説明

電子機器、及び電子機器のプログラムモジュール更新方法

【課題】電子機器のプログラムモジュールを更新する際に、仕向先に対応する更新用プログラムの更新モジュールを電子機器が選択し、自動的に適正な更新処理を行えるようにする。
【解決手段】電子機器は、プログラムモジュールによって制御される電子デバイスを複数含み、当該複数の電子デバイスのプログラムモジュールを更新する機能を有する。この電子機器は、設定された仕向先の情報を記憶する仕向先情報記憶手段と、外部より入力される更新用プログラムを記憶する更新情報記憶手段と、更新対象となるプログラムモジュールを、更新情報記憶手段に記憶された更新用プログラムにより更新する更新実行手段とを備える。更新用プログラムは、複数の仕向先にそれぞれ個別に対応する複数の更新モジュールから構成される。更新実行手段は、仕向先に対応する更新モジュールを選定し、この更新モジュールを用いてプログラムモジュールを更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器、及び電子機器のプログラムモジュール更新方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器には、ハードウェアの基本的な制御を行うファームウェアが組み込まれており、新たな機能の追加や、不具合の修正は、ファームウェアのバージョンアップで実現されている。一般にファームウェアは、複数のモジュールで構成されており、これら各モジュールは、それぞれ個別に改変されてバージョン情報で管理されている。
また、電子機器には、工場出荷時において複数の仕向先にそれぞれ個別に対応する複数の更新用プログラムが記憶されたものがある(例えば、特許文献1参照)。この種の電子機器においては、電子機器の初回設定時に、これら記憶された複数の更新用プログラムのうちいずれかを使用対象のプログラムとして設定する。そのため、プログラムモジュールのバージョンアップ時には、各仕向先用の更新用プログラムを全て更新することになり、電子機器は相応の記憶容量が必要になる。そこで、特許文献1の構成においては、設定された仕向先とは関係のないプログラムデータを削除して、プログラムが格納されるメモリエリアを有効に使用できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−373375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、仕向先毎の更新用プログラムをそれぞれ用意して、バージョンアップの際にこれら仕向先毎の更新用プログラムを全て入れ替えることは、プログラムの提供側にとって負担が大きい。また、プログラムモジュールの更新作業を行う操作者側にとっても、更新時に特定の仕向先を入力する等、更新作業が煩雑となるばかりか、誤入力等により不具合が生じる虞もある。
本発明は、電子機器のプログラムモジュールを更新する際に、仕向先に対応する更新用プログラムの更新モジュールを電子機器が選択し、自動的に適正な更新処理が行える電子機器、及び電子機器のプログラムモジュール更新方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は下記構成からなる。
(1) プログラムモジュールによって制御される電子デバイスを複数含み、当該複数の電子デバイスのプログラムモジュールを更新する機能を有する電子機器であって、
前記電子機器に設定された仕向先の情報を記憶する仕向先情報記憶手段と、
外部より入力され前記複数の電子デバイスに対する更新用プログラムを記憶する更新情報記憶手段と、
更新対象となる前記電子デバイスのプログラムモジュールを、前記更新情報記憶手段に記憶されている更新用プログラムによりそれぞれ更新する更新実行手段と、
を備え、
前記更新用プログラムが、複数の仕向先にそれぞれ個別に対応する複数の更新モジュールから構成され、
前記更新実行手段が、前記仕向先情報記憶手段に記憶された仕向先の情報に対応する前記更新モジュールを前記複数の更新モジュールから選定し、該選定された更新モジュールを用いて前記プログラムモジュールを更新する電子機器。
(2) プログラムモジュールによって制御される電子デバイスを複数含み、当該複数の電子デバイスのプログラムモジュールを更新する機能を有する電子機器のプログラムモジュール更新方法であって、
前記電子機器に設定された仕向先の情報を仕向先情報記憶手段に記憶させるステップと、
複数の仕向先にそれぞれ個別に対応する複数の更新モジュールから構成され、外部より入力される前記複数の電子デバイスに対する更新用プログラムを、更新情報記憶手段に記憶させるステップと、
前記仕向先情報記憶手段に記憶された仕向先に対応する更新モジュールを、前記複数の更新モジュールから選定するステップと、
更新対象となる前記電子デバイスに対して、該電子デバイスのプログラムモジュールを、更新情報記憶手段に記憶された更新用プログラムの前記選定された更新モジュールにより更新するステップと、
を含む電子機器のプログラムモジュール更新方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、電子機器のプログラムモジュールを更新する際に、電子機器が仕向先に対応する更新モジュールを選択し、操作者に手間を掛けることなく自動的に適正な更新処理を行うことができる。これにより、煩わしい作業を伴うことなく電子機器のプログラムモジュールを円滑に更新することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施形態を説明するための図で、内視鏡及び内視鏡が接続される各装置を表す内視鏡装置の構成図である。
【図2】内視鏡装置の具体的な構成例を示す外観図である。
【図3】バージョン情報の一例を示す説明図である。
【図4】更新情報の一例を示す説明図である。
【図5】バージョンアップの様子を示す説明図である。
【図6】バージョンアップを行う手順を示すフローチャートである。
【図7】仕向先の設定手順を示すフローチャートである。
【図8】各種の設定言語と、設定言語に対応する国コード及び仕向先との対応関係を表した言語対応テーブルを示す説明図である。
【図9】内視鏡装置の仕向先毎の仕様を示す説明図である。
【図10】仕向先に応じて更新の有無を異ならせたプログラムモジュールの構成を示す説明図である。
【図11】グループ分けされた電子デバイスの更新順序を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態を説明するための図で、内視鏡装置の構成を概略的に示すブロック図であり、図2は内視鏡装置の具体的な構成例を示す外観図である。
内視鏡装置100は、図1に示すように、プロセッサ11と、プロセッサ11に接続された内視鏡スコープ13と、観察画像等の情報を表示するモニタ15と、プロセッサ11に接続されたキーボード等の入力部17とを有する。
【0009】
図2に示すように、内視鏡スコープ13は、本体操作部19と、この本体操作部19に連設され被検体(体腔)内に挿入される挿入部21と、本体操作部19から延設され先端にコネクタ23が設けられたユニバーサルコード25とを備える。ユニバーサルコード先端のコネクタ23は、プロセッサ11に着脱自在に接続されて、各種信号が入出力される。
【0010】
本体操作部19には、挿入部21の先端側で吸引、送気、送水を実施するための送気送水ボタン、撮像時のシャッターボタン等の各種操作ボタン27や、アングルノブ35等が設けられている。
【0011】
挿入部21は、本体操作部19側から順に軟性部29、湾曲部31、内視鏡先端部33で構成される。湾曲部31は、本体操作部19のアングルノブ35を回転することによって遠隔的に湾曲操作され、これにより内視鏡先端部33を所望の方向に向けることができる。
【0012】
内視鏡先端部33には、撮像光学系の観察窓が配置される。観察窓の内部には、CCD(Charge Coupled Device)型イメージセンサや、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型イメージセンサ等の撮像素子37と、観察画を撮像素子37に結像させるレンズ39とが配置される。
【0013】
上記構成の内視鏡装置100は、複数の電子デバイスのプログラムモジュールを、仕向先に応じた新バージョンのプログラムモジュールへ自動的に書き換える機能を有する。
【0014】
図1に示すように、内視鏡スコープ13には、所望の観察画像を得るための撮像素子37、操作ボタン27等が設けられ、操作ボタン27からの入力信号を受け付けるCPU3等の電子デバイスを有する。CPU3はROM41を備え、このROM41には、CPU3を動作させるファームウェアとしてのプログラムモジュールが格納される。
【0015】
プロセッサ11における撮像光学系と関係する回路は、回路基板S1、回路基板S2、及び回路基板S2に接続される更新情報入力部43とを有して構成される。
【0016】
回路基板S1は、駆動信号を撮像素子37に出力するセンサ駆動FPGA(Field-Programmable Gate Array)45と、センサ駆動FPGA45を制御するCPU1が実装されている。センサ駆動FPGA45はプログラムモジュールを格納するROM47を備え、CPU1もプログラムモジュールを格納するROM49を備える。FPGAは、プログラムモジュールを読み込むことにより論理回路の書き換えが可能なプログラマブル集積回路であり、CPUは、論理回路の書き換えが不可能な非プログラマブル集積回路である。
【0017】
CPU1は、内視鏡スコープ13側のCPU3にユニバーサルコード25(図2参照)を通じてシリアル接続されており、センサ駆動FPGA45とは同一の回路基板内でパラレル接続されている。また、CPU1は回路基板S2に実装されたCPU2とパラレル接続されている。CPU1は、センサ駆動FPGA45に撮像素子37への制御信号を出力すると共に、操作ボタン27からの入力による制御信号が入力される。
【0018】
回路基板S2は、内視鏡を統括制御するプロセッサ11のメインCPUであるCPU2と、映像入力FPGA51と、画像処理FPGA53と、メモリ55が実装されている。CPU2はROM57、映像入力FPGA51はROM59、画像処理FPGA53はROM61、をそれぞれ備え、それぞれのROMにそれぞれのプログラムモジュールが格納される。メモリ55は、詳細は後述するが、外部より入力され複数の電子デバイスそれぞれに対する更新用プログラムが記憶される更新情報記憶手段、及び内視鏡装置100の仕向先情報が記憶される仕向先情報記憶手段、設定言語の情報が記憶される言語対応情報記憶手段として機能する。
【0019】
CPU2は、上記プロセッサ11、内視鏡スコープ13に搭載される複数のCPU、FPGAを制御する。このCPU2は、内視鏡装置100の操作者による操作に応じて、所望の内視鏡観察画像をモニタ15に出力させる。各CPU,FPGAが備えるROMには、それぞれデバイスに対応するプログラムモジュールが格納されており、入力された命令信号に応じて所望の機能を実現するようになっている。また、CPU2は、更新情報入力部43を通じて後述する記憶媒体63等から更新情報を読み出して、各電子デバイスのプログラムモジュールを更新する。
【0020】
次に、各電子デバイスのプログラムモジュールを、新たに供給される新バージョンのプログラムモジュールに更新する手順について簡単に説明する。
各電子デバイスのプログラムモジュールは、バージョン名で表されるバージョン情報に基づいて管理されている。これら各電子デバイスのプログラムモジュールに対する現在のバージョンは、バージョン情報としてメモリ55に記憶されている。図3はバージョン情報の一例を示す。CPU2は、メモリ55からバージョン情報を参照することで、各電子デバイスに格納されたプログラムモジュールのバージョン、即ち、モジュールの機能や仕様を常に正確に把握できるようになっている。
【0021】
内視鏡装置100における各電子デバイスのプログラムモジュールを新バージョンのプログラムモジュールに更新する場合、操作者は、プロセッサ11の更新情報入力部43に、コンパクトフラッシュ(登録商標)、SDカード等の各種メモリカードや、ハードディスク、光ディスク、磁気テープ等の各種ストレージ装置等の記憶媒体63を挿入する。そして、CPU2が記憶媒体63に記憶された更新情報を読み出し、この読み出された更新情報をメモリ55に一旦記憶させる。その後、CPU2は各電子デバイスのROMを必要に応じて書き替える。これにより、内視鏡装置100への新規機能の搭載や、不具合の解消が行える。なお、更新情報は、記憶媒体63に限らず、ネットワーク65を通じて配信する構成であってもよい。
【0022】
図4に更新情報の一例を示す。CPU2は、図3に示す現在のバージョン情報と、更新情報のバージョン情報とを比較して、バージョンナンバーが下位となる旧バージョンのプログラムモジュールを、上位となる新バージョンのプログラムモジュールへ選択的に更新する。つまり、図5にバージョンアップの様子を示すように、CPU2は、更新情報であるバージョンアップキットに記憶された各プログラムモジュールのバージョンナンバーと、現在のバージョンナンバーとを比較して、現在のバージョンナンバーが低い場合に新バージョンのプログラムモジュールが提供されたと判定し、そのプログラムモジュールを新バージョンのプログラムモジュールに更新する。また、比較の結果、現在のバージョンナンバーと同じであった場合は、そのプログラムモジュール(図示例では存在せず)を更新せずに、そのままとする。
【0023】
旧バージョンのプログラムモジュールを新バージョンのプログラムモジュールに更新する場合、内視鏡装置100に搭載されたCPU、FPGAのそれぞれに対して、個別にプログラムモジュールを更新する必要がある。しかし、実際に使用されている内視鏡装置の機器構成は、内視鏡スコープやプロセッサの種類が多種多様であり、組み合わせによって回路構成が異なれば、更新するプログラムモジュールの格納箇所も異なる。そのため、機器のメーカ側から更新情報が提供されても、各内視鏡装置に対して一律に更新順序を設定することはできない。つまり、内視鏡装置毎に異なる更新順序を設定する必要がある。
【0024】
具体的には、追加機能に関しては、プログラムモジュールを呼び出す側と、呼び出される側とでは更新順序の制約がある。例えば、基板上にCPUとFPGAが実装され、CPUがFPGAを制御する構成において、新規機能としてI/Fが増加する場合、FPGAのプログラムモジュールを先に更新してからCPUのプログラムモジュールを更新する必要がある。逆の手順で更新した場合には、CPUは、搭載していないI/FでFPGAを制御する動作となり、予期しない不具合が起きる可能性がある。
【0025】
さらに、FPGAはコンフィグレーション後に動作するものであるため、バージョンアップを行う際は、プログラムモジュールの書き換え後にコンフィグレーションを実施する必要がある。CPUの場合は、書き換え対象CPUのプログラムモジュールが更新後に参照できなくなるため、プログラムモジュールを他のRAM上に一旦退避させてから書き換え等の動作を行う必要があり、リセットやリブート処理を要する。
【0026】
そのため、プログラムモジュールのバージョンアップを行う際は、変更が必要となるプログラムモジュールを特定し、この特定された各プログラムモジュールの主従関係や、リブートの有無等を加味して更新順序を決定することが必要となる。
【0027】
本内視鏡装置100においては、更新対象となる電子デバイスのプログラムモジュールに対して、新バージョンのプログラムモジュールを適切な更新順序で自動更新する。その際、新バージョンのプログラムモジュールを、自動的に仕向先に対応させたものにする。図6にバージョンアップを行う手順のフローチャートを示した。以下、図6を用いてプログラムモジュールの更新処理を詳細に説明する。
【0028】
まず、内視鏡装置100の操作者は、記憶媒体63やネットワーク65を介して更新情報を更新情報入力部43に入力する(St.11)。CPU2は、更新情報入力部43に更新情報が入力されると、この更新情報をメモリ55に取り込む。
【0029】
そして、CPU2は、更新用プログラムにおける内視鏡装置100の仕向先を設定する(St.12)。仕向先の情報は、プロセッサ11が有するメモリ55に記憶されるが、内視鏡装置100の工場出荷時に仕向先データが既に登録済みである場合、内視鏡装置100出荷後の機器設置後にユーザにより登録された場合、未設定のままである場合等、種々の設定状態が考えられる。
【0030】
そこで、内視鏡装置100は、更新用プログラムにおける仕向先の設定を図7にフローチャートを示すように行う。即ち、CPU2は、内視鏡装置100のメモリ55に仕向先データが存在するかを確認して(St.21)、仕向先データが存在する場合には、この登録された仕向先データに基づいて仕向先を設定する。
【0031】
仕向先データが存在しない場合には、CPU2は、内視鏡装置100に設定される設定言語が登録済みであるか確認する(St.22)。
【0032】
図8に各種の設定言語と、設定言語に対応する国コード及び仕向先との対応関係を表した言語対応テーブルを示す。この言語対応テーブルは、メモリ(言語対応情報記憶手段)55に予め記憶されているものである。CPU2は、設定言語が登録済みである場合に、内視鏡装置100に設定された設定言語に応じて、言語対応テーブルを参照して仕向先を設定する。即ち、メモリ55に仕向先データが存在していなくても、設定言語により機器が使用される国が特定できるので、設定言語に基づいて仕向先を設定する(S23)。
【0033】
設定言語が登録されていない場合は、CPU2は入力部17(図1参照)からの仕向先の入力を操作者に促して、操作者からの仕向先入力情報に基づいて設定する(St.24)。
【0034】
次に、CPU2は、メモリ55に予め記憶された現在の各プログラムモジュールのバージョン情報(図3参照)と、更新情報のバージョン情報(図4参照)とを比較して、前述したように更新対象となる電子デバイスのプログラムモジュールを特定する(St.13)。図3,図4に示す情報内容の場合、更新対象となるプログラムモジュールは、モジュール1〜6であるが、仮に更新しないプログラムモジュールが混在する場合には、更新しないプログラムモジュールを更新対象から外せばよい。
【0035】
ここで、更新対象となる電子デバイスのプログラムモジュールを更新する更新用プログラムは、複数の仕向先にそれぞれ個別に対応する複数の更新モジュールからなる。そして、更新用プログラムは一つのファイルから構成される。CPU2は、設定された仕向先に対応する更新モジュールを複数の更新モジュールから選定し、この選定された更新モジュールを用いて、更新対象となるプログラムモジュールを、設定された仕向先に応じた仕様で更新する。
【0036】
次に、各仕向先に対応する更新モジュールの具体的構成について説明する。
複数の仕向先にそれぞれ個別に対応する複数の更新モジュールは、図9に仕向先毎の仕様を示すように、それぞれ内視鏡装置が異なる仕様となるように作成されている。例えば、仕向先であるA国、B国、C国、・・・においては、各国の法規制等の事情により、内視鏡挿入部の先端温度や、送気・送水する際の吸引圧力の許容条件がそれぞれ異なる。そこで、仕向先毎に更新モジュールを作成し、この更新モジュールで更新処理を行う。これにより、内視鏡装置の光源に対する最大照明光強度や最大連続点灯時間、吸引ポンプの最大吸引圧力等の各種パラメータに対する許容条件を、仕向先に応じた所定範囲内で動作する仕様に更新できる。
【0037】
また、図10に示すように、各電子デバイス対するプログラムモジュール1,2,3,4,・・・を、仕向先に応じて更新の有無を異ならせてもよい。例えば、仕向先がA国であればモジュール1,2,3,4を更新するが、仕向先がB国であればモジュール3を除いたモジュール1,2,4を更新する。このように、仕向先に応じて各電子デバイスのプログラムモジュールを選択的に更新させることで、仕向先によらず一律に更新する場合よりも更新時間を短縮することができる。
【0038】
次に、CPU2は、仕向先に応じた更新モジュールをそれぞれ特定した後、これら特定された更新モジュールによる更新順序を設定する(St.14)。このときの各プログラムモジュールの更新順序は、以下の手順で設定する。
【0039】
まず、特定された更新対象となる電子デバイスを、内視鏡装置100の機器構成に応じてグループ分けする。グループ分けは、次のルールに従って行う。
【0040】
(A1)更新の際にコンフィグレーションを実施するFPGA等のプログラマブル集積回路を同一グループとする。
このルールによれば、センサ駆動FPGA45、映像入力FPGA51、画像処理FPGA53が同一グループとなる。このグループをグループAとする。
【0041】
(A2)システム全体を統括制御する非プログラマブル集積回路(ここではCPU2)と、このCPU2とパラレル接続されるプログラマブル集積回路以外の電子デバイスを同一グループとする。
このルールによれば、CPU2とパラレル接続される電子デバイスとして、センサ駆動FPGA45,映像入力FPGA51,画像処理FPGA53,CPU1が同一のグループ候補として挙げられるが、センサ駆動FPGA45,映像入力FPGA51,画像処理FPGA53は除外する。その結果、CPU1とCPU2が同一グループとなる。このグループをグループBとする。
【0042】
そして、CPU3はCPU1とシリアル接続されており、CPU2に対してはパラレル接続されていない。よって、残りの電子デバイスであるCPU3をグループCとする。
【0043】
上記のグループ分け処理により、図11に示すように更新対象となる電子デバイスは下記の3つのグループに分類される。
・グループA:センサ駆動FPGA45,映像入力FPGA51,画像処理FPGA53
・グループB:CPU1,CPU2
・グループC:CPU3
【0044】
次に、グループ分けされた各電子デバイスに対して、プログラムモジュールの更新順序を設定する(St.2)。
CPU2は、各グループ内に複数の電子デバイスが存在する場合に、各電子デバイスのグループ内更新順序を設定する。
グループ内の更新順序は、次のルールに従って設定する。
(B1)単独で内部リセット可能なCPUを、リブートが必要なCPUより先の更新順序に設定する。
つまり、グループBにおいては、CPU2とは異なる基板に実装されて、単独で内部リセット可能なCPU1を、回路全体のリブートが必要なCPU2より先の更新順序に設定する。これにより、リブートの回数を最小化でき、更新時間を短縮化できる。
【0045】
グループAにおいては、特に更新順序を規定されることはない。ここでは映像信号の伝送下流側から、画像処理FPGA53,映像入力FPGA51,センサ駆動FPGA45の順番に設定しているが、それぞれの更新は同時であってもよい。
【0046】
次に、CPU2は、各グループ間でグループ単位の更新順序を設定する。
グループ単位の更新順序は、次のルールに従って設定する。
(C1)プログラマブル集積回路(FPGA)に対しては、FPGAに命令信号を入力する非プログラマブル集積回路(CPU)より先の更新順序に設定する。
つまり、グループAを、グループB,Cより先の更新順序に設定する。
【0047】
(C2)システム全体を統括制御する非プログラマブル集積回路(ここではCPU2)とは異なるグループの非プログラマブル集積回路(CPU)は、更新にリブートを要するので、統括制御する非プログラマブル集積回路(ここではCPU2)のグループを、異なるグループの非プログラマブル集積回路(CPU)より先の更新順序に設定する。
つまり、CPU2を含むグループBは、グループBとは異なりCPU3を含むグループCより先の更新順序に設定する。
【0048】
(C3)次の更新対象となる電子デバイスのグループが、当該グループの前の更新対象である電子デバイスのグループと異なる場合に、グループ同士の間にリブートを設定する。
【0049】
以上より、各電子デバイスのプログラムモジュールの更新順序は次の通りになる。なお、リブート処理は、グループ内全ての書き込みの必要がない場合には省略する。
【0050】
(1)グループA:画像処理FPGA53
(2)グループA:映像入力FPGA51
(3)グループA:センサ駆動FPGA45
−リブート−
(4)グループB:CPU1
(5)グループB:CPU2
−リブート−
(6)グループC:CPU3
【0051】
内視鏡装置100は、図11に示すグループ内更新順序、グループ単位更新順序の登録された更新順序テーブルであるルックアップテーブルLUTをメモリ55に保存し、このLUTの順序に従ってプログラムモジュールを更新する。
【0052】
そして、CPU2は、設定した更新順序をモニタ15に出力して、内視鏡装置100の操作者に通知する。これにより、操作者へのガイダンスが行われる(St.15)。操作者はモニタ15に表示されたガイダンスに従って、バージョンアップ処理を開始する(St.16)。このバージョンアップ処理は、自動で実施することが望ましいが、ステップ毎に手動で実施して、逐次確認しながら実施することであってもよい。
【0053】
例えば、CPU2は、更新するプログラムモジュールをモニタ15にリスト表示させ、操作者に書き換え開始の指示を入力させる。開始指示が入力されると、CPU2はプログラムモジュールの書き換えを開始する。また、これと共に、現在どのプログラムモジュールの書き換えを実施しているのかをモニタ表示色を変化させる等、視覚的に判別できるようにする。そして、一つのプログラムモジュールの書き換えが完了すると一時停止し、操作者からの開始指示待ちにして、開始指示の入力があったときに、次のプログラムモジュールの書き換えを開始する。
【0054】
以上説明した内視鏡装置100によれば、電子機器のプログラムモジュールを更新する際に、仕向先に対応する更新モジュールを電子機器が選択することで、操作者に手間を掛けることなく自動的に適正な更新処理を行うことができる。これにより、煩わしい作業を伴うことなく電子デバイスのプログラムモジュールを円滑に更新できる。また、複数の更新モジュールが一つのファイルに収容されて内視鏡装置に供給されるため、プログラムの提供者側にとって更新情報の作成や管理、及び提供が容易となり、低コスト化が図れる。また、更新用プログラムが複数のファイルから構成される場合と比較して、更新用プログラムの読み出しが早くなり、更新時間の短縮化が図れる。
【0055】
また、内視鏡装置に仕向先が設定されていない場合でも、設定言語が設定されている場合には、設定言語に対応する国が仕向先に設定される。そのため、操作者に仕向先の入力を要請することなく、簡単かつ正確に仕向先を設定することができる。
【0056】
また、内視鏡装置100は、プログラムモジュールを更新する際、更新が必要となる電子デバイスを、内視鏡装置100の機器構成に応じてグループ分けし、予め定めたルールに従って、グループ単位の更新順序と、同一グループ内における更新順序とを設定し、各プログラムモジュールの最適な更新順序を決定する。このため、他の異なる種類の内視鏡スコープ13に付け替えたり、プロセッサ11を入れ替えたりする等、内視鏡装置100の電子デバイス構成に変更が生じても、変更後の機器構成に対する最適な更新順序に設定することができる。
【0057】
そのため、内視鏡装置100の操作者は、プログラムモジュールの更新の際、装置構成に応じた更新手順の検討を要することなく、内視鏡装置100が自動的に決定した最適な更新順序でバージョンアップが行える。また、更新処理の所要時間を短縮でき、誤った操作手順で更新されることも未然に防止できる。
【0058】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。例えば、更新情報入力部43に供給される更新情報は、メモリ55に転送してから更新処理を行う以外にも、記憶媒体63やネットワーク65に接続されるサーバ等からCPU2が直接に更新プログラムを起動する構成としてもよい。また、内視鏡装置外部からのトリガ信号を受けて、更新プログラムをステップ実行する等、更新プログラムの実行形態は適宜な変更が可能である。
【0059】
以上の通り、本明細書には次の事項が開示されている。
(1) プログラムモジュールによって制御される電子デバイスを複数含み、当該複数の電子デバイスのプログラムモジュールを更新する機能を有する電子機器であって、
前記電子機器に設定された仕向先の情報を記憶する仕向先情報記憶手段と、
外部より入力され前記複数の電子デバイスに対する更新用プログラムを記憶する更新情報記憶手段と、
更新対象となる前記電子デバイスのプログラムモジュールを、前記更新情報記憶手段に記憶されている更新用プログラムによりそれぞれ更新する更新実行手段と、
を備え、
前記更新用プログラムが、複数の仕向先にそれぞれ個別に対応する複数の更新モジュールから構成され、
前記更新実行手段が、前記仕向先情報記憶手段に記憶された仕向先の情報に対応する前記更新モジュールを前記複数の更新モジュールから選定し、該選定された更新モジュールを用いて前記プログラムモジュールを更新する電子機器。
この電子機器によれば、仕向先情報記憶手段に記憶された仕向先の情報に応じて、外部から入力された更新用プログラムから仕向先に対応する更新モジュールを選定することで、仕向先に応じたプログラムモジュールへの適正な更新を、自動で行うことができる。
【0060】
(2) (1)の電子機器であって、
前記更新用プログラムが、前記複数の更新モジュールを含む一つのファイルから構成される電子機器。
この電子機器によれば、複数の更新モジュールが一つのファイルに収容されることで、複数ファイルから構成される場合と比較して、複数の内視鏡装置への更新用プログラムの供給や、内視鏡装置に更新用プログラムを取り込む作業が容易となる。
【0061】
(3) (1)又は(2)の電子機器であって、
前記複数の電子デバイスそれぞれについて、前記プログラムモジュールの現在のバージョン情報を、前記更新用プログラムにより更新されるプログラムモジュールのバージョン情報と比較し、前記更新の対象となる電子デバイスを自動的に特定する更新対象特定手段を備えた電子機器。
この電子機器によれば、更新対象となる電子デバイスを自動的に特定でき、操作者の操作ミス等の影響を受けることがなく、正確かつ円滑に更新処理を実施できる。
【0062】
(4) (1)〜(3)のいずれか一つの電子機器であって、
各種の設定言語と、該設定言語に対応する国コードとの対応関係を表した言語対応テーブルが記憶された言語対応情報記憶手段と、
前記電子機器に設定された設定言語を検出し、該検出された設定言語に対する国コードを前記言語対応テーブルを参照して求め、前記求めた国コードに応じて前記仕向先を設定する仕向先設定手段と、
を備えた電子機器。
この電子機器によれば、仕向先が設定されていない場合であっても、設定言語に対応する仕向先が設定されるため、操作者に仕向先の入力を要請することなく、簡単に仕向先を設定できる。
【0063】
(5) (1)〜(4)のいずれか一つの電子機器であって、
前記更新用プログラムが更新する前記プログラムモジュールの数が、前記仕向先毎に異なっている電子機器。
この電子機器によれば、更新用プログラムが仕向先毎にそれぞれ異なる更新処理を行うことで、仕向先によらず一律に更新する場合より、更新に要する時間を短縮できる。
【0064】
(6) (1)〜(5)のいずれか一つの電子機器であって、
該電子機器は、内視鏡挿入部先端から照明光を出射する照明光学系と、撮像素子により撮像画像を生成する撮像光学系とを有する内視鏡装置を構成し、
前記仕向先に応じて前記内視鏡装置の仕様を変更する電子機器。
この電子機器によれば、仕向先に応じて各電子デバイスのプログラムモジュールを更新することで、仕向先に応じた異なる仕様にすることができる。
【0065】
(7) プログラムモジュールによって制御される電子デバイスを複数含み、当該複数の電子デバイスのプログラムモジュールを更新する機能を有する電子機器のプログラムモジュール更新方法であって、
複数の仕向先にそれぞれ個別に対応する複数の更新モジュールから構成され、外部より入力される前記複数の電子デバイスに対する更新用プログラムを、更新情報記憶手段に記憶させるステップと、
前記電子機器に設定された仕向先に対応する更新モジュールを、前記複数の更新モジュールから選定するステップと、
更新対象となる前記電子デバイスに対して、該電子デバイスのプログラムモジュールを、前記選定された更新モジュールにより更新するステップと、
を含む電子機器のプログラムモジュール更新方法。
このプログラムモジュール更新方法によれば、設定された仕向先に応じて、外部から入力された更新用プログラムから、この仕向先に対応する更新モジュールを選定することで、仕向先に応じたプログラムモジュールへの適正な更新を、自動で行うことができる。
【符号の説明】
【0066】
11 プロセッサ
13 内視鏡スコープ
15 モニタ
17 入力部
37 撮像素子
41 ROM
43 更新情報入力部
45 センサ駆動FPGA
47 ROM
49 ROM
51 映像入力FPGA
53 画像処理FPGA
55 メモリ
57 ROM
59 ROM
61 ROM
63 記憶媒体
100 内視鏡装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プログラムモジュールによって制御される電子デバイスを複数含み、当該複数の電子デバイスのプログラムモジュールを更新する機能を有する電子機器であって、
前記電子機器に設定された仕向先の情報を記憶する仕向先情報記憶手段と、
外部より入力され前記複数の電子デバイスに対する更新用プログラムを記憶する更新情報記憶手段と、
更新対象となる前記電子デバイスのプログラムモジュールを、前記更新情報記憶手段に記憶されている更新用プログラムによりそれぞれ更新する更新実行手段と、
を備え、
前記更新用プログラムが、複数の仕向先にそれぞれ個別に対応する複数の更新モジュールから構成され、
前記更新実行手段が、前記仕向先情報記憶手段に記憶された仕向先の情報に対応する前記更新モジュールを前記複数の更新モジュールから選定し、該選定された更新モジュールを用いて前記プログラムモジュールを更新する電子機器。
【請求項2】
請求項1記載の電子機器であって、
前記更新用プログラムが、前記複数の更新モジュールを含む一つのファイルから構成される電子機器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の電子機器であって、
前記複数の電子デバイスそれぞれについて、前記プログラムモジュールの現在のバージョン情報を、前記更新用プログラムにより更新されるプログラムモジュールのバージョン情報と比較し、前記更新の対象となる電子デバイスを自動的に特定する更新対象特定手段を備えた電子機器。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項記載の電子機器であって、
各種の設定言語と、該設定言語に対応する国コードとの対応関係を表した言語対応テーブルが記憶された言語対応情報記憶手段と、
前記電子機器に設定された設定言語を検出し、該検出された設定言語に対する国コードを前記言語対応テーブルを参照して求め、前記求めた国コードに応じて前記仕向先を設定する仕向先設定手段と、
を備えた電子機器。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項記載の電子機器であって、
前記更新用プログラムが更新する前記プログラムモジュールの数が、前記仕向先毎に異なっている電子機器。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか一項記載の電子機器であって、
該電子機器は、内視鏡挿入部先端から照明光を出射する照明光学系と、撮像素子により撮像画像を生成する撮像光学系とを有する内視鏡装置を構成し、
前記仕向先に応じて前記内視鏡装置の仕様を変更する電子機器。
【請求項7】
プログラムモジュールによって制御される電子デバイスを複数含み、当該複数の電子デバイスのプログラムモジュールを更新する機能を有する電子機器のプログラムモジュール更新方法であって、
複数の仕向先にそれぞれ個別に対応する複数の更新モジュールから構成され、外部より入力される前記複数の電子デバイスに対する更新用プログラムを、更新情報記憶手段に記憶させるステップと、
前記電子機器に設定された仕向先に対応する更新モジュールを、前記複数の更新モジュールから選定するステップと、
更新対象となる前記電子デバイスに対して、該電子デバイスのプログラムモジュールを、前記選定された更新モジュールにより更新するステップと、
を含む電子機器のプログラムモジュール更新方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−248030(P2012−248030A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119635(P2011−119635)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】