説明

電子書籍の試読データ作成装置および作成方法

【課題】ユーザの購買意欲を誘うのに効果的な試読データを効率的に作成する。
【解決手段】ユーザが端末装置100を用いて電子書籍を閲覧すると、読書ログ採取部150によって閲覧履歴が読書ログとして採取され、インターネット300を介してサーバ装置200に送信される。読書ログ格納部220には、多数のユーザの読書ログが集められ、読書ログ抽出部230により1つの書籍の読書ログが抽出される。関心度分布作成部240は、読書ログを解析して、当該書籍の頁単位のユーザの関心度分布を作成する。高関心度領域抽出部250は、この関心度分布に基づいて、関心度が所定のしきい値以上となる高関心度領域を抽出し、試読データ作成部260は、配信対象データ格納部210内の電子書籍データから、高関心度領域の前半部分のデータのみを抜粋して試読データとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子書籍の試読データ作成装置および作成方法に関し、特に、ネットワークを利用して提供する電子書籍について、試読データを作成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ここ数年、電子書籍の閲覧が可能な端末装置のバリエーションが豊富になり、ユーザは、パソコンの他、専用のブックリーダ、タブレット型端末装置、スマートフォンなど、様々なハードウェア機器を利用して電子書籍の閲覧を行うことができる。このようなハードウェア環境の充実に呼応して、ソフトウェアである電子書籍の売上も急伸している。一般に、電子書籍の価格は、紙媒体の書籍の価格に比べて安く設定されており、しかもインターネットを利用して手軽に入手できる利点があるため、今後も右肩上がりの普及拡大が予想される。
【0003】
ただ、紙媒体の書籍の場合であれば、ユーザは、書店で興味をもった本を実際に手に取って試読し、内容を吟味してから購入する、という手順を踏むことができるが、電子書籍の場合、ユーザに同じような形態での自由な試読サービスを提供することは困難である。たとえば、インターネットを介して、ユーザに電子書籍の全頁の内容を自由に試読させるサービスを提供した場合、ユーザは何ら制限なしに無料で全頁の閲覧が可能になるので、実質的に、電子書籍を無償提供したのと同じ結果になってしまう。しかしながら、電子書籍を購入するユーザからの「内容を確かめてから購入したい」という要望も根強い。
【0004】
そこで、たとえば、下記の特許文献1には、電子書籍の一部を暗号化しておき、当該暗号化部分を閲覧可能とするための閲覧鍵を有償販売する技術が開示されている。また、特許文献2および3には、閲覧可能な頁や時間に制限を課した上で、電子書籍をユーザに試読させる技術が開示されている。更に、特許文献4には、各電子書籍について、予め試読データを作成しておき、この試読データをユーザに無償で提供する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−113050号公報
【特許文献2】特開2003−122968号公報
【特許文献3】特開2003−150833号公報
【特許文献4】特開2003−296593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前掲のいくつかの特許文献にも開示されているとおり、電子書籍の内容の一部を予め試読データとして抜粋しておき、この試読データをインターネットを介してユーザに無償で提供するようにすれば、書店での立ち読みと同じような試読サービスを電子書籍に関しても提供することができる。実際、大手の電子書籍販売会社では、既にこのような試読サービスの提供が行われており、ユーザは、インターネットを介して所望の電子書籍の試読データを無償で入手し、内容を吟味した上で、当該電子書籍の購入を行うことができる。
【0007】
しかしながら、現在行われている一般的な試読データの作成方法は、元になる電子書籍データの中から、「先頭の数頁分を抽出する」とか、「最初の数章分を抽出する」といった機械的な抜粋方法を採っているため、「ユーザの購買意欲を誘う」という観点からは、必ずしも適切な試読データの作成が行われているわけではない。たとえば、書籍の後半になってから、物語がダイナミックに展開するようなストーリーの場合、従来の方法で作成した試読データには、多くのユーザが「おもしろい」と思う部分が抜け落ちる可能性が高い。すなわち、試読データとしてユーザに提示される部分は、必ずしも多くのユーザが「おもしろい」と感じる部分ではないため、試読を終えたユーザに当該書籍の購買意欲を起こさせる効果は十分ではない。
【0008】
もちろん、販促担当のスタッフが、1冊ずつ内容を精読し、ユーザの購買意欲を誘うのに効果的と思われる部分を手作業で抜粋して試読データを作成する作業を行えば、理想的な試読データを作成することができるであろう。しかしながら、今後は、大量の書籍が電子書籍として出版されると予想されており、これらの書籍について1つ1つ手作業によって試読データを作成することは、極めて非効率的である。
【0009】
そこで本発明は、ユーザの購買意欲を誘うのに効果的な試読データを効率的に作成することができる電子書籍の試読データ作成装置および作成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1) 本発明の第1の態様は、ネットワークを利用して提供する電子書籍について、試読データを作成する電子書籍の試読データ作成装置において、
ネットワークに接続された端末装置とサーバ装置とを設け、
端末装置は、
サーバ装置から配信された電子書籍データを格納する電子書籍データ格納部と、
電子書籍の内容を表示するディスプレイと、
ユーザから、特定の電子書籍を閲覧対象書籍として選択する指示もしくは当該選択を解除する指示と、選択中の電子書籍の特定のパートを閲覧対象パートとして指定する指示と、を含む指示入力を受け付ける指示入力部と、
指示入力に基づいて、電子書籍データ格納部から閲覧対象書籍の閲覧対象パートに関するデータを読み出し、読み出したデータに基づいてディスプレイ上に電子書籍の内容を表示する閲覧制御部と、
指示入力の一部もしくは全部の履歴を読書ログとして採取し、これをネットワークを介してサーバ装置に送信する読書ログ採取部と、
を有しており、
サーバ装置は、
配信対象となる電子書籍データを格納し、必要に応じてこれを端末装置に配信する配信対象データ格納部と、
読書ログ採取部から送信されてきた読書ログを格納する読書ログ格納部と、
読書ログ格納部から、試読データの作成対象となる作成対象書籍に関する読書ログを抽出する読書ログ抽出部と、
抽出された読書ログを解析することにより、作成対象書籍について、個々のパートごとのユーザの興味の度合いを示す関心度を求め、関心度のパート単位の分布を示す関心度分布を作成する関心度分布作成部と、
関心度分布に基づいて、関心度が所定のしきい値以上となる高関心度領域を抽出する高関心度領域抽出部と、
配信対象データ格納部内に格納されている作成対象書籍の電子書籍データに基づいて、少なくとも1つの高関心度領域についての前半部分のデータを含むが後半部分のデータは含まない試読データを作成する試読データ作成部と、
を有しているようにしたものである。
【0011】
(2) 本発明の第2の態様は、上述した第1の態様に係る電子書籍の試読データ作成装置において、
複数の端末装置を設け、
読書ログ格納部は、各端末装置から送信されてきた複数のユーザの読書ログを格納し、
読書ログ抽出部は、作成対象書籍に関する複数のユーザの読書ログを抽出し、
関心度分布作成部は、複数のユーザの読書ログを解析することにより、関心度分布の作成を行うようにしたものである。
【0012】
(3) 本発明の第3の態様は、上述した第1または第2の態様に係る電子書籍の試読データ作成装置において、
電子書籍データが、頁単位のデータの集合体から構成されており、
指示入力部が、閲覧対象パートを頁で指定する指示を含む指示入力を受け付け、
閲覧制御部が、指定された頁の内容をディスプレイ上に表示し、
読書ログ採取部が、指定された頁の表示履歴を読書ログとして採取し、
関心度分布作成部が、個々の頁ごとに関心度を求めることにより、関心度の頁単位の分布を示す関心度分布を作成し、
高関心度領域抽出部が、頁を最小単位とする領域として高関心度領域の抽出を行うようにしたものである。
【0013】
(4) 本発明の第4の態様は、上述した第1〜第3の態様に係る電子書籍の試読データ作成装置において、
関心度分布作成部が、電子書籍の選択解除時の閲覧対象パートを当該電子書籍の閲覧中断パートと認識し、電子書籍の個々のパートについて、閲覧中断パートとなった回数を示す中断累積回数を求め、この中断累積回数を負の関心度とカウントして関心度分布を作成するようにしたものである。
【0014】
(5) 本発明の第5の態様は、上述した第4の態様に係る電子書籍の試読データ作成装置において、
高関心度領域抽出部が、電子書籍の先頭領域については、これを高関心度領域としては抽出しないようにしたものである。
【0015】
(6) 本発明の第6の態様は、上述した第4または第5の態様に係る電子書籍の試読データ作成装置において、
指示入力部が、電子書籍のデータファイルを閉じる指示が与えられたときに、当該電子書籍の選択を解除する指示が与えられたものと認識し、
読書ログ採取部が、指示が与えられた時点の閲覧対象パートを、当該電子書籍についての閲覧中断パートを示す読書ログとして採取するようにしたものである。
【0016】
(7) 本発明の第7の態様は、上述した第4〜第6の態様に係る電子書籍の試読データ作成装置において、
指示入力部が、電子書籍の閲覧中に「端末装置自身」または「端末装置の電子書籍閲覧機能」を待機状態もしくは停止状態にする指示が与えられたときに、当該電子書籍の選択を解除する指示が与えられたものと認識し、
読書ログ採取部が、当該指示が与えられた時点の閲覧対象パートを、当該電子書籍についての閲覧中断パートを示す読書ログとして採取するようにしたものである。
【0017】
(8) 本発明の第8の態様は、上述した第4〜第7の態様に係る電子書籍の試読データ作成装置において、
読書ログ採取部が、閲覧対象パートを指定する指示とともに当該指示が与えられた時刻を読書ログとして採取し、
関心度分布作成部が、読書ログから、同一の閲覧対象パートが継続して表示され続けた表示時間を認識し、当該表示時間が所定の許容範囲を超える場合には、当該閲覧対象パートを閲覧中断パートとして取り扱うようにしたものである。
【0018】
(9) 本発明の第9の態様は、上述した第1〜第3の態様に係る電子書籍の試読データ作成装置において、
関心度分布作成部が、作成対象書籍の個々のパートについての表示累積回数を正の関心度とカウントして関心度分布を作成するようにしたものである。
【0019】
(10) 本発明の第10の態様は、上述した第1〜第3の態様に係る電子書籍の試読データ作成装置において、
読書ログ採取部が、閲覧対象パートを指定する指示とともに当該指示が与えられた時刻を読書ログとして採取し、
関心度分布作成部が、読書ログから各閲覧対象パートの表示時間を認識し、作成対象書籍の個々のパートについての表示時間の積算値を正の関心度とカウントして関心度分布を作成するようにしたものである。
【0020】
(11) 本発明の第11の態様は、上述した第10の態様に係る電子書籍の試読データ作成装置において、
読書ログ格納部が、ユーザごとに区別して読書ログを格納し、
関心度分布作成部が、個々のパートについての表示時間をユーザごとに正規化した後に、正規化した表示時間の積算値を正の関心度とカウントして関心度分布を作成するようにしたものである。
【0021】
(12) 本発明の第12の態様は、上述した第10または第11の態様に係る電子書籍の試読データ作成装置において、
関心度分布作成部が、同一の閲覧対象パートが継続して表示され続けた表示時間が所定の許容範囲を超える場合は、当該表示時間については積算値に算入しないようにしたものである。
【0022】
(13) 本発明の第13の態様は、上述した第1〜第3の態様に係る電子書籍の試読データ作成装置において、
指示入力部が、選択中の電子書籍の特定箇所に、補助情報を付加する指示入力を受け付ける機能を有し、
閲覧制御部が、補助情報を記憶し、ディスプレイ上に特定箇所を表示する際に補助情報を付加して表示する機能を有し、
読書ログ採取部が、補助情報を付加する指示を含む読書ログを採取し、これをネットワークを介してサーバ装置に送信し、
関心度分布作成部が、作成対象書籍の個々のパートについての補助情報の付加頻度を正の関心度とカウントして関心度分布を作成するようにしたものである。
【0023】
(14) 本発明の第14の態様は、上述した第13の態様に係る電子書籍の試読データ作成装置において、
補助情報として、各種マーク、アンダーライン、もしくはメモを付加するようにしたものである。
【0024】
(15) 本発明の第15の態様は、上述した第1〜第14の態様に係る電子書籍の試読データ作成装置において、
試読データ作成部が、1つの高関心度領域の任意の位置に分割位置を設定し、高関心度領域の先頭から分割位置までのデータを試読データとするようにしたものである。
【0025】
(16) 本発明の第16の態様は、上述した第1〜第14の態様に係る電子書籍の試読データ作成装置において、
試読データ作成部が、1つの高関心度領域の任意の位置に分割位置を設定し、分割位置から所定分量だけ遡った位置までのデータを試読データとするようにしたものである。
【0026】
(17) 本発明の第17の態様は、上述した第1〜第14の態様に係る電子書籍の試読データ作成装置において、
試読データ作成部が、1つの高関心度領域の任意の位置に分割位置を設定し、分割位置から、当該分割位置を含む段落、節、章もしくは書籍全体の先頭まで遡った位置までのデータを試読データとするようにしたものである。
【0027】
(18) 本発明の第18の態様は、上述した第1〜第14の態様に係る電子書籍の試読データ作成装置において、
試読データ作成部が、各高関心度領域の任意の位置にそれぞれ分割位置を設定し、設定した分割位置を境界として各高関心度領域をそれぞれ前半部分と後半部分とに分割し、配信対象データ格納部内に格納されている1冊の書籍の電子書籍データから、各高関心度領域の後半部分を除いたデータを試読データとするようにしたものである。
【0028】
(19) 本発明の第19の態様は、ネットワークを利用して提供する電子書籍について、試読データを作成する電子書籍の試読データ作成方法において、
ユーザの指示入力に基づいて、電子書籍の内容をディスプレイに表示して、これをユーザに閲覧させる機能をもった端末装置が、ユーザの閲覧履歴を読書ログとして採取し、これをネットワークを介して送信する読書ログ送信段階と、
試読データを作成するサーバ装置が、複数の端末装置からネットワークを介して送信されてきた読書ログを受信する読書ログ受信段階と、
サーバ装置が、受信した読書ログを解析することにより、特定の電子書籍の個々のパートについてユーザの興味の度合いを示す関心度を求め、特定の電子書籍についての関心度分布を作成する関心度分布作成段階と、
サーバ装置が、関心度分布の関心度にしきい値を設定し、関心度がしきい値以上となる高関心度領域を抽出する高関心度領域抽出段階と、
サーバ装置が、特定の電子書籍の電子書籍データに基づいて、高関心度領域から前半部分のデータを抜粋する処理もしくは高関心度領域の後半部分のデータを削除する処理を行うことにより試読データを作成する試読データ作成段階と、
を行うようにしたものである。
【0029】
(20) 本発明の第20の態様は、上述した第19の態様に係る電子書籍の試読データ作成方法において、
関心度分布作成段階で、読書ログを解析することにより、ユーザが閲覧を中断したと推定される閲覧中断パートを認識し、電子書籍の個々のパートについて、閲覧中断パートとなった中断累積回数を負の関心度とカウントして関心度分布を作成するようにしたものである。
【0030】
(21) 本発明の第21の態様は、上述した第19の態様に係る電子書籍の試読データ作成方法において、
関心度分布作成段階で、読書ログを解析することにより、個々のパートについての表示累積回数、表示時間の積算値、もしくはユーザによる補助情報の付加頻度を正の関心度とカウントして関心度分布を作成するようにしたものである。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、ユーザが端末装置を用いて電子書籍を閲覧すると、その閲覧履歴が読書ログとして採取され、ネットワークを介してサーバ装置に送信される。サーバ装置では、多数のユーザの読書ログに基づいて、各書籍の個々のパート(たとえば、個々の頁)についてユーザの関心度の分布を示す関心度分布が作成され、関心度が所定のしきい値以上となる領域が高関心度領域として抽出される。そして、この高関心度領域の前半部分のデータにより試読データが作成される。
【0032】
高関心度領域は、当該書籍の中で、多数のユーザが「おもしろい」と感じたであろうと推定される部分である。そして、本発明によって作成される試読データは、少なくとも1つの高関心度領域について、前半部分のデータは含むが後半部分のデータは含まない構成になっているため、当該前半部分を試読したユーザには「続き(後半部分)を読みたい」という衝動が生じることになる。このため、ユーザの購買意欲を誘うのに効果的な試読データを作成することが可能になる。
【0033】
しかも、本発明に係る試読データは、ネットワークを介して集められた多数のユーザの読書ログに基づいて、サーバ装置の自動処理によって作成される。したがって、人手による作業は不要であり、大量の書籍を電子書籍としてインターネットで配信する場合にも、効率的に試読データの自動作成が可能になる。すなわち、電子書籍を既に購入したユーザや、モニターに応募してきたユーザに協力を依頼しておけば、これらのユーザが普通に電子書籍の閲覧行為を行えば、自動的に読書ログが採取され、これら読書ログに基づいて試読データが作成されることになるので、極めて合理的な方法で適切な試読データの自動作成が可能になる。
【0034】
一冊の本を読み終えるまでには、途中の何カ所かで読書を中断するのが一般的である。そして、通常、ユーザは、「おもしろい」と思っている部分は一気に読み進み、「おもしろさ」が一段落した部分で読書を中断する傾向がある。そこで、読書ログを解析して、読書の中断が行われた箇所を認識し、当該中断箇所について負の関心度を付与するようにすれば、多くのユーザが読書を中断しやすい箇所の関心度は低下するので、逆に、多くのユーザが読書を中断しにくい箇所(すなわち、多くのユーザが「おもしろい」と感じている箇所)を高関心度領域として抽出することが可能になる。
【0035】
また、ユーザが何回も繰り返し読んだ部分(表示累積回数の高い部分)、じっくりと時間をかけて読んだ部分(表示時間の長い部分)、補助情報を付加した部分(アンダーラインを付加した部分等)に正の関心度を付与するようにすれば、ユーザが興味をもった部分を高関心度領域として抽出することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る電子書籍の試読データ作成装置の基本構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す端末装置100における電子書籍の閲覧状態の一例を示す図である。
【図3】図1に示す指示入力部140が取り込むユーザの指示入力の一例を示す図である。
【図4】図1に示す読書ログ採取部150が採取する読書ログの一例を示す図である。
【図5】図1に示す関心度分布作成部240が、図4に示す読書ログに基づいて認識する閲覧中断パートを示す図である。
【図6】図1に示す関心度分布作成部240によって作成される関心度分布のグラフおよびこれに基づいて高関心度領域抽出部250によって抽出される高関心度領域の一例を示す図である。
【図7】図1に示す関心度分布作成部240が、表示時間をユーザごとに正規化する処理の一例を示すグラフである。
【図8】図1に示す関心度分布作成部240によって作成される関心度分布のグラフおよびこれに基づいて高関心度領域抽出部250によって抽出される高関心度領域の別な一例を示す図である。
【図9】図1に示す試読データ作成部260による試読データ作成処理のいくつかの例を示す図である。
【図10】本発明に係る電子書籍の試読データ作成方法の基本手順を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。
【0038】
<<< §1. 試読データ作成装置の基本構成 >>>
図1は、本発明に係る電子書籍の試読データ作成装置の基本構成を示すブロック図である。この装置は、ネットワークを利用して提供する電子書籍について、試読データを作成するための装置であり、図示のとおり、端末装置100とサーバ装置200によって構成されている。ここで、端末装置100とサーバ装置200は、いずれもネットワーク300(この例では、インターネット)に接続されており、相互に情報のやりとりを行うことができる。
【0039】
端末装置100は、ユーザが電子書籍の閲覧に利用する機器であり、図の上段に示すとおり、電子書籍データ格納部110、閲覧制御部120、ディスプレイ130、指示入力部140、読書ログ採取部150を備えている。
【0040】
ここで、電子書籍データ格納部110は、サーバ装置200からネットワーク300を介して配信されてきた電子書籍データを格納する機能を有する。具体的には、ハードディスクドライブ、SSD(Solid State Drive)、半導体メモリなどの記憶装置と、ネットワーク300経由で電子書籍データをダウンロードして記憶装置に格納する処理を行う入出力装置と、によって電子書籍データ格納部110を構成することができる。図には、電子書籍データファイルF1,F2,F3が格納された状態が示されている。なお、ここでは説明の便宜上、ファイルF1,F2,F3として内容が格納されている電子書籍についても同じ符号を用いて、電子書籍F1,F2,F3と呼ぶことにする。
【0041】
この電子書籍データ格納部110内に格納されている電子書籍の内容は、閲覧制御部120によって読み出され、ディスプレイ130上に表示される。どの電子書籍のどの部分を表示させるかは、ユーザの指示入力に基づいて決定される。ここでは、ユーザが閲覧対象として選択した電子書籍を「閲覧対象書籍」と呼び、当該「閲覧対象書籍」のうち、ユーザが指定した特定の部分を「閲覧対象パート」と呼ぶことにする。
【0042】
指示入力部140は、ユーザから、特定の電子書籍を閲覧対象書籍として選択する指示もしくは当該選択を解除する指示と、選択中の電子書籍の特定のパートを閲覧対象パートとして指定する指示と、を含む指示入力を受け付ける機能を果たす。閲覧制御部120は、この指示入力に基づいて、電子書籍データ格納部110から閲覧対象書籍の閲覧対象パートに関するデータを読み出し、読み出したデータに基づいてディスプレイ130上に電子書籍の内容を表示する処理を行う。
【0043】
一方、読書ログ採取部150は、指示入力部140が取り込んだ指示入力の一部もしくは全部の履歴を読書ログとして採取し、これをネットワーク300を介してサーバ装置200に送信する処理を行う。指示入力部140が取り込んだ指示入力のうち、どの部分を読書ログとして採取するかは、後述するサーバ装置200側で行われる処理を考慮して、適宜決めておけばよい。より具体的には、関心度分布作成部240の処理に必要な情報を読書ログとして採取すればよい。
【0044】
この図1に示す端末装置100は、専用のブックリーダとして構成することもできるし、パソコン、タブレット型端末装置、スマートフォンなどに専用のアプリケーションプログラムを組み込むことによって構成することもできる。この端末装置100の構成要素のうち、電子書籍データ格納部110、閲覧制御部120、ディスプレイ130、指示入力部140は、電子書籍の閲覧機能をもった一般的な端末装置が備えている構成要素であり、これらの構成要素自体は、公知のものである。本発明に利用する端末装置100の特徴は、これらの構成要素に、更に読書ログ採取部150を付加した点にある。結局、本発明に利用する端末装置100は、従来の電子書籍の閲覧機能をもった一般的な端末装置に、読書ログ採取部150としての処理機能をもった専用プログラムを組み込むことにより構成することができる。
【0045】
ここで、パソコン、タブレット型端末装置、スマートフォンなどを用いて端末装置100を構成した場合、ダウンロードした電子書籍データファイルF1,F2,F3は、通常、ハードディスクドライブやSSDに保存される。この場合、指示入力部140が特定のファイルを開くコマンド入力を受け付けたときに、当該特定のファイルのデータをRAMなどのメモリ上に展開し、そのうちの一部をディスプレイ130上に表示する形態をとることになる。図1に示す電子書籍データ格納部110は、このような場合におけるハードディスクドライブ,SSD,RAMメモリなどをすべて包括したデータの格納場所を示すものである。
【0046】
なお、図1には、便宜上、1台の端末装置100しか示されていないが、実用上、本発明を実施する際には、複数の端末装置100を用いるのが好ましい。上述したとおり、本発明に用いる端末装置100は、パソコン、タブレット型端末装置、スマートフォンなど、ネットワーク300に接続する機能をもった一般的な端末装置に、読書ログ採取部150としての処理機能をもった専用プログラムを組み込むことにより構成することができる。したがって、実用上は、この専用プログラムをネットワーク300を介して多数のユーザが利用している端末装置にダウンロードして利用してもらうことにより、多数のユーザに端末装置100を提供することができる。したがって、以下の説明では、図1に示すような構成をもった端末装置100が多数用意されている実施形態を述べることにする。
【0047】
一方、図1の下段に示すとおり、サーバ装置200は、配信対象データ格納部210、読書ログ格納部220、読書ログ抽出部230、関心度分布作成部240、高関心度領域抽出部250、試読データ作成部260を備えている。
【0048】
配信対象データ格納部210は、各端末装置100に対する配信対象となる電子書籍データを格納し、必要に応じてこれを各端末装置100に配信する処理を行う。図には、電子書籍データファイルF1,F2,F3が格納された状態が示されている。端末装置100側の電子書籍データ格納部110内に格納されている電子書籍データファイルF1,F2,F3は、サーバ装置200側の配信対象データ格納部210から配信を受けたファイルである。
【0049】
もちろん、実際には、配信対象データ格納部210には大量の電子書籍のデータファイルが格納されており、ユーザは、必要に応じて、所望の電子書籍のデータファイルを自己の使用する端末装置100にダウンロードして利用することができる。こうしてダウンロードされた電子書籍データファイルF1,F2,F3は、試読データではなく、完全な電子書籍を構成するデータである。したがって、ユーザは、これらダウンロードした電子書籍を自由に閲覧することができ、上述したとおり、その閲覧履歴は読書ログとして採取され、サーバ装置200に送信される。
【0050】
読書ログ格納部220は、端末装置100側の読書ログ採取部150からネットワーク300を介して送信されてきた読書ログを格納する構成要素である。上述したとおり、ここに示す実施形態の場合、ネットワーク300に接続されている多数の端末装置100から、多数のユーザの読書ログが送信されてくるので、読書ログ格納部220は、各端末装置から送信されてきた多数のユーザの読書ログを逐次格納する処理を行う。
【0051】
もっとも、このような読書ログは、ユーザの読書パターンや嗜好を示す個人情報であるから、ユーザ本人の了解なしに収集すると、法的あるいは倫理的な問題が生じるおそれがある。したがって、本発明を利用して多数のユーザから実際に読書ログを収集するには、予めユーザに読書ログを採取する了解をとり、協力を求める必要があろう。
【0052】
たとえば、配信対象データ格納部210に、電子書籍のネット販売を行う機能をもたせておき、電子書籍の購入を希望するユーザに対しては、課金を条件に、電子書籍データファイルを配信し、その時点で、読書ログの採取に協力してくれるか否かを尋ねるような運用を行えばよい。実用上は、たとえば、採取に協力してくれるユーザには、電子書籍を割引販売するなどの措置をとれば、確実に協力者を増やすことができるであろう。あるいは、無償もしくは格安料金で電子書籍を配信するという条件で、読書ログの採取に協力してくれるモニターを募集し、応募してきたユーザに協力してもらうような運用も可能である。
【0053】
サーバ装置200は、このような協力者となるユーザから採取した多数の読書ログを解析することにより、もとの電子書籍データの中から試読に適した部分を抜粋して試読データを自動作成する処理を行うことになる。こうして作成された試読データは、その他の一般ユーザに配布され、これら一般ユーザに対する購買意欲を刺激する役割を果たす。もちろん、電子書籍を購入した一般ユーザは、今度はモニターとして読書ログの採取に協力することができる。
【0054】
採取した読書ログに基づいて試読データを作成するために、サーバ装置200では、次のような処理が実行される。まず、読書ログ抽出部230が、読書ログ格納部220から、試読データの作成対象となる作成対象書籍に関する読書ログを抽出する。たとえば、電子書籍F1(電子書籍データファイルF1として提供される電子書籍)が試読データの作成対象となる作成対象書籍である場合、読書ログ抽出部230は、読書ログ格納部220に収集されている多数のユーザの読書ログの中から、電子書籍F1に関する読書ログを抽出する。
【0055】
続いて、関心度分布作成部240は、この抽出された多数のユーザの読書ログを解析することにより、作成対象書籍F1について、個々のパートごとのユーザの関心度を求め、関心度のパート単位の分布を示す関心度分布を作成する。たとえば、書籍の「1頁」を「1パート」とする取り扱いをすることにすれば、読書ログを解析することにより、作成対象書籍F1の個々の頁単位で関心度が求められ、1頁目〜最終頁に至るまでの関心度の分布が得られることになる。ここで、「関心度」とは、個々のパート(個々の頁)ごとのユーザの興味の度合いを数値として示すパラメータであり、ユーザが閲覧時にどの程度「おもしろい」と感じたかを示す指標になる。
【0056】
もちろん、「おもしろい」と感じるか否かは、ユーザの個人差に依存するものである。したがって、本発明の原理上、たった一人のユーザの読書ログを用いて試読データの作成を行うことも可能であるが、実用上は、複数のユーザ、より好ましくは、できるだけ多数のユーザに協力してもらい、標準的な嗜好をもつ仮想のユーザを想定して関心度を求めるようにするのが好ましい。また、ユーザが書籍の各部分を「おもしろい」と感じたか否かの判断材料は、当該ユーザから採取された読書ログのみであるから、ここで求められる関心度は、あくまでも状況証拠による推定値であり、ユーザ自身の評価に直接関係する値ではない。この「関心度」の具体的な定義方法については、後の§3,§4で詳述する。
【0057】
さて、「関心度」は数値のパラメータであるから、関心度分布は、書籍の1頁目〜最終頁に至るまでの数値の変化グラフとして把握することができる。高関心度領域抽出部250は、この関心度分布に基づいて、関心度が所定のしきい値以上となる高関心度領域を抽出する処理を行う。たとえば、書籍の「1頁」を「1パート」とした場合、1頁ごとに1つの関心度が定義されるので、全100頁の書籍の関心度分布は、100個の数値の羅列によって構成される。そこで、この関心度を示す数値が所定のしきい値以上となる頁だけを抽出すると、たとえば、15〜20頁、32頁、52〜65頁、92〜100頁のような頁群が抽出されることになる。これらの頁群が、それぞれ高関心度領域であり、書籍全体のうち、ユーザがしきい値以上の関心度を示した部分(すなわち、「おもしろい部分」)ということになる。
【0058】
本発明における試読データの作成原理は、このような「おもしろい部分」を途中で分割し、前半部分と後半部分とに分け、前半部分のみを試読データとして採用し、後半部分はわざと試読データから脱落させるようにする、という考え方にある。多くのユーザが「おもしろい部分」と評価した高関心度領域の前半部分だけを試読データとして提示すれば、この前半部分を試読したユーザは、続きとなる後半部分も読んでみたいという衝動に駆られることになろう。このため、ユーザの購買意欲を誘うのに効果的な試読データを作成することが可能になる。
【0059】
このような原理に基づいて試読データの作成を行うため、試読データ作成部260は、配信対象データ格納部210内に格納されている作成対象書籍F1の電子書籍データを利用し、少なくとも1つの高関心度領域についての前半部分のデータを含むが後半部分のデータは含まない試読データを作成する処理を行う。なお、試読データの具体的な作成方法については、§6で詳述する。
【0060】
かくして、サーバ装置200は、多数のユーザの読書ログに基づく自動処理によって、ユーザの購買意欲を誘うのに効果的な試読データを作成することができる。この試読データの作成プロセスには、人手による作業は不要であり、大量の書籍を電子書籍としてインターネットで配信する場合にも、効率的に試読データの作成が可能になる。
【0061】
<<< §2. 指示入力および読書ログの具体例 >>>
続いて、図1に示す指示入力部140によって取り込まれる指示入力および読書ログ採取部150によって採取される読書ログの具体例を示しておく。上述したとおり、指示入力部140は、ユーザから、特定の電子書籍を閲覧対象書籍として選択する指示もしくは当該選択を解除する指示と、選択中の電子書籍の特定のパートを閲覧対象パートとして指定する指示と、を含む指示入力を受け付け、この指示入力に基づいて、閲覧制御部120は、電子書籍データ格納部110から閲覧対象書籍の閲覧対象パートに関するデータを読み出し、読み出したデータに基づいてディスプレイ130上に電子書籍の内容を表示する処理を行う。
【0062】
図1に示す例の場合、電子書籍データ格納部110内には、3つの電子書籍データファイルF1,F2,F3が格納されているので、ユーザは、まず、これらのうちの1つを閲覧対象書籍として選択する指示を与え、続いて、選択された閲覧対象書籍の中の閲覧対象パートを指定する指示を与えることになる。閲覧対象パートは、ディスプレイ130の画面上に表示される部分であり、ここでは、「1頁」を「1パート」として取り扱う実施例を説明する。別言すれば、この実施例の場合、ディスプレイ130の画面には、1頁分ずつ表示されることになる。
【0063】
図2は、図1に示す端末装置100における電子書籍の閲覧状態の一例を示す図である。この例は、電子書籍データ格納部110内に格納されている第i番目の電子書籍Fi(芥川龍之介「蜘蛛の糸」)が閲覧対象書籍として選択され、更に、第j番目の頁Pjが閲覧対象パートとして指定された場合の例である。図の左側に示されているとおり、この例の場合、電子書籍データは、頁単位のデータの集合体から構成されており、ハッチングを施した頁Pjの内容が、図の右側に示すディスプレイ130の画面上に表示されている。
【0064】
図3は、図1に示す指示入力部140が取り込むユーザの指示入力の一例を示す図である。この例では、図示のとおり、「閲覧対象書籍の選択指示」,「閲覧対象書籍の選択解除指示」,「閲覧対象パート(頁)を指定する指示」,「補助情報を付加する指示」という4分類の指示入力が設定されている。
【0065】
「閲覧対象書籍の選択指示」としては、「ファイルを開く」コマンドと「ウインドウ選択」コマンドとが用意されている。「ファイルを開く」コマンドは、たとえば、3つの電子書籍データファイルF1,F2,F3を示すアイコンが表示されている状態において、閲覧対象となるアイコンをクリックしたり、タップしたりする操作によって入力することができる。あるいは、メニュー画面から「ファイルを開く」コマンドを選択する操作によっても入力可能である。図2に示す表示状態は、第i番目の電子書籍データファイルFiのアイコンをクリックして、電子書籍Fiを閲覧対象書籍として選択した結果である。
【0066】
また、「ウインドウ選択」コマンドは、電子書籍閲覧用アプリケーションプログラムが、複数のファイルを同時に開くことを許可する仕様になっている場合に用いられるコマンドである。一般に、パソコンに組み込まれた電子書籍閲覧用アプリケーションプログラムの場合、このような仕様が採用されていることが多い。この場合、ユーザが、たとえばファイルF1,F2の両方に対して「ファイルを開く」コマンドを実行すると、ディスプレイ130の画面上には2つの異なるウインドウが表示され、一方のウインドウにはファイルF1の内容が表示され、他方のウインドウにはファイルF2の内容が表示される。
【0067】
「ウインドウ選択」コマンドは、このように複数のウインドウが表示されている場合に、1つのウインドウをアクティブなウインドウとして選択するコマンドであり、たとえば、選択対象となるウインドウ内の1点をクリックする操作によって入力することができる。通常、アクティブになったウインドウは最前面に表示されるようになり、当該アクティブなウインドウ内に表示されている電子書籍が閲覧対象書籍として選択されたことになる。
【0068】
一方、「閲覧対象書籍の選択解除指示」は、上記「閲覧対象書籍の選択指示」による選択を解除するための指示入力であり、この実施例の場合、図示のとおり、「ファイルを閉じる」コマンド,「別なウインドウ選択」コマンド,「アプリケーション終了」コマンド,「スリープ」コマンド,「電源OFF」コマンドが用意されている。
【0069】
ここで、「ファイルを閉じる」コマンドは、文字どおり、現在開いているファイルを閉じるためのコマンドであり、「ファイルを閉じる」ボタンをクリックしたり、メニュー画面から「ファイルを閉じる」コマンドを選択する操作によって入力可能である。ファイルが閉じられた場合、当該ファイルに係る電子書籍については、閲覧対象書籍の選択が解除されることになり、もはや閲覧対象書籍ではなくなる。
【0070】
また、「別なウインドウ選択」コマンドは、上述したように、複数のウインドウが表示されている場合に、現在アクティブになっているウインドウ(現在の閲覧対象書籍の表示ウインドウ)とは異なる別なウインドウを選択するコマンドであり、実際には、上述した「ウインドウ選択」コマンドと同一の操作によって与えられるコマンドである。たとえば、2つのファイルF1,F2が同時に開いた状態になっており、ファイルF1の内容を表示中のウインドウがアクティブになっている状態において、ファイルF2に内容を表示中のウインドウ内の1点をクリックする操作を行うと、当該クリック操作は、ファイルF2については「ウインドウ選択」コマンドになり、電子書籍F2を新たな閲覧対象書籍に選択する指示入力になるが、ファイルF1については「別なウインドウ選択」コマンドになり、電子書籍F1の選択を解除する指示入力になる。
【0071】
なお、電子書籍閲覧用アプリケーションプログラムが、複数のファイルを同時に開くことを許可しない仕様になっている場合、すなわち、常に1つのファイルのみしか開くことができない仕様になっている場合は、ファイルF1が開かれている状態において、ファイルF2についての「ファイルを開く」コマンドは、ファイルF1についての「ファイルを閉じる」コマンドと同等の機能を果たすことになる。
【0072】
また、図3に示す「アプリケーション終了」コマンド,「スリープ」コマンド,「電源OFF」コマンドは、本来、閲覧対象書籍の選択を解除する意図で入力されるコマンドではないが、ここに示す実施形態の場合、「閲覧対象書籍の選択解除指示」に準じるものとして取り扱っている。
【0073】
すなわち、「アプリケーション終了」コマンドは、現在起動中の電子書籍閲覧用アプリケーションプログラムを終了するコマンドであり、当該コマンドを入力すれば、当然、当該アプリケーションプログラムで利用するために開いていたファイルは自動的に閉じられ、「ファイルを閉じる」コマンドが与えられた場合と同様の処理が行われる。一方、「スリープ」コマンドや「電源OFF」コマンドは、端末装置100自身を待機状態にしたり、停止状態にしたりするためのコマンドである。
【0074】
端末装置によっては、「スリープ」コマンドを与えた場合、アプリケーションプログラムは終了せず、開いているファイルも閉じずに待機状態へと移行し、その後、「スリープ解除」コマンドを与えることにより、元の状態への復帰処理が行われるケースもあるが、ここに示す実施例の場合、「スリープ」コマンドを「閲覧対象書籍の選択解除指示」として取り扱い、「スリープ解除」コマンドにより元の状態に復帰した時点で、再び「閲覧対象書籍の選択指示」が与えられたものとして取り扱うようにしている。
【0075】
また、「閲覧対象パート(頁)を指定する指示」は、現在選択されている閲覧対象書籍のうち、ディスプレイに表示させて閲覧対象とすべきパート(この実施例では頁)を指定する指示入力であり、この実施例の場合、図示のとおり、「デフォルト頁」の指定,「次頁」・「前頁」の指定,「特定頁」の指定という指示が設定されている。
【0076】
ここで、「デフォルト頁」の指定は、実際には、ユーザの意図的な頁指定操作によって取り込まれる指示入力ではなく、「ファイルを開く」コマンドの指示入力に付随して自動的に行われる指示入力である。すなわち、「ファイルを開く」コマンドの入力操作が行われた場合、前述したとおり、指定されたファイルを開く処理が行われるが、このとき、当該ファイルが初めて開くファイルか否かの判断がなされる。そして、初めて開くファイルの場合は、「先頭頁」が「デフォルト頁」とされ、自動的に「先頭頁」を指定する指示入力がなされる。一方、過去に開いた実績があるファイルの場合は、「前回ファイルを閉じたときの閲覧対象頁」が「デフォルト頁」とされ、自動的に「ファイルを閉じたときの閲覧対象頁」を指定する指示入力がなされる。
【0077】
結局、この「デフォルト頁」の指定機能により、ユーザが特定のファイルを開くと、当該ファイルが初めて開かれるファイルの場合は「先頭頁」を閲覧対象頁として指定する指示入力がなされ、そうでない場合は「前回、ファイルを閉じるときに表示されていた頁」を閲覧対象頁として指定する指示入力がなされることになる。
【0078】
一方、「次頁」・「前頁」の指定および「特定頁」の指定は、ユーザの意図的な頁指定操作によって取り込まれる指示入力である。すなわち、「次頁」の指定は、ユーザが「次頁」ボタンをクリックするなどの操作によって行う指示入力であり、現在、ディスプレイ上に表示されている頁(現在の閲覧対象頁)の次の頁を、新たな閲覧対象頁として指定する入力になる。同様に、「前頁」の指定は、ユーザが「前頁」ボタンをクリックするなどの操作によって行う指示入力であり、現在、ディスプレイ上に表示されている頁(現在の閲覧対象頁)の前の頁を、新たな閲覧対象頁として指定する入力になる。また、「特定頁」の指定は、ユーザが数字を入力するなどの操作によって行う指示入力であり、数字などで特定された任意の頁を新たな閲覧対象頁として指定する入力になる。
【0079】
最後に示されている「補助情報を付加する指示」は、現在ディスプレイ上に表示されている書籍の特定箇所に対して、ユーザが意図的に何らかの補助情報を付加するために行う指示入力である。図示の例では、「ハイライト」の指定,「アンダーライン」の指定,「メモ」の添付という指示入力の例が示されている。「ハイライト」の指定は、ディスプレイ上の特定箇所をハイライト表示する旨の指定であり、たとえば、「ハイライトツール」をクリックした後、ディスプレイ画面上の特定の表示箇所をドラッグ操作することにより、当該特定の表示箇所を「ハイライト」表示すべき旨の補助情報が付加される。同様に「アンダーライン」の指定は、ディスプレイ上の特定箇所にアンダーラインを付加する旨の指示入力であり、「メモ」の添付は、ディスプレイ上の特定箇所にメモ(ユーザが入力した文字列)を添付する旨の指示入力である。このような「補助情報を付加する機能」は、一般的な電子書籍閲覧用アプリケーションプログラムに備わっている公知の機能であるため、ここでは詳しい説明は省略する。
【0080】
このように、端末装置100の指示入力部140は、図3に示すような様々な指示入力を受け付ける機能を有している。ここで、「閲覧対象書籍の選択指示」および「閲覧対象書籍の選択解除指示」は、電子書籍データ格納部110内に格納されている電子書籍のうちのいずれを閲覧対象書籍として選択するかを指定する指示入力になり、「閲覧対象パートを指定する指示」は、選択中の閲覧対象書籍の特定のパートを閲覧対象パートとして指定する指示入力になる。ここに示す実施例の場合、前述したとおり、閲覧対象パートを頁で指定する指示入力がなされ、閲覧制御部120は、閲覧対象パートとして指定された頁の内容をディスプレイ130上に表示することになる。
【0081】
一方、読書ログ採取部150は、指定された頁の表示履歴を読書ログとして採取し、関心度分布作成部240は、個々の頁ごとに関心度を求めることにより、関心度の頁単位の分布を示す関心度分布を作成し、高関心度領域抽出部250は、頁を最小単位とする領域として高関心度領域の抽出を行うことになる。
【0082】
もちろん、端末装置によっては、「2頁」を「1パート」として取り扱い、左右見開き2頁分をディスプレイ画面に表示するケースもあるが、ここでは、「1頁」を「1パート」として取り扱う典型的な例について、以下の説明を行うことにする。
【0083】
図4は、図1に示す読書ログ採取部150が採取した読書ログの一例を示す図である。この例では、ある特定の電子書籍について、閲覧対象書籍として選択する指示が与えられてから、当該選択を解除する指示が与えられるまでの間、閲覧対象パートの指定履歴を時刻とともに記録した情報を単位読書ログとして採取している。ここで、単位読書ログは、F[(P,T),(P,T),(P,T),... ,(P,T)]という形式をもつデータであり、Fは閲覧対象書籍として選択された電子書籍のファイル名、Pは指定された閲覧対象パート(この例では、指定された頁)、Tは閲覧対象パートの指定が行われた時刻(たとえば、年月日時分秒のデータ)を示している。そして、閲覧対象パートPと時刻Tとは、(P,T)なるペアーデータの形式で記録され、ファイルFが選択されてから、当該選択が解除されるまでの間の閲覧対象パートの指定履歴が、(P,T)の羅列として記録される。
【0084】
図4に示す表は、このようにして採取された読書ログの実例を示している。ここで、L1,L2,L3は、それぞれ単位読書ログであり、P1〜P36は、それぞれの書籍の1頁〜36頁を示しており、T1〜T25は、ログの採取時刻を示している。これらの単位読書ログは、ユーザから次のような指示入力が与えられた場合に作成されたものである。
【0085】
まず、ユーザが、電子書籍F3を初めて閲覧するために、時刻T1において、ファイルF3のアイコンをクリックする操作を行い、「ファイルを開く」コマンドを入力したとしよう。当該コマンドにより、ファイルF3が開かれ、電子書籍F3が閲覧対象書籍として選択される。これにより、F3[ ]なる単位読書ログL1の入れ物が作成される。ファイルF3は初めて開かれたファイルであるから、上記「ファイルを開く」コマンドの指示入力に伴って、自動的に「デフォルト頁」の指定がなされ、「先頭頁」すなわち「P1」が閲覧対象パートとして指定される。その結果、(P1,T1)なるペアデータが作成される。この時点での単位読書ログL1は、F3[(P1,T1)]ということになる。
【0086】
こうして、ユーザは、ディスプレイ画面に表示された電子書籍F3のP1(1頁目)を閲覧することになるが、P1を読み終えて、続く時刻T2において、「次頁」の指定を行う指示入力を行うと、閲覧対象パートはP2となり、ディスプレイ画面にはP2(2頁目)が表示される。このとき、(P2,T2)なるペアデータが作成され、この時点での単位読書ログL1は、F3[(P1,T1),(P2,T2)]ということになる。
【0087】
図4に示す表に示されている単位読書ログL1は、このようなユーザの指示入力に基づいて採取されたものである。具体的には、P2を読み終えたユーザが「次頁」の指定を次々と行い、P3,P4,P5まで読み進み、ここで「前頁」の指定を行ってP4に戻り、続いて「次頁」の指定を次々と行い、P5,P6,P7まで読み進み、最後に、時刻T10に「ファイルを閉じる」コマンドを入力した場合に、図示の単位読書ログL1が採取されることになる。最後の(φ,T10)は時刻T10に「ファイルを閉じる」コマンドが与えられたことを示すログであり、「φ」は、頁の指定がないことを示す記号である。この時点でファイルF3が閉じられることにより、単位読書ログL1は完結する。
【0088】
続いて採取された単位読書ログL2は、ユーザの次のような指示入力に基づくものである。まず、ユーザは、電子書籍F1を閲覧するために、時刻T11において、ファイルF1のアイコンをクリックする操作を行い、「ファイルを開く」コマンドを入力する。当該コマンドにより、ファイルF1が開かれ、電子書籍F1が閲覧対象書籍として選択される。これにより、F1[ ]なる単位読書ログL2の入れ物が作成される。ここで、ファイルF1は過去に開いた実績のあるファイルであり、前回の「ファイルを閉じるときの閲覧対象頁」がP32であったものとしよう。このファイルF1の最後の閲覧対象頁がP32であったという事実は、ファイルF1に関する前回の単位読書ログ(図4には示されていない)に履歴が残っており、上述したように、ファイルF1に対する「ファイルを開く」コマンドの指示入力に伴って、「デフォルト頁」の指定がなされ、P32が自動的に閲覧対象頁として指定される。その結果、(P32,T11)なるペアデータが作成され、この時点での単位読書ログL2は、F1[(P32,T11)]ということになる。
【0089】
次に、P32を読み終えたユーザが「次頁」の指定を次々と行い、P33,P34まで読み進み、ここで「特定頁」の指定を行ってP1に戻り、続いて「次頁」の指定を行い、P2へと読み進み、ここで再び「特定頁」の指定を行ってP34に戻り、続いて「次頁」の指定を行い、P35,P36まで読み進み、最後に、時刻T19に「ファイルを閉じる」コマンドを入力した場合に、図示の単位読書ログL2が採取されることになる。最後の(φ,T19)は時刻T19に「ファイルを閉じる」コマンドが与えられたことを示すログであり、「φ」は、頁の指定がないことを示す記号である。こうしてファイルF1が閉じられることにより、単位読書ログL2は完結する。
【0090】
一方、最後に示す単位読書ログL3は、ユーザの次のような指示入力に基づくものである。まず、ユーザは、電子書籍F3を再度閲覧するために、時刻T20において、ファイルF3のアイコンをクリックする操作を行い、「ファイルを開く」コマンドを入力する。当該コマンドにより、ファイルF3が開かれ、電子書籍F3が閲覧対象書籍として選択される。これにより、F3[ ]なる単位読書ログL3の入れ物が作成される。ここで、ファイルF3は、前回開いたファイルであり、単位読書ログL1を参照すれば、前回の「ファイルを閉じるときの閲覧対象頁」がP7であったことが認識できるので(L1の(P7,T9)参照)、ディスプレイ画面上には、ファイルF3のP7が表示される。すなわち、ファイルF3に対する「ファイルを開く」コマンドの指示入力に伴って、「デフォルト頁」の指定がなされ、P7が自動的に閲覧対象頁として指定される。その結果、(P7,T20)なるペアデータが作成され、この時点での単位読書ログL3は、F3[(P7,T20)]ということになる。
【0091】
次に、P7を読み終えたユーザが「次頁」の指定を次々と行い、P8〜P11まで読み進み、最後に、時刻T25に「ファイルを閉じる」コマンドを入力した場合に、図示の単位読書ログL3が採取されることになる。最後の(φ,T25)は時刻T25に「ファイルを閉じる」コマンドが与えられたことを示すログであり、「φ」は、頁の指定がないことを示す記号である。ファイルF3が閉じられることにより、単位読書ログL3は完結する。
【0092】
図4に例示する単位読書ログは、上例のようなユーザの指示入力に基づいて採取されたものである。なお、上例の指示入力は一例として示したものであり、ユーザの別な操作によっても、同様の読書ログが採取可能である。たとえば、上例の指示入力では、いずれも「ファイルを閉じる」コマンドを与えることにより、現在選択中のファイルの選択解除を行う例を示したが、前述のとおり、「別なウインドウ選択」コマンド、「アプリケーション終了」コマンド、「スリープ」コマンド、「電源OFF」コマンドなどを行った場合にも、閲覧対象書籍の選択が解除され、各単位読書ログは完結する。
【0093】
なお、ここでは、補助情報を付加する指示が与えられた場合の読書ログの形式についての説明は省略するが、補助情報を付加する位置を示すデータと、補助情報自体を示す情報とを含んだデータであれば、どのような形式のデータで読書ログを構成してもかまわない。
【0094】
<<< §3. 負の関心度の定義例 >>>
続いて、ここでは、図1に示す関心度分布作成部240によって求められる具体的な関心度の定義例を説明する。既に述べたとおり、本発明における「関心度」とは、ある書籍の個々のパートごとのユーザの興味の度合いを示すパラメータであり、「関心度」の値が大きければ大きいほど、多くのユーザが当該パートを「おもしろい」と評価していることになる。ここに示す実施例の場合、書籍の「1頁」を「1パート」とする取り扱いをしているため、個々の頁ごとに関心度、すなわち、「おもしろさ」の評価値が付与されることになる。
【0095】
ここで、特定の書籍について、頁ごとの関心度を決定する手掛かりは、端末装置から送信されてきた当該特定の書籍についての多数のユーザの読書ログである。図4に示す例の場合、読書ログは、いつ、どの書籍の、どの頁がディスプレイ上に表示されていたかを示す情報になっている。もちろん、実際にユーザが読書をしていたのか、あるいは単にディスプレイ画面上に該当頁が表示されていただけなのか、を区別することはできない。したがって、本発明では、ディスプレイ画面上に特定の頁(パート)が表示されていた場合に、ユーザが当該頁(パート)を閲覧していたと類推し、以下に述べる処理を実行することになる。
【0096】
さて、図4に示すような読書ログに基づいて、ユーザの個々の頁に対する関心度を推定する方法には、いくつかのバリエーションがある。ここでは、まず、関心度に符号を付与し、正の関心度と負の関心度とを定義することにする。正の関心度は、「おもしろさ」の程度を数値で表現した値であり、数値が大きければ、それだけユーザが「おもしろい」と感じていることを示す。逆に、負の関心度は、「おもしろくなさ」の程度を数値で表現した値であり、数値が大きければ、それだけユーザが「おもしろくない」と感じていることを示す。この§3では、まず、負の関心度の定義例を説明する。
【0097】
ここで、負の関心度として利用するパラメータは、「読書の中断」に着目したものである。通常、ユーザは、一冊の本を読み終えるまでに、途中の何カ所かで読書を中断する。しかも、ユーザは、「おもしろい」と思っている部分は一気に読み進み、「おもしろさ」が一段落した部分で読書を中断する傾向にある。そこで、読書ログを解析して、読書の中断が行われた箇所を認識し、当該中断箇所について負の関心度を付与するようにすれば、多くのユーザが読書を中断しやすい箇所の関心度は低下する。いわば、各頁について、減点法で関心度を定義する方法をとることになる。
【0098】
§2で述べたとおり、指示入力部140は、電子書籍のデータファイルを閉じるコマンドが与えられたときに、当該電子書籍の選択を解除する指示(すなわち、当該書籍の閲覧を中断する指示)が与えられたものと認識することができる。そして、読書ログ採取部150は、当該指示が与えられた時点の閲覧対象パートを、当該電子書籍についての閲覧中断パートを示す読書ログとして採取することができる。したがって、関心度分布作成部240は、この読書ログに基づいて、各電子書籍の閲覧中断パートを把握することができる。
【0099】
もちろん、図3に「閲覧対象書籍の選択解除指示」として例示したように、データファイルを閉じるコマンド以外にも、電子書籍の選択を解除する指示として取り扱われるコマンドを設定しておくことができる。すなわち、指示入力部140は、電子書籍の閲覧中に「端末装置自身」または「端末装置の電子書籍閲覧機能(たとえば、電子書籍閲覧用アプリケーションプログラム)」を待機状態もしくは停止状態にする指示が与えられたときに、当該電子書籍の選択を解除する指示が与えられたものと認識することができる。この場合も、読書ログ採取部150は、当該指示が与えられた時点の閲覧対象パートを、当該電子書籍についての閲覧中断パートを示す読書ログとして採取することができ、関心度分布作成部240は、この読書ログに基づいて、各電子書籍の閲覧中断パートを把握することができる。
【0100】
図5は、図1に示す関心度分布作成部240が、図4に示す読書ログに基づいて認識する閲覧中断パートを示す図である。§2で述べたように、ユーザが端末装置100を用いて電子書籍の読書を行うと、読書ログ採取部150によって、図4に示すような読書ログが採取され、ネットワーク300を介してサーバ装置200側へ送信され、読書ログ格納部220に格納される。この読書ログは、電子書籍ごとに読書ログ抽出部230によって抽出され、関心度分布作成部240による解析が行われる。
【0101】
たとえば、単位読書ログL1を解析すれば、電子書籍F3は、P7を最後の閲覧対象頁として閲覧が中断されたことが認識でき、単位読書ログL2を解析すれば、電子書籍F1は、P36を最後の閲覧対象頁として閲覧が中断されたことが認識でき、単位読書ログL3を解析すれば、電子書籍F1は、P11を最後の閲覧対象頁として閲覧が中断されたことが認識できる。したがって、単位読書ログL1,L2,L3からは、電子書籍F3について、P7およびP11が閲覧中断パートとして認識され、電子書籍F1について、P36が閲覧中断パートとして認識される。
【0102】
このように、関心度分布作成部240が、多数のユーザの読書ログを解析して、電子書籍の選択解除時の閲覧対象パートを当該電子書籍の閲覧中断パートと認識し、電子書籍の個々のパートについて、閲覧中断パートとなった回数を示す中断累積回数を求めれば、この中断累積回数を負の関心度とカウントして関心度分布を作成することができる。
【0103】
たとえば、上例の場合、電子書籍F3については、単位読書ログL1,L3に基づいて、P7およびP11に対して、中断累積回数のカウント値を1だけ増加させる処理が実行されることになる。このようなカウント処理を多数のユーザから得られた読書ログについて行えば、図6に示すような関心度分布を得ることができる。図6に示すグラフは、ある1冊の電子書籍についての関心度分布を示すグラフである。ここで、グラフの横軸は当該電子書籍の頁であり、左端が先頭頁、右端が最終頁を示している。また、グラフの縦軸は個々の頁についての中断累積回数である。この関心度分布は、多数のユーザからの読書ログに基づいて、個々の頁ごとに閲覧中断パートとなった回数をカウントした集計値であるから、実際には、グラフの横軸は連続量ではなく頁単位の離散値になるが、図では説明の便宜上、連続したグラフを示してある。
【0104】
なお、同一頁があまりにも長時間にわたってディスプレイ画面上に表示され続けている場合にも、閲覧の中断が行われたものとして取り扱うことができる。たとえば、通常であれば、1頁の平均閲覧時間が1分程度であるにもかかわらず、同一頁が5分以上も表示され続けているような場合、ユーザは、通常の閲覧状態にはない可能性が高い。もしユーザが通常の読書を行っているのであれば、1分程度の時間が経過したら「次頁」の指定などの指示入力を行い、頁をめくる操作を行うのが普通である。それにもかかわらず、5分間も何ら操作が行われていない、というケースでは、ユーザは、実際には読書しておらず、何らかの用事で離席してしまっているか、別な作業を行っている可能性が高い。
【0105】
ここに示す実施例の場合、読書ログ採取部150は、図4に例示するように、閲覧対象パートPを指定する指示とともに当該指示が与えられた時刻Tを読書ログとして採取する機能を有している。したがって、関心度分布作成部240は、この読書ログから、同一の閲覧対象パート(この例の場合は同一の頁)が継続して表示され続けた表示時間を認識し、当該表示時間が所定の許容範囲(たとえば、5分)を超える場合には、当該閲覧対象パートを閲覧中断パートとして取り扱うようにすればよい。
【0106】
たとえば、図4に示す単位読書ログL1において、時刻T7と時刻T8との間が5分以上空いていた場合、ユーザは時刻T7において頁P5を表示させる指示を与えた後、実際には読書を中断していたと推定できるので、P5を閲覧中断パートとしてカウントする処理を行うようにすればよい。
【0107】
こうして得られた図6に示すグラフにおいて、中断累積回数値が多い頁は、多くのユーザが読書を中断した頁ということになる。したがって、ユーザの一般的な読書傾向として、「おもしろい」と思っている部分は一気に読み進み、「おもしろさ」が一段落した部分で読書を中断する、という傾向が見られるという前提に立てば、中断累積回数値が多い頁は、「おもしろくない」部分ということができる。そこで、この中断累積回数を負の関心度を示すパラメータとして取り扱うことにすれば、グラフの左側に示すように、中断累積回数が多くなれば関心度は低くなり、中断累積回数が少なくなれば関心度は高くなる。
【0108】
図6に示す実施例では、この関心度分布に基づいて、関心度が所定のしきい値Th以上となる部分(中断累積回数は負の関心度であるから、図6のグラフでは、中断累積回数が水平線Th以下となる部分)を高関心度領域H1,H2,H3として抽出している。なお、領域H0も中断累積回数が水平線Th以下となる部分であるが、この実施例では、電子書籍の先頭領域については、これを高関心度領域としては抽出しない運用をとっているため、図示の領域H0は高関心度領域にはならない。このような運用をとるのは、一般に、書籍の先頭領域については、「おもしろくない」と感じても、読書を中断せずに読み進める傾向があるためである。
【0109】
結局、図6に示す例では、H1,H2,H3という3つの高関心度領域が抽出されたことになる。これらの領域は、いずれも連続した一群の頁から構成される部分であり、多くのユーザが読書中に中断することなしに一気に読み進んだ部分、すなわち、多くのユーザが「おもしろい」と感じているであろうと推定できる部分ということになる。もちろん、この高関心度領域の横幅や総数は、しきい値Thの値に依存して変わり、しきい値Thの設定によっては、書籍のほぼ全頁にわたるほど横幅の広い高関心度領域が1つだけ抽出されたり、高関心度領域が1つも抽出されなかったりする。したがって、実用上は、いくつかの書籍について、しきい値Thを様々な値に設定し、適切な高関心度領域が抽出されるようなしきい値Thを試行錯誤で決定するのが好ましい。
【0110】
<<< §4. 正の関心度の定義例 >>>
上述した§3では、中断累積回数を負の関心度として利用する例を述べた。これは、多くのユーザが読書を中断した箇所を「おもしくろない」箇所と認識し、関心度を減点する手法ということができる。ここでは、逆に、正の関心度を利用する例をいくつか述べることにする。これは、多くのユーザが「おもしろい」と感じているであろう箇所に積極的に加点する手法ということができる。
【0111】
< §4−1. 表示累積回数 >
正の関心度として利用できるパラメータの第1の例は、表示累積回数である。たとえば、全100頁の書籍を50人のユーザに閲読してもらい、各ユーザからの読書ログを解析し、個々の頁ごとにディスプレイの画面に表示された回数(すなわち、閲覧対象パートとして指定された回数)を累積してみたとしよう。この場合、もし各ユーザが、各頁を1回ずつ表示させて閲覧を行ったとすれば、いずれの頁もほぼ50回という累積値が得られることが予想される。ところが、たとえば、図4の単位読書ログL1を見ると、P4,P5が2回ずつ表示されている。これは、ユーザが閲覧中に「前頁」を指定して、P4,P5を再読しているためである。また、単位読書ログL2では、P34からP1,P2へ戻る操作が行われており、過去に閲覧した頁が再読されている。
【0112】
このように、100頁の書籍を一人のユーザが閲覧した場合でも、各頁の表示回数は必ずしも等しくはならず、頁によっては、2回、3回と繰り返し閲覧される場合がある。このように繰り返し閲覧される頁には、ユーザの興味を引く何らかの内容が含まれていると予想される。したがって、多数のユーザについての表示累積回数が多い頁は、多くのユーザが何度も読み返した頁であり、多くのユーザが「おもしろい」と感じている可能性が高い。そのような観点から、この表示累積回数を正の関心度として利用することができる。
【0113】
表示累積回数を正の関心度として利用する場合、関心度分布作成部240は、試読データを作成する対象となる書籍の個々のパート(頁)についての表示累積回数を正の関心度とカウントして関心度分布を作成すればよい。具体的には、図4に示すような単位読書ログの中から、各頁が出現する回数をカウントする作業を行えばよい。なお、読書を中断し、後に再開した場合、再開時には中断時の頁を「デフォルト頁」として自動的に中断時の頁を再表示する仕様を採用している端末装置の場合、当該中断箇所の頁は、中断時と再開時に重複してカウントされることになる。ところが、§3で述べたとおり、読書を中断した頁は、むしろ関心度の低い頁として取り扱うべきである。
【0114】
たとえば、図4に示す例の場合、単位読書ログL1では、P7で読書が中断されており、単位読書ログLでは、P7で読書が再開されているため、P7の表示回数のカウント値は2回になる。しかしながら、P7は、読書が中断された部分であるから、表示累積回数を正の関心度として取り扱う上では、2回もカウントするのは好ましくない。そこで、実用上は、たとえば、閲覧対象書籍としての選択を解除する指示が与えられた時点の表示頁は、累積回数のカウント対象から除外する、といった運用を採るのが好ましい。上例の場合、単位読書ログL1の(P7,T9)は累積回数のカウント対象から除外されることになる。
【0115】
< §4−2. 表示時間の積算値 >
正の関心度として利用できるパラメータの第2の例は、表示時間の積算値である。これは、「時間をかけて読まれた部分はおもしろい部分である」との仮説に基づいて定義した関心度である。すなわち、ユーザは「おもしろい」部分については、じっくりと時間をかけて読むであろうから、頁ごとに表示時間の積算値を求めれば、当該積算値は、正の関心度として利用することができる、という考え方に基づくものである。
【0116】
表示時間の積算値を正の関心度として利用する場合、読書ログ採取部150は、閲覧対象パート(頁)を指定する指示とともに当該指示が与えられた時刻を読書ログとして採取するようにし、関心度分布作成部240は、この読書ログから各閲覧対象パートの表示時間を認識し、試読データの作成対象となる書籍の個々のパートについての表示時間の積算値を正の関心度とカウントして関心度分布を作成すればよい。たとえば、図4に示すようなデータ形式の読書ログを作成するようにしておけば、閲覧対象頁が切り替わった時点の時間差を求めることにより、個々の頁の表示時間を算出することができる。たとえば、単位読書ログL1の先頭部分の(P1,T1)および(P2,T2)なるペアデータを参照すれば、P1の表示時間を「T2−T1」なる演算で算出することができる。
【0117】
なお、実際には、各ユーザの読書速度にはかなりの個人差があるので、読書ログから、ある頁について「1分」という表示時間が得られたとしても、速読派のユーザにとっては長い時間であるのに、遅読派のユーザにとっては短い時間である、というケースも少なくない。したがって、ある頁の表示時間が「1分」であった、という事実だけでは、ユーザが当該頁を普通の速度で読んだのか、あるいは、じっくりと読んだのかを正確に把握することはできない。
【0118】
そこで、より精度の高い関心度を得るには、読書ログ格納部220に、ユーザごとに区別して読書ログを格納するようにし、関心度分布作成部240が、個々のパート(頁)についての表示時間をユーザごとに正規化した後に、正規化した表示時間の積算値を正の関心度とカウントして関心度分布を作成するようにすればよい。
【0119】
図4に示す単位読書ログL1,L2,L3は、どのユーザについての読書ログであるかを示す情報をもっていないが、ユーザごとに読書ログを区別するためには、予め各ユーザにユーザ識別コードUiを付与しておき、読書ログには、このユーザ識別コードを付加するようにしておけばよい。たとえば、図4に示す各単位読書ログがユーザU1の閲覧行為によって作成されたものであれば、各単位読書ログのファイル名に、L1(U1),L2(U1),L3(U1)のようにユーザ識別コードU1を付加すればよい。関心度分布作成部240は、このユーザ識別コードによって、個々の単位読書ログをユーザごとに区分けすることができるので、ユーザごとに表示時間の正規化処理を行うことができる。
【0120】
図7は、関心度分布作成部240が、表示時間をユーザごとに正規化する処理の一例を示すグラフである。図7(a) に示すグラフU1,U2,U3は、3人のユーザU1,U2,U3についての各頁の表示時間の分布を示すグラフである。図示のとおり、3人のユーザの平均的な表示速度(読書速度と考えられる)は異なっており、また、同一のユーザであっても、頁ごとに表示速度に違いがある。この同一ユーザについての頁ごとの表示速度の相違が、関心度を示すパラメータとなる。
【0121】
そこで、ユーザごとに、1頁あたりの最小表示時間と最大表示時間とを求め、たとえば、最小表示時間を0とし、最大表示時間を1として、すべての表示時間が0〜1の範囲内に収まるような正規化を行う。図7(b) の下方に示されたグラフU1′,U2′,U3′は、図7(a) に示すグラフU1,U2,U3に対して、このような正規化を行うことによって得られたグラフである。もちろん、正規化の方法は、上記の方法に限定されるものではなく、この他にも、たとえば各グラフについて、それぞれグラフより下の部分の面積が一定値になるような正規化を行ってもかまわない。
【0122】
図7(b) の上方に示されたグラフΣは、正規化されたグラフU1′,U2′,U3′の和であり、全ユーザについて、それぞれ正規化された表示時間の積算値ということになる。このように、各ユーザの表示時間分布を正規化してから積算すれば、ユーザごとの読書速度の差を是正したより正確な関心度分布を得ることができる。
【0123】
なお、§3でも述べたが、同一頁があまりにも長時間にわたってディスプレイ画面上に表示され続けている場合は、ユーザは、通常の閲覧状態にはない可能性が高い。たとえば、単位読書ログによって、ある特定の頁の表示時間が5分と算出された場合、ユーザは、実際には読書しておらず、何らかの用事で離席してしまっているか、別な作業を行っている可能性が高い。したがって、5分という長い表示時間は、「ユーザが当該頁に興味をもってじっくりと読んでいる」ことを示しているわけではなく、これを正の関心度を示すパラメータとして積算することは好ましくない。したがって、関心度分布作成部240は、同一の閲覧対象パート(頁)が継続して表示され続けた表示時間が所定の許容範囲(たとえば、5分)を超える場合は、当該表示時間については積算値に算入しないようにする運用をとるのが好ましい。
【0124】
< §4−3. 補助情報の付加頻度 >
正の関心度として利用できるパラメータの第3の例は、補助情報の付加頻度である。ここで「補助情報」とは、§2で述べたとおり、現在ディスプレイ上に表示されている書籍の特定箇所に対して、ユーザが意図的に付加する何らかの情報であり、たとえば、「ハイライト」の指定,「アンダーライン」の指定,「メモ」の添付といった情報である。もちろん、補助情報は、これらの情報に限定されるものではなく、「ハイライト」以外の各種マークや、その他の任意の情報でかまわない。
【0125】
端末装置100に、このような補助情報の付加機能をもたせるには、指示入力部140が、選択中の電子書籍の特定箇所に、補助情報を付加する指示入力を受け付ける機能を有し、閲覧制御部120が、この補助情報を記憶し、ディスプレイ130上に、当該特定箇所を表示する際に、記憶していた補助情報を付加して表示する機能を有するようにすればよい。また、この場合、読書ログ採取部150には、この補助情報を付加する指示を含む読書ログを採取し、これをネットワーク300を介してサーバ装置200に送信する機能をもたせておくようにする。そうすれば、関心度分布作成部240は、試読データの作成対象となる書籍の個々のパート(頁)についての補助情報の付加頻度を正の関心度とカウントして関心度分布を作成することができる。
【0126】
なお、付加頻度のカウント方法としては、任意の方法を設定することができる。たとえば、付加した補助情報の種類や内容にかかわらず、書籍の特定箇所に何らかの補助情報を付加した場合に、頻度1と計数し、補助情報を付加した箇所の総数を付加頻度としてカウントする方法を採ることができる。あるいは、付加した補助情報の分量に応じた頻度値を設定してもよい。たとえば、文字列に対して「ハイライト」の指定や「アンダーライン」の指定を補助情報として付加した場合、指定対象となった文字列の文字数を、頻度を示す値としてカウントすればよい。また、書籍の特定箇所に「メモ」を補助情報として添付した場合は、当該メモの文字数を頻度を示す値としてカウントすればよい。
【0127】
このような補助情報の付加頻度が多い頁は、多くのユーザが当該頁の記載内容に関心を示しているものと推定できる。したがって、補助情報の付加頻度を、正の関心度を示すパラメータとして利用できることになる。
【0128】
< §4−4. 高関心度領域の抽出 >
図8に示すグラフは、ある1冊の電子書籍についての正の関心度分布を示すグラフである。ここで、グラフの横軸は当該電子書籍の頁であり、左端が先頭頁、右端が最終頁を示している。また、グラフの縦軸としては、これまで述べてきた正の関心度、すなわち、表示累積回数、表示時間の積算値、補助情報の付加頻度のいずれかをとればよい。
【0129】
こうして得られた図8に示すグラフ(関心度分布)において、縦軸に示す関心度が高い頁は、多くのユーザが関心をもった頁ということになる。そこで、高関心度領域抽出部250は、この関心度分布に基づいて、関心度が所定のしきい値Th以上となる領域を、高関心度領域として抽出すればよい。図8に示す例では、関心度がしきい値Th以上となる領域として、高関心度領域H1,H2,H3が抽出されている。これらの領域は、いずれも連続した一群の頁から構成される部分であり、多くのユーザが何らかの関心を示した部分、すなわち、多くのユーザが「おもしろい」と感じているであろうと推定できる部分ということになる。
【0130】
もちろん、この場合も、高関心度領域の横幅や総数は、しきい値Thの値に依存して変わり、しきい値Thの設定によっては、書籍のほぼ全頁にわたるほど横幅の広い高関心度領域が1つだけ抽出されたり、高関心度領域が1つも抽出されなかったりする。したがって、実用上は、いくつかの書籍について、しきい値Thを様々な値に設定し、適切な高関心度領域が抽出されるようなしきい値Thを試行錯誤で決定するのが好ましい。
【0131】
なお、これまで正の関心度として、表示累積回数、表示時間の積算値、補助情報の付加頻度という3つのパラメータを例示し、図8に示すグラフの縦軸として、これらのいずれか1つを採用する例を述べたが、これら3つのパラメータを組み合わせた関心度を利用して関心度分布を求めることも可能である。その場合、各パラメータにそれぞれ重みづけを行って加算するのが好ましい。すなわち、関心度を示す値を、関心度=k1・(表示累積回数)+k2・(表示時間の積算値)+k3・(補助情報の付加頻度)というような式で定義すればよい。ここで、k1,k2,k3は、各パラメータについての重みづけ係数である。
【0132】
また、必要に応じて、§3で述べた負の関心度と、§4で述べた正の関心度とを、符号を考慮して加算することも可能である。すなわち、関心度を示す値を、関心度=k1・(表示累積回数)+k2・(表示時間の積算値)+k3・(補助情報の付加頻度)−k4・(中断累積回数)というような式で定義すればよい。ここで、k4は、「中断累積回数」なる負の関心度についての重みづけ係数である。
【0133】
いずれの場合も、得られた関心度分布に基づいて、関心度が所定のしきい値以上となる領域を、高関心度領域として抽出する点に変わりはない。
【0134】
<<< §5. 試読データの抜粋例 >>>
ここでは、試読データ作成部260による具体的な試読データの作成方法について説明する。試読データ作成部260は、前述したとおり、配信対象データ格納部210内に格納されている作成対象書籍の電子書籍データに基づいて、試読データを作成する処理を行う。この処理は、もとの電子書籍データの一部を抜粋し、これを試読データとする処理であり、その基本方針は、少なくとも1つの高関心度領域についての前半部分のデータを含むが後半部分のデータは含まない試読データを作成するというものである。
【0135】
ここでは、当該基本方針に基づく具体的な試読データの抜粋例を、図9を参照しながらいくつか述べることにする。図9は、ある1冊の電子書籍の内容を、横方向に共通の頁軸をとって示すものである。図9(a) のバーは、もとの電子書籍の構成を示している。すなわち、この電子書籍は、1章〜4章という4つの章によって構成されている。バーの左端は、この電子書籍の先頭頁であり、バーの右端は、この電子書籍の最終頁である。また、図9(b) は、高関心度領域抽出部250によって抽出された高関心度領域を示している。図示の例では、高関心度領域H1,H2,H3が抽出されており、これらの領域は、多くのユーザが「おもしろい」部分と認識したと推定される領域である。
【0136】
以下、図9(c) 〜(f) を参照しながら、試読データ作成部260による具体的な試読データの作成方法の例、すなわち、図9(a) にバーとして示されている元の電子書籍の一部分を抜粋して、試読データを作成する方法の例を説明する。
【0137】
いずれの例の場合も、高関心度領域の任意の位置に分割位置を設定する。図に示す一点鎖線D1,D2,D3は、それぞれ高関心度領域H1,H2,H3について設定された分割位置を示している。分割位置は、試読データにおいて内容が打ち切られる位置であり、理論的には、各高関心度領域の任意の位置に設定すればよい。ただ、本発明の効果は、試読ユーザに「続きを読みたい」という衝動を生じさせる位置で試読データを打ち切ることによって奏せられるので、そのような効果を得るのに最も適した位置を分割位置に設定するのが好ましい。そのような観点から、本願発明者は、高関心度領域の中心位置が分割位置として最適な位置であると考えている。
【0138】
なお、これまで述べてきた実施例では、書籍の「1頁」を「1パート」とする取り扱いをしているため、高関心度領域は頁を最小単位とする領域になるが、分割位置は、必ずしも頁と頁の区切りである必要はなく、1頁の中間位置に分割位置を設定してもよいし、あるいは1行の中間位置に分割位置を設定してもよい。文章の段落を無視して分割位置を設定した場合、文章の途中で分割され、試読データの末尾が文章の途中になることもあるが、あくまでも試読データであるから、文章の途中で中断する内容になっていても問題はない。
【0139】
< §5−1. 抜粋例1 >
第1の抜粋方法は、ある1つの高関心度領域の任意の位置に分割位置を設定し、この高関心度領域の先頭から当該分割位置までのデータを試読データとする方法である。具体的には、図9(c) に示す試読データA1が、このような抜粋方法で作成された試読データの例である。すなわち、高関心度領域H1を分割位置D1で分割し、高関心度領域H1の先頭から当該分割位置D1までのデータが試読データA1として抜粋されることになる。要するに、高関心度領域H1の前半部分のみを抜粋したものが試読データA1になる。多くのユーザが「おもしろい」と感じた高関心度領域H1の途中で試読データが終わってしまうため、試読ユーザには、「続きを読みたい」という衝動を生じさせることができ、試読ユーザの購買意欲を誘うことができる。
【0140】
高関心度領域H1の先頭は、必ずしも文章の先頭になるとは限らないので、この抜粋方法で得られる試読データA1は、先頭部分も末尾部分も、ともに文章の途中になる可能性がある。ただ、高関心度領域の前半のみ、すなわち、多くのユーザが「おもしろい」と感じた部分の前半のみを抜粋したものであるため、試読ユーザにも「おもしろい」という印象を与え、購買意欲を刺激する十分な効果が見込まれる。
【0141】
なお、図9(c) では、高関心度領域H1の前半部分を抜粋して試読データA1とした例が示されているが、もちろん、高関心度領域H2やH3の前半部分を抜粋して試読データとしてもかまわないし、各高関心度領域のそれぞれの前半部分を羅列したものを試読データとしてもかまわない。
【0142】
< §5−2. 抜粋例2 >
第2の抜粋方法は、ある1つの高関心度領域の任意の位置に分割位置を設定し、この分割位置から所定分量だけ遡った位置までのデータを試読データとする方法である。具体的には、図9(d) に示す試読データA2が、このような抜粋方法で作成された試読データの例である。すなわち、高関心度領域H1を分割位置D1で分割し、当該分割位置D1から所定分量mだけ遡った位置までのデータが試読データA2として抜粋されることになる。
【0143】
ここで、所定分量mは、頁数の単位で指定してもよいし、行数や文字数の単位で指定してもよい。この抜粋例2のメリットは、作成される試読データの分量をmに統一することができる点である。たとえば、出版社などからの要望により、「試読データは10頁以内とする」あるいは「試読データは5000文字以内とする」というような制限が加えられている場合、この抜粋例2の方法を採れば、要望どおりの分量をもった試読データを作成することができる。
【0144】
この抜粋例2でも、多くのユーザが「おもしろい」と感じた高関心度領域H1の途中で試読データが終わってしまうため、試読ユーザには、「続きを読みたい」という衝動を生じさせることができ、試読ユーザの購買意欲を誘うことができる。もちろん、高関心度領域H2やH3の分割位置D2やD3から所定分量mだけ遡った位置までのデータを試読データとして抜粋してもよい。
【0145】
< §5−3. 抜粋例3 >
第3の抜粋方法は、ある1つの高関心度領域の任意の位置に分割位置を設定し、この分割位置から、当該分割位置を含む段落、節、章もしくは書籍全体の先頭まで遡った位置までのデータを試読データとする方法である。具体的には、図9(e) に示す試読データA3が、このような抜粋方法で作成された試読データの例である。すなわち、高関心度領域H1を分割位置D1で分割し、当該分割位置D1を含む章の先頭、すなわち、2章の先頭から当該分割位置D1までのデータが試読データA3として抜粋されることになる。
【0146】
この抜粋例3のメリットは、試読データの先頭部分が区切りの良い位置になるので、試読データを読み始めるときの違和感がなくなるという点である。もちろん、試読データの先頭部分には違和感がなくても、その末尾は「おもしろい」部分の途中で終わってしまうため、試読ユーザには、「続きを読みたい」という衝動を生じさせることができ、試読ユーザの購買意欲を誘うことができる。
【0147】
なお、図9(e) では、高関心度領域H1の分割位置D1を基準として試読データA3を抜粋した例が示されているが、もちろん、高関心度領域H2やH3の分割位置D2やD3を基準として試読データを抜粋してもかまわない。分割位置D2を基準として抜粋した試読データは3章の先頭からはじまり、分割位置D3を基準として抜粋した試読データは4章の先頭からはじまることになる。
【0148】
また、上例は、章の先頭まで遡った位置を試読データの先頭位置とする例であるが、章に限らず、段落、節などの単位で遡るようにしてもよい。あるいは、書籍全体の先頭まで遡った位置までのデータを試読データとしてもよい。
【0149】
< §5−4. 抜粋例4 >
第4の抜粋方法は、これまでの抜粋方法とは若干考え方が異なる方法である。すなわち、これまでの抜粋方法は、図9(a) に示す元の電子書籍のデータの中の一部を抜粋して試読データとする、という概念に基づくものであるが、ここに述べる第4の抜粋方法は、図9(a) に示す元の電子書籍のデータの中の一部を削除し、残りを試読データとする、という概念に基づくものである。結果的には、元の電子書籍のデータの中の一部を抜粋したものになるが、基本概念は若干相違している。
【0150】
すなわち、この第4の抜粋方法では、各高関心度領域の任意の位置にそれぞれ分割位置を設定し、設定した分割位置を境界として各高関心度領域をそれぞれ前半部分と後半部分とに分割し、配信対象データ格納部210内に格納されている1冊の書籍の電子書籍データから、各高関心度領域の後半部分を除いたデータを試読データとする、という手順がとられる。
【0151】
具体的には、図9(f) に示す試読データA4が、このような抜粋方法で作成された試読データの例である。この試読データA4は、3つの部分データA4−1,A4−2,A4−3の集合体からなり、元の電子書籍のかなりの内容が含まれている。ただ、各高関心度領域H1,H2,H3の後半部分は除かれている。すなわち、「おもしろい」部分の後半が脱落していることになる。したがって、試読ユーザには、「脱落部分を読みたい」という衝動を生じさせることができ、試読ユーザの購買意欲を誘うことができる。
【0152】
<<< §6. 試読データ作成方法 >>>
これまで、本発明に係る電子書籍の試読データ作成装置を説明したが、本発明は、必ずしもこれまで述べた試読データ作成装置を用いて実行する必要はない。本発明の基本的技術思想は、ネットワークを利用して提供する電子書籍について、試読データを作成する方法としても把握することができ、当該作成方法を実行する上では、必ずしもこれまで述べてきた試読データ作成装置を用いる必要はない。
【0153】
本発明に係る電子書籍の試読データ作成方法は、図10に示す各ステップによって構成される。まず、ステップS1は、端末装置によって実行される読書ログ送信段階であり、当該段階では、ユーザの指示入力に基づいて、電子書籍の内容をディスプレイに表示して、これをユーザに閲覧させる機能をもった端末装置が、ユーザの閲覧履歴を読書ログとして採取し、これをネットワークを介して送信する処理が行われる。
【0154】
続くステップS2〜S5は、いずれも試読データを作成するサーバ装置によって実行される段階である。まず、ステップS2では、サーバ装置が、複数の端末装置からネットワークを介して送信されてきた読書ログを受信する読書ログ受信段階が行われる。そして、ステップS3では、サーバ装置が、受信した読書ログを解析することにより、特定の電子書籍の個々のパートについてユーザの興味の度合いを示す関心度を求め、当該特定の電子書籍についての関心度分布を作成する関心度分布作成段階が行われる。更に、ステップS4では、サーバ装置が、関心度分布の関心度にしきい値を設定し、関心度がしきい値以上となる高関心度領域を抽出する高関心度領域抽出段階が行われる。そして最後のステップS5では、サーバ装置が、特定の電子書籍の電子書籍データに基づいて、高関心度領域から前半部分のデータを抜粋する処理もしくは高関心度領域の後半部分のデータを削除する処理を行うことにより試読データを作成する試読データ作成段階が行われる。
【0155】
なお、ステップS3の関心度分布作成段階では、読書ログを解析することにより、ユーザが閲覧を中断したと推定される閲覧中断パートを認識し、電子書籍の個々のパートについて、閲覧中断パートとなった中断累積回数を負の関心度とカウントして関心度分布を作成することができる。あるいは、ステップS3の関心度分布作成段階では、読書ログを解析することにより、個々のパートについての表示累積回数、表示時間の積算値、もしくはユーザによる補助情報の付加頻度を正の関心度とカウントして関心度分布を作成することもできる。
【符号の説明】
【0156】
100:端末装置
110:電子書籍データ格納部
120:閲覧制御部
130:ディスプレイ
140:指示入力部
150:読書ログ採取部
200:サーバ装置
210:配信対象データ格納部
220:読書ログ格納部
230:読書ログ抽出部
240:関心度分布作成部
250:高関心度領域抽出部
260:試読データ作成部
300:ネットワーク(インターネット)
A1〜A4:試読データ
A4−1〜A4−3:試読データの各部分
D1〜D3:分割位置
F1,F2,F3:電子書籍データファイル
Fi:閲覧対象書籍のデータファイル
H0:電子書籍の先頭領域
H1〜H3:高関心度領域
L1〜L3:読書ログ
m:所定分量(所定頁数/所定文字数)
P1〜P36:閲覧対象パート(閲覧対象頁)
Pj:閲覧対象パート(閲覧対象頁)
S1〜S5:流れ図の各ステップ
T1〜T22:時刻
Th:関心度のしきい値
U1〜U3:各ユーザの表示時間グラフ
U1′〜U3′:各ユーザの正規化された表示時間グラフ
φ:頁指定なし記号
Σ:正規化された表示時間の積算値のグラフ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを利用して提供する電子書籍について、試読データを作成する装置であって、
ネットワークに接続された端末装置とサーバ装置とを備え、
前記端末装置は、
前記サーバ装置から配信された電子書籍データを格納する電子書籍データ格納部と、
電子書籍の内容を表示するディスプレイと、
ユーザから、特定の電子書籍を閲覧対象書籍として選択する指示もしくは当該選択を解除する指示と、選択中の電子書籍の特定のパートを閲覧対象パートとして指定する指示と、を含む指示入力を受け付ける指示入力部と、
前記指示入力に基づいて、前記電子書籍データ格納部から前記閲覧対象書籍の前記閲覧対象パートに関するデータを読み出し、読み出したデータに基づいて前記ディスプレイ上に電子書籍の内容を表示する閲覧制御部と、
前記指示入力の一部もしくは全部の履歴を読書ログとして採取し、これを前記ネットワークを介して前記サーバ装置に送信する読書ログ採取部と、
を有しており、
前記サーバ装置は、
配信対象となる電子書籍データを格納し、必要に応じてこれを前記端末装置に配信する配信対象データ格納部と、
前記読書ログ採取部から送信されてきた読書ログを格納する読書ログ格納部と、
前記読書ログ格納部から、試読データの作成対象となる作成対象書籍に関する読書ログを抽出する読書ログ抽出部と、
抽出された読書ログを解析することにより、前記作成対象書籍について、個々のパートごとのユーザの興味の度合いを示す関心度を求め、関心度のパート単位の分布を示す関心度分布を作成する関心度分布作成部と、
前記関心度分布に基づいて、関心度が所定のしきい値以上となる高関心度領域を抽出する高関心度領域抽出部と、
前記配信対象データ格納部内に格納されている前記作成対象書籍の電子書籍データに基づいて、少なくとも1つの高関心度領域についての前半部分のデータを含むが後半部分のデータは含まない試読データを作成する試読データ作成部と、
を有することを特徴とする電子書籍の試読データ作成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の試読データ作成装置において、
複数の端末装置を備え、
読書ログ格納部は、各端末装置から送信されてきた複数のユーザの読書ログを格納し、
読書ログ抽出部は、作成対象書籍に関する複数のユーザの読書ログを抽出し、
関心度分布作成部は、複数のユーザの読書ログを解析することにより、関心度分布の作成を行うことを特徴とする電子書籍の試読データ作成装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の試読データ作成装置において、
電子書籍データが、頁単位のデータの集合体から構成されており、
指示入力部が、閲覧対象パートを頁で指定する指示を含む指示入力を受け付け、
閲覧制御部が、指定された頁の内容をディスプレイ上に表示し、
読書ログ採取部が、指定された頁の表示履歴を読書ログとして採取し、
関心度分布作成部が、個々の頁ごとに関心度を求めることにより、関心度の頁単位の分布を示す関心度分布を作成し、
高関心度領域抽出部が、頁を最小単位とする領域として高関心度領域の抽出を行うことを特徴とする電子書籍の試読データ作成装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の試読データ作成装置において、
関心度分布作成部が、電子書籍の選択解除時の閲覧対象パートを当該電子書籍の閲覧中断パートと認識し、電子書籍の個々のパートについて、閲覧中断パートとなった回数を示す中断累積回数を求め、この中断累積回数を負の関心度とカウントして関心度分布を作成することを特徴とする電子書籍の試読データ作成装置。
【請求項5】
請求項4に記載の試読データ作成装置において、
高関心度領域抽出部が、電子書籍の先頭領域については、これを高関心度領域としては抽出しないことを特徴とする電子書籍の試読データ作成装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の試読データ作成装置において、
指示入力部が、電子書籍のデータファイルを閉じる指示が与えられたときに、当該電子書籍の選択を解除する指示が与えられたものと認識し、
読書ログ採取部が、前記指示が与えられた時点の閲覧対象パートを、当該電子書籍についての閲覧中断パートを示す読書ログとして採取することを特徴とする電子書籍の試読データ作成装置。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれかに記載の試読データ作成装置において、
指示入力部が、電子書籍の閲覧中に「端末装置自身」または「端末装置の電子書籍閲覧機能」を待機状態もしくは停止状態にする指示が与えられたときに、当該電子書籍の選択を解除する指示が与えられたものと認識し、
読書ログ採取部が、当該指示が与えられた時点の閲覧対象パートを、当該電子書籍についての閲覧中断パートを示す読書ログとして採取することを特徴とする電子書籍の試読データ作成装置。
【請求項8】
請求項4〜7のいずれかに記載の試読データ作成装置において、
読書ログ採取部が、閲覧対象パートを指定する指示とともに当該指示が与えられた時刻を読書ログとして採取し、
関心度分布作成部が、前記読書ログから、同一の閲覧対象パートが継続して表示され続けた表示時間を認識し、当該表示時間が所定の許容範囲を超える場合には、当該閲覧対象パートを閲覧中断パートとして取り扱うことを特徴とする電子書籍の試読データ作成装置。
【請求項9】
請求項1〜3のいずれかに記載の試読データ作成装置において、
関心度分布作成部が、作成対象書籍の個々のパートについての表示累積回数を正の関心度とカウントして関心度分布を作成することを特徴とする電子書籍の試読データ作成装置。
【請求項10】
請求項1〜3のいずれかに記載の試読データ作成装置において、
読書ログ採取部が、閲覧対象パートを指定する指示とともに当該指示が与えられた時刻を読書ログとして採取し、
関心度分布作成部が、前記読書ログから各閲覧対象パートの表示時間を認識し、作成対象書籍の個々のパートについての表示時間の積算値を正の関心度とカウントして関心度分布を作成することを特徴とする電子書籍の試読データ作成装置。
【請求項11】
請求項10に記載の試読データ作成装置において、
読書ログ格納部が、ユーザごとに区別して読書ログを格納し、
関心度分布作成部が、個々のパートについての表示時間をユーザごとに正規化した後に、正規化した表示時間の積算値を正の関心度とカウントして関心度分布を作成することを特徴とする電子書籍の試読データ作成装置。
【請求項12】
請求項10または11に記載の試読データ作成装置において、
関心度分布作成部が、同一の閲覧対象パートが継続して表示され続けた表示時間が所定の許容範囲を超える場合は、当該表示時間については積算値に算入しないことを特徴とする電子書籍の試読データ作成装置。
【請求項13】
請求項1〜3のいずれかに記載の試読データ作成装置において、
指示入力部が、選択中の電子書籍の特定箇所に、補助情報を付加する指示入力を受け付ける機能を有し、
閲覧制御部が、前記補助情報を記憶し、ディスプレイ上に前記特定箇所を表示する際に前記補助情報を付加して表示する機能を有し、
読書ログ採取部が、前記補助情報を付加する指示を含む読書ログを採取し、これを前記ネットワークを介して前記サーバ装置に送信し、
関心度分布作成部が、作成対象書籍の個々のパートについての補助情報の付加頻度を正の関心度とカウントして関心度分布を作成することを特徴とする電子書籍の試読データ作成装置。
【請求項14】
請求項13に記載の試読データ作成装置において、
補助情報として、各種マーク、アンダーライン、もしくはメモを付加することを特徴とする電子書籍の試読データ作成装置。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載の試読データ作成装置において、
試読データ作成部が、1つの高関心度領域の任意の位置に分割位置を設定し、前記高関心度領域の先頭から前記分割位置までのデータを試読データとすることを特徴とする電子書籍の試読データ作成装置。
【請求項16】
請求項1〜14のいずれかに記載の試読データ作成装置において、
試読データ作成部が、1つの高関心度領域の任意の位置に分割位置を設定し、前記分割位置から所定分量だけ遡った位置までのデータを試読データとすることを特徴とする電子書籍の試読データ作成装置。
【請求項17】
請求項1〜14のいずれかに記載の試読データ作成装置において、
試読データ作成部が、1つの高関心度領域の任意の位置に分割位置を設定し、前記分割位置から、前記分割位置を含む段落、節、章もしくは書籍全体の先頭まで遡った位置までのデータを試読データとすることを特徴とする電子書籍の試読データ作成装置。
【請求項18】
請求項1〜14のいずれかに記載の試読データ作成装置において、
試読データ作成部が、各高関心度領域の任意の位置にそれぞれ分割位置を設定し、設定した分割位置を境界として各高関心度領域をそれぞれ前半部分と後半部分とに分割し、配信対象データ格納部内に格納されている1冊の書籍の電子書籍データから、前記各高関心度領域の後半部分を除いたデータを試読データとすることを特徴とする電子書籍の試読データ作成装置。
【請求項19】
ネットワークを利用して提供する電子書籍について、試読データを作成する方法であって、
ユーザの指示入力に基づいて、電子書籍の内容をディスプレイに表示して、これをユーザに閲覧させる機能をもった端末装置が、ユーザの閲覧履歴を読書ログとして採取し、これをネットワークを介して送信する読書ログ送信段階と、
試読データを作成するサーバ装置が、複数の端末装置からネットワークを介して送信されてきた読書ログを受信する読書ログ受信段階と、
前記サーバ装置が、受信した読書ログを解析することにより、特定の電子書籍の個々のパートについてユーザの興味の度合いを示す関心度を求め、前記特定の電子書籍についての関心度分布を作成する関心度分布作成段階と、
前記サーバ装置が、前記関心度分布の関心度にしきい値を設定し、関心度がしきい値以上となる高関心度領域を抽出する高関心度領域抽出段階と、
前記サーバ装置が、前記特定の電子書籍の電子書籍データに基づいて、高関心度領域から前半部分のデータを抜粋する処理もしくは高関心度領域の後半部分のデータを削除する処理を行うことにより試読データを作成する試読データ作成段階と、
を有することを特徴とする電子書籍の試読データ作成方法。
【請求項20】
請求項19に記載の試読データ作成方法において、
関心度分布作成段階で、読書ログを解析することにより、ユーザが閲覧を中断したと推定される閲覧中断パートを認識し、電子書籍の個々のパートについて、閲覧中断パートとなった中断累積回数を負の関心度とカウントして関心度分布を作成することを特徴とする電子書籍の試読データ作成方法。
【請求項21】
請求項19に記載の試読データ作成方法において、
関心度分布作成段階で、読書ログを解析することにより、個々のパートについての表示累積回数、表示時間の積算値、もしくはユーザによる補助情報の付加頻度を正の関心度とカウントして関心度分布を作成することを特徴とする電子書籍の試読データ作成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−137840(P2012−137840A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288192(P2010−288192)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】