説明

電子機器、歩数計およびプログラム

【課題】歩行時であるか走行時であるかをより正確に判定することができる。
【解決手段】加速度センサ106は、第1の方向の加速度を検出し、第1の信号を出力する。加速度センサ107は、第1の方向と直交する第2の方向の加速度を検出し、第2の信号を出力する。加速度センサ108は、第1の方向と第2の方向とで一意に特定される平面と直交する第3の方向の加速度を検出し、第3の信号を出力する。CPU102は、第1の信号と、第2の信号と、第3の信号とのうち、1つまたは複数の信号を用いて歩数を算出する。また、CPU102は、第1の信号の移動平均値と、第2の信号の移動平均値と、第3の信号の移動平均値とに基づいて、歩行中であるか走行中であるかを判定する。また、CPU102は、歩行中であると判定した場合には歩行に適した処理を行い、走行中であると判定した場合には走行に適した処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行時や走行時の歩数を計測する電子機器、歩数計およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、加速度センサ等の体動センサを用いて歩行による体動を検出し、検出した体動をカウントすることで、携帯者の走行時または歩行時の歩数を検出する歩数計がある。また、歩行時や走行時の歩数と、事前に入力された歩幅とに基づいて、歩行や走行による消費カロリーの計算を行う装置がある。しかしながら、歩行時と走行時の歩幅は明らかに異なるため、消費カロリーの計算を行うためには、ユーザが手動で歩行時であるか走行時であるかを指定する必要があった。
【0003】
また、歩数の誤カウントを防止するために、1歩を検出した後、一定時間歩数をカウントしない時間(マスク時間)を設けている歩数計がある。なお、走行時と歩行時ではピッチ(歩行ピッチ、走行ピッチ)が異なるため、最適なマスク時間が異なる。具体的には、走行時よりも歩行時の方がピッチが遅いため、走行時の最適なマスク時間よりも歩行時の最適なマスク時間の方が長い。そのため、最適なマスク時間を設定するためには、ユーザが手動で歩行時であるか走行時であるかを指定する必要があった。
【0004】
これを解決する歩数計測装置として、体動の種類に応じてマスク時間を可変させる歩数計測装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、生体の行動を「寝る」、「座る」、「立つ」、「歩く」、「走る」に分類し、各行動ごとの消費カロリーを知ることができる運動量測定装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−77322号公報
【特許文献2】特開平8−131425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の歩数計測装置では、体動量(加速度センサの加速度振幅の大きさ)に応じて、体動の種類を判定している。しかしながら、加速度センサの加速度振幅の大きさからだけでは、歩行時であるか走行時であるかを正確に見分けることが難しい。また、振幅を判定するためには、振幅のピークを取り逃さない必要がある。そのため、振幅のピークを取り逃さないようにするには、歩数計測装置はピークホールド回路を備える、または加速度測定のサンプリング周期を細かくする必要があり、回路規模の増大または消費電流の増大を招いてしまうという問題がある。
【0007】
また、特許文献2の運動量測定装置においても、行動パターン「歩く」と「走る」の分類を、加速度センサの加速度振幅の大きさに応じて行っている。そのため、特許文献1の歩数計測装置と同様に、加速度センサの加速度振幅の大きさからだけでは、行動パターン「歩く」と「走る」の分類を正確に行うことが難しい。また、振幅を判定するためには、振幅のピークを取り逃さない必要がある。そのため、振幅のピークを取り逃さないようにするには、運動量計測装置はピークホールド回路を備える、または加速度測定のサンプリング周期を細かくする必要があり、回路規模の増大または消費電流の増大を招いてしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、歩行時であるか走行時であるかをより正確に判定することができる電子機器、歩数計およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、第1の方向の加速度を検出し、当該加速度に対応する第1の信号を出力する第1の加速度センサと、前記第1の方向と直交する第2の方向の加速度を検出し、当該加速度に対応する第2の信号を出力する第2の加速度センサと、前記第1の方向と前記第2の方向とで一意に特定される平面と直交する第3の方向の加速度を検出し、当該加速度に対応する第3の信号を出力する第3の加速度センサと、前記第1の信号と、前記第2の信号と、前記第3の信号とのうち、1つまたは複数の信号を用いて歩数を算出する歩数算出部と、前記第1の信号の移動平均値と、前記第2の信号の移動平均値と、前記第3の信号の移動平均値とに基づいて、歩行中であるか走行中であるかを判定する歩行走行判定部と、前記歩行走行判定部が歩行中であると判定した場合には歩行に適した処理を行い、前記歩行走行判定部が走行中であると判定した場合には走行に適した処理を行う処理部と、を備えたことを特徴とする電子機器である。
【0010】
また、本発明の電子機器において、前記歩行に適した処理は、歩行用の歩幅を選択し、当該歩幅と前記歩数算出部が算出した歩数とを用いて歩行距離を算出する処理であり、前記走行に適した処理は、走行用の歩幅を選択し、当該歩幅と前記歩数算出部が算出した歩数とを用いて走行距離を算出する処理であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の電子機器において、前記歩行に適した処理は、歩行用のエネルギー消費量の計算式を用いてエネルギー消費量を算出する処理であり、前記走行に適した処理は、走行用のエネルギー消費量の計算式を用いてエネルギー消費量を算出する処理であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の電子機器において、前記歩数算出部は、マスク時間を用いて歩数を算出し、前記歩行に適した処理は、前記歩数算出部が歩数を算出する際に用いる前記マスク時間を歩行用のマスク時間に変更する処理であり、前記走行に適した処理は、前記歩数算出部が歩数を算出する際に用いる前記マスク時間を走行用のマスク時間に変更する処理であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、第1の方向の加速度を検出し、当該加速度に対応する第1の信号を出力する第1の加速度センサと、前記第1の方向と直交する第2の方向の加速度を検出し、当該加速度に対応する第2の信号を出力する第2の加速度センサと、前記第1の方向と前記第2の方向とで一意に特定される平面と直交する第3の方向の加速度を検出し、当該加速度に対応する第3の信号を出力する第3の加速度センサと、前記第1の信号と、前記第2の信号と、前記第3の信号とのうち、1つまたは複数の信号を用いて歩数を算出する歩数算出部と、前記第1の信号の移動平均値と、前記第2の信号の移動平均値と、前記第3の信号の移動平均値とに基づいて、歩行中であるか走行中であるかを判定する歩行走行判定部と、前記歩行走行判定部が歩行中であると判定した場合には歩行に適した処理を行い、前記歩行走行判定部が走行中であると判定した場合には走行に適した処理を行う処理部と、を備えたことを特徴とする歩数計である。
【0014】
また、本発明は、コンピュータに、第1の方向の加速度を検出し、当該加速度に対応する第1の信号を出力する第1の加速度検出ステップと、前記第1の方向と直交する第2の方向の加速度を検出し、当該加速度に対応する第2の信号を出力する第2の加速度検出ステップと、前記第1の方向と前記第2の方向とで一意に特定される平面と直交する第3の方向の加速度を検出し、当該加速度に対応する第3の信号を出力する第3の加速度検出ステップと、前記第1の信号と、前記第2の信号と、前記第3の信号とのうち、1つまたは複数の信号を用いて歩数を算出する歩数算出ステップと、前記第1の信号の移動平均値と、前記第2の信号の移動平均値と、前記第3の信号の移動平均値とに基づいて、歩行中であるか走行中であるかを判定する歩行走行判定ステップと、前記歩行走行判定ステップで歩行中であると判定した場合には歩行に適した処理を行い、前記歩行走行判定ステップで走行中であると判定した場合には走行に適した処理を行う処理ステップと、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、第1の加速度センサは、第1の方向の加速度を検出し、当該加速度に対応する第1の信号を出力する。また、第2の加速度センサは、第1の方向と直交する第2の方向の加速度を検出し、当該加速度に対応する第2の信号を出力する。また、第3の加速度センサは、第1の方向と第2の方向とで一意に特定される平面と直交する第3の方向の加速度を検出し、当該加速度に対応する第3の信号を出力する。また、歩数算出部は、第1の信号と、第2の信号と、第3の信号とのうち、1つまたは複数の信号を用いて歩数を算出する。また、歩行走行判定部は、第1の信号の移動平均値と、第2の信号の移動平均値と、第3の信号の移動平均値とに基づいて、歩行中であるか走行中であるかを判定する。また、処理部は、歩行走行判定部が歩行中であると判定した場合には歩行に適した処理を行い、歩行走行判定部が走行中であると判定した場合には走行に適した処理を行う。
【0016】
これにより、第1の信号の移動平均値と、第2の信号の移動平均値と、第3の信号の移動平均値とに基づいて歩行中であるか走行中であるかを判定するため、より正確に歩行中であるか走行中であるかを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態における歩数計の外観を示した外観図である。
【図2】本実施形態における歩数計の構成を示したブロック図である。
【図3】本実施形態において、歩数計が使用者に装着されている場合でのX軸方向と、Y軸方向と、Z軸方向との向きを示した概略図である。
【図4】本実施形態において、使用者が歩行している際に、歩数計が検出するX、Y、Z軸方向の移動平均加速度の大きさを示したグラフである。
【図5】本実施形態において、使用者が走行している際に、歩数計が検出するX、Y、Z軸方向の移動平均加速度の大きさを示したグラフである。
【図6】本実施形態における歩数計が実行する候補検出処理の処理手順を示したフローチャートである。
【図7】本実施形態における歩数計が実行する歩数計歩数計測処理の処理手順を示したフローチャートである。
【図8】本実施形態における歩数計が実行する歩行走行判定処理の処理手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。本実施形態では、電子機器の一例として、歩数計の例を用いて説明する。図1は、本実施形態における歩数計の外観を示した外観図である。図示する例では、歩数計100は、上面に表示部105を備え、側面に入力部103を備えている。表示部105は表示面を備えており、表示面に歩数などの表示を行う。入力部103は、歩数計100の使用者からの入力を受け付ける。なお、本実施形態では、歩数計100が備える表示部105の表示面と同一の平面をXY平面とし、表示部105の表示面と垂直な方向をZ軸方向とする。また、歩数計100は、使用者の腕に装着して使用する腕時計型の歩数計の例を示している。
【0019】
図2は、本実施形態における歩数計100の構成を示したブロック図である。図示する例では、歩数計100は、発振部101と、CPU102(中央処理装置、歩数算出部、歩行走行判定部、処理部)と、入力部103と、表示制御部104と、表示部105と、加速度センサ106(第1の加速度センサ)と、加速度センサ107(第2の加速度センサ)と、加速度センサ108(第3の加速度センサ)と、ADコンバータ109と、記憶部110とを備える。
【0020】
発振部101は、計時の基準となる時計信号と、CPU102の動作用の基準クロック信号とを発生する。CPU102は、歩数の算出処理や、使用者は歩行中であるか走行中であるかを判定する歩行走行判定処理や、歩数計を構成する各電子回路要素の制御や、計時動作等を行う。入力部103は、使用者から、歩数計測の開始や停止等を指示するための入力を受け付ける。表示制御部104は、CPU102からの制御信号に応答して、表示部105に歩数や、歩行・走行距離や、時刻や、エネルギー消費量等を表示させる。表示部105は、液晶表示装置(LCD)によって構成され、歩数や、歩行・走行距離や、時刻や、エネルギー消費量等を表示する。
【0021】
加速度センサ106〜108は、相互に直交する直交座標軸のX成分、Y成分、Z成分を検出して、各成分の加速度に対応する大きさの加速度信号を出力する。本実施形態では、加速度センサ106はX軸方向の加速度Xを検出する。また、加速度センサ107はY軸方向の加速度Yを検出する。また、加速度センサ108はZ軸方向の加速度Zを検出する。なお、加速度センサ106〜108は、例えば、1つのMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)3軸加速度センサによって構成してもよく、また、相互に直交する3軸方向に配設された3つの1軸加速度センサによって構成してもよい。
【0022】
記憶部110は、CPU102が実行するプログラムや、歩数計100が備える各部が処理を行う過程で必要なデータ等を記憶する。なお、本実施形態では、例えば、CPU102が、本発明の歩数算出部と、歩行走行判定部と、処理部として動作する。
【0023】
次に、歩数計100が使用者に装着されている場合でのX軸方向と、Y軸方向と、Z軸方向との向きについて説明する。図3は、本実施形態において、歩数計100が使用者に装着されている場合でのX軸方向と、Y軸方向と、Z軸方向との向きを示した概略図である。図示するように、歩数計100が使用者の腕に装着されている場合には、肘から手の甲に向かう方向がY軸方向であり、手の甲に垂直な方向がZ軸方向であり、Y軸方向とZ軸方向とで一意に決まる平面に垂直な方向がX軸方向である。
【0024】
次に、使用者が歩行している際に、歩数計100が検出するX、Y、Z軸方向の移動平均加速度の大きさについて説明する。図4は、本実施形態において、使用者が歩行している際に、歩数計100が検出するX、Y、Z軸方向の移動平均加速度の大きさを示したグラフである。図示する例では、横軸は時間であり、縦軸は、直近2秒間の加速度の平均である移動平均加速度[mG]の大きさである。また、曲線401はX軸方向の移動平均加速度Xの大きさを示しており、曲線402はY軸方向の移動平均加速度Yの大きさを示しており、曲線403はZ軸方向の移動平均加速度Zの大きさを示している。
【0025】
図示するとおり、使用者が歩行している際には、Y軸方向の移動平均加速度の絶対値が750mG以上であり、X軸方向の移動平均加速度の絶対値とZ軸方向の移動平均加速度の絶対値とがそれぞれ750mG以下である。従って、Y軸方向の移動平均加速度の絶対値が750mG以上、かつX軸方向の移動平均加速度の絶対値とZ軸方向の移動平均加速度の絶対値とがそれぞれ750mGである場合には、使用者は歩行中であると判定することができる。
【0026】
次に、使用者が走行している際に、歩数計100が検出するX、Y、Z軸方向の移動平均加速度の大きさについて説明する。図5は、本実施形態において、使用者が走行している際に、歩数計100が検出するX、Y、Z軸方向の移動平均加速度の大きさを示したグラフである。図示する例では、横軸は時間であり、縦軸は、直近2秒間の加速度の平均である移動平均加速度[mG]の大きさである。また、曲線501はX軸方向の移動平均加速度Xの大きさを示しており、曲線502はY軸方向の移動平均加速度Yの大きさを示しており、曲線503はZ軸方向の移動平均加速度Zの大きさを示している。
【0027】
図示するとおり、使用者が走行している際には、X軸方向の移動平均加速度の絶対値が700mG以上であり、Y軸方向の移動平均加速度の絶対値とZ軸方向の移動平均加速度の絶対値とがそれぞれ700mG以下である。従って、X軸方向の移動平均加速度の絶対値が700mG以上、かつY軸方向の移動平均加速度の絶対値とZ軸方向の移動平均加速度の絶対値とがそれぞれ700mGである場合には、使用者は走行中であると判定することができる。
【0028】
従来のように加速度センサの出力の振幅に基づいて、使用者は歩行中であるか走行中であるかを判定する場合には、振幅の間隔が短いため、正確に振幅を検知することは難しく、また、正確に振幅を検知できなければ、使用者は歩行中であるか走行中であるかを正確に判定することができない。しかしながら、本実施形態の歩数計100は、X軸方向の移動平均加速度と、Y軸方向の移動平均加速度と、Z軸方向の移動平均加速度とに基づいて、使用者は歩行中であるか走行中であるかを判定する。また、加速度センサ106〜108の振幅をある程度検知することができれば、X軸方向の移動平均加速度と、Y軸方向の移動平均加速度と、Z軸方向の移動平均加速度を正確に算出することができるため、歩数計100は、使用者は歩行中であるか走行中であるかをより正確に判定することができる。
【0029】
次に、歩数計100が歩行信号の候補を検出する候補検出処理の処理手順について説明する。図6は、本実施形態における歩数計100が実行する、候補検出処理の処理手順を示したフローチャートである。歩数計100は、候補検出処理を繰り返し実行する。なお、以下の説明では、加速度センサ106の出力を用いて歩行信号の候補を検出する例を用いて説明するが、加速度センサ107または加速度センサ108の出力を用いて歩行信号の候補を検出するようにしてもよく、加速度センサ106〜108の出力のうち複数の出力を用いて歩行信号の候補を検出するようにしてもよい。
【0030】
(ステップS101)CPU102は、ステップS102以降の処理を行うタイミング(サンプリングタイミング)であるか否かを判定する。サンプリングタイミングであるとCPU102が判定した場合にはステップS102の処理に進み、それ以外の場合にはステップS101の処理を再度実行する。例えば、サンプリングタイミングを50msとした場合、CPU102は、ステップS102以降の処理を50ms毎に実行する。すなわち、CPU102がステップS102以降の処理を行う間隔(サンプリング間隔)は、50msである。なお、サンプリングタイミングは50ms〜100msとするのが望ましい。
【0031】
(ステップS102)CPU102は、ADコンバータ109がデジタル信号に変換した、サンプリング間隔における加速度センサ106の出力を取得する。その後、ステップS103の処理に進む。例えば、サンプリングタイミングが50msの場合、ADコンバータ109は50ms毎に加速度センサ106の出力値を出力し、CPU102は、50ms毎にADコンバータ109が出力した加速度センサ106の出力値を取得する。
【0032】
(ステップS103)CPU102は、ステップS102で取得したサンプリング間隔における加速度センサ106の出力値が、閾値以下の値から閾値以上の値に変化しているか否かを判定する。ステップS102で取得したサンプリング間隔における加速度センサ106の出力値が、閾値以下の値から閾値以上の値に変化しているとCPU102が判定した場合にはステップS106の処理に進み、それ以外の場合にはステップS104の処理に進む。例えば、閾値が1200mGであり、加速度センサ106の出力が1150mGから1250mGに変化した場合、CPU102は、加速度センサ106の出力値が、閾値以下の値から閾値以上の値に変化していると判定する。
【0033】
(ステップS104)CPU102は、ステップS103の処理を一定回数行ったか否かを判定する。ステップS103の処理を一定回数行ったとCPU102が判定した場合にはステップS105の処理に進み、それ以外の場合にはステップS101の処理に戻る。例えば、一定回数としては、10回とする。
(ステップS105)CPU102は、使用者が歩行を停止したと判定し、処理を終了する。
【0034】
(ステップS106)CPU102は、前回歩行信号の候補であると判定してから一定時間経過しているか否かを判定する。前回歩行信号の候補であると判定してから一定時間(マスク時間)経過しているとCPU102が判定した場合にはステップS107の処理に進み、それ以外の場合にはステップS101の処理に戻る。なお、マスク時間の決定方法については後述する。
【0035】
(ステップS107)CPU102は、ステップS102で取得した加速度センサ106の出力値は歩行信号の候補であると判定する。その後、処理を終了する。
【0036】
次に、歩数計100が歩数を計測する歩数計測処理の処理手順について説明する。図7は、本実施形態における歩数計100が実行する、歩数計測処理の処理手順を示したフローチャートである。歩数計100は、歩数計測処理を繰り返し実行する。
【0037】
(ステップS201)CPU102は、検出処理で検出した歩行信号の候補が連続しているか否かを判定する(連続性を確認する)。その後、ステップS202の処理に進む。例えば、6秒間の間に、1秒間隔以内の歩行信号の候補を6回以上検出した場合には、歩行信号の候補が連続していると判定する。
(ステップS202)CPU102は、前回ステップS205の処理で歩数を加算した後に検出処理で検出した歩行信号の候補の数を、仮歩数としてカウントする。その後、ステップS203の処理に進む。
【0038】
(ステップS203)CPU102は、ステップS201の処理で歩行信号の候補が連続していると判定した場合、加速度センサ106の出力値は歩行による信号であると判定する。加速度センサ106の出力値は歩行による信号であるとCPU102が判定した場合にはステップS204の処理に進み、それ以外の場合には処理を終了する。
(ステップS204)CPU102は、使用者は歩行中であると判定する。その後、ステップS205の処理に進む。
(ステップS205)CPU102は、ステップS202でカウントした仮歩数を、歩数に加算する。その後、処理を終了する。
【0039】
次に、歩数計100が、使用者は歩行中であるか走行中であるかを判定する歩行走行判定処理について説明する。図8は、本実施形態における歩数計100が実行する、歩行走行判定処理の処理手順を示したフローチャートである。歩数計100は、歩行走行判定処理を繰り返し実行する。
【0040】
(ステップS301)CPU102は、ステップS302以降の処理を行うタイミング(サンプリングタイミング)であるか否かを判定する。サンプリングタイミングであるとCPU102が判定した場合にはステップS302の処理に進み、それ以外の場合にはステップS301の処理を再度実行する。例えば、サンプリングタイミングを50msとした場合、CPU102は、ステップS302以降の処理を50ms毎に実行する。すなわち、CPU102がステップS302以降の処理を行う間隔(サンプリング間隔)は、50msである。なお、サンプリングタイミングは50ms〜100msとするのが望ましい。
【0041】
(ステップS302)CPU102は、ADコンバータ109がデジタル信号に変換した、過去2秒間における加速度センサ106,107,108の出力を取得する。その後、ステップS303の処理に進む。例えば、ADコンバータ109は50ms毎に加速度センサ106,107,108の出力値を出力する場合、CPU102は、過去2秒間の間にADコンバータ109が出力した、40個の加速度センサ106の出力値と、40個の加速度センサ107の出力値と、40個の加速度センサ108の出力値とを取得する。なお、本実施形態では過去2秒間における加速度センサ106,107,108の出力を取得する例を用いて説明するが、これに限らず、任意の期間とするようにしてもよい。
【0042】
(ステップS303)CPU102は、ステップS302で取得した、過去2秒間における加速度センサ106の出力値の平均値(X軸方向の移動平均加速度)と、過去2秒間における加速度センサ107の出力値の平均値(Y軸方向の移動平均加速度)と、過去2秒間における加速度センサ108の出力値の平均値(Z軸方向の移動平均加速度)とを算出する。その後、ステップS304の処理に進む。
【0043】
(ステップS304)CPU102は、ステップS303で算出した、X軸方向の移動平均加速度と、Y軸方向の移動平均加速度と、Z軸方向の移動平均加速度とに基づいて、使用者は歩行中であるか走行中であるかを判定する。その後、ステップS305の処理に進む。使用者は歩行中であるか走行中であるかの判定方法としては、例えば、図4および図5を用いて説明したように、Y軸方向の移動平均加速度の絶対値が750mG以上、かつX軸方向の移動平均加速度の絶対値とZ軸方向の移動平均加速度の絶対値とが750mGである場合には、使用者は歩行中であると判定し、X軸方向の移動平均加速度の絶対値が700mG以上、かつY軸方向の移動平均加速度の絶対値とZ軸方向の移動平均加速度の絶対値とが700mGである場合には、使用者は走行中であると判定する。なお、どちらにも当てはまらない場合には、前回判定した結果と同様の判定とする。また、歩行中であるとの判定基準および走行中であるとの判定基準については、環境に応じて任意に設定するようにしてもよい。
【0044】
(ステップS305)CPU102は、ステップS304の処理において、使用者が歩行中であると判定した場合には歩行中に適した処理を行い、使用者が走行中であると判定した場合には走行中に適した処理を行う。その後、処理を終了する。具体的には、CPU102は、使用者は歩行中であると判定した場合、マスク時間を歩行に適した時間(例えば、300ms)とし、使用者は走行中であると判定した場合、マスク時間を走行に適した時間(例えば、200ms)とする。また、CPU102は、使用者は走行中であると判定した場合、歩行による歩幅(例えば、50cm〜60cm)とカウントした歩数とを用いて歩行距離を算出し、使用者は走行中であると判定した場合、走行による歩幅(例えば、90cm〜110cm)とカウントした歩数とを用いて走行距離を算出する。
【0045】
また、CPU102は、使用者は歩行中であると判定した場合、歩行中に適した計算式を用いてエネルギー消費量を算出し、使用者は走行中であると判定した場合、走行中に適した計算式を用いてエネルギー消費量を算出する。例えば、計算式としては、以下の計算式を用いる(参考文献:第3回運動所要量・運動指針の策定検討会資料 健康づくりのための運動指針2006 〜生活習慣病予防のために〜 健康づくりのための運動基準2006 〜身体活動・運動・体力〜)。なお、歩行中のエクササイズは3.0METsとし、走行時のエクササイズは7.0METsとする。
エネルギー消費量(kcal)=1.05×エクササイズ(メッツ・時、METs)×体重(kg)
【0046】
上述したとおり、本実施形態によれば、歩数計100は、X軸方向の移動平均加速度と、Y軸方向の移動平均加速度と、Z軸方向の移動平均加速度との大きさに基づいて使用者は歩行中であるか走行中であるかを判定するため、加速度の振幅を用いて判定する方法よりも、より正確に歩行中であるか走行中であるかを判定することができる。
【0047】
また、歩数計100は、移動平均加速度を用いて使用者は歩行中であるか走行中であるかを判定するため、加速度のピークを取り逃がさないようするためのピークホールド回路を備える必要もなく、加速度測定のサンプリング周期も細かくする必要が無い。よって、歩数計100は、回路規模をより小さくすることができ、消費電力もより少なくすることができる。
【0048】
また、歩数計100は、使用者は歩行中であると判定した場合には歩行中に適した処理を行い、使用者は走行中であると判定した場合には走行中に適した処理を行うため、より正確な処理結果を得ることができる。例えば、使用者が走行中である場合と歩行中である場合とでは歩行ピッチや歩幅やエクササイズ等は異なる。歩数計100は、使用者は歩行中であると判定した場合には、歩行中の歩行ピッチや歩幅やエクササイズ等を用いて各種処理を行い、使用者は走行中であると判定した場合には、歩行中の歩行ピッチや歩幅やエクササイズ等を用いて各種処理を行う。そのため、歩数計100は、より正確な処理結果を得ることができる。
【0049】
なお、上述した実施形態における歩数計100が備える各部の機能全体あるいはその一部は、これらの機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0050】
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶部のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時刻の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時刻プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0051】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、上述した実施形態では、電子機器の例として、図1に示すような腕時計型の歩数計を例に説明したが、これに限らず、使用者の腕に装着して使用する電子機器であればどのような電子機器でもよい。
【符号の説明】
【0052】
100・・・歩数計、101・・・発振部、102・・・CPU、103・・・入力部、104・・・表示制御部、105・・・表示部、106〜108・・・加速度センサ、109・・・ADコンバータ、110・・・記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向の加速度を検出し、当該加速度に対応する第1の信号を出力する第1の加速度センサと、
前記第1の方向と直交する第2の方向の加速度を検出し、当該加速度に対応する第2の信号を出力する第2の加速度センサと、
前記第1の方向と前記第2の方向とで一意に特定される平面と直交する第3の方向の加速度を検出し、当該加速度に対応する第3の信号を出力する第3の加速度センサと、
前記第1の信号と、前記第2の信号と、前記第3の信号とのうち、1つまたは複数の信号を用いて歩数を算出する歩数算出部と、
前記第1の信号の移動平均値と、前記第2の信号の移動平均値と、前記第3の信号の移動平均値とに基づいて、歩行中であるか走行中であるかを判定する歩行走行判定部と、
前記歩行走行判定部が歩行中であると判定した場合には歩行に適した処理を行い、前記歩行走行判定部が走行中であると判定した場合には走行に適した処理を行う処理部と、
を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記歩行に適した処理は、歩行用の歩幅を選択し、当該歩幅と前記歩数算出部が算出した歩数とを用いて歩行距離を算出する処理であり、
前記走行に適した処理は、走行用の歩幅を選択し、当該歩幅と前記歩数算出部が算出した歩数とを用いて走行距離を算出する処理である
ことを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
前記歩行に適した処理は、歩行用のエネルギー消費量の計算式を用いてエネルギー消費量を算出する処理であり、
前記走行に適した処理は、走行用のエネルギー消費量の計算式を用いてエネルギー消費量を算出する処理である
ことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項4】
前記歩数算出部は、マスク時間を用いて歩数を算出し、
前記歩行に適した処理は、前記歩数算出部が歩数を算出する際に用いる前記マスク時間を歩行用のマスク時間に変更する処理であり、
前記走行に適した処理は、前記歩数算出部が歩数を算出する際に用いる前記マスク時間を走行用のマスク時間に変更する処理である
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電子機器。
【請求項5】
第1の方向の加速度を検出し、当該加速度に対応する第1の信号を出力する第1の加速度センサと、
前記第1の方向と直交する第2の方向の加速度を検出し、当該加速度に対応する第2の信号を出力する第2の加速度センサと、
前記第1の方向と前記第2の方向とで一意に特定される平面と直交する第3の方向の加速度を検出し、当該加速度に対応する第3の信号を出力する第3の加速度センサと、
前記第1の信号と、前記第2の信号と、前記第3の信号とのうち、1つまたは複数の信号を用いて歩数を算出する歩数算出部と、
前記第1の信号の移動平均値と、前記第2の信号の移動平均値と、前記第3の信号の移動平均値とに基づいて、歩行中であるか走行中であるかを判定する歩行走行判定部と、
前記歩行走行判定部が歩行中であると判定した場合には歩行に適した処理を行い、前記歩行走行判定部が走行中であると判定した場合には走行に適した処理を行う処理部と、
を備えたことを特徴とする歩数計。
【請求項6】
コンピュータに、
第1の方向の加速度を検出し、当該加速度に対応する第1の信号を出力する第1の加速度検出ステップと、
前記第1の方向と直交する第2の方向の加速度を検出し、当該加速度に対応する第2の信号を出力する第2の加速度検出ステップと、
前記第1の方向と前記第2の方向とで一意に特定される平面と直交する第3の方向の加速度を検出し、当該加速度に対応する第3の信号を出力する第3の加速度検出ステップと、
前記第1の信号と、前記第2の信号と、前記第3の信号とのうち、1つまたは複数の信号を用いて歩数を算出する歩数算出ステップと、
前記第1の信号の移動平均値と、前記第2の信号の移動平均値と、前記第3の信号の移動平均値とに基づいて、歩行中であるか走行中であるかを判定する歩行走行判定ステップと、
前記歩行走行判定ステップで歩行中であると判定した場合には歩行に適した処理を行い、前記歩行走行判定ステップで走行中であると判定した場合には走行に適した処理を行う処理ステップと、
を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−118724(P2012−118724A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267375(P2010−267375)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】