記温度検出手段が、前記設定温度範囲に含まれかつ前記設定温度範囲よりも狭い温度範囲を有する復帰温度範囲内の温度を検出することを前記所与の復帰条件とする、電子時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−169608(P2011−169608A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31015(P2010−31015)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】