説明

電子時計

【課題】 省電力モードが解除された際に、適切な無線接続の制御を行って無駄な消費電力の低減を図ることのできる電子時計を提供することにある。
【解決手段】 無線通信手段と、不使用状態を検出する状態検出手段と、不使用状態の検出が所定時間続いた場合に省電力モードへ移行させる省電力制御手段と、省電力モードへ移行した後に使用状態が検出された場合に省電力モードを解除する省電力解除制御手段とを備えた電子時計である。そして、省電力解除制御手段は、状態検出手段により使用状態が最後に検出されてから省電力モードへ移行するまでの無線接続の状態に基づいて、省電力モードの解除後に無線接続を結ばせる処理態様を変化させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ユーザに装着可能にされ、且つ、無線通信手段を備えた電子時計に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば携帯電話機と腕時計とをブルートゥース(Bluetooth:登録商標)などの通信手段により無線接続させ、携帯電話機と腕時計との間でデータ通信を行わせて様々な連携機能を提供するシステムが開発されている。
【0003】
また、ユーザに装着されて使用される電子時計において、電子時計の不使用の状態が所定時間続いた場合に、所定の機能が停止される省電力モードへ移行して節電を行う電子時計もある(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−117286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
無線通信においては、機器同士が無線接続されているときには、互いに所定のタイミングで少ない回数電波を送受信することで消費電力を小さく抑えることができる一方、切断されている状態から無線接続を結ばせるときには電波を長い期間多くの回数送受信する必要があることから消費電力は大きくなる。
【0006】
そのため、ユーザに装着されて使用される電子時計に、省電力モードの機能と、無線通信の機能とを付加した場合、なんら工夫がないと、省電力モードが解除されたときに自動的に無線接続を結ぶ処理が実行されるようにしておくと、周囲に通信相手の機器が無いときも無線接続を結ぶ処理が実行されて、無駄な消費電力が増大するという課題が生じる。
【0007】
この発明の目的は、ユーザに装着されて使用されるとともに無線通信手段を備えた電子時計において、省電力モードが解除された際、適切な無線接続の制御を行って無駄な消費電力の低減を図ることのできる電子時計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、
ユーザに装着可能にされた電子時計において、
所定の外部装置と無線通信を行う無線通信手段と、
前記無線通信手段により前記外部装置と無線接続を結んで無線通信可能な状態にする無線接続制御手段と、
当該電子時計の不使用状態と使用状態とを検出する状態検出手段と、
前記状態検出手段により不使用状態の検出が所定時間続いた場合に所定機能を停止する省電力モードへ移行させる省電力制御手段と、
省電力モードへ移行した後に前記状態検出手段により使用状態が検出された場合に当該省電力モードを解除する省電力解除制御手段と、
を備え、
前記省電力制御手段は、
省電力モードへ移行する際に前記無線接続が切断されていなければ当該無線接続を切断し、
前記省電力解除制御手段は、
前記状態検出手段により使用状態が最後に検出されてから省電力モードへ移行するまでの前記無線接続の状態に基づいて、省電力モードの解除後に前記無線接続制御手段により無線接続を結ばせる処理態様を変化させることを特徴としている。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の電子時計において、
前記省電力解除制御手段は、
省電力モードへの移行の際に前記無線接続が切断されていない第1移行パターンと、前記状態検出手段により使用状態が最後に検出された後に前記無線接続が切断されて省電力モードへ移行した第2移行パターンと、前記状態検出手段により使用状態が最後に検出されるより前に前記無線接続が切断されていて省電力モードへ移行した第3移行パターンとを、それぞれ判別する判別手段を備え、
省電力モードの解除後に前記無線接続を結ばせる処理態様を、少なくとも前記第1移行パターンと前記第3移行パターン、或いは、前記第2移行パターンと前記第3移行パターンとで異ならせることを特徴としている。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の電子時計において、
前記省電力解除制御手段は、
前記第1移行パターン又は前記第2移行パターンで省電力モードへ移行した場合に、省電力モードを解除する際に前記無線接続制御手段に無線接続を結ばせる処理を開始させる一方、
前記第3移行パターンで省電力モードへ移行した場合に、省電力モードを解除した後、所定時間を開けてから前記無線接続制御手段に無線接続を結ばせる処理を開始させる
ことを特徴としている。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項2又は3に記載の電子時計において、
前記省電力解除制御手段は、
前記省電力モードの解除後に前記無線接続制御手段により無線接続を結ばせる処理を実行させて無線接続できなかった場合に、再度、無線接続を結ばせる処理を実行させるまでの時間間隔を、前記第3移行パターンで省電力モードへ移行した場合と、前記第1移行パターン又は前記第2移行パターンで省電力モードへ移行した場合とで異ならせる
ことを特徴としている。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項2〜4の何れか一項に記載の電子時計において、
前記省電力解除制御手段は、
前記無線接続制御手段により無線接続を結ばせる一回分の処理時間を、前記第3移行パターンで省電力モードへ移行した場合と、前記第1移行パターン又は前記第2移行パターンで省電力モードへ移行した場合とで異ならせる
ことを特徴としている。
【0013】
請求項6記載の発明は、請求項2〜5の何れか一項に記載の電子時計において、
前記状態検出手段が不使用状態を検出している継続時間を計数する不使用状態カウンタと、
前記無線通信手段の無線接続が切断されている継続時間を計数する無線切断時間カウンタと、
を備え、
前記判別手段は、前記無線切断時間カウンタの計数値と、省電力モードへ移行する前記不使用状態カウンタの計数値とに基づいて前記第1移行パターン〜前記第3移行パターンの判別を行うことを特徴としている。
【0014】
請求項7記載の発明は、請求項1〜6の何れか一項に記載の電子時計において、
前記状態検出手段は、動きの有無を検出する動き検出手段を含み、動きの無いときに不使用状態の検出とすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明に従うと、省電力モードへの移行過程おける無線接続の状態に応じて省電力モードが解除された際の無線接続の処理態様を変化させるので、省電力モードの解除時に通信相手の外部装置が周囲に有るか無いかを適宜予測し、この予測に応じた態様で無線接続を結ぶ処理を行うことで、無駄な電力消費の削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態の電子時計による通信システムを示す構成図である。
【図2】電子時計の全体構成を示すブロック図である。
【図3】電子時計のCPUにより実行される通常モード処理の制御手順を示すフローチャートである。
【図4】電子時計のCPUにより実行される省電力モード処理の制御手順を示すフローチャートである。
【図5】電子時計のCPUにより実行される無線接続処理の制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1には、本発明の実施形態の電子時計による通信システムを表わした構成図を示す。図2には、電子時計の全体構成を表わしたブロック図を示す。
【0019】
この実施形態の電子時計40は、図1に示すように、ユーザに装着されて使用される形態であるとともに、例えば携帯電話機10と無線接続されてデータ通信を行うことで種々の連携機能を提供するものである。例えば、携帯電話機10に音声着信やメール着信があった場合に、これらの着信情報をデータ通信により携帯電話機10から電子時計40に送って、電子時計40が振動してユーザに通知したり、携帯電話機10から正確な時刻データを電子時計40に送って時刻修正を行ったり、種々の連携機能を提供する。
【0020】
また、この実施形態の電子時計40は、所定時間継続して不使用状態であると判別された場合に、例えば時刻の表示出力を停止させる省電力モードへ移行して電力の消費を少なくする省電力機能を有している。省電力モードへ移行した後、使用状態の検出がなされた場合には、停止させていた機能を再開させて通常モードへ復帰する。
【0021】
電子時計40は、図2に示すように、機器の全体的な制御を行うCPU(中央演算処理装置)41と、CPU41が実行する制御プログラムや制御データを格納したROM(Read Only Memory)42と、CPU41に作業用のメモリ空間を提供するRAM(Random Access Memory)43と、外部から指令を入力する操作用のスイッチ44と、現在時刻データを計数する計時回路45と、時刻表示や種々の機能表示を行う液晶表示部(LCD)46と、液晶表示部46を駆動する液晶ドライバ47と、アンテナAN41を介して近距離無線通信を行う無線通信手段としてのブルートゥースモジュール48と、ブルートゥースモジュール48を介して送受信されるデータに対してシリアル/パラレル変換等のデータ処理を行うUART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)49と、振動によりユーザに通知を行う振動モータ50およびそのドライバ51と、発光点滅等によりユーザに通知を行ったり文字盤を照らしたりする発光ダイオード52およびそのドライバ53と、ブザー音によりユーザにアラーム報知を行うピエゾ素子54およびそのドライバ55と、動き検出手段として動きの有無を検出する運動センサ56と、CPU41と各部との間で信号をやり取りするバス57等を備えている。上記構成のうちスイッチ44と運動センサ56とにより状態検出手段が構成される。
【0022】
運動センサ56は、例えば、電子時計40を斜めにしたり水平にしたりすることで、オンからオフへ又はオフからオンへ開閉状態が切り替わる傾斜スイッチである。この運動センサ56によれば、開閉状態の切り替えがあれば運動有りを検出したことになり、開閉状態の切り替えがなければ運動無しの状態を検出したことになる。
【0023】
ブルートゥースモジュール48は、携帯電話機10のブルトゥーモジュールと無線接続を結んで電波によりデータ通信を行うものである。ブルートゥースモジュール48は、無線接続の指令を受けると、周囲に無線接続を要求する信号を連続的に送信する。そして、周囲に接続対象として予め登録されている携帯電話機10があれば、携帯電話機10がこの無線接続の要求信号を受信して接続処理を行うことで、両者の無線接続が確立する。無線接続が結ばれた後は、互いに所定の時間間隔で電波の送受信を行うように設定されて低消費電力のデータ通信がなされる。
【0024】
RAM43には、省電力カウンタ43aと、無線切断時間カウンタ43bとが設けられている。省電力カウンタ43aは、不使用状態の継続時間を通常モード中に計数するカウンタであり、無線切断時間カウンタ43bは、無線接続が切断されてからの継続時間を通常モード中に計数するカウンタである。
【0025】
ROM42には、計時回路45の計時データに従って時刻表示を行ったり設定時刻にアラーム動作を実行させたりする時計処理、スイッチ44の入力に応じて動作モードの変更や各種の機能設定を行う操作入力処理、および、携帯電話機10との連携処理等を実現する各種機能処理のプログラムと、通常モードの際に省電力モードへの移行管理の制御を行う通常モード処理のプログラムと、省電力モードの際に通常モードへの復帰管理の制御を行う省電力モード処理のプログラムと、無線接続を結んだり切断したりする無線接続処理のプログラム等が格納されている。上記の無線接続処理のプログラムとこれを実行するCPU41により無線接続制御手段が構成される。また、通常モード処理のプログラムとCPU41により省電力制御手段が、省電力モード処理のプログラムとCPU41により省電力解除制御手段が構成される。
【0026】
次に、この実施形態の電子時計40の省電力モードと無線接続に関する処理について説明する。
【0027】
図3には、電子時計40のCPU41により実行される通常モード処理のフローチャートを示す。
【0028】
通常モード処理は、省電力モードへの移行条件を満たしたか否かの判別を行って省電力モードへの移行管理を行う制御処理である。この通常モード処理は、通常モードの際に、上記の時計処理、操作入力処理、携帯電話機10との連携処理、および、無線接続処理の各処理と並列的に実行される。
【0029】
通常モードになって通常モード処理が開始されると、まず、CPU41は、省電力カウンタ43aと、無線切断時間カウンタ43bとを初期化(クリア)する(ステップS1)。続いて、ステップS2〜S8のループ処理により、無線切断時間カウンタ43bと省電力カウンタ43aの更新処理を実行する。
【0030】
すなわち、まず、ステップS2で無線接続が維持されているか判別し、切断されていればステップS3で無線切断時間カウンタ43bをカウントアップし、維持されていればステップS4で無線切断時間カウンタ43bをクリアする。
【0031】
続いて、ステップS5においてスイッチ44の入力または運動センサ56の運動の検出が有るか判別し、その結果が“YES”であれば、ステップS7で省電力カウンタ43aをカウントアップし、“NO”であれば、ステップS8で省電力カウンタ43aをクリアする。
【0032】
次いで、ステップS8において、省電力カウンタ43aの計数値が省電力モードへ移行させる不使用継続時間に対応する所定値“FULL”になったか判別し、未だであればステップS2に戻る。
【0033】
つまり、上記のステップS2〜S8のループ処理により、無線接続が切断された状態の継続時間が無線切断時間カウンタ43bに計数され、且つ、電子時計40が不使用状態(スイッチ入力も動きも無い状態)とされている継続時間が省電力カウンタ43aに計数されていく。
【0034】
そして、電子時計40が不使用状態のまま所定時間が経過すると、上記のループ処理において省電力カウンタ43aの計数値が所定値“FULL”に達して、ステップS8の判別処理で“YES”と判別される。“YES”と判別されたら、CPU41は、RAM43中の状態フラグを通常モードから省電力モードの値に変更する(ステップS9)。この状態フラグの変更により、並列的に実行されている時計処理において液晶表示部46の表示出力が停止されるとともに、無線接続処理において無線接続が結ばれている場合にこれを切断する処理が実行される。また、その他の処理が中断される。
【0035】
状態フラグを省電力モードの値に変更したら、CPU41は、この通常モード処理を終了して、次に示す省電力モード処理を開始する。
【0036】
図4には、省電力モード処理のフローチャートを示す。
【0037】
省電力モード処理は、省電力モードから通常モードへの復帰条件を満たしたか否かの判別を行って通常モードへの復帰管理を行う制御処理である。この省電力モード処理は、省電力モードの際に、上記時計処理のうち省電力モードに対応した処理と並列的に実行される。
【0038】
省電力モードになって省電力モード処理が開始されると、CPU41は、スイッチ44からの入力の有無と、運動センサ56の検出出力を監視して(ステップS11)、スイッチ入力が有るか又は運動センサ56で動き有りの検出がなされるまで、この監視処理を続ける。
【0039】
そして、スイッチ入力または動き有りの検出がなされたら、次に進んで、まず、CPU41は、RAM43の状態フラグを省電力モードから通常モードの値に変更する(ステップS12)。この状態フラグの変更により、並列的に実行されている時計処理において液晶表示部46の表示出力が再開され、中断されていたその他の処理が再開される。
【0040】
次いで、CPU41は、ステップS13,S14により、無線切断時間カウンタ43bの値と、省電力モードへ移行される省電力カウンタ43aの計数値(=所定値“FULL”)とから、無線接続の状態がどのように切り替わってから省電力モードへ移行したか、その移行パターンの判別を行う(判別手段)。すなわち、まず、無線切断時間カウンタ43bの値がゼロか否かを判別し(ステップS13)、ゼロでなければ、無線切断時間カウンタ43bの値が上記所定値“FULL”以下であるか判別する(ステップS14)。
【0041】
その結果、無線切断時間カウンタ43bの値がゼロである場合(第1移行パターンと呼ぶ)には、RAM43中の移行フラグに“1”をセットし、無線切断時間カウンタ43bの値が所定値“FULL”以下である場合(第2移行パターンと呼ぶ)には、移行フラグに“2”をセットし、無線切断時間カウンタ43bの値が所定値“FULL”より大きい場合(第3移行パターンと呼ぶ)には、移行フラグに“3”をセットする。
【0042】
上記第1移行パターンは、電子時計40が不使用状態(スイッチ入力も動きも無い状態)になった後も携帯電話機10と無線接続が結ばれたまま所定時間が経過して、省電力モードへ移行したパターンである。この第1移行パターンでは、例えば、ユーザが電子時計40を外してどこかへ置き、さらに、この電子時計40の近くに携帯電話機10も置かれている場合等が想定される。
【0043】
第2移行パターンは、電子時計40が不使用状態になってから携帯電話機10との無線接続が切断され、その後に不使用状態の継続時間が所定時間に達して省電力モードへ移行したパターンである。この第2移行パターンでは、例えば、ユーザが電子時計を外してどこかへ置き、携帯電話機10を持ったまま違う場所へ移動した場合等が想定される。
【0044】
第3移行パターンは、電子時計40が不使用状態となる前から携帯電話機10との無線接続が切断され、その後に不使用状態の継続時間が所定時間に達して省電力モードへ移行したパターンである。この第3移行パターンでは、例えば、ユーザが携帯電話機10をどこかに置いた後、電子時計40を装着したまま違う場所へ移動し、その後に電子時計40を外して離れた場所に電子時計40を置いた場合等が想定される。
【0045】
そして、上記の第1移行パターン〜第3移行パターンの判別結果に応じて移行フラグに値をセットしたら、この省電力モード処理を終了して、通常モード処理を開始する。この移行フラグは、省電力モードから通常モードへ復帰した際の無線接続を結ぶ処理態様を選択するのに使用される。
【0046】
図5には、電子時計40のCPU41により実行される無線接続処理のフローチャートを示す。
【0047】
この無線接続処理は、通常モードの際に、上述の通常モード処理、時計処理、操作入力処理、および、携帯電話機10との連携処理の各処理と並列的に実行される。
【0048】
無線接続処理では、CPU41は、モードの切り替わりを監視しながら、モードの切り替わりに応じた無線接続の処理を行う。すなわち、まず、RAM43の状態フラグを確認して省電力モードと通常モードとの切り替わりがあったか確認し(ステップS21)、通常モードから省電力モードへの切り替わりがあればステップS22へ、省電力モードから通常モードへの切り替わりがあればステップS24へ、通常モードのままであればステップS29へ、それぞれ移行する。
【0049】
その結果、通常モードから省電力モードへの切り替わりがあれば、現在、無線接続されている状態か確認し(ステップS22)、無線接続が無ければそのままステップS21へ戻るが、無線接続されていればブルートゥースモジュール48へ切断の指令を発して無線接続を切断させる(ステップS23)。その後、ステップS21へ戻る。
【0050】
また、省電力モードから通常モードへの切り替わりがあれば、RAM43中の移行フラグの値に応じた判別処理を行って(ステップS24)、移行フラグの値に応じた無線接続の処理を実行する。
【0051】
すなわち、移行フラグの値が“1”または“2”であれば、すぐにブルートゥースモジュール48へ接続の指令を発して無線接続を開始させる(ステップS26)。一方、移行フラグの値が“3”であれば、所定時間の待機処理(ステップS25)を行ってから無線接続を開始させる(ステップS26)。
【0052】
無線接続を開始させたら、接続が成功したか確認し(ステップS27)、成功していればステップS21へ戻る。一方、成功していなければ規定回数繰り返したか確認し(ステップS28)、まだ、規定回数繰り返していなければ、再び、ステップS26からの処理を繰り返す。無線接続の処理を規定回数繰り返しても接続が成功しなければ、近くに通信相手の機器(携帯電話機10)が無いと判断できるので、無線接続がないままステップS21に戻る。
【0053】
また、ステップS21の判別処理で通常モードのままであれば、スイッチ44を介して無線接続や切断を指令する操作入力の有無を確認し、無ければ何も実行せず、有れば、これらの操作入力に応じて無線接続を開始させたり切断させたりする処理を行う(ステップS29)。そして、ステップS21に戻る。
【0054】
上記の無線接続処理により、第1移行パターンで省電力モードへ移行した場合には、先に説明したように、電子時計40と携帯電話機10とが近くに置かれている場合が想定され、電子時計40が動かされて通常モードに復帰した際にも近くに携帯電話機10があると推測できるため、このような状態に応じて直ぐに無線接続が開始される。
【0055】
また、第2移行パターンで省電力モードへ移行した場合には、電子時計40が置かれた後にユーザが携帯電話機10を携帯したままどこかへ移動した場合が想定され、電子時計40が動かされて通常モードに復帰した際にはユーザが携帯電話機10を携帯していると推測できるため、このような状態に応じて直ぐに無線接続が開始されるようになっている。
【0056】
また、第3移行パターンで省電力モードへ移行した場合には、携帯電話機10がどこかへ置かれた後に、ユーザが別のところへ移動して電子時計40を置いた場合が想定され、電子時計40が動かされて通常モードに復帰した際には、ユーザが電子時計40を装着してから携帯電話機10のところまで移動する期間をおいて、電子時計40と携帯電話機10とが近づくと推測されるため、このような状態に応じて所定時間待機してから無線接続が開始されるようになっている。
【0057】
なお、無線接続処理において、電子時計40が通常モードに復帰した際の無線接続の処理態様は、上記の例に制限されず、次のような変形例を適用しても良い。例えば、移行フラグの値が“1”のときには、高い確率で携帯電話機10が近くにあると推測できることから、直ぐに無線接続を開始させるとともに、無線接続が成功しない場合には、短い時間(第1時間)を開けて無線接続の処理を規定回を限度に繰り返し行うようにする。移行フラグの値が“2”のときには、中程度の確率で携帯電話機10が近くにあると推測できることから、直ぐに無線接続を開始させるとともに、無線接続が成功しない場合には、上記第1時間よりも長い中程度の時間(第2時間)を開けて無線接続の処理を規定回を限度に繰り返し行うようにする。移行フラグの値が“3”のときには、一定時間経過しないと携帯電話機10と近くにならない確率が高いと推測できることから、自動的な無線接続を行わずにユーザ操作により無線接続を行うようにする。このような処理態様としても良い。
【0058】
その他、無線接続を結ぶために相手機器(携帯電話機10)からの応答を待ちつつ接続要求の信号を送信し続ける一回の無線接続の処理時間を、移行フラグの値に応じて異ならせるようにしても良い。また、無線接続が成功しなかった場合に、再度、無線接続の処理を行うまでの時間間隔を、移行フラグの値に応じて異ならせるようにしても良い。
【0059】
以上のように、この実施形態の電子時計40によれば、無線接続の状態がどのように切り替わって省電力モードへ移行したか、その移行パターンに応じて、通常モードに復帰した際の無線接続の処理態様を変化させている。したがって、電子時計40が使用状態にされたときに携帯電話機10が近くにあるか、暫く経過してから近くになるかを適宜推測することができ、この推測に基づく態様で無線接続の処理を実行させることで、効率的な無線接続の処理を実現することができる。
【0060】
また、この実施形態の電子時計40によれば、省電力モードへ移行するパターンとして第1移行パターン〜第3移行パターンの判別を行っているので、この判別により、普段、ユーザにより一緒に携帯される機器(電子時計40と携帯電話機10など)が、自宅などでどのような順番で置かれるか、近くに置かれているか、離れて置かれているかなどの状況を適宜推測することができる。そして、この判別結果に基づいて、その後にユーザがこれらの機器を携帯する際に、どのような順番で携帯し、電子時計40が携帯されたときに相手機器(携帯電話機10)が近くにあるか離れているかを適宜推測することができる。それにより、電子時計40が通常モードに復帰した際の無線接続の処理を適宜な態様で実行させることができる。
【0061】
具体的には、第1移行パターンと第2移行パターンで省電力モードへ移行した場合には、通常モードへの復帰の際にすぐに無線接続を開始させ、第3移行パターンで省電力モードへ移行した場合には、通常モードへ復帰してから所定時間を開けて無線接続を開始させるようにしている。したがって、電子時計40が携帯されて通常モードに復帰した際に、携帯電話機10が近くにあると推測できる場合には直ぐに無線接続の処理が開始されて、推測が正しい場合に直ぐに両機器を無線接続の状態にすることができる。また、携帯電話機10が離れていると推測できる場合には所定時間を開けて無線接続の処理が開始されて、無駄な無線接続の処理により消費電力が増大するのを回避することができる。
【0062】
また、変形例として示したように、第1移行パターン〜第3移行パターンの判別結果によって、通常モードへ復帰した際に成功するまで無線接続の処理を繰り返し実行する際の処理間隔を変化させたり、一回の無線接続の処理の時間長を変化させたりすることで、より細かくこれらの状況にあった無線接続の処理を行うことができる。
【0063】
また、この実施形態の電子時計40によれば、省電力カウンタ43aと無線切断時間カウンタ43bとにより、通常モードから省電力モードへ移行する際の不使用状態の継続時間と無線接続が切断している継続時間とを計数して、上記の第1移行パターン〜第3移行パターンの判別が行われるようになっている。したがって、このような判別を負荷の小さな処理により確実に行うことができる。
【0064】
また、この実施形態の電子時計40によれば、不使用状態を検出するのに運動センサ56を備えているので、ユーザに装着されている状態と、どこかに置かれている状態とを識別して、不使用状態の検出を正確に行うことができる。
【0065】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。例えば、上記実施形態では、通信相手の外部装置として携帯電話機10を例示したが、例えば、PDA(Personal Digital Assistant)などの携帯型のコンピュータ、デジタルカメラ、歩数計などの携帯型の計測機器など、種々の装置を適用しても良い。
【0066】
また、不使用状態を検出する状態検出手段として、運動センサ56や操作入力が行われるスイッチ44を適用し、電子時計40の非装着状態を不使用状態として検出する例を示したが、さらに、外光の入射を検出する光センサを状態検出手段に含めて、外光の入射があるときには使用状態と判別するようにしても良い。また、運動センサ56として、傾斜センサのほかに加速度センサや振動センサを適用しても良い。
【0067】
また、上記実施形態では、第1移行パターン〜第3移行パターンの判別を行うようにしているが、例えば、電子時計40がどこかへ置かれた後に無線接続が切断されるまでの時間間隔に応じてさらに細かい省電力モードへの移行パターンを判別し、この判別結果に応じて通常モード復帰時の無線接続の処理態様を選択するようにしても良い。
【0068】
その他、省電力モードにおける電子時計の動作内容、無線通信の方式など、実施形態で示した細部は発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0069】
10 携帯電話機
40 電子時計
41 CPU
42 ROM
43 RAM
43a 省電力カウンタ(不使用状態カウンタ)
43b 無線切断時間カウンタ
44 スイッチ
45 計時回路
46 液晶表示部
48 ブルートゥースモジュール
56 運動センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに装着可能にされた電子時計において、
所定の外部装置と無線通信を行う無線通信手段と、
前記無線通信手段により前記外部装置と無線接続を結んで無線通信可能な状態にする無線接続制御手段と、
当該電子時計の不使用状態と使用状態とを検出する状態検出手段と、
前記状態検出手段により不使用状態の検出が所定時間続いた場合に所定機能を停止する省電力モードへ移行させる省電力制御手段と、
省電力モードへ移行した後に前記状態検出手段により使用状態が検出された場合に当該省電力モードを解除する省電力解除制御手段と、
を備え、
前記省電力制御手段は、
省電力モードへ移行する際に前記無線接続が切断されていなければ当該無線接続を切断し、
前記省電力解除制御手段は、
前記状態検出手段により使用状態が最後に検出されてから省電力モードへ移行するまでの前記無線接続の状態に基づいて、省電力モードの解除後に前記無線接続制御手段により無線接続を結ばせる処理態様を変化させることを特徴とする電子時計。
【請求項2】
前記省電力解除制御手段は、
省電力モードへの移行の際に前記無線接続が切断されていない第1移行パターンと、前記状態検出手段により使用状態が最後に検出された後に前記無線接続が切断されて省電力モードへ移行した第2移行パターンと、前記状態検出手段により使用状態が最後に検出されるより前に前記無線接続が切断されていて省電力モードへ移行した第3移行パターンとを、それぞれ判別する判別手段を備え、
省電力モードの解除後に前記無線接続を結ばせる処理態様を、少なくとも前記第1移行パターンと前記第3移行パターン、或いは、前記第2移行パターンと前記第3移行パターンとで異ならせることを特徴とする請求項1記載の電子時計。
【請求項3】
前記省電力解除制御手段は、
前記第1移行パターン又は前記第2移行パターンで省電力モードへ移行した場合に、省電力モードを解除する際に前記無線接続制御手段に無線接続を結ばせる処理を開始させる一方、
前記第3移行パターンで省電力モードへ移行した場合に、省電力モードを解除した後、所定時間を開けてから前記無線接続制御手段に無線接続を結ばせる処理を開始させる
ことを特徴とする請求項2記載の電子時計。
【請求項4】
前記省電力解除制御手段は、
前記省電力モードの解除後に前記無線接続制御手段により無線接続を結ばせる処理を実行させて無線接続できなかった場合に、再度、無線接続を結ばせる処理を実行させるまでの時間間隔を、前記第3移行パターンで省電力モードへ移行した場合と、前記第1移行パターン又は前記第2移行パターンで省電力モードへ移行した場合とで異ならせる
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の電子時計。
【請求項5】
前記省電力解除制御手段は、
前記無線接続制御手段により無線接続を結ばせる一回分の処理時間を、前記第3移行パターンで省電力モードへ移行した場合と、前記第1移行パターン又は前記第2移行パターンで省電力モードへ移行した場合とで異ならせる
ことを特徴とする請求項2〜4の何れか一項に記載の電子時計。
【請求項6】
前記状態検出手段が不使用状態を検出している継続時間を計数する不使用状態カウンタと、
前記無線通信手段の無線接続が切断されている継続時間を計数する無線切断時間カウンタと、
を備え、
前記判別手段は、前記無線切断時間カウンタの計数値と、省電力モードへ移行する前記不使用状態カウンタの計数値とに基づいて前記第1移行パターン〜前記第3移行パターンの判別を行うことを特徴とする請求項2〜5の何れか一項に記載の電子時計。
【請求項7】
前記状態検出手段は、動きの有無を検出する動き検出手段を含み、動きの無いときに不使用状態の検出とすることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の電子時計。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−122731(P2012−122731A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271038(P2010−271038)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】