説明

電子機器およびテレビジョン

【課題】タッチセンサーICのハングアップ状態を他の制御対象へ悪影響を与えることなく確実に解消する。
【解決手段】タッチセンサーICと、赤外線受光部と、タッチセンサーICおよび赤外線受光部のそれぞれと接続する制御部と、タッチセンサーIC、赤外線受光部および制御部のそれぞれに対して電源供給を行なう電源供給回路と、を備える電子機器であって、制御部は、タッチセンサーICとタッチセンサーICとは異なる制御対象部とに対して共通の制御用ポートを介して接続しており、赤外線受光部が電子機器の電源オンを指示する赤外線信号を受光した場合、電源供給回路からタッチセンサーICへの電源供給を遮断させ且つ当該遮断後にタッチセンサーICへの電源供給を再開させることにより、タッチセンサーICを再起動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器およびテレビジョンに関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザーの指等による被接触部(ボタンやタッチパネル)への接触を検知するタッチセンサーICが知られている。このようなタッチセンサーICは、ハングアップ(或いはフリーズ)してしまうことが一つの課題であった。
【0003】
ここで、ソフトウェア処理を実行する第1制御部と別に、ハードウェアで構成した第2制御部を設け、電源キーが所定時間以上にわたり継続して押されたとき第2制御部は第1制御部に対してリセット信号を送出することにより、第1制御部のフリーズ状態を解消する構成が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010‐267188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
タッチセンサーICは、それをリセットさせるためのリセット端子を備えていることがある。ただし、リセット端子に対して上記文献1のようにリセット信号を送出した場合であっても、タッチセンサーICを確実にリセットできるとは限らずハングアップしたままのこともある。また、タッチセンサーICを搭載した電子機器において、タッチセンターICをスレーブとし、マスターとして機能する側のIC(メインIC)がタッチセンサーICへの制御用バスを通じた指令にてタッチセンサーICをリセットさせることが可能である。しかし、当該バスがタッチセンサーICとは別の制御対象とも繋がっていることがある。このような場合、当該別の制御対象に対する制御中にマスターがタッチセンサーICと通信を行うと、当該別の制御対象の動作が不安定になることがある。そのため、当該マスターからタッチセンサーICへの制御用バスを通じた指令にてタッチセンサーICをリセットさせる手法も、タッチセンサーICのハングアップ状態を解消するための最適な手法とは言えなかった。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、タッチセンサーICのハングアップ状態を、他の制御対象へ影響を与えることなく、確実に解消することが可能な電子機器およびテレビジョンを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様の一つは、タッチセンサーICと、赤外線受光部と、タッチセンサーICおよび赤外線受光部のそれぞれと接続する制御部と、タッチセンサーIC、赤外線受光部および制御部のそれぞれに対して電源供給を行なう電源供給回路と、を備える電子機器であって、制御部は、タッチセンサーICとタッチセンサーICとは異なる制御対象部とに対して共通の制御用ポートを介して接続しており、赤外線受光部が電子機器の電源オンを指示する赤外線信号を受光した場合、電源供給回路からタッチセンサーICへの電源供給を遮断させ且つ当該遮断後にタッチセンサーICへの電源供給を再開させることにより、タッチセンサーICを再起動させる構成としてある。
【0008】
当該構成によれば、赤外線受光部が電子機器の電源オンの指示(赤外線によるリモートコントロール信号)を受けると、自動的にタッチセンサーICへの電源供給が遮断、再開されることでタッチセンサーICが再起動するため、仮にタッチセンサーICがハングアップ状態に陥っていたとしても、電子機器の電源オンとほぼ同時にハングアップ状態が解消される。また、上記制御用ポートを介したタッチセンサーICへの指示によってタッチセンサーICを再起動させるものではないため、上記制御対象部への制御に悪影響を与えることもない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】電子機器の構成を概略的に示したブロック図である。
【図2】電子機器の構成の一部であって主にタッチセンサーIC再起動処理に関する構成を示した図である。
【図3】タッチセンサーIC再起動処理に関わるシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態として、上記制御部は、タッチセンサーICが出力する信号を入力するための入力ポートを備え、電源供給回路からタッチセンサーICへの電源供給を遮断する期間を含む所定期間内は、上記制御用ポートおよび入力ポートの信号レベルを強制的に無信号状態に維持するとしてもよい。
また、本発明の実施形態として、タッチセンサーICと、赤外線受光部と、放送信号を受信するためのチューナと、タッチセンサーIC、赤外線受光部およびチューナのそれぞれと接続する制御部と、タッチセンサーIC、赤外線受光部および制御部のそれぞれに対して電源供給を行なう電源供給回路と、を備えるテレビジョンであって、電源供給回路は、テレビジョンがスタンバイ状態にあっても上記電源供給を継続する回路であり、制御部は、シリアル通信に対応したバスと接続した制御用ポートと、タッチセンサーICが出力する信号を入力するための第1入力ポートと、赤外線受光部が出力する信号を入力するための第2入力ポートと、電源供給回路がタッチセンサーICへ電源供給するための電源ライン上のスイッチを制御するための電源ライン制御ポートと、を有し、制御用ポートは上記バスを介してタッチセンサーICおよびチューナに接続しており、赤外線受光部がテレビジョンの電源オンを指示する赤外線信号を受光した場合、電源ライン制御ポートから上記スイッチをオフ状態に切換える制御を一定期間実行して、電源供給回路からタッチセンサーICへの電源供給を当該一定期間遮断させ且つ当該遮断後にタッチセンサーICへの電源供給を再開させることにより、タッチセンサーICを再起動させ、且つ、電源供給回路からタッチセンサーICへの電源供給の遮断開始と同時に制御用ポートおよび第1入力ポートの信号レベルを強制的に無信号状態とし、上記一定期間よりも所定期間だけ長く当該無信号状態を維持する、構成としてもよい。
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態にかかる電子機器10の構成を概略的に示したブロック図である。ここでは一例として、電子機器10はテレビジョンであるとしている。電子機器10は、チューナ11、システムオンチップ(SoC)12、タイミングコントローラ(T‐CON)13、表示パネル14、タッチセンサーIC15、赤外線(IR)受光部16、電源回路17などを備える。表示パネル14は、例えば液晶パネルやプラズマディスプレイパネル等である。
【0012】
SoC12は、電子機器10全体を制御するためのワンチップ化された集積回路(メインIC)であり、CPUや各種メモリー(ROMやRAM等)を搭載する。SoC12は制御部に該当する。電源回路17は、外部の商用電源から電源コード(不図示)を介して取得される交流電圧を所定レベルの直流電圧に変換し、電子機器10内の各部へ必要なレベルの電圧を供給する。チューナ11は、SoC12による制御下で、放送信号を受信し、中間周波信号(IF)をSoC12へ出力する(図2参照)。SoC12は、IFに基づいて映像信号や音声信号をデコードしたり、映像信号に対して所定の補正や画質調整を実行し、映像信号をT‐CON13へ出力する。T‐CON13は、入力した映像信号をフレームメモリ(図示せず)に一時的に保存しつつ、当該保存した信号に対応する駆動信号を所定のタイミングで表示パネル14に出力することにより、画素の配列により構成された表示パネル14の各画素を駆動して表示パネル14に映像信号に基づく映像を表示させる。
【0013】
電子機器10は、図1に示した構成以外にも、映像や音声を外部から入力するための外部入力端子や、その他、音声信号処理回路やスピーカなど、テレビジョンを構成する上で必要な公知の各構成を備え得る。また、電子機器10は必ずしもテレビジョンである必要は無く、制御部、タッチセンサーIC、IR受光部、電源回路などを備える電気製品であれば、あらゆる製品が本発明の電子機器の構成を採用できる。
【0014】
SoC12は、上記メモリーに記憶された所定のプログラムに従った機能の一つとして、後述するようなタッチセンサーIC再起動処理を実行する。
図2は、電子機器10の構成の一部であって、主にタッチセンサーIC再起動処理に関する構成を示している。タッチセンサーIC15およびIR受光部16は、センサー基板20に搭載されており、一方、SoC12やチューナ11は、デジタル基板30に搭載されている。センサー基板20およびデジタル基板30は、いずれも電子機器10の筺体(不図示)の所定位置に収容される基板である。
【0015】
タッチセンサーIC15には、被接触部(ボタンやタッチパネル)15aが接続されており、ユーザーは、被接触部15aに任意にタッチすることで、電源オン/オフ、チャンネルのアップ/ダウン、音声ボリュームのアップ/ダウン等の指示を入力することができる。タッチセンサーIC15は、被接触部15aにおける接触を電気的に検知し、検知結果に応じた波形のアナログ信号(KEY‐IN信号)をSoC12に対して出力する。SoC12は、複数備えるポートのうち、ポート12cにてKEY‐IN信号を入力し、KEY‐IN信号をアナログデジタル変換することで、被接触部15aを介したユーザーからの指示を認識する。ポート12cは、第1入力ポートに該当する。
【0016】
IR受光部16は、ユーザーが操作するリモートコントロール装置(不図示)から発せられる赤外線信号の受光、光電変換を行い、光電変換後の電子信号をSoC12に対して出力する。SoC12は、ポート12eにてIR受光部16からの信号を入力し、アナログデジタル変換することで、リモートコントロール装置を介したユーザーからの指示を認識する。ポート12eは、第2入力ポートに該当する。
【0017】
タッチセンサーIC15は、さらに、SoC12とシリアル通信に対応したバス(ICバス)によって接続されている。SoC12側では、このICバスとポート12bによって接続しており、かつ当該ICバスは、チューナ11とも接続している。つまりSoC12は、ポート12bおよびICバスを介して、チューナ11およびタッチセンサーIC15をそれぞれ制御する。チューナ11に対する制御とは、放送信号からの選局動作等であり、タッチセンサーIC15に対する制御とは、例えば、タッチセンサーIC15のバージョン情報の確認や、被接触部15aの設定等である。ポート12bは、制御用ポートに該当する。
【0018】
電源回路17は、その機能の一部として、タッチセンサーIC15、IR受光部16、SoC12のそれぞれに対して+3.3Vの電源供給を常時行なう。ここでいう“常時”とは、外部の商用電源に電子機器10の電源コードが接続されている場合という意味であり、電子機器10がいわゆるスタンバイ状態やスリープ状態であっても、この+3.3Vが供給される箇所は稼働できる状態にある(ただし、タッチセンサーIC15がハングアップ状態となっていることもある)。図2では、この常時供給される+3.3Vを「ALL+3.3V」と表記している。SoC12は、ポート12aにおいてALL+3.3Vの供給を受ける。この意味で、図2に示した電源回路17および電源回路17から延出するラインは、請求項に言う電源供給回路に該当する。
【0019】
さらにSoC12は、ポート12dを有する。ポート12dは、電源供給回路がタッチセンサーIC15へALL+3.3Vを供給するための電源ライン上のスイッチSWを制御するための電源ライン制御ポートである。SoC12は、ポート12dからスイッチイネーブル信号(SW‐EN信号)を出力することにより、スイッチSWにおける入り切りを制御可能である。
【0020】
[タッチセンサーIC再起動処理]
電子機器10がスタンバイ状態において、ユーザーがリモートコントロール装置を操作して電子機器10の電源オン(POWER‐ON)の操作を行なうと、IR受光部16は、POWER‐ONの指示に対応した赤外線信号を受光する。その結果、SoC12は、ポート12eを介してPOWER‐ONの指示を受け付け、スタンバイ状態にあった電子機器10の各部を起動させる。またSoC12は、POWER‐ONの指示を受け付けたら、即座に、ポート12dからスイッチSWに対して特定波形のSW‐EN信号を出力する。
【0021】
図3は、タッチセンサーIC再起動処理に関わるシーケンス図である。POWER‐ONの指示があった直後、SoC12はSW‐EN信号のレベルをハイ(H)レベルからロー(L)レベルへ切り換え、Lレベルを一定期間(例えば、100msec)維持し、再びHレベルへ戻す。スイッチSWは、SW‐EN信号がHレベルのときにオン状態となり、SW‐EN信号がLレベルのときにオフ状態となる。従って図2の構成においては、SW‐EN信号がLレベルとなる一定期間は、タッチセンサーIC15へのALL+3.3Vの供給が遮断される。このようにタッチセンサーIC15への電源供給が一定期間遮断され、再びタッチセンサーIC15への電源供給が行なわれることにより、タッチセンサーIC15は強制的に再起動(リセット)される。
【0022】
さらに本実施形態では、図3に示すように、SoC12はSW‐EN信号をHレベルからLレベルへ切り換えるタイミングと同時に、ポート12bの信号レベルおよびポート12cの信号レベル(KEY‐IN)も強制的にHレベルからLレベル(無信号状態)に切り換える。図3において、SCLはICバスを構成するクロックラインの信号レベルを意味し、SDAはICバスを構成するデータラインの信号レベルを意味する。なお、ポート12bおよびポート12cの信号レベルをLレベルに維持する期間は、SW‐EN信号をLレベルに維持する期間よりもやや長くする(例えば、150msec)。
【0023】
このように本実施形態によれば、ユーザーがリモートコントロール装置を操作して、スタンバイ状態にある電子機器10をPOWER‐ONさせるときに、タッチセンサーIC15に対する電源供給が一時的に遮断されることでタッチセンサーIC15が必ずリセットされる。つまり、タッチセンサーIC15が仮にハングアップ状態となっていても、電子機器10がPOWER‐ONされるときに、併せてタッチセンサーIC15が必ずリセットされるため、ユーザーは、電子機器10をPOWER‐ONさせた後は、正常に動作するタッチセンサーIC15の機能を享受することができる。また、本実施形態は、ポート12bおよびICバスを介したSoC12からタッチセンサーIC15への指示によってタッチセンサーIC15をリセットさせるものではない。そのため、ICバスが繋がった他の制御対象部(チューナ11)へのSoC12による制御処理に影響を与えることもない。なお、SoC12とポート12bおよびICバスで接続される上記他の制御対象部としては、チューナ11以外にも、例えば、HDMI(High-Definition Multimedia Interface)切換スイッチ等が考えられる。
【0024】
さらに本実施形態では、タッチセンサーIC15への電源供給を遮断する一定期間を含む期間(当該一定期間よりも長い期間)において、ポート12bの信号レベルおよびポート12cの信号レベルを強制的に無信号状態とする。これにより、リセット処理中のタッチセンサーIC15に対して無用の電圧がかかることを防止し、タッチセンサーIC15の誤動作や破壊が生じないようにしている。
【符号の説明】
【0025】
10…電子機器、11…チューナ、12…SoC、12a,12b,12c,12d,12e…ポート、15…タッチセンサーIC、16…IR受光部、17…電源回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチセンサーICと、
赤外線受光部と、
タッチセンサーICおよび赤外線受光部のそれぞれと接続する制御部と、
タッチセンサーIC、赤外線受光部および制御部のそれぞれに対して電源供給を行なう電源供給回路と、を備える電子機器であって、
制御部は、
タッチセンサーICとタッチセンサーICとは異なる制御対象部とに対して共通の制御用ポートを介して接続しており、
赤外線受光部が電子機器の電源オンを指示する赤外線信号を受光した場合、電源供給回路からタッチセンサーICへの電源供給を遮断させ且つ当該遮断後にタッチセンサーICへの電源供給を再開させることにより、タッチセンサーICを再起動させる、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
上記制御部は、タッチセンサーICが出力する信号を入力するための入力ポートを備え、電源供給回路からタッチセンサーICへの電源供給を遮断する期間を含む所定期間内は、上記制御用ポートおよび入力ポートの信号レベルを強制的に無信号状態に維持することを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
【請求項3】
タッチセンサーICと、
赤外線受光部と、
放送信号を受信するためのチューナと、
タッチセンサーIC、赤外線受光部およびチューナのそれぞれと接続する制御部と、
タッチセンサーIC、赤外線受光部および制御部のそれぞれに対して電源供給を行なう電源供給回路と、を備えるテレビジョンであって、
電源供給回路は、テレビジョンがスタンバイ状態にあっても上記電源供給を継続する回路であり、
制御部は、
シリアル通信に対応したバスと接続した制御用ポートと、
タッチセンサーICが出力する信号を入力するための第1入力ポートと、
赤外線受光部が出力する信号を入力するための第2入力ポートと、
電源供給回路がタッチセンサーICへ電源供給するための電源ライン上のスイッチを制御するための電源ライン制御ポートと、を有し、
制御用ポートは上記バスを介してタッチセンサーICおよびチューナに接続しており、
赤外線受光部がテレビジョンの電源オンを指示する赤外線信号を受光した場合、電源ライン制御ポートから上記スイッチをオフ状態に切換える制御を一定期間実行して、電源供給回路からタッチセンサーICへの電源供給を当該一定期間遮断させ且つ当該遮断後にタッチセンサーICへの電源供給を再開させることにより、タッチセンサーICを再起動させ、
且つ、電源供給回路からタッチセンサーICへの電源供給の遮断開始と同時に制御用ポートおよび第1入力ポートの信号レベルを強制的に無信号状態とし、上記一定期間よりも所定期間だけ長く当該無信号状態を維持する、
ことを特徴とするテレビジョン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−97597(P2013−97597A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240258(P2011−240258)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】