説明

電子楽器

【目的】 本発明は、レジストレーション機能を使用して発音する際に、発音条件の設定不良の有無を検出し、異常のある際には該当箇所を表示する機能を有する電子楽器を提供することを目的とする。
【構成】 本発明は、レジストレーション機能を有する電子楽器であって、設定されたデータが基準内データであるかを判定する設定データ判定手段と、前記設定データ判定手段により、設定されたデータが基準外テータであると判定された不適切な設定データを検出する検出手段と、前記検出手段により検出された不適切な設定部を表示する表示手段とで構成される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、レジストレーション機能を内蔵した電子楽器において、レジストレーションスイッチが操作されると、不適切な設定がある場合には該当箇所または修正方法を表示部に表示する、または自動的に修正する機能を有する電子楽器に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の電子楽器は、パネルのパラメータやその他各種スイッチ等のセッティング状態を記録し、記録されている発音条件を読み出して発音するレジストレーション機能を有するものが少なくない。
【0003】しかしながら、従来の電子楽器のレジストレーション機能は単にデータの読み書きをするのみであり、設定されたデータが適正か否かをチェックする機能はなかった。
【0004】このため、設定ミスがあった場合に該当箇所をチェックしたり表示する機能がないため、初心者や取扱いに慣れていない演奏者は設定ミスの原因が分からず、混乱をきたし、修復に多大な時間を要することが少なくなかった。
【0005】例えば、音が出ない原因としては、音量が0に設定されている場合の他、キーボードコンダクターがオフにされている場合や、ポリ数の関係で音が出ない場合等があり、容易にその原因を知ることはできなかった。
【0006】特に、設定ミスの原因が複合されている場合には、初心者にとっては修復が更に困難となり、初心者でも容易にトラブルの修復可能な扱いやすい電子楽器が求められている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記の事情に鑑みなされたものであり、レジストレーション機能を使用して発音する際に、設定されている発音条件の設定不良の有無を検出し、異常がある際には該当箇所を表示する、あるいは自動的に修正する機能を有する電子楽器を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】図1は本発明の全体構成を示す原理説明図である。
【0009】図のように本発明は、レジストレーション機能を有する電子楽器であって、設定されたデータが基準内データであるかを判定する設定データ判定手段21と、前記設定データ判定手段21により、設定されたデータが基準外テータであると判定された不適切な設定データを検出する検出手段22と、前記検出手段22により検出された不適切な設定部を表示する表示手段13とで構成される。
【0010】また、上記発明に加えて、設定されたデータが基準外テータであると判定された際に、前記検出手段22により検出された不適切な設定部を修正するための要領を作成する修正要領作成手段23と、前記修正要領作成手段23により作成された不適切な設定部の修正要領を表示する表示手段13とで構成される。
【0011】また、前記設定データ判定手段21は、設定されたデータが基準内テータであるかの判定動作を指示する指示手段3Aにより制御され、不適切な設定部を判定するための判定基準データを記憶する判定基準記憶部25を有して構成される。
【0012】さらに、前記表示手段13は、不適切な設定部及び/又は不適切な設定部の修正要領を表示するための表示基準データを記憶する表示基準記憶部27を有して構成される。
【0013】また、前記電子楽器が、前記設定データ判定手段21、検出手段22、修正要領作成手段23、表示手段13に加えて、設定されたデータの不適切な設定部を適正に修正するための設定データ修正手段24を有することを特徴とする。
【0014】また、前記設定データ修正手段24は、設定されたデータの不適切な設定部を修正するための修正基準データを記憶する修正基準記憶部26を有することを特徴とする。
【0015】さらに、前記表示手段13は、前記設定データ修正手段24により修正された修正結果を表示するように構成される。
【0016】また、上記機能を有する電子楽器であって、前記検出手段22により検出された不適切な設定部を表示する機能と、前記修正要領作成手段23により作成された不適切な設定部の修正要領を表示する機能と、前記設定データ修正手段24により修正された修正結果を表示する機能とを切換可能にする切換手段3Cを有することを特徴とする。
【0017】
【作用】本発明は、レジストレーションスイッチ3Aが操作されるとレジストレーションメモリ25に記憶されている発音条件をチェックして、例えば音量が小さ過ぎる等の設定ミスがある場合には、修正を要する箇所のLEDを点滅表示する、あるいはLCDディスプレイの画面に該箇所の修正要領を表示するガイド機能を有する使いやすい電子楽器を提供するものである。
【0018】即ち、レジストレーションスイッチ3Aが操作されると、設定データ判定部21はパネル操作子等によるセッティングに変化があったか否かを調べ、変化があった場合には、レジストレーションメモリ28に記憶されている発音条件のチェックを行う。
【0019】その結果、所定の発音条件を満たしていない設定箇所があった場合は、何処を操作したらよいのか、あるいはどの様な手順で修正したらよいのか等の設定ミスの発生原因、または当該原因の排除方法を表示して演奏者に案内するものである。
【0020】このため、検出部22は設定データ判定部21のチェック結果に基づき、設定ミスがある箇所を抽出し、図示しない制御部が操作パネル上の該当箇所のLEDランプを点滅表示する。
【0021】あるいは、対応処置に複雑な操作を要する部位については、修正要領作成部23が修正基準記憶部26を参照して修正要領を表示するための情報を生成し、制御部が表示部13を制御してLCDディスプレイに対応処置を文字表示するものである。
【0022】これにより演奏者は、LEDランプの点滅箇所の修正、あるいはディスプレイに表示されている要領により設定ミスを修正すれば良いので、分かりやすい電子楽器が提供できる。
【0023】また、第2の発明は、設定データ判定部21が設定ミスを判定すると、設定データ修正部24が修正基準記憶部26の該当箇所を読み取り、読み取ったデータに基づき標準的な発音条件に設定値を修正するとともに、修正箇所を表示部13に表示するものである。
【0024】これにより、楽器の操作に馴れていない初心者でも安心して演奏できるので、更に使いやすい電子楽器が提供できる。
【0025】第3の発明は、上記第1及び第2の発明の機能を有する電子楽器において切換部3Cを設け、該切換部3Cの操作により上記第1の発明と第2の発明の機能の切換えを可能にするものである。
【0026】これにより、上級者が意識的に通常のセッティングとは異なったセッティングで演奏することも可能となり、初心者から上級者まで幅広いユーザが使用可能な電子楽器を提供できる。
【0027】
【実施例】以下、図面を参照しながら、本発明の第1の実施例について説明する。
【0028】図2は、不適切な設定箇所をLEDランプの点滅により表示する第1の実施例に係る電子楽器の全体的な構成を示す概略ブロック図である。なお、以下の各図面において、同一部位については同一番号を付してある。
【0029】図において、10はCPUであり、11はROM,12はRAM、13は表示部である。また、1は鍵盤、2は押鍵検出部、3は操作パネル、4はパネルスキャン回路、5は楽音信号発生部、6は波形メモリ、7はD/A変換器、8は増幅器、9はスピーカである。
【0030】CPU10は、ROM11のプログラムメモリ部に記憶された制御プログラムに従って当該電子楽器の各部を制御するとともに、発音条件をチェックして設定ミスがあると所要の処置を促すための表示を制御するものである。
【0031】このため、該CPU10には設定データ判定部21、検出部22が設けらており、設定データ判定部21は、パネルスキャン回路4より送られた各操作子の設定状態に関する信号を判定基準記憶部25に記憶されているデータと照合する。
【0032】その結果、不適切な設定箇所についてはパネルイベントバッファの該当部位に例えばフラグを立てて表示する。
【0033】検出部22は、上記パネルイベントバッファのフラグをチェックし、不適切な設定の該当箇所に関する情報を図示しない制御部に送り、該制御部が表示部を制御して設定不適切箇所のLEDを点滅させる。
【0034】このようにしてCPU10は、パネルスキャン回路4からのスキャンデータによってスイッチイベントが発生した場合、表示部13(通常はLEDがこれに相当する)を制御して表示処理を行う。
【0035】ROM11は、上述したCPU10を動作させるプログラムの他、音色データ、その他、種々の固定データを記憶している。なお、パラメータ設定の適否の判定の基準となる判定基準記憶部25は、該ROM11上に設けられている。
【0036】判定基準記憶部25は、設定データ判定部21が発音条件の設定の適否を判定する際に参照するテーブルであり、例えば音量やキーボードコンダクター、キースプリット、エンベロープ、フィルタ係数等についての基準値や適正範囲等が記憶されている。
【0037】RAM12にはCPU10の作業用領域、当該電子楽器を制御するための各種レジスタ、カウンタ、フラグ、バッファ等が定義されている他、ROM11に記憶されているデータのうち必要なデータが転送されて一時的に格納されるデータエリアを有している。
【0038】また、操作パネル3の各キーやスイッチの設定状態に対応して放音に必要なデータがセットされた複数のレジスタ、楽音信号発生部5の各楽音発生回路を未使用チャンネルに割り付けるためのデータを記憶するアサイナメモリ、楽音情報を一時的に記憶する記憶領域等も該RAM12に設けられている。
【0039】なお、該RAM12に設けられているレジストレーションメモリ28は、多くの発音条件を一時的に記憶するメモリであり、上書されるようになっている。
【0040】従って、例えば、図示しないライトスイッチとレジストレーションスイッチ3Aが同時に押下されると新鍵バッファのデータを該メモリに記憶し、レジストレーションスイッチ3Aのみが押下されると、該メモリに記憶されている発音条件が読み出され発音されるようになっている。
【0041】鍵盤1は発生すべき楽音を指定するために使用されるものであり、複数のキーと、これらのキーの押鍵・離鍵動作に連動して開閉するキースイッチとで構成され、演奏者の押鍵・離鍵動作は押鍵検出部2によって検出され、検出された信号はCPU10の制御のもとに楽音信号発生部5に送られる。
【0042】また、当該鍵盤1の押鍵又は離鍵により発生された演奏情報は一時RAM12の所定のエリアに記憶され所要に応じてCPU10により読み出される。
【0043】押鍵検出部2は、演奏者の押鍵・離鍵動作、つまり鍵のオン/オフを検出し、検出したオン/オフ情報をその鍵番号とともに楽音信号発生部5に伝えるものである。CPU10は、この鍵のオン/オフ情報をRAM12上に記憶させる。
【0044】操作パネル3には、電源スイッチの他、音色選択スイッチ、モード指定スイッチ、メロディ選択スイッチ、リズム選択スイッチ等、各種のスイッチや表示器が設けられている。なお、本発明に直接関係するレジストレーションスイッチ3Aは該操作パネル3に設けられている。
【0045】操作パネル3の各スイッチのセット/リセット状態は内部に含まれるパネルスキャン回路4によって検出されるようになっており、このパネルスキャン回路4で検出したスイッチのセット状態に関するデータはCPU10の制御の下にRAM12上の所定の領域に記憶される。
【0046】また、操作パネル3には、上記各種スイッチ類の他、各種情報を表示するための表示部13が設けられている。
【0047】楽音信号発生部5は、CPU10から出力される信号に対応する楽音波形データ及びエンベロープデータを波形メモリ6から読み出し、読み出した楽音波形データにエンベロープを付加して楽音信号として出力するものである。
【0048】この楽音信号発生部5が出力した楽音信号はD/A変換器7でアナログ変換されたのち増幅器8に供給される。このため、楽音信号発生部5には波形データやエンベロープデータを記憶する波形メモリ6が接続されている。
【0049】増幅器8は、D/A変換器から供給されるアナログ楽音信号を所定の利得で増幅するものである。この増幅器8の出力はスピーカ9に供給されるようになっている。
【0050】スピーカ9は、増幅器8より送られた電気信号としてのアナログ楽音信号を音響信号に変換するものである。つまり、発生された楽音信号に応じて楽音を放音するものである。
【0051】係る構成において、演奏が開始されると、押鍵検出部2を介して接続されている鍵盤1から入力された押鍵/離鍵データと、パネルスキャン回路4を介して接続された操作パネル3で設定された発音条件がRAM12に一時記憶される。
【0052】そして、所定のタイミングになると、RAM12に保存されている鍵盤データとパネルイベントデータがCPU10により読み出され、演算加工されて楽音信号発生部5に与えられ、楽音が生成されスピーカ9より楽音として発生される。
【0053】この際、レジストレーションスイッチ3Aが押下されると、レジストレーションメモリ28に記憶されているパネルイベントデータが読み出され、読み出された発音条件に基づき発音が行われることになる。
【0054】なお、本実施例によれば、レジストレーションメモリ28から読み出されたデータ(発音条件)は、設定データ判定部21が表示基準記憶部27に記憶されている基準データと照合し、不適切な設定のなされている部位についてはフラグを立てる。
【0055】これにより、検出部22が不適切な設定のなされている部位を図示しない制御部に通知し、該制御部が表示部13を制御して例えばLEDランプを点滅して、不適切な設定のなされている部位を演奏者に知らせる。
【0056】次に、上記第1の実施例の機能に加えて、操作子の不適切な設定箇所については修正要領を表示パネルに文字表示する第2の実施例について、第1の実施例との相違点について説明する。
【0057】図3は第2の実施例の全体構成図である。図のように本実施例においてはCPU10の機能には修正要領作成部23が、ROM11には表示基準記憶部27が追加されている。
【0058】修正要領作成部23は、不適切な設定箇所の修正要領をLCDディスプレイに文字表示するための情報を生成するものである。なお、修正を要する部位の表示をランプで点滅表示するか、あるいは該修正要領作成部23で文字情報に変換して表示するかを区分するための判別基準は前記判定基準記憶部25に記憶させておくと都合がよい。
【0059】また、表示基準記憶部27は、修正要領作成部23が不適切な設定箇所の修正要領を文字表示するための情報を記憶するものであり、修正要領作成部23は検出部22より送られた不適切な設定箇所に関する情報に基づき、該当部位の情報が読み出され、文字表示される。
【0060】これにより、単純で演奏者が処理容易な設定ミスの場合は、LEDランプを点滅表示して不適切な設定箇所を演奏者に知らせる。一方、原因が複合化したり、再設定のためには複雑な操作手順を要するものについては、修正要領がLCDディスプレイに文字表示され、初心者にも分かりやすい電子楽器が提供できる。
【0061】図4及び図5は、操作パネル3の音色及び音量の設定と表示について説明する図であり、図3が設定変更前を図4が設定変更後のパネルの状態の一例を示すものとする。
【0062】図3に例示するように、ピアノ、オルガン等の音色スイッチは各音色ごとに設けられており、各スイッチの中にはLEDが設けられている。また、本例では5段階に分けて音量を変化させる音量スイッチが設けられている。
【0063】なお、図3は音色としてピアノが選択されており、ピアノのLEDが点灯していることを示している。また、VOLUME=83が表示されており、音量は83が選択されていることを示している。
【0064】一方、図4は音色が何も選択されておらず、音色ボタンのLEDは全てオフであり、音量も0に設定されていることを示している。
【0065】ここで、図3に示す状態から図4に示す状態へとレジストレーションによって変更されたとすると、図4のパネルの状態で音が出ない原因は、音色が何も選択されていないことと、ボリューム値が0に設定されているためであることがパネル上のLEDの点灯及びボリューム表示の状態から判断できることになる。
【0066】図6は本実施例に係るメインルーチンの動作を説明する図である。以下図面を参照しながらメインルーチンの動作について説明する。なお、レジストレーションの要素としてキースプリット、フィルター係数、エンベロープ等各種あるが、本実施例では音色及び音量の場合を例にして説明する。
【0067】先ず、操作パネル3に設けられている電源スイッチが投入されるか、または、リセットスイッチが押下されると初期化処理が行われる(ステップS10)。
【0068】この初期化処理は、CPU10内部のレジスタやRAM12データのクリアや初期値のセット、ROM11に記憶されている所定データやプログラムをRAM12に移動したり、音色ポインタを初期化し、初期音色を決定したり、楽音信号発生部5のLSI、各種I/Oポートの初期化を行う。
【0069】そして、鍵盤スキャン処理を行う(ステップS11)。この鍵盤スキャン処理は、押鍵検出部2が検出した鍵盤1の押鍵状態に関するデータを読み込み、新鍵バッファにセットする処理であり、旧鍵バッファと新鍵バッファの内容を比較することにより操作された鍵に対応する部分がオン又はオフにされた鍵イベントバッファを作成する。
【0070】そして、取り込んだイベントバッファをサーチしてキーイベントがあったか否か、つまり押鍵又は離鍵動作があったか否かを調べ、キーイベントに応じた発音処理や消音処理のための準備が行われる。
【0071】次いで、パネルスキャン処理を行う(ステップS12)。このパネルスキャン処理では、操作パネル3のパネルスキャン回路4で検出されたデータに基づいてパネルイベントの有無を判断し、この判断結果に基づいて各スイッチのオン/オフ情報を作成しRAM12に記憶する処理である。
【0072】そして、前回操作パネル3から取り込んだ各スイッチのオン/オフ状態(RAM12の他の領域に既に記憶されている)と、今回操作パネル3から取り込んだ各スイッチのオン/オフ状態とを比較し、新たにオンになったスイッチに対応するビットのみがセットされたイベントマップが作成される。
【0073】次いで、発音条件チェック処理が行われる(ステップS13)。即ち、設定データ判定部21が、音色はRAM12上のバッファに正常にセットされているか、また、音のボリューム値が所定の範囲内の値で正常にバッファにセットされているか等、パネルスイッチの設定状態が調べられる。なお、発音条件チェック処理については図7で詳述する。
【0074】さらに、その他、各楽器の種類に応じた発音条件、例えばオルガンの場合はキーコンダクターがオフされていないか、鍵盤1の特定領域の音がオフされていないか等が調べられる。
【0075】次いで、パネル表示処理が行われる(ステップS14)。この表示部13への表示処理において、特に設定に変化がなかったか、あるいは、ミスがなかった場合は前回表示したデータと同じデータをそのまま表示する。
【0076】一方、設定データ判定部21が不適切な設定を検出した場合は、該当箇所のLED(図3参照)を点滅させて表示する、あるいは不適切な設定の修復方法をLCDディスプレイに文字表示する。なお、パネル表示設定処理弍ついては図8で詳述する。
【0077】次いで、楽音信号発生部5へのデータ設定処理を行う(ステップS15)。即ち、上記ステップS11のキーボードスキャン及びイベント処理で得られた鍵のオン/オフ情報、並びに、ステップS12のパネルスキャン及びイベント処理で得られたパネルスイッチのオン/オフ情報がCPU10により演算加工処理されて楽音データが生成される。
【0078】生成された楽音データは楽音信号発生部5に供給され、所要の発音、消音処理が行われる。なお、この際、メインルーチンのステップS14で行われたパネル表示設定処理の結果に基づく表示処理も同時に行われる。
【0079】この楽音信号発生部5へのデータ設定処理が完了するとステップS11へ戻り、以上説明したと同様の動作が繰り返される。
【0080】かかるメインルーチンの各ステップを繰り返して実行することにより、鍵盤1の操作、並びに操作パネル3の各スイッチ群及びパラメータ入力装置の操作に応じて、当該電子楽器で所望の演奏が行われることになる。
【0081】次に、図7を参照しながらメインルーチンのステップS13の発音条件チェック処理について、音色と音量をチェックする場合を例にして説明する。
【0082】発音条件チェック処理では、先ず、レジストレーションスイッチが操作されたか否かが調べられる(ステップS21)。これはパネルイベント処理でレジストレーションスイッチ3Aが操作されたかを調べることにより判断される。
【0083】レジストレーションスイッチ3Aが操作されていない場合は、発音条件のチェックは必要ないので「終了」にスキップする。
【0084】一方、レジストレーションスイッチ3Aが操作されている場合は、続いてパネルイベントに変化があったか否かが調べられる(ステップS22)。これは、イベンとマップを調べることにより行われ、パネルイベントに変化がなければ発音条件に変化がないので、そのまま「終了」にスキップする。
【0085】ステップS22でパネルイベントに変化があった場合には、続いて音色の選択がされているか否かが調べられる(ステップS23)。ここでは先ず音色選択のパネルイベントがあったかが調べられる。音色選択のパネルイベントがなければ音色は変化がないので音色フラグをクリアして(ステップS25)、ステップS26に進む。
【0086】一方、音色選択のパネルイベントがあった場合には、音色の選択が正しくなされているか調べる必要があるので、音色のフラグをセットして(ステップS24)、次の音量設定に進む。
【0087】音量設定では、先ず音量設定に関するイベントがあったか否かが調べられる(ステップS26)。音量設定に関するイベントがなければ発音条件に関するチェックは必要ないので音量フラグをクリアして(ステップS28)、発音条件に関するチェックを終了する。
【0088】一方、音量設定に関するイベントがあった場合には、音量設定が正しくなされているか調べる必要があるので、音量フラグをセットして(ステップS27)、発音条件のチェックを終了する。
【0089】続いてメインルーチンに戻りステップS14のパネル表示設定処理が行われる。パネル表示設定処理は、上記の発音条件チェック処理の結果に基づき、フラグを参照しながら設定ミスの有無をチェックし、該当箇所を表示する処理である。
【0090】次に、図8を参照しながらメインフローチャートにおけるパネル表示設定処理(ステップS14)について説明する。
【0091】パネル表示設定処理では、先ず音色フラグがオンであるか否かが調べられる(ステップS31)。音色フラグがオフであれば音色に関する設定に変化はなかったので、音色設定の適否を調べる必要はない。従って、そのままステップS35へスキップする。
【0092】一方、音色フラグがオンである場合は、音色設定に関するイベントがあったので、音色設定の適否をチェックする必要があり、いずれかの音色に音色設定がなされているか否かが調べられる(ステップS32)。
【0093】ここで、いずれかの音色に音色設定がなされていれば音色設定が正常であるので、音色設定されている音色のLEDを点灯させる処理をして(ステップS34)、ステップS35に進む。
【0094】一方、ステップS32で何れの音色にも設定がなされていない場合は、音色に設定ミスがあるので演奏者に音色の再設定を促す必要があるので、全ての音色のLEDランプを点滅させる設定を行い(ステップS33)、次に進む。
【0095】次いで音量設定に関する表示処理が行われる。即ち、音量フラグがオンになっているか否かが調べられる(ステップS35)。音量フラグがオフであれば音量に関する設定に変化はなかったので、音量設定の適否を調べる必要はない。従って、そのまま「終了」へスキップする。
【0096】一方、音量フラグがオンの場合には、音量設定に関するイベントがあったので、音量設定の適否をチェックする必要がある。これは設定データ判定部21が判定基準記憶部25を参照して音量が所定の範囲内にあるか否かを調べることにより行われる(ステップS36)。
【0097】音量の設定が所定の範囲内にある場合には、音量設定は正常になされているので、設定されている値をLCDディスプレイに表示する準備をして(ステップS33)、処理を終了する。
【0098】一方、音量の設定が所定の範囲内にない場合には設定に誤りがあり、演奏者に音量の再設定を促す必要があるので、例えば音量の文字を表示してブリンクさせる、あるいはカーソルを点滅させるための処理をして(ステップS37)、パネル表示設定処理を終了する。
【0099】演奏者は、この表示に基づき音量を再設定する。次いで、メインルーチンに戻り、ステップS15の楽音信号発生部5へのデータ設定処理で発音処理がなされる際に、上記パネル表示設定処理で設定された画面が表示されることになる。
【0100】このように、本発明によれば発音条件の設定ミスがあった部位は、LEDランプの点滅、あるいはLCD画面への文字による表示、あるいは音色の場合のように該当する全てのランプを点滅させる等の方法によって表示されるので、初心者でも分かりやすい電子楽器が提供できる。
【0101】なお、本実施例では発音条件の一例として音色と音量を例に説明したが、この他、発音条件のチェック項目としては、キーボードコンダクター、キースプリットの情報、シンセサイザーのエンベロープやフィルター係数等があり、チェック項目は本実施例に限定されるものではない。
【0102】第3の実施例は、設定条件の設定にミスがあると、該当部位については電子楽器が自動的に検出して標準的な設定に修正するとともに、該当箇所を表示して発音するものである。以下、図9を参照しながら第3の実施例について説明する。
【0103】なお、本実施例の場合も基本的な構成や動作は第1の実施例と殆ど同じである。従って第1の実施例との相違点についてのみ説明する。
【0104】本実施例の基本構成において、第1の実施例と異なる点はROM11に修正基準記憶部26を有し、設定データ判定部21が設定ミスを検出すると、設定データ修正部24が修正基準記憶部26を参照して該当箇所については標準的な設定に修正するとともに修正した箇所を表示して発音するものである。
【0105】このため、第1の実施例の表示基準記憶部27とともに修正基準記憶部26を設け、設定データ修正部24は該修正基準記憶部26のデータに基づき、設定ミスしている箇所の設定値を標準的な設定値に修正し、修正結果は表示基準記憶部27を参照して表示する。
【0106】このため、修正基準記憶部26にはキーボードコンダクターやキースプリットのオン/オフに関する設定値の他、例えば標準的な設定では音色に何を設定すべきか、あるいは音量はどのくらいに設定したらよいのか、また、楽器の種類に応じて例えばエンベロープやフィルター係数はどのくらいにしたらよいのか等のデータが記憶されている。
【0107】なお、設定データ修正部24が自動的に修正した値についても表示部13に表示することは、前記第2の実施例と同じである。
【0108】図6のメインルーチンの動作、及び図7の発音条件チェック処理の動作については第1の実施例と同じであるので説明を省略する。
【0109】第3の実施例におけるパネル表示設定処理の動作について、図10を参照しながら第1の実施例との相違点について説明する。
【0110】パネル表示設定処理における第1の実施例との相違点は、ステップS43の標準音色の設定及び表示と、ステップS47の標準値の設定及び表示である。
【0111】ステップS42の音色チェックでいずれの音色にも音色設定がなされていない場合、設定データ修正部24は修正基準記憶部26の音色の欄から設定すべき標準的な音色を読み取り、この音色を設定する(ステップS43)。
【0112】続いて、設定された音色の音色ボタンのLEDを点灯させる処理をしてステップS45に進む。
【0113】これにより、音色設定がされていない場合は、電子楽器が自動的に最適な音色を選択して音色設定するとともに、音色設定された音色の音色ボタンのLEDが点灯して選択されている音色が表示されることになる。
【0114】また、ステップS46の音量チェックで設定されている音量が基準値の範囲外の場合は、上記音色の場合と同様、設定データ修正部24は修正基準記憶部26の音量の欄を読み取り、設定すべき音量を決定し、これを設定する(ステップS47)。
【0115】続いて、設定された音量をディスプレイのボリューム欄(図3参照)に表示する処理をして処理を終了する。
【0116】一方、設定されている音量が所定の基準範囲内の場合は、設定されている音量を表示部13に表示する処理をして(ステップS48)、処理を終了する。
【0117】これにより、音量設定がされていない場合は、電子楽器が自動的に最適な音量に設定するとともに、設定されている音量がディスプレイに表示される。
【0118】このようにして、本実施例によれば、演奏者が設定ミスをした場合には電子楽器が自動的に設定ミスを修正するので、前記第1、第2の実施例よりさらに使いやすい初心者に適した電子楽器が提供できる。
【0119】なお、本実施例においては音色と音量を例に説明したが、発音条件のチェック項目としては、キーボードコンダクター、キースプリットの情報、シンセサイザーのエンベロープやフィルター係数等があることは第1の実施例と同じである。
【0120】次に第4の実施例について説明する。第4の実施例は、上記第1、第2の実施例、及び第3の実施例の機能を備えた電子楽器において、操作パネル3上に切換スイッチ3Cを設け(図1参照)、該スイッチ3Cの操作によりこれらの機能を切り換え可能にするものである。
【0121】これは、上級者になると例えば音量やエンベロープ、フィルタ係数等、意識的に標準外の値に設定を希望する場合があるので、かかる要望に対応させるものである。
【0122】このように構成することにより、初心者から上級者まで使用できる幅広い機能を有する電子楽器を提供することができる
【0123】なお、本実施例ではROM11に判定基準記憶部25や表示基準記憶部27を設け、設定データ判定部21や設定データ修正部24がこれらのテーブルを参照して各種設定を行う場合を例に説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0124】例えば、判定基準記憶部25や表示基準記憶部27等のデータをプログラムの中に記憶させ、プログラム中で処理を完了するように構成してもよい。
【0125】
【発明の効果】以上詳述したように本発明によれば、発音条件に設定ミスがあった場合、該当部位を表示するか、設定ミスの修正方法を表示する。あるいは自動的に設定ミスを修正して発音可能にするので、初心者でも使いやすい電子楽器が提供できる。
【0126】さらに、切換スイッチを設けて、設定不良箇所を表示する機能と設定不良時には不良箇所を自動的に修正する機能とを切り換え可能にすることにより、初心者から上級者まで幅広い層のユーザが使用可能な電子楽器が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理説明図である。
【図2】第1の実施例の全体構成を示す概略ブロック図である。
【図3】第2の実施例の全体構成を示す概略ブロック図である。
【図4】レジストレーション変更前のパネル設定状態を説明する図である。
【図5】レジストレーション変更後のパネル設定状態を説明する図である。
【図6】本実施例に係る動作を説明するメインルーチンである。
【図7】本実施例に係る実施例の発音条件チェック動作を説明するフローチャートである。
【図8】本実施例に係る実施例の表示パネル処理の動作を説明するフローチャートである。
【図9】第3の実施例の全体構成を示す概略ブロック図である。
【図10】第3の実施例の表示パネル処理の動作を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
1 鍵盤
2 押鍵検出部
3 操作パネル
3A レジストレーションスイッチ(指示手段)
3C 切換スイッチ(切換手段)
4 パネルスキャン回路
5 楽音信号発生部
6 波形メモリ
7 D/A変換器
8 増幅器
9 スピーカ
10 CPU
11 ROM
12 RAM
13 表示部(表示手段)
21 設定データ判定部(設定データ判定手段)
22 検出部(検出手段)
23 修正要領作成部(修正要領作成手段)
24 設定データ修正部(設定データ修正手段)
25 判定基準記憶部
26 修正基準記憶部
27 表示基準記憶部
28 レジストレーションメモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 レジストレーション機能を有する電子楽器であって、設定されたデータが基準内データであるかを判定する設定データ判定手段と、前記設定データ判定手段により、設定されたデータが基準外テータであると判定された不適切な設定データを検出する検出手段と、前記検出手段により検出された不適切な設定部を表示する表示手段とを有することを特徴とする電子楽器。
【請求項2】 レジストレーション機能を有する電子楽器であって、設定されたデータが基準内データであるかを判定する設定データ判定手段と、前記設定データ判定手段により、設定されたデータが基準外テータであると判定された不適切な設定データを検出する検出手段と、前記検出手段により検出された不適切な設定部を修正するための要領を作成する修正要領作成手段と前記修正要領作成手段により作成された不適切な設定部の修正要領を表示する表示手段とを有することを特徴とする電子楽器。
【請求項3】 前記判定手段は、設定されたデータが基準内テータであるかの判定動作を指示する指示手段により制御され、不適切な設定部を判定するための判定基準データを記憶する判定基準記憶部を有することを特徴とする請求項1乃至2記載の電子楽器。
【請求項4】 前記表示手段は、不適切な設定部及び/又は不適切な設定部の修正要領を表示するための表示基準データを記憶する表示基準記憶部を有することを特徴とする請求項1又は2記載の電子楽器。
【請求項5】 前記電子楽器が、前記設定データ判定手段、検出手段、修正要領作成手段、表示手段に加えて、設定されたデータの不適切な設定部を適正に修正するための設定データ修正手段を有することを特徴とする請求項1乃至4記載の電子楽器。
【請求項6】 前記設定データ修正手段は、設定されたデータの不適切な設定部を修正するための修正基準データを記憶する修正基準記憶部を有することを特徴とする請求項5記載の電子楽器。
【請求項7】 前記表示手段は、前記データ修正手段により修正された修正結果を表示することを特徴とする請求項5乃至6記載の電子楽器。
【請求項8】 前記請求項1乃至7記載の機能を有する電子楽器であって、前記検出手段により検出された不適切な設定部を表示する機能と、前記修正要領作成手段により作成された不適切な設定部の修正要領を表示する機能と、前記データ修正手段により修正された修正結果を表示する機能とを切換可能にする切換手段を有することを特徴とする請求項1乃至7記載の電子楽器。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開平8−211874
【公開日】平成8年(1996)8月20日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−41421
【出願日】平成7年(1995)2月7日
【出願人】(000001410)株式会社河合楽器製作所 (563)